(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241799
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】逆止タイプ注出ノズル
(51)【国際特許分類】
B65D 33/38 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
B65D33/38
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-177829(P2016-177829)
(22)【出願日】2016年9月12日
(65)【公開番号】特開2017-52562(P2017-52562A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2017年6月21日
(31)【優先権主張番号】特願2015-179413(P2015-179413)
(32)【優先日】2015年9月11日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】307028493
【氏名又は名称】株式会社悠心
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二瀬 克規
【審査官】
西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3196439(JP,U)
【文献】
特開2011−006102(JP,A)
【文献】
再公表特許第2012/111538(JP,A1)
【文献】
特開2005−059958(JP,A)
【文献】
特開2005−015029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/00−33/38
B65D 75/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層フィルムからなる液状物充填用包装袋本体の上端縁から斜め上向きに突設され、中央部には、該包装袋本体内に連通する注出通路を設けてなる逆止タイプの注出ノズルであって、
該包装袋本体の上端縁から斜め上向きに突出して基端部側を形づくる円錐台状の傾斜部と、該傾斜部の延在位置に連接された、該包装袋本体の上端縁と平行な梯形状の水平部とによって構成されるものにおいて、前記注出通路内の、下記(i)、(ii)のうちのいずれかの位置、即ち、
(i)前記注出ノズルの基端部に隣接する位置
(ii)前記注出通路内の傾斜部と水平部とが交わる上側角部の位置であって、前記包装袋本体内の液状充填物を前記注出通路の傾斜部と水平部とを経て注出させる際に、流動する該液状充填物の流速が速くなる位置
に、オリフィスを形成する1以上の流路堰を設けてなり、そのオリフィス位置における注出通路の開口幅が、前記傾斜部の基端位置の、前記開口幅と平行な方向における注出通路幅の30〜85%の大きさであることを特徴とする逆止タイプ注出ノズル。
【請求項2】
前記流路堰は、前記水平部の遊端部側を引裂いて形成される開口縁から前記傾斜部側に10mm以上離れた位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の逆止タイプ注出ノズル。
【請求項3】
前記水平部の遊端部側の先端を引裂いて形成される開口は、前記流路堰によって前記注出通路内に形成される前記オリフィス位置における、該注出通路の開口幅よりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の逆止タイプ注出ノズル。
【請求項4】
前記傾斜部は、注出通路の幅方向中心線と、前記包装袋本体の上端縁とのなす角度θが、25〜70°の範囲内の傾きを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の逆止タイプ注出ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積層フィルムからなる逆止タイプの注出ノズルに関し、とくには液状充填物の吐出(注出)を適正にコントロールすることのできるフィルム状逆止タイプ注出ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム状の逆止タイプ注出ノズルは、特許文献1、同2に開示されたようなものがある。このフィルム状の逆止タイプ注出ノズルは、包装袋内に充填されている液状充填物の注出に際し、その注出量の体積相当量の空気(外気)が、包装袋内へ身代りに進入するのを阻止する機能を有するものである。即ち、包装袋本体自身の収縮ないしは潰れ変形によって、液状充填物(以下、単に「液状物」という。)の注出停止と同時に、該液状物による濡れによって該注出ノズル内注出通路を自動的に密閉して、包装袋内への外気の侵入を阻止する逆止機能(セルフシール機能)を発揮する点に特徴がある。即ち、かかるフィルム状の逆止タイプ注出ノズルを具える包装袋内に液状物を充填包装してなる包装体は、該液状物を注出するにあたっては、その注出前、注出中および注出後のいずれにおいても、包装袋本体内への外気の侵入を防止できるという特徴がある。
【0003】
フィルム状の逆止タイプ注出ノズルを具える前記包装袋は、該フィルム状逆止タイプ注出ノズルが、包装袋本体上部の側部から水平方向に突設されており、該包装袋を、逆止タイプ注出ノズルの先端が下向きになるように傾動することで袋内の液状物を注出ノズルの先端から注出することができる。そして、液状物の注出を停止する際は、包装袋を傾動姿勢から通常の起立姿勢に復帰させるが、その際、逆止タイプ注出ノズルの注出通路は、その内表面どうしが、液状の被包装物による濡れによって相互に密着して自動的に密閉することで、上記逆止機能(セルフシール機能)を有効に発揮させることができる。
【0004】
しかしながら、この包装袋を起立姿勢に戻す時、フィルム状の逆止タイプ注出ノズルの先端開口付近にある液状物は、注出通路を通って包装袋本体内に逆流するものと、先端開口から外に押し出されるものに別れるが、先端開口から外に押し出された液状物が十分に液切れ(落下)せずに、該先端開口に付着残留して流下したり、該開口の下端からたれ落ちたりして、包装袋およびその周囲を汚損するおそれがあった。
【0005】
そこで発明者らは、上記問題点を解決するため、特許文献3においてフィルム状の逆止タイプ注出ノズルを包装袋本体の上端部から斜め上向きに突出して取り付けると共に、該注出ノズルを基端部側の傾斜部と、引裂き開口側の水平部とによって構成することを提案している。
【0006】
この包装袋によれば、液状物を注ぎ出す際に、従来の注出ノズルが包装袋本体の側部に(水平方向に)突設されたタイプの包装袋よりも大きく傾動させる必要がある。その結果、新提案のものでは、注出ノズル先端の開口から注出された液状物の、該開口に沿った方向への力(伝わり落ちる力)が小さくなると同時に、注出通路内にある未注出の被包装物の、包装内への引き込みの負圧がより大きく作用することになる。従って、液状物の注出中および液状物の注出を停止するために包装袋を起立復帰させた際の液切れ性がよくなり、液だれの発生や、包装袋およびその周囲の汚損のおそれを有効に取り除くことができるようになる。しかも、液状物は、フィルム状の逆止タイプ注出ノズルの傾斜部に一気に流れ込んだ後、狭幅の水平部によって整流化されて先端開口へと向かうため、液状物を目的とする方向に精度よく吐出させることができるという効果が生じる。
【0007】
【特許文献1】特開2005−15029号公報
【特許文献2】特開2005−59958号公報
【特許文献3】特許第5975452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記包装袋では、フィルム状の逆止タイプ注出ノズルが包装袋本体の上端縁から斜め上向きに突設されているため、液状物の注出に際して従来よりも包装袋を大きく傾動させる必要がある。そのため、フィルム状の逆止タイプ注出ノズルの注出通路内に流れ込む液状物の吐出圧力(吐出流の流速)が大きくなって吐出流が安定せず、注出量を適正にコントロールすることができない場合があった。
【0009】
しかも、従来のフィルム状の逆止タイプ注出ノズルでは、注出量を少なくするため、先端に向かって先細りにして開口を狭めていたが、それによって先端開口部分の積層フィルムのコシが強くなり、該先端開口がセルフシール機能によって閉じ易くなっていた。そのため、液状物の注出を停止すると、先端開口付近にある液状物がノズル内に戻りきる前に該先端開口が閉じて押し出されてしまい、該液状物が先端開口周りに付着して液だれが発生することがあった。
【0010】
そこで、この発明の目的は、このような包装袋本体の上端縁から斜め上向きに突設されるフィルム状の逆止タイプ注出ノズルに関し、吐出量を適正にコントロールできると共に、少量の液状物を一定量ずつ注出することができ、かつ液だれの発生を効果的に抑制することのできる新規なノズル注出通路の構造について提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的の実現に向けた研究の中で、発明者は、積層フィルムからなる液状物充填用包装袋本体の上端縁から斜め上向きに突設され、中央部には、該包装袋本体内に連通する注出通路を設けてなる逆止タイプの注出ノズルであって、
該包装袋本体の上端縁から斜め上向きに突出して基端部側を形づくる円錐台状の傾斜部と、該傾斜部の延在位置に連接された、該包装袋本体の上端縁と平行な梯形状の水平部とによって構成され
るものにおいて、前記注出通路内の
、下記(i)、(ii)のうちのいずれかの位置
、即ち、
(i)前記注出ノズルの基端部に隣接する位置
(ii)前記注出通路内の傾斜部と水平部とが交わる上側角部の位置であって、前記包装袋本体内の液状充填物を前記注出通路の傾斜部と水平部とを経て注出させる際に、流動する該液状充填物の流速が速くなる位置
に、オリフィスを形成する1以上の流路堰を設け
てなり、そのオリフィス位置における注出通路の開口幅が、前記傾斜部の基端位置の、前記開口幅と平行な方向における注出通路幅の30〜85%の大きさであることを特徴とする逆止タイプ注出ノズルが有効であることを突き止め、本発明を開発するに到った。
【0012】
なお、本発明の上記包装袋については、さらに下記のような構成にすることがより好ましい解決手段を提供できると考えられる。即ち、
(1)
前記流路堰は、前記水平部の遊端部側を引裂いて形成される開口縁から前記傾斜部側に10mm以上離れた位置に設けられていること、
(2)
前記水平部の遊端部側の先端を引裂いて形成される開口は、前記流路堰によって前記注出通路内に形成される前記オリフィス位置における、該注出通路の開口幅よりも大きいこと、
(3)前
記傾斜部は、注出通路の幅方向中心線と、前記包装袋本体の上端縁とのなす角度θが、25〜70°の範囲内の傾きを有すること、
である。
【発明の効果】
【0013】
前記のような構成を有する本発明に係る逆止タイプ注出ノズルによれば、注出通路内にヒートシールによって1以上の流路堰を設けることで、包装袋本体内から傾斜部を経て注出ノズルの先端開口へと一気に流入することになる液状物が一旦、堰き止められると共に、該流路堰によって狭幅となった注出通路(オリフィス)を介して、ノズル先端開口へと向かう液状物の流量が絞られることになる。そのため、液状物は、流速が遅くなった状態でノズル先端の開口へと導かれることになり、注出が安定する。即ち、前記先端開口に向う液状物の吐出流が常に安定したものとなり、かつ注出量を適正にコントロールすることができる。
【0014】
しかも、前記流路堰を、前記注出ノズルの注出通路内の、注出ノズル先端とは反対側の位置、例えば、ノズル基端部の隣接位置やノズル基端部側の傾斜部とそれに延在する水平部とが交わる上側角部、即ち注出通路の折曲位置に設けた場合には、該位置が、液状物を注出するために包装袋を注出ノズル先端が下向きとなる方向に傾けた際の、静水圧の影響が大きく、流速が速くなる位置であるため、上記効果を一層有効に発揮させることができ、注出が安定すると共に、注出量を適正にコントロールすることができる。
【0015】
さらに、本発明によれば、注出量の調整のために先端開口を狭くする必要がなくなり、該先端開口を十分に広げて先端開口付近のフィルムのコシを弱くする(柔軟にする)ことができるため、液状物の注出の停止後の液引きが良くなり、液だれの発生をより効果的に抑制することができる。
【0016】
なお、上記効果は、流路堰によって形成されるオリフィスの最小径を、逆止タイプ注出ノズルの傾斜部基端位置の、前記オリフィスと平行な方向における注出通路幅の30〜85%とした場合にさらに効果的に発揮され、この範囲内とすることで、液状物の先端開口からのスムーズな注出が阻害されることや、液状物が先端開口に一気に流れ込むおそれがない。
【0017】
また、流路堰を、逆止タイプ注出ノズル先端の開口縁から10mm以上離れた位置に設けることにより、注出ノズル先端位置近傍における注出通路内面同士の柔軟な密着が阻害されることがなく、セルフシール機能を有効に発揮させることができる。
【0018】
また、逆止タイプ注出ノズル先端の開口が、流路堰によって形成されるオリフィスの最小径よりも広くなるようにすることで、液状物を注出する際の、前記先端開口の厚み方向(膨らむ方向)の開口幅が小さくなると共に、ノズル先端部分のフィルムが柔軟な開閉力を維持し、液状物の注出を停止した際に、先端開口付近にある液状物が包装袋本体に向かって吸い込まれるため液切れ性が向上し、液だれの発生のおそれがない。
【0019】
また、本発明に係る逆止タイプ注出ノズルにおいては、注出ノズルの上向き傾斜角度を、包装袋本体の上端縁から斜め上向きに突出する傾斜部の注出通路の幅方向中心線と、前記包装袋本体の上端縁とのなす角度θが、25〜70°の範囲内となるようにした場合には、包装袋の傾動角度にかかわらず、液状物の液切れ性がよくなり、液だれの発生を抑制できると共に、液状物を所要の位置へ高い精度をもって注出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の逆止タイプ注出ノズルを設けた包装袋の一実施形態を示す平面図である。
【
図2】(a)は従来の逆止タイプ注出ノズルを設けた包装袋、(b)は本発明の逆止タイプ注出ノズルを設けた包装袋の注出特性を示す図である。
【
図3】逆止タイプ注出ノズルの注出通路内に設けた流路堰によるオリフィスと先端開口との関係を示す図である。
【
図4】本発明の逆止タイプ注出ノズルの上向き傾斜角度を示す図である。
【
図5】本発明の逆止タイプ注出ノズルを設けた包装袋の他の一実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下にこの発明の実施形態を図面に示すところに基づいて説明する。
図1に示す一実施形態の包装袋1は、包装袋本体2と、該包装袋本体2と連通し、セルフシール逆止機能を有するフィルム状の注出ノズル3とからなり、注出ノズル3基端部を、包装袋本体2上端部の内表面に、斜め上向きに突出した姿勢で、たとえば融着接合することによって一体に構成されている。
【0022】
ここで、この注出ノズル3は、熱可塑性の延伸ベースフィルム層、たとえば、5〜40μmの厚みの一軸もしくは二軸延伸PET層もしくはNY層と、この延伸ベースフィルム層を挟んで積層したそれぞれのシーラント層、たとえば5〜80μmの厚みの無延伸のPE層もしくはPP層との、多くは三層構造になる表裏のそれぞれの薄肉積層フィルム、すなわち、輪郭形状がともに同一の表裏二枚の薄肉積層フィルム、または中央部等で表裏に折り返してなる一枚の薄肉積層フィルムを、一方のシーラント層の相互の対向姿勢で、基端辺を除く周辺部分で、たとえばヒートシールによって、相互に融着接合等させて、中央部分に注出通路4を区画することによって構成することができる。図示の注出ノズル3は、先端部分5を、たとえばV字状の折曲部6の位置で引裂き除去等によって切除して、注出通路4に先端開口7を形成してなる。
【0023】
このような包装袋1においては、袋内の液状物の注出に当たって、上記したように注出ノズル3の先端部分5を引裂いて除去することで、注出ノズル3の注出通路4に先端開口7を形成した状態で、包装袋1を傾動させて、液状物の水頭圧等によって注出通路4の内表面どうしを大きく離隔させて、先端開口7を開放させることにより、液状物の所要に応じた注出を行うことができる。この時、包装袋本体2が、液状物の注出体積に応じて収縮ないしは潰れ変形するため、包装袋1内に外気を取り込むことなくその注出を行うことができる。
【0024】
この一方で、液状物の注出を停止するときは、包装袋1を常態に起立復帰させ、その起立復帰と同時に、注出通路4が、液状物の水頭圧等から開放されるとともに、液状物の、包装袋本体2内への戻流による負圧の発生下で、元形状に復帰することに加え、その液状物の薄膜の介在によって濡れた内表面どうしが、包装袋本体2内の減圧雰囲気のアシスト下で負圧吸着し、注出通路4を自動的に密閉封止することで、包装袋1内への外気の侵入を阻止するセルフシール逆止機能を、注出ノズル3に自動的に発揮させることができる。
【0025】
したがって、この包装袋1では、液状物の注出前はもちろん、注出中および注出後のいずれにおいても外気との接触から十分に保護されることになり、袋内の液状物の酸化、汚損等が有効に防止されることになる。
【0026】
注出ノズル3は、基端部3a側に位置する円錐台状の傾斜部4aと、その傾斜部4aの延在位置に連接された、包装袋本体2の上端縁2aと平行な梯形状の水平部4bとによって構成されている。この注出ノズル3では、上記水平部4bを設けることで、包装袋1の傾動によって注出通路4のノズル基端部3a側の傾斜部4aに流れ込んだ液状物は、該傾斜部4aよりも狭幅で平行な水平部4bへと進入して整流化され、層流となって先端開口7へと向かうことになる。そのため、液状物が注出ノズル3の先端開口7から不測の方向に飛び散るようなことがなくなり、また、液切れ性も良くなる。なお、液状物の吐出流は、水平部4bの部分が長いほど整流化され、液状物を目的とする方向に精度よく吐出させることができる。
【0027】
本発明では、このような注出ノズル3において、注出通路4内に突出するようにヒートシールして1以上の流路堰8を設けた点に特徴がある。なお、この流路堰8の形成位置は、液状物を注出するために包装袋1を注出ノズル3が下向きとなる方向に傾動させた際に、静水圧の影響が大きく、流速が速くなる部位であることが好ましく、
図1の実施形態では、流路堰8が、注出通路4内の傾斜部4aと水平部4bとが交わる上側角部の位置、即ち注出通路4の折曲位置に設けられている。この流路堰8によって注出通路4内にはオリフィス9部分が形成されることになり、ノズル基端部3aから注出通路4内に流れ込んだ液状物は、該オリフィス9位置において一旦、堰き止められて流量が絞られた後、吐出圧力(吐出流の流速の低下)が調整された状態で先端開口7へと向かうことになる。
【0028】
この包装袋1によれば、
図1に示すように注出ノズル3が、包装袋本体2の上端縁から斜め上向きに突設されてなり、液状物の注出に際して、従来(注出ノズル3が包装袋本体2の側部に突設)よりも包装体1を大きく傾動させる必要がある場合においても、液状物が一気に先端開口7に流れ込むようなことがなく、液状物を少量ずつ、かつ吐出量にばらつきを生じさせることなく安定して注出することができる。
【0029】
なお、流路堰8は、
図1の実施形態に限定されるものではなく、後述する
図5に示すように注出ノズル3の基端部などの適宜の位置に設けることができ、とくには、注出ノズルの先端部分5とは反対側の位置に設けることが、上記した液状物の堰き止め効果を有効に発揮する点で好適である。
【0030】
ここで、流路堰8のない従来の注出ノズル3(
図2(a))と、
図1に示す流路堰8を有する注出ノズル3(
図2(b))を用いた場合の注出特性を比較して
図2に示す。なお、注出特性は、包装袋1内に液状物(醤油)を150ml、200ml、300ml、400ml充填し、各包装袋1を90°傾けて袋内の液状物を50ml注ぎ出すまでに要した時間を測定することにより評価した。なお、注出ノズル3の先端開口幅は7mmとし、測定は各充填量の包装袋1について5回ずつ行った。
【0031】
図2の結果より、従来の注出ノズル3を用いた場合(
図2(a))では、50mlを注ぎ出すまでの時間が早く、液状物が一気に先端開口7に流れ込んでいること、および5回の測定値のばらつきが大きく吐出量をコントロールできないことがわかる。一方、本発明の流路堰8を有する注出ノズル3を用いた場合(
図2(b))には、包装袋1内の液状物の残量に係わらず、注ぎ出すまでの時間が長くなり、液状物を少量ずつ吐出することができること、さらには、5回の測定値のばらつきがなく、安定して流量をコントロールしながら吐出することができることが確認できた。
【0032】
なお、流路堰8による上記効果は、
図1に示す流路堰8によって形成され
るオリフィス9
位置における、注出通路の開口幅(以下、最小径A
と言う。)を、逆止タイプ注出ノズル3の基端部3aにおいて、最小径Aと平行な方向における注出通路幅Bの30〜85%の大きさとした場合にさらに有効に発揮することができる。なお、30%未満の場合には、オリフィス9が狭すぎて液状物の流入が抑制され、先端開口7からのスムーズな注出が阻害されるおそれがあり、85%超では、オリフィス9の効果を発揮することができず、液状物が先端開口7に一気に流れ込み、吐出量をコントロールすることができない。
【0033】
また、流路堰8は、注出ノズル3の先端開口7からノズル基端部3a側に10mm以上離れた位置に設けることが好ましい。これは、流路堰8が先端開口7に近づきすぎてしまうと、先端開口7近傍におけるフィルムの柔軟性がなくなり(コシが強くなり)、注出通路内面同士の密着が阻害されて、セルフシール機能を有効に発揮させることができないおそれや、先端開口7が閉じ易く先端開口7付近にある液状物が押し出されて液だれを発生しやすい等の問題点があるからである。
【0034】
また、流路堰8を、
図3に示すように注出ノズル3の先端開口7の幅Cが、流路堰8によって注出通路4内に形成されるオリフィス9の最小径Aよりも広くなるように形成した場合(C>A)には、液状物を注出する際の、先端開口7の厚み方向(膨らむ方向)の開口幅が小さくなるため、液状物の注出中および注出を停止するために包装袋1を起立復帰させた際の液切れがよくなり、液だれの発生を抑制することができる。しかも、先端開口7近傍におけるフィルムは、柔軟な状態(コシのない状態)を維持することができるため、液状物の注出後において注出通路4の内表面どうしは、ゆっくりと相互に密着することになり、先端開口7付近にある液状物は注出通路4内に吸い込まれ、液状物が先端開口7から押し出されて該先端開口7付近に付着したり、液だれが発生するのを有効に阻止することができる。
【0035】
なお、注出ノズル3の上向き傾斜角度は、
図4に示すように、注出通路4の傾斜部4aの幅方向中心線αと、包装袋本体2上端縁2aとのなす角度θが25〜70°、好ましくは40〜60°の範囲内になるようにすることが好ましい。
【0036】
前記傾斜角度θが、25°未満では、注出ノズル3の先端開口7と包装袋本体2の上端縁2aとが近づきすぎて、注出した液状物が包装袋本体2に付着したり、液状物を所期した方向に吐出できないおそれがある。一方、傾斜角度θが、70°超の場合は、液状物を注出するに際して、包装袋1を大きく傾動させる必要があるため、たとえ流路堰8を設けたとしても、包装袋1内の液状物が注出ノズル3の注出通路4に一気に流れこみ、吐出量を調整することができなくなること、あるいは液状物を所期した方向に吐出させることができず、飛び散る等して周囲を汚損するおそれがある。
【0037】
次に、
図5に本発明の
注出ノズル3の他の一実施形態を示す。この注出ノズル3に設けられた流路堰8は、注出ノズル3のノズル基端部3aの注出ノズル先端部分5とは反対側に位置している。この流路堰8により、ノズル基端部3a位置において、オリフィス9部分が形成されることになり、包装袋本体2から注出通路4に向かう液状物は、該オリフィス9位置において一旦、堰き止められて流量が絞られた後、吐出圧力(吐出流の流速の低下)が調整された状態で注出通路4に流入し、先端開口7へと向かうことになる。これにより、注出ノズル3は、ノズル基端部3a位置における安定性が向上して、液状物の吐出に際して左右にふらつくことがなくなると共に、液状物が一気に先端開口7に流れ込むようなことがなく、液状物を少量ずつ、かつ吐出量にばらつきを生じさせることなく安定して注出することができる。
なお、本発明では、流路堰8は注出通路内のいずれかの位置に1以上設ければよく、例えば、
図1の注出通路4内の傾斜部4aと水平部4bとが交わる上側角部の位置と、図
5のノズル基端部3a位置の両方に設けてもよい。
【0038】
ここで、流路堰8のない従来の包装袋1(比較例)と、
図5に示す流路堰8を有する包装袋1(実施例)を用いて、包装袋1を傾動させて袋内の液状物を400mlから50mlずつ注出ノズル3の先端開口7から注出した際の、注ぎ出し角度と、注ぎ止まり角度を計測した。その結果を表2に示す。なお、計測は2つのサンプル(サンプル1、サンプル2)を用いた。また、実施例の包装袋1では、流路堰8によって形成される注出通路4のオリフィス9
位置における開口幅が、注出ノズル3の基端部3aにおける(前記
開口幅と平行な方向における)注出通路幅の80%となるように形成した。
【0040】
表2の結果より、流路堰8を設けた実施例の包装袋1では、注ぎ出し角度と注ぎ止まり角度の最大値と最小値の差が小さく、またサンプル1とサンプル2の結果がほぼ同じで再現性があることがわかる。さらに、実施例の包装袋1は、残量150mlまで傾動角度のバラツキが小さく、安定した角度で注ぎ出すことが可能であり、流路堰8による効果が確認できた。
一方、流路堰8のない比較例の包装袋1では、サンプル1とサンプル2の結果に差があってばらつきがあり、また袋内の液状物の残量が多い場合に、内圧による影響を受けやすく傾動角度の変動が大きいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、包装袋本体の上端縁から斜め上向きに突設されるフィルム状の逆止タイプ注出ノズルとして、飲食品や化粧品、薬剤等の液状物や粘稠物を充填包装するための一般的な包装袋に利用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 包装袋
2 包装袋本体
2a 上端縁
3 注出ノズル
3a ノズル基端部
4 注出通路
4a 傾斜部
4b 水平部
5 先端部分
6 折曲部
7 先端開口
8 流路堰
9 オリフィス