(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241742
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】室内暖気流通型貯湯タンク内凍結防止システム
(51)【国際特許分類】
F24H 1/18 20060101AFI20171127BHJP
F24H 1/00 20060101ALI20171127BHJP
F24H 9/02 20060101ALN20171127BHJP
【FI】
F24H1/18 A
F24H1/00 621D
!F24H9/02 301A
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-60772(P2014-60772)
(22)【出願日】2014年3月4日
(65)【公開番号】特開2015-169427(P2015-169427A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】596101185
【氏名又は名称】株式会社朝日住設
(72)【発明者】
【氏名】桜庭 清治
【審査官】
渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−071444(JP,A)
【文献】
特開平08−014665(JP,A)
【文献】
特開2011−169515(JP,A)
【文献】
特開昭60−060455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/18
F24H 1/00
F24H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外に設置される断熱構造の中空体によるケーシングを設け、該ケーシング内に、ケーシング内面より距離を有して貯湯タンクを位置させてこの間隙による暖気通路を形成し、建物室内暖気を電動ファンにてケーシング内暖気通路上部に導く手段と、該暖気通路通過後の暖気を、ケーシング下部に連通接続された暖気排出管を用いてケーシング外の建物床下に排出する手段を設けるとともに、貯湯タンクへの給水手段および貯湯の排出供給手段とを有し、該給水手段および貯湯の排出供給手段に用いる管体の一部は前記暖気排出管内に位置するとともに暖気排出管内を通過した該管体他部は前記建物床下空間に位置するものとし、貯湯タンク内下部に外部熱源からの熱と貯湯タンク内貯湯との熱交換手段とを有することを特徴とする室内暖気流通型貯湯タンク内凍結防止システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物室内暖気の流通にて貯湯タンク内の凍結を防止するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、貯湯タンク内の凍結防止のために、通電発熱利用やヒートポンプ方式などが利用されているが、本発明にて示すような建物室内暖気を利用したものは見あたらない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以前より、太陽熱を利用して温水を作る装置・システムが利用されてきた。これは建物の屋根上に太陽光受光面を有する集熱パネルを設置し、このパネル内に液体を循環させて、これにより加温された循環液の熱をタンク内に導き、タンク内の貯水と熱交換を行って、この水を湯に変えて生活用水として利用するものである。
しかしこれは天候に左右され、雨天時や夜間時は太陽熱利用効率は低下するため、ボイラー等の加温装置を併用して、この熱量不足を補う方法もとられている。とりわけ、冬季降雪時期では、この加温熱量も増加してくる。一般住宅での利用においては、ボイラーの屋内設置にて貯湯タンク設置スペースがなく、そのため屋外に貯湯タンクを設置することが多くなる。しかし問題なのは冬季寒冷時期での利用である。
すなわち、寒冷地では冬季屋外はマイナス温度になるのが常態であるために、タンク内の凍結を防止しなければならない。そのために電気ヒーター等を用いることになり、ランニングコストの増加を招く結果となっている。
本発明は以上に鑑み、室内暖房および日射による暖気を貯湯タンク近傍に流通させることにて該タンク内の加温を行い、これにてタンク内凍結を防止する新規かつ有用なる手段を提供することを目的として発明されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
課題を解決する手段として本発明は以下の構成とした。
すなわち、屋外に設置される断熱構造の中空体によるケーシングを設け、該ケーシング内に、ケーシング内面より距離を有して貯湯タンクを位置させてこの間隙による暖気通路を形成し、建物室内暖気をケーシング内暖気通路に導く手段と、該暖気通路通過後の暖気をケーシング外に排出する手段とを設けるとともに、貯湯タンクへの給水手段および貯湯の排出供給手段とを有し、太陽熱にて加温された液と貯湯タンク内貯湯との熱交換手段とを有するものとする。本発明は以上の構成よりなる室内暖気流通型貯湯タンク内凍結防止システムである。
【発明の効果】
【0005】
本発明は下記の効果を有する。
1.断熱構造体内に、該断熱構造体内面と距離を有して貯湯タンクを設けて、この間隙内に室内暖気を流通させる方式としたので、貯湯タンク内の温度低下を阻止して、タンク 内凍結を防止することができる。
2.給水管および取湯管は、暖気通路内に位置するので、この双方の管への加温効果が得られる。
3.各配管に可撓性管体を用いることにて、冬季凍結によるケーシング位置変化にも対応することができる。
4.屋外に貯湯タンクをある程度の離隔をもって設置できるので、建物室内を有効スペースとして利用することができる。
5.床下に暖気排出するので、床下水回りの凍結を防止することができる。
6.電熱ヒーターを用いないので、ランニングコストを低くすることができる。
7.構造シンプルにして安価に製造提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図において、1は太陽熱集熱パネルで、市販品による平板状物品であり、建築物の屋根等に所定方向・角度にて設置される。2は循環パイプで、該集熱パネル内に接続されるとともに、その出入り口は該パネルから離れて下降し、後述の貯湯タンク内に導かれる。
この循環パイプ適所には液循環のための循環ポンプ3が設けられる。
4はケーシングで、中空円筒体であってその内面には所定厚さの発泡合成樹脂による断熱材5が貼着される。このケーシング上部は蓋として着脱可能に設けられ、下部は適宜支持部材にて地上に固定される。6は金属製中空円筒体による貯湯タンクで、その外径は前記断熱材内面より少しの距離を持って位置し、また該タンクの上下端も断熱材と少しの距離を持って位置しており、該タンク下端は適宜支持部材にてケーシング内下面に固定される。7は放熱体で、前記循環パイプを平面的に蛇行させた部分であって、貯湯タンク内下方に位置し、この放熱体と前記循環パイプとは通液接続されている。
【0008】
10は建物壁、11は建物床で、これらを介して各部が設けられる。
12は電動のファンで、室内壁上部の通気孔に設けられ、この通気孔に可撓性の暖気供給管13の一端が取り付けられ、他端はケーシングおよび断熱材の上部を貫通して通気状態となっている。14は暖気排出管で、可撓性管体であってその一端は同じくケーシングおよび断熱材を貫通して位置し、他端は建物壁を貫通して床下に開放されている。
従って、室内の暖気は暖気供給管より貯湯タンク外面と断熱材内面との間に形成される暖気通路15を下降して貯湯タンクを加温し、暖気排出管より床下に放出される。
16は可撓性の給水管で、水道水供給のためのものである。この給水管は地中より立ち上がり、継手を介して暖気排出管内を通って貯湯タンク壁を貫通して通水接続される。
17は給水栓である。18は可撓性の取湯管で、その一端は暖気排出管内を通り、暖気通路内を上昇して貯湯タンク上端を貫通通水しており、他端は建物床上に設置されるボイラー19(市販流通品)に入る。20はその一端がボイラーに入っている給湯管で、その他端は給湯使用場所に導かれる。21はボイラーの排気筒であり、建物壁外に導かれる。
以上が本発明の一実施形態である。
【0009】
次に、本発明の使用について説明する。
本発明の使用に際しては、まず給水栓を開いて、給水管を介して貯湯タンク内に給水し、該タンク内を水で満たす。また、ボイラーを運転状態とする。このボイラーには電磁バルブおよびサーモスタットが装備されており、適正な供給湯温が保たれる。
建物室内壁上部にあるファンを回して室内暖気を暖気供給管を介してケーシング内に送り込み、この暖気は暖気通路内を下降して暖気排出管より床下に排気されるが、このとき、この暖気と貯湯タンクの間で熱交換が行われる。
貯湯タンクには循環パイプを介して太陽熱集熱パネルが接続されるとともに、該パイプは貯湯タンク内下方に位置する放熱体に接続されている。従って、太陽熱集熱パネルにて加温された循環液は、循環ポンプにて循環パイプと放熱体内を循環し、これにて放熱体から放熱される熱量にて、貯湯タンク内を加温することができる。以上にても必要温度に満たない場合は、ボイラー運転にてさらに加温されて適正温度の湯として用いることができる。
【0010】
太陽熱の効率的な利用は、昼間時における日照時であって、雨天時や夜間時は利用効率が下がり、もしくは利用できなくなる。本発明はケーシング内に断熱材を用い、その内方に貯湯タンクを位置させて、外気温低下の影響を緩和する方法を用いているが、さらに暖気を用いて保温を行っている。既述のこの方式にて、貯湯タンクは一定温度環境にあるため、タンク内凍結を防止することができる。また、各配管において、可撓性管体を用いており、凍結にてケーシング位置が変化した場合にても対応可能なものとなっている。
なお、既例にて用いるファンは24時間稼働を想定しており、常に暖気がケーシング内に供給される。また、暖気排出は床下としたが、室内へ戻す方式としてもよく、例えば感熱センサーと切替弁を併用して、排出暖気が適温のときは室内へ戻し、非適温のときは床下排気となるよう構成してもよい。
なお、本発明稼働時は給水栓は常時開状態を保ち、その水圧にて貯湯タンク上端より取湯管を介してボイラーに湯が供給される。放熱体により加温された水は比重変化にてタンク内上方への対流が起こり、また暖気供給による熱交換にてこの湯の温度下降を防いでボイラーに湯が行き、必要に応じてボイラー運転にてさらに加温され、必要場所に湯が供給されるシステムである。
【0011】
以上、本発明について記したが、本発明は断熱構造内の貯湯タンクを室内暖気供給にて一定温度環境を保って、冬季寒冷時における貯湯タンク内凍結を防止するものである。
従来は、ヒートポンプシステムや電気温水器においては蓄熱槽本体からの自己発熱による放熱量が大きいために、室内連結給水設備などの凍結を、その放熱にて防ぐことが可能であった。しかし、太陽熱給湯システムについて、冬季に日照不足が続いたときは、その蓄熱槽からの発熱が少ないために、凍結予防効果がなく、この凍結を防ぐために電熱その他による発熱手段が必要であった。また、安価な基礎として多用されている束石施工では、貯湯タンクの重量による地盤沈下および寒冷地の凍上などによる地盤上下動などの欠点があり、硬質な連絡ダクトパイプは壁等の破損の原因となっている。これらに対応するために、既述の加温手段および可撓性管体を用いるものとしたのである。近年、太陽光利用が進展してきているが、その多くは太陽光発電である。
しかし、エネルギー変換効率では太陽光発電は約15パーセントほどでしかない。
これに対し、太陽光集熱方式は60パーセントもの変換効率を有しており、その有効利用が望まれるが、寒冷地では凍結等の課題を有しており、本発明にてこれら諸問題の有効なる解決が得られるものとなり、省エネルギー政策面からも有効なる手段を提供するものである。
【符号の説明】
【0012】
1 太陽熱集熱パネル
2 循環パイプ
3 循環ポンプ
4 ケーシング
5 断熱材
6 貯湯タンク
7 放熱体
10 建物壁
11 建物床
12 ファン
13 暖気供給管
14 暖気排出管
15 暖気通路
16 給水管
17 給水栓
18 取湯管
19 ボイラー
20 給湯管
21 排気筒