特許第6241882号(P6241882)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241882
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】水中油型クリーム状組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/67 20060101AFI20171127BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20171127BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20171127BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20171127BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20171127BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   A61K8/67
   A61K8/06
   A61K8/31
   A61K8/60
   A61K8/92
   A61Q19/00
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-52242(P2014-52242)
(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公開番号】特開2015-174839(P2015-174839A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2017年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古賀 一成
【審査官】 駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−210948(JP,A)
【文献】 特開2011−016761(JP,A)
【文献】 特開2013−091619(JP,A)
【文献】 特開2012−131753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)〜(D):
(A)トコフェリルリン酸ナトリウム 0.1〜1質量%
(B)HLBが15以上であるショ糖脂肪酸エステル 0.5〜5質量%
(C)融点が60℃未満の固形の油と融点が60℃以上の固形の油との質量比が、1:0.1〜1:1の範囲である25℃で固形の 1〜6質量%
(D)水 30〜50質量%
を含有し、スチーム加温下で使用することを特徴とする水中油型クリーム状組成物。
【請求項2】
成分(B)が、パルミチン酸スクロース及び/又はステアリン酸スクロースであることを特徴とする請求項1記載の水中油型クリーム状組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トコフェリルリン酸ナトリウム、HLBが15以上であるショ糖脂肪酸エステル、油及び水を含有することを特徴とする水中油型クリーム状組成物に関するものであり、更に詳しくは、スチーム加温下での使用において、水蒸気と混ざり合うことで生じる液だれを抑制し、しかも肌なじみや指すべり等のマッサージ効果に優れた使用感を有する水中油型クリーム状組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マッサージを主要な目的とする水中油型乳化組成物として、高分子量ポリエチレングリコール、HLBが10〜17の非イオン界面活性剤、HLBが2〜10の非イオン界面活性剤と固形若しくは半固形油分を配合する油相を配合する技術が開示されている(特許文献1)。しかし、安定的に多量に油分を配合しようとすると、非イオン界面活性剤の配合量が多くなり、べたつき感が生じるという問題があった。
【0003】
一方、水分との接触による粘度低下を防ぐ水中油型乳化クリーム組成物として、内相が50〜80質量%、外相が20〜50質量%、外相中に多糖類系増粘剤を0.03〜0.5質量%含有する技術が開示されている(特許文献2)。しかし、高内相水中油型乳化クリーム組成物では、水分配合量が少なくみずみずしい使用感が乏しくなり、また拭き取り後の肌の質感はべたつき感が残るという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5137439号
【特許文献2】特開2013−224268公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、水蒸気を発生するスチーマーを用い、顔を水蒸気による加温下(以下スチーム加温下と称する)での使用において、水蒸気と混ざり合うことで生じる液だれを抑制し、良好な使用性(肌なじみ、指すべり、拭き取り後の肌状態)を有する水中油型クリーム状組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる実情に鑑み、本発明者は鋭意検討した結果、トコフェリルリン酸ナトリウム、
HLBが15以上であるショ糖脂肪酸エステル、油及び水を含有することを特徴とする水中油型クリーム状組成物が、前記課題を解決することを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明は、次の成分(A)〜(D):
(A)トコフェリルリン酸ナトリウム
(B)HLBが15以上であるショ糖脂肪酸エステル
(C)油
(D)水 30〜50質量%
を含有し、スチーム加温下で使用することを特徴とする水中油型クリーム状組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水中油型クリーム状組成物は、スチーム加温下での使用において、水蒸気と混ざり合うことで生じる液だれを抑制し、しかも肌なじみや指すべり等のマッサージ効果に優れた使用感を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に用いられる成分(A)トコフェリルリン酸ナトリウムは、本発明の水中油型クリーム状組成物において、スチーム加温下での使用における液だれ抑制効果を発揮する乳化助剤として機能するものであり、通常の化粧料に用いられるトコフェリルリン酸ナトリウムであれば何れのものも用いることができる。トコフェリルリン酸ナトリウムは市販品を用いることが可能であり、市販されている昭和電工株式会社製のビタミンEリン酸ナトリウムを用いることができる。
【0010】
本発明の水中油型クリーム状組成物における成分(A)の含有量は、0.1〜1.0質量%(以下、単に「%」と略す。)が好ましく、0.3〜0.7%がより好ましい。成分(A)の含有量がこの範囲であると、より液だれ抑制効果と乳化力に優れる水中油型クリーム状組成物を得ることができる。
【0011】
本発明に用いられる成分(B)HLBが15以上のショ糖脂肪酸エステルは、本発明の水中油型クリーム状組成物において、乳化剤として機能するものであり、通常の化粧料に用いられるものであれば何れものも用いることができる。具体的には、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。これらの中でも、成分(B)として、ショ糖パルミチン酸エステル及び/またはショ糖ステアリン酸エステルを選択すると、より微細な乳化粒子を得易く、使用性が良好な水中油型クリーム状組成物を得ることができる。尚、本発明における界面活性剤のHLB値は、下記に示すグリフィンの式により算出される値である。
HLB値=(親水基部分の分子量/界面活性剤の分子量)×20
【0012】
ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステルは市販品を用いることが可能であり、ショ糖パルミチン酸エステルとしては三菱化学フーズ株式会社製のサーフホープ SE COSME C−1616(HLB16)、ショ糖ステアリン酸エステルとしては三菱化学フーズ株式会社製のサーフホープ SE COSME C−1816(HLB16)、等が例示できる。
【0013】
本発明の水中油型クリーム状組成物における成分(B)の含有量は、0.5〜5%が好ましく、1〜3%がより好ましい。成分(B)の含有量がこの範囲であると、より乳化力と使用性に優れる水中油型クリーム状組成物を得ることができる。
【0014】
本発明の水中油型クリーム状組成物における成分(C)の含有量は40〜60%であり、成分(C)中に25℃で固形の油を1〜6%含有するのが好ましく、成分(C)の25℃で固形の油が、融点が60℃未満の固形の油と融点が60℃以上の固形の油との質量比が、1:0.1〜1:1の範囲であることがより好ましい。成分(C)の含有量がこの範囲であると、液だれ防止、肌なじみや指すべりの良い使用性に優れる水中油型クリーム状組成物を得ることができる。
【0015】
25℃で固形の油の中で融点が60℃未満としては、115°パラフィン、130°パラフィン、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸セチル、水添パーム油、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリン酸、ミリスチン酸等が例示できる。
【0016】
25℃で固形の油の中で融点が60℃以上としては、155°パラフィン、キャンデリラロウ炭化水素、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、ミツロウ、水添ホホバ油、ベヘニルアルコール、パルミチン酸、ステアリン酸等が例示できる。
【0017】
本発明の水中油型クリーム状組成物に使用される成分(C)の液状油は、25℃で液状であり、液状油の具体例としては、スクワラン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、α−オレフィンオリゴマー等の液状炭化水素;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、イソステアリン酸2-ヘキシルデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ステアリン酸ブチル等の液状エステル;アボカド油、アルモンド油、オリーブ油、ゴマ油、サザンカ油、サフラワー油、大豆油、ヒマシ油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、コメヌカ油、パーシック油、メドウフォーム油、ホホバ油、パーム核油、パーム油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、綿実油などの植物油;タートル油、ミンク油、卵黄脂肪油等の動物油;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等のシリコーン油等を挙げることができる。これらの液状油は、一種又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
本発明の水中油型クリーム状組成物における成分(D)の含有量は、30〜50%であることが好ましい。成分(D)の含有量が30%未満であると、塗布時にべたつきを生じ、みずみずしい使用感も得ることができない。また、成分(D)の含有量が50%を超えると、スチーム加温下での使用における液だれ抑制効果が十分に発揮できない場合がある。
【0019】
本発明の水中油型クリーム状組成物には、上記必須成分の他に、通常の化粧料に用いられる成分として、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、水性成分、水溶性高分子、キレート剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、粉体、香料、防腐剤、着色剤、美容成分等を本発明の効果を損なわない範囲にて含有することができる。
【実施例】
【0020】
以下に、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。なお、配合量は特記しない限りすべて質量%である。
実施例1〜9及び比較例1〜9
表1及び表2に示す処方である水中油型クリーム状組成物を以下に示す製造方法により調製した。
(製造方法)
(A)トコフェリルリン酸ナトリウム、(B)HLBが15以上のショ糖脂肪酸エステル及びグリセリンを均一混合させた中に、均一加熱混合させた(C)油を少しずつ添加しながら混合し、ゲルを形成し80℃に加温する。一方、(D)水、カルボマー、水酸化カリウムを均一に混合し、80℃に加温した水相を添加して乳化した後、冷却して水中油型クリーム状組成物を得た。
【0021】
得られた水中油型クリーム状組成物について、下記試験法により、液だれ、使用性(肌なじみ、指すべり、拭き取り後の肌状態)を評価した。結果を表1及び表2に示した。
【0022】
液だれ
女性専門パネル(20名)による毎分3.5〜5mlの水蒸気を発生するスチーマーを用い、上記の製造方法により得られた水中油型クリーム状組成物及び顔を水蒸気によって加温しながらマッサージ(*)し、液だれ状態について、下記の基準に従って判定した。
(*)顔の皮膚温をオプテックス株式会社製THERMO−HUMTER PT−3LFを用いて測定したところ、20名平均8.4℃の皮膚温上昇が確認された。
◎:18名以上が、液だれしなかったと判定した。
○:14〜17名が、液だれしなかったと判定した。
△:9〜13名が、液だれしなかったと判定した。
×:液だれしなかったと判定した人が8名以下。
【0023】
使用性(肌なじみ)
女性専門パネル(20名)による使用試験を実施し、肌へのなじみについて、下記の基準に従って評価した。
◎:18名以上が、肌へのなじみが良いと判定した。
○:14〜17名が、肌へのなじみが良いと判定した。
△:9〜13名が、肌へのなじみが良いと判定した。
×:肌へのなじみが良いと判定した人が8名以下。
【0024】
使用性(指すべり)
女性専門パネル(20名)による使用試験を実施し、指すべりについて、下記の基準に従って評価した。
◎:18名以上が、指すべりが良いと判定した。
○:14〜17名が、指すべりが良いと判定した。
△:9〜13名が、指すべりが良いと判定した。
×:指すべりが良いと判定した人が8名以下。
【0025】
使用性(拭き取り後の肌状態)
女性専門パネル(20名)による使用試験を実施し、拭き取り後(洗い流さない)の肌状態(かさつき、べたつき、ひりひり感)について、下記の基準に従って評価した。
◎:18名以上が、肌の状態が良いと判定した。
○:14〜17名が、肌の状態が良いと判定した。
△:9〜13名が、肌の状態が良いと判定した。
×:肌の状態が良いと判定した人が8名以下。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
なお表1及び表2中、以下に示す成分は下記製品を用いた。
【0028】
トコフェリルリン酸ナトリウム*1:昭和電工株式会社製のビタミンEリン酸ナトリウム
ショ糖ステアリン酸エステル(HLB16)*2:三菱化学フーズ株式会社製のサーフホープ SE COSME C−1816
流動パラフィン*3:SONNEBORN INC.製のCARNATION
メドウフォーム油*4:クローダジャパン株式会社製のクロピュア メドフォーム−LQ−(JP)
パルミチン酸セチル*5:日光ケミカルズ株式会社製のNIKKOL N−SPV
キャンデリラロウ炭化水素*6:横関油脂工業株式会社製の精製キャンデリラワックス MD−21
【0029】
表1及び2の結果から、本発明に係る実施例1〜9の水中油型クリーム状組成物は、液だれ、使用性(肌なじみ、指すべり、拭き取り後の肌状態)のいずれの効果にも優れることがわかる。一方、本発明の構成要件を充実しない比較例1〜9では、使用性のすべての効果を併せもつことができなかった。
【0030】
以下に、本発明のその他の実施例を示す。
【0031】
(実施例10:マッサージクリーム1)
(配合成分) (質量%)
(1)トコフェリルリン酸ナトリウム 0.6
(2)ショ糖パルミチン酸エステル 2.0
(3)グリセリン 12.0
(4)流動パラフィン 29.0
(5)メドウフォーム油 10.0
(6)パルミチン酸セチル 0.3
(7)ステアリルアルコール 0.2
(8)キャンデリラロウ炭化水素 0.5
(9)精製水 43.8
(10)カルボマー 0.5
(11)精製水 1.0
(12)水酸化カリウム 0.1
(製法)
(1)〜(3)を均一混合し、あらかじめ80℃にて均一混合しておいた(4)〜(8)をパドルを回転させながら少しずつ添加しゲルを形成する。ゲルを80℃に加温し、一方で均一混合後80℃に加温した(9)、(10)をパドルを回転させながらゲルにゆっくりと添加し乳化する。乳化後溶解した(11)、(12)を添加する。その後35℃まで急冷し、目的のマッサージクリーム1を得た。
(評価)
得られたマッサージクリーム1について、上述した試験・評価基準により評価を行ったところ、液だれ、使用性(肌なじみ、指すべり、拭き取り後の肌状態)のいずれの効果にも優れていた。
【0032】
(実施例11:マッサージクリーム2)
(配合成分) (質量%)
(1)トコフェリルリン酸ナトリウム 0.3
(2)ショ糖ステアリン酸エステル 2.0
(3)グリセリン 7.0
(4)流動パラフィン 50.0
(5)メドウフォーム油 7.0
(6)パルミチン酸セチル 1.0
(7)ステアリルアルコール 1.0
(8)ベヘニルアルコール 0.5
(9)キャンデリラ炭化水素 0.5
(10)精製水 29.1
(11)カルボマー 0.5
(12)精製水 1.0
(13)水酸化カリウム 0.1
(製法)
(1)〜(3)を均一混合し、あらかじめ80℃にて均一混合しておいた(4)〜(9)をパドルを回転させながら少しずつ添加しゲルを形成する。ゲルを80℃に加温し、一方で均一混合後80℃に加温した(10)、(11)をパドルを回転させながらゲルにゆっくりと添加し乳化する。乳化後溶解した(12)、(13)を添加する。その後35℃まで急冷し、目的のマッサージクリーム2を得た。
(評価)
得られたマッサージクリーム2について、上述した試験・評価基準により評価を行ったところ、液だれ、使用性(肌なじみ、指すべり、拭き取り後の肌状態)のいずれの効果にも優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、スチーム加温下での使用において、水蒸気と混ざり合うことで生じる液だれを抑制し、しかも肌なじみや指すべり等のマッサージ効果に優れた使用感を有する水中油型クリーム状組成物を提供できる。