(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241761
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】非接触充電装置
(51)【国際特許分類】
H01F 38/14 20060101AFI20171127BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20171127BHJP
【FI】
H01F38/14
H02J50/10
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-507987(P2015-507987)
(86)(22)【出願日】2014年2月19日
(86)【国際出願番号】JP2014000838
(87)【国際公開番号】WO2014155946
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2016年10月21日
(31)【優先権主張番号】特願2013-65853(P2013-65853)
(32)【優先日】2013年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】定方 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】藤田 篤志
(72)【発明者】
【氏名】大森 義治
(72)【発明者】
【氏名】別荘 大介
【審査官】
久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−231603(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/099170(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0089768(US,A1)
【文献】
特開2014−011332(JP,A)
【文献】
特開2013−219210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/14
H02J 50/10−50/12
B60L 1/00−3/12、7/00−13/00
B60L 15/00−15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電コイルと受電コイルとが互いに対向して配置される非接触充電装置であって、
前記送電コイル及び前記受電コイルの少なくとも一方は、
磁性体と、
前記磁性体に巻回されたコイルと
を備え、
前記磁性体は、両端部において、前記コイルが巻回されていない露出部を有し、
前記露出部のうち、前記送電コイルまたは前記受電コイルと対向する面の露出部は、前記送電コイルまたは前記受電コイルと対向しない面の露出部よりも広くなっており、
前記磁性体の外周には、前記コイルの巻回方向に沿って、間隔を空けて配列した複数のリブが設けられており、
前記送電コイルまたは前記受電コイルと対向する面に配列した前記複数のリブの間隔は、前記送電コイルまたは前記受電コイルと対向しない面に配列した前記複数のリブの間隔よりも狭く、
前記コイルは、前記リブ間に巻回されている、非接触充電装置。
【請求項2】
前記コイルは、連続した1本のコイルからなる、請求項1に記載の非接触充電装置。
【請求項3】
前記コイルのうち、前記送電コイルまたは前記受電コイルと対向しない面に巻回されたコイルの段数は、前記送電コイルまたは前記受電コイルと対向する面に巻回されたコイルの段数よりも少ない、請求項1または2に記載の非接触充電装置。
【請求項4】
前記磁性体は、両端部において、前記送電コイルまたは前記受電コイルと対向しない面に、前記露出部を有していない、請求項1に記載の非接触充電装置。
【請求項5】
送電コイルと受電コイルとが互いに対向して配置される非接触充電装置に用いられる送電コイルであって、
磁性体と、前記磁性体に巻回されたコイルとを備え、
前記磁性体は、両端部において、前記コイルが巻回されていない露出部を有し、
前記露出部のうち、前記受電コイルと対向する面の露出部は、前記受電コイルと対向しない面の露出部よりも広くなっており、
前記磁性体の外周には、前記コイルの巻回方向に沿って、間隔を空けて配列した複数のリブが設けられており、
前記受電コイルと対向する面に配列した前記複数のリブの間隔は、前記受電コイルと対向しない面に配列した前記複数のリブの間隔よりも狭く、
前記コイルは、前記リブ間に巻回されている、送電コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気自動車やプラグインハイブリッド車のような電気推進車両等の充電に用いられる非接触充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図11は、従来の非接触充電装置の送電コイル101と受電コイル102と磁気遮蔽用アルミ板103を示す断面図である。
図11において、送電コイル101および受電コイル102は、棒磁部104にコイル105が巻回された構成になっている。送電コイル101で発生した主磁束106は、受電コイル102の磁極部107から出て行き、受電コイル102の磁極部108へ進入する。さらに、主磁束106は、受電コイル102の棒磁部104の中を通り、受電コイル102の磁極部107から出て行き、送電コイル101の磁極部108へ進入して、磁束ループを作る。この主磁束106が、送電コイル101と受電コイル102と磁気結合することにより、電力が非接触で伝達される。磁気遮蔽用アルミ板103は、磁束が送電コイル101、受電コイル102の背面に流出するのを防ぐためのものであり、送電コイル101、受電コイル102の背面にそれぞれ配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開20128−151311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、
図11のように構成された送電コイル101、受電コイル102は、磁束が磁極部107、108から放射し易い。そのため、送電コイル101で発生した主磁束106の一部は、受電コイル102とは磁気結合せず、近傍に配置されている磁気遮蔽用アルミ板103との間で磁気結合し、不要磁束ループを作る。その結果、磁気遮蔽用アルミ板103を加熱することになり、火傷の危険が発生し、充電効率も低下するといった課題を有していた。
【0005】
さらに、電気推進車両において、このような充電効率の低下や発熱の危険性が生じることは、走行燃費の向上が妨げられるだけでなく、安全上好ましくない。
【0006】
本発明は、送電コイルおよび受電コイルと、その近傍に配置される磁気遮蔽用のアルミ板との磁気結合を低減して、充電効率及び安全性を向上させることのできる非接触充電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の非接触充電装置は、送電コイルと受電コイルとが互いに対向して配置された非接触充電装置であって、送電コイル及び前記受電コイルの少なくとも一方は、磁性体と、磁性体に巻回されたコイルとを備え、磁性体は、両端部において、コイルが巻回されていない露出部を有し、露出部のうち、送電コイルまたは受電コイルと対向する面の露出部は、送電コイルまたは受電コイルと対向しない面の露出部よりも広くなっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、送電コイルと受電コイルとの磁気結合を妨げることなく、送電コイルまたは受電コイルの近傍に配置された磁界遮蔽用のアルミ板との磁気結合を低減し、充電効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる非接触充電装置の断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかる非接触充電装置の比較図である。
【
図3】(a)及び(b)は、リッツワイヤの断面図である。
【
図4】本発明の変形例1にかかる非接触充電装置の断面図である。
【
図5】本発明の変形例2にかかる非接触充電装置の断面図である。
【
図6】本発明の変形例3にかかる非接触充電装置の断面図である。
【
図7】本発明の変形例4にかかる非接触充電装置の断面図である。
【
図8】本発明の変形例5にかかる非接触充電装置の断面図である。
【
図9】磁性体ケースへのコイル巻きまわし断面図である。
【
図10】磁性体ケースへのコイル巻きまわし断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態における非接触充電装置の断面図である。
【0012】
本実施形態における非接触充電装置は、互いに対向して配置された送電コイル1と受電コイル2とを備えている。すなわち、非接触充電装置は、地面側に配置される送電コイル1、車両側に配置される受電コイル2、および双方に備えられた磁気遮蔽用アルミ板3からなる。送電コイル1、受電コイル2はそれぞれ棒磁部(磁性体)4と、棒磁部4に巻回されたコイル5を備えている。
【0013】
図1に示すように、非接触充電装置において、棒磁部4は、両端部において、コイル5が巻回されていない露出部7、8を有し、露出部7、8のうち、送電コイル1または受電コイル2と対向する面の露出部7は、送電コイルまたは受電コイルと対向しない面(磁気遮蔽用アルミ板3と対向する面)露出部8よりも広くなっている。すなわち、送電コイル1のコイル5は棒磁部4の中央に巻回されており、受電コイル2と対向する側よりも磁気遮蔽用アルミ板3と対向する側のほうがコイル5で棒磁部4を覆う領域が広い構成になっている。つまり、コイル5で覆われていない棒磁部4の露出部は、受電コイル2と対向する側の露出部7(以降、内側領域7という)のほうが、磁気遮蔽用アルミ板3と対向する側の露出部8(以降、外側領域8という)よりも広い構成になっている。
【0014】
本実施形態の効果をよりわかりやすくするために、比較例を
図2に示す。
図2は、内側領域7と外側領域8が同じ広さの場合を示した図である。
【0015】
図1、2を基に、発生する不要磁束ループの違いについて説明する。送電コイル1で発生した主磁束が、内側領域7を経由して受電コイル2の内側領域7へ伝達されることで、主磁束6のループが発生する。しかし、送電コイル1で発生した主磁束6全てが内側領域7から受電コイル2側へ伝達するわけではなく、主磁束は棒磁部4のコイル5で覆われていない部分から放射状に拡散する。つまり、主磁束は受電コイル2側以外にも拡散する。このとき、主磁束の一部が磁気遮蔽用アルミ板3との間で不要磁束ループを作成する。
【0016】
拡散する磁束量、つまり不要磁束ループ9としてロスする磁束量は、拡散する表面積の影響を受けるため、拡散させたい側(本実施例においては内側領域7)の表面積を大きくし、拡散させたくない側(本実施例においては外側領域8)の表面積を小さくすることで不要磁束量を削減することができる。その結果、送電コイル1から受電コイル2への送電効率を向上させることが可能になる。
【0017】
したがって、内側領域7と外側領域8を同じ幅とした
図2の構成の場合、発生する不要磁束ループは、
図1の構成の場合よりも大きくなり、送電効率は低くなる。しかし、
図1のように、内側領域7よりも外側領域8を狭くすることで主磁束のロスを削減し、送電効率を上げることが出来る。また、不要磁束ループ9を遮断、低減することで、磁気遮蔽用アルミ板3を不要に加熱することなく充電効率と安全性を向上させることができる。
【0018】
図3(a)、(b)は、本実施形態で使用するコイル5の一例を示す図である。コイル5は、複数の素線13が束ねられたリッツワイヤである。リッツワイヤを用いることで、巻回途中でコイル径を自由に変更することが出来るため、
図3(a)、(b)に示すように、磁気遮蔽用アルミ板3と対向する側の領域でのコイルの水平方向(コイル5の巻回方向)の直径を、受電コイル2と対向する側の領域でのコイルの水平後方の直径よりも大きくすることが可能になる。そのため、同じ巻数で内側領域7と外側領域8の幅を変えることが可能になる。
【0019】
なお、本実施形態では、リッツワイヤの例を用いて説明を行ったが、コイル径を巻回途中で変更可能なコイルであれば、どのようなコイルであってもよい。
【0020】
(変形例1)
図4は、内側に巻くコイル5を縦長の楕円状にした場合の変形例を示す図である。この形状の場合、
図1に示したような、外側に巻くコイル5を横長の楕円形にした場合よりも、コイル5の巻回数が増えるため、送電コイル1(受電コイル2)で発生する主磁束をさらに増加させることができる。
【0021】
(変形例2)
図5は、外側に巻くコイル5を横長の楕円形にした上で、棒磁部4の終端部まで巻回した場合の変形例を示す図である。この形状の場合、磁気遮蔽用アルミ板3との結合による不要磁束をさらに低減し、磁気遮蔽用アルミ板3の加熱を防ぐことが可能になる。
【0022】
(変形例3)
図6は、外側に巻くコイル5のうち、棒磁部4の中心部と終端部でコイルの扁平率を変えた場合の変形例を示す図である。通常、主磁束や不要磁束は送電コイル1(受電コイル2)に対して均一に発生しない。したがって、磁束が発生しやすい巻き始めと巻き終わりを扁平にすることで、リッツワイヤ内の素線が均一に磁界に接することが可能となり、リッツワイヤ内の素線に均一に電流を流すことが出来る。そのため、リッツワイヤでの損失を低減することが可能となる。
【0023】
(変形例4)
図7は、内側に巻くコイル5を多層(多段)にした場合の変形例を示す図である。この形状の場合、外側に巻くコイル5の段数を内側に巻くコイル5の段数よりも少なくすることで、磁気遮蔽用アルミ板3との結合を低減することが可能になり、不要磁束の低減や磁気遮蔽用アルミ板3の加熱を防ぐことが可能になる。
【0024】
(変形例5)
図8は、本発明の変形例5における非接触充電装置の断面図である。本変形例における送電コイル1および受電コイル2は、棒磁部4の終端部が対向するコイル側に突き出した形状になっている。終端部を対向する側へ突き出すことで、送電コイル1(受電コイル2)で発生する磁束を効率よく対向するコイルへ伝達させることが可能になる。なお、突き出し部12の上面高さを、コイル5上部より低くなるように設定するとさらに周囲への磁束漏洩を少なくすることが出来る。しかし、本発明の効果を得る上では、突き出し部12の上面高さがコイル上部より高くなっていてもよい。
【0025】
本変形例においては、突き出し部12の上面以外の全てをコイル5で覆っている。コイルの巻き数は内側と外側で同じであるため、外側に巻くコイル5を横長の楕円形にしている。この形状の場合も同様に、磁気遮蔽用アルミ板3との結合による不要磁束を低減し、磁気遮蔽用アルミ板3の加熱を防ぐことが可能になる。
【0026】
なお、変形例1のように、内側に巻きつけるコイル5を縦長の楕円形にすることで巻き数を合わせるようにしても良い。さらに、他の変形例のようなコイル形状にしても同様の効果を得ることが可能である。
【0027】
(コイルの巻きつけ方)
図9、10にコイル5の巻きつけ方の一例を示す。棒磁部4を覆うように備えられたケース10には、コイル5を巻きつけるためのリブ11が設けられている。ここで、リブ11は、棒磁部4の外周に、コイル5の巻回方向に沿って、間隔を空けて配列している。コイル5は、図中の矢印で示すように、このリブ11間にテンションを掛けながら巻回される。リブ11の間隔を狭くするとコイル5は縦長の楕円形になり、リブ11の間隔を広くするとコイル5は横長の楕円形になる。
図9、11においては、一部のリブ11の間にのみコイル5を巻回した例を図示しているが、その他のリブ11の間にも同様にコイル5は巻回されている。
【0028】
なお、
図9、11では、リブ11が等間隔に並んだ例を示しているが、等間隔である必要はない。例えば、変形例3のように、途中でリブ11の間隔を変更しても良い。また、ランダムに間隔を変更しても良い。
【0029】
また、本発明は、コイル5の巻き方を内側と外側で変える(棒磁部4に巻かれている範囲を変える)ことが特徴であり、その方法はリブ11用いたものに限らない。例えばリブ11を用いなくとも、コイルの扁平率を変えられる巻き方であれば同様の効果を奏することが可能である。
【0030】
さらに、本発明では、コイル5を隙間無く巻回する例を用いて説明を行ったが、外側領域8が小さくなる構成であれば一部に隙間があってもよい。
【0031】
なお、本発明の効果を効率よく奏するためには、送電コイル1と受電コイル2の両方に本発明を採用すればよいが、片方のコイルにのみ採用しても効果はある。さらに、それぞれ異なる実施形態のコイルを採用しても効果を奏することは可能である。
【0032】
以上のように構成された送電コイル1および受電コイル2により、磁気遮蔽用アルミ板3との磁気結合、すなわち不要磁束ループ9を低減し、充電効率と安全性を向上させることが可能となる。また周囲への漏洩磁束を低減することが可能となり、周辺の電気部品や、装置外部に接近する可能性がある金属異物を加熱し難くなり、安全性をさらに向上させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、電気自動車やプラグインハイブリッド車のような電気推進車両等の充電に用いられる非接触充電装置に適用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 送電コイル
2 受電コイル
3 磁気遮蔽用アルミ板
4 棒磁部(磁性体)
5 コイル
6 主磁束
7 内側領域(露出部)
8 外側領域(露出部)
9 不要磁束ループ
10 ケース
11 リブ
12 突き出し部
13 素線