特許第6241826号(P6241826)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6241826多価置換ビフェニル化合物の製造方法及びそれに用いられる固体触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241826
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】多価置換ビフェニル化合物の製造方法及びそれに用いられる固体触媒
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/343 20060101AFI20171127BHJP
   C07C 2/84 20060101ALI20171127BHJP
   C07C 15/14 20060101ALI20171127BHJP
   C07C 41/30 20060101ALI20171127BHJP
   C07C 43/205 20060101ALI20171127BHJP
   C07C 51/353 20060101ALI20171127BHJP
   C07C 63/333 20060101ALI20171127BHJP
   C07C 69/76 20060101ALI20171127BHJP
   C07B 37/04 20060101ALI20171127BHJP
   B01J 23/89 20060101ALI20171127BHJP
   B01J 23/66 20060101ALI20171127BHJP
   B01J 23/52 20060101ALI20171127BHJP
   B01J 23/68 20060101ALI20171127BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20171127BHJP
【FI】
   C07C67/343
   C07C2/84
   C07C15/14
   C07C41/30
   C07C43/205 B
   C07C43/205 D
   C07C51/353
   C07C63/333
   C07C69/76 A
   C07B37/04 A
   B01J23/89 Z
   B01J23/66 Z
   B01J23/52 Z
   B01J23/68 Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】14
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2014-540876(P2014-540876)
(86)(22)【出願日】2013年10月9日
(86)【国際出願番号】JP2013077530
(87)【国際公開番号】WO2014057992
(87)【国際公開日】20140417
【審査請求日】2016年9月12日
(31)【優先権主張番号】特願2012-225136(P2012-225136)
(32)【優先日】2012年10月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】石田 玉青
(72)【発明者】
【氏名】徳永 信
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 昭行
(72)【発明者】
【氏名】相川 翔平
(72)【発明者】
【氏名】三瀬 喜之
(72)【発明者】
【氏名】辻 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 祥史
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 充
【審査官】 奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−257542(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/010610(WO,A1)
【文献】 特開2008−259993(JP,A)
【文献】 Journal of Organometallic Chemistry,2009年,694,p.524-537
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/343
B01J 23/52
B01J 23/66
B01J 23/68
B01J 23/89
C07B 37/04
C07C 2/84
C07C 15/14
C07C 51/353
C07C 63/333
C07C 69/76
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体に金が固定化された固体触媒の存在下で、下記一般式(1)で表される置換ベンゼン化合物をカップリングさせる工程を備え、前記担体が金属酸化物である、下記一般式(2)で表される多価置換ビフェニル化合物の製造方法。
【化1】

(式中、Rはアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、又はエステル化されていてもよいカルボキシル基を示し、nは0〜3の整数を示す。nが1〜3の整数のいずれかである場合、複数のRは同じであっても異なっていてもよい。nが1〜3の整数のいずれかであり、隣り合う炭素原子に結合する2つのRがともに前記カルボキシル基である場合には、該カルボキシル基は、互いに結合して無水物を形成していてもよい。)
【化2】

(式中、Rはアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、又はエステル化されていてもよいカルボキシル基を示し、nは0〜3の整数を示す。複数あるn及びRは同じであっても異なっていてもよい。nが1〜3の整数のいずれかであり、隣り合う炭素原子に結合する2つのRがともに前記カルボキシル基である場合には、該カルボキシル基は、互いに結合して無水物を形成していてもよい。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される置換ベンゼン化合物が下記一般式(1)’で表される置換ベンゼン化合物であり、前記一般式(2)で表される多価置換ビフェニル化合物が下記一般式(2)’で表される化合物である、請求項1に記載の多価置換ビフェニル化合物の製造方法。
【化3】

(式中、Rはアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、又はエステル化されていてもよいカルボキシル基を示し、mは0又は1を示す。mが1である場合、2つのRは同じであっても異なっていてもよい。mが1であり、2つのRがともに前記カルボキシル基である場合には、該カルボキシル基は、互いに結合して無水物を形成していてもよい。)
【化4】

(式中、Rはアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、又はエステル化されていてもよいカルボキシル基を示し、mは0又は1を示す。複数あるm及びRは同じであっても異なっていてもよい。mが1であり、隣り合う炭素原子に結合する2つのRがともに前記カルボキシル基である場合には、該カルボキシル基は、互いに結合して無水物を形成していてもよい。)
【請求項3】
前記一般式(1)及び(2)中の前記Rがアルキル基、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基である、請求項1に記載の多価置換ビフェニル化合物の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(1)’及び(2)’中の前記Rがアルキル基、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基である、請求項2に記載の多価置換ビフェニル化合物の製造方法。
【請求項5】
前記一般式(1)’及び(2)’中のmが1であり、前記一般式(2)’で表される多価置換ビフェニル化合物中の下記一般式(2s)で示されるs−体と下記一般式(2a)で示されるa−体との生成比(s/a比)が2.0以上である、請求項2又は4に記載の多価置換ビフェニル化合物の製造方法。
【化5】

(式中、Rはアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、又はエステル化されていてもよいカルボキシル基を示す。複数のRは同じであっても異なっていてもよく、隣り合う炭素原子に結合する2つのRがともに前記カルボキシル基である場合には、該カルボキシル基は、互いに結合して無水物を形成していてもよい。)
【請求項6】
前記金属酸化物が、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、セリウム(Ce)、ジルコニウム(Zr)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、ランタン(La)、ケイ素(Si)及びアルミニウム(Al)からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多価置換ビフェニル化合物の製造方法。
【請求項7】
前記金属酸化物がマンガン(Mn)、コバルト(Co)及びジルコニウム(Zr)からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多価置換ビフェニル化合物の製造方法。
【請求項8】
前記担体に0.5〜10nmの平均粒子径を有する金粒子が固定化されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の多価置換ビフェニル化合物の製造方法。
【請求項9】
前記工程において、前記一般式(1)で表される置換ベンゼン化合物をさらに溶媒の存在下でカップリングさせ、前記溶媒が有機カルボン酸である、請求項1〜のいずれか一項に記載の多価置換ビフェニル化合物の製造方法。
【請求項10】
前記有機カルボン酸が酢酸である、請求項に記載の多価置換ビフェニル化合物の製造方法。
【請求項11】
前記工程において、前記一般式(1)で表される置換ベンゼン化合物を酸素を含むガス中でカップリングさせる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の多価置換ビフェニル化合物の製造方法。
【請求項12】
担体と前記担体に固定化された金とを備え、前記担体が金属酸化物である、下記一般式(2)で表される多価置換ビフェニル化合物製造用固体触媒。
【化6】

(式中、Rはアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、又はエステル化されていてもよいカルボキシル基を示し、nは0〜3の整数を示す。複数あるn及びRは同じであっても異なっていてもよい。nが1〜3の整数のいずれかであり、隣り合う炭素原子に結合する2つのRがともに前記カルボキシル基である場合には、該カルボキシル基は、互いに結合して無水物を形成していてもよい。)
【請求項13】
前記金属酸化物がマンガン(Mn)、コバルト(Co)及びジルコニウム(Zr)からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物である、請求項12に記載の多価置換ビフェニル化合物製造用固体触媒。
【請求項14】
担体と前記担体に固定化された金とを備え、前記担体が金属酸化物である、固体触媒の、下記一般式(2)で表される多価置換ビフェニル化合物の製造のための使用。
【化7】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多価置換ビフェニル化合物の製造方法及びそれに用いられる固体触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多価置換ビフェニル化合物の製造方法としては、具体的には、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸及びその酸無水物の製造方法としては、例えば、パラジウム触媒等の存在下で、ハロゲン化フタル酸類を二量化する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、3,3’,4,4’−テトラメチルビフェニルの製造方法としては、例えば、ビス(トリフルオロ酢酸)パラジウム、酢酸銅及びピリジン−2−カルボン酸の存在下、o−キシレンを二量化する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
これに対して、パラジウム以外の貴金属触媒を使用する多価置換ビフェニル化合物の製造方法の例としては、四塩化金酸を触媒とし、ヨードベンゼンジアセテート(PhI(OAc))という特定の酸化剤を用いて、置換ベンゼン化合物を二量化する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平5−3857号公報
【特許文献2】特許第3959602号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Journal of Organometallic Chemistry 694 (2009) p.524−537
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の方法のいずれにおいても、反応系が複雑である、又は、触媒寿命が短いなどの問題がある。さらに、均一系触媒を使用する場合には、反応後の触媒の回収や再利用が困難となる、又は、反応装置が限られるという問題があり、工業的に好適な多価置換ビフェニル化合物の製造方法が求められている。
【0008】
本発明は、複雑な工程を経ることなく、高い収率で多価置換ビフェニル化合物を得ることが可能な、多価置換ビフェニル化合物の製造方法、及びそれに用いられる固体触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、担体に金が固定化された固体触媒の存在下で、下記一般式(1)で表される置換ベンゼン化合物をカップリングさせる工程を備える、下記一般式(2)で表される多価置換ビフェニル化合物の製造方法を提供する。
【化1】
(式中、Rはアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、又はエステル化されていてもよいカルボキシル基を示し、nは0〜3の整数を示す。nが1〜3の整数のいずれかである場合、複数のRは同じであっても異なっていてもよい。nが1〜3の整数のいずれかであり、隣り合う炭素原子に結合する2つのRがともに上記カルボキシル基である場合には、該カルボキシル基は、互いに結合して無水物を形成していてもよい。)
【化2】
(式中、Rはアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、又はエステル化されていてもよいカルボキシル基を示し、nは0〜3の整数を示す。複数あるn及びRは同じであっても異なっていてもよい。nが1〜3の整数のいずれかであり、隣り合う炭素原子に結合する2つのRがともに上記カルボキシル基である場合には、該カルボキシル基は、互いに結合して無水物を形成していてもよい。)
【0010】
上記製造方法によれば、複雑な工程を経ることなく、高い収率で多価置換ビフェニル化合物を得ることができる。
【0011】
上記一般式(1)で表される置換ベンゼン化合物は下記一般式(1)’で表される置換ベンゼン化合物であり、上記一般式(2)で表される多価置換ビフェニル化合物は下記一般式(2)’で表される化合物であることが好ましい。
【化3】
(式中、Rはアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、又はエステル化されていてもよいカルボキシル基を示し、mは0又は1を示す。mが1である場合、2つのRは同じであっても異なっていてもよい。mが1であり、2つのRがともに上記カルボキシル基である場合には、該カルボキシル基は、互いに結合して無水物を形成していてもよい。)
【化4】
(式中、Rはアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、又はエステル化されていてもよいカルボキシル基を示し、mは0又は1を示す。複数あるm及びRは同じであっても異なっていてもよい。mが1であり、隣り合う炭素原子に結合する2つのRがともに上記カルボキシル基である場合には、該カルボキシル基は、互いに結合して無水物を形成していてもよい。)
【0012】
上記一般式(1)及び(2)又は上記一般式(1)’及び(2)’中の上記Rはアルキル基、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基であることが好ましく、アルキル基、又はアルコキシカルボニル基であることがより好ましい。
【0013】
上記一般式(1)’及び(2)’中のmが1であり、上記一般式(2)’で表される多価置換ビフェニル化合物中の下記一般式(2s)で示されるs−体と下記一般式(2a)で示されるa−体との生成比(s/a比)は2.0以上であることが好ましい。
【0014】
【化5】
(式中、Rはアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、又はエステル化されていてもよいカルボキシル基を示す。複数のRは同じであっても異なっていてもよく、隣り合う炭素原子に結合する2つのRがともに上記カルボキシル基である場合には、該カルボキシル基は、互いに結合して無水物を形成していてもよい。)
【0015】
上記工程において、上記一般式(1)で表される置換ベンゼン化合物をさらに溶媒の存在下でカップリングさせることが好ましく、上記溶媒が有機カルボン酸であることがより好ましく、上記有機カルボン酸が酢酸であることがさらに好ましい。上記溶媒を用いることにより、一層高い収率で多価置換ビフェニル化合物を得ることができる。さらに、上記一般式(1)’中のmが1の化合物を基質として用いるとき、高いs/a比で多価置換ビフェニル化合物を得ることができる。
【0016】
上記工程において、上記一般式(1)で表される置換ベンゼン化合物を酸素を含むガス中でカップリングさせることが好ましい。カップリング反応を酸素を含むガス中で行うことにより、一層高い収率で多価置換ビフェニル化合物を得ることができる。
【0017】
本発明はまた、担体と上記担体に固定化された金とを備える、下記一般式(2)で表される多価置換ビフェニル化合物製造用固体触媒を提供する。
【化6】
(式中、Rはアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、又はエステル化されていてもよいカルボキシル基を示し、nは0〜3の整数を示す。複数あるn及びRは同じであっても異なっていてもよい。nが1〜3の整数のいずれかであり、隣り合う炭素原子に結合する2つのRがともに上記カルボキシル基である場合には、該カルボキシル基は、互いに結合して無水物を形成していてもよい。)
【0018】
上記固体触媒によれば、複雑な工程を経ることなく、高い収率で多価置換ビフェニル化合物を得ることができる。
【0019】
本発明はまた、担体と上記担体に固定化された金とを備える固体触媒の、下記一般式(2)で表される多価置換ビフェニル化合物の製造のための使用を提供する。
【化7】
(式中、Rはアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、又はエステル化されていてもよいカルボキシル基を示し、nは0〜3の整数を示す。複数あるn及びRは同じであっても異なっていてもよい。nが1〜3の整数のいずれかであり、隣り合う炭素原子に結合する2つのRがともに上記カルボキシル基である場合には、該カルボキシル基は、互いに結合して無水物を形成していてもよい。)
【0020】
上記担体は金属酸化物であることが好ましい。担体が金属酸化物であることにより、触媒寿命が長い、もしくは、反応速度が速い傾向がある。
【0021】
また、上記金属酸化物が、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、セリウム(Ce)、ジルコニウム(Zr)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、ランタン(La)、ケイ素(Si)及びアルミニウム(Al)からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物であることが好ましく、マンガン(Mn)、コバルト(Co)及びジルコニウム(Zr)からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物であることがより好ましい。上記金属酸化物を用いることにより、一層高い収率で多価置換ビフェニル化合物を得ることができる。
【0022】
上記担体に0.5〜10nmの平均粒子径を有する金粒子が固定化されていることが好ましい。金粒子の平均粒子径が上記範囲にあることにより、カップリング反応の収率や反応速度が一層向上する。上記一般式(1)’中のmが1の化合物を基質として用いるとき、高いs/a比で置換ビフェニル化合物を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、複雑な工程を経ることなく、高い収率で多価置換ビフェニル化合物を得ることが可能な、多価置換ビフェニル化合物の製造方法、及びそれに用いられる固体触媒を提供することができる。また、本発明で得られる固体触媒は反応後に回収及び再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施例2−38で得られた反応液のガスクロマトグラフィーのチャートである。
図2図2は、実施例2−39で得られた反応液の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のチャートである。
図3図3は、参考例1−21で得られた二酸化マンガンのX線回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0026】
本実施形態の多価置換ビフェニル化合物の製造方法は、固体触媒の存在下で、置換ベンゼン化合物同士をカップリングさせる工程を備える。
【0027】
(固体触媒)
本実施形態の固体触媒は、担体に金が物理的又は化学的に固定化(「担持」ということもある)されたものである。なお、以下に記載する、固体触媒の一次粒径は、固体触媒を形成する一つ一つの粒子(一次粒子)の粒径を表す。また、金粒子の粒子径は、固体触媒上に固定化された一つ一つの金粒子の粒子径を表す。
【0028】
固体触媒の形状は、使用する態様に応じて適宜選択されてよく、粒子状であることが好ましい。また、固体触媒の形態は、稠密体、及び多孔体など任意の形態であってよい。固体触媒の平均一次粒径は、好ましくは5nm〜1mmであり、より好ましくは5nm〜10μmであり、さらに好ましくは5nm〜100nmである。なお、ここでいう平均一次粒径は、たとえば、走査型電子顕微鏡(SEM)観察、透過型電子顕微鏡(TEM)観察、又はレーザー回折散乱式粒度分布測定装置で粒径分布を作成することにより、求めた個数基準の粒径の平均値である。
【0029】
固体触媒において、金は担体に膜状又は粒子状に固定化されていることが好ましく、粒子状に固定化されていることがより好ましい。
【0030】
金が担体に粒子状に固定化されている場合には、固定化された金粒子の粒子径は揃っていることが望ましい。金粒子の平均粒子径は好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下であり、さらに好ましくは5nm以下であり、また、好ましくは0.5nm以上である。金粒子の平均粒子径が上記範囲にあることにより、固定化した金の単位質量当たりのカップリング反応効率、すなわち、単位時間当たりの触媒回転数を高くすることができる。
【0031】
本実施形態において、金は、担体表面に均一に分散して固定化されていることが望ましい。その分散状態は、担体に対する金の固定化量、担体の選択、及び担体への金の固定化法等により制御される。
【0032】
担体に対する金の固定化量は、金の状態や大きさ(粒子の場合には粒子径)に依存することがある。担体に対する金の固定化量は、固体触媒全体に対して、好ましくは0.01〜30質量%、より好ましくは0.1〜15質量%である。金の固定化量が上記範囲の下限値以上であることにより、少量の固体触媒でも所望の反応速度が得られる傾向があり、また上記範囲の上限値以下であることにより、固定化された金の単位質量当たりのカップリング反応効率、すなわち、単位時間当たりの触媒回転数を向上させることができ、経済的に有利になる傾向がある。
【0033】
担体に固定化された金粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察で金粒子の粒径分布を作成することにより、評価することができる。固体触媒の金属量(たとえば、金の固定化量)は、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−AES)によって測定することができる。また、固体触媒中に存在する原子の種類や、金の分散状態は、透過型電子顕微鏡(TEM)、X線光電子分光分析装置(ESCA)、及びX線回折(XRD)などによって、確認することができる。
【0034】
上記担体としては、一般的に固体触媒の担体として使用されているものならば特に限定されず、無機化合物及び有機化合物のいずれも採用することができる。担体としては、例えば、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化コバルト、二酸化マンガン、酸化銅、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化クロム、酸化スカンジウム、酸化カドミウム、及び酸化インジウムなどの金属酸化物又はこれらの金属酸化物を組み合わせた複合酸化物;活性炭;カーボンブラック;有機高分子;ゼオライト;メソポーラスシリケート;粘土;珪藻土、並びに;軽石などが挙げられる。担体は、製造が容易であること、高温での使用が可能なことなどの理由から、好ましくは無機化合物からなり、より好ましくは金属酸化物からなる。担体が金属酸化物である場合、触媒寿命が長くなる、もしくは、反応速度が大きくなる傾向がある。なお、これらの担体は、一種類を単独で用いられてもよく、二種以上を混合して用いられてもよい。
【0035】
上記金属酸化物は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、セリウム(Ce)、ジルコニウム(Zr)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、ランタン(La)、ケイ素(Si)及びアルミニウム(Al)からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物であることが好ましく、マンガン(Mn)、コバルト(Co)及びジルコニウム(Zr)からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物であることがより好ましい。担体として、上記金属酸化物を用いることにより、一層高い収率で多価置換ビフェニル化合物を得ることができる傾向がある。さらに、担体として、上記金属酸化物を用いることにより、上記一般式(1)’中のmが1の化合物を基質として用いるとき、高いs/a比で置換ビフェニル化合物を得ることができる。
【0036】
固体触媒の製造に供される担体の形状は、使用する態様に応じて適宜選択されてよく、粒子状であることが好ましい。また、担体の形態は、稠密体、及び多孔体など任意の形態であってよい。担体の大きさ(粒子の場合は平均一次粒径)は、好ましくは5nm〜1mmであり、より好ましくは5nm〜10μmであり、さらに好ましくは5nm〜100nmである。担体の大きさは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)観察、透過型電子顕微鏡(TEM)観察、又はレーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって、個数基準の粒径として、測定することができる。
【0037】
固体触媒の製造方法としては、特に限定されず、例えば、共沈法、析出沈殿法、含浸法、蒸発乾固法、ポアフィリング法、及びイオン交換法などが挙げられる。中でも、多くの種類の担体に金を固定化することが可能であり、かつ、担体に固定化された金の粒子径を小さく制御することが可能であることから、以下で説明する共沈法又は析出沈殿法が好ましい。共沈法又は析出沈殿法で製造された固体触媒では、金が担体表面に均一に分散して固定化される傾向がある。金が固定化された固体触媒は、空気雰囲気下、水素雰囲気下、又は不活性ガス雰囲気下で焼成されてもよい。
【0038】
[共沈法]
担体である金属酸化物の前駆体となる当該金属の硝酸塩と金化合物とを含む水溶液を、塩基性化合物の水溶液に加えて中和することにより、当該金属の炭酸塩又は水酸化物とともに金の水酸化物を沈殿させる。沈殿物を水洗し、乾燥後、任意の雰囲気で焼成することにより、金が固定化された固体触媒を得ることができる。
【0039】
[析出沈殿法]
塩基性化合物を加えてpHを7〜10の範囲に調整した金化合物の水溶液に、担体である酸化物の粉末、又は上記粉末を球状、円筒状及び蜂の巣(ハニカム)状などの支持体に担持させた成形体を懸濁又は浸漬させ、金の水酸化物を酸化物担体の表面上に析出沈殿させる。金の水酸化物が析出沈殿した担体を水洗し、乾燥後、任意の雰囲気で焼成することにより、金が固定化された固体触媒を得ることができる。前述の塩基性化合物は、調製する固体触媒に応じて適宜選択され、たとえば、水酸化ナトリウム及び尿素等が用いられる。
【0040】
(置換ベンゼン化合物)
本実施形態のカップリング反応において基質として使用される置換ベンゼン化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【化8】
(式中、Rはアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、又はエステル化されていてもよいカルボキシル基を示し、nは0〜3の整数を示す。nが1〜3の整数のいずれかである場合、複数のRは同じであっても異なっていてもよい。nが1〜3の整数のいずれかであり、隣り合う炭素原子に結合する2つのRがともに上記カルボキシル基である場合には、該カルボキシル基は、互いに結合して無水物を形成していてもよい。)
【0041】
さらに、置換ベンゼン化合物は、下記一般式(1)’で表される化合物であることが好ましい。
【化9】
(式中、Rはアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、又はエステル化されていてもよいカルボキシル基を示し、mは0又は1を示す。mが1である場合、2つのRは同じであっても異なっていてもよい。mが1であり、2つのRがともに上記カルボキシル基である場合には、該カルボキシル基は、互いに結合して無水物を形成していてもよい。)
【0042】
上記一般式(1)及び(1)’中のRのアルキル基としては、好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基であり、上記アルキル基が有する水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。前述のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びトリフルオロメチル基などが挙げられ、好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0043】
上記一般式(1)及び(1)’中のRのアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基などが挙げられ、好ましくはメトキシ基、エトキシ基である。
【0044】
上記一般式(1)及び(1)’中のRのエステル化されていてもよいカルボキシル基は、カルボキシル基又はカルボキシル基のアルキルエステル(アルコキシカルボニル基)であることが好ましい。カルボキシル基がアルキルエステルを形成する場合のアルキル基は、好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基などが挙げられ、好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0045】
上記一般式(1)’で表される置換ベンゼン化合物の具体例としては、トルエン、エチルベンゼン、ブチルベンゼン、o−キシレン、o−ジメトキシベンゼン、安息香酸メチル、安息香酸ブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、及びフタル酸無水物などを挙げることができる。また、上記一般式(1)で表される置換ベンゼン化合物の上記一般式(1)’で表される置換ベンゼン化合物以外の具体例としては、トリフルオロメチルベンゼン、p−ジメトキシベンゼン及び2,3,6−トリメチルフェノールなどを挙げることができる。
【0046】
(溶媒)
本実施形態の多価置換ビフェニル化合物の製造方法では、溶媒の存在下で、置換ベンゼン化合物同士をカップリングさせてもよい。
【0047】
カップリング反応に溶媒を使用する場合、溶媒としては、カップリング反応を阻害しないものならば特に限定されず、例えば、水;酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、及びオクタン酸などの有機カルボン酸;1H,1H−トリデカフルオロ−1−ヘプタノール、2H,3H−デカフルオロペンタン、ヘキサフルオロベンゼン、ペンタフルオロトルエン等の炭素鎖上の任意の水素がフッ素化された有機溶媒(フルオラス溶媒);ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びジオキサンなどのエーテル;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸オクチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸オクチル、エチレングリコールジアセテート、及びアジピン酸ジメチルなどの有機エステル化合物、並びに;n−ブチルメチルケトン、メチルエチルケトン、及びイソプロピルエチルケトンなどのケトン化合物;などを挙げることができる。これらの内、好ましくは有機カルボン酸、より好ましくは酢酸が使用される。なお、これらの溶媒の一種を単独で使用してもよく、二種以上を混合して使用してもよい。
【0048】
カップリング反応に溶媒、好ましくは有機カルボン酸、より好ましくは酢酸を用いることにより、カップリング反応の反応速度や、多価置換ビフェニル化合物の位置選択性が向上する傾向がある。特に上記一般式(1)’中のmが1の化合物を基質として用いるとき、高いs/a比で多価置換ビフェニル化合物を得ることができる。
【0049】
また、本実施形態の多価置換ビフェニル化合物の製造方法では、溶媒を用いずに、たとえば、固体触媒のみの存在下で、置換ベンゼン化合物同士をカップリングさせてもよい。
【0050】
(カップリング反応)
本実施形態の置換ベンゼン化合物のカップリング反応は、上記固体触媒及び上記置換ベンゼン化合物を、必要に応じて溶媒を混合して、攪拌しながら反応させる等の方法によって行われる。カップリング反応の温度は、好ましくは50〜250℃、より好ましくは100〜200℃であり、反応圧力は、好ましくは0.1〜5MPa、より好ましくは0.1〜2.5MPaである。なお、反応形態は、バッチ又は流通、気相又は液相、固定床又は流動床のいずれの形態でも構わない。
【0051】
本実施形態のカップリング反応における反応雰囲気は特に限定されず、例えば、窒素、ヘリウム、及びアルゴンなどの不活性ガス;酸素、及びオゾンなどの酸化性ガス;が挙げられる。カップリング反応は酸化性ガス中で行われることが好ましく、酸素を含むガス中で行われることがより好ましい。カップリング反応が不活性ガス中で行われる場合、不活性ガスは窒素であることが好ましい。これらのうち、窒素、酸素、及び窒素と酸素の混合物(例えば、空気)などが使用されてもよい。なお、二酸化炭素などの反応に関与しない別のガスが含まれていても構わない。
【0052】
カップリング反応に用いられる固体触媒の量は、置換ベンゼン化合物の全モル数と担体に固定化された金の全モル数との比によって決定される。上記担体に固定化された金は、置換ベンゼン化合物の全モル数に対し、0.01mol%から100mol%であることが好ましく、0.03mol%から80mol%であることがより好ましく、0.05mol%から50mol%であることがさらに好ましく、0.1mol%から10mol%であることが特に好ましい。以下、置換ベンゼン化合物の全モル数に対する、担体に固定化された金のモル数の比を、単に固体触媒の当量数(mol%)と表現し、「置換ベンゼン化合物に対し、0.1mol%」などと言うことがある。
【0053】
カップリング反応において、溶媒を使用する場合の使用量は、置換ベンゼン化合物1gに対して、好ましくは0〜10mL、より好ましくは0〜2.5mLである。
【0054】
本実施形態のカップリング反応によって得られる多価置換ビフェニル化合物は、カップリング反応終了後、例えば、濾過、抽出、蒸留、昇華、再結晶、カラムクロマトグラフィー等による一般的な方法によって単離・精製できる。
【0055】
(多価置換ビフェニル化合物)
本実施形態の製造方法により得られる多価置換ビフェニル化合物は下記一般式(2)で表される構造を有する。
【化10】
(式中、Rはアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、又はエステル化されていてもよいカルボキシル基を示し、nは0〜3の整数を示す。nが1〜3の整数のいずれかである場合、複数のRは同じであっても異なっていてもよい。nが1〜3の整数のいずれかであり、隣り合う炭素原子に結合する2つのRがともに上記カルボキシル基である場合には、該カルボキシル基は、互いに結合して無水物を形成していてもよい。)
【0056】
さらに、多価置換ビフェニル化合物は、上記一般式(1)’で表される置換ベンゼン化合物同士をカップリングさせて得られる、下記一般式(2)’で表される化合物であることが好ましい。
【化11】
(式中、Rはアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、又はエステル化されていてもよいカルボキシル基を示し、mは0又は1を示す。複数あるm及びRは同じであっても異なっていてもよい。mが1であり、隣り合う炭素原子に結合する2つのRがともに上記カルボキシル基である場合には、該カルボキシル基は、互いに結合して無水物を形成していてもよい。)
【0057】
上記一般式(2)及び(2)’中のRのアルキル基、アルコキシ基、及びエステル化されていてもよいカルボキシル基は、一般式(1)及び(1)’と同義である。
【0058】
置換ベンゼン化合物が上記一般式(1)中のnが0の化合物である場合に、得られる多価置換ビフェニル化合物は二置換ビフェニル化合物であり、nが1の化合物である場合には四置換ビフェニル化合物であり、nが3の化合物である場合には八置換ビフェニル化合物となる。本実施形態の製造方法により、置換ベンゼン化合物をカップリングすると、対称置換ビフェニル類(2つのベンゼン環上の対称の位置に置換基を有するビフェニル類を意味する。)と非対称置換ビフェニル類(2つのベンゼン環上の非対称の位置に置換基を有するビフェニル類を意味する。)からなる異性体が得られる。たとえば、置換ベンゼン化合物が上記一般式(1)’のmが1の化合物である場合には、下記一般式(2s)で示される対称置換ビフェニル類(以下、「s−体」と記載することもある。)及び一般式(2a)で示される非対称置換ビフェニル類(以下、「a−体」と記載することもある。)の四置換ビフェニル化合物が主な異性体として生じる。
【0059】
【化12】
(式中、Rは一般式(2)と同義である。)
【0060】
ここで、Rが上記カルボキシル基である場合には、該カルボキシル基が互いに結合して下記式(3)で表される無水物を形成していてもよい。
【化13】
【0061】
以上のようにして得られる多価置換ビフェニル化合物の収率は、例えば、1%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましく、5%以上であることがさらに好ましく、10%以上であることが特に好ましい。また、後述するs/a比は、例えば、2.0以上であることが好ましく、3.0以上であることがより好ましく、5.0以上であることがさらに好ましく、10.0以上であることがよりさらに好ましく、20.0以上であることが特に好ましい。
【0062】
上記一般式(2)で表される化合物の隣り合う炭素原子に結合する2つのRがともにカルボキシル基であり、該カルボキシル基が互いに結合して無水物を形成している場合には、上記カップリング反応により無水物を形成しない多価置換ビフェニル化合物を合成した後、上記カップリング反応とは異なる方法で、無水物を形成した多価置換ビフェニル化合物を合成してもよい。
【0063】
一般式(1)で表される化合物のRがアルキル基である場合、本実施形態の多価置換ビフェニル化合物の製造方法は、上記アルキル基を酸化する工程をさらに備えていてもよい。上記酸化工程により、上記Rをカルボキシル基とすることができる。また、一般式(1)で表される化合物のRがエステル化されたカルボキシル基である場合、本実施形態の多価置換ビフェニル化合物の製造方法は、上記エステル化されたカルボキシル基を加水分解する工程をさらに備えていてもよい。上記加水分解工程により、上記Rをカルボキシル基とすることができる。また、一般式(1)で表される化合物の隣り合う炭素原子に結合する2つのRがともにカルボキシル基である場合、本実施形態の多価置換ビフェニル化合物の製造方法は、上記カルボキシル基を脱水する工程をさらに備えていてもよい。上記脱水工程により、隣り合う炭素原子に結合する上記2つのRを互いに結合させて無水物とすることができる。例えば、3,3’,4,4’−テトラアルキルビフェニルであれば、アルキル基を酸化することにより3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、及び/又は3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物へ誘導することができる。また、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸は、さらに脱水することで3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物へ誘導することができる。
【0064】
上記酸化工程は、たとえば、国際公開2012/046857号公報や国際公開2012/157749号公報等に記載された方法により行うことができる。上記酸化工程では、好ましくは、コバルト、マンガン及びジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属化合物、及びN−ヒドロキシフタルイミド等のイミド化合物の存在下、一般式(1)で表される化合物のRがアルキル基である多価置換ビフェニル化合物を分子状酸素により酸化することが好ましい。
【0065】
また、上記加水分解、及び脱水は、たとえば、特許4048689号公報及び特許4977989号公報等に記載された方法により行うことができる。上記加水分解は、純水のみを添加し、加圧下で加熱することにより行うことが好ましい。また、脱水は、不活性ガス雰囲気下、180〜195℃で加熱撹拌することにより行うことが好ましい。
【0066】
なお、得られた多価置換ビフェニル化合物は、複数種の異性体を有する場合がある。この場合、濾過、再結晶、及び/又は蒸留等により、適宜分離して必要な用途に使用すればよい。3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は、ポリイミドの原料として有用な化合物である。
【実施例】
【0067】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0068】
[担体及び固体触媒の平均一次粒径、並びに金粒子の平均粒子径の測定方法]
TEMにより、担体及び固体触媒の一次粒子、並びに担体上の金粒子を観察し、TEM写真中の粒子に外接する円(外接円)の直径を測定し、当該直径をそれぞれ担体及び固体触媒の一次粒径、並びに担体上の金粒子の粒子径とした。任意に選択した10個以上の粒子の粒径を測定し、粒径分布を作成することにより、担体、固体触媒及び担体上の金粒子の個数平均径を算出した。算出した個数平均径を、それぞれ、担体及び固体触媒の平均一次粒径、並びに金粒子の平均粒子径とした。なお、TEM写真において、エネルギー分散型X線分光(EDS)測定をすることにより、担体上の金粒子を特定した。
【0069】
[固体触媒の金の固定化量の測定方法]
固体触媒を王水で加温溶解させ、超純水で希釈した。誘導プラズマ発光分光分析法(ICP−AES)により、上記液中に溶解する金の発光強度を測定した。上記液中に溶解する金の発光強度と、金の濃度が既知の標準溶液中の金の発光強度とを比較することにより、上記液中の金の溶解量を算出した。上記溶解量から、固体触媒の単位質量中に含まれる金の含有量、すなわち金の固定化量(質量%)を算出した。
【0070】
[生成物の同定と生成量の測定方法]
反応生成物の同定及び生成量の測定は、特に断りのない限り、ガスクロマトグラフィー(FID検出器)を用いて、反応生成物と標準物質の保持時間及びピーク強度を比較することにより行った。測定条件は以下のとおりである。
装置:アジレント・テクノロジー製 Agilent 6850 SeriesII
カラム:J&W Scientific社製 HP−1(内径:0.32mm、長さ:30m、膜厚:0.25μm)
キャリアガス:ヘリウム 120kPa
昇温条件:10℃/分で40℃から280℃まで昇温し、280℃で10分間保持した。
【0071】
[収率及び生成比の算出方法]
置換ベンゼン化合物(基質)として、たとえば、o−フタル酸ジメチルを用いた場合の生成物(ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル)には、以下の二種類の生成物が主な異性体として存在する。以下、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラ酢酸テトラメチルエステルを「s−DM」(s−体)、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラ酢酸テトラメチルエステルを「a−DM」(а−体)ということがある。
【化14】
【0072】
なお、基質としてキシレンを用いた場合の生成物は、3,3’,4,4’−テトラメチルビフェニル(s−体)と、2,3,3’,4’−テトラメチルビフェニル(a−体)である。
【0073】
カップリングに用いたo−フタル酸ジメチルのモル数をM、生成したs−DM及びa−Mのモル数をそれぞれM及びMとしたとき、生成物の収率、及びs−DMとa−DMの生成比はそれぞれ、下記式より求められる。
収率(mol%)=2×M×100/M
生成比(s/a比)=M/M
【0074】
[固体触媒の当量数の決定方法]
担体として金属酸化物(Me)を用いてカップリング反応を行う場合の、固体触媒の当量数(担体に固定化された金の基質に対するmol%)を、下記式により算出した。
固体触媒の当量数(mol%)=(100×b×c)/{d×(a/y×e+b×197)}
Me:担体の金属原子
O:酸素原子
y,z:それぞれ金属酸化物中のMe、Oの数を表す数値
a:固体触媒調製時に使用する担体を構成する金属酸化物のモル数(mol)
b:固体触媒調製時に使用する金化合物のモル数(mol)
c:カップリング反応時に使用する固体触媒の質量(g)
d:カップリング反応時に使用する基質のモル数(mol)
e:金属酸化物(Me)のモル質量(g)
【0075】
実施例1−1(酸化コバルトに金が固定化された固体触媒(以下、「Au/Co」とも称する)の合成)
硝酸コバルト(II)・六水和物5.52g、及びテトラクロロ金酸・四水和物0.41gを蒸留水200mLに室温で溶解させた(水溶液1)。一方、これとは別に炭酸ナトリウム2.63gを蒸留水200mLに溶解させた(水溶液2)。次いで、上記水溶液1を上記水溶液2に一気に添加し、混合液を室温で3時間撹拌した。生成した沈殿物をpHが一定になるまで蒸留水にて洗浄、濾過した。ろ物を70℃で一晩乾燥させた。乾燥後、300℃、空気中で4時間焼成を行うことで、酸化コバルトに金が固定化された固体触媒(Au/Co)を得た。得られた固体触媒の平均一次粒径は約15nmであり、金の固定化量は10質量%であり、担体上の金粒子の平均粒子径は2nmであった。
【0076】
実施例1−2(酸化ニッケルに金が固定化された固体触媒(以下、「Au/NiO」とも称する)の合成)
硝酸ニッケル・六水和物5.53g、及びテトラクロロ金酸・四水和物0.41gを蒸留水200mLに室温で溶解させ、70℃に加温した(水溶液3)。一方、これとは別に炭酸ナトリウム2.67gを蒸留水250mLに溶解させ、70℃に加温した(水溶液4)。次いで、上記水溶液3を上記水溶液4に一気に添加し、混合液を70℃で1時間撹拌した。生成した沈殿物をpHが一定になるまで蒸留水にて洗浄、濾過した。ろ物を70℃で一晩乾燥させた。乾燥後、300℃、空気中で4時間焼成を行うことで、酸化ニッケルに金が固定化された固体触媒(Au/NiO)を得た。得られた固体触媒の平均一次粒径は約5nmであり、金の固定化量は10質量%であり、担体上の金粒子の平均粒子径は4nmであった。
【0077】
実施例1−3(酸化鉄に金が固定化された固体触媒(以下、「Au/Fe」とも称する)の合成)
硝酸鉄(II)・九水和物7.68g、及びテトラクロロ金酸・四水和物0.41gを蒸留水200mLに室温で溶解させた(水溶液5)。一方、これとは別に炭酸ナトリウム3.88gを蒸留水370mLに溶解させ、70℃に加温した(水溶液6)。次いで、上記水溶液5を上記水溶液6に一気に添加し、混合液を70℃で1時間撹拌した。生成した沈殿物をpHが一定になるまで蒸留水にて洗浄、濾過した。ろ物を80℃で一晩乾燥させた。乾燥後、300℃、空気中で4時間焼成を行うことで、酸化鉄に金が固定化された固体触媒(Au/Fe)を得た。得られた固体触媒の平均一次粒径は約20nmであり、金の固定化量は9質量%であり、担体上の金粒子の平均粒子径は4nmであった。
【0078】
実施例1−4(酸化セリウムに金が固定化された固体触媒(以下、「Au/CeO」とも称する)の合成)
テトラクロロ金酸・四水和物64mgを蒸留水155mLに溶解させ、70℃に加温しながら、水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、溶液のpHを7に調整した。これに酸化セリウム(第一稀元素化学工業(株)製、酸化セリウムHS(商品名)、平均粒径5μm、平均一次粒径8nm)を3g加え、その後、70℃で撹拌した。1時間後、沈殿物をpHが一定になるまで蒸留水にて洗浄、濾過した。ろ物を80℃で一晩乾燥させた。乾燥後、300℃、空気中で4時間焼成を行うことで、酸化セリウムに金が固定化された固体触媒(Au/CeO)を得た。得られた固体触媒の平均一次粒径は約8nmであり、金の固定化量は0.8質量%であり、担体上の金粒子の平均粒子径は4nmであった。
【0079】
実施例1−5(酸化チタンに金が固定化された固体触媒(以下、「Au/TiO」とも称する)の合成)
テトラクロロ金酸・四水和物22mgを蒸留水52mLに溶解させ、70℃に加温しながら、水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、溶液のpHを7に調整した。これに酸化チタン(日本アエロジル(株)製、P−25(商品名)、平均一次粒径25nm)を1g加え、その後、70℃で撹拌した。1時間後、沈殿物をpHが一定になるまで蒸留水にて洗浄、濾過した。ろ物を100℃で一晩乾燥させた。乾燥後、300℃、空気中で4時間焼成を行うことで、酸化チタンに金が固定化された固体触媒(Au/TiO)を得た。得られた固体触媒の平均一次粒径は約25nmであり、金の固定化量は0.8質量%であり、担体上の金粒子の平均粒子径は3nmであった。
【0080】
実施例1−6(シリカに金及びコバルトが固定化された固体触媒(以下、「Au/Co/SiO」とも称する)の合成)
硝酸コバルト(II)・六水和物0.50gを蒸留水10mLに溶解させ、シリカ(富士シリシア化学(株)製、CARiACT Q−15(商品名)、平均一次粒径75−150μm)0.85gを加え、その後、テトラクロロ金酸・四水和物0.11gを加えた。室温で撹拌しながらアンモニア水を滴下して、溶液のpHを8.5に調整した。室温で1時間撹拌後、沈殿物を蒸留水で洗浄、濾過した。ろ物を120℃で20時間乾燥させた。乾燥後、400℃、空気中で5時間焼成を行うことで、シリカに金及びコバルトが固定化された固体触媒(Au/Co/SiO)を得た。得られた固体触媒の平均一次粒径は約100μmであり、金の固定化量は4質量%であった。
【0081】
実施例1−7(酸化コバルト−酸化セリウムに金が固定化された固体触媒(以下、「Au/Co−CeO」とも称する)の合成)
テトラクロロ金酸・四水和物21mgを蒸留水51mLに溶解させ、水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、溶液のpHを7.6に調整した。これに酸化コバルト−酸化セリウム(酸化コバルトと酸化セリウムの複合酸化物、平均一次粒径40nm)1gを加え、70℃で1時間撹拌し、その後、沈殿物をpHが一定になるまで蒸留水にて洗浄、濾過した。ろ物を70℃で一晩乾燥させた。乾燥後、300℃、空気中で4時間焼成を行うことで、酸化コバルト−酸化セリウムに金が固定化された固体触媒(Au/Co−CeO)を得た。得られた固体触媒の平均一次粒径は約40nmであり、金の固定化量は0.7質量%であった。
【0082】
実施例1−8(二酸化マンガンに金が固定化された固体触媒(以下、「Au/MnO」とも称する)の合成)
テトラクロロ金酸・四水和物110mgを蒸留水180mLに溶解させ、尿素3.2g、二酸化マンガン(平均一次粒径40nm)1gの順に室温で加えた。その後、溶液を徐々に90℃まで加温し、90℃で18時間加熱撹拌を行った。沈殿物を蒸留水で洗浄、濾過した。得られたろ物を65℃で一晩乾燥させた。乾燥後、300℃、空気中で4時間焼成を行うことで、二酸化マンガンに金が固定化された固体触媒(Au/MnO)を得た。得られた固体触媒の平均一次粒径は約40nmであり、金の固定化量は4質量%であり、担体上の金粒子の平均粒子径は5nmであった。
【0083】
実施例1−9(酸化ジルコニウムに金が固定化された固体触媒(以下、「Au/ZrO」とも称する)の合成)
テトラクロロ金酸・四水和物22mgを蒸留水52mLに溶解させ、溶液を70℃に加温しながら、水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、溶液のpHを7に調整した。調整後の溶液に酸化ジルコニウム(第一稀元素化学工業(株)製、RC−100(商品名)、平均一次粒径5nm)1gを加え、その後、70℃で撹拌した。1時間後、沈殿物をpHが一定になるまで蒸留水で洗浄、濾過した。ろ物を80℃で一晩乾燥させた。乾燥後、300℃、空気中で4時間焼成を行うことで、酸化ジルコニウムに金が固定化された固体触媒(Au/ZrO)を得た。得られた固体触媒の平均一次粒径は約5nmであり、金の固定化量は1質量%であり、担体上の金粒子の平均粒子径は4nmであった。
【0084】
参考例1−10(酸化コバルトの調製)
塩基性炭酸コバルト11gを300℃、空気中で4時間焼成を行うことで酸化コバルトを得た。
【0085】
参考例1−11(酸化コバルトの調製)
硝酸コバルト(II)・六水和物5.82gを蒸留水200mLに室温で溶解させた(水溶液7)。一方、これとは別に炭酸ナトリウム2.63gを蒸留水200mLに溶解させた(水溶液8)。次いで、上記水溶液7を上記水溶液8に一気に添加し、混合液を室温で3時間撹拌した。生成した沈殿物をpHが一定になるまで蒸留水にて洗浄、濾過した。ろ物を70℃で一晩乾燥させた。乾燥後、300℃、空気中で4時間焼成を行うことで、酸化コバルトを得た。得られた酸化コバルトの平均一次粒径は約15nmであった。
【0086】
実施例1−12(酸化コバルトに金が固定化された固体触媒(以下、「Au/Co」とも称する)の合成)
テトラクロロ金酸・四水和物470mgを蒸留水66mLに溶解させ、室温で参考例1−10で調製した酸化コバルト2.0gを加え、水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、pHを7に調整しながら室温で撹拌した。3時間後、沈殿物を蒸留水にて洗浄、濾過した。得られたろ物を65℃で一晩乾燥させた。乾燥後、300℃、空気中で4時間焼成を行うことで、析出沈殿法により酸化コバルトに金が固定化された固体触媒(Au/Co)を得た。得られた固体触媒の金の固定化量は7質量%であった。
【0087】
実施例1−13(酸化ランタンに金が固定化された固体触媒(以下、「Au/La」とも称する)の合成)
硝酸ランタン(III)・六水和物8.2g、及びテトラクロロ金酸・四水和物0.41gを蒸留水200mLに室温で溶解させた(水溶液9)。一方、これとは別に炭酸ナトリウム3.9gを蒸留水366mLに溶解させた(水溶液10)。次いで、上記水溶液9を上記水溶液10に一気に添加し、混合液を70℃で1.5時間撹拌した。生成した沈殿物をpHが一定になるまで蒸留水にて洗浄、濾過した。ろ物を80℃で一晩乾燥させた。乾燥後、300℃、空気中で4時間焼成を行うことで、酸化ランタンに金が固定化された固体触媒(Au/La)を得た。得られた固体触媒の金の固定化量は6質量%であった。
【0088】
実施例1−14(酸化アルミニウムに金が固定化された固体触媒(以下、「Au/Al」とも称する)の合成)
テトラクロロ金酸・四水和物173mg及び尿素25gを蒸留水100mLに溶解させ、この溶液に酸化アルミニウム(住友化学(株)製、AKP−G015(商品名)、粒径100nm未満)1.0gを室温で加えた。その後、溶液を徐々に80℃まで加温し、80℃で8時間加熱撹拌を行った。50℃まで冷却した後、沈殿物を蒸留水で5回洗浄し、濾過した。得られたろ物を80℃で一晩乾燥させた。乾燥後、300℃、空気中で4時間焼成を行うことで、酸化アルミニウムに金が固定化された固体触媒(Au/Al)を得た。得られた固体触媒の一次粒径は100nm未満であり、金の固定化量は8質量%であった。
【0089】
実施例1−15(酸化ジルコニウムに金が固定化された固体触媒(以下、「Au/ZrO」とも称する)の合成)
テトラクロロ金酸・四水和物173mg及び尿素25gを蒸留水100mLに溶解させ、この溶液に酸化ジルコニウム(第一稀元素化学工業(株)製、RC−100(商品名)、平均一次粒径5nm)1.0gを室温で加えた。その後、溶液を徐々に80℃まで加温し、80℃で8時間加熱撹拌を行った。50℃まで冷却した後、沈殿物を蒸留水で5回洗浄し、濾過した。得られたろ物を80℃で一晩乾燥させた。乾燥後、300℃、空気中で4時間焼成を行うことで、酸化ジルコニウムに金が固定化された固体触媒(Au/ZrO)を得た。得られた固体触媒の平均一次粒径は約5nmであり、金の固定化量は8質量%であった。
【0090】
実施例1−16(酸化ジルコニウムに金が固定化された固体触媒(以下、「Au/ZrO」とも称する)の合成)
テトラクロロ金酸・四水和物173mg及び尿素2.5gを蒸留水100mLに溶解させ、この溶液に酸化ジルコニウム(第一稀元素化学工業(株)製、RC−100(商品名)、平均一次粒径5nm)1.0gを室温で加えた。その後、溶液を徐々に90℃まで加温し、90℃で4時間加熱撹拌を行った。室温まで冷却した後、沈殿物を蒸留水で5回洗浄し、濾過した。得られたろ物を70℃で一晩乾燥させた。乾燥後、300℃、空気中で4時間焼成を行うことで、酸化ジルコニウムに金が固定化された固体触媒(Au/ZrO)を得た。得られた固体触媒の平均一次粒径は約5nmであり、金の固定化量は8質量%であった。
【0091】
実施例1−17(酸化チタンに金が固定化された固体触媒(以下、「Au/TiO」とも称する)の合成)
テトラクロロ金酸・四水和物173mg及び尿素25gを蒸留水100mLに溶解させ、この溶液に酸化チタン(日本アエロジル(株)製、P−25(商品名)、平均一次粒子径25nm)1.0gを室温で加えた。その後、溶液を徐々に80℃まで加温し、80℃で8時間加熱撹拌を行った。50℃まで冷却した後、沈殿物を蒸留水で5回洗浄し、濾過した。得られたろ物を80℃で一晩乾燥させた。乾燥後、300℃、空気中で4時間焼成を行うことで、酸化チタンに金が固定化された固体触媒(Au/TiO)を得た。得られた固体触媒の平均一次粒径は約25nmであり、金の固定化量は8質量%であった。
【0092】
実施例1−18(酸化セリウムに金が固定化された固体触媒(以下、「Au/CeO」とも称する)の合成)
テトラクロロ金酸・四水和物173mg及び尿素25gを蒸留水100mLに溶解させ、この溶液に酸化セリウム(第一稀元素化学工業(株)製、JRC−CEO−3(商品名)、平均一次粒子径11nm)1.0gを室温で加えた。その後、溶液を徐々に80℃まで加温し、80℃で8時間加熱撹拌を行った。50℃まで冷却した後、沈殿物を蒸留水で5回洗浄し、濾過した。得られたろ物を80℃で一晩乾燥させた。乾燥後、300℃、空気中で4時間焼成を行うことで、酸化セリウムに金が固定化された固体触媒(Au/CeO)を得た。得られた固体触媒の平均一次粒径は約11nmであり、金の固定化量は8質量%であった。
【0093】
実施例1−19(酸化セリウムに金が固定化された固体触媒(以下、「Au/CeO」とも称する)の合成)
テトラクロロ金酸・四水和物173mg及び尿素25gを蒸留水100mLに溶解させ、この溶液に酸化セリウム(第一稀元素化学工業(株)製、酸化セリウムHS(商品名)、平均一次粒子径8nm)1.0gを室温で加えた。その後、溶液を徐々に80℃まで加温し、80℃で8時間加熱撹拌を行った。50℃まで冷却した後、沈殿物を蒸留水で5回洗浄し、濾過した。得られたろ物を80℃で一晩乾燥させた。乾燥後、ろ物をU字型反応管に詰め、水素ガス18mL/分で4時間流通させながら200℃に加熱することで、酸化セリウムに金が固定化された固体触媒(Au/CeO)を得た。得られた固体触媒の平均一次粒径は約8nmであり、金の固定化量は8質量%であった。
【0094】
実施例1−20(三酸化二マンガンに金が固定化された固体触媒(以下、「Au/Mn」とも称する)の合成)
テトラクロロ金酸・四水和物220mgを蒸留水360mLに溶解させ、この溶液に尿素6.4g、及び三酸化二マンガン2g(アルドリッチ(株)製、平均一次粒子径40nm)を、この順で、室温で加えた。その後、溶液を徐々に90℃まで加温し、90℃で18時間加熱撹拌を行った。沈殿物を蒸留水で洗浄、濾過した。得られたろ物を65℃で一晩乾燥させた。乾燥後、300℃、空気中で4時間焼成を行うことで、三酸化二マンガンに金が固定化された固体触媒(Au/Mn)を得た。得られた固体触媒の平均一次粒径は約40nmであり、金の固定化量は4質量%であり、担体上の金粒子の平均粒子径は9nmであった。
【0095】
参考例1−21(二酸化マンガンの調製)
硫酸マンガン水和物3gを蒸留水50mLに溶解させ、この溶液を85℃に加温した。加温した溶液に、ペルオキソ二硫酸アンモニウム8.1gを蒸留水50mLに溶解させた溶液を徐々に加え、85℃で撹拌した。6時間後、得られた沈殿物を蒸留水で洗浄、濾過した。得られたろ物を65℃で乾燥させることにより二酸化マンガン(MnO)を得た。得られた二酸化マンガンのX線回折(XRD)パターンを図3に示す。
【0096】
実施例1−22(二酸化マンガンに金が固定化された固体触媒(以下、「Au/MnO」とも称する)の合成)
テトラクロロ金酸・四水和物220mgを蒸留水360mLに溶解させ、尿素6.4g、参考例1−21で調製した二酸化マンガン2gの順に室温で加えた。その後、反応液を徐々に90℃まで加温し、90℃で18時間加熱撹拌を行った。沈殿物を蒸留水で洗浄、濾過した。得られたろ物を65℃で一晩乾燥させた。乾燥後、300℃、空気中で4時間焼成を行うことで、二酸化マンガンに金が固定化された固体触媒(Au/MnO)を得た。得られた固体触媒の金の固定化量は5質量%であった。
【0097】
参考例1−23(ランタンがドープされた酸化セリウム(以下、「Ce(La)O」とも称する)の調製)
ヘキサニトラトセリウム(IV)酸アンモニウム12g、硝酸ランタン6水和物1.1g、及び尿素24gを蒸留水200mLに溶解させ、この溶液を還流下で撹拌した。8時間後、沈殿物を蒸留水にて洗浄、濾過した。ろ物を80℃で乾燥させた。乾燥後、400℃、空気中で7時間焼成することによりランタンがドープされた酸化セリウム(Ce(La)O)を得た。得られたランタンがドープされた酸化セリウムの平均一次粒径は4nmであった。
【0098】
参考例1−24(ジルコニウムがドープされた酸化セリウム(以下、「Ce(Zr)O」とも称する)の調製)
ヘキサニトラトセリウム(IV)酸アンモニウム12g、硝酸ジルコニウム0.7g、及び尿素24gを蒸留水200mLに溶解させ、この溶液を還流下で撹拌した。8時間後、沈殿物を蒸留水にて洗浄、濾過した。ろ物を80℃で乾燥させた。乾燥後、400℃、空気中で7時間焼成することによりジルコニウムがドープされた酸化セリウム(Ce(Zr)O)を得た。得られたジルコニウムがドープされた酸化セリウムの平均一次粒径は4nmであった。
【0099】
実施例1−25(ランタンがドープされた酸化セリウムに金が固定化された固体触媒(以下、「Au/Ce(La)O」とも称する)の合成)
テトラクロロ金酸・四水和物43mgを蒸留水100mLに溶解させ、70℃に加温しながら、水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、溶液のpHを7−8に調整した。これに参考例1−23で調製したCe(La)Oを1g加え、その後、70℃で撹拌した。1時間後、沈殿物をpHが一定になるまで蒸留水にて洗浄、濾過した。ろ物を80℃で一晩乾燥させた。乾燥後、300℃、空気中で4時間焼成を行った。さらに300℃、水素下で還元することで、ランタンがドープされた酸化セリウムに金が固定化された固体触媒(Au/Ce(La)O)を得た。得られた固体触媒の平均一次粒径は4nmであり、金の固定化量は1質量%であり、担体上の金粒子の平均粒子径は3nmであった。
【0100】
実施例1−26(ジルコニウムがドープされた酸化セリウムに金が固定化された固体触媒(以下、「Au/Ce(Zr)O」とも称する)の合成)
テトラクロロ金酸・四水和物43mgを蒸留水100mLに溶解させ、70℃に加温しながら、水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、溶液のpHを7−8に調整した。これに参考例1−23で調製したCe(Zr)Oを1g加え、その後、70℃で撹拌した。1時間後、沈殿物をpHが一定になるまで蒸留水にて洗浄、濾過した。ろ物を80℃で一晩乾燥させた。乾燥後、300℃、空気中で4時間焼成を行った。さらに300℃、水素下で還元することで、ジルコニウムがドープされた酸化セリウムに金が固定化された固体触媒(「Au/Ce(Zr)O」を得た。得られた固体触媒の平均一次粒径は4nmであり、金の固定化量は1質量%であり、担体上の金粒子の平均粒子径は3nmであった。
【0101】
実施例1−27(触媒の再生)
内容積25mLの3つ口フラスコにo−フタル酸ジメチル3.5g(18mmol)、実施例1−1で調製したAu/Co 1.9g(o−フタル酸ジメチルに対し6mol%)、及び酢酸7mLを導入した。上記反応容器を、予め125℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、72時間反応させた後、分析した結果、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率11%で生成していた。さらに24時間反応させ、収率が変わらず11%であったことから、反応が停止していることを確認した。沈殿物を濾過し、ろ物をアセトンで洗浄した。洗浄したろ物を減圧下100℃で乾燥することにより、酸化コバルトに金が固定化された固体触媒(Au/Co)を得た。この固体を300℃、空気中で4時間焼成を行うことで、焼成処理された固体触媒(Au/Co)を得た。得られた固体触媒の粒径は5〜20nmであり、担体上の金粒子の平均粒子径は8nmであった。
【0102】
実施例2−1(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
ガラス内挿管が付属したSUS製オートクレーブ(内容積50mL)に、o−フタル酸ジメチル0.27g(1.4mmol)、実施例1−1で調製したAu/Co 0.10g(o−フタル酸ジメチルに対し4mol%)、及び酢酸2.7mLを導入した。その後、反応系内の圧力が2.5MPaとなるように空気を圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、18時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを水冷して、ガラス内挿管からガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率20%で生成していた(s/a比=10)。
【0103】
実施例2−2(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
ガラス内挿管が付属したSUS製オートクレーブ(内容積50mL)に、o−フタル酸ジメチル0.23g(1.2mmol)、実施例1−1で調製したAu/Co 0.15g(o−フタル酸ジメチルに対し7mol%)、及び酢酸0.8mLを導入した。反応系内を窒素ガスに置換した後、反応系内の圧力が1.0MPaとなるように窒素ガスを圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、18時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを水冷して、ガラス内挿管からガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率21%で生成していた(s/a比=7)。
【0104】
実施例2−3(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
ガラス内挿管が付属したSUS製オートクレーブ(内容積50mL)に、o−フタル酸ジメチル2.78g(14.3mmol)、及び実施例1−1で調製したAu/Co 26mg(o−フタル酸ジメチルに対し0.1mol%)を導入した。反応系内の圧力が2.5MPaとなるように空気を圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、40時間反応させた。さらに、オイルバスを200℃に加温し、20時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを水冷して、ガラス内挿管からガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率1%で生成していた(s/a比=2)。
【0105】
実施例2−4(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
ガラス内挿管が付属したSUS製オートクレーブ(内容積30mL)に、o−フタル酸ジメチル0.20g(1.0mmol)、実施例1−1で調製したAu/Co 74mg(o−フタル酸ジメチルに対し4mol%)、及び酢酸とジオキサンの混合液(酢酸:ジオキサン=1:1(体積比))0.4mLを導入した。反応系内の圧力が1.5MPaとなるように酸素ガスを圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、18時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを空冷して、ガラス内挿管からガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率25%で生成していた(s/a比=13)。
【0106】
実施例2−5(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
ガラス内挿管が付属したSUS製オートクレーブ(内容積30mL)に、o−フタル酸ジメチル0.20g(1.0mmol)、実施例1−1で調製したAu/Co 74mg(o−フタル酸ジメチルに対し4mol%)、及び酪酸0.5mLを導入した。反応系内の圧力が1.5MPaとなるように酸素ガスを圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、18時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを空冷して、ガラス内挿管からガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率11%で生成していた(s/a比=6)。
【0107】
実施例2−6(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
ガラス内挿管が付属したSUS製オートクレーブ(内容積30mL)に、o−フタル酸ジメチル0.20g(1.0mmol)、実施例1−1で調製したAu/Co 74mg(o−フタル酸ジメチルに対し4mol%)、及びイソ吉草酸0.5mLを導入した。反応系内の圧力が1.5MPaとなるように酸素ガスを圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、18時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを空冷して、ガラス内挿管からガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率2%で生成していた(s/a比=100)。
【0108】
実施例2−7(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
内容積10mLガラス製シュレンク管に、o−フタル酸ジメチル0.20g(1.0mmol)、実施例1−1で調製したAu/Co 74mg(o−フタル酸ジメチルに対し4mol%)、及びプロピオン酸0.4mLを導入した。反応系内を常圧で窒素ガスに置換した後、上記シュレンク管を、予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、34時間反応させた。反応終了後、シュレンク管を空冷してシュレンク管内のガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率5%で生成していた(s/a比=4)。
【0109】
実施例2−8(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
内容積10mLガラス製シュレンク管に、o−フタル酸ジメチル0.20g(1.0mmol)、実施例1−1で調製したAu/Co 73mg(o−フタル酸ジメチルに対し4mol%)、及び酢酸0.4mLを導入した。反応系内を常圧で窒素ガスに置換した後、上記シュレンク管を、予め125℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、67時間反応させた。反応終了後、シュレンク管を空冷してシュレンク管内のガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率22%で生成していた(s/a比=13)。
【0110】
実施例2−9(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
ガラス内挿管が付属したSUS製オートクレーブ(内容積30mL)に、o−フタル酸ジメチル0.20g(1.0mmol)、実施例1−2で調製したAu/NiO 100mg(o−フタル酸ジメチルに対し6mol%)、及び酢酸0.4mLを導入した。反応系内の圧力が1.5MPaとなるように酸素ガスを圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、18時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを空冷してガラス内挿管からガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率11%で生成していた(s/a比=3)。
【0111】
実施例2−10(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
ガラス内挿管が付属したSUS製オートクレーブ(内容積30mL)に、o−フタル酸ジメチル0.20g(1.0mmol)、実施例1−3で調製したAu/Fe 70mg(o−フタル酸ジメチルに対し4mol%)、及び酢酸0.4mLを導入した。反応系内の圧力が1.5MPaとなるように酸素ガスを圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、18時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを空冷してガラス内挿管からガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率6%で生成していた(s/a比=6)。
【0112】
実施例2−11(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
ガラス内挿管が付属したSUS製オートクレーブ(内容積30mL)に、o−フタル酸ジメチル0.20g(1.0mmol)、実施例1−4で調製したAu/CeO 0.15g(o−フタル酸ジメチルに対し0.8mol%)、及び酢酸0.5mLを導入した。反応系内の圧力が1.5MPaとなるように酸素ガスを圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、18時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを空冷してガラス内挿管からガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率17%で生成していた(s/a比=4)。
【0113】
実施例2−12(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
ガラス内挿管が付属したSUS製オートクレーブ(内容積30mL)に、o−フタル酸ジメチル0.20g(1.0mmol)、実施例1−5で調製したAu/TiO 0.15g(o−フタル酸ジメチルに対し0.8mol%)、及び酢酸0.4mLを導入した。反応系内の圧力が1.5MPaとなるように酸素ガスを圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、18時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを空冷してガラス内挿管からガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率2%で生成していた(s/a比=2)。
【0114】
実施例2−13(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
ガラス内挿管が付属したSUS製オートクレーブ(内容積30mL)に、o−フタル酸ジメチル0.20g(1.0mmol)、実施例1−6で調製したAu/Co/SiO 0.20g(o−フタル酸ジメチルに対し5mol%)、及び酢酸0.4mLを導入した。反応系内の圧力が1.5MPaとなるように酸素ガスを圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、18時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを空冷してガラス内挿管からガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率13%で生成していた(s/a比=3)。
【0115】
実施例2−14(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
ガラス内挿管が付属したSUS製オートクレーブ(内容積30mL)に、o−フタル酸ジメチル0.20g(1.0mmol)、実施例1−7で調製したAu/Co−CeO 0.40g(o−フタル酸ジメチルに対し2mol%)、及び酢酸0.7mLを導入した。反応系内の圧力が1.5MPaとなるように酸素ガスを圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、18時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを空冷してガラス内挿管からガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率1%で生成していた(s/a比=100)。
【0116】
実施例2−15(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
ガラス内挿管が付属したSUS製オートクレーブ(内容積30mL)に、o−フタル酸ジメチル0.20g(1.0mmol)、実施例1−9で調製したAu/ZrO 0.15g(o−フタル酸ジメチルに対し0.8mol%)、及び酢酸0.5mLを導入した。反応系内の圧力が1.5MPaとなるように酸素ガスを圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、18時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを空冷してガラス内挿管からガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率21%で生成していた(s/a比=7)。
【0117】
実施例2−16(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
ガラス内挿管が付属したSUS製オートクレーブ(内容積30mL)に、o−フタル酸ジメチル0.20g(1mmol)、実施例1−7で調製したAu/Co−CeO 0.15g(o−フタル酸ジメチルに対し0.75mol%)、及び酢酸0.5mLを導入した。反応系内の圧力が1.5MPaとなるように酸素ガスを圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、18時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを空冷してガラス内挿管からガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率27%で生成していた(s/a比=14)。
【0118】
実施例2−17(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
内容積30mLのガラス製反応容器に、o−フタル酸ジメチル0.20g(1.0mmol)、実施例1−12で析出沈殿法を用いて調製したAu/Co 70mg(o−フタル酸ジメチルに対し4mol%)、及び酢酸0.4mLを導入した。空気下常圧で、上記反応容器を、予め125℃に設定しておいたアルミブロックに接触させ、24時間反応させた。反応終了後、反応溶液を空冷した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率12%で生成していた(s/a比=10)。
【0119】
実施例2−18(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
ガラス内挿管が付属したSUS製オートクレーブ(内容積30mL)に、o−フタル酸ジメチル0.20g(1.0mmol)、実施例1−13で調製したAu/La 0.13g(o−フタル酸ジメチルに対し4mol%)、及び酢酸0.5mLを導入した。反応系内の圧力が1.5MPaとなるように酸素ガスを圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、18時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを空冷してガラス内挿管からガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率3%で生成していた(s/a比=3)。
【0120】
実施例2−19(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
ガラス内挿管が付属したSUS製オートクレーブ(内容積30mL)に、o−フタル酸ジメチル0.20g(1mmol)、実施例1−14で調製したAu/Al 0.10g(o−フタル酸ジメチルに対し4mol%)、及び酢酸0.5mLを導入した。反応系内の圧力が1.6MPaとなるように酸素ガスを圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、18時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを空冷してガラス内挿管からガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率23%で生成していた(s/a比=5)。
【0121】
実施例2−20(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
ガラス内挿管が付属したSUS製オートクレーブ(内容積30mL)に、o−フタル酸ジメチル0.20g(1mmol)、実施例1−15で調製したAu/ZrO 0.10g(o−フタル酸ジメチルに対し4mol%)、及び酢酸0.5mLを導入した。反応系内の圧力が1.85MPaとなるように酸素ガスを圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、18時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを空冷してガラス内挿管からガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率45%で生成していた(s/a比=8)。
【0122】
実施例2−21(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
ガラス内挿管が付属したSUS製オートクレーブ(内容積30mL)に、o−フタル酸ジメチル0.20g(1mmol)、実施例1−16で調製したAu/ZrO 0.10g(o−フタル酸ジメチルに対し4mol%)、及び酢酸0.5mLを導入した。反応系内の圧力が1.85MPaとなるように酸素ガスを圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め140℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、48時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを空冷して、オートクレーブからガスを開放した。得られた反応液ガスクロマトグラフィーによりを分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率58%で生成していた(s/a比=15)。
【0123】
実施例2−22(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
ガラス内挿管が付属したSUS製オートクレーブ(内容積30mL)に、o−フタル酸ジメチル0.20g(1mmol)、実施例1−17で調製したAu/TiO 0.10g(o−フタル酸ジメチルに対し4mol%)、及び酢酸0.5mLを導入した。反応系内の圧力が1.6MPaとなるように酸素ガスを圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、72時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを空冷してガラス内挿管からガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率31%で生成していた(s/a比=4)。
【0124】
実施例2−23(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
ガラス内挿管が付属したSUS製オートクレーブ(内容積30mL)に、o−フタル酸ジメチル0.20g(1mmol)、実施例1−18で調製したAu/CeO 0.10g(o−フタル酸ジメチルに対し4mol%)、及び酢酸0.5mLを導入した。反応系内の圧力が1.6MPaとなるように酸素ガスを圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、18時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを空冷してガラス内挿管からガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率28%で生成していた(s/a比=7)。
【0125】
実施例2−24(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
ガラス内挿管が付属したSUS製オートクレーブ(内容積30mL)に、o−フタル酸ジメチル0.20g(1mmol)、実施例1−19で調製したAu/CeO 0.10g(o−フタル酸ジメチルに対し4mol%)、及び酢酸0.5mLを導入した。反応系内の圧力が1.5MPaとなるように酸素ガスを圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、18時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを空冷して、オートクレーブからガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率25%で生成していた(s/a比=7)。
【0126】
実施例2−25(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
内容積30mLのガラス製反応容器に、o−フタル酸ジメチル0.20g(1.0mmol)、実施例1−20で析出沈殿法を用いて調製したAu/Mn 0.21g(o−フタル酸ジメチルに対し6mol%)、及び酢酸0.4mLを導入した。空気下常圧で、上記反応容器を、予め125℃に設定しておいたアルミブロックに接触させ、反応させた。反応開始140時間後と207時間後にAu/Mn 0.21g(o−フタル酸ジメチルに対し6mol%)をそれぞれ加え、反応開始から合計で279時間反応させた。反応終了後、反応溶液を空冷した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率58%で生成していた(s/a比=20)。
【0127】
実施例2−26(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
内容積30mLのガラス製反応容器に、o−フタル酸ジメチル0.20g(1.0mmol)、実施例1−22で析出沈殿法を用いて調製したAu/MnO 71mg(o−フタル酸ジメチルに対し4mol%)、及び酢酸0.4mLを導入した。空気下常圧で、上記反応容器を、予め125℃に設定しておいたアルミブロックに接触させ、48時間反応させた。反応終了後、反応溶液を空冷した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率17%で生成していた(s/a比=28)。
【0128】
実施例2−27(再生させた固体触媒によるビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
内容積30mLのガラス製反応容器に、o−フタル酸ジメチル0.10g(0.5mmol)、実施例1−27で焼成処理を行ったAu/Co 36mg(o−フタル酸ジメチルに対し4mol%)、及び酢酸0.2mLを導入した。空気下常圧で、上記反応容器を、予め125℃に設定しておいたアルミブロックに接触させ、41時間反応させた。反応終了後、反応溶液を空冷した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率7%で生成していた(s/a比=15)。
【0129】
実施例2−28(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
内容積2mLのガラス製反応容器に、o−フタル酸ジメチル0.40g(2.1mmol)、及び実施例1−12で析出沈殿法を用いて調製したAu/Co 0.141g(o−フタル酸ジメチルに対し4mol%)を導入した。空気下常圧、上記反応容器を予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、24時間反応させた。反応終了後、空冷して得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率9%で生成していた(s/a比=2)。
【0130】
実施例2−29(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
内容積2mLのガラス製反応容器に、o−フタル酸ジメチル0.41g(2.1mmol)、及び実施例1−1で共沈法を用いて調製したAu/Co 0.142g(o−フタル酸ジメチルに対し4mol%)を導入した。空気下常圧、上記反応容器を予め200℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、24時間反応させた。反応終了後、空冷して得られた反応液ガスクロマトグラフィーによりを分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率1%で生成していた(s/a比=2)。
【0131】
実施例2−30(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
内容積2mLのガラス製反応容器に、o−フタル酸ジメチル0.40g(2.1mmol)、及び実施例1−12で析出沈殿法を用いて調製したAu/Co 0.144g(o−フタル酸ジメチルに対し4mol%)を導入した。空気下常圧、上記反応容器を予め200℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、24時間反応させた。反応終了後、空冷して得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率8%で生成していた(s/a比=2)。
【0132】
実施例2−31(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
内容積30mLのガラス製反応容器に、o−フタル酸ジメチル0.21g(1.1mmol)、実施例1−25で調製したAu/Ce(La)O 84mg(o−フタル酸ジメチルに対し0.4mol%)、及び酢酸0.4mLを導入した。空気下常圧、上記反応容器を予め125℃に設定しておいたアルミブロックに接触させ、100時間反応させた。反応終了後、空冷して得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率9%で生成していた(s/a比=15)。
【0133】
実施例2−32(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
内容積30mLのガラス製反応容器に、o−フタル酸ジメチル0.21g(1.1mmol)、実施例1−26で調製したAu/Ce(Zr)O 84mg(o−フタル酸ジメチルに対し0.4mol%)、及び酢酸0.4mLを導入した。空気下常圧、上記反応容器を予め125℃に設定しておいたアルミブロックに接触させ、48時間反応させた。反応終了後、空冷して得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率1%で生成していた(s/a比=9)。
【0134】
実施例2−33(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
ガラス内挿管が付属していないSUS製オートクレーブ(内容積10mL)に、o−フタル酸ジメチル0.20g(1.0mmol)、実施例1−5で調製したAu/TiO 85mg(o−フタル酸ジメチルに対し金0.4mol%)、及び1H,1H−トリデカフルオロ−1−ヘプタノール0.2mLを導入した。反応系内の圧力が2.5MPaとなるように空気を圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、24時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを空冷してガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率1%で生成していた(s/a比=1)。
【0135】
実施例2−34(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
ガラス内挿管が付属していないSUS製オートクレーブ(内容積10mL)に、o−フタル酸ジメチル0.20g(1.0mmol)、実施例1−1で調製したAu/Co 72mg(o−フタル酸ジメチルに対し金4mol%)、及び1H,1H−トリデカフルオロ−1−ヘプタノール0.3mLを導入した。反応系内の圧力が2.5MPaとなるように空気を圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、16時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを空冷してガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(s−DM)が収率1%で生成していた(s/a比=1)。
【0136】
実施例2−35(3,3’,4,4’−テトラメチルビフェニルの合成)
ガラス内挿管が付属したSUS製オートクレーブ(内容積50mL)に、o−キシレン0.11g(1.0mmol)、実施例1−1で調製したAu/Co 72mg(o−キシレンに対し4mol%)、及び酢酸0.4mLを導入した。反応系内を窒素ガスに置換した後、反応系内の圧力が0.5MPaとなるように窒素ガスを圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め125℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、24時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを水冷してガラス内挿管からガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−テトラメチルビフェニルが収率3.2%で生成していた。
【0137】
実施例2−36(3,3’,4,4’−テトラメチルビフェニルの合成)
撹拌装置、加熱還流装置を備えた内容積5mL反応容器に、o−キシレン0.11g(1.0mmol)、実施例1−1で調製したAu/Co 72mg(o−キシレンに対し4mol%)、及び酢酸0.4mLを導入した。反応系内を窒素ガスに置換した後、窒素バルーンを取り付けた状態で、加熱部を予め125℃に設定して51時間反応させた。反応終了後、空冷して得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−テトラメチルビフェニルが収率7.5%で生成していた。
【0138】
実施例2−37(4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジメチルの合成)
撹拌装置、加熱還流装置を備えた内容積5mL反応容器に、安息香酸メチル0.14g(1.0mmol)、実施例1−1で調製したAu/Co 72mg(安息香酸メチルに対し4mol%)、及び酢酸0.4mLを導入した。反応系内を窒素ガスに置換した後、窒素バルーンを取り付けた状態で、加熱部を予め125℃に設定して51時間反応させた。反応終了後、空冷して得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジメチルが収率3.3%で生成していた。
【0139】
実施例2−38(4,4’−ジメチルビフェニルの合成)
ガラス内挿管が付属したSUS製オートクレーブ(内容積50mL)に、トルエン0.09g(1.0mmol)、実施例1−1で調製したAu/Co 72mg(トルエンに対し4mol%)、及び酢酸0.4mLを導入した。反応系内を窒素ガスに置換した後、反応系内の圧力が0.5MPaとなるように窒素ガスを圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め125℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、25時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを水冷してガラス内挿管からガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析した。ガスクロマトグラフィーのチャートを図1に示す。ガスクロマトグラフィーのチャート(図1)では、トルエンの二量体(ジメチルビフェニル)に相当するピークが6種観測され、そのうちの保持時間15.9分の位置に観測されるピークは、4,4’−ジメチルビフェニルのピークであった。
【0140】
実施例2−39(安息香酸二量体の合成)
撹拌装置、加熱還流装置を備えた内容積5mL反応容器に、安息香酸0.12g(1.0mmol)、実施例1−1で調製したAu/Co 72mg(安息香酸に対し4mol%)、及び酢酸0.4mLを導入した。反応系内を窒素ガスに置換した後、窒素バルーンを取り付けた状態で、加熱部を予め125℃に設定し、51時間反応させた。反応終了後、空冷して得られた反応液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。HPLCのチャートを図2に示す。保持時間8.5分、8、7分、8.9分のピークについてHPLC/MSにより分析したところ、安息香酸の二量体に相当する分子量のピークで有る事が確認された。
【0141】
なお、HPLCの測定条件は以下のとおりである。
装置:島津製作所製 LC−20AB
カラム:Waters Atlantis dC18 5μmΦ4.6×150mm
溶離液:A:0.1%HCOOH水溶液、B:CHCN
タイムプログラム:0.01分:A/B=70/30、20.00分:A/B=5/95、25.00分:A/B=5/95、25.01分:A/B=70/30、40.00分:A/B=70/30
流量:1mL/分
検出器:254nm
【0142】
実施例2−40(テトラメチルビフェニルの合成)
ガラス内挿管が付属したSUS製オートクレーブ(内容積50mL)に、キシレン(o−,m−,p−体の混合物)0.52g(4.9mmol)、及び実施例1−8で調製したAu/MnO 0.15g(キシレンに対し0.8mol%)を導入した。反応系内の圧力が0.5MPaとなるように酸素ガスを圧入した。次いで、上記オートクレーブを予め100℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、19時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを空冷してガラス内挿管からガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーによりガスクロマトグラフィーにより分析したところ、キシレンの二量体(テトラメチルビフェニル)の生成が確認できた。
【0143】
実施例2−41(テトラメチルビフェニルの合成)
内容積13mLのパイレックス(登録商標)ガラス製バイアル瓶に、o−キシレン0.11g(1mmol)、実施例1−1で調製したAu/Co 74mg(o−キシレンに対し4mol%)、及び酢酸0.5mLを導入した。空気下常圧で、上記反応容器を予め130℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、18時間反応させた。反応終了後、反応溶液を空冷した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−テトラメチルビフェニルが収率13%で生成していた(s/a比=7)。
【0144】
実施例2−42(4,4’−ビストリフルオロメチルビフェニルの合成)
ガラス内挿管が付属したSUS製オートクレーブ(内容積30mL)に、トリフルオロメチルベンゼン0.15g(1mmol)、実施例1−1で調製したAu/Co 74mg(トリフルオロメチルベンゼンに対し4mol%)、及び酢酸0.5mLを導入した。反応系内の圧力が1.6MPaとなるように酸素ガスを圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、18時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを空冷して、ガラス内挿管からガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、4,4’−ビストリフルオロメチルビフェニルが収率4%で生成していた。
【0145】
実施例2−43(2,2’,5,5’−テトラメトキシビフェニルの合成)
内容積13mLのパイレックス(登録商標)ガラス製バイアル瓶に、p−ジメトキシベンゼン0.14g(1mmol)、実施例1−1で調製したAu/Co 74mg(p−ジメトキシベンゼンに対し4mol%)、及び酢酸0.5mLを導入した。空気下常圧で、上記反応容器を予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、18時間反応させた。反応終了後、反応溶液を空冷した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、2,2’,5,5’−テトラメトキシビフェニルが収率21%で生成していた。
【0146】
実施例2−44(ジ−tert−ブチルビフェニルの合成)
ガラス内挿管が付属したSUS製オートクレーブ(内容積30mL)に、tert−ブチルベンゼン0.13g(1mmol)、実施例1−1で調製したAu/Co 75mg(tert−ブチルベンゼンに対し4mol%)、及び酢酸0.5mLを導入した。反応系内の圧力が1.6MPaとなるように酸素ガスを圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、66時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを空冷して、ガラス内挿管からガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、4,4’−ジ−tert−ブチルビフェニル、4,3’−ジ−tert−ブチルビフェニル及び3,3’−ジ−tert−ブチルビフェニルの混合物が合計62%の収率で生成していた。
【0147】
実施例2−45(3,3’,4,4’−テトラメトキシビフェニルの合成)
内容積30mLのガラス製反応容器に、o−ジメトキシベンゼン0.14g(1.0mmol)、実施例1−1で調製したAu/Co 72mg(o−ジメトキシベンゼンに対し4mol%)、及び酢酸0.4mLを導入した。空気下常圧で、上記反応容器を、予め125℃に設定しておいたアルミブロックに接触させ、15時間反応させた。反応終了後、反応溶液を空冷した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−テトラメトキシビフェニルが収率19%で生成していた。
【0148】
実施例2−46(2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル−[ビフェニル]−4,4’−ジオールの合成)
内容積30mLのガラス製反応容器に、2,3,6−トリメチルフェノール0.14g(1.0mmol)、実施例1−1で調製したAu/Co 72mg(2,3,6−トリメチルフェノールに対し4mol%)、及び酢酸0.4mLを導入した。空気下常圧で、上記反応容器を、予め125℃に設定しておいたアルミブロックに接触させ、22時間反応させた。反応終了後、反応溶液を空冷した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル−[ビフェニル]−4,4’−ジオールが収率46%で生成していた。
【0149】
比較例2−1(ビフェニルテトラカルボン酸エステルの合成)
内容積30mLのガラス製シュレンク管に、o−フタル酸ジメチル0.21g(1.1mmol)、テトラクロロ金酸・四水和物24mg(o−フタル酸ジメチルに対し6mol%)、及び酢酸0.4mLを導入した。上記シュレンク管を、予め125℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、空気下常圧にて20時間反応させた。反応終了後、シュレンク管を空冷した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステルの生成は全く認められなかった。
【0150】
比較例2−2(金の溶出実験)
内容積10mLのガラス製反応容器に、実施例1−1で調製したAu/Co 75mg、及び酢酸0.4mLを導入した。窒素ガス雰囲気下常圧で、上記反応容器を、予め125℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、1時間加熱撹拌を行った。加熱撹拌終了直後に、溶液を熱時濾過し、125℃に加熱しておいた酢酸3mLでろ物を洗浄した。得られたろ液中をICP−AESを用いて分析したところ、Auは検出されなかった。
【0151】
比較例2−3(金を固定化していないCoを用いたジ−tert−ブチルビフェニルの合成)
ガラス内挿管が付属したSUS製オートクレーブ(内容積30mL)に、tert−ブチルベンゼン0.13g(1mmol)、参考例1−11で調製したCo 66mg(0.27mmol)、及び酢酸0.5mLを導入した。反応系内の圧力が1.6MPaとなるように酸素ガスを圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、18時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを空冷して、ガラス内挿管からガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、多価置換ビフェニル化合物の収率は0%であった。
【0152】
比較例2−4(金を固定化していないCoを用いた2,2’,5,5’−テトラメトキシビフェニルの合成)
ガラス内挿管が付属したSUS製オートクレーブ(内容積30mL)に、p−ジメトキシベンゼン0.14g(1mmol)、参考例1−11で調製したCo 66mg(0.27mmol)、及び酢酸0.5mLを導入した。反応系内の圧力が0.2MPaとなるように酸素ガスを圧入した。次いで、上記オートクレーブを、予め150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、18時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを空冷して、ガラス内挿管からガスを開放した。得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、多価置換ビフェニル化合物の収率は0%であった。
【0153】
比較例2−5(金を固定化していないCoを用いたテトラメチルビフェニルの合成)
内容積13mLのパイレックス(登録商標)ガラス製バイアル瓶に、o−キシレン0.11g(1mmol)、参考例1−11で調製したCo 66mg(0.27mmol)、及び酢酸0.5mLを導入した。空気下常圧で、前述の反応容器を150℃に設定しておいたオイルバスに浸けて、18時間反応させた。反応終了後、反応溶液を空冷して、得られた反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、多価置換ビフェニル化合物の収率は0%であった。
【0154】
実施例3−1(3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の合成)
内容積100mLのチタン製オートクレーブに、実施例2−15で合成した3,3’,4,4’−テトラメチルビフェニル2.10g(10mmol)、酢酸コバルト四水和物12.4mg(0.05mmol)、酢酸マンガン四水和物12.2mg(0.05mmol)、N−ヒドロキシフタルイミド(以下、「NHPI」と称する)163mg(1mmol)、及び酢酸15mLを導入し、空気雰囲気(内圧3MPa)にて、150℃で反応を行った。反応開始1時間後、オートクレーブを室温まで冷却し、オートクレーブ内のガスを開放した。オートクレーブ内にさらにNHPI 163mgを添加した後、150℃で反応を再開した。1時間後に再びこの一連の操作(冷却−ガス解放−添加−反応再開)を繰り返し、合計3時間反応を行った。反応終了後、オートクレーブを室温まで冷却して、オートクレーブ内のガスを開放した。得られた反応液から溶媒を留去し、そこへ酢酸エチルと水を加えて分液した後、酢酸エチル層を水で洗浄して金属化合物を除去し、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を得た。
【0155】
以上、実施例1−1〜1−9、1−12〜1−20、1−22及び1−25〜1−27、並びに、参考例1−10〜1−11、1−21及び1−23〜1−24で得られた固体触媒又は酸化物の製造方法と分析結果をまとめて表1に示す。
【表1】
【0156】
また、実施例2−1〜2−47及び比較例2−1〜2−5におけるカップリング反応の条件、及び生成物の分析結果をまとめて表2〜10に示す。なお、表2〜9において、固体触媒の欄の括弧内に示される数値は、置換ベンゼン化合物の全モル数に対する、担体に固定化された金のモル数の比(固体触媒の当量数)を示す。また、表10において、比較例2−1のテトラクロロ金酸・四水和物の括弧内に示される数値は、置換ベンゼン化合物の全モル数に対する、テトラクロロ金酸・四水和物のモル数の比を示す。
【表2】
【0157】
【表3】
【0158】
【表4】
【0159】
【表5】
【0160】
【表6】
【0161】
【表7】
【0162】
【表8】
【0163】
【表9】
【0164】
【表10】
【0165】
以上の結果より、本発明によれば、複雑な工程を経ることなく、高い収率で、多価置換ビフェニル化合物が得られることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明の多価置換ビフェニル化合物の製造方法及び固体触媒は、例えば、ポリイミドの原料であるビフェニル骨格を有するモノマーの製造や液晶分子の基本骨格の製造に適用できる。
図1
図2
図3