(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241835
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】搬送装置用のパン及び搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65G 17/06 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
B65G17/06 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-93614(P2016-93614)
(22)【出願日】2016年5月9日
(65)【公開番号】特開2017-202881(P2017-202881A)
(43)【公開日】2017年11月16日
【審査請求日】2016年8月29日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516135346
【氏名又は名称】株式会社メタルチップ
(73)【特許権者】
【識別番号】517370386
【氏名又は名称】村上 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(72)【発明者】
【氏名】新田 雅博
【審査官】
八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】
仏国特許発明第00821643(FR,A)
【文献】
特開2002−284326(JP,A)
【文献】
特開2004−067363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 17/00−17/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面と、当該水平面の前端において下方に屈曲する第1屈曲面と、当該水平面の後端において下方に屈曲する第2屈曲面と、当該第2屈曲面の後端から後方にのびる後端面とを備え、前記後端面は、前記第2屈曲面の後端から一定の曲率半径で後方に屈曲し、前記第1屈曲面と第2屈曲面とが一定の曲率半径で下方に屈曲することで被搬送物を落下させ易くしたことを特徴とする搬送装置用のパンを、前後方向に連続配置して成る搬送面と、前記パンが取り付けられるサイドプレートと、当該サイドプレートが取り付けられた状態で所定の方向に回動する無端状チェーンとを備えており、前記無端状チェーンが一対のリンクプレートと、当該リンクプレートを連結するピンを備えており、
側面視した場合に、前後に連続する前記パンのうち、前方のパンの前記後端面の曲率中心と前記ピンが重なり、且つ、後方のパンの前記第1屈曲面と前記ピンが重なり、前記前方のパンの前記後端面の表面を、前記後方のパンの前記第1屈曲面の先端が一定の隙間をあけて相対的に移動することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記無端状チェーンを構成するリンクプレートの寸法を上下方向に高くすることで当該リンクプレートが前記サイドプレートを兼ねることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
被搬送物を搬送面から落下させ易くすることで被搬送物を搬送するための搬送装置で使用されるパン及びこのパンを備える搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属、木材、プラスチックなどの加工工程において生じる切削片や切り屑、打ち抜き加工後の金属板、金属製品等のスクラップは搬送装置で搬送され、圧縮機等の後続の装置で適切に処理される。
本明細書においては搬送装置で搬送される対象となるものを単に「被搬送物」と表記する。「被搬送物」の形状やサイズに制限はなく例えばヒゲ状、カール状、小塊状、粉状、汚泥状等のものを全て「被搬送物」に含むものとする。
【0003】
搬送装置のうちエプロンコンベアは、左右一対の無端状チェーンにサイドプレートと複数のパン(プレート)を固定して構成される。
前後方向(搬送方向)に連続するパン同士は搬送中及びチェーンの折り返し部で回転する際に隙間が生じないようにその形状が工夫されている。
例えば特許文献1及び2には、平板の前方に凹部、後方に凸部を形成したパンが開示されている。後方のパンの凹部内には前方のパンの凸部が係合しており、チェーンの折り返し部で屈曲する際に後方のパンの凹部内を前方のパンの凸部が回転移動することでパン同士の間に生じる隙間を極力少なくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3978436号公報
【特許文献2】特許第5435675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来技術では以下のような問題がある。
すなわち、後方のパンの凹部内に入り込んだ被搬送物を、当該凹部内を回転移動する前方のパンの凸部が噛み込んでしまい、被搬送物が固着してしまうという問題がある。
また、凹部と凸部とによってパンが容器状になるため、加工工程において切り屑等の被搬送物と共に生じる切削液等の液体がパンの表面に溜まったまま搬送されるという問題がある。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑み、
被搬送物を搬送面から落下させ易くすることで被搬送物の噛み込みを低減でき且つ液体が溜まりにくい形状を有する搬送装置用のパン及びこのパンを備える搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の搬送装置用のパンは、水平面と、当該水平面の前端において下方に屈曲する第1屈曲面と、当該水平面の後端において下方に屈曲する第2屈曲面と、当該第2屈曲面の後端から後方にのびる後端面とを備
え、少なくとも前記第1屈曲面と第2屈曲面のいずれか一方が一定の曲率半径で下方に屈曲することで被搬送物を落下させ易くしたことを特徴とする。
また、前記後端面が前記第2屈曲面の後端から一定の曲率半径で後方に屈曲することを特徴とする。
本発明の搬送装置は、上記搬送装置用のパンを前後方向に連続配置して成る搬送面と、前記パンが取り付けられるサイドプレートと、当該サイドプレートが取り付けられた状態で所定の方向に回動する無端状チェーンとを備えており、前後に連続する前記パンのうち、前方のパンの前記後端面の表面を、後方のパンの前記第1屈曲面の先端が一定の隙間をあけて相対的に移動することを特徴とする。
また、前記無端状チェーンが一対のリンクプレートと、当該リンクプレートを連結するピンを備えており、側面視した場合に前記前方のパンの前記後端面の曲率中心と前記ピンが重なり、且つ前記後方のパンの前記第1屈曲面と前記ピンが重なることを特徴とする。
また、前記無端状チェーンを構成するリンクプレートの寸法を上下方向に高くすることで当該リンクプレートが前記サイドプレートを兼ねることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明ではパンの前後に第1屈曲面と第2屈曲面を設けるので、被搬送物が第1屈曲面及び第2屈曲面に張り付きにくくなる。また、仮に被搬送物が張り付いた場合でも、被搬送物と第1屈曲面及び第2屈曲面との接触面積が小さくなるので、搬送面が折り返し部で回転する際に被搬送物がその自重により第1屈曲面及び第2屈曲面から落下し易くなる。
特に、第1屈曲面や第2屈曲面を一定の曲率半径で下方に屈曲させることにすれば、被搬送物との接触面積を最小にすることができ、被搬送物を搬送面からより落下させ易くできる。
また、パンが容器をうつ伏せにした形状になるので、パンの表面に切削液等の液体が溜まる事態を防止できる。
【0009】
また、後端面を一定の曲率半径で屈曲させると、前方のパンの後端面の表面から後方のパンの第1屈曲面の先端までの隙間の寸法が変わらないようにすることができる。例えば、側面視した場合に前方のパンの後端面の曲率中心とリンクプレートを連結するピンが重なり、且つ後方のパンの第1屈曲面とピンが重なるようにすることで当該隙間の寸法が変わらないようにできる。
したがって、隙間に被搬送物が挟まりにくくなり、また、一旦挟まった場合でも被搬送物が押し潰されてしまうことがないので、被搬送物を落下させ易くできる。
また、無端状チェーンのリンクプレートを上下方向に高くすることで従来の搬送装置が備えているサイドプレートをこのリンクプレートで兼用すれば搬送装置の部品点数を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】無端状チェーンに固定された状態の搬送面の平面図(a)、側面図(b)及び正面図(c)
【
図3】無端状チェーンの平面図(a)、側面図(b)及び正面図(c)
【
図4】パン及びサイドプレートを示す平面図(a)、パンの側面図(b)、サイドプレートの側面図(c)及びパン及びサイドプレートの正面図(d)
【
図5】パンの側面図(a)及び前後2つのパンの連結状態を示す側面図(b)
【
図6】無端状チェーンと前後のパンとの位置関係を概略的に示す側面図(a)〜(c)
【
図9】第2の実施の形態の搬送面の平面図(a)、側面図(b)及び正面図(c)
【
図10】無端状チェーンの平面図(a)、右側面図(b)、左側面図(c)及び正面図(d)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施の形態]
本発明の搬送装置用のパン及び搬送装置の第1の実施の形態について説明する。
なお、搬送装置の基本構造については周知であるため詳細な説明は省略する。
図1に示すように、搬送装置1は前処理装置から排出された被搬送物2を搬送面3(
図2)に乗せて斜め上方まで持ち上げ、後処理装置(図示略)に排出する仕組みになっている。搬送面3を駆動するための無端状チェーン10(
図3参照)はその前後においてモータ4のスプロケットに掛け回されている。
【0012】
図4及び
図5に示すように、パン100は水平面20、第1屈曲面30、第2屈曲面40及び後端面50から概略構成される。そして、
図2に示すように複数のパン100を前後方向に連続配置することで搬送面3を構成している。本実施の形態ではパン100の左右の端面にサイドプレート11を接合することでパン100とサイドプレート11とを一体構造にしている。
水平面20は左右方向にのびる平板で構成される。水平面20の左右にはボルト孔21を設けている。パン100はボルト孔21を利用して無端状チェーン10に設けたブラケット12(
図3)にボルトで固定される。
第1屈曲面30は水平面20の前端から一定の曲率半径R1で下方に屈曲する部材である。
第2屈曲面40は水平面20の後端から一定の曲率半径R2で下方に屈曲する部材である。曲率半径R1とR2とは必ずしも同一である必要がない。
本実施の形態の第1屈曲面30及び第2屈曲面40は、その前後方向に沿った縦断面形状が直線箇所を備えない形状になっている。つまり、第1屈曲面30及び第2屈曲面40はその前端から後端までが曲面のみで構成されている。このようにすることで、被搬送物2が第1屈曲面30及び第2屈曲面40に張り付きにくくなる。また、仮に被搬送物2が張り付いた場合でも、被搬送物2と第1屈曲面30及び第2屈曲面40との接触面積を最小にすることができるので、搬送面3が折り返し部で回転する際に被搬送物2をその自重で自然落下させ易くすることができる。
【0013】
後端面50は第2屈曲面40の後端から後方にのびる部材である。本実施の形態では後端面50は第2屈曲面40の後端から一定の曲率半径R3で後方に屈曲する。
図3及び
図6に示すように、無端状チェーン10は一対のリンクプレート13と、リンクプレート13にその側面を挟まれるローラ14と、一対のリンクプレート13を連結するピン15を備えている。そして、側面視した場合に前方のパン100の後端面50の曲率中心Oとピン15が重なり、且つ後方のパン100の第1屈曲面30とピン15が重なっている。
このようにすることで、前後に連続する2つのパン100のうち前方のパン100の後端面50の表面と、後方のパン100の第1屈曲面30の先端31とで形成される隙間の間隔dを搬送中ほぼ一定の状態で維持することができる。
すなわち、搬送面3の折り返し箇所に至るまでは(
図7(a)及び(b))、前方のパン100の後端面50の表面上を後方のパン100の第1屈曲面30の先端31が隙間の間隔dで相対的に静止した状態で前方に移動する。
そして、搬送面3の折り返し箇所に至ると、まず最初に前方のパン100が斜め下方に移動し始める。この際に前方のパン100の後端面50は自身の曲率中心O(ピン15と一致している)を中心にして反時計回りに回転し始める(
図7(c))。次に、後方のパン100の第1屈曲面30がピン15を中心にして計回りに回転し始め、これにより当該第1屈曲面30の先端31は前方のパン100の後端面50の表面上を相対的に前方に移動し始める。このように、搬送面3の折り返し箇所において、前方のパン100の後端面50と後方のパン100の第1屈曲面30の先端31は共にピン15を中心にして回転するので、隙間の間隔dを維持できる。
仮に後端面50が平面で構成されている場合には、後端面50の表面から第1屈曲面30の先端31までの距離が変わっていくので、上記隙間の間隔dも変わることになる。したがって、隙間の間隔dが大きくなったときに被搬送物2が挟まり易くなり、一旦挟まってしまうと、隙間の間隔dが狭くなったときに被搬送物2が隙間に挟まれて変形してしまうので、隙間から外れにくくなってしまう。
【0014】
一方、本実施の形態の場合は、搬送面3の折り返し箇所でも後方のパン100の第1屈曲面30の先端31は前方のパン100の後端面50の表面上を隙間の間隔dを維持したまま、被搬送物2を外部に押し出しながら相対的に前方に移動していく(
図7(d))。
このように本発明では隙間の間隔dが変わらないので、隙間に被搬送物2が挟まりにくくすることができる。また、一旦挟まった場合でも隙間の間隔dが変わらないので被搬送物2が押し潰されてしまうことがなく、被搬送物2は折り返し箇所において自重によって下方に落下していく。
【0015】
なお、本実施の形態では後端面50を一定の曲率半径R3で後方に屈曲する曲面で構成するのとしたが、これに限らず
図8(a)に示すように平面で構成してもよい。この場合、上記隙間の間隔dを搬送面3の折り返し箇所で一定に維持することは難しくなるが、パン100の加工工程を簡略化でき、製造コストを抑えることができる。
また、本実施の形態では第1屈曲面30及び第2屈曲面40を曲面で構成するものとしたが、これに限らず
図8(b)及び(c)に示すように第1屈曲面30と第2屈曲面40のいずれか一方のみを曲面で構成することにしてもよい。あるいは、
図8(d)及び(e)に示すように第1屈曲面30及び第2屈曲面40の前後方向に沿った縦断面の一部に直線箇所Lを設けることにしてもよい。更に、
図8(f)に示すように、第1屈曲面30、第2屈曲面40及び後端面50を全て直線で構成することにしてもよい。
また、パン100の一部又は全体に微小の貫通穴を設けることで当該貫通穴を水抜き穴として使用することにしてもよい。
また、パン100の一部又は全体に表面から突出する凸部を複数設けることにしてもよい。凸部を設けることで被搬送物2がパン100の表面に付着しにくくなり、また、自重で落下させ易くすることができる。
【0016】
[第2の実施の形態]
本発明の搬送装置の第2の実施の形態について説明するが、上記第1の実施の形態と同一の構成になる箇所については同一の符号を付してその説明を省略する。
図9及び
図10に示すように、本実施の形態の搬送装置5は無端状チェーン10を構成するリンクプレート16の寸法を上下方向に高くする点に特徴を有する。
無端状チェーン10のリンクプレート16を上下方向に高くすることで従来の搬送装置が備えているサイドプレートをこのリンクプレート13で兼用できる(サイドプレートが不要になる)ので、搬送装置の部品点数を抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、
被搬送物を搬送面から落下させ易くすることで被搬送物の噛み込みを低減でき且つ液体が溜まりにくい形状を有する搬送装置用のパン及びこのパンを備える搬送装置に関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0018】
d 隙間の間隔
L 直線箇所
O 曲率中心
1 搬送装置
2 被搬送物
3 搬送面
4 モータ
5 搬送装置
10 無端状チェーン
11 サイドプレート
12 ブラケット
13 リンクプレート
14 ローラ
15 ピン
16 リンクプレート
20 水平面
21 ボルト孔
30 第1屈曲面
31 先端
40 第2屈曲面
50 後端面
100 パン