特許第6241746号(P6241746)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241746
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】エスカレータ
(51)【国際特許分類】
   B66B 29/00 20060101AFI20171127BHJP
   B66B 29/04 20060101ALI20171127BHJP
   G01S 17/88 20060101ALI20171127BHJP
   G01V 8/20 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   B66B29/00 Z
   B66B29/04 J
   G01S17/88
   G01V9/04 P
【請求項の数】4
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-149637(P2014-149637)
(22)【出願日】2014年7月23日
(65)【公開番号】特開2016-23060(P2016-23060A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2016年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094248
【弁理士】
【氏名又は名称】楠本 高義
(74)【代理人】
【識別番号】100185454
【弁理士】
【氏名又は名称】三雲 悟志
(74)【代理人】
【識別番号】100129207
【弁理士】
【氏名又は名称】中越 貴宣
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100176016
【弁理士】
【氏名又は名称】森 優
(72)【発明者】
【氏名】田原 健剛
【審査官】 有賀 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−116535(JP,A)
【文献】 特開2010−064821(JP,A)
【文献】 特開2014−028667(JP,A)
【文献】 特開平01−092193(JP,A)
【文献】 特開2011−195288(JP,A)
【文献】 特開2012−041175(JP,A)
【文献】 特開2007−205796(JP,A)
【文献】 米国特許第06006889(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00─31/02
G01V 8/20
G01S 17/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結されて循環走行する複数の踏段と、
前記複数の踏段の走行路に沿って立設された欄干の上部に、上下の両端部領域では水平に移動するように、前記両端部領域の間では斜行するように案内され、前記踏段の走行と同期して移動する移動手摺と、
を有するエスカレータであって、
前記移動手摺が斜行する領域の一方端部の前記走行路とは反対側の近傍に、前記斜行する領域における当該移動手摺の移動方向に沿った方向に検出領域を有するように取り付けられた単一の3次元距離センサを含み、前記移動手摺から、前記踏段が存する側とは反対側である外側にはみ出した被検出体の、当該移動手摺の移動方向と直交する水平方向におけるはみ出しの程度を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出されたはみ出しの程度から危険度を判定する判定手段と、
前記判定手段により判定された危険度に応じて異なる安全動作を起動する起動手段と、
を含む安全装置を備えることを特徴とするエスカレータ。
【請求項2】
前記検出手段は、さらに、前記移動手摺から前記外側へはみ出した被検出体の進行方向前方に存する障害物までの当該被検出体の接近の程度を検出し、
前記判定手段は、前記はみ出しの程度と前記接近の程度の両方から危険度を判定することを特徴とする請求項1に記載のエスカレータ。
【請求項3】
記検出手段は、前記移動手摺の斜行する領域における移動方向をY軸、前記Y軸と直交する水平方向をX軸、前記Y軸および前記X軸の両方と直交するZ軸で規定されるX・Y・Z直交座標空間に進入した前記被検出体を、前記はみ出しの程度を指標するX座標値、前記接近の程度を指標するY座標値、および、前記移動手摺との相対的な高さを指標するZ座標値として検出する距離センサを含み、
前記判定手段は、
X座標値とY座標値から、前記はみ出しの程度が高く前記接近の程度が高いほど、危険度が高いと判定することを特徴とする請求項2に記載のエスカレータ。
【請求項4】
前記検出領域は、前記移動手摺の斜行する領域における移動方向をY軸、前記Y軸と水平方向に直交し前記移動手摺から遠ざかる向きに延びる軸をX軸、前記Y軸および前記X軸の両方と直交し、上方に延びる軸をZ軸とするX・Y・Z直交座標空間であって、
前記距離センサは、前記X・Y・Z直交座標空間に進入した被検出体を、前記はみ出しの程度を指標するX座標値として検出することを特徴とする請求項1に記載のエスカレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータに関し、特に、乗客の身体の一部等が移動手摺から外方へはみ出した場合に、そのはみ出した状態を解消等させることで事故を未然に防止するための安全装置を備えたエスカレータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、建築物のある階(以下、「階下」と言う。)と当該階下よりも上の階(以下、「階上」と言う。)との間にエスカレータが設置される場合において、エスカレータと立体交差する階下の天井等が移動手摺の外縁から水平距離で50cm以下と近接しているときには、前記天井等が移動手摺と交差する近傍部分(以下、「交差部」と言う。)に保護板を設けなければならない旨、建築基準法に規定されている。
【0003】
保護板を設置することにより、階下から階上へとエスカレータによって運ばれる乗客の例えば腕が移動手摺から外方へはみ出していたとしても、天井に至る手前で腕が保護板に接触することにより、乗客に注意を喚起し、当該腕が移動手摺と天井との間に挟みこまれてしまうといった事故が未然に防止される。
【0004】
特許文献1には、さらに、移動手摺からはみ出した身体の一部が保護板に接近したことを検出して、乗客に警報を発する安全装置が開示されている。
【0005】
特許文献1の安全装置は、検出部を備えており、『前記検出部は、検出ビームを放出し、前記検出ビームが照射された前記遮蔽体(身体の一部等)からの反射ビームを検出して前記遮蔽体までの距離を計測する距離計測手段と、前記距離が所定値以下であると前記遮蔽体を検出したと判断する判断手段』(特許文献1の請求項1等、下線部は本願の出願人が追記)を有していて、判断手段が遮蔽体(身体の一部等)を検出したと判断すると、身体の一部等が保護板に接近したとみなして、警報を発する構成となっている。
【0006】
特許文献1の安全装置の上記構成によれば、保護板に接触する手前で、保護板(交差部)に接近していることを乗客に知らしめることができるため、乗客が移動手摺と天井との間に挟みこまれるといった事故を未然に防止するといった点において、さらに安全性が向上すると思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4848840号公報
【特許文献2】特開2000−34087号公報
【特許文献3】特開2000−34088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、エスカレータにおいては、移動手摺と天井等との間に挟みこまれる事故のみならず、乗客の不注意で移動手摺から身を乗り出し、そのまま転落するといった事故が発生する可能性も皆無ではない。
【0009】
しかしながら、身を乗り出した位置が例えば上下方向における中央であって、保護板からは未だ遠い場合、特許文献1の安全装置では、警報が発せられないため、転落の虞がある程に身を乗り出した乗客に注意を喚起することができない。
【0010】
これに対処するため、特許文献1の安全装置において、検出範囲をさらに下方へ拡げることが考えられるが、そうすると、エスカレータの上下方向における中央またはその付近で、少し腕をはみ出させただけで転落の可能性が低い場合であっても、同様の警報が発せられることとなり、乗客に不快な思いをさせてしまう事態が生じ得る。
【0011】
本発明は、上記した課題に鑑み、転落の可能性の程度等に応じて、警告などの安全動作を起動することができる安全装置を備えたエスカレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明に係るエスカレータは、無端状に連結されて循環走行する複数の踏段と、前記複数の踏段の走行路に沿って立設された欄干の上部に、上下の両端部領域では水平に移動するように、前記両端部領域の間では斜行するように案内され、前記踏段の走行と同期して移動する移動手摺と、を有するエスカレータであって、前記移動手摺が斜行する領域の一方端部の前記走行路とは反対側の近傍に、前記斜行する領域における当該移動手摺の移動方向に沿った方向に検出領域を有するように取り付けられた単一の3次元距離センサを含み、前記移動手摺から、前記踏段が存する側とは反対側である外側にはみ出した被検出体の、当該移動手摺の移動方向と直交する水平方向におけるはみ出しの程度を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出されたはみ出しの程度から危険度を判定する判定手段と、前記判定手段により判定された危険度に応じて異なる安全動作を起動する起動手段と、を含む安全装置を備えることを特徴とする。
【0013】
また、前記検出手段は、さらに、前記移動手摺から前記外側へはみ出した被検出体の進行方向前方に存する障害物までの当該被検出体の接近の程度を検出し、前記判定手段は、前記はみ出しの程度と前記接近の程度の両方から危険度を判定することを特徴とする。
【0014】
この場合に、前記検出手段は、前記移動手摺の斜行する領域における移動方向をY軸、前記Y軸と直交する水平方向をX軸、前記Y軸および前記X軸の両方と直交するZ軸で規定されるX・Y・Z直交座標空間に進入した前記被検出体を、前記はみ出しの程度を指標するX座標値、前記接近の程度を指標するY座標値、および、前記移動手摺との相対的な高さを指標するZ座標値として検出する距離センサを含み、前記判定手段は、X座標値とY座標値から、前記はみ出しの程度が高く前記接近の程度が高いほど、危険度が高いと判定することを特徴とする。
【0015】
あるいは、前記検出領域は、前記移動手摺の斜行する領域における移動方向をY軸、前記Y軸と水平方向に直交し前記移動手摺から遠ざかる向きに延びる軸をX軸、前記Y軸および前記X軸の両方と直交し、上方に延びる軸をZ軸とするX・Y・Z直交座標空間であって、前記距離センサは、前記X・Y・Z直交座標空間に進入した被検出体を、前記はみ出しの程度を指標するX座標値として検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記の構成からなるエスカレータによれば、移動手摺から踏段が存する側とは反対側である外側にはみ出した被検出体の、前記移動手摺の移動方向と直交する水平方向におけるはみ出しの程度が検出され、検出されたはみ出しの程度から危険度が判定されて、判定された危険度、換言すれば転落の可能性の程度等に応じた安全動作が起動される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)は実施形態1に係るエスカレータの正面図であり、(b)は同平面図であり、(c)は同側面図である。
図2】平面視において、複数の光電センサの配列を示す図である。
図3】制御部を含む安全装置の構成を示すブロック図である。
図4】上記制御部のCPUで実行される安全動作起動プログラムに係るメインルーチンのフローチャートを示す図である。
図5】上記メインルーチンにおける、警告指示処理に係るサブルーチンのフローチャートを示す図である。
図6】上記メインルーチンにおける、警告及び減速又は停止指示処理に係るサブルーチンのフローチャートを示す図である。
図7】実施形態2に係るエスカレータの斜視図である。
図8】実施形態2における3次元距離センサの検出領域を説明するための図である。
図9】実施形態2における、制御部を含む安全装置の構成を示すブロック図である。
図10】(a)は、実施形態2のROM内の格納領域の一部を示す図であり、(b)は、同RAM内の記憶領域の一部を示す図である。
図11】実施形態2の制御部のCPUで実行される安全動作起動プログラムに係るフローチャートを示す図である。
図12】実施形態2の変形例の安全動作起動プログラムに係るフローチャートの一部を示す図である。
図13】実施形態3において、X・Y・Z直交座標空間で規定される3次元距離センサの検出領域を、Z軸方向から視た図である。
図14】(a)、(b)は、実施形態2のROM内の格納領域の一部を示す図であり、(c)は、同RAM内の記憶領域の一部を示す図である。
図15】実施形態3の安全動作起動プログラムに係るフローチャートの一部を示す図である。
図16】実施形態3の安全動作起動プログラムに係るフローチャートの一部を示す図である。
図17】実施形態3の安全動作起動プログラムに係るフローチャートの一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るエスカレータの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
<実施形態1>
【0019】
図1に示すように、実施形態1に係るエスカレータ2は、無端状に連結されて循環走行する複数の踏段4と、当該複数の踏段4の走行路の両側に当該走行路に沿って立設された欄干6,8のそれぞれの上部に案内され前記踏段4の走行と同期して移動する移動手摺10,12とを有するエスカレータ本体14を備える。欄干6,8は、移動手摺10,12を、図1(a)に示すように、上下の両端部領域では水平方向に移動するように案内し、前記両端部領域の間では斜行するように案内する。
【0020】
無端状に連結された複数の踏段4と移動手摺10,12とは、モータ16を動力源とし、不図示の動力伝達機構を介して駆動される。
【0021】
エスカレータ本体14は、建築物内の階下のフロアDSと階上のフロアUSとの間に架け渡されて設置されている。本例では、エスカレータ本体14は昇り用として用いられ、階下から踏段4に乗った乗客が階上へと運ばれる。
【0022】
踏段4によって運ばれる乗客の進行方向に向かって左側となる移動手摺10とこれに近接して立体交差する階下の天井DCとの水平距離が50cm以下であるため、移動手摺10と交差する天井DC部分(交差部)には、法令で規定された保護板(固定保護板)18が設置されている。
【0023】
また、乗客の身体の一部等が移動手摺10から踏段4が存する側とは反対側である外側にはみ出した場合に、そのはみ出した状態を解消等させることで事故を未然に防止するための安全装置32(図3)が設置されている。
【0024】
安全装置32は、移動手摺10から前記外側にはみ出した乗客、物その他の被検出体の、移動手摺10の移動方向と直交する水平方向におけるはみ出しの程度を非接触で検出する検出手段20を有している。
【0025】
検出手段20は、複数の(本例では、80個の)光電センサ22を含む。光電センサ22は、発光素子24とこれと対向配置される受光素子26とからなる透過型の光電センサである。発光素子24は階下の天井DCに設置され、受光素子26は階下のフロアDSに設置されている。受光素子26の各々は、対応する発光素子24の直下に設置されている。すなわち、光電センサ22の各々は、上下方向(本例では、鉛直方向)に光軸を有し、当該光軸に進入した被検出体を検出するようになっている。ここで、本実施形態では、光軸に被検出体が進入し、発光素子24から出射された光が対応する受光素子26に入射するのが妨げられている状態を光電センサ22が「ON」状態にあるとし、発光素子24から出射された光が対応する受光素子26で受光されている状態を光電センサが「OFF」状態にあるとする。
【0026】
複数の光電センサ22は、図2に示すように、マトリックス状(本例では、16行5列のマトリックス状)に配列されている。ここで、図2において、第n行第m列目にある光電センサ22をS(n,m)として表すこととする。また、n列目のセンサS(1,n),...,S(16,n)群を「第nのセンサ列」(n=1,2,3,4,5)と称し、図2において符合「Ln」で指し示すこととする。
【0027】
各センサ列は、移動手摺10に沿って(平面視で、移動手摺10と平行に)設けられている。隣接するセンサ列間の移動手摺10の長手方向(移動方向)と直交する水平方向(以下、「はみ出し方向」という。)における、光軸を基準とした間隔は、例えば、10cmである。以下、光電センサ22に関し、光電センサ22同士の間隔や光電センサ22の、他の構成要素との距離を示す場合は、光軸を基準としている。移動手摺10に最も近い第1のセンサ列L1のはみ出し方向における移動手摺10からの距離は、例えば、10cmである。したがって、本例において第5のセンサ列L5のはみ出し方向における移動手摺10からの距離は50cmとなる。
【0028】
また、平面視において移動手摺の長手方向(移動方向)と平行な方向(以下、便宜的に移動手摺の「移動方向」という。)における光電センサ22の間隔(行間隔)は、例えば、40cmである(図2図1(b),(c)では、便宜上、光電センサ22が設けられている領域では、縦方向(行方向)を横方向(列方向)に対し4倍の尺度で描いている。)。また、第16行目の光電センサS(16,1)〜S(16,5)の保護板18との間の、移動手摺の移動方向における距離は、例えば、40cmである。
【0029】
複数の光電センサ22が以上のように配列されてなる検出手段20によれば、いずれかの光電センサ22がON状態となれば、踏段4に乗って運ばれる乗客の身体の一部等(被検出体)の移動手摺10からのはみ出しが検出されたこととなる。この場合、移動手摺10から遠いセンサ列を構成する光電センサ22で検出される程、はみ出しの程度は高いと考えられる。例えば、第4のセンサ列L4や第5のセンサ列L5を構成する光電センサ22で検出された場合、乗客は移動手摺10から乗り出しており、エスカレータ本体14から転落するおそれがあると想定される。すなわち、移動手摺10から遠いセンサ列で検出されるほど危険度が高いと考えられる。
【0030】
また、移動手摺10の移動方向において、移動手摺10からはみ出した乗客の身体の一部等の進行方向前方に存する障害物である保護板18に近い光電センサ22で検出されるほど、当該身体の一部等の保護板18までの接近の程度が高いので、前記交差部に挟まれる可能性が高まり、危険度が高いと考えられる。
【0031】
はみ出しの程度と保護板18までの接近の程度の両方を考慮すると、はみ出しの程度が高く、かつ接近の程度が高いほど危険度が高いと考えられる。そこで、本実施形態では、はみ出しの程度と接近の程度の両方の観点から、危険度を、大きくは、大・中・小の3段階に設定し、各々の段階に属する光電センサ22を画定した。
【0032】
図2に示すように、複数の光電センサ22を、一点鎖線で囲んだ三つのグループG1,G2,G3に分けた。第3グループG3に属する光電センサ22で検出された場合、はみ出しの程度と接近の程度の両方が高いため危険度は大である。次に危険度が高いのは第2グループG2(危険度:中)であり、次いで第1グループG1(危険度:小)となる。なお、第1グループG1に属する光電センサ22で検出された場合、接近の程度は低いため、前記交差部に挟まれる危険度は比較的低いものの、第5のセンサ列L5を構成するセンサS(1,5)〜S(7,5)で検出された場合には、はみ出しの程度が最も高いため転落の危険度は高くなる。すなわち、同じ第1グループG1内であっても、第1〜第5のいずれのセンサ列を構成する光電センサ22によって検出されるかによって危険度が異なる。
【0033】
図1に戻り、同図(c)に示すように、階下の天井DCには、スピーカ28が設置されている。スピーカ28は、検出手段20で乗客の身体の一部等(被検出体)が検出された場合に、後述するようなアナウンスを発し、当該乗客に対し移動手摺10からのはみ出しを止めるように促す警告手段を構成する。
【0034】
エスカレータ2は、また、検出手段20の検出結果に応じて、スピーカ28からアナウンスを発せさせたり、モータ16を制御して踏段4の走行速度(運転速度)を落としたり、場合によっては、運転を停止したりする制御を実行する制御部30を有している。制御部30は検出手段20と共に安全装置32(図3)を構成する。
【0035】
図3に示すように、制御部30は、CPU34を中心にして、CPU34にROM36、RAM38、運転制御部40、および警報部42が接続された構成をしている。また、CPU34は、光電センサS(1,1)〜S(16,5)と接続されている。
【0036】
運転制御部40は、CPU34の指示にしたがい、モータ16の回転速度を制御することにより、踏段の走行速度制御、すなわち運転速度制御を行う。
警報部42は、CPU34の指示にしたがい、スピーカ28を介して警報等を発する。
【0037】
ROM36は、CPU34が実行する制御プログラムを格納している。ROM36は、また、光電センサS(1,1)〜S(16,5)の各々が、第1〜第5のいずれのセンサ列L1〜L5に属しているかと、第1〜第3のいずれのグループG1〜G3に属しているかといった情報(以下、「センサ識別情報」と言う。)を記憶している。センサ識別情報(不図示)は、適宜、CPU34に参照される。これにより、CPU34は、ON状態にある光電センサ22の各々が属するセンサ列とグループとを知ることができる。
【0038】
ROM36は、さらに、警報部42により発せられる警告や通知の音声データを格納している。当該警告や通知は、例えば、以下の通りである。
【0039】
〔警告A1〕:「移動手摺からはみ出ると危険です。おやめ下さい。」
〔警告A2〕:「移動手摺から体を乗り出すと大変危険です。おやめ下さい。」
〔警告A3〕:「移動手摺から体を乗り出すのを、すぐにおやめ下さい。」
〔警告B1〕:「移動手摺からの乗り出しを検知しました。速度を落として運転します。」
〔警告B2〕:「移動手摺からの乗り出しを検知しました。緊急停止します。」
〔復旧通知〕:「減速運転を止め、通常速度に戻します。」
RAM38は、CPU34によるプログラム実行中のワークエリアとなる。
【0040】
次に、CPU34が実行する安全動作起動プラグラムについて、図4図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0041】
図4に示すフローチャートに係るプログラムは、エスカレータ本体14の運転が開始されると起動される。
【0042】
CPU34は、検出手段20(図3)の検出状態から、第2グループG2または第3グループG3(図2)に属する光電センサ22がON状態か否かを判定する(ステップS1)。
【0043】
第2グループG2または第3グループG3の光電センサ22がON状態であると判定すると(ステップS1でYES)、ステップS2をスキップしてステップS3へ進む。一方、第2グループG2および第3グループG3のいずれの光電センサ22もON状態にないと判定すると(ステップS1でNO)、ステップS2へ進み、第1グループG1に属する光電センサ22による検出状態に基づいて行う警告指示処理を実行する。
【0044】
図5に基づき、当該警告指示処理について説明する。警告指示処理は、第1グループG1において第1〜第5のいずれのセンサ列L1〜L5(図2)に属する光電センサ22がON状態にあるか否かによって、異なる警告を行う処理である。
【0045】
CPU34は、先ず、第4または第5のセンサ列L4,L5を構成する光電センサ22がON状態であるか否かを判定し(ステップS4)、ON状態であると判定すると(ステップS4でYES)、警報部42に〔警告A3〕をするように指示する(ステップS5)。指示を受けた警報部42は、ROM36から対応する音声データを読み出し、スピーカ28を介して「移動手摺から体を乗り出すのを、すぐにおやめ下さい。」の警告を発する。
【0046】
ステップS4で、第4または第5のセンサ列L4,L5を構成する光電センサ22のいずれもOFF状態であると判定すると(ステップS4でNO)、ステップS6に進み、第2または第3のセンサ列L2,L3を構成する光電センサ22のいずれかがON状態であるか否かを判定し、ON状態であると判定すると(ステップS6でYES)、警報部42に〔警告A2〕をするように指示する(ステップS7)。指示を受けた警報部42は、ROM36から対応する音声データを読み出し、スピーカ28を介して「移動手摺から体を乗り出すと大変危険です。おやめ下さい。」の警告を発する。
【0047】
ステップS6で、第2または第3のセンサ列L2,L3を構成する光電センサ22のいずれもOFF状態であると判定すると(ステップS6でNO)、ステップS8に進み、第1のセンサ列L1を構成する光電センサ22のいずれかがON状態であるか否かを判定し、ON状態であると判定すると(ステップS8でYES)、警報部42に〔警告A1〕をするように指示する(ステップS9)。指示を受けた警報部42は、ROM36から対応する音声データを読み出し、スピーカ28を介して「移動手摺からはみ出ると危険です。おやめ下さい。」の警告を発する。
【0048】
警報部42は、CPU34から繰り返し警告指示を受けている間は、所定の時間間隔で、指示がなされた警告を発する。前記所定の時間間隔とは、該当する警告を繰り返してアナウンスするのに適した間隔である。
【0049】
一方、第1グループG1に属する光電センサ22のいずれもON状態にないと判定したときには(ステップS4、S6,S8のいずれでもNO)、警告指示を出すことなく、メインルーチン(図4)へ戻る。
【0050】
以上、ステップS4〜S9の制御により、第1グループG1の光電センサ22で乗客の体の一部等が検出されると、いずれのセンサ列L1〜L5に属する光電センサ22によって、異なった警告が発せられることとなる。すなわち、移動手摺10からのはみ出しの程度、換言すれば、エスカレータ本体14からの転落の可能性の程度に応じて、警告がなされる。
【0051】
ここで、検出手段20(図2)を構成するセンサ列L1〜L5の各々は、移動手摺10と平行に、かつ、移動手摺10からL1,L2,L3、L4,L5の順で、はみ出し方向に間隔を空けて設けられているため、乗客等の被検出体が移動手摺10からはみ出した場合の、前記水平方向におけるはみ出しの程度を非接触で検出する検出手段として機能する。
【0052】
また、図5において、いずれのセンサ列で被検出体が検出されているのかを判定して場合分けするステップS4,S6,S8は、検出手段20(センサ列L1〜L5)によって検出されたはみ出しの程度から、その危険度を判定する判定手段として機能する。
【0053】
ステップS5,S7,S9は、ステップS4,S6,S8の判定結果に応じて、すなわち、危険度に応じて、警報部42に異なる警告を発するように指示する手段として機能する。ここで、警告を発することは、乗客等の安全を確保するための安全動作の一つであり、当該警告を発するように指示することは、安全動作を起動することに他ならない。よって、ステップS5,S7,S9は、危険度に応じて異なる警告A1、警告A2、警告A3(安全動作)を起動する起動手段として機能するといえる。
【0054】
図4に示すフローチャートで、ステップS1において、第2グループG2または第3グループG3(図2)に属する光電センサ22のいずれかがON状態であると判定された場合に(ステップS1でYES)、ステップS3に進んで実行される「警告および減速又は停止」処理について、図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0055】
先ず、CPU34は、第2グループG2に属する光電センサ22のいずれかがON状態にあるか否かを判定する(ステップS10)。
【0056】
ON状態にあると判定すると(ステップS10でYES)、CPU34は、警報部42(図3)に対し、〔警告B1〕をするよう指示する(ステップS11)と共に、運転制御部40(図3)に、減速運転をするように指示する(ステップS12)。
【0057】
指示を受けた警報部42は、ROM36(図3)から対応する音声データを読み出し、スピーカ28を介して、「移動手摺からの乗り出しを検知しました。速度を落として運転します。」の警告を発する。また、減速運転の指示を受けた運転制御部40は、モータ16の回転速度を落とす制御を実行する。
【0058】
警告指示(ステップS11)と減速運転指示(ステップS12)とは、第2グループG2に属する光電センサ22の全てがOFF状態になるか(ステップS10でNO)、あるいは、第3グループG3(図2)に属する光電センサ22のいずれかがON状態になる(ステップS13でYES)まで繰り返される。
【0059】
警報部42は、CPU34から繰り返し警告指示を受けている間は、所定の時間間隔で、〔警告B1〕を発する。また、運転制御部40は、CPU34から繰り返し減速運転指示を受けている間は、減速運転制御を継続する。
【0060】
第2グループG2に属する光電センサ22の全てがOFF状態であり(ステップS10でNO)、第3グループG3に属する光電センサ22のいずれかがON状態であると判定される(ステップS14でYES)か、ステップS11、S12が繰り返して実行されている際に、第3グループG3に属する光電センサ22のいずれかがON状態になると(ステップS13でYES)、CPU34は、運転制御部40に対し、運転停止の指示をする(ステップS15)と共に、警報部42に対し、〔警告B2〕をするよう指示する(ステップS16)。
【0061】
運転停止の指示を受けた運転制御部40は、モータ16を停止させる。また、指示を受けた警報部42は、ROM36(図3)から対応する音声データを読み出し、スピーカ28を介して、「移動手摺からの乗り出しを検知しました。緊急停止します。」の警告を発する。
【0062】
運転が停止され(ステップS15)、警告B2が発せられると(ステップS16)、エスカレータ本体14の運転が再開されるまで、一連のプログラムは一旦終了する(END)。
【0063】
また、(i)第2グループG2の光電センサ22のON状態が検出されたため(ステップS10でYES)、減速運転(ステップS12)となったが、第2グループG2の光電センサ22のいずれもがOFF状態となり(ステップS10でNO)、かつ第3グループG3の光電センサ22のいずれもがOFF状態の場合(ステップS14でNO)や、(ii)当初から第2グループG2に属する光電センサ22および第3グループG3に属する光電センサ22のいずれもがOFF状態であった場合(ステップS10でNO、かつステップS14でNO)には、ステップS17に進む。
【0064】
このとき減速運転中であれば(ステップS17でYES)、CPU34は、警報部42に対し〔復旧通知〕をするよう指示する(ステップS18)と共に、運転制御部40に対し通常運転を指示して(ステップS19)、ステップS1(図4)へリターンする(RETURN)。指示を受けた警報部42は、ROM36から対応する音声データを読み出し、スピーカ28を介して「減速運転を止め、通常運転に戻します。」と通知する。また、通常運転の指示を受けた運転制御部40は、モータ16を通常運転の回転速度まで上げる。
【0065】
減速運転中でなければ、すなわち、通常運転中であれば(ステップS17でNO)、ステップS18、S19をスキップして、ステップS1(図4)へリターンする(RETURN)。
【0066】
以上、ステップS4〜S9(図5)の制御では、安全動作として警告がなされるだけであったが、ステップS10〜S16の制御により、これに運転速度制御が安全動作として加わっている。
【0067】
さらに、ステップS10〜S16の制御では、同じセンサ列に属する光電センサで検出された場合であっても、異なる安全動作が起動される場合がある。
【0068】
例えば、(A):図2に示すように、同じ第3のセンサ列L3に属する光電センサ22であっても、第2グループG2の光電センサS(8,3)〜S(12,3)で検出された場合と、これらの光電センサS(8,3)〜S(12,3)よりも保護板18に近い、第3グループG3の光電センサS(13,3)〜S(16,3)で検出された場合とで、異なる運転制御(安全動作)が起動されることとなる。
【0069】
また、例えば、(B):同じ行に位置する光電センサS(13,1)〜S(13,5)であっても、第2グループG2の光電センサS(13,1)、S(13,2)で検出された場合とこれらの光電センサS(13,1)、S(13,2)よりも移動手摺10から遠い、第3グループG3の光電センサS(13,3)、S(13,4)、S(13,5)で検出された場合とで、異なる運転制御(安全動作)が起動されることとなる。
【0070】
すなわち、検出手段20は、(B)被検出体のはみ出し方向におけるはみ出しの程度を検出するだけでなく、(A)移動手摺10からはみ出した被検出体の進行方向前方に存する保護板18までの、当該被検出体の接近の程度を検出する検出手段として機能する。
【0071】
また、図6において、第2グループG2および第3グループG3のいずれのグループに属する光電センサ22で被検出体が検出されているのかを判定して場合分けするステップS10,S14は、検出手段20(第2グループG2、第3グループG3)によって検出されたはみ出しの程度や保護板18までの接近の程度から、その危険度を判定する判定手段として機能する。
【0072】
そして、ステップS11,S12、ステップS15,S16は、ステップS10、S14の判定結果に応じて、すなわち、危険度に応じて、警報部42に異なる警告を発するように指示したり、運転制御部40に異なる運転制御を指示したりする手段として機能する。ここで、既述したように、警告を発することは、乗客等の安全を確保するための安全動作の一つであり、当該警告を発するように指示することは、安全動作を起動することに他ならない。また、減速運転をしたり運転停止したりすることも、乗客の安全を確保するための安全動作の一つであり、当該運転を指示することも、安全動作を起動することに他ならない。よって、ステップS11,S12,S15,S16は、危険度に応じて、異なる警告や運転制御(安全動作)を起動する起動手段として機能するといえる。
【0073】
以上、本発明に係るエスカレータを実施形態1に基づいて説明してきたが、本発明は、上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下の形態とすることもできる。
【0074】
(1)上記実施形態は、各光電センサ22において、発光素子24を天井DCに設け、受光素子26をフロアDSに設けたが、これとは逆に、発光素子24をフロアDSに設け、受光素子26を天井DCに設けることとしても構わない。
【0075】
(2)上記実施形態では、検出手段20を80個の光電センサ22で構成したが、検出手段を構成する光電センサの個数は、これに限らず、検出範囲の広狭などに応じて、適宜、設定されるものである。
【0076】
(3)上記実施形態では、検出手段20を構成する光電センサのセンサ列は5列としたが、当該センサ列の列数も、これに限らず、検出範囲の広狭、検出の緻密の程度などに応じて、適宜、設定されるものである。
ただ、少なくとも2列あれば、移動手摺からの被検出体のはみ出しの程度の検出は可能であるため、2列としても構わない。すなわち、複数列あれば、移動手摺からの被検出体のはみ出しの程度の検出は可能である。
【0077】
(4)上記実施形態では、複数個の光電センサ22をマトリックス状に整列させて検出手段20を構成したが、光電センサ22の配列はこれに限らない。
例えば、移動手摺の移動方向において保護板18に近いほど行間隔を短くすることとしても構わないし、また、はみ出し方向において移動手摺から遠いほど列間隔を短くすることとしても構わない。
【0078】
(5)上記実施形態では、光電センサに発光素子と受光素子からなる透過型を用いたがこれに限らず、反射型を用いても構わない。反射型を用いた場合、発光素子はフロアDSと天井DCのいずれに取り付けても構わない。あるいは、透過型と反射型の両方を併用しても構わない。
<実施形態2>
【0079】
実施形態1では、多くのセンサ(光電センサ22)を用いて、移動手摺からの乗客等のはみ出しを検出したが、実施形態2では、実施形態1よりも少ないセンサ(本例では、1台のセンサ)で前記はみ出しを検出するようにしている。
【0080】
実施形態2に係るエスカレータ50について図7を参照しながら説明する。なお、実施形態2に係るエスカレータ50は、制御部において実行される制御内容および検出手段が異なる以外は、基本的に、実施形態1に係るエスカレータ2と同じ構成である。よって、同様の構成部分については、同じ符号を付して、その説明は省略するか、必要に応じて言及するに留める。なお、図7では、モータ16および制御部60(図9)の図示は省略している。
【0081】
実施形態2において、エスカレータ本体14は、実施形態1と同様、昇り用として用いられるが、実施形態1とは異なり、エスカレータ本体14は、進行方向右側において階下の天井DCと交差するような位置に設置されている。
【0082】
エスカレータ50は、検出手段として3次元距離センサ52(以下、単に「距離センサ52」と言う)を有している。距離センサ52には、例えば、日本信号株式会社製の「InfiniSoleil FX8」(「InfiniSoleil」は、日本信号株式会社の登録商標)を用いることができる。距離センサ52は、フロアDSに立設された支柱54の上端に取り付けられている。
【0083】
距離センサ52の取り付け位置は、移動手摺12が水平方向の移動から斜行に移行する直前の移動手摺12近傍である。距離センサ52は、移動手摺12が斜行する領域における移動方向をY軸、当該Y軸と直交する水平方向をX軸、前記Y軸とおよび前記X軸の両方と直交するZ軸で規定される、図7において一点鎖線で示すようなX・Y・Z直交座標空間に進入した被検出体を検出する。当該X・Y・Z直交座標空間を以下「検出領域56」と言う。
【0084】
距離センサ52は、出射したレーザ光が被検出物まで往復してくる時間を計測し、距離に換算する光飛行時間測距法(Time of Flight)により、距離センサ52の設置位置から被検出物までの距離を計測する。距離センサ52は、前記レーザ光を上下(Z軸方向)・左右(X軸方向)に2次元走査し、(x、z)座標値毎に、前記距離(Y軸方向の距離)を計測する。計測結果は、一回の走査結果を1フレームデータとして、(x、y、z)座標値群で出力する。距離センサ52は、例えば、1秒間に4回走査する。よって、距離センサ52からは、1秒間に4回の割合でフレームデータが出力される。
【0085】
距離センサ52は、上下50度(垂直画角50度)、左右60度(水平画角60度)の範囲を2次元走査する能力を有するのであるが、当該範囲内において、上下方向(Z軸方向)および左右方向(X軸方向)の走査範囲を検出領域56のように設定(限定)することができる。
【0086】
検出領域56について、図8を参照しながら説明する。図8(a)は、検出領域56をY軸方向(すなわち、斜行する移動手摺12に平行な方向)から見た図であり、図8(b)は、検出領域56をZ軸方向から見た図である。
【0087】
移動手摺12からの水平距離d=10cmの位置をx=0、移動手摺12の上面12Aと同じ高さの位置をz=0、保護板18からの移動手摺12に沿った距離が650cmとなる位置をy=0として、前記X・Y・Z直交座標の原点(0,0,0)が設定されている。
【0088】
上述したように、距離センサ52は、図8(a)に示す検出領域56、すなわちX−Z座標軸で規定される検出領域56(以下、当該検出領域56を「測距領域56A」という。)に進入した被検出物の距離センサ52からの距離を検出する。距離センサ52は、X軸方向およびZ軸方向において、例えば、1cmの分解能で被検出物を検出する。よって、本例において、1フレームデータとして出力する(x,y,z)座標値の個数は、2800個(=40×70)である。距離センサ52は、例えば、1cmの分解能で距離(Y座標値)を測定する。
【0089】
1フレームデータの中で、Y座標値が0を越えている(x,y,z)座標値が有れば、測距領域56Aに被検出物が進入していると判断でき、そのX座標値から、はみ出しの程度を判断することができる。したがって、距離センサ52は、乗客等の被検出体が移動手摺12からはみ出した場合の、はみ出し方向におけるはみ出しの程度を非接触で検出する検出手段として機能する。ここで、Y座標値が0を越えている(x,y,z)座標値を「進入データ」と称することとする。
【0090】
本実施形態では、はみ出しの程度の観点から、測距領域56Aを、図8(a)に示すように、Aゾーン、Bゾーン、およびCゾーンの3つの領域に区画している。測距領域56Aを直線x=20、直線x=30で区切り、左から順に(すなわち、移動手摺12から近い順に)、Aゾーン、Bゾーン、Cゾーンとしている。
【0091】
上記の機能を有する距離センサ52を備えた安全装置58のブロック図を図9に示す。なお、安全装置58を構成する制御部60は、ROM62の格納内容およびCPU34で実行されるプログラムが異なる以外は、実質的に実施形態1の制御部30(図3)と同様である。よって、同じ構成部分には、同じ符号を付して、その詳細な説明については省略する。
【0092】
CPU34には、距離センサ52が接続されている。距離センサ52は1フレーム毎にフレームデータをCPU34に出力する。
【0093】
ROM62は、以下の音声データを格納している。
〔警告A1〕:「移動手摺からはみ出ると危険です。おやめ下さい。」
〔警告A2〕:「移動手摺から体を乗り出すと大変危険です。おやめ下さい。」
〔警告B1〕:「移動手摺からの乗り出しを検知しました。速度を落として運転します。」
〔警告B2〕:「移動手摺からの乗り出しを検知しました。緊急停止します。」
ROM62は、また、図10(a)に示すように、測距領域56Aを前記Aゾーンと前記Bゾーンとに区画するためのX座標値を格納するはみ出し方向区画位置格納部64を有している。はみ出し方向区画位置格納部64は、Aゾーン位置格納部64AとBゾーン位置格納部64Bとを含む。はみ出し方向区画位置格納部64は、適宜、CPU34によって参照される。
【0094】
RAM38は、図10(b)に示すように、1フレームデータ中に進入データがある場合における当該進入データ中で最大のX座標値(Xmax)を有する進入データの当該最大のX座標値(Xmax)を格納するはみ出し量記憶部66を有している。
【0095】
次に、CPU34が実行する安全動作起動プログラムについて、図11を参照しながら説明する。当該安全動作起動プログラムは、エスカレータ本体14の運転が開始されると起動される。
【0096】
CPU34は、距離センサ52から1フレームデータを受信すると(ステップS30でYES)、受信した1フレームデータ内に進入データがあるか否かを判定する(ステップS31)。
【0097】
進入データが有ると判定した場合(ステップS31でYES)、CPU34は、内部フラグを「1」に設定し(ステップS32)、進入データの内、最大のX座標値を有するデータを特定して(ステップS33)、特定した最大値(Xmax)をRAM38(図9)のはみ出し量記憶部66(図10(b))に記憶する(ステップS34)。
【0098】
一方、ステップS31で進入データは無いと判断すると(ステップS31でNO)、CPU34は、内部フラグを「0」に設定する(ステップS35)。
【0099】
ステップS36で、CPU34は、内部フラグが「1」に設定されているか否かを判定し、「1」に設定されていると判定した場合(ステップS36でYES)、すなわち、受信した1フレームデータ内に進入データがあった場合、はみ出し量記憶部66(図10(b))に記憶されているXmaxの値とAゾーン位置格納部64Aに格納されている値(本例では、「20」)とを比較する(ステップS37)。
【0100】
その結果、Xmaxが20未満、すなわち、被検出体の移動手摺12からのはみ出し量が30cm(=20+d)未満であると判断した場合(ステップS37でYES)、CPU34は、警報部42(図9)に対し、〔警告A1〕をするように指示する(ステップ38)と共に、運転制御部40(図9)に対し、通常運転を指示する(ステップ39)。
【0101】
指示を受けた警報部42は、ROM62(図9)から対応する音声データを読み出し、スピーカ28を介して、「移動手摺からはみ出ると危険です。おやめ下さい。」の警告を発する。また、通常運転の指示を受けた運転制御部40は、後述する減速運転中であれば通常運転に切り替え、通常運転中であれば通常運転を継続する。
【0102】
また、ステップS37で、Xmaxが20未満ではないと判断した場合(ステップS37でNO)、CPU34は、はみ出し量記憶部66(図10(b))に記憶されているXmaxの値とBゾーン位置格納部64Bに格納されている値(本例では、「30」)とを比較する(ステップS40)。
【0103】
その結果、Xmaxが30未満、すなわち、被検出体の移動手摺12からのはみ出し量が30cm(=20+d)以上、40cm(=30+d)未満であると判断した場合(ステップS40でYES)、CPU34は、警報部42に対し、〔警告A2〕をするように指示する(ステップ41)と共に、運転制御部40に対し、通常運転を指示する(ステップ42)。
【0104】
指示を受けた警報部42は、ROM62(図9)から対応する音声データを読み出し、スピーカ28を介して、「移動手摺から体を乗り出すと大変危険です。おやめ下さい。」の警告を発する。また、通常運転の指示を受けた運転制御部40は、後述する減速運転中であれば通常運転に切り替え、通常運転中であれば通常運転を継続する。
【0105】
一方、ステップS40で、Xmaxが30未満ではない、すなわち、被検出体の移動手摺12からのはみ出し量が少なくとも40cm(=30+d)あると判断した場合(ステップS40でNO)、CPU34は、警報部42に対し、〔警告B1〕をするように指示する(ステップS43)と共に、運転制御部40に対し、減速運転を指示する(ステップS44)。
【0106】
指示を受けた警報部42は、ROM62から対応する音声データを読み出し、スピーカ28を介して、「移動手摺からの乗り出しを検知しました。速度を落として運転します。」の警告を発する。また、減速運転の指示を受けた運転制御部40は、モータ16の回転速度を落とす制御を実行する。
【0107】
ステップS36で、内部フラグが「0」に設定されていると判定した場合(ステップS36でNO)、すなわち、受信した1フレームデータ内に進入データが無かった場合、移動手摺12からの問題となる程度のはみ出しが検出されなかったこととなるので、CPU34は、警報部42に対し、無警告指示をする(ステップS45)と共に、運転制御部40に対し、通常運転を指示する(ステップS46)。
【0108】
無警告指示を受けた警報部42は、警告A1,A2,B1のいずれかの警告中であれば、その警告を中止する。いずれの警告もなされていないときは、無警告状態を維持する。また、通常運転の指示を受けた運転制御部40は、減速運転中であれば通常運転に切り替え、通常運転中であれば通常運転を継続する。
【0109】
ステップS39、S42、S44、およびS46のいずれかが実行されると、ステップS30に戻り、次のフレームデータを受信する度に(ステップS30でYES)、上述した一連の処理(ステップS31〜S45)を繰り返す。
【0110】
以上、実施形態2に係るエスカレータ50によれば、距離センサ52によって、測距領域56Aに乗客等の被検出体が侵入したのが検出されると(ステップS31でYES)、検出されたはみ出しの程度(ステップS33、S34)、すなわち、エスカレータ本体14からの転落の可能性の程度に応じて(ステップS37,S40)、警告や運転制御の安全動作がとられることとなる。
【0111】
ここで、図11において、はみ出しの程度の指標となる、距離センサ52によって検出されたXmax(ステップS33)に基づいて、場合分けするステップS37,40は、距離センサ52によって検出されたはみ出しの程度(Xmax)から、その危険度を判定する判定手段として機能する。
【0112】
そして、ステップS38,S39、ステップS41,42、ステップS43,44は、ステップS37,40の判定結果に応じて、すなわち、危険度に応じて、警報部42に異なる警告を発するように指示したり、運転制御部40に異なる運転制御を指示したりする手段として機能する。ここで、警告を発したり、減速運転をしたりすることは、乗客等の安全を確保するための安全動作であり、当該警告を発するように指示したり、減速運転の指示をしたりすることは、安全動作を起動することに他ならない。よって、ステップS38,S39,S41,S42,S43,S44は、危険度に応じて、異なる警告や運転制御(安全動作)を起動する起動手段として機能する。
【0113】
(変形例)
上記の例では、被検出物が移動手摺12から少なくとも40cm(=30+d)はみ出しと判断した場合(ステップS40でNO)、CPU34は、運転制御部40に対し、減速運転を指示する(ステップS44)こととしたが、これに限らず、運転停止指示を行うこととしても構わない。
【0114】
そのようにした場合の安全動作起動プログラムについて、図12を参照しながら説明する。図12のフローチャートは、図11に示すフローチャートにおいてステップS40でXmaxが30未満ではない(ステップS40でNO)と判断した後の処理が異なる以外は、図11のフローチャートと同じである。よって、図12のフローチャートにおいて図11のフローチャートと共通する部分の大半は省略し、以下異なる部分を中心に説明する。
【0115】
図12に示すように、ステップS40で、Xmaxが30未満ではない、すなわち、被検出体の移動手摺12からのはみ出し量が少なくとも40cm(=30+d)あると判断した場合(ステップS40でNO)、CPU34は、運転制御部40に対し、運転停止を指示すると共に、(ステップS47)警報部42に対し、〔警告B2〕をするように指示する(ステップS48)。
【0116】
運転停止の指示を受けた運転制御部40は、モータ16を停止させる。また、指示を受けた警報部42は、ROM62から対応する音声データを読み出し、スピーカ28を介して、「移動手摺からの乗り出しを検知しました。緊急停止します。」の警告を発する。
【0117】
運転が停止され(ステップS47)、警告B2が発せられると(ステップS48)、エスカレータ本体14の運転が再開されるまで、一連のプログラムは一旦終了する(END)。
<実施形態3>
【0118】
実施形態2では、距離センサ52(図7図9)から出力される計測値である座標値(x、y、z)の内のY座標値を、測距領域56A(図8(a))内に被検出物が進入しているか否かの判断のみに利用した。これに対し、実施形態3では、当該Y座標値によって、被検出体の保護板18(図7)までの接近の程度を判断し、当該接近の程度によって異なる安全動作を起動することとした。すなわち、前記Y座標値は、距離センサ52から被検出体までの距離を示すが、距離センサ52は、保護板18に向けて設置されているため、当該設置位置から保護板18の間で検出される被検出体までの距離は、被検出体の保護板18までの接近の程度を示す指標となる。そこで、当該Y座標値を被検出体の保護板18までの接近の程度を示す指標として利用するのである。この場合、Y座標値が大きいほど被検出体の保護板18までの接近の程度が高くなり、被検出体が交差部に挟み込まれる危険度が高くなる。
【0119】
図13に示すように、距離センサ52の検出領域56で規定したBゾーン、Cゾーンの各々を、実施形態3では、原点(0,0,0)からのY軸方向(すなわち、移動手摺12の「移動方向」)の距離によって、それぞれ3分割している。
【0120】
原点(0,0,0)からの距離が、Bゾーンは、400cmと550cmのところで、Cゾーンは、300cmと500cmのところで、それぞれ、分割されて、さらに小さいゾーンに区画されている。
【0121】
ここで、図13に示すように、Bゾーンにおいて、分割された3区画を原点から近い順(すなわち、保護板18から遠い順)に、B1ゾーン、B2ゾーン、B3ゾーンとそれぞれ称することとする。同じく、Cゾーンにおいても、分割された3区画をC1ゾーン、C2ゾーン、C3ゾーンと称することとする。
【0122】
実施形態3においてROM62(図9)には、はみ出し方向区画位置格納部64(図10(a))に加え、図14(a)、(b)に示すように、BゾーンとCゾーンを上記のように区画するための、Y座標値を格納する移動方向区画位置格納部68,70を有している。
【0123】
Bゾーンを区画するための移動方向区画位置格納部68は、B1ゾーン位置格納部68AとB2ゾーン位置格納部68Bとを含む。Cゾーンを区画するための移動方向区画格納部70は、C1ゾーン位置格納部70AとC2ゾーン位置格納部70Bとを含む。移動方向区画位置格納部68,70は、CPU34によって適宜参照される。
【0124】
また、実施形態2においてRAM38(図9)に確保されるはみ出し量記憶部80は、図14(c)に示すように、1フレームデータ中に進入データがある場合における当該進入データ中で最大のX座標値(Xmax)を有する進入データの当該最大のX座標値(Xmax)に加え、その進入データのY座標値も記憶する。なお、後述するように、最大のX座標値(Xmax)を示す進入データが複数ある場合のY座標値は、その中で最大のY座標値がはみ出し量記憶部80に記憶される。
【0125】
次に、実施形態3のCPU34(図9)で実行される安全動作起動プログラムを、図15図17に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、当該安全動作起動プログラムも、エスカレータ本体14の運転が開始されると起動される。
【0126】
CPU34は、図15に示すように、距離センサ52から1フレームデータを受信すると(ステップS50でYES)、受信した1フレームデータ内に進入データがあるか否かを判定する(ステップS51)。
【0127】
進入データが有ると判定した場合(ステップS51でYES)、CPU34は、内部フラグを「1」に設定し(ステップS52)、進入データの内、最大のX座標値を有するデータを特定して(ステップS53)、特定した最大値(Xmax)および当該最大値(Xmax)を含むX・Y・Z座標値のY座標値をRAM38(図9)のはみ出し量記憶部80(図14(c))に記憶する(ステップS54)。なお、前記最大値(Xmax)を含むX・Y・Z座標値が複数存在するときは、その中で、最も大きいY座標値(Ymax)を、はみ出し量記憶部80(図14(c))に記憶する。
【0128】
一方、ステップS51で進入データは無いと判断すると(ステップS51でNO)、CPU34は、内部フラグを「0」に設定する(ステップS55)。
【0129】
ステップS56で、CPU34は、内部フラグが「1」に設定されているか否かを判定し、「1」に設定されていると判定した場合(ステップS56でYES)、すなわち、受信した1フレームデータ内に進入データがあった場合、はみ出し量記憶部80(図14(c))に記憶されているXmaxの値とAゾーン位置格納部64A(図10(b))に格納されている値(本例では、「20」)とを比較する(ステップS57)。
【0130】
その結果、Xmaxが20未満、すなわち、被検出体の移動手摺12からのはみ出し量が30cm(=20+d)未満であり、被検出体がAゾーンまで進入していると判断した場合(ステップS57でYES)、CPU34は、警報部42(図9)に対し、〔警告A1〕をするように指示する(ステップS58)と共に、運転制御部40(図9)に対し、通常運転を指示する(ステップS59)。
【0131】
指示を受けた警報部42は、ROM62(図9)から対応する音声データを読み出し、スピーカ28を介して、「移動手摺からはみ出ると危険です。おやめ下さい。」の警告を発する。また、通常運転の指示を受けた運転制御部40は、後述する減速運転中であれば通常運転に切り替え、通常運転中であれば通常運転を継続する。
【0132】
また、ステップS57で、Xmaxが20未満ではないと判断した場合(ステップS57でNO)、CPU34は、はみ出し量記憶部80(図14(c))に記憶されているXmaxの値とBゾーン位置格納部64A(図10(a))に格納されている値(本例では、「30」)とを比較する(ステップS60)。
【0133】
その結果、Xmaxが30未満、すなわち、被検出体の移動手摺12からのはみ出し量が30cm(=20+d)以上、40cm(=30+d)未満であり、被検出体がBゾーンまで進入していると判断した場合(ステップS60でYES)、図16のステップS61に進み、CPU34は、はみ出し量記憶部80(図14(c))に記憶されているY座標値とB2ゾーン位置格納部68B(図14(a))に格納されている値(本例では、「550」)とを比較する。
【0134】
その結果、当該Y座標値が550以上である(ステップS61でYES)、すなわち、被検出体は、B3ゾーン(図13)に至っていると判断した場合、CPU34は、運転制御部40に対し、運転停止を指示すると共に、(ステップS62)警報部42に対し、〔警告B2〕をするように指示する(ステップS63)。
【0135】
運転停止の指示を受けた運転制御部40は、モータ16を停止させる。また、指示を受けた警報部42は、ROM62から対応する音声データを読み出し、スピーカ28を介して、「移動手摺からの乗り出しを検知しました。緊急停止します。」の警告を発する。
【0136】
運転が停止され(ステップS62)、警告B2が発せられると(ステップS63)、エスカレータ本体14の運転が再開されるまで、一連のプログラムは一旦終了する(END)。
【0137】
一方、はみ出し量記憶部80(図14(c))に記憶されているY座標値が550未満であると判断した場合(ステップS61でNO)、CPU34は、はみ出し量記憶部80(図14(c))に記憶されているY座標値とB1ゾーン位置格納部68A(図14(a))に格納されている値(本例では、「400」)とを比較する(ステップS64)。
【0138】
その結果、当該Y座標値が400以上である(ステップS64でYES)、すなわち、被検出体がB2ゾーン(図13)に至っていると判断した場合、CPU34は、警報部42に対し、〔警告B1〕をするように指示する(ステップS65)と共に、運転制御部40に対し、減速運転を指示して(ステップS66)、ステップS50に戻る。
【0139】
指示を受けた警報部42は、ROM62から対応する音声データを読み出し、スピーカ28を介して、「移動手摺からの乗り出しを検知しました。速度を落として運転します。」の警告を発する。また、減速運転の指示を受けた運転制御部40は、モータ16の回転速度を落とす制御を実行する。
【0140】
ステップS64で、はみ出し量記憶部80(図14(c))に記憶されているY座標値が400未満であると判断した場合(ステップS64でNO)、すなわち、被検出体がまだB1ゾーンにあると判断した場合、CPU34は、警報部42に対し、〔警告A2〕をするように指示する(ステップ67)と共に、運転制御部40に対し、通常運転を指示して(ステップS68)、ステップS50に戻る。
【0141】
指示を受けた警報部42は、ROM62(図9)から対応する音声データを読み出し、スピーカ28を介して、「移動手摺から体を乗り出すと大変危険です。おやめ下さい。」の警告を発する。また、通常運転の指示を受けた運転制御部40は、後述する減速運転中であれば通常運転に切り替え、通常運転中であれば通常運転を継続する。
【0142】
また、ステップS60で、はみ出し量記憶部80(図14(c))に記憶されているXmaxの値とBゾーン位置格納部64A(図10(a))に格納されている値(本例では、「30」)とを比較した結果、Xmaxが30以上(Xmaxが30未満ではない)、すなわち、被検出体の移動手摺12からのはみ出し量が40cm(=30+d)以上であり、被検出体がCゾーンまで進入していると判断した場合(ステップS60でNO)、CPU34は、はみ出し量記憶部80(図14(c))に記憶されているY座標値と移動方向区画位置格納部70(図14(b))に格納されている各値(本例では、「500」または「300」)とを比較し(ステップS69,S72)、比較結果によって、警報部42と運転制御部40に対し、対応する指示を出す(図17)。
【0143】
図17に示すフローチャートにしたがってなされるCPU34の処理は、ステップS69やステップS72において、はみ出し量記憶部80(図14(c))に記憶されているY座標値と比較すべき値が異なる以外、警報部42や運転制御部40に対する指示は、図16に示すフローチャートにしたがって説明した処理と同じである。
【0144】
よって、図17のフローチャートにしたがってなされるCPU34の処理については、簡単に言及するに止め、また、CPU34からの指示を受けて実行される警報部42と運転制御部40の動作(安全動作)については省略する。
【0145】
はみ出し量記憶部80(図14(c))に記憶されているY座標値とC2ゾーン位置格納部70B(図14(b))に格納されている値(本例では、「500」)とを比較した結果、
当該Y座標値が500以上である(ステップS69でYES)、すなわち、被検出体は、C3ゾーン(図13)に至っていると判断した場合、CPU34は、運転制御部40に対し、運転停止を指示すると共に、(ステップS70)警報部42に対し、〔警告B2〕をするように指示する(ステップS71)。
【0146】
ステップS71が実行されると、エスカレータ本体14の運転が再開されるまで、一連のプログラムは一旦終了する(END)。
【0147】
一方、はみ出し量記憶部80(図14(c))に記憶されているY座標値が500未満であると判断した場合(ステップS69でNO)、CPU34は、はみ出し量記憶部80(図14(c))に記憶されているY座標値とC1ゾーン位置格納部70A(図14(b))に格納されている値(本例では、「300」)とを比較する(ステップS64)。
【0148】
その結果、当該Y座標値が300以上である(ステップS72でYES)、すなわち、被検出体がC2ゾーン(図13)に至っていると判断した場合、CPU34は、警報部42に対し、〔警告B1〕をするように指示する(ステップS73)と共に、運転制御部40に対し、減速運転を指示して(ステップS74)、ステップS50に戻る。
【0149】
ステップS72で、はみ出し量記憶部80(図14(c))に記憶されているY座標値が300未満であると判断した場合(ステップS72でNO)、すなわち、被検出体がまだC1ゾーンにあると判断した場合、CPU34は、警報部42に対し、〔警告A2〕をするように指示する(ステップS75)と共に、運転制御部40に対し、通常運転を指示して(ステップS76)、ステップS50に戻る。
【0150】
以上、実施形態2では、移動手摺12からの被検出体のはみ出しの程度から危険度が判定され、判定された危険度に応じて、安全動作が起動されたが、実施形態3では、はみ出しの程度に加え、被検出体の保護板18までの接近の程度から危険度が判定され、判定された危険度に応じて、安全動作が起動される。これにより、交差部に被検出体が挟み込まれる事態を一層防止することが可能となる。
【0151】
ここで、図15において、はみ出しの程度の指標となる、距離センサ52によって検出されたXmax(ステップS53)に基づいて、場合分けするステップS57,60は、実施形態2と同様、距離センサ52によって検出されたはみ出しの程度(Xmax)から、その危険度を判定する判定手段として機能する。
【0152】
さらに、図16図17において、距離センサ52によって検出されたY座標値(ステップS54)に基づいて、場合分けするステップS61,S64,S69,S72は、距離センサ52によって検出された、被検出体の保護板18までの接近の程度から、その危険度を判定する判定手段として機能する。
【0153】
そして、ステップS62,S63、ステップS65,S66、ステップS67,68、ステップS70,S71、ステップS73,S74、ステップS75,S76は、ステップS57,60、ステップS61,S64、ステップS69,S72の判定結果に応じて、すなわち、被検出体のはみ出しの程度や保護板18までの接近の程度によって決まる危険度に応じて、異なる警告や運転制御(安全動作)を起動する起動手段として機能する。
【0154】
以上、本発明に係るエスカレータを実施形態1〜3に基づいて説明してきたが、本発明は上記した実施形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下の形態とすることもできる。
【0155】
(1)上記実施形態では、エスカレータ本体14が昇り用として用いられる場合を例に説明したが、本発明に係るエスカレータは、エスカレータ本体を昇り用のみならず降り用として用いる場合にも適用可能である。この場合、被検出体(乗客等)の交差部への挟み込み防止対策は比較的重要では無くなるが、移動手摺から乗り出した乗客等のエスカレータ本体からの転落防止としては依然として有用となるからである。
【0156】
(2)上記実施形態では、エスカレータ本体14が建築物の一部(交差部)と近接するような場所に設置される場合を例に説明したが、本発明に係るエスカレータは、建築物との関係で交差部が生じないような場所、すなわち、一対の移動手摺の両外側が広く開放されているような場所にエスカレータ本体が設置される場合にも適用可能である。この場合、被検出体(乗客等)の交差部への挟み込み防止対策は不要となるが、移動手摺から乗り出した乗客等のエスカレータ本体からの転落防止としては依然として有用となるからである。
【0157】
(3)上記実施形態では、検出手段20や検出手段である距離センサ52を、一対の移動手摺の内、一方の移動手摺にのみ対応させて設置したが、これに限らず、両方の移動手摺に対応させて設置し、両方の移動手摺からの被検出体のはみ出しを検出して、警告等の安全動作を起動することとしても構わない。交差部が存在しない側の移動手摺や、上記(2)のように一対の移動手摺の両側に交差部が生じない場合においても、乗客等の乗り出しを検出して転落を防止することは必要であるからである。
【0158】
(4)上記実施形態2,3では、距離センサ52をエスカレータ本体14の下部に設置した。具体的には、移動手摺の移動方向との関係において、移動手摺が斜行する領域と下部にて水平方向に移動する領域との境界近傍に設置した(図7)。
【0159】
これに限らず、距離センサ52は、エスカレータ本体14の上部に設置しても構わない。具体的には、以下の態様(a)、(b)が考えられる。
【0160】
(a)保護板18(図7)下部に直接取り付けるか、保護板18(図7)の移動手摺12とは反対側の側方に位置するように階下の天井DCに取り付けても構わない。この場合には、言うまでも無く、距離センサ52による検出領域は、当該設置位置から移動手摺に沿った下方領域となる。また、距離センサ52によって測定される距離(Y座標値)が短いほど(Y座標値が小さいほど)、危険度が高いと判定されるようにする。はみ出しの程度(X座標値)については、進入データの(x、y、z)座標値における、X座標値が大きいほど、またY座標値が小さいほど、危険度が高いと判定されるようにする。
【0161】
(b)移動手摺が斜行する領域と上部にて水平方向に移動する領域との境界近傍に設置することとしても構わない。当該設置位置は、交差部が存在しない側の移動手摺や、上記(2)のように一対の移動手摺の両側に交差部が生じない場合において、乗客等の乗り出しを検出して転落を防止するために有効な設置位置である。
【0162】
この場合、上記(a)と同様、距離センサ52による検出領域は、当該設置位置から移動手摺に沿った下方領域であり、また、進入データの(x、y、z)座標値における、X座標値が大きいほど、またY座標値が小さいほど、危険度が高いと判定されるようにする。
【0163】
(5)上記実施形態2,3では、距離センサ52を、移動手摺12の移動方向との関係において、移動手摺12が水平方向の移動から斜行に移行する直前の移動手摺12近傍に設置したが(図7)、距離センサ52は、当該設置位置よりももう少し高い位置に設けても構わない。すなわち、移動手摺12が斜行する領域において、水平方向、踏段4が存する側とは反対側の移動手摺12近傍に設置することとしても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明に係るエスカレータは、例えば、移動手摺から身体を乗り出した乗客の安全の確保が要求されるエスカレータに好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0165】
2 エスカレータ
4 踏段
6,8 欄干
10,12 移動手摺
20 検出手段
30,60 制御部
32,58 安全装置
52 3次元距離センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17