特許第6241879号(P6241879)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社LIXILの特許一覧

<>
  • 特許6241879-引戸の引手構造 図000002
  • 特許6241879-引戸の引手構造 図000003
  • 特許6241879-引戸の引手構造 図000004
  • 特許6241879-引戸の引手構造 図000005
  • 特許6241879-引戸の引手構造 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241879
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】引戸の引手構造
(51)【国際特許分類】
   E05B 1/06 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
   E05B1/06 105C
   E05B1/06 105E
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-3789(P2014-3789)
(22)【出願日】2014年1月10日
(65)【公開番号】特開2015-132096(P2015-132096A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2016年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 徹
(72)【発明者】
【氏名】平田 智巳
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−161256(JP,U)
【文献】 特開2003−232164(JP,A)
【文献】 特開2005−097933(JP,A)
【文献】 特開2010−019061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸の幅方向の少なくとも一方の端部に設けられる引戸の引手構造であって、
引戸の縦枠の見付面に引手部材が取り付けられ、
前記縦枠の前記見付面には、前記引手部材の被係合部と係合するコ字状の係合部が形成され、
前記係合部は、
一対の見込面と、
前記一対の見込面の一方の見込面から他方の見込面へ延出する延出面と、から構成され、
前記一方の見込面は、
前記他方の見込面と対向する対向面と、
前記対向面の裏側となる裏側面と、を有し、
前記引戸の開操作において手指を当接させるための当接面は、
前記引手部材の第一側面と、前記一方の見込面の前記対向面と、からなり、
前記引手部材の第一側面と前記一方の見込面の前記対向面とは、
連続するように配置され、
前記引戸の閉操作において手指を当接させるための当接面は、
前記引手部材の第二側面と、前記一方の見込面の前記裏側面と、からなり、
前記引手部材の第二側面と前記一方の見込面の前記裏側面とは、
連続するように配置される、
引戸の引手構造。
【請求項2】
前記引戸の前記縦枠の前記係合部は、
縦方向に連続する縦溝部にて構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の引戸の引手構造。
【請求項3】
前記一方の見込面は、前記裏側面側に向かって延出する突出片を備え、
前記突出片の端部は前記引手部材の第二側面で覆われている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の引戸の引手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸の開閉操作を行う際に手の指を掛けるための引手の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の開口部に設けられる従来の引戸において、例えば特許文献1に開示されるように、障子の戸先側に配置される戸先框に、障子の開閉時に使用者が指を掛ける引手が設けられる構成が知られている。
【0003】
この特許文献1に開示されるような框組の框戸では、戸先框の一部を切り欠いて取付穴を形成し、取付穴に引手を取り付ける構成が必要とされている。
【0004】
この取付穴の切り欠き加工は、工場で実施されることとするほか、施工現場においても実施されることが想定されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−231595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、引手を取り付けるために、框の一部を切り欠いて取付穴が必要な従来の構成では、取付穴の加工の手間が発生すると共に、特に施工現場での作業では、框単体ではなく框組された状態の障子に対して加工をする必要があり、特にガラス障子の場合にはガラス損傷が生じないように厳重な注意が必要となるなど、作業者の負担が大きいものとなる。
【0007】
また、他の課題として、取付穴を加工した後でなければ、実際に引手を取り付けた状態での操作感覚を確認することができず、引手の取付け完了後には取付位置の変更が困難なこととなってしまう。
【0008】
そこで、本発明は以上の問題点に鑑み、引戸に設けられる引手構造において、施工性に優れた新規な構造を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1に記載のごとく、引戸の幅方向の少なくとも一方の端部に設けられる引戸の引手構造であって、引戸の縦枠の見付面に引手部材が取り付けられ、前記縦枠の前記見付面には、前記引手部材の被係合部と係合するコ字状の係合部が形成され、前記係合部は、一対の見込面と、前記一対の見込面の一方から他方へ延出する延出面と、から構成され、前記一方の見込面は、前記他方の見込面と対向する対向面と、前記対向面の裏側となる裏側面と、を有し、前記引戸の開操作において手指を当接させるための当接面は、前記引手部材の第一側面と、前記一方の見込面の前記対向面と、からなり、前記引手部材の第一側面と前記一方の見込面の前記対向面とは、見込方向に連続するように配置され、前記引戸の閉操作において手指を当接させるための当接面は、前記引手部材の第二側面と、前記一方の見込面の前記裏側面と、からなり、前記引手部材の第二側面と前記一方の見込面の前記裏側面とは、見込方向に連続するように配置される、こととする。
【0011】
また、請求項2に記載のごとく、引戸の縦枠の係合部は、縦方向に連続する縦溝部にて構成されることとする。
【0012】
また、請求項3に記載のごとく、前記一方の見込面は、前記裏側面側に向かって延出する突出片を備え、前記突出片の端部は前記引手部材の第二側面で覆われている、こととする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
即ち、請求項1に記載の発明においては、施工現場などにおいて、引戸について引手部材を取り付けるための切欠き加工が不要な構成が実現できる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明においては、引戸の開閉方向(縦枠の長手方向に対して剪断方向)の操作荷重を引手部材を介して縦枠に確実に伝達させることができる。そして、この操作荷重の方向は、縦溝部の長手方向に対して剪断方向となるため、開閉操作がされる際には操作荷重によって引手部材を縦溝部に圧着させることができ、縦枠に対する強固な引手部材の固定状態を維持することができる。また、引戸の縦方向における引手部材の仮の位置決めが容易に行える。また、仮の位置決めを行うことで、実際に引手を取り付けた状態での操作感覚を確認することができることになり、操作感覚を確かめながら最終的な引手の取付け位置を確定することができる。
【0016】
また、請求項3に記載の発明においては、引手部材が配置される部位において、縦枠が指掛部によって覆われることになり、縦枠に手指が触れることなく、指掛部にのみ手指を触れさせるようにして操作を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明を適用する開口部装置の構成例について示す図である。
図2】引手構造の全体構造について示す斜視図である。
図3】引手構造の全体構造について示す平面断面図である。
図4】(A)引手部材の表面の形状について示す斜視図である。(B)引手部材の裏面の形状について示す斜視図である。(C)引手部材の断面形状について示す断面図である。
図5】(A)は開操作の際の情況について示す平面図である。(B)は閉操作の際の情況について示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明が適用可能な開口部装置1の全体構造を示すものである。開口部装置1は、開口部枠2と、引き違いにスライド可能な引戸3,4を有している。
【0019】
開口部枠2は、左右にそれぞれ縦方向に配置される縦枠21,22と、上部に横方向に配置される上枠23と、を有して構成されている。開口部枠2の下部には、引戸3,4の下部をガイドするレールを備えるガイド部材24が横方向に配置される。
【0020】
引戸3は、縦枠(縦框)31,32、上枠(上框)33、下枠(下框)34を枠組み(框組み)してガラス板などの面材30を取り囲んで構成される。戸先側の縦枠31には、引手構造6が構成され、引手構造6を用いて引戸3のスライド操作(開閉操作)が行われる。
【0021】
また、引戸3の下枠34には被ガイド部が設けられ、この被ガイド部が開口部枠2のガイド部材24にガイドされることで、引戸3の下部がガイド部材24によってガイドされる。
【0022】
以上の引戸3に関する構成は、引戸4においても同様である。なお、本発明は、本実施例のように引き違いの2枚の引戸を有するもののほか、3枚などより多くの枚数を備える引戸や、嵌め込みの板材と組み合わせた構成などついても適用できる。また、引戸3,4の下枠34には図示せぬ戸車が設けられ、引戸3,4の下部が戸車にて支えられる構成としている。
【0023】
図2及び図3は、引戸の引手構造6の詳細について示す図である。
引手構造6は、引戸3の戸先側の縦枠31に構成されている。本実施形態の縦枠31は、中空のアルミ押出部材にて構成されており、見付面31a,31bと、見込面31c,31dとから断面視矩形状の部位が形成される。
【0024】
面材30が配置される側の見込面31cには、面材30側に向けて延出される延出面31e,31fが形成され、延出面31e,31fには、延出端部から奥行き方向(見込方向)両側に延出される延出面31g,31hが形成されている。
【0025】
見込面31cと延出面31e,31fの三つの面により、面材30が挿し込まれる略コ字状の溝部31kが形成される。溝部31kには、樹脂製のグレーチングチャネル30gも挿し込まれる。
【0026】
見込面31c、延出面31e、延出面31gの三つの面により、略コ字状の縦溝部31mが形成される。同様に、見込面31c、延出面31f、延出面31hの三つの面により、略コ字状の溝部31nが形成される。このようにして、縦枠31の両側の見付面31a,31bの側部に、上下方向に長い一連の縦溝部31m,31nが形成される。
【0027】
縦枠31の見付面31a側の縦溝部31mには、引手部材35が取り付けられる。本実施例の引手部材35は、図4(A)(B)にも詳細に示されるように、樹脂成型品にて構成されており、略長方形状の固定面部35aと、固定面部35aの厚み方向に嵌通し、縦溝部31mの位置に対応するように配置される長孔形状の貫通孔部35bと、固定面部35aの裏面側から突出して縦溝部31mに挿し込まれる被係合部35cと、貫通孔部35bよりも面材30側となる位置において固定面部35aの表面側から突出し、縦枠31の長手方向と同一方向に伸びる突条部を構成する指掛部35dと、を有して構成される。
【0028】
引手部材35において、固定面部35aの裏面側の被係合部35cは上下二箇所に設けられており、各被係合部35cが縦枠31の縦溝部31mに挿入されることで、貫通孔部35bや指掛部35dが縦枠31の長手方向と同一方向に長く配置されるようになっている。
【0029】
このような構成により、図2乃至図4に参照されるように、被係合部35cを縦溝部31mに挿入するだけで、縦枠31に対する引手部材35の仮の位置決めを行うことができる。また、縦溝部31mの長手方向に対する引手部材35の位置を、引手部材35をスライドさせるようにして適宜ずらすことによって、仮の位置決めにおける位置調整ができる。また、被係合部35cは、縦溝部31mに対して摺動可能とする構成や嵌合する構成とすることで、位置調整を容易に行えるとともに、後の固定作業の際における引手部材35の位置ズレ(仮の位置決めした位置からのズレ)を抑制できる。
【0030】
図4(A)(B)に示すように、引手部材35において、固定面部35aには、固定面部35aの厚み方向に嵌通する固定孔部35e,35fが上下二箇所に設けられている。この固定孔部35e,35fを通じてビスなどの固定具36を縦枠31に挿し込むことで、引手部材35を縦枠31に対して留め付けることができる。
【0031】
図4(C)に示すように、引手部材35において、固定面部35aの表面には、貫通孔部35bにおいて指掛部35dと反対側の位置に窪み部35kが設けられている。
【0032】
このような構成により、窪み部35kに対して手指を挿し込むことができるようになり、指掛部35dと手指の当接幅H1をより広く確保することが可能となる。
【0033】
また、図4(C)に示すように、縦枠31の延出面31gにおける面材30と反対側の端部には、面材30に突出する突出片部31vが形成され、この突出片31vが、引手部材35の指掛部35dの上側の面視略L字状の当着部35vによって覆われる。
【0034】
このような構成により、引手部材35が配置される部位において、縦枠31が指掛部35dによって覆われることになり、縦枠31に手指が触れることなく、指掛部35dにのみ手指を触れさせるようにして操作を行うことが可能となる。
【0035】
次に、図5(A)(B)を用いて引戸の操作について説明する。図5(A)は、引戸を開ける操作の情況を示すものであり、手指の先端を貫通孔部35b側から指掛部35dの第一側面35xに当てるとともに、引戸の開方向X1(縦枠31の長手方向に対して剪断方向)に操作荷重を加えると、この操作荷重が引手部材35を介して縦枠31に伝達し、引戸が開方向X1へとスライド移動する。
【0036】
この操作においては、指掛部35dの第一側面35xに手指を掛けるようにして引手部材35に操作荷重を確実に伝えることができるため、引戸の開き操作を良好なものとすることができる。
【0037】
さらに、窪み部35kの存在により、指掛部35dと手指の当接幅H1(図4(C))が広く確保されるため、開操作の際には複数本の手指に操作荷重を分担させることが可能となり、特定の手指に極端な操作荷重が付与されることが防がれ、操作の負担を軽減することができる。
【0038】
加えて、この際、指掛部35dのほかにも、縦溝部31mの縦面31x(延出面31g)に手指を触れさせることも可能であり、指掛部35dと手指の間の当接幅H1のみならず、縦面31xを加えたより広い当接幅を実現することができる。
【0039】
他方、図5(B)は、引戸を閉じる操作の情況を示すものであり、手指の先端を貫通孔部35bの反対側の指掛部35dの第二側面35yに当てるとともに、引戸を閉方向X2(縦枠31の長手方向に対して剪断方向)に操作荷重を加えると、この操作荷重が引手部材35を介して縦枠31に伝達し、引戸が閉方向X2へとスライド移動する。
【0040】
この操作においては、指掛部35dの第二側面35yに手指を掛けるようにして引手部材35に操作荷重を確実に伝えることができるため、引戸の閉操作を良好なものとすることができる。
【0041】
さらに、指掛部35dの第二側面35yは、引戸の面材30から大きく突出し、これにより、指掛部35dと手指の当接幅H2(図4(C))を広く確保することができる。これにより、閉操作の際には複数本の手指に操作荷重を分担させることが可能となり、特定の手指に極端な操作荷重が付与されることが防がれ、操作の負担を軽減することができる。
【0042】
以上のようにして本発明を実施することができる。
即ち、引戸3の幅方向Wの少なくとも一方の端部に設けられる引戸の引手構造6であって、引戸3の縦枠31の見付面31aに引手部材35が取り付けられ、縦枠31の見付面31aには引手部材35と係合する係合部(上記実施例では縦溝部31m)が形成され、引手部材35には、係合部に対して係合する被係合部(上記実施例では35c)が設けられる、引戸の引手構造とするものである。
【0043】
これにより、施工現場などにおいて、引戸3について引手部材35を取り付けるための切欠き加工が不要な構成が実現できる。
【0044】
また、引戸3の縦枠31の係合部は縦方向に連続する縦溝部31mにて構成される、こととするものである。
【0045】
これにより、引戸3の開閉方向(縦枠31の長手方向に対して剪断方向)の操作荷重を引手部材35を介して縦枠31に確実に伝達させることができる。そして、この操作荷重の方向は、縦溝部31mの長手方向に対して剪断方向となるため、開閉操作がされる際には操作荷重によって引手部材35を縦溝部に圧着させることができ、縦枠31に対する強固な引手部材35の固定状態を維持することができる。引戸3の縦方向における引手部材35の仮の位置決めが容易に行える。また、仮の位置決めを行うことで、実際に引手を取り付けた状態での操作感覚を確認することができることになり、操作感覚を確かめながら最終的な引手の取付け位置を確定することができる。
【0046】
なお、引手部材35と係合するための縦枠31側の係合部は、特に縦溝部31mのような一連の溝形状に限定されるものではなく、例えば、引手部材35と係合し得る各種の凹凸形状にて構成することができる。また、縦溝部31mについて、縦枠31の長手方向の全範囲に形成する構成とするほか、一部に設けられることとしてもよい。さらに、縦溝部31mについては、図3に示すような縦枠31の断面形状によって形成されるものに限定されるものではなく、例えば、縦枠31の見付面31aに二本の突条を突設し、当該突条の間に溝を縦溝部とすることなども考えられる。
【0047】
また、引手部材35には、縦溝部31mに対応する位置に貫通孔部35bが設けられ、貫通孔部35bよりも引戸3の面材30に近い側に指掛部35dが設けられ、貫通孔部35bを挟んで指掛部35dと反対側であって、貫通孔部35bの側部に窪み部35kが設けられる、こととしている。
【0048】
これにより、引手部材35に対する手指の当接幅を広く確保することができ、良好な操作性を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の構成は、引戸に設けられる引手構造の構成として、風除室や玄関などに設けられる引戸や、室内に設けられる室内引戸などにおいて、幅広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 開口部装置
2 開口部枠
3 引戸
6 引手構造
30 面材
31 縦枠
31m 縦溝部
35 引手部材
35a 固定面部
35b 貫通孔部
35c 被係合部
35d 指掛部
35k 窪み部
35x 第一側面
35y 第二側面

図1
図2
図3
図4
図5