(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記撥液膜の形成は、前記コンタクト孔の底に前記何れかの電極の表面が露出した後、さらに前記パッシベーション層における前記コンタクト孔を臨む内壁面を前記ガスに晒すことにより行われる
請求項1記載のアクティブマトリクス型表示パネルの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[本発明の各態様に至った経緯]
本発明者等は、
図14の二点鎖線で囲んだ部分に示すような問題、即ち、TFT層における上部電極908とアノード電極911との間に金属酸化膜922が介挿し、これにより上部電極908とアノード911とのコンタクト不良が生じるメカニズムを次のように解明した。
【0023】
表示パネルの製造過程では、TFT層を形成し、平坦化層910を形成した後に、上部電極908とアノード911とのコンタクトを図るためのコンタクト孔を開設することになる。コンタクト孔の開設は、リソグラフィ(露光・現像)により平坦化層910にコンタクト孔を開設した後、ドライエッチングにより、平坦化層910のコンタクト孔の底部に露出するパッシベーション層909にコンタクト孔を開設することでなされる。そして、ドライエッチング後に、例えば、純水などを用いて孔内および平坦化層910表面などを洗浄する。
【0024】
洗浄後には、ドライエアーなどで水分の除去を図る。このとき、コンタクト孔を臨む平坦化層910の内壁面は先にコンタクト孔の開設が行われ、パッシベーション層909へのコンタクト孔開設の間もフッ素を含むエッチングガスに晒されているため、表面にフッ化膜が形成されるに至っている。これに対して、コンタクト孔を臨むパッシベーション層909の内壁面には、ほとんどフッ化膜が形成されていない状態となっているものと推定される。これは、従来の製造方法では、パッシベーション層909にコンタクト孔が開設され、底に上部電極908の表面が露出した時点でエッチングを終了していたため、パッシベーション層909におけるコンタクト孔を臨む内壁面は余りフッ素に晒されていないためであると考えられるためである。
【0025】
上記のように、パッシベーション層909におけるコンタクト孔を臨む内壁面へのフッ化膜の形成がほとんどなされない状況下で、水を用いた洗浄を行った場合、ドライエアーでのブローによってもコンタクト孔の底に水が残ることがあるものと考えられる。そして、このコンタクト孔の底に残った水により、上部電極908の表面が酸化され、金属酸化膜922が形成されるに至るものであると考察した。
【0026】
[本発明の各態様]
本発明の一態様に係るアクティブマトリクス型表示パネルの製造方法は、 (i)基板上にTFT層を形成する工程と、(ii)TFT層上に平坦化層を形成する工程と、(iii)平坦化層上に表示素子部を形成する工程と、
を備える。
【0027】
(i)TFT層を形成する工程には、ソース電極もしくはドレイン電極、またはその一方の電極に接続された接続用電極の何れかの電極(以下、「上部電極等」と記載する。)を被覆するパッシベーション層を、平坦化層と境界を接する状態で形成するサブ工程が含まれる。
【0028】
(ii)表示素子部を形成する工程には、平坦化層と境界を接する状態で下部電極を形成するサブ工程が含まれる。
【0029】
上部電極等と下部電極との接続は、次の工程を経てなされる。
【0030】
(iv−1)底にパッシベーション層が露出するまで、平坦化層にコンタクト孔を開設する。
【0031】
(iv−2)平坦化層に開設したコンタクト孔の底部に露出するパッシベーション層に対して、フッ素を含むガスを用いたドライエッチングにより、平坦化層のコンタクト孔に連通し、底に上部電極等が露出するコンタクト孔を開設する。
【0032】
(iv−3)コンタクト孔の底に上部電極等が露出した後、パッシベーション層におけるコンタクト孔を臨む内壁面に対し、組成中にフッ素を含む撥液膜を形成する。
【0033】
そして、下部電極を形成するサブ工程において、コンタクト孔を臨む平坦化層およびパッシベーション層の内壁面に沿って、下部電極を形成する。
【0034】
上記態様に係る製造方法では、フッ素を含むガスでコンタクト孔を開設するので、上記(iv−2)のパッシベーション層へのコンタクト孔の開設後では、少なくとも平坦化層におけるコンタクト孔を臨む内壁面に、組成中にフッ素を含む撥液膜が形成される。このため、仮に平坦化層およびパッシベーション層のコンタクト孔内に水分が入った場合でも、撥液膜により、コンタクト孔を臨む内壁面および底に露出する上部電極等への水分の濡れを抑制することができる。
【0035】
上記態様に係る製造方法を用いれば、コンタクト孔の底に露出する上部電極等の表面に酸化被膜が形成されることを効果的に抑制することができる。
【0036】
従って、TFT層の上部電極と表示素子部の下部電極との間に介挿された2層の絶縁層(パッシベーション層と平坦化層)に対しコンタクト孔を開設しながら、良好な電極間接続を図ることができるアクティブマトリクス型表示パネルを製造することができる。
【0037】
なお、上記において、「組成中にフッ素を含む撥液膜」とは、必ずしもフッ化物で膜が構成されている態様に限定されない。撥液膜中にフッ素が含まれていればよい。
【0038】
本発明の別態様に係るアクティブマトリクス型表示パネルの製造方法では、上記方法において、撥液膜の形成について、パッシベーション層のコンタクト孔の底に上部電極等の表面が露出した後、さらにパッシベーション層におけるコンタクト孔を臨む内壁面をフッ素を含むエッチングガスに晒すことにより行われる。
【0039】
このようにコンタクト孔の底に上部電極等の表面が露出した後、さらにフッ素を含むガス(例えば、CF
4)に内壁面を晒す(オーバーエッチングを行う)ことにより、パッシベーション層におけるコンタクト孔を臨む内壁面にも撥液膜が形成される。よって、別の工程を実行しなくても、撥液膜の形成ができ、製造コストの上昇を抑えながら、上記効果を得ることができる。
【0040】
また、本発明の別態様に係るアクティブマトリクス型表示パネルの製造方法では、上記方法において、コンタクト孔の開設を開始してから、コンタクト孔の底に上部電極等の表面が露出するまでの時間をT
0とし、撥液膜の形成のために、パッシベーション層におけるコンタクト孔を臨む内壁面をガスに晒す時間をT
1とするとき、次の関係を満たす。
[数1] 70%×T
0≦T
1≦150%×T
0
上記[数1]の関係を満たすように時間T
1を規定することにより、コンタクト孔内での水滴の残存を防ぎ、上部電極等の表面の酸化を防ぎながら、上部電極等と下部電極との間に介挿されることになるフッ素を含む膜の膜厚を制限して、TFT層の上部電極等と表示素子部の下部電極との良好なコンタクトを確保することができる。
【0041】
換言すると、本発明の別態様に係るアクティブマトリクス型表示パネルの製造方法では、上記方法において、撥液膜の形成後において、コンタクト孔の底に露出する上部電極等の表面に、フッ素を含む電極被膜が形成されてなり、撥液膜の形成のために、パッシベーション層におけるコンタクト孔を臨む内壁面をガスに晒す時間T
1を、電極被膜の膜厚が3[nm]以下となるように規定する。これにより、上部電極等と下部電極との良好なコンタクトをとることができる。
【0042】
本発明の別態様に係るアクティブマトリクス型表示パネルの製造方法では、上記方法の撥液膜の形成後、下部電極の形成前において、さらに次の工程を含む。
【0043】
(iv−4)コンタクト孔内を含む平坦化層およびパッシベーション層の表面を水を含む洗浄液で洗浄する。
【0044】
(iv−5)コンタクト孔内を含む平坦化層およびパッシベーション層の表面に対し、エアーまたはガスを吹き付けて、コンタクト孔内を含む平坦化層およびパッシベーション層の表面に残る洗浄液を除去する。
【0045】
本態様に係る製造方法では、上記(iv−2)のパッシベーション層へのコンタクト孔の開設後、上記(iv−4)の洗浄の前に、上記(iv−3)のように、パッシベーション層におけるコンタクト孔を臨む内壁面に撥液膜を形成する。このため、上記(iv−4)で平坦化層およびパッシベーション層のコンタクト孔内に入った洗浄液が、上記(iv−5)のエアー等の吹き付けにより、コンタクト孔内から確実に除去される。よって、本態様のように、洗浄液で洗浄する工程を含む場合においても、上記(iv−5)のエアー等の吹き付け後に洗浄液がコンタクト孔内に残留しにくく、コンタクト孔の底に露出する上部電極等の表面に酸化被膜が形成されることを効果的に抑制することができる。
【0046】
本発明の別態様に係るアクティブマトリクス型表示パネルの製造方法では、上記方法において、上部電極等は、銅(Cu)もしくはCu合金を用い形成する。これにより、配線抵抗を低減することができ、良好な表示品質の表示パネルを製造することができる。
【0047】
本発明の一態様に係るアクティブマトリクス型表示パネルは、基板上に、TFT層、平坦化層、および表示素子部がこの順に形成されてなる構成を有する。
【0048】
TFT層には、ソース電極もしくはドレイン電極、またはその一方の電極に接続された接続用電極の何れかの電極(上部電極等)と、当該上部電極等を被覆し、平坦化層と境界を接するパッシベーション層とが含まれている。
【0049】
また、表示素子部には、平坦化層と境界を接する状態で形成されてなる下部電極が含まれている。
【0050】
下部電極は、平坦化層およびパッシベーション層を連続して貫通するコンタクト孔を通し、平坦化層およびパッシベーション層におけるコンタクト孔を臨む内壁面に沿って一部が形成されることにより、コンタクト孔の底で上部電極等に対して電気的に接続されている。
【0051】
平坦化層およびパッシベーション層におけるコンタクト孔を臨む内壁面と、下部電極との間には、フッ素を含む膜が介挿されており、コンタクト孔の底において、下部電極と前記何れかの電極との間には、フッ素を含む電極被膜が介挿されている。
【0052】
上記態様に係る製造方法を用い製造されたアクティブマトリクス型表示パネルでは、上記のような構成を有することになる。よって、この構成を有するアクティブマトリクス型表示パネルでは、上部電極等と下部電極との間の良好なコンタクトが図られ、高い表示品質を実現することができる。
【0053】
本発明の別態様に係るアクティブマトリクス型表示パネルでは、上記構成において、電極被膜の膜厚が、3[nm]以下である。このように電極被膜の膜厚を3[nm]以下(例えば、2[nm]〜3[nm])に規定することで、上部電極等と下部電極との良好なコンタクトをとることができる。
【0054】
[実施の形態]
1.表示パネル10およびこれを含む表示装置1の製造方法
本発明の実施の形態に係る表示パネル10およびこれを含む表示装置1の製造方法について、図面を用い説明する。なお、以下では、表示パネル10の製造方法について、(1)TFT層の形成工程、(2)平坦化層の形成工程、(3)表示素子部の形成工程に便宜的に分けて説明を行う。
(1)TFT層の形成工程
先ず、TFT層の形成工程について、
図1の(a)部〜(e)部、
図2の(a)部〜(d)部、および
図3の(a)部を用い説明する。
【0055】
図1の(a)部に示すように、基板100を準備する。
【0056】
図1の(b)部に示すように、準備した基板100のZ軸方向上側の主面100aに対し、各トランジスタ素子部に対応してゲート電極101を形成する。ゲート電極101の形成は、基板100の主面100aに対して、メタルスパッタリング法を用いて銅(Cu)からなる金属膜とモリブデン(Mo)からなる金属膜とを積層形成し、その上にホトリソグラフィー法を用いてレジストパターンを形成した後、ウェットエッチングを行い、レジストパターンを除去することでなされる。
【0057】
なお、添付図面では、模式的に一つのトランジスタ素子部のみを図示しているが、表示パネル10には、複数のトランジスタ素子部が形成されてなる。
【0058】
図1の(c)部に示すように、ゲート電極101および基板100の主面100aにおける露出部分を被覆するように、ゲート絶縁層102を積層形成する。ゲート絶縁層102の形成は、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法あるいはスパッタリング法を用い、SiO膜とSiN膜とを順に積層形成することでなされる。
【0059】
図1の(d)部に示すように、ゲート絶縁層102上におけるゲート電極101の上方に相当する領域にチャネル層103を形成する。チャネル層103の形成は、スパッタリング法を用い、酸化物半導体膜を形成し、ホトリソグラフィー法およびウェットエッチング法を用いてパターニングすることでなされる。
【0060】
図1の(e)部に示すように、チャネル層103およびゲート絶縁層102を被覆するように、チャネル保護層1040を積層形成する。チャネル保護層1040の形成は、プラズマCVD法あるいはスパッタリング法を用い、SiO膜を成膜し、成膜後にドライエアーまたは酸素雰囲気下で、成膜温度以上の温度でアニール処理を施すことによりなされる。アニール処理は、チャネル層103の酸素欠陥を修復し、半導体特性を維持するためになされるものである。
【0061】
図2の(a)部に示すように、チャネル保護層104に対してチャネル層103に到達するコンタクト孔を開設した後、各コンタクト孔を通してチャネル層103に一部接触するソース電極105およびドレイン電極106を形成する。チャネル層104へのコンタクト孔の開設は、ホトリソグラフィー法およびドライエッチング法を用いることでなされる。
【0062】
ソース電極105およびドレイン電極106の形成は、スパッタリング法を用い、銅マンガン(CuMn)膜と、Mo膜とを積層した後、ホトリソグラフィー法およびウェットエッチング法を用いパターニングすることでなされる。
【0063】
図2の(b)部に示すように、ソース電極105、ドレイン電極106、およびチャネル保護層104の露出部分を被覆するように、層間絶縁層1070を形成する。層間絶縁層1070の形成は、プラズマCVD法あるいはスパッタリング法を用い成膜した後、ドライエアーまたは酸素雰囲気下でアニール処理を施すことによりなされる。アニール処理を行う目的は、上記同様に、チャネル層103の半導体特性を維持するためのものである。
【0064】
図2の(c)部に示すように、層間絶縁層107におけるソース電極105の一部上方に相当する部分にコンタクト孔107aを開設し、底にソース電極105の表面105aの一部が露出するようにする。そして、
図2の(d)部に示すように、層間絶縁層107におけるコンタクト孔107aを臨む内壁面を含む、層間絶縁層107の表面の一部に上部電極108を形成する。
【0065】
層間絶縁層1070の成膜は、プラズマCVD法あるいはスパッタリング法を用いなされ、層間絶縁層107へのコンタクト孔107aの開設は、ドライエッチング法を用いなされる。また、上部電極108の形成は、スパッタリング法を用い金属膜を形成した後、ホトリソグラフィー法およびウェットエッチング法を用いなされる。
【0066】
図3の(a)部に示すように、上部電極108および層間絶縁層107における露出部分を被覆するように、パッシベーション層1090を形成する。パッシベーション層1090の形成は、プラズマCVD法あるいはスパッタリング法を用いなされる。
【0067】
以上のような過程を経て、基板100上にTFT層が形成される。
(2)平坦化層の形成工程
次に、平坦化層の形成、および平坦化層へのコンタクト孔開設について、
図3の(b)部〜(c)部、および
図4の(a)部〜(b)部を用い説明する。
【0068】
図3の(b)部に示すように、パッシベーション層1090を被覆するように、平坦化層1100を積層形成する。平坦化層1100の形成は、有機材料を塗布し硬化させた後、Z軸方向上側の主面を平坦化することでなされる。
【0069】
図3の(c)部に示すように、平坦化層110およびパッシベーション層109に対して、互いに連続するコンタクト孔110a,109aを開設する。平坦化層110へのコンタクト孔110aの開設には、リソグラフィ(露光・現像)を用い、パッシベーション層109へのコンタクト孔109aの開設には、ドライエッチング法を用いる。そして、コンタクト孔109aの底に上部電極108の表面108aの一部が露出するまで行う。
【0070】
図4の(a)部に示すように、平坦化層110のZ軸方向上側の主面、およびコンタクト孔110a,109a内について、純水を用い洗浄を行う(水洗)。なお、洗浄の際には、洗浄液である純水は、上部電極108の表面108bにも接触することになる。
【0071】
図4の(b)部に示すように、水洗後の平坦化層110のZ軸方向上側の主面、およびコンタクト孔110a,109a内について、エアーブローにより洗浄液の除去を行う。なお、洗浄液の除去の際には、コンタクト孔110a,109aの底に露出する上部電極108の表面108cの水滴も除去できるように、エアーノズルを走査する。
(3)表示素子部の形成
次に、平坦化層110上への表示素子部の形成について、
図4の(c)部、
図5の(a)部〜(c)部、および
図6(a)を用い説明する。
【0072】
図4の(c)部に示すように、平坦化層110上、およびコンタクト孔110a,109a内にアノード111を形成する。アノード111の形成は、スパッタリング法あるいは真空蒸着法を用い金属膜を成膜した後、ホトリソグラフィー法およびエッチング法を用いて、各素子に対応したパターニングを行うことでなされる。
【0073】
なお、アノード111上にホール注入層やホール輸送層などが形成されることもあるが、説明を省略する。
【0074】
図5の(a)部に示すように、アノード111の表面111aにおける外縁部に対し、各表示素子部を規定する開口112aを囲繞するバンク112を形成する。バンク112の形成は、まずアノード111上に、スピンコート法などを用いてバンク112の構成材料膜を成膜し、パターニングにより開口112aを開設することで形成される。バンク112への開口112aの開設は、構成材料膜上にマスクを配置して露光し、その後に現像することでなされる。
【0075】
図5の(b)部に示すように、バンク112で囲繞された開口112aに対して、有機発光層を含む有機発光機能層113を形成し、
図5の(c)部に示すように、有機発光機能層113上およびバンク112の頂面上を被覆するように、カソード114および封止層115を順に成膜する。なお、図では、有機発光機能層113を一層構成で図示しているが、有機発光層を含む複数層が積層されてなる構成となっていてもよい。これらの有機層は、印刷法を用い形成される。
【0076】
カソード114および封止層115の形成は、スパッタリング法などを用いなされる。
【0077】
最後に、
図6(a)に示すように、別途で作成しておいたカラーフィルタパネル(CFパネル)を、間に樹脂層116を挟んだ状態で貼り合わせることで、アクティブマトリクス型の表示パネル10が完成する。なお、CFパネルは、基板119のZ軸方向下側の主面にカラーフィルタ層117およびブラックマトリクス層118を形成してなるパネルである。
(4)表示装置1の形成
次に、
図6(b)に示すように、上記のような過程を経て完成した表示パネル10に対して、駆動・制御回路部20を接続することで表示装置1が完成する。駆動・制御回路部20は、一例として、4つの駆動回路21〜24と、1つの制御回路25とから構成されている。ただし、駆動・制御回路部20の構成については、これに限られるものではない。例えば、駆動回路については、2つであってもよいし、また、表示パネル10に対する配置形態についても、表示パネル10の外周2辺に沿って、4つの駆動回路あるいは2つの駆動回路が配置されていてもよく、さらには、外周1辺に沿って全ての駆動回路が配置されていてもよい。
2.各部の構成材料
(1)基板100,119
基板100,119の構成材料としては、例えば、ガラス基板、石英基板、シリコン基板、硫化モリブデン、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、マグネシウム、鉄、ニッケル、金、銀などの金属基板、ガリウム砒素基などの半導体基板、プラスチック基板等を採用することができる。
【0078】
プラスチック基板としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂を用いてもよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルベンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオ共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、プリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、変形ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうち1種、または2種以上を積層した積層体を用いることができる。
【0079】
(2)ゲート電極101
ゲート電極101の構成材料としては、例えば、銅(Cu)を含み構成されている。例えば、銅(Cu)からなる層とモリブデン(Mo)からなる層との積層体を採用することができる。
【0080】
ただし、ゲート電極101の構成については、これに限定されず、例えば、Cu単層や、Cu/Wの積層体などを採用することもできるし、次のような材料を採用することも可能である。
【0081】
それ以外に採用することが可能な材料としては、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、銀(Ag)、金(Au)、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、インジウム(In)、ニッケル(Ni)、ネオジム(Nd)などの金属もしくはそれらの合金、または、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ガリウムなどの導電性金属酸化物もしくは酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)、酸化ガリウム亜鉛(GZO)などの導電性金属複合酸化物、または、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレンなどの導電性高分子もしくはそれらに、塩酸、硫酸、スルホン酸などの酸、六フッ化リン、五フッ化ヒ素、塩化鉄などのルイス酸、ヨウ素などのハロゲン原子、ナトリウム、カリウムなどの金属原子などのドーパントを添加したもの、もしくは、カーボンブラックや金属粒子を分散した導電性の複合材料などが挙げられる。また、金属微粒子とグラファイトのような導電性粒子を含むポリマー混合物を用いてもよい。これらは、1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0082】
(3)ゲート絶縁層102
ゲート絶縁層102の構成としては、例えば、酸化シリコン(SiO)と窒化シリコン(SiN)との積層体を採用することができる。ただし、ゲート絶縁層102の構成は、これに限定されるものではなく、 ゲート絶縁層102の構成材料としては、例えば、電気絶縁性を有する材料であれば、公知の有機材料や無機材料のいずれも用いることができる。
【0083】
有機材料としては、例えば、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、イミド系樹脂、ノボラック系樹脂などを用い形成することができる。
【0084】
また、無機材料としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化コバルトなどの金属酸化物、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ジルコニウム、窒化セリウム、窒化亜鉛、窒化コバルト、窒化チタン、窒化タンタルなどの金属窒化物、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウムチタン酸鉛などの金属複合酸化物が挙げられる。これらは、1 種または2 種以上組み合わせて用いることができる。
【0085】
さらに、表面処理剤(ODTS OTS HMDS βPTS)などでその表面を処理したものも含まれる。
【0086】
(4)チャネル層103
チャネル層103の構成としては、アモルファス酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)からなる層を採用することができる。チャネル層103の構成材料は、これに限定されるものではなく、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)から選択される少なくとも一種を含む酸化物半導体を採用することができる。
【0087】
また、チャネル層103の層厚については、例えば、20[nm]〜200[nm]の範囲とすることができ、表示パネル10に形成されている全てのチャネル層103で層厚が同一である必要はなく、一部が異なるように設定することもできる。
【0088】
(5)チャネル保護層104
チャネル保護層104の構成としては、酸化シリコン(SiO)からなる層を採用することができる。ただし、チャネル保護層104の構成材料は、これに限定されるものではなく、例えば、酸窒化シリコン(SiON)、窒化シリコン(SiN)、あるいは酸化アルミニウム(AlOx)を用いることができる。また、上記のような材料を用いた層を複数積層することで構成することもできる。
【0089】
また、チャネル保護層104の層厚については、例えば、50[nm]〜500[nm]の範囲とすることができる。
【0090】
(6)ソース電極105およびドレイン電極106
ソース電極105およびドレイン電極106の構成としては、銅マンガン(CuMn)とモリブデン(Mo)との積層体を採用することができる。
【0091】
なお、ソース電極105およびドレイン電極106の層厚については、例えば、100[nm]〜500[nm]の範囲とすることができる。
【0092】
(7)層間絶縁層107
層間絶縁層107の構成としては、酸化シリコン(SiO)からなる層を採用することができる。
【0093】
(8)上部電極108
上部電極108の構成としては、ソース電極105およびドレイン電極106などと同様に、銅マンガン(CuMn)とモリブデン(Mo)との積層体を採用することができる。ここで、上部電極108においては、Cuからなる層がZ軸方向上部となる構成となっている。
【0094】
(9)パッシベーション層109
パッシベーション層109の構成としては、窒化シリコン(SiN)からなる層を採用することができる。
【0095】
なお、パッシベーション層109の層厚については、例えば、50[nm]〜150[nm]の範囲、例えば、100[nm]とすることができる。
【0096】
(10)平坦化層110
平坦化層110の構成は、ポリイミドからなる層を採用することができる。ただし、ポリイミドからなる層以外にも、ポリアミド、アクリル系樹脂材料などの有機化合物からなる層を採用することもできる。
【0097】
なお、平坦化層110の層厚については、4.0[μm]〜5.0[μm]の範囲、例えば、4.5[μm]とすることができる。
【0098】
(11)アノード111
アノード111は、銀(Ag)またはアルミニウム(Al)を含む金属材料から構成されている。トップエミッション型の本実施の形態に係る表示パネル10の場合には、その表面部が高い反射性を有することが好ましい。
【0099】
なお、アノード111については、上記のような金属材料からなる単層構造だけではなく、金属層と透明導電層との積層体を採用することもできる。透明導電層の構成材料としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛(IZO)などを用いることができる。
【0100】
なお、本実施の形態では、アノード111と有機発光層との間の機能層、例えば、ホール注入層などについては図示および説明を省略しているが、これら機能層を挿入した構成を採用することもできる。
【0101】
例えば、ホール注入層を採用する場合には、その構成材料として、例えば、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)などの酸化物、あるいは、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料を採用することができる。
【0102】
なお、金属酸化物からなるホール注入層を採用する場合には、PEDOTなどの導電性ポリマー材料を用いる場合に比べて、ホールを安定的に、またはホールの生成を補助して、有機発光層に対しホールを注入する機能を有し、大きな仕事関数を有する、という観点から有効である。
【0103】
(12)バンク112
バンク112は、樹脂等の有機材料を用い形成されており絶縁性を有する。バンク112の形成に用いる有機材料の例としては、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等があげられる。バンク112は、有機溶剤耐性を有することが好ましい。さらに、バンク112は、製造工程中において、エッチング処理、ベーク処理など施されることがあるので、それらの処理に対して過度に変形、変質などをしないような耐性の高い材料で形成されることが好ましい。また、表面に撥水性をもたせるために、表面をフッ素処理することもできる。
【0104】
なお、バンク112を親液性の材料を用い形成した場合には、バンク112の表面と有機発光層の表面との親液性/撥液性の差異が小さくなり、有機発光層を形成するために有機物質を含んだインクを、バンク112が規定する開口部内に選択的に保持させることが困難となってしまうためである。
【0105】
さらに、バンク112の構造については、
図6(a)に示すような一層構造だけでなく、二層以上の多層構造を採用することもできる。この場合には、層毎に上記材料を組み合わせることもできるし、層毎に無機材料と有機材料とを用いることもできる。
【0106】
(13)有機発光機能層113
有機発光機能層113における有機発光層としては、ホールと電子とが注入され再結合されることにより励起状態が生成され発光する機能を有する。有機発光層の形成に用いる材料は、湿式印刷法を用い成膜できる発光性の有機材料を用いることが必要である。
【0107】
具体的には、例えば、特許公開公報(日本国・特開平5−163488号公報)に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体などの蛍光物質で形成されることが好ましい。
【0108】
なお、有機発光層とカソード114との間に、電子輸送層を挿入することもできる。
【0109】
電子輸送層は、カソード114から注入された電子を有機発光層へ輸送する機能を有し、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などを用い形成されている。
【0110】
(14)カソード114
カソード114は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)若しくは酸化インジウム亜鉛(IZO)などを用い形成される。本実施の形態のように、トップエミッション型の本実施の形態に係る表示パネル10の場合においては、光透過性の材料で形成されることが必要となる。光透過性については、透過率が80[%]以上とすることが好ましい。
【0111】
(15)封止層115
封止層115は、有機発光層などの有機層が水分に晒されたり、空気に晒されたりすることを抑制する機能を有し、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの材料を用い形成される。また、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの材料を用い形成された層の上に、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂材料からなる封止樹脂層を設けてもよい。
【0112】
封止層115は、トップエミッション型である本実施の形態に係る表示パネル10の場合においては、光透過性の材料で形成されることが必要となる。
【0113】
(16)カラーフィルタ層117
カラーフィルタ層117としては、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色の波長域の可視光を選択的に透過する、公知の材料から構成される。例えば、アクリル樹脂をベースに形成されている。
【0114】
(17)ブラックマトリクス層118
ブラックマトリクス層118は、例えば、光吸収性および遮光性に優れる黒色顔料を含む紫外線硬化樹脂材料から構成されている。具体的な紫外線硬化樹脂材料としては、例えば、アクリル樹脂等がある。
3.コンタクト孔110a,109aの開設
次に、上記のような製造過程の内、平坦化層110およびパッシベーション層109へのコンタクト孔110a,109aの開設工程について、
図7から
図9を用い詳細説明を行う。
【0115】
図7の(a)部〜(d)部、および
図8の(a)部〜(c)部は、
図3の(b)部〜(c)部、および
図4の(a)部〜(b)部の工程を詳細に示す実施例に係る各工程での模式断面図であって、
図9の(a)部〜(d)部は、その比較例に係る対応する工程での模式断面図である。
【0116】
(実施例)
図7の(a)部に示すように、表示パネル10の製造過程において、層間絶縁層107、上部電極108、パッシベーション層1090、および平坦化層1100をZ軸方向下側から順に積層形成する。このとき、本実施例では、パッシベーション層1090の層厚を100[nm]とし、平坦化層1100の層厚を4.5[μm]としている。
【0117】
構成材料については、パッシベーション層1090がSiNであり、平坦化層1100がポリイミドである。また、上部電極108については、Z軸方向下側からMo層とCuMn層とが順に積層された積層体である。
【0118】
次に、
図7の(b)部に示すように、リソグラフィにより平坦化層1101の表面側からコンタクト孔1101aを開設してゆく。
【0119】
図7の(c)部に示すように、コンタクト孔110aの底部にパッシベーション層1090の表面1090aが露出するまで、平坦化層110へのコンタクト孔110aの開設を行う。
【0120】
次に、
図7の(d)部に示すように、コンタクト孔110aが開設された平坦化層110をマスクとして、ドライエッチングによりパッシベーション層1091にコンタクト孔1091aの開設を行う。ドライエッチングの条件は、次の通りである。
【0121】
CF
4/O
2=1080/120[sccm]
Pressure=15〜50[mTorr](例えば、30[mTorr])
Source,Bias=3000[W]
なお、上記条件中におけるガス流量の単位(sccm)については、温度0[℃]で1013[hPa](1[atm])での値である。
【0122】
ドライエッチングにより、パッシベーション層1091のコンタクト孔1091aの底部には、上部電極108の表面108aが露出する。このとき、二点鎖線で囲んだ部分に示すように、パッシベーション層1091におけるコンタクト孔1091aを臨む内壁面1091aには、殆どフッ化膜は形成されていない。一方、平坦化層110におけるコンタクト孔110aを臨む側壁には、フッ化膜120が形成される。
【0123】
なお、本実施例では、コンタクト孔110a,109aのアスペクト比は、略100%である。
【0124】
図8の(a)部に示すように、本実施例に係る製造方法では、パッシベーション層109に対するコンタクト孔109aの開設がなされた後、オーバーエッチング処理を行う。これにより、二点鎖線で囲んだ部分に示すように、平坦化層110およびパッシベーション層109におけるコンタクト孔110a,109aを臨む内壁面は、フッ化膜121で被覆されるに至る。なお、上部電極108におけるコンタクト孔109aの底に露出する表面についても、フッ化膜121で被覆(フッ素を含む電極被膜が形成)されることになる。
【0125】
なお、本明細書において「フッ化膜」とは、単に“フッ素を含む膜“というものであって、必ずしもフッ素が化合物化して存在する膜に限定されるものではない。
【0126】
ここで、オーバーエッチングの時間について、本発明者等の検討結果より、
図7の(a)部に示すエッチング開始から
図7の(d)部に示す上部電極108の表面108aが露出した状態となるまでの時間をT
0とするとき、
図7の(d)部に示す状態になった後、
図8の(a)部に示す状態に至るまでの時間T
1を次のようにすることが好ましい。
【0127】
[数2]70%×T
0≦T
1≦150%×T
0
例えば、時間T
0が35[sec.]と仮定した場合には、時間T
1を24.5[sec.]以上87.5[sec.]以下とすることができる。
【0128】
なお、上記時間T
1については、ドライエッチングの条件や、各層の構成材料などによっても異なるので、それらごとに最適な時間を規定することが好ましい。
【0129】
続いて、
図8の(b)部に示すように、ドライエッチングの後に純水などによる洗浄処理を実行する。このとき、コンタクト孔110a,109aの内部には、水滴500が入り込むことがある。
【0130】
図8の(b)部に示すように、コンタクト孔110a,109aの内部に水滴500が入り込んだ場合にあっても、本実施例に係る製造方法では、エアーブローによりコンタクト孔110a,109aの内部の水滴500についても除去することができる。これは、
図8の(a)部に示したように、オーバーエッチング処理の実行により、平坦化層110およびパッシベーション層109のコンタクト孔110a,109aを臨む内壁面がフッ化膜121で被覆されることによるものである。よって、本実施例に係る製造方法では、上部電極108におけるコンタクト孔110a,109aの底に露出する表面108cへの水滴の残留を防ぐことができる。
【0131】
従って、本実施例に係る製造方法では、上部電極108の表面108cに金属酸化膜が形成されることが抑制され、アノード111との良好なコンタクトをとることができる。
【0132】
(比較例)
一方、
図9の(a)部に示すように、層間絶縁層807および上部電極808が順に積層され、その上に積層されたパッシベーション層8091および平坦化層810にコンタクト孔810a,8091aを開設する。比較例においても、平坦化層810へのコンタクト孔810aの開設にはリソグラフィを用い、パッシベーション層8091へのコンタクト孔8091aの開設にはドライエッチングを用いる。
【0133】
比較例に係る製造方法では、コンタクト孔810a、8091aの底に上部電極808の表面808aが露出した時点でエッチングを終了する。二点鎖線で囲んだ部分に示すように、エッチングの終了時においては、平坦化層810におけるコンタクト孔810aを臨む内壁面はフッ化膜820で被覆されているが、パッシベーション層8091におけるコンタクト孔8091aを臨む内壁面には、殆どフッ化膜は積層されていない状態である。
【0134】
続いて、
図9の(b)部に示すように、純水などを用い洗浄を行う。この際には、上記実施例と同様に、コンタクト孔810a,8091aの内部に水滴500が入り込むことがある。
【0135】
次に、
図9の(c)部に示すように、エアーブローを行うことで水滴を除去しようとするのであるが、コンタクト孔8091aの底部分に水滴の一部501が残留することがある。これは、
図9の(a)部における二点鎖線で囲んだ部分に示すように、パッシベーション層8091におけるコンタクト孔8091aを臨む内壁面がフッ化膜で覆われていないことによるものである。即ち、パッシベーション層8091におけるコンタクト孔8091aを臨む内壁面は、撥液性が弱く、このため、コンタクト孔8091aの底部分に入り込んだ水滴の一部501が除去されにくい。
【0136】
このようにコンタクト孔8091aの内部の水滴500を除去しきれず、水滴の一部501が残留した状態(濡れた状態)では、
図9の(d)部に示すように、コンタクト孔810a,8091aの底において上部電極808の表面に金属酸化膜822が被覆されるに至る。よって、比較例に係る製造方法では、上部電極808とアノードとの良好なコンタクトをとれないことになる。
【0137】
4.コンタクト孔を臨む周囲の状態
上記実施例に係る製造方法を用いてコンタクト孔を開設した場合と、比較例に係る製造方法を用いてコンタクト孔を開設した場合とについて、コンタクト孔を臨む周囲の状態を説明する。
【0138】
(実施例)
上記実施例に係る製造方法を用いコンタクト孔を開設した場合には、
図10(a)に示すように、コンタクト孔の底に露出する上部電極108の表面108cには金属酸化膜が被覆されていることはない。
図10(b)に示すように、断面を見ても、コンタクト孔110a,109aの底には、上部電極108の表面108cが露出し、金属酸化膜の被覆はない。
【0139】
(比較例)
一方、
図10(c)に示すように、比較例に係る製造方法を用いコンタクト孔を開設した場合には、コンタクト孔の底に露出する上部電極808の表面808bの一部(コンタクト孔の内縁に近い部分)の上に金属酸化膜(CuO
X膜)が形成されている。
図10(d)に示すように、断面を見ても、コンタクト孔の底には、上部電極808の表面808bの一部を被覆するように金属酸化膜(CuO
X膜)822が形成されている。
【0140】
以上の結果からも、実施例に係る製造方法を用いれば、上部電極108とアノード111との間の良好なコンタクトを確保することができる。
4.上部電極108の表面のフッ化膜121による被覆
上記のように、上記実施の形態に係る製造方法では、コンタクト孔109aの開設工程において、オーバーエッチングを実行することで、上部電極108の表面もフッ化膜121で被覆されることになる(
図8の二点鎖線で囲んだ部分を参照)。このため、上部電極108とアノード111とのコンタクトの観点から、間に介挿されることになるフッ化膜121について検討した。
【0141】
先ず、
図11に示すように、コンタクト孔109aの底においては、上部電極108の表面108aにはCuF
2やCuFOHが形成されていることが推定できる。
【0142】
次に、
図12(a)に示すように、コンタクト孔109aの底において、上部電極108とアノード111との間に介挿されるフッ化膜121の膜厚t
Fが3[nm]以下(例えば、2〜3nm)となるように抑えれば、上部電極108とアノード111との間の良好なコンタクトを確保するうえで問題を生じないと考えられる。換言すると、オーバーエッチングの時間T
1については、膜厚t
Fが3[nm]以下となるように抑えることができる時間とすることが好ましいといえる。
【0143】
一方、
図12(b)に示すように、オーバーエッチングの時間を長くしすぎると、平坦化層860およびパッシベーション層859におけるコンタクト孔860aを臨む内壁面を被覆するフッ化膜871の膜厚は厚くなる。このため、上部電極858の表面への金属酸化膜の形成を抑制するという観点からは好ましい。
【0144】
しかしながら、
図12(b)に示すように、上部電極858とアノード861との間に介挿されるフッ化膜871の膜厚t
F2が3[nm]を超えてしまうと、フッ化膜871の介在により上部電極858とアノード861との間の良好なコンタクトをとることが困難となる。
【0145】
以上より、オーバーエッチングの時間T
1については、上部電極108の上に形成されるフッ化膜121の膜厚t
Fが3[nm]を超えない時間とすることが好ましい。
【0146】
[変形例]
変形例に係る表示パネル15の構成について、
図13を用い説明する。
図13では、表示パネル15の一部構成だけを抜き出して図示している。また、
図13においては、上記実施の形態と同じ構成部分には同一の符号を付している。
【0147】
図13に示すように、表示パネル15においては、TFT層のソース電極155およびドレイン電極106の上を被覆するように、パッシベーション層159および平坦化層160が積層形成されている。即ち、本変形例では、ソース電極155とアノード161とが、間に上部電極を介することなく接続されている。
【0148】
本変形例に係る表示パネル15の製造過程でも、パッシベーション層159および平坦化層160を積層形成した後に、ソース電極155上の一部を露出させるコンタクト孔を開設し、その後にアノード161を形成する。そして、コンタクト孔の開設にあたっては、上記実施の形態と同様にオーバーエッチング処理を行い、パッシベーション層159および平坦化層160におけるコンタクト孔を臨む内壁面をフッ化膜で被覆する。これにより、コンタクト孔の底に露出するソース電極155の表面への金属酸化膜の形成を抑制することができる。
【0149】
従って、本変形例においても、ソース電極155とアノード161との間に良好なコンタクトをとることができる。
【0150】
[その他の事項]
上記実施の形態および変形例では、SiNからなるパッシベーション層109,159を採用したが、本発明は、これに限定を受けない。フッ素系のガスでドライエッチング可能な材質の層であれば採用することが可能である。そして、複数の層を積層してなるパッシベーション層を採用することもできる。
【0151】
また、上記実施の形態および変形例では、各電極材料にCuを含む金属材料を採用することとしたが、本発明は、電極材料をこれに限定するものではない。例えば、Cuの他に、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、チタン(Ti)などを採用することもできる。この場合にも、金属酸化膜の形成を抑制するという観点から、上記実施の形態および変形例と同様の製造方法を採用することが好ましい。
【0152】
また、上記実施の形態および変形例では、コンタクト孔110a,109aの開設後における洗浄に、純水を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。水を含む洗浄液を用いることができる。ただし、平坦化層110,160にポリイミドなどの樹脂層を採用する場合においては、有機洗浄液を用いることは避けることが好ましい。洗浄時における平坦化層110,160への洗浄液の影響を避けるためである。
【0153】
また、上記実施の形態および変形例では、表示素子部の構成として、TFT層の側にアノード111,161を配し、有機発光機能層113を挟んだ上方にカソード114を配する構成を採用したが、アノードとカソードの位置が逆転してもよい。
【0154】
また、上記実施の形態および変形例では、表示パネル10,15として有機EL表示パネルを一例として採用したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、無機EL表示パネルや電界放出(FE)表示パネル、さらには液晶(LC)表示パネルなどを採用することもできる。
【0155】
また、上記実施の形態および変形例では、エアーブローについて、一例として、30[mm/sec.]〜70[mm/sec.]の相対速度(エアーブローのノズルと基板との相対速度)を以ってドライエアーを吹き付けることとした。エアーブローの温度条件などを含む各条件については、本発明の効果を得る上であまり大きく影響しないと考えられる。
【0156】
また、上記実施の形態および変形例では、コンタクト孔に対する洗浄およびエアーブローを実行することとしたが、これらは必須の要件ではない。洗浄を行わない場合においても、コンタクト孔を臨む内壁面および底に露出する上部電極等に対しては、構成中の水分や、環境中に含まれる水分などが付着することが考えられるが、本発明に係る方法を採用すれば、これらの水分による上部電極表面への酸化被膜の形成を効果的に抑制することができ、TFT層の上部電極と表示素子部のアノードなどとの良好なコンタクトをとることができる。
【0157】
また、上記変形例では、ソース電極155とアノード161とを接続することとしたが、デバイス構造によってはドレイン電極106とアノードとを接続する構成を採用することも適宜可能である。
【0158】
また、上記実施の形態および変形例では、オーバーエッチング処理を行うことにより、パッシベーション層109,159におけるコンタクト孔109aを臨む内壁面をフッ化膜121で被覆することとしたが、本発明は、フッ化膜の形成をこれに限定するものではない。例えば、フッ素系のガスを別にコンタクト孔110a,109aの内部に充填するようにしてもよい。ただし、上記実施の形態および変形例のように、オーバーエッチング処理の実行によりフッ化膜121を形成することとすれば、別途の製造工程を追加する必要がなく、生産効率という観点から優れる。
【0159】
また、上記実施の形態および変形例では、平坦化層110,160へのコンタクト孔の開設にリソグラフィを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ドライエッチングやウェットエッチングを用いてもよい。