【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決した本発明は、次記のとおりである。
【0014】
予め、本発明の「表示・解析」の意義を明らかにしておく。すなわち、本発明の「表示・解析」とは、(1)吸収性物品の体液吸収形態を表示手段に表示する形態、(2)吸収性物品の体液吸収形態を、表示手段に表示しないが、最終判断者としての人間が知覚できるようにする形態、たとえば体液吸収形態そのものではなく、その形態の解析または評価などの結果を出力する形態、(3)吸収性物品の体液吸収形態を、表示手段に表示するとともに、その形態の解析または評価などの結果を、最終判断者としての人間が知覚できるようにする、ことなどを含む意味である。
また、「体液」とは、人体から排出される尿及び経血を含み、実際のもののほか人工尿及び人工経血を含む意味である。さらに、この人工体液には、画像の改善にために現像剤を添加したものも含む。生理食塩水などに現像剤を添加したものも含む。「排液」とは、これらの体液のうち特に、ダミー人形から排泄された又は流出した液を言う。
【0015】
<請求項1記載の発明>
体液供給手段を備えた人体型ダミー人形に吸収性物品を装着した状態で、X線CT装置を用いて前記ダミー人形から排液させた後の吸収性物品を撮影し、撮影した画像に基づいて、前記ダミー人形に装着した状態における排液後の吸収性物品への排液の
吸収・拡散状況の経時的な変化の表示・解析
方法において、
前記体液供給手段から供給される人工尿は、人体を模した前記ダミー人形に形成された通路を通り、前記ダミー人形の局部から流出され、
前記ダミー人形を、前記X線CT装置の撮影位置に向かって前進する寝台上に設置し、
前記寝台が前記撮影位置に進入れした後に、前記X線CT装置のX線源と検出器を、前記ダミー人形の周囲に回転させると共に、前記体液供給手段を駆動して前記ダミー人形に人工尿を注入し、
前記X線CT装置によって前記吸収性物品における人工尿の吸収と拡散の全過程を測定し、
前記X線CT装置のウィンド機能を用いて、前記吸収性物品と前記人工尿のみを表示させることを特徴とする吸収性物品の体液吸収形態の表示・解析方法。
【0016】
<作用効果>
吸収性物品における排液(尿や経血など)の時的な排液の吸収・拡散状況を知るために、X線CT装置を用いる。さらに、体液供給手段を備えた人体型ダミー人形を使用する。そして、ダミー人形に吸収性物品を装着した状態で、X線CT装置を用いてダミー人形から排液させた後の(もちろん、排液前から撮影を開始しておくことは可能であり、この形態も当然に含まれる。)吸収性物品を撮影する。
その結果、排液後の吸収性物品への排液の吸収形態、及び、その吸収形態の経時的な変化、すなわち吸収性物品における排液の「吸収動態」を知ることができる。
そこで、撮影した画像をそのまま表示するほか、撮影した画像を再構成して観察・解析者が解り易く3次元化又は動画化(アニメーション化)する、白黒画像ではなく色彩化する、注目部分のみを抽出する(区別すべき他の部分を可能な限り削除する)、注目部分を彩色する、3次元画像の視点の変換を行ったものを表示手段、たとえばモニター画面、記録装置の再生画面により表示することができる。
さらに、一旦情報(生データ情報又は再構成化した情報)を記録装置に記録し、後に表示又は解析する、情報を処理し、たとえば強調した情報とするなどの各種の解析処理をするなどの解析操作を含んでいてもよい。また、本発明の解析は、観察者が行うものと、情報処理機器が行うものとの両者が含まれる。
かかる本発明によれば、基本的に排液の経時的な吸収・拡散状況を知ることができる。漏れについても、漏れの開始部位や時点を把握することができる。
さらに、従来の吸収性物品の体液(排液)の吸収形態の解析は、排液が完了した後に、排液ダミー人形から当該吸収性物品を外し、その使用面側を展開した状態で、排液の状況を評価するのが主流であったが、本発明によれば、吸収性物品を展開することなく、装着状態での吸収・拡散形態を知ることができ、きわめて適確な判断に資する。
また、X線CT装置での撮像が、吸収性物品を装着した人体ではなくダミー人形であるから、X線被爆の問題が生じ難い。しかも、種々の体位を取らせたうえでの撮像が可能であり、入手可能な情報量として膨大なものとなる。
【0017】
何がともあれ、排液の吸収・拡散状況の経時的な変化を捉えることができるようになることは嚆矢と考えられ、吸収性物品の品質改良や開発を飛躍的に発展させる足場になるものと思われる。
【0018】
【0019】
ダミー人形は、その体液供給手段が、試供液を人体型ダミー人形の内部を通し、人体を模した局部から流出させるようにしてあると、人体により実際の排液との相関性が高く、適確な排液の吸収・拡散状況を把握できる。
【0020】
<請求項
2記載の発明>
前記吸収性物品は、使い捨ておむつであり、そのCT値が−940HU〜−920HUである請求項
1記載の吸収性物品の体液吸収形態の表示・解析方法。
【0021】
<作用効果>
おむつは、ポリエチレン、不織布、綿状パルプ、クレープ紙などを主材料とする。おむつのCT値は−940HU〜−920HU程度である。
他方、ダミー人形は柔軟性や成形性などの観点から、材質としてシリコンゴム、ウレタンなどが使用され、そのCT値は−60HU〜−45HU(平均−52HU)程度である。人工尿のCT値は5HU〜40HU(平均20HU)程度である。
空気のCT値は−1000HUであり、おむつのCT値と近いため、おむつを描画することがきわめて難しい。
しかるに、本発明者らは、撮像情報の情報処理、またさらに画像処理を行うことにより、おむつを描画するが可能であることを知見し、そのおむつに対する排液(人工尿)については、CT値が相違するので、排液(人工尿)の吸収・拡散状況を顕著化した表示を行うことができることを知見した。
【0022】
<請求項
3記載の発明>
X線CT装置が、ヘリカルスキャン撮影手段及びX線の多列検出器を有する請求項1記載の吸収性物品の体液吸収形態の表示・解析方法。
【0023】
<作用効果>
X線CT装置が、ヘリカルスキャン撮影手段及びX線の多列検出器を有するものであると、細かい情報を得ることができ、画像処理において3次元化が容易に行うことができ、注目部位の表示も精緻化できる。
【0024】
<請求項
4記載の発明>
撮影したCT画像を3次元画像として再構成する再構成画像処理を行ない、その処理後の画像を表示手段に表示する請求項1記載の吸収性物品の体液吸収形態の表示・解析方法。
【0025】
<作用効果>
撮影したCT画像を3次元画像として再構成する再構成画像処理を行ない、その処理後の画像を表示手段に表示すると、知覚が容易であり、判断及び解析が正確なものとなる。
【0026】
<請求項
5記載の発明>
排液状態を経過的に撮影したCT画像を3次元画像として再構成する再構成画像処理を行ない、その処理後の経時的な変化画像を動画として表示手段に表示する請求項1記載の吸収性物品の体液吸収形態の表示・解析方法。
【0027】
<作用効果>
3次元画像として再構成する再構成画像処理を行ない、その経時的な変化画像を動画として表示手段に表示すれば、より一層、排液の吸収・拡散状況の経時的変化を明確に把握できる。
【0028】
<請求項
6記載の発明>
体液供給手段を備えた人体型ダミー人形の体位を変更して、体位の変更に伴う尿の吸収形態変化を表示・解析する請求項1記載の吸収性物品の体液吸収形態の表示・解析方法。
【0029】
<作用効果>
従来、体位の変更に伴う尿の吸収形態変化を知ることができた限界は、特定の姿勢であると、より漏れやすいと判断する程度のものであるのに対し、本発明にしたがって、人体型ダミー人形の体位を変更して、表示・解析することは、人体型ダミー人形の体位の変更が容易であるから、多くの体位の下で、尿の吸収形態変化を知ることができるようになることを意味しており、解析を適確に行うことができるようになる。
【0030】
<請求項
7記載の発明>
既知のダミー人形の形状とこれに装着した状態における既知の吸収性物品の形状との関係を予め知っておき、前記撮影した画像におけるダミー人形に、当該撮像に供した吸収性物品の形状を当て嵌め、その吸収性物品と撮像した排液との関係を把握し、前記吸収性物品への排液の吸収形態を把握する請求項1記載の体液吸収形態の表示・解析方法。
【0031】
<作用効果>
前述のように、空気のCT値は−1000HUであり、おむつあるいは同種の材料を使用する生理用ナプキンのCT値と近いため、おむつあるいは生理用ナプキンを描画することがきわめて難しい。しかるに、本発明者らは、撮像情報の情報処理、またさらに画像処理を行うことにより、おむつを描画するが可能であることを知見したのである。
しかし、これには、多大な手間を要する。そこで、簡易的な方策をも探求したところ、近年のCAD技術を応用すればよいことに知見を得た。
すなわち、既知のダミー人形の形状とこれに装着した状態における既知の吸収性物品の形状との関係(関係1)は、写真撮影などを経て容易に3次元(CAD)情報として予め知っておくことができる。しかるに、撮影した画像におけるダミー人形に、関係1に基づき、当該撮像に供した吸収性物品の形状を当て嵌め、その吸収性物品と撮像した排液との関係(関係2)を把握し、当該吸収性物品における排液の形状などを、画像上またはCAD画面上で把握することにより、体液の吸収形態を把握することができるのである。