(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Pep-ELISA法において、測定対象となるペプチドアプタマーを基板上に固定するためのペプチドであって、配列表の配列番号1の配列を有する、スタンドペプチド。
配列表の配列番号1
SEGEWQQQQHQWAHQE
前記標的分子は、酵素、受容体、抗体、転写因子、シグナル伝達因子、特定の配列に結合するペプチド、特定の配列に結合するタンパク質、核酸、脂質、糖及び低分子化合物からなる群から選ばれるいずれかの物質であることを特徴とする、請求項5又は6に記載のPep-ELISA法。
前記酵素は、NM23-H1、カテプシンE、ジンジパイン、メチルグアニン・メチル転移酵素、スーパーオキシドディスムターゼ1からなる群から選ばれるいずれかのものであることを特徴とする、請求項7に記載のPep-ELISA法。
前記ペプチドアプタマーは、前記酵素、前記受容体、前記抗体、前記転写因子及びシグナル伝達因子からなる群から選ばれるいずれかのタンパク質の特定の配列に結合するペプチドであることを特徴とする、請求項6〜8のいずれかに記載のPep-ELISA法。
前記標識物質は、GFP、フィコシアニン、フルオレセイン、及びローダミンからなる群から選ばれる標識で標識された、前記標的分子と反応する、酵素、基質、及び物質(酵素及び基質を除く。)からなる群から選ばれるいずれかのものである、ことを特徴とする請求項5に記載のPep-ELISA法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明をより具体的に説明する。上述した通り、本発明は、Pep-ELISA法において、測定対象となるペプチドアプタマーを基板上に固定するためのペプチドであって、配列表の配列番号1の配列を有する、スタンドペプチドである。
配列表の配列番号1
SEGEWQQQQHQWAHQE
【0025】
本発明のスタンドペプチドは、固相結合部位と、支持部位と、標的結合部位とを備える、全体として親水性のペプチドである。疎水性のペプチドでは、固相への固定化の際に固相(基板)表面と反応し、このスタンドペプチドの標的結合部位(ペプチド)の配向性が揃わなくなるからである。ここで、標的結合部位は、このスタンドペプチドの固相に結合されていない末端(以下、「フリー末端」という)と、そこに結合されたペプチドアプタマーとによって構成される。
【0026】
このスタンドペプチドは、固相結合部位で固相(基板)と結合し、上記のように、標的結合部位で標的タンパク質と結合する。支持部位は、上記固相結合部位と標的結合部位との間に挟まれており、このスタンドペプチドが溶液中で安定して固相面から立ちあがること、及び標的分子と結合したときにもその標的分子を支持する役割を有する。
このため、本発明のスタンドペプチドの支持部位は、安定な構造を有する領域であるαヘリックス構造となっている。αヘリックス構造は、ヘモグロビンその他の様々なタンパク質で頻繁に見られる二次構造であり、(i)右巻きのらせん状構造である、(ii)らせんが一巻きする中にアミノ酸残基が3.6個含まれる、(iii)らせんのピッチは0.54nmである、という特徴を有する、安定な構造である。このため、標的結合部位の配向性を揃え、標的結合部位に標的分子が結合したときにも安定して標的分子を支えることができる。
【0027】
本発明のスタンドペプチドは、以上のようなαへリックス構造を有する支持部を有するため、基板上に固定化した際のペプチド配向性を保ち、検出感度向上および安定した再現性を実現することができる。
また、前記スタンドペプチドは、配列表の配列番号1のアミノ酸配列の5’末端側にHOOC−(EDC, Sulfo−NHS))−NH
2−を含むことが、測定対象となるペプチドアプタマーとの結合性が高いことから好ましい。さらにまた、配列表の配列番号1のアミノ酸配列の3’末端側に、−HS−EMCS−NH
2を有する- HOOC-(EDC, Sulfo-NHS)−NH
2を含むことが、固相との安定した結合を形成する上で好ましい。
【0028】
上記スタンドペプチドは、例えば、ミオグロビンA鎖(A1〜A16、
図3参照)中の疎水性アミノ酸をGlnに置換し、この配列を使用して作製することができる。ここで、本発明のスタンドペプチドは、N末端、C末端のいずれかの末端を基板上に固定するようにすることができる。
例えば、
図4(A)に示すアミノ酸配列を有するペプチドをN末端側フリータイプのスタンドペプチドとして作製することができる。このスタンドペプチドは、ペプチドアプタマーのカルボキシル基と結合する。また、
図4(B)に示すアミノ酸配列を有するペプチドをC末端側フリータイプのスタンドペプチドとして作製することができる。
【0029】
ここで、前記標的分子としては、酵素、受容体、抗体、転写因子、シグナル伝達因子、特定の配列に結合するペプチド、特定の配列に結合するタンパク質、核酸、脂質、糖及び低分子化合物からなる群から選ばれるいずれかの物質であることが、分子量の点で扱いやすいことから好ましい。
酵素は、特定の生化学反応の触媒作用を持つタンパク質である。例えば、NM23-H1、カテプシンE、ジンジパイン、メチルグアニン・メチル転移酵素(MGMT)、スーパーオキシドディスムターゼ1(SOD1)等を使用することが、反応の検出が容易であることから好ましい。これらの中でも、カテプシンE、NM23-H1等を標的分子として好適に使用することができる。
【0030】
受容体は、細胞膜上に存在し、ホルモンや神経伝達物質等と結合して、細胞の内側に向けて新しい情報を送り込むタンパク質である。抗体は、抗原に対して産生され、抗原と特異的に反応するタンパク質をいう。例えば、Gタンパク質共役型受容体、アセチルコリン受容体、チロシンキナーゼ受容体及びステロイドホルモン受容体等を挙げることができる。
転写因子は、遺伝子の転写を制御する2000種以上の因子の総称であり、通常、遺伝子の転写領域の5’側上流に結合して転写を制御する因子をいう。ステロイドホルモンレセプターも転写因子に含まれる。例えば、NF-κB(nuclear factor-kappa B)、HNF(hepatocyte nuclear factor)及びKLF(Kruppel-like factor)等を挙げることができる。
【0031】
シグナル伝達因子は、細胞内の種々のシグナル伝達に関与する因子の総称である。例えば、βカテニン、カスパーゼ及び各種サイトカイン(インターロイキン、TNF-α)等を挙げることができる。
前記特定の配列に結合するペプチドは、NM23-H1結合ペプチド、カテプシンE結合ペプチド、MGMT結合ペプチド、及びSOD1結合ペプチドからなる群から選ばれるいずれかのペプチドであることが好ましい。
【0032】
特定の配列に結合するタンパク質は、上述した酵素、抗体、転写因子、及びシグナル伝達因子からなる群から選ばれるタンパク質であることが好ましい。
前記核酸は、天然に存在する核酸又は人工合成した核酸であり、イノシン酸その他のヌクレオチド構造を有する化合物を含む核酸も包含する。
前記脂質は、水に不溶で有機溶媒に可溶であり、加水分解によって脂肪酸を遊離する、生物体によって利用される物質である。例えば、リン脂質、糖脂質、脂肪酸及びステロイド等を挙げることができる。
【0033】
前記糖は、広義には、ムチン、プロテオグリカン、グリコーゲン、キチン等を含む炭水化物の総称であり、狭義には、ブドウ糖、果物、ショ糖、乳糖及び麦芽糖その他の単糖類、二糖類をいう。
前記低分子化合物は、分子量が約1,000Da以下の分子をいい、ビタミン、ステロイドホルモン、ATP等を挙げることができる。
前記ペプチドアプタマーは、上述した、酵素、受容体、抗体、転写因子、シグナル伝達因子、特定の配列に結合するペプチド、特定の配列に結合するタンパク質、核酸、脂質、糖及び低分子化合物からなる群から選ばれるいずれかの物質と結合し得るものである。
【0034】
ここで、カテプシンEは主要な細胞内アスパラギン酸プロテアーゼの一つであり、動物の胃、胸腺、又は脾臓等に限局的に分布する非リソソーム性酵素である。カテプシンEは、生理活性ペプチドの生成、外来抗原のプロセシング、癌浸潤や転移等が起こるときに生じる、生理的及び病理的なタンパク質分解に関与していることが知られている。
また、NM23-H1は、1988年に癌転移抑制遺伝子として初めて同定された遺伝子であり、NM23-H1の発現の低下と乳癌やメラノーマ等の癌転移との間に相関関係があることが知られている。
【0035】
ジンジパインは、歯周病の病原菌であるPorphyromonas gingivalis(ジンジバリス菌)が産生する、主要なシステインプロテアーゼであり、トリプシン様活性を示す。一次構造上、他のプロテアーゼとの相同性を示さないため、独自のグループとして分類されている。切断部位の特異性からArg-Xを切断するArg-gingipain(Rgp)とLys-Xを切断するLys-gingipain(Kgp)とに分類される。
MGMT(メチルグアニン・メチル転移酵素)は、DNAの脱メチル化酵素であり、グアニンからのメチル基の除去を通じて、DNA鎖に生じた損傷を直接消去する作用を持つ。
【0036】
SOD1は、スーパーオキシドディスムターゼ(Superoxide dismutase, SOD)の1つである。SODは、スーパーオキシドアニオン(・O
2−)を酸素と過酸化水素とに不均化する酸化還元酵素である。活性中心に銅(II)イオンと亜鉛(II)イオン(Cu, ZnSOD)、またはマンガン(III)イオン(MnSOD)や鉄(III)イオン(FeSOD)のように二価または三価の金属イオンを持った酵素で、細胞質(Cu, ZnSOD) やミトコンドリア(MnSOD)に多く局在している。SOD1は亜鉛を含む、2つのサブユニットからなる二量体である。
【0037】
本発明では、上述した構造を有するスタンドペプチドを固相に固定し、上記のような標的分子の配向性が揃うように、上記スタンドペプチドの標的結合部位に結合させる。上記のように、本発明のスタンドペプチドは固相から立ちあがっており、安定なαヘリックス構造を含むために標的分子を効率よく捕捉することができる。
本発明のスタンドペプチドを使用した場合と使用しない場合に、標的結合ペプチドがどのような状態で存在しているかを模式的に、それぞれ、
図1及び2に示す。
図1に示すように、本発明のスタンドペプチドを使用しない場合には、標的結合用ペプチドは、基板(固相)から立ちあがっているものもあるが、倒れ込んで基板に密着した状態になっているものもある。倒れこんでいる場合には、標的分子とうまく結合することができない。標的結合用ペプチドを基板に直接結合させず、ポリエチレングリコール(PEG)を介して結合させた場合にも、同様のことが起こる。
【0038】
これに対し、
図2に示すように、本発明のスタンドペプチドは、上述のように親水性であり、かつ安定なαヘリックス構造を支持部として有しているため、基板に倒れ込むことなく立ちあがっている。これによって、標的結合ペプチドの配向性が揃い、効率よく標的分子を捕捉することができる。さらに、スタンドペプチドの高さがほぼ一定となるために、検出感度を向上させることもできる。
【0039】
以上のような構造とするために、本願発明では、ミオグロビンA鎖(A1〜A16)中の疎水性アミノ酸をグルタミン(Gln)に置換した配列を使用する。ミオグロビンA鎖のA1〜A16の配列を使用したのは、上記の置換を行うことにより、親水性のαヘリックス構造を有するペプチドとすることができるからである。ここで、ミオグロビンA鎖(A1〜A16)の配列(配列表の配列番号1)は下記の通りである。
【0040】
配列表の配列番号1
配列(N→C):SEGEWQQQQHQWAHQE
【0041】
このペプチドのアミノ酸配列を使用して、後述するインビトロ選択法により、下記の配列を有する、N末端フリータイプのαスタンドペプチド(配列表の配列番号2)及びC末端フリータイプのαスタンドペプチド(配列表の配列番号3)を得ることができる。
【0042】
配列表の配列番号2
GGGSEGEWQQQQHQWAHQE
【0043】
配列表の配列番号3
SEGEWQQQQHQWAHQEGGGC
【0044】
インビトロ選択法は、以下のようにして行う。
mRNAとリンカーとの連結は、公知の手法を用いて、直接的又は間接的に、化学的又は物理的に行うことができる。例えば、mRNAの3’末端にリンカーの末端と相補的な配列を設けておくと、両者をハイブリダイゼーションによって連結することができる。
本発明において、「ライゲーション」又は「ライゲーション反応」は、酵素により促進される反応をいい、具体的には、T4 RNAリガーゼ又はTS2126耐熱性ファージ由来DNAリガーゼを好適に利用することができ、T4 RNAリガーゼを利用することが、連結効率の理由からさらに好ましい。
【0045】
ライゲーション反応前のアニーリングは、60〜100℃にて2〜60分間、ヒートブロック、アルミブロック、ウォーターバスその他の加温用器具にて温めた後、室温で2〜60分間放置して液温を穏やかに低下させ、さらに−5〜10℃に冷却して行うことが好ましい。例えば、90℃で5分間アルミブロック上にて温め、次に70℃で5分間アルミブロック上にて温め、最後に室温で10分間放置した後、氷上に置くようにすることが好ましい。
ライゲーション反応液の組成は、0.1〜2.5U/μLのT4ポリヌクレオチドキナーゼ;0.4〜5U/μLのT4 RNAリガーゼ;10〜250mMのTris-塩酸(pH7.0〜8.0);2.0〜50mMの塩化マグネシウム;2.0〜50mMのジチオスレイトール(DTT);0.2〜5.0のmMのATPを含むものであることが好ましい。反応効率の点から、0.5U/μLのT4ポリヌクレオチドキナーゼ;2.0U/μLのT4 RNAリガーゼ;50mMのTris-塩酸(pH7.5);10mMの塩化マグネシウム;10mMのDTT;1.0mMのATPを含有するものであることが好ましい。この反応液には、必要に応じて、SUPERase・In
TM RNase inhibitor(Ambion社)などのRNA分解酵素阻害剤を添加してもよい。
【0046】
ライゲーション反応を行う反応系の体積は、4.0〜100μLであることが好ましい。反応効率の点から20〜40μLとすることが好ましく、20μLとすると最も反応効率が高い。
この反応系中でのRNAとリンカーとの量比は、5.0〜100pmolのリンカーに対し、mRNAの量を、5.0〜100 pmolとすることが好ましい。
アニーリング反応は、T4ポリヌクレオチドキナーゼ及びT4 RNAリガーゼを除いたライゲーション反応液中で行うことができる。そして、アニーリングの終わった反応液中に、これらの酵素を必要量投入することで、ライゲーション反応を開始させることができる。
ライゲーション反応は、10〜40℃で1分間〜数時間行うのが好ましい。作業効率及び反応効率の面から、20〜30℃で5〜180分間とすることが好ましく、25℃で15分間とすることが最も好ましい。
【0047】
次に、連結体A(mRNAとリンカーとの連結体)を無細胞翻訳系と接触させることによって、タンパク質の合成を行う。ここで、タンパク質を合成するための無細胞翻訳系は、動物由来細胞、植物由来細胞、菌類及び細菌類からなる群から選択することができる。具体的には大腸菌、ウサギ網状赤血球、小麦胚芽抽出物などを使用することができる(Lamfrom H., Grunberg-Manago M., Biochem. Biophys. Res. Commun., 27, 1 (1967))。
生物種により翻訳に利用されるコドンの種類が異なるので、対象となる遺伝子や遺伝子の由来に合わせて無細胞翻訳系を選択することが好ましい。
【0048】
本発明の実施形態においては、前記無細胞翻訳系として、ウサギの血液から得られた網状赤血球細胞のライセートを利用することが好ましい。前記ライセートは、マイクロコッカルヌクレアーゼによって細胞由来のmRNAを分解し、グリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)を加えてカルシウムをキレートし、前記ヌクレアーゼを不活化処理したもの(以下、「マイクロコッカルヌクレアーゼ処理済」という。)とすることが、より好ましい。
【0049】
翻訳反応液の組成は、3.4〜85μLのウサギ網状赤血球ライセート(マイクロコッカルヌクレアーゼ処理済)と0.24〜10 pmolの上記連結体を含む反応バッファー(最終濃度:16〜400mMの酢酸カリウム;0.1〜2.5mMの酢酸マグネシウム;0.2〜50mMのクレアチンリン酸;各0.00〜0.25mMのアミノ酸を含む)を10〜100μL用いるのが好ましい。反応効率の点から、17μLのウサギ網状赤血球ライセート(同上)と1.2〜2.0pmolの上記連結体とを含む反応バッファー(最終濃度:80 mMの酢酸カリウム;0.5mMの酢酸マグネシウム;10mMのクレアチンリン酸;各0.05mMのアミノ酸(メチオニン及びロイシンは各々0.025mM)を25μL用いるのが、さらに好ましい。
また必要に応じて、この反応液に、SUPERase・In
TM RNase inhibitor(Ambion社)などのRNA分解酵素阻害剤を添加してもよい。
【0050】
翻訳反応は20〜40℃で10〜90分間行うことが好ましく、生成効率と作業効率の点から、30℃で20分間行うことが特に好ましい。
翻訳反応後、連結体Aと翻訳産物(タンパク質)との連結(連結体Bの形成)を、高塩濃度条件下にて促進することができる。連結体Bの形成促進は、終濃度0.3〜1.6Mの塩化カリウム及び終濃度40〜170mMの塩化マグネシウム存在下で行うのが好ましい。生成効率の点から、25μLの上記反応液に7〜10μLの3Mの塩化カリウム、及び3μLの1Mの塩化マグネシウム(終濃度:0.60〜0.79mMの塩化カリウム;79〜86mMの塩化マグネシウム)を添加することが、さらに好ましい。
連結体Bの形成促進は、形成効率と作業効率の点から、37℃で90〜120分間反応させることが好ましい。
【0051】
引き続き、連結体Aを翻訳系に投入してタンパク質またはポリペプチド鎖を液相合成する際に、そのC末端(タンパク質連結部位)に、前記mRNAと翻訳されたタンパク質とが個々の分子ごとに連結される。mRNAにピューロマイシンを有するリンカーを結合させた結合体と翻訳系とを接触させると、そのmRNAがピューロマイシンを介して翻訳されたタンパク質と結合した連結体が生成する。
【0052】
翻訳されたタンパク質はさらに、N末端側のペプチドの除去、糖鎖や脂質などの非アミノ酸成分の付加、アミノ酸の翻訳後修飾、又は立体構造や配列構造に基づく前記mRNAに対する親和性結合や、タンパク質の酵素活性によるmRNAの化学修飾その他の翻訳後修飾がなされてもよい。
こうした翻訳後修飾は、前記mRNAにコードされた遺伝子情報に基づいて行われてもよく、前記遺伝子ではなく外的要因に基づいて行われてもよい。例えば、フォールディング等を行うようにすることができる。
【0053】
上記連結体A又は連結体Bは、あらかじめリンカーに標識化合物を結合させておくことによって、容易に検出することができる。そのような標識化合物としては、蛍光性化合物、抗原のエピトープ、放射性同位体等を挙げることができる。放射性同位体としては、
3H、
14C、
32P、
125I若しくは
131I等の放射性同位体を使用することが好ましい。
放射性同位体の利用が困難な場合には、蛍光性化合物を利用することが好ましい。蛍光性化合物としては、フリーの官能基(例えば、活性エステルに変換可能なカルボキシル基、ホスホアミダイドに変換可能な水酸基、又はアミノ基など)を持ち、標識された塩基としてリンカーに連結可能な種々の蛍光色素を用いることが好ましい。このような蛍光色素としては、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコビリタンパク質、希土類金属キレート、ダンシルクロライド又はテトラメチルローダミンイソチオシアネート等を挙げることができる。また、各種GFP等も使用することができる。
【0054】
このαスタンドペプチドを所望のペプチドアプタマーと結合させる場合の模式図を
図5および
図6に示す。上記配列表の配列番号1のアミノ酸配列の5’末端側に−(EDC, Sulfo−NHS)−を含むようにすると、標的分子のカルボキシル基と結合して、標的分子を捕捉することができる。ここで、−(EDC, Sulfo−NHS)−は、
図5に示す手法で上記配列表の配列番号1のアミノ酸配列の5’末端側に結合させる。
または、前記配列表の配列番号1のアミノ酸配列の3’末端側に、−HS−EMCS−を含むようにすると、標的分子のアミノ基と結合して標的分子を捕捉することができる。ここで、(−HS)−EMCS−は、
図6に示す手法で上記配列表の配列番号1のアミノ酸配列の3’末端側に結合させる。
ここで、ペプチドアプタマーとは、進化分子工学によって創出された、標的分子と特異的に強く結合する能力を持ったRNA、DNA及びペプチド分子をいう。Szostakら(1990)による、環境適応(ラテン語でaptus)したオリゴマーを表す用語である。
【0055】
本発明の第2の実施態様は、上述したスタンドペプチドを、(a)基板上にC末端又はN末端で固定するペプチド固定化工程と、(b)前記固定化されたペプチドと標的分子とを反応させ、スタンドペプチドに標的分子を結合させる標的分子結合工程と、(c)標的分子の結合によって生じる反応を、蛍光測定又は吸光度測定で検出する反応検出工程と、を備える、Pep−ELISA法である。
【0056】
ここで、上記(a)の固定化工程では、以下のようにして基板上に、本発明のスタンドペプチドを固定化する。例えば、Peptide Coating Kit (TaKaRa)を使用することができる。この場合には、ペプチドアプタマーと連結した上記スタンドペプチドを、上記キットに添付された反応用バッファーを用いて、所定の濃度となるよう調整し、固定化プレートに所定の量、例えば、25〜100μL/ウェルとなるように分注する。
次いで、このキットに添付されたカップリング試薬を、蒸留水で所定の濃度、例えば、0.5〜2 mg/mLの濃度となるよう溶解し、速やかに、反応プレート(96ウェルマイクロプレート)の各ウェルに5〜20μLずつ添加し、プレートシェーカー等を用いて、所定の時間、よく混合する。混合後、所定の温度で所定の時間、例えば、室温で2時間、反応させる。
【0057】
次いで、反応プレート中の液を捨て、例えば、200μLの蒸留水を各ウェルに添加し、洗浄する。この洗浄操作は、所望の回数、例えば、3回繰り返す。洗浄後、非特異的な吸着を防止するために、各ウェルに、キットに添付されているブロッキング液を所定の量、例えば、200μLずつ添加し、所定の温度で所定の時間、例えば、室温で1時間反応させる。
反応プレート中の液を捨て、例えば、200μLの蒸留水で、各ウェルを洗浄する。この洗浄操作は所望の回数、例えば、3回繰り返す。
【0058】
得られたスタンドペプチドは、標的分子と結合するペプチドと
図5および
図6のようにして連結する。ここで使用する標的分子と結合するペプチド(以下、「標的結合ペプチド」ということがある。)は、標的分子を異種の動物の体内に注入した際に形成される抗体のエピトープ又はその一部と同じ配列のペプチドをいう。こうした標的結合ペプチドを得るための標的分子として好適使用できるものは、上述した通りである。
【0059】
これらの酵素に結合するペプチドは、上述したインビトロ選択法によって、選択することができる。例えば、所望のアミノ酸配列を有するペプチドを合成し、このペプチドを用いて、例えば、以下の条件で、ELISAを行うことができる。
1. ペプチドコーティングキットに、上述した方法に従って、本発明のスタンドペプチドを固定する。
2. 標的分子(例えばNM23-H1)を各ウェルに100 ngずつ加え、室温で1時間半、振蘯する。
3. 200μLのリン酸緩衝生理食塩水(pH8.0、以下「PBS」ということがある。)でウェルを洗浄する(3回繰り返す)。
4. 一次抗体(NM23-H1 Antibody (C-20)、Santa Cruz Biotech社製)および二次抗体(Anti-GST-HRP、GE Healthcare Life Sciences社製)を、それぞれ500倍に希釈して各ウェルに加え、室温で1時間半、振蘯する。
5. 200μLのPBSでウェルを洗浄する(3回繰り返す)。
6. HRP基質(SureBlue、Kirkegaard & Perry Laboratories社製)を、100μLずつ、各ウェルに加え、室温で20分間、振蘯する。
7. 反応停止液(TMB Stop Solution 、Kirkegaard & Perry Laboratories社製)を100μLを、各ウェルに加えて撹拌した、その後、蛍光マイクロプレートリーダー(FluPoro、TaKaRa社)を用いて蛍光測定を行う(測定波長450nm)。
【実施例】
【0060】
以下に、実施例を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に何等限定されるものではない。
(実施例1)αスタンドペプチドの合成
(1)使用したペプチド配列
αスタンドペプチド作成用の配列として、ミオグロビンA鎖の中のA1〜A16のアミノ酸配列をベースとして使用した。この配列を配列表の配列番号X2に示す。
上記のアミノ酸配列(A1〜A16)の中の疎水性アミノ酸をグルタミン(Q)に置換し、SEGEWQQQQHQWAHQE(配列番号1)の配列を使用した。
【0061】
(2)αスタンドペプチドの作製
αスタンドペプチドを基板上に固定化する際に、N末端、C末端のいずれでも固定化できるように、N末端フリー型、C末端フリー型の双方を、以下のようにして作製した。
スペーサー配列を含めた配列(N末側、C末側連結に対応した2種類のペプチド配列:下記配列番号1及び2)を設計し、ペプチド合成会社(オペロン株式会社)に作製を依頼した。純度95%以上のペプチドが得られた。
N末側フリータイプ用αスタンドペプチドが下記の配列(配列番号2)、C末側フリータイプ用αスタンドペプチドが下記の配列(配列番号3)である。
【0062】
配列(N→C):GGGSEGEWQQQQHQWAHQE (配列番号2)
配列(N→C):SEGEWQQQQHQWAHQEGGGC (配列番号3)
なお、C末端側フリータイプ用αスタンドの配列は、連結反応をうまく行うことができるように、スペーサーGGGの配列の後ろに、さらにCysを付加した配列とした。
【0063】
(3)αスタンドペプチドの精製
以上のようにして作製したαスタンドペプチドを、以下のようにしてカテプシンE結合ペプチド(p109)と結合させ、HPLCを用いて精製した。
EDC及びNHS(いずれもThermo Scientific社製)を室温に戻した。
活性化バッファー(0.1M MES, 0.5M NaCl, pH 6.0)でαスタンドペプチドを、1mg/mLに調製した。カップリングバッファー(リン酸緩衝生理食塩水(PBS), 100mM リン酸ナトリウム、150mM NaCl; pH 7.2)で、カテプシンE結合ペプチドをカップリングバッファー中で1mg/mLに調製した。
0.4mgのEDC(約2mM)及び0.6mgのNHS(約5mM)を、上記のように調製した1mLのαスタンドペプチド溶液に加え、室温で15分間反応させた。ここに、1.4μLの2-メルカプトエタノール(終濃度20mM)を加え、EDCをクエンチした。
【0064】
カップリングバッファー(PBS)で平衡化しておいた脱塩カラムにかけて、架橋反応を停止させた。
カテプシンE結合ペプチドをαスタンドペプチドと等モル比となるように、活性化バッファー中に加え、2時間室温にて反応させた。ヒドロキシルアミン終濃度10mMとなるように加えて、反応を停止させた。次いで、過剰な停止試薬を脱塩カラムで除去した。
HPLC条件を以下に示す。
【0065】
カラム:Symmetry 300 C18 columns (5um, 250 mm x 4.6 mm), Waters社
移動相A:1M 酢酸トリエチルアミン (TEAA)
移動相B:100% アセトニトリル
移動相比:開始時(A:B = 100:0) → 30分経過時(A:B = 10:90)となるように勾配を設定。
温度:30°C
測定装置:LC-VPシリーズ、島津製作所
流速:1ml/min
検出器:UV検出器 (260nm, 280nm)、蛍光検出器(励起波長494nm、蛍光波長519nm)
フラクションサイズ:1ml(1分毎に分取)
【0066】
HPLCで分離した結果は
図7の通りであった。図中、原料(αスタンド)は、αスタンドペプチドを表わす。また、原料(p109)はカテプシンE結合ペプチドを表わす。p109とαスタンドペプチドとの結合は、UV(260nm及び280nm)吸収による吸光度、及び蛍光(励起波長494nm、測定波長519nm)の両方で確認した。
蛍光吸収では3つのピーク(ピーク1〜3)が見られたため、それぞれのピークに対応する画分を集めて、カテプシンE結合ペプチドとαスタンドペプチドとの結合を確認した。
UVで確認したαスタンドペプチドのピークに近いピーク1では、カテプシンE結合ペプチドに複数のαスタンドペプチドが結合しており、p109のピークに近い方が1:1で結合していると考えられたため、ピーク3を以下の実験で使用した。
【0067】
(4)αスタンドペプチドの固相への固定
αスタンドペプチドは、以下のようにして、固相に固定した。ここで、固相である反応プレートとして、96ウェルマイクロタイタープレート(TaKaRa社製)を使用した。
上記のようにして合成したαスタンドペプチドを、Peptide Coating Kit (TaKaRa社製)を使用して固定した。まず、ペプチドアプタマーと連結した上記スタンドペプチドを、上記キットに添付された反応用バッファーを用いて、必要な濃度となるよう調整し、固定化プレートに50μL/ウェルとなるように分注した。本実施例では、スタンドペプチドの濃度を25μg/mLとなるように調製した。
【0068】
次いで、このキットに添付されたカップリング試薬を、蒸留水で1mg/mlの濃度となるよう溶解し、速やかに、上記反応プレートの各ウェルに10μLずつ添加し、プレートシェーカーを用いてよく混合した。混合後、室温で2時間反応させた。
次いで、反応プレート中の液を捨て、200μLの蒸留水で、各ウェルを洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した。洗浄後、非特異的な吸着を防止するために、各ウェルに、キットに添付されているブロッキング液を200μLずつ添加し、室温で1時間反応させた。反応プレート中の液を捨て、200μLの蒸留水で、各ウェルを洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した。
以上のようにして、本発明のスタンドペプチドを固定した96ウェルマイクロタイタープレートを作成した。
【0069】
(5)マウス及び健常人(女性)血清を用いた時のα−スタンドpep-ELISA
(5−1)材料
マウス血清として、正常マウス(8週齢、雌、
図10(A)中、WT(野生型)と示す)及びカテプシンE遺伝子をノックアウトしたマウス(8週齢、雌、
図10(B)中、KO(ノックアウト)と示す)を各3匹使用した。注射器を用いて心臓から採血し、得られた血液を1000xg、10分間、4℃にて遠心し、血清を得た。
健常人血清として、30歳の女性から注射器を用いて前腕部静脈から採血し、得られた血液を1,000 xg、10分間、4℃にて遠心し、血清を得た。
それぞれの血清は、試験開始まで氷中に置いた。
(5−2)カテプシンE及びその基質の調製
カテプシンEは、ラットの脾臓から単離した。ラットを断頭後、脾臓を取り出してミンスし、ワーリングブレンダーを用いて、トップスピードで1分間、氷冷した蒸留水中にてホモジナイズした。得られたホモジネートに約10mLの水を加えて混合し、さらに水で5倍に希釈した。1000 x gで10分間遠心し、ペレットを等量の0.02Mのリン酸ナトリウムバッファー(pH 7.0)に再溶解し、再度1000 x gで10分間遠心した。2回の遠心で得られた上清を合わせて、「脾臓抽出物」とした。
【0070】
この脾臓抽出物を、17,000 x gで30分間遠心し、0℃にて、撹拌しながら固体の硫酸アンモニウムを添加して65%飽和とした。30分後、17,000 x gで20分間遠心して沈殿を集め、水に対して12時間透析した。17,000 x gで20分間遠心して不溶物を除去した。
1Mの酢酸を加えて、不溶物を除去した透析後の上清をpH 3.5にし、ついで、5Mの塩化ナトリウムを含む1/5量の0.5 M酢酸ナトリウムバッファー(pH 3.5)を加えた。得られた沈殿を、17,000 x gで20分間遠心して除去した。ペレットを1Mの塩化ナトリウムを含む0.1Mの酢酸ナトリウムバッファー(pH 3.5)に再溶解し、105,000 x gで30分間遠心し、上清を合わせた。この上清(酵素溶液)は、上記脾臓抽出物の65%の活性を含んでいた。比活性は、脾臓抽出物の6倍となった。
【0071】
1Mの塩化ナトリウムを含む0.1 Mの酢酸ナトリウムバッファー(pH 3.5)で平衡化したペプスタチン−セファロース4B(3.2 x6.0 cm)でアフィニティークロマトグラフィーを行った。上記のようにして得られた酵素溶液を上記カラムにアプライした。
上記カラムを、280nmでの吸光がベースラインになるまでスターティングバッファーで洗浄した(Fig. 1)。その後、0.1 Mの塩化ナトリウムを含有する0.1Mのトリス塩酸バッファー(pH 8.6)で溶出した。画分の活性のピーク番号である203〜225を集めた。プールした酵素画分を限外濾過によって濃縮し、0.02 Mのリン酸ナトリウムバッファー(pH 7.0)に対して透析した。酵素の終了は約95%であり、比活性は、上記脾臓抽出物から310倍上昇し、約4,300単位であった。
【0072】
上記のように調製した酵素を、1Mの塩化ナトリウムを含む0.02 Mのリン酸ナトリウムバッファー(pH 7.0)で平衡化した、コンカナバリン-A−セファロース4Bカラム(2.5x5.0cmの)にアプライした。このカラムを同じバッファーで洗浄し、その後、上記酵素を、0.2Mのメチル-D-α-グルコシドを含む上記バッファーで溶出した。このアフィニティークロマトグラフィーにより、比活性は1.5倍に上昇し、収量は約80%となった。
【0073】
以上のようにして得られた酵素画分を濃縮し、0.02 Mのリン酸ナトリウムバッファー(pH 7.0)に対して透析し、2.5x90 cmのセファデックスG-100 カラム(0.02 Mのリン酸ナトリウムバッファー(pH 7.0)で平衡化した)にアプライした。上記カラムから、溶出速度を9mL/時間、1つの画分を3 mLとして、同バッファーで溶出させて集めた。ウシヘモグロビンをpH 3.1で加水分解する、2つの酸性プロテイナーゼの活性が見られた。最初のピークは、分子量90,000、総活性の35〜40%を含み、比活性は約2倍であった。2番目のピークは、分子量44,000に相当する位置に溶出され、総活性の約60%を含んでいた。この活性のピークは、幾つかの物理化学的活性から、カテプシンDと推定した。
【0074】
セファデックスG-100からの高分子量(90,000)を有するプールした産物を濃縮し、0.05 Mのリン酸ナトリウムバッファー(pH 7.0)に対して透析した。同じ試料を、0.005 Mのリン酸ナトリウムバッファー(pH 7.0)で平衡化した、1.6x12cmのDEAE-セファセルカラムにアプライした。このカラムを同じバッファーで洗浄し、バッファー中の塩化ナトリウムで、段階的に溶出した。この酵素を、0.3 Mの塩化ナトリウムで溶出させ、画分を集めて0.005 Mのリン酸ナトリウムバッファー(pH 7.0)に対して透析した。酵素の収量は、約80%で、比活性は3倍に上昇した。
【0075】
酵素溶液をLKB8101カラム上で等電点分画に供した。pH 4〜7のグラジエントを、カラムを横切るように導入した。pHの勾配を確認しながら、pH 4.1と4.4との間の位置となる画分を集めて濃縮し、0.1 Mのリン酸ナトリウムバッファー(pH 7.0)に対して透析した。酸性プロテイナーゼの比活性は、59,000単位でアプライした活性の収量は約80%であった。等電点分画後の試料を、精製した酵素調製物として使用した。
【0076】
次いで、蛍光基質(Cathepsin D/E の消光性蛍光基質(3200-v)、ペプチド研究所社製造)を準備した。この蛍光性基質を100% DMSOに溶解して10mMとしたストック溶液を調製した。ストック溶液を、使用直前に反応バッファー(組成:50 mM の酢酸ナトリウム、100 mM NaCl、pH 4.5)で100倍に希釈した。
【0077】
(5−3)pep-ELISA
上記(5−2)で調製したカテプシンE及び蛍光基質溶液を使用して、マウス血清及びヒト血清を用いてpep-ELISAを行った。
上記(4)で作成したαスタンドペプチド固定化マイクロタイタープレート3枚に、上記(5−2)で調製した蛍光基質溶液を50μLずつ加え、さらに、野生型マウス血清又はノックアウトマウス血清を、7.5μL、15μL及び20μLの量で添加した(n=3)。40℃で10分間インキュベートし、OD
402の値を測定した(測定装置:パーキンエルマーライフサイエンスジャパン社製、製品名ARVOsx)。
ヒト血清の場合には、αスタンドペプチド固定化マイクロタイタープレートに、血清5μL〜40μLまで、5μL刻みで添加量を増やした点を除いてマウス血清を使用した場合と同様にして、測定を行った。結果を
図10(A)及び(B)に示す。
【0078】
以上の測定結果から、αスタンドペプチドを用いたpep-ELISA系の特異性および感度は、αスタンドペプチドを使用しない場合のアッセイ系と、ほぼ同程度であることが示された。また、このアッセイ系は、少なくとも、ヒト健常女性の血清15~35μLの範囲で直線性が認められた。マウスの血清では、7.5〜15μLの範囲で、WTとKOとの差異が明確に測定された。
目視検査により、αスタンドペプチドを使用した場合の方が、使用しなかった場合よりもバラつきが少ないことが観察された。
【0079】
(実施例2)カテプシンEの活性化の検討
カテプシンEの活性化を、以下の配列(配列番号4)を有するペプチドを化学合成し、これを用いて検討した。
IEGRGCPCIDFMVEVQVEVAEALLTALSLSPGS
【0080】
次に、このペプチドのカテプシンEに対する性質を以下のようにして調べた。
上記ペプチドのカテプシンEとの解離定数(Kd)を、Biocore2000 (GEヘルスケア、英国)を用いてSPR法で測定した。カテプシンEをCM5 Biocoreセンサーチップ(GEヘルスケア、英国)上に、常法に従って、アミンカップリング法により固定した。
150μg/mLのカテプシンEを含む少量の酢酸バッファー(50mMの酢酸ナトリウム、100mMのNaCl、pH 4.5)を、サンプルレーンのフローセルに注入した。対照レーンもカテプシンEを含まない試料で同様に準備した。異なる4つの濃度(10、20、30、及び40 nM)の上記ペプチドを各レーンに注入し、流速20μL/分とし、カテプシンEと上記ペプチドとの間の相互作用を測定した。
【0081】
この実験では、ランニングバッファーとして、50mMのトリス塩酸、100mMのNaClを含む中性バッファー(pH 7.4)を使用し、ペプチドの除去用に50mMのNaOHを使用した。
得られたセンサーグラム曲線を1:1のラングミュア結合モデルにフィットさせ、BIA評価ソフトウェア(GEヘルスケア、英国)を用いてKd値を求めた。
上記ペプチドのKdは2nMであり、カテプシンEに対する高い親和性を持つことが示された。
【0082】
セレクションバッファー(50mMのトリス塩酸、100mMのNaCl、pH 7.4)中で、25℃にて10分間、20nMのカテプシンEを20nMの上記ペプチドとインキュベートした。
引き続き、上記のようにして調製した5μMの蛍光性基質を加え、これらの混合物を、酵素反応のために37℃にて1時間インキュベートした。励起波長を340nm、検出波長を440nmとして、Infinite 200 (TECAN、日本)を用いて蛍光性産物をモニターした。
カテプシンEの活性化パーセントは、下記の式によって求めた。結果を
図9に示す。
【0083】
A = 100 x(Sf - Bf)/(Cf - Bf) [活性化%] (1)
【0084】
図9に示すように、カテプシンEを含まない場合を100としたときに、上記ペプチドは高いカテプシンE活性の増強作用(178%)を示した。
以上より、このペプチドがカテプシンEを活性化することが示された。
【0085】
(実施例3)NM23-H1の使用
(1)スタンドペプチドとNm23-H1結合ペプチドとの結合
実施例1と同様に、Peptide Coating Kit (TaKaRa)を用いて、NM23-H1を結合させるスタンドペプチド(以下、「NM23−スタンドペプチド」という)を2種類作製し(スタンド-NM23ASAC#1及び#2)を、スタンドペプチドの濃度を、0.1 pmol/50μL、1 pmol/50μL、10 pmol/50μLの3通りとして調製し、それぞれ0、0.1、1、及び10 pmol/ウェルの濃度で反応プレートに固定した。ここで使用したNM23-スタンドペプチドの配列は、以下の通りであった。
【0086】
配列番号5
RRLTPSSPGGGSEGEWQQQQHQWAHQE (M.W. = 3102)
次いで、NM23H-1を100 ng/wellとなるように各ウェルに加え、室温にて1.5時間、振蘯した。次いで、200μLのPBS(pH8.0)を各ウェルに添加して洗浄した。この操作を3回繰り返した。
【0087】
(2)ELISA
引き続き、抗NM23(C-20、HRP標識付き)、及び抗-GST-HRPを、それぞれ1: 500の希釈率で各ウェルに加え、室温にて、1.5時間振蘯した。次いで、200μLのPBSを各ウェルに添加して洗浄した。この操作を3回繰り返した。
この後、100μLのSureBlue/TMBキット(フナコシ)を各ウェルに添加し、室温で20分間反応させた。TMB基質用反応停止液(フナコシ)を100μLずつ各ウェルに加えて撹拌し、反応を停止させた。その後、450 nmで吸光度を測定した。
測定結果を下記表1及び
図11に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
上記表1及び
図11より、スタンドなしの場合には、ウェルに固定化したNM23のELISAの測定結果は、いずれの濃度においてもほぼ同じであった。また、これは、抗体を変えても同様の結果であった。
これに対し、スタンドペプチドを使用した場合には、使用した抗体によって若干の相違は見られたが、固定した濃度に依存的に吸光度が上昇していた。
以上より、本発明のスタンドペプチドを使用することによって、効率よく標的分子であるNM23を捕捉することができ、また、検出感度も向上していることが示された。