(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6241768
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20171127BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20171127BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/36
A61Q19/10
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-155972(P2016-155972)
(22)【出願日】2016年7月22日
【審査請求日】2017年1月12日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508241624
【氏名又は名称】株式会社ドクターズチョイス
(72)【発明者】
【氏名】諸富 勝成
(72)【発明者】
【氏名】中井 綾
(72)【発明者】
【氏名】中野 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 克
(72)【発明者】
【氏名】山本 明男
【審査官】
▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/024299(WO,A1)
【文献】
特開2012−171875(JP,A)
【文献】
特開2013−253036(JP,A)
【文献】
特開2014−084233(JP,A)
【文献】
特開2015−205791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)炭酸塩及び炭酸水素塩から選ばれる1種又は2種以上 20〜60質量%、
(b)固体状の有機酸 20〜60質量%、並びに
(c)平均粒子径0.5〜70μmの粉末状で球状又は略球状の金属マグネシウム 1〜10質量%
を含有する入浴剤組成物。
【請求項2】
(b)固体状の有機酸が、コハク酸、クエン酸及びフマル酸から選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載の入浴剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸塩と有機酸を含有する炭酸ガス発泡性入浴剤は、炭酸ガスによる血行促進効果を有することから広く使用されている(特許文献1〜3)。
【0003】
一方、水素を高濃度に溶解した水(水素水)は、抗酸化作用を有することから、これを飲用すれば体内で発生する活性酸素を消去して健康によいとされている。かかる観点から、水素水を短時間で生成させる水素発生剤が報告されている(特許文献4〜6)。水素発生剤としては、マグネシウム金属とトルマリン鉱石を用いる方法(特許文献4)、粒度50メッシュ以上200メッシュ以下の金属マグネシウム粉末を5〜20重量%と、固体状有機酸15〜50重量%を配合した錠剤(特許文献5)等が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−70609号公報
【特許文献2】特開2001−139454号公報
【特許文献3】特開2004−83584号公報
【特許文献4】特開2002−336877号公報
【特許文献5】特開2005−052811号公報
【特許文献6】特開2009−126736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、金属マグネシウムを使用する特許文献4や5の水素発生手段では、マグネシウムと水との反応が遅く、短時間で十分な水素を水中に溶解させることができなかった。そこで、金属マグネシウムに代えて水素化マグネシウムを使用する手段が開発された(特許文献6)。
そこで本発明者は、炭酸ガスと水素ガスの両方を発生する組成物を開発すべく、炭酸塩と有機酸と水素化マグネシウムとを含有する組成物を製造したところ、水素化マグネシウムは有機酸と反応して速やかに水素を発生するため、安定な組成物が得られなかった。
従って、本発明の課題は、使用するまで安定であり、かつ水と接触したときに速やかに炭酸ガスと水素ガスとを発生する化粧料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、水素化マグネシウムに代えて水素ガス発生速度が遅いとされている金属マグネシウムと炭酸塩と有機酸とを用いて組成物を製造して、炭酸ガスと水素ガスの発生状況を検討したところ、金属マグネシウムの平均粒子径を70μm以下に調整すれば水素ガスの発生が速やかであり、入浴剤として用いたときの使用感が良好で、かつ長期保存しても安定な化粧料組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔4〕を提供するものである。
【0008】
〔1〕(a)炭酸塩及び炭酸水素塩から選ばれる1種又は2種以上、(b)固体状の有機酸、並びに(c)平均粒子径70μm以下の粉末状金属マグネシウムを含有する化粧料組成物。
〔2〕(c)粉末状金属マグネシウムが、球状又は略球状である〔1〕記載の化粧料組成物。
〔3〕(b)固体状の有機酸が、コハク酸、クエン酸及びフマル酸から選ばれる1種又は2種以上である〔1〕又は〔2〕記載の化粧料組成物。
〔4〕入浴剤組成物である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の化粧料組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の化粧料組成物は、水と接触させると速やかに炭酸ガスと水素ガスを発生し、その水中に高濃度の炭酸ガスと水素ガスとを溶解させることができるため、入浴剤、パック、フェイスマスク等として有用である。また、長期間保存しても包装袋の膨張等がなく、長期安定性にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の化粧料組成物は、(a)炭酸塩及び炭酸水素塩から選ばれる1種又は2種以上と、(b)固体状の有機酸と、(c)平均粒子径70μm以下の粉末状金属マグネシウムを含有する。
【0011】
(b)炭酸塩、炭酸水素塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。このうち、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムが好ましい。これらの炭酸塩、炭酸水素塩は、1種でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
成分(a)の含有量は、発泡性、炭酸ガス発生能の点から、化粧料組成物中に20〜60質量%であるのが好ましく、より好ましくは25〜55質量%、さらに好ましくは30〜50質量%である。
【0013】
(b)固体状の有機酸としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、コハク酸、マロン酸、マレイン酸、アジピン酸等が挙げられる。このうち、コハク酸、フマル酸、クエン酸が、炭酸ガス発生量、水素ガス発生能の点でより好ましい。これらの有機酸は1種でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
成分(b)の含有量は、炭酸ガス発生量、水素ガス発生能の点から、化粧料組成物中に20〜60質量%が好ましく、25〜55質量%がより好ましく、30〜50質量%がさらに好ましい。
【0015】
(c)粉末状金属マグネシウムは、平均粒子径70μm以下のものを使用するのが水素ガス発生性の点から必要である。平均粒子径が70μmを超えると水素ガス発生が遅く、入浴剤等の化粧料として使用するうえで好ましくない。好ましい平均粒子径は68μm以下であり、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。なお、平均粒子径の下限は0.5μm以上が好ましい。成分(c)の平均粒子径は、JISの篩を用いた体積平均粒子径である。粒子系分布はレーザー回析/散乱式粒度分布測定装置などによって、より正確に測定できる。
【0016】
また(c)粉末状金属マグネシウムの形状は、均一な水素ガス発生及び入浴剤等の化粧料としての使用感(ざらつき等)の点から球状又は略球状であるのが好ましい。
【0017】
成分(c)の含有量は、水素ガス発生量、使用感等の点から化粧料組成物中に1〜15質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましく、1〜8質量%がさらに好ましい。
【0018】
本発明の化粧料組成物には、前記成分の他に、硫酸塩、塩化ナトリウム、ホウ砂、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、酸化カルシウム等の無機塩;無水ケイ酸、メタケイ酸、ホウ酸等の無機酸類;油脂類;生薬、ハーブ類;香料、ポリエチレングリコール等を配合することができる。
【0019】
本発明の化粧料組成物の形態は、錠剤、顆粒剤、粉末、ブリケット剤等が挙げられる。このうち、入浴剤組成物とする場合には、錠剤、顆粒剤、ブリケット剤がより好ましい。これらの剤形は、それぞれの形態に応じた通常の方法によって製造できるが、製造時水を使用しないで製造するのが好ましく、例えば錠剤の場合には乾式圧縮成形法により製造するのが好ましい。
【0020】
本発明の化粧料組成物は、用時水と接触させて炭酸ガス及び水素ガスを発生させるものであることから、入浴剤が好ましいが、用時水と接触させて使用できる乳液、パック、ジェル、化粧水、フェイスマスクとしても使用可能である。入浴剤の場合には、浴湯に本発明の入浴剤を投入し、炭酸ガス及び水素ガスが発生した後に入浴するのが好ましい。
【実施例】
【0021】
次に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
【0022】
実施例1
平均粒子径の異なる4種類の粉末マグネシウム(表1)とコハク酸を用いて、水中の溶存水素濃度を経時的に測定した。水素濃度の測定には、マイクロセンサー(ユニセンス社)を用いた。
【0023】
【表1】
【0024】
(1)ビーカーサイズ(2L)での検討
マグネシウム10mg及びコハク酸50mgを使用し、水素発生状況、最大濃度、持続時間を測定した。その結果を表2に示す。平均粒子径が70μm以下のマグネシウムは水素発生濃度が良好であった。水素発生持続時間は、12時間を超えていた。なお水素が出始めるまでの時間は、いずれのマグネシウムも3〜10分であった。
【0025】
【表2】
【0026】
(2)30Lサイズでの検討
マグネシウム150mg及びコハク酸750mgを使用し、水素発生状況、最大濃度、持続時間を測定した。その結果を表3に示す。
【0027】
【表3】
【0028】
水素ガス発生状況は、平均粒子径70μm以下の小さいマグネシウムでより良好であった。いずれの場合も、水素ガスは12時間以上発生し続け、ゆっくりと水素ガスが発生していることが確認された。
【0029】
(3)混合性
炭酸水素ナトリウム(比重2.20)30gと粉末マグネシウムとの混合性を検討した。この結果、A〜D(0.5g)で混合性は全て良好で、目視により均一に混合されていることが確認された。
【0030】
実施例2
Dのマグネシウム500mgと炭酸水素ナトリウム10gを混合し、アルミ袋に詰め、室温又は40℃に保存した。21日後に包装袋を観察した結果、全く膨張は認められなかった。
【0031】
実施例3
炭酸ガスを発生する組成物(炭酸水素ナトリウム20g、コハク酸20g)に、4種類のマグネシウム1gを配合し、実際に浴槽(200L)で入浴した際の使用感について、7名のボランティアで検討した。比較例として、従来品の水素化マグネシウムを用いた市販の水素入浴剤を用いた。その結果を表4に示す。
【0032】
【表4】
【0033】
水素化マグネシウムは球形ではないため、粉体の表面が角張っており、ザラザラし使用感が良好ではなかった。一方、球形のマグネシウムを用いた場合は、粒径が小さくなるほどざらつき感が減ることがわかった。粉体マグネシウムの表面の形状が、使用感に大きな影響を与えることがわかった。
【0034】
実施例4
炭酸ガスを発生する組成物(炭酸水素ナトリウム及びコハク酸)に、Aの粉体マグネシウム及び無水硫酸ナトリウムを配合して、40gの重量の炭酸ガス及び水素ガスを同時に発生する打錠品を調製した(マグネシウム 1g、炭酸水素ナトリウム 14g、コハク酸 14g、無水硫酸ナトリウム 11g)。粉体マグネシウムはほぼ均一に混合されていることを確認した。200Lの湯をはった浴槽に打錠品1錠を投入した。投入直後より盛んに炭酸ガスが発生し、数分後より水素ガスが小さな泡としてゆっくりと発生することを目視にて確認した。湯のpHは、6.73であった。
室温又は40℃の条件下に22日間保存した場合、包装袋は全く膨張していなかった。
【要約】
【課題】長期間安定であり、用時水と反応して炭酸ガス及び水素ガスを発生する化粧料組成物の提供。
【解決手段】(a)炭酸塩及び炭酸水素塩から選ばれる1種又は2種以上、(b)固体状の有機酸、並びに(c)平均粒子径70μm以下の粉末状金属マグネシウムを含有する化粧料組成物。
【選択図】なし