特許第6241756号(P6241756)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6241756太陽電池モジュールの製造方法及び太陽電池モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241756
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】太陽電池モジュールの製造方法及び太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/048 20140101AFI20171127BHJP
【FI】
   H01L31/04 560
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-522281(P2014-522281)
(86)(22)【出願日】2012年6月27日
(86)【国際出願番号】JP2012066321
(87)【国際公開番号】WO2014002201
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2015年6月2日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】前田 将規
【審査官】 嵯峨根 多美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−216804(JP,A)
【文献】 特開2003−258283(JP,A)
【文献】 特開2005−050928(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/073751(WO,A1)
【文献】 特開2009−040951(JP,A)
【文献】 特開2011−77358(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2277693(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板と、第1の透明樹脂シートと、太陽電池と、第2の透明樹脂シートと、着色樹脂シートと、第1の樹脂シートとをこの順番で積層して積層体を得、前記積層体を加熱しながら加圧することにより、前記ガラス板と、前記ガラス板と前記太陽電池との間に配されており、前記第1の透明樹脂シートから構成された第1の透明充填材層と、前記第1の樹脂シートと前記太陽電池との間に配されており、前記第2の透明樹脂シートから構成された第2の透明充填材層と、前記第2の透明充填材層と前記第1の樹脂シートとの間に配されており、前記着色樹脂シートから構成された着色充填材層と、前記第1の樹脂シートとを有する太陽電池モジュールを作製し、
前記着色樹脂シートの加圧時の温度における粘性率が、前記第1の透明樹脂シートの加圧時の温度における粘性率の3倍以上であり、かつ、前記着色樹脂シートの加圧時の温度における粘性率が300000Pa以上であり、前記第1の透明樹脂シートの加圧時の温度における粘性率が200000Pa以下である、太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽電池モジュールの製造方法であって、
前記着色樹脂シートの加圧時の温度における粘性率が、第1の透明樹脂シートの加圧時の温度における粘性率の4倍以上である、太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の太陽電池モジュールの製造方法であって、
前記第2の透明樹脂シートの加圧時の温度における粘性率が、第1の透明樹脂シートの加圧時の温度における粘性率よりも高い、太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項4】
請求項に記載の太陽電池モジュールの製造方法であって、
前記第2の透明樹脂シートの加圧時の温度における粘性率が、300000Pa以上である、太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の太陽電池モジュールの製造方法であって、
前記第1の樹脂シートが樹脂からなる、太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の太陽電池モジュールの製造方法であって、
前記第2の透明樹脂シートの加圧時の温度、および、前記第1の透明樹脂シートの加圧時の温度は、100℃〜160℃である、太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項7】
ガラス板と、
前記ガラス板と対向する樹脂シートと、
前記ガラス板と前記樹脂シートとの間に配された充填材層と、
前記充填材層中に配された太陽電池と、
を備え、
前記充填材層は、
前記太陽電池と前記ガラス板との間に位置する第1の透明充填材層と、
前記太陽電池と前記樹脂シートとの間に位置する第2の透明充填材層と、
前記第2の透明充填材層と前記樹脂シートとの間に位置する着色充填材層と、
を有し、
前記着色充填材層の125℃における粘性率が、前記第1の透明充填材層の125℃における粘性率の3倍以上であり、かつ、前記着色樹脂シートの125℃における粘性率が300000Pa以上であり、前記第1の透明樹脂シートの125℃における粘性率が200000Pa以下である、太陽電池モジュール。
【請求項8】
請求項に記載の太陽電池モジュールであって、
前記着色充填材層の125℃における粘性率が、前記第1の透明充填材層の125℃における粘性率の4倍以上である、太陽電池モジュール。
【請求項9】
請求項7または8に記載の太陽電池モジュールであって、
前記第2の透明充填材層の125℃における粘性率が、前記第1の透明充填材層の125℃における粘性率よりも高い、太陽電池モジュール。
【請求項10】
請求項に記載の太陽電池モジュールであって、
前記第2の透明充填材層の125℃における粘性率が、300000Pa以上である、太陽電池モジュール。
【請求項11】
請求項10のいずれか一項に記載の太陽電池モジュールであって、
前記樹脂シートが、樹脂からなる、太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールの製造方法及び太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、受光面側保護部材と裏面側保護部材との間に配された充填材層中に設けられた太陽電池を有する太陽電池モジュールが知られている。例えば特許文献1には、充填材層の太陽電池と受光面側保護部材との間に位置する部分を透明なエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルムにより構成し、太陽電池と裏面側保護部材との間に位置する部分を着色されたEVAフィルムにより構成することが記載されている。特許文献1には、着色EVAフィルムを用いることにより、太陽電池モジュールの出力特性を改善できる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−258283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の太陽電池モジュールは、例えば、着色EVAフィルムと、透明EVAフィルムとの間に太陽電池が配された積層体を加熱圧着することにより製造することができる。
【0005】
しかしながら、このような製造方法で特許文献1に記載の太陽電池モジュールを製造した場合、着色EVAフィルムが太陽電池の受光面の上にも位置することとなり、太陽電池モジュールの出力特性が低下する場合がある。
【0006】
本発明の主な目的は、太陽電池モジュールの出力特性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法では、ガラス板と、第1の透明樹脂シートと、太陽電池と、第2の透明樹脂シートと、着色樹脂シートと、第1の樹脂シートとをこの順番で積層して積層体を得る。積層体を加熱しながら加圧することにより、ガラス板と、ガラス板と太陽電池との間に配されており、第1の透明樹脂シートから構成された第1の透明充填材層と、第1の樹脂シートと太陽電池との間に配されており、第2の透明樹脂シートから構成された第2の透明充填材層と、第2の透明充填材層と第1の樹脂シートとの間に配されており、着色樹脂シートから構成された着色充填材層と、第1の樹脂シートとを有する太陽電池モジュールを作製する。着色樹脂シートの加圧時の温度における粘性率が、第1の透明樹脂シートの加圧時の温度における粘性率よりも高い。
【0008】
本発明に係る太陽電池は、ガラス板と、樹脂シートと、充填材層と、太陽電池とを備える。樹脂シートは、ガラス板と対向している。充填材層は、ガラス板と樹脂シートとの間に配されている。太陽電池は、充填材層中に配されている。充填材層は、第1の透明充填材層と、第2の透明充填材層と、着色充填材層とを有する。第1の透明充填材層は、太陽電池とガラス板との間に位置している。第2の透明充填材層は、太陽電池と樹脂シートとの間に位置している。着色充填材層は、第2の透明充填材層と樹脂シートとの間に位置している。着色充填材層の125℃における粘性率が、第1の透明充填材層の125℃における粘性率よりも高い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、太陽電池モジュールの出力特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態における積層体の略図的分解断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態における太陽電池モジュールの略図的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0012】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0013】
(太陽電池モジュール1の製造方法)
ここでは、図2に示す太陽電池モジュール1の製造方法について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0014】
太陽電池モジュール1の製造に際しては、まず、図1に示される積層体10を作製する。具体的には、ガラス板11と、第1の透明樹脂シート12aと、太陽電池13と、第2の透明樹脂シート12bと、着色樹脂シート15と、樹脂シート16とをこの順番で積層することにより、積層体10を作製する。
【0015】
第1の透明樹脂シート12aは、太陽電池13における光電変換に寄与し得る光のうちの少なくとも一部を透過させる。第1の透明樹脂シート12aは、顔料及び染料を実質的に含有していないことが好ましい。
【0016】
第2の透明樹脂シート12bも、第1の透明樹脂シート12aと同様に、太陽電池13における光電変換に寄与し得る光のうちの少なくとも一部を透過させる。第2の透明樹脂シート12bは、顔料及び染料を実質的に含有していないことが好ましい。
【0017】
着色樹脂シート15は、太陽電池13における光電変換に寄与し得る光のうちの少なくとも一部を反射させる。着色樹脂シート15は、顔料及び染料の少なくとも一方を含んでいることが好ましい。着色樹脂シート15は、例えば、酸化チタン粒子を含んでいることが好ましい。もっとも、着色樹脂シート15の色調が白色である必要は必ずしもない。着色樹脂シート15の色調は、例えば、黒色等であってもよい。
【0018】
第1の透明樹脂シート12aと第2の透明樹脂シート12bとの間に、例えば、ひとつの太陽電池13を配してもよいし、配線材14により電気的に接続された複数の太陽電池13を配してもよい。
【0019】
太陽電池13の種類は特に限定されない。太陽電池13は、例えば、結晶半導体材料からなる基板を有するものであってもよい。結晶半導体材料からなる基板としては、結晶シリコン基板などが挙げられる。太陽電池13は、主として受光する受光面13aと、裏面13bとを有している。太陽電池13は、受光面13aがガラス板11側を向き、裏面13bが樹脂シート16側を向くように配される。
【0020】
樹脂シート16は、可撓性を有する。樹脂シート16は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),フッ化ビニル樹脂(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)若しくはこれらの複合体等により構成することができる。樹脂シート16は、金属や無機酸化物からなるバリア層を有していてもよいが、実質的に樹脂のみからなる樹脂シートにより構成されていることが好ましい。
【0021】
次に、積層体10を加熱しながら加圧する(加熱プレス工程)。これにより、図2に示される太陽電池モジュール1を完成させることができる。加熱プレス工程において、積層体10の加熱温度は、例えば、100℃〜160℃程度とすることができ、130℃〜150℃程度であることが好ましい。積層体10の加熱温度は、例えば125℃程度とすることができる。
【0022】
太陽電池モジュール1は、ガラス板11と、樹脂シート16とを有する。樹脂シート16は、ガラス板11と間隔をおいて対向している。樹脂シート16とガラス板11との間には、着色樹脂シート15と第1及び第2の透明樹脂シート12a、12bとから構成された充填材層17が配されている。充填材層17は、第1の透明樹脂シート12aから構成された第1の透明充填材層17a1と、第2の透明樹脂シート12bから構成された第2の透明充填材層17a2と、着色樹脂シート15から構成された着色充填材層17bとを有する。第1の透明充填材層17a1は、ガラス板11と太陽電池13との間に配されている。第2の透明充填材層17a2は、樹脂シート16と太陽電池13との間に配されている。着色充填材層17bは、樹脂シート16と第2の透明充填材層17a2との間に配されている。すなわち、第1の透明充填材層17a1が太陽電池13の受光面13a側に位置し、第2の透明充填材層17a2と着色充填材層17bとが太陽電池13の裏面13b側に位置している。第2の透明充填材層17a2は、太陽電池13と着色充填材層17bとの間に配されている。よって、太陽電池13の受光面13a及び裏面13bのそれぞれは、透明充填材層に接触している。
【0023】
ところで、透明樹脂シートと着色樹脂シートとの間に太陽電池が位置する積層体を加熱しながらプレスした場合、着色樹脂が太陽電池の受光面の上にも位置する場合がある。このような場合には、受光面の上に位置する着色樹脂により太陽電池に入射しようとする光が反射されたり吸収されたりする。このため、太陽電池への光の入射効率が低下する。その結果、太陽電池モジュールの出力特性が低下する。
【0024】
本発明者らが鋭意研究した結果、着色樹脂が受光面の上に位置する原因として、以下の2つの原因(1)(2)があることが見出された。
(1)着色樹脂シートの一部が受光面13a上に回り込む。
(2)溶融された着色樹脂シートと、溶融された透明樹脂シートとが受光面上において混じり合う。
【0025】
上記原因(1)(2)のなかでも、(2)の溶融された着色樹脂シートと溶融された透明樹脂シートの混じり合いが生じると、受光面の面積に対する着色された樹脂が位置する部分の面積の割合が大きくなりやすい。よって、改善された出力特性を実現する観点からは、溶融された着色樹脂シートと溶融された透明樹脂シートとの混じり合いを抑制することが重要である。
【0026】
ここで、本実施形態では、太陽電池13と着色樹脂シート15との間に第2の透明樹脂シート12bが設けられている。それに加え、着色樹脂シート15の、積層体10の加圧時の温度における粘性率が、第1の透明樹脂シート12aの、積層体10の加圧時の温度における粘性率よりも低い。このように、着色樹脂シート15の加圧時の温度における粘性率が高いため、積層体10の加圧時において、着色樹脂シート15と透明樹脂シート12a、12bとが混じり合いにくい。従って、着色樹脂シート15に含まれる着色樹脂と透明樹脂シート12a、12bに含まれる透明樹脂とが混じり合った樹脂が生成し、受光面13aの上に位置することが抑制される。その結果、改善された出力特性を有する太陽電池モジュール1を得ることができる。従って、着色充填材層17bの125℃における粘性率を、第1の透明充填材層17a1の125℃における粘性率よりも高くすることによって太陽電池モジュール1の出力特性を改善することができる。
【0027】
なお、例えば太陽電池と着色樹脂シートとの間に第2の透明樹脂シートを介在させた場合であっても、着色樹脂シートの加圧時の温度における粘性率が低いと、着色樹脂シートと、第1及び第2の透明樹脂シートとが混じり合い、出力特性が低下してしまう場合がある。
【0028】
より改善された出力特性を実現する観点からは、着色樹脂シート15の加圧時の温度における粘性率が、第1の透明樹脂シート12aの加圧時の温度における粘性率の3倍以上であることが好ましく、4倍以上であることがより好ましい。着色充填材層17bの125℃における粘性率が、第1の透明充填材層17a1の125℃における粘性率の4倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましい。但し、着色樹脂シート15の加圧時の温度における粘性率が高くなりすぎると、着色シートが受光面に回り込む場合がある。従って、着色樹脂シート15の加圧時の温度における粘性率が、第1の透明樹脂シート12aの加圧時の温度における粘性率の20倍以下であることが好ましく、5倍以下であることがより好ましい。着色充填材層17bの125℃における粘性率が、第1の透明充填材層17a1の125℃における粘性率の13倍以下であることが好ましく、5倍以下であることがより好ましい。具体的には、着色樹脂シート15の加圧時の温度における粘性率は、300000Pa以上であることが好ましく、400000Pa以上であることがより好ましく、500000Pa以上であることがさらに好ましい。着色充填材層17bの125℃における粘性率は、300000Pa以上であることが好ましく、400000Pa以上であることがより好ましく、500000Pa以上であることがさらに好ましい。着色樹脂シート15の加圧時の温度における粘性率は、1000000Pa以下であることが好ましく、800000Pa以下であることがより好ましい。着色充填材層17bの125℃における粘性率は、800000Pa以下であることが好ましく、700000Pa以下であることがより好ましい。第1の透明樹脂シート12aの加圧時の温度における粘性率は、200000Pa以下であることが好ましく、150000Pa以下であることがより好ましい。第1の透明充填材層17a1の125℃における粘性率は、200000Pa以下であることが好ましく、150000Pa以下であることがより好ましい。但し、第1の透明樹脂シート12aの加圧時の温度における粘性率が低すぎると、樹脂の流れ出しが多くなるため膜厚が薄くなってしまう場合がある。従って、第1の透明樹脂シート12aの加圧時の温度における粘性率は、100000Pa以上であることが好ましく、150000Pa以上であることがより好ましい。第1の透明充填材層17a1の125℃における粘性率は、100000Pa以上であることが好ましく、150000Pa以上であることがより好ましい。
【0029】
第2の透明樹脂シート12bの加圧時の温度における粘性率は、特に限定されない。仮に、第2の透明樹脂シート12bの加圧時の温度における粘性率が低く、溶融された第1の透明樹脂シート12aと溶融された第2の透明樹脂シート12bとの混じり合いが生じても、着色された樹脂が受光面13aの上に位置しないためである。
【0030】
ところで、樹脂シート16がバリア層を有さず、実質的に樹脂のみからなる樹脂シートにより構成されている場合は、バリア層が設けられている場合よりも樹脂シート16の熱膨張率が高くなる。しかし、着色樹脂シート15の加圧時における粘性率、着色充填材層17bの125℃における粘性率が高いため、樹脂シート16の伸縮に起因する着色樹脂シート15の変形が抑制される。よって、太陽電池13に応力が加わることを抑制することができる。
【0031】
以下に、125℃における粘性率が300000Pa以上である樹脂として非架橋ポリオレフィン、125℃における粘性率が200000Pa以下である樹脂として架橋ポリオレフィンを用いた例を示す。
【0032】
粘性率は、例えば、DMA(Dynamic Mechanical Analysis)測定により測定することができる。
【0033】
(実施例1)
厚みが3.2mmであるガラス板、架橋ポリオレフィンからなる厚み0.6mmである第1の透明樹脂シート(125℃における粘性率=150000Pa)、太陽電池、非架橋ポリオレフィンからなる厚み0.15mmである第2の透明樹脂シート(125℃における粘性率=700000Pa)、非架橋ポリオレフィンからなる厚み0.30mmである着色樹脂シート(125℃における粘性率=700000Pa)、PETからなる厚み0.13mmである樹脂シートとをこの順番で積層し、積層体を得た。次に、積層体を150℃となるように加熱しながら加圧することにより太陽電池モジュールを作製した。
【0034】
(実施例2)
着色樹脂シートとして、ポリオレフィンからなる厚み0.35mmの樹脂シート(125℃における粘性率=700000Pa)を用い、第1の透明樹脂シートとして、架橋ポリオオレフィンからなる厚み0.6mmの樹脂シート(125℃における粘性率=150000Pa)を用いたこと以外は実施例1と同様にして太陽電池モジュールを作製した。
【0035】
(実施例3)
着色樹脂シートとして、ポリオレフィンからなる厚み0.40mmの樹脂シート(125℃における粘性率=700000Pa)を用い、第1の透明樹脂シートとして、架橋ポリオレフィンからなる厚み0.6mmの樹脂シート(125℃における粘性率=150000Pa)を用いたこと以外は実施例1と同様にして太陽電池モジュールを作製した。
【0036】
(比較例1)
着色樹脂シートとして、エチレンビニル共重合体からなる厚み0.6mmの樹脂シート(125℃における粘性率=200000Pa)を用い、第1の透明樹脂シートとして、架橋ポリオレフィンからなる厚み0.6mmの樹脂シート(125℃における粘性率=150000Pa)を用いたこと以外は実施例1と同様にして太陽電池モジュールを作製した。
【0037】
(比較例2)
着色樹脂シートとして、架橋ポリオレフィンからなる厚み0.6mmの樹脂シート(125℃における粘性率=200000Pa)を用い、第1の透明樹脂シートとして、架橋ポリオレフィンからなる厚み0.6mmの樹脂シート(125℃における粘性率=150000Pa)を用いたこと以外は実施例1と同様にして太陽電池モジュールを作製した。
【0038】
(評価)
実施例1〜3及び比較例1〜2のそれぞれにおいて作製した太陽電池モジュールをガラス板側から確認し、受光面の上に着色された樹脂が存在しているか否かを確認した。その結果、実施例1〜3においては、受光面の上には、着色された樹脂が実質的に存在していなかった。比較例1〜3においては、受光面の周縁部の全周に渡って着色された樹脂が存在していた。
【符号の説明】
【0039】
1…太陽電池モジュール
10…積層体
11…ガラス板
12a…第1の透明樹脂シート
12b…第2の透明樹脂シート
13…太陽電池
13a…受光面
13b…裏面
14…配線材
15…着色樹脂シート
16…樹脂シート
17…充填材層
17a1…第1の透明充填材層
17a2…第2の透明充填材層
17b…着色充填材層
図1
図2