特許第6241741号(P6241741)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241741
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】排気集合筒
(51)【国際特許分類】
   F23L 17/02 20060101AFI20171127BHJP
   F24H 9/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   F23L17/02 602E
   F23L17/02 602F
   F24H9/00 B
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-33811(P2014-33811)
(22)【出願日】2014年2月25日
(65)【公開番号】特開2015-158328(P2015-158328A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2017年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】金城 貴信
(72)【発明者】
【氏名】福井 秀和
(72)【発明者】
【氏名】森本 量
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 向生
(72)【発明者】
【氏名】藤川 泰
(72)【発明者】
【氏名】吉川 昌吾
(72)【発明者】
【氏名】中野 晶夫
(72)【発明者】
【氏名】松原 海
(72)【発明者】
【氏名】嶋津 政彦
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−267410(JP,A)
【文献】 特許第4398899(JP,B2)
【文献】 特開平10−281559(JP,A)
【文献】 特開平04−302910(JP,A)
【文献】 特開平10−300237(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第1522801(EP,A1)
【文献】 特開2015−155786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23L17/02
F24H9/00
F23J13/00
F24H8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜熱回収用の熱交換器を通過してきた加熱用気体が流入する空間部を内部に形成し、かつ前壁部に前記加熱用気体の排気口が設けられているケースと、
このケース内の前部からその後方に向けて延びる整流板部を有し、かつ前記熱交換器を通過してきた加熱用気体を前記ケース内の後部側に導いてから前記排気口に向けて進行させることが可能な加熱用気体の流れ規制部材と、
前記熱交換器を通過してきた加熱用気体の一部を、前記ケース内の後部側に導くことなく前記排気口側に導くことが可能な通気部と、
を備えている、排気集合筒であって、
前記通気部としては、前記流れ規制部材上に発生したドレン水または前記排気口から前記流れ規制部材上に吹き込んだ雨水などの液体を前記熱交換器内に導くことが可能とされたフロント通気部を備えており、
このフロント通気部は、前記流れ規制部材と前記ケースの前壁部とによって形成されていることを特徴とする、排気集合筒。
【請求項2】
請求項1に記載の排気集合筒であって、
前記フロント通気部を前記加熱用気体または前記液体が通過する際には、これらが前記ケースの前壁部に沿って流れることが可能な構成とされている、排気集合筒。
【請求項3】
請求項1または2に記載の排気集合筒であって、
前記流れ規制部材の前部には、上下高さ方向に起立し、かつ前記ケースの前壁部に当接する起立板部が屈曲して連設されているとともに、この起立板部と前記流れ規制部材の前部の双方に跨がった孔部が設けられ、
この孔部が、前記フロント通気部である、排気集合筒。
【請求項4】
請求項1または2に記載の排気集合筒であって、
前記流れ規制部材の前部および前記ケースの前壁部の少なくとも一方には、これらが対向する方向に凹状または凸状をなす凹状部または凸状部が設けられていることにより、前記流れ規制部材の前部および前記ケースの前壁部の相互間には隙間が形成されており、
この隙間が、前記フロント通気部である、排気集合筒。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の排気集合筒であって、
前記フロント通気部は、前記流れ規制部材の左右横幅方向において前記排気口とオーバラップする位置を避けて設けられている、排気集合筒。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の排気集合筒であって、
前記ケースは、前記流れ規制部材よりも下方に延設され、かつ前記ケース内の下部には、伝熱管が収容されていることにより、前記熱交換器が構成されている、排気集合筒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瞬間式ガス給湯装置などの温水装置において、熱交換器を通過した燃焼ガスなどの加熱用気体を外部に排気するのに用いられる排気集合筒に関する。
【背景技術】
【0002】
排気集合筒の具体例として、特許文献1に記載のものがある。
同文献に記載の排気集合筒は、熱交換器の上側に配設して用いられるものであり、前部に排気口を有する下部開口状のケース内に、燃焼ガス用の流れ規制部材が設けられている。この流れ規制部材は、熱交換器を通過してきた燃焼ガス(燃焼排ガス)をケース内の後部側に導いてからその後に排気口に向けて進行させるための部材である。流れ規制部材には、燃焼ガスを前記したような経路とは異なる経路で排気口側に導くための貫通孔状の通気口も設けられている。
このような構成によれば、ケース内の後部側を迂回してから排気口に進行する燃焼ガス流量と、通気口を介して排気口側に進行する燃焼ガス流量とのバランスをとることにより、排気音低減効果が得られ、また熱交換器の上流に設置されているバーナの振動燃焼抑制効果を得ることが可能である。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善の余地があ。った。
【0004】
第1に、熱交換器として、潜熱回収用の熱交換器が用いられた場合には、排気集合筒内において燃焼ガス中に残存する水蒸気が凝縮し、排気集合筒内にドレン水(凝縮水)が発生し易い。また、排気口から排気集合筒内に雨水が吹き込む場合もある。これに対し、従来においては、流れ規制部材に通気口が設けられているものの、この通気口は、ドレン水や雨水を流れ規制部材の下方に円滑に流れ落とす構造ではない。その結果、流れ規制部材上に溜まったドレン水や雨水が、燃焼ガスにより煽られて排気口から外部に吹き出し、排気口の下方近辺などがドレン水や雨水によって汚染される虞がある。ドレン水は、強酸性であるために、そのような事態は極力回避することが望まれる。
第2に、給湯装置などの温水装置については、運転時の静寂性が求められる。このため、排気集合筒としては、排気音をできる限り小さくし得るように構成されることが望ましい。従来の排気集合筒においては、このような観点からも未だ改善すべき余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4398899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、構造の複雑化や製造コストの上昇などの不具合をできる限り生じないようにしつつ、ドレン水や雨水の廃棄処理を適切に行なうことができ、しかも排気音低減機能をも高めることが可能な排気集合筒を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供される排気集合筒は、潜熱回収用の熱交換器を通過してきた加熱用気
体が流入する空間部を内部に形成し、かつ前壁部に前記加熱用気体の排気口が設けられているケースと、このケース内の前部からその後方に向けて延びる整流板部を有し、かつ前記熱交換器を通過してきた加熱用気体を前記ケース内の後部側に導いてから前記排気口に向けて進行させることが可能な加熱用気体の流れ規制部材と、前記熱交換器を通過してきた加熱用気体の一部を、前記ケース内の後部側に導くことなく前記排気口側に導くことが可能な通気部と、を備えている、排気集合筒であって、前記通気部としては、前記流れ規制部材上に発生したドレン水または前記排気口から前記流れ規制部材上に吹き込んだ雨水などの液体を前記熱交換器内に導くことが可能とされたフロント通気部を備えており、このフロント通気部は、前記流れ規制部材と前記ケースの前壁部とによって形成されていることを特徴としている。
本発明において、前記フロント通気部を前記加熱用気体または前記液体が通過する際には、これらが前記ケースの前壁部に沿って流れることが可能な構成とされる。
【0009】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
第1に、流れ規制部材上にドレン水が発生し、あるいは排気口から流れ規制部材上に雨水が吹き込んだような場合には、これらの液体をフロント通気部に通過させて熱交換器内へ導くことができる。フロント通気部は、流れ規制部材とケースの前壁部とによって形成されているために、液体がフロント通気部の形成箇所に到達した際には、ケースの前壁部を伝って下方に流れ易くなる作用が得られる。この作用は、フロント通気部を比較的小サイズに形成した場合であっても、このフロント通気部に水膜を生じ難くする効果をもたらし、水膜の発生に起因して前記液体の排出が困難になるといったことが防止される。したがって、流れ規制部材上に多くのドレン水や雨水が滞留することを回避することができる。その結果、流れ規制部材上に滞留したドレン水や雨水が加熱用気体により煽られて排気口から外部に吹き出す不具合は、好適に防止される。
なお、フロント通気部を通過したドレン水や雨水は、熱交換器内に導かれるが、この熱交換器は、潜熱回収用であるため、ドレン水や雨水に起因してとくに不具合を生じることはない。熱交換器内に導かれたドレン水や雨水は、熱交換器において発生したドレン水と一緒に適切に廃棄処理することが可能である。
第2に、加熱用気体が熱交換器側からフロント通気部を通過する際には、この加熱用気体はケースの前壁部に沿って流れる作用を生じる。加熱用気体が、このようにケースの前壁部に沿って流れると、加熱用気体流れの乱流抑制効果が得られ、排気音を低減することが可能となる。したがって、本発明によれば、部品点数の増加や製造コストの上昇などを抑制しつつ、排気音低減機能を高めることが可能である。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記流れ規制部材の前部には、上下高さ方向に起立し、かつ前記ケースの前壁部に当接する起立板部が屈曲して連設されているとともに、この起立板部と前記流れ規制部材の前部の双方に跨がった孔部が設けられ、この孔部が、前記フロント通気部である。
【0011】
このような構成によれば、本発明が意図するフロント通気部を簡易な手段により設けることができる。フロント通気部は、流れ規制部材の前部と、この前部に屈曲して連設された起立板部との双方に跨がって設けられた孔部とされているために、このフロント通気部に水膜をより生じ難くすることが可能である。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記流れ規制部材の前部および前記ケースの前壁部の少なくとも一方には、これらが対向する方向に凹状または凸状をなす凹状部または凸状部が設けられていることにより、前記流れ規制部材の前部および前記ケースの前壁部の相互間には隙間が形成されており、この隙間が、前記フロント通気部である。
【0013】
このような構成によれば、本発明が意図するフロント通気部を、やはり簡易な手段によ
って設けることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、前記フロント通気部は、前記流れ規制部材の左右横幅方向において前記排気口とオーバラップする位置を避けて設けられている。
【0015】
このような構成によれば、排気集合筒内において排気口に向かう加熱用気体流れに対し、フロント通気部を上向きに通過した加熱用気体流れが直接衝突しないようにすることができる。前記した2つの加熱用気体流れが直接衝突すると、排気口近辺に乱流が生じ、排気音が大きくなる虞があるが、前記した構成によれば、そのような虞をなくす効果が期待できる。
【0016】
本発明において、好ましくは、前記ケースは、前記流れ規制部材よりも下方に延設され、かつ前記ケース内の下部には、伝熱管が収容されていることにより、前記熱交換器が構成されている。
【0017】
このような構成によれば、排気集合筒と熱交換器との両者によってケースの共有化が図られ、これら全体の小サイズ化や製造コストの低減化を図ることができる。また、ドレン水や雨水を、フロント通気部を介して流れ規制部材の下方に流れさせるだけで熱交換器内に簡単に導くことが可能となり、構造の簡素化を図る上でもより好ましいものとなる。
【0018】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る排気集合筒の一例を示す斜視図である。
図2図1に示す排気集合筒の分解斜視図である。
図3図1のIII−III平面断面図である。
図4図3のIV−IV側面断面図である。
図5図1のV−V要部平面断面図である。
図6図1に示す排気集合筒のフロント通気部の形成箇所の要部分解斜視図である。
図7】(a)〜(c)は、図1に示す排気集合筒に具備された流れ規制部材の具体的構造の例を示す要部側面断面図である。
図8】本発明の他の例を示す要部平面断面図である。
図9】(a)は、本発明の他の例を示す要部平面断面図であり、(b)は、その要部分解斜視図である。
図10】本発明の他の例を示す要部分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0021】
図1および図2に示す本実施形態の排気集合筒Eは、たとえば潜熱回収型のガス給湯装置の構成要素として用いられるものであり、潜熱回収用の熱交換器2と1つのケース1を共用して構成されている。ケース1の下部側は、複数の伝熱管20を備えた熱交換器2であり、ケース1の上部側が排気集合筒Eとなっている。
ガス給湯装置のバーナ(図示略)によって発生される燃焼ガスから熱交換器2を利用して潜熱を回収すると、強酸性のドレン水が発生するため、ケース1、伝熱管20、および流れ規制部材4など、ドレン水と接触する可能性がある部材は、たとえばステンレス製とされている。ただし、それらの部材の具体的な材質はこれに限定されない。
【0022】
ケース1は、ケース本体部10と、左右一対の側板11(11A,11B)とを組み合わせて構成されている。ケース本体部10は、たとえば1枚のステンレス板にプレス加工を施すことによって全体の概略形状を矩形筒状に形成したものであり、その底壁部10aには、給気口18が設けられている。この給気口18には、バーナによって発生された燃焼ガスがファンの送風圧によって供給されてくるが、この燃焼ガスは、別途設けられている顕熱回収用の熱交換器を通過した後の燃焼ガスである。ケース本体部10の前壁部10bの上部には、排気口19が設けられている。側板11A,11Bは、ケース本体部10の左右両端部に形成されている一対の開口部10cを閉塞するためのものであり、開口部10cに対応した略矩形状のステンレス板の外周にフランジ部11aが形成された構成を有し、ケース本体部10の両端部に嵌合して接合されている。
【0023】
図3および図4に示すように、熱交換器2を構成する複数の伝熱管20は、たとえば平面視略矩形または略長円の螺旋状管体部20aを有するものであって、これら複数の螺旋状管体部20aのそれぞれのサイズは相違し、かつこれらが略同心の重ね巻き状に配された構成である。各螺旋状管体部20aの両端に繋がった延設管体部21a,21bは、側板11Aを貫通しており、入水用および出湯用のヘッダ9a,9bが取付けられている。給気口18からケース1内に流入した燃焼ガスは、複数の伝熱管20の相互間の隙間などを通過し、この過程において燃焼ガスから潜熱回収がなされる。ケース1の底壁部10aには、潜熱回収に伴って発生するドレン水を外部に排出するための排水口29が設けられている。
【0024】
図4に示すように、排気集合筒Eは、流れ規制部材4の後述する通気用開口部40を通過した燃焼ガスを排気口19に導くことが可能な空間部3(流路)が、ケース1内の上部に設けられた構成を有している。空間部3の上側や後部側には、排気音低減手段として、吸音材30a,30bが配設されている。吸音材30a,30bは、たとえばグラスウール、あるいはロックウールなどである。
【0025】
流れ規制部材4は、平板状のステンレス板にプレス加工を施すなどして形成されており、熱交換器2の上側に位置し、空間部3と熱交換器2との間を仕切るように設けられている。ただし、この流れ規制部材4には、熱交換器2の前部側に進行した燃焼ガスを空間部3に進行させるための通気用開口部40、整流板部41、および複数のフロント通気部5が設けられている。整流板部41は、ケース1内の前部からその後方に向けて延びていることにより、通気用開口部40を通過した燃焼ガスを空間部3の後部領域に導く役割を果たす。図4においては、整流板部41が流れ規制部材4の他の部分と一体に設けられた状態に示されているが、これらを別体で構成することも可能である。
【0026】
流れ規制部材4の前部42には、下向きの起立板部43が屈曲状態に連設され、かつこの起立板部43は、ケース1の前壁部10bに対して対面接触した状態に接合されている。この接合手段としては、たとえばスポット溶接が用いられている。流れ規制部材4の前部42は、排気口19よりも低い高さである。
【0027】
フロント通気部5は、図6に示すように、流れ規制部材4の起立板部43と非起立状の前部42との双方に跨がって設けられた非円形状の孔部である。このフロント通気部5の形成手法としては、たとえば流れ規制部材4に起立板部43を屈曲形成する前に、流れ規制部材4に円形状などの孔部を設けておき、かつその後に前記孔部を通過する位置に沿って流れ規制部材4を屈曲させて起立板部43を形成する手段を採用すればよい。起立板部43がケース1の前壁部10bに対面接触した組み付け状態においては、フロント通気部5の前側部分がケース1の前壁部10bによって規定された構成、すなわち、フロント通気部5は、流れ規制部材4とケース1の前壁部10bとによって形成された構成となっている。図5に示すように、複数のフロント通気部5は、流れ規制部材4の左右幅方向に適
当な間隔で並んで設けられている。
【0028】
流れ規制部材4の整流板部41が他の部分(本体部4A)と別体で構成されている場合には、たとえば図7に示すような構成とすることができる。同図(a)においては、整流板部41および本体部4Aの双方に起立板部43が設けられ、かつこの起立板部43にフロント通気部5が設けられている。同図(b)においては、本体部4Aのみに起立板部43およびフロント通気部5が設けられている。同図(c)においては、整流板部41のみに起立板部43およびフロント通気部5が設けられている。本発明においては、これらのいずれの構成を採用してもよく、さらにはこれら以外の構成を採用することもできる。
【0029】
次に、前記した排気集合筒Eの作用について説明する。
【0030】
まず、図4において、空間部3に流入する燃焼ガス中には未だ比較的多くの水蒸気が含まれている場合が多く、流れ規制部材4の整流板部41上や、この整流板部41よりも排気口19寄り領域の上にドレン水が発生する場合がある。また、そのような領域上に雨水が排気口19を介して吹き込む場合もある。このような事態が発生した場合、それらの液体は、フロント通気部5を通過して流れ規制部材4の下方に流れ、熱交換器2内に導かれる。熱交換器2内に導かれた液体は、この熱交換器2において発生したドレン水と同様に、ドレン水用の排水口29からケース1の外部に排出され、たとえば中和処理されてから廃棄される。整流板部41は、前下がり状とされているために、流れ規制部材4上のドレン水や雨水をフロント通気部5に向けて円滑に流れさせることが可能である。
【0031】
フロント通気部5は、既述したように、その前側部分がケース1の前壁部10bによって規定されている。このため、ドレン水や雨水は、フロント通気部5に到達した際に、ケース1の前壁部10bを伝って下方に流れ易くなる。フロント通気部5が非円形状であることもそのような作用を促進する。本実施形態とは異なり、フロント通気部を、たとえば小サイズの円形穴とした場合には、ドレン水などがフロント通気部に到達した際に水膜を生じ、下方への排水が困難となり易い。これに対し、本実施形態の構成によれば、フロント通気部5を比較的小サイズに形成した場合であっても、フロント通気部5に水膜を生じ難くし、流れ規制部材4の下方への排水を円滑に行なわせることが可能である。
【0032】
前記した作用に基づき、流れ規制部材4上に多くのドレン水や雨水が滞留することは回避される。したがって、流れ規制部材4上に滞留したドレン水や雨水が燃焼ガスによって煽られて排気口19から外部に吹き出すことは適切に抑制される。
【0033】
フロント通気部5の前側部分は、既述したように、ケース1の前壁部10bによって規定されているために、このフロント通気部5をその下方から上向きに燃焼ガスが流れる際には、この燃焼ガスは、ケース1の前壁部10bに沿って流れることとなる。燃焼ガスがこのように前壁部10bに沿って流れる作用は、フロント通気部5の内部のみならず、その下方領域においても生じる。燃焼ガスが前記したようにケース1の前壁部10bに沿って流れると、燃焼ガス流れの乱流抑制効果が得られる。したがって、排気音をより低減することも可能となる。
【0034】
本実施形態においては、1つのケース1が熱交換器2および排気集合筒Eの構成部材として共用されているために、これら全体の部品点数の少数化や組立作業の工程数の減少を図り、全体の製造コストを低減することが可能である。全体の小型化も促進することができる。排気集合筒E内に生じたドレン水や雨水は、ドレン水用の排水口29を元々備えた潜熱回収用の熱交換器2を利用して処理されているために、その構成は合理的である。
【0035】
図8図10は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図において、前記実施
形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付している。
【0036】
図8に示す実施形態では、複数のフロント通気部5が、流れ規制部材4の左右横幅方向において排気口19とオーバラップする位置(符号A1で示す範囲)を避けた状態に設けられている。
本実施形態によれば、前記の範囲A1において排気口19に向かう燃焼ガス流れに対し、フロント通気部5を上向き(同図紙面の手前側)に通過した燃焼ガス流れが直接衝突しないようにすることができる。前記した2つの燃焼ガス流れが直接衝突した場合には、排気口19の近辺において大きな乱流を生じ、排気音が大きくなる虞があるものの、本実施形態によれば、そのような虞を回避し得ることとなる。
【0037】
図9に示す実施形態においては、流れ規制部材4の前部42に起立板部43が連設されているが、この起立板部43には、複数の凸状部44が設けられている。これら凸状部44がケース1の前壁部10bに対面接触している結果、流れ規制部材4の前部42とケース1の前壁部10bとの間に、フロント通気部5Aが形成されている。流れ規制部材4の左右幅方向において、複数の凸状部44の相互間領域が、フロント通気部5Aである。
このフロント通気部5Aも、先のフロント通気部5と同様に、流れ規制部材4とケース1の前壁部10bとによって形成されており、しかも非円形状である。したがって、前記実施形態の場合と同様に、フロント通気部5Aにドレン水や雨水の水膜を生じ難くし、それらドレン水や雨水を前壁部10bに伝わせて流れ規制部材4の下方へ円滑に流れさせることが可能である。また、フロント通気部5Aを上向きに通過する燃焼ガスが、ケース1の前壁部10bに沿って流れることによって、排気音が低減する効果も得られる。
図9においては、流れ規制部材4に凸状部44を設けたが、これに代えて、または加えて、流れ規制部材4の前部に凹状部を設ける手段を採用することもできる。このような手段によっても、本発明が意図するフロント通気部を形成することが可能である。
【0038】
図10に示す実施形態においては、ケース1の前壁部10bに凹状部16または凸状部が形成されている。このような前壁部10bに対して、流れ規制部材4の起立板部43を対向接触させることにより、前壁部10bと起立板部43との間に図9のフロント通気部5Aと同様な構成のフロント通気部を形成することが可能である。なお、図示説明は省略するが、ケース1の前壁部10bと、流れ規制部材4の起立板部43との双方に凹状部または凸状部を形成し、これらの間にフロント通気部を形成してもよい。
上述した実施形態から理解されるように、本発明でいうフロント通気部は、流れ規制部材に孔部を形成することにより設けられた構成、あるいは流れ規制部材やケースの前壁部に凹状部や凸状部を形成することにより設けられた構成のいずれであってもよい。勿論、これら以外の手段によって設けられていてもよい。
【0039】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る排気集合筒の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0040】
フロント通気部の具体的な数、配置、形状などはとくに限定されるものではない。上述の実施形態では、起立板部が流れ規制部材の前部から下向きに屈曲させた状態に設けられているが、これとは異なり、起立板部を上向きに屈曲させた構成とすることもできる。また、流れ規制部材の前部に起立板部を設けることなく、たとえば流れ規制部材の前縁部に切欠き凹部を設けるなどして、フロント通気部を形成することもできる。上述の実施形態においては、熱交換器を通過してきた加熱用気体の一部を、排気集合筒のケース内の後部側に導くことなく排気口側に導くための通気部として、フロント通気部のみが設けられており、フロント通気部以外の通気部が設けられていないが、フロント通気部以外の通気部が別途設けられた構成とすることもできる。
【0041】
排気集合筒のケースは、熱交換器のケースと共用されていなくてもよく、排気集合筒のケースと熱交換器のケースとが別々に構成されていてもよい。本発明に係る排気集合筒は、給湯装置用に好適であるが、用途はこれに限定されない。本発明でいう加熱用気体は、バーナを用いて発生された燃焼ガスに限らない。たとえば、コージェネレーションシステムの発電部などから排出される高温の排ガスも、加熱用気体に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
E 排気集合筒
1 ケース
2 熱交換器
4 流れ規制部材
5,5A フロント通気部
10b 前壁部(ケースの)
19 排気口
20 伝熱管
41 整流板部(流れ規制部材の)
42 前部(流れ規制部材の)
43 起立板部(流れ規制部材の)
図1
図2
図3
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図8
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図10