(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記被覆部が、内層部と、当該内層部の外周面全体に重ねて設けられ、前記内層部よりも融点が高い材料からなる外層部と、を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の被覆電線。
複数の素線と、前記複数の素線を内側に収容した絶縁性合成樹脂からなるチューブ形状の被覆部と、を有する被覆電線中間材を加工して被覆電線を製造する被覆電線の製造方法であって、
前記被覆部を外部から部分的に加熱圧縮することにより溶融させて前記複数の素線の間隙に浸透させる加熱圧縮工程と、
前記加熱圧縮工程で溶融させた前記被覆部を固化させて、柱状の本体部分と、前記本体部分を互いの間に挟むように当該本体部分の周面から突出しかつ当該本体部分の長手方向に延在する一対のリブ部分とを有し、横断面形状における前記一対のリブ部分の対向方向の径が、当該対向方向以外の方向の径より大きくなる曲げ方向規制部を形成する曲げ方向規制部形成工程と、を含むことを特徴とする被覆電線の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したワイヤハーネスは、コルゲートチューブ801によって曲げ方向を規制している、例えば、このような合成樹脂製のコルゲートチューブ801による比較的強固な保護を要しない箇所に配索されるワイヤハーネスにおいては、より簡易な構成で曲げ方向を規制したいとの要請があった。
【0006】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、簡易な構成で効果的に曲げ方向を規制できる被覆電線、加工によりこの被覆電線となる被覆電線中間材、この被覆電線を備えるワイヤハーネス、及び、この被覆電線の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、複数の素線と、前記複数の素線を内側に収容した絶縁性合成樹脂からなるチューブ形状の被覆部と、を有する被覆電線中間材を加工してなる被覆電線であって、前記被覆部には、当該被覆部が外部から部分的に加熱圧縮されることにより溶融されて前記複数の素線の間隙に浸透したのち固化した部分からなる曲げ方向規制部が設けられ、前記曲げ方向規制部が、柱状の本体部分と、前記本体部分を互いの間に挟むように当該本体部分の周面から突出しかつ当該本体部分の長手方向に延在する一対のリブ部分とを有し、前記曲げ方向規制部の横断面形状における前記一対のリブ部分の対向方向の径が、当該対向方向以外の方向の径より大きくなるように、前記曲げ方向規制部が形成されていることを特徴とする被覆電線である。
【0008】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記本体部分が、横断面形状が楕円状となるように形成され、前記一対のリブ部分が、前記本体部分の横断面形状である楕円状の長径方向に突出していることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に記載された発明は、請求項1又は2に記載された発明において、前記被覆部が、内層部と、当該内層部の外周面全体に重ねて設けられ、前記内層部よりも融点が高い材料からなる外層部と、を有していることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に記載された発明は、上記目的を達成するために、複数の素線と、前記複数の素線を内側に収容した絶縁性合成樹脂からなるチューブ形状の被覆部と、を有する被覆電線中間材であって、請求項1〜3のいずれか一項に記載の被覆電線における前記被覆電線中間材として用いられることを特徴とする被覆電線中間材である。
【0011】
請求項5に記載された発明は、上記目的を達成するために、請求項1〜3のいずれか一項に記載の被覆電線を備えることを特徴とするワイヤハーネスである。
【0012】
請求項6に記載された発明は、上記目的を達成するために、複数の素線と、前記複数の素線を内側に収容した絶縁性合成樹脂からなるチューブ形状の被覆部と、を有する被覆電線中間材を加工して被覆電線を製造する被覆電線の製造方法であって、前記被覆部を外部から部分的に加熱圧縮することにより溶融させて前記複数の素線の間隙に浸透させる加熱圧縮工程と、前記加熱圧縮工程で溶融させた前記被覆部を固化させて、柱状の本体部分と、前記本体部分を互いの間に挟むように当該本体部分の周面から突出しかつ当該本体部分の長手方向に延在する一対のリブ部分とを有し、横断面形状における前記一対のリブ部分の対向方向の径が、当該対向方向以外の方向の径より大きくなる曲げ方向規制部を形成する曲げ方向規制部形成工程と、を含むことを特徴とする被覆電線の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、曲げ方向規制部の横断面形状における一対のリブ部分の対向方向の径が、当該対向方向以外の方向の径より大きくなるように、曲げ方向規制部が形成されている。このことから、曲げ方向規制部は、一対のリブ部分が屈曲形状の内側又は外側となる方向への曲げ剛性が、他の方向への曲げ剛性よりも高くなるので、曲げ方向規制部において当該方向に曲げにくくなり、そのため、簡易な構成で効果的に曲げ方向を規制できる。
【0014】
また、曲げ方向規制部の本体部分が、横断面形状が楕円状となるように形成され、一対のリブ部分が、前記本体部分の横断面形状である楕円状の長径方向に突出しているようにすることで、本体部分自体も長径方向に曲げにくく、そのため、簡易な構成でより効果的に曲げ方向を規制できる。
【0015】
また、被覆部が、内層部と、当該内層部の外周面全体に重ねて設けられ、内層部よりも融点が高い材料からなる外層部と、を有している構成とすることで、加熱圧縮により内層部のみ溶融させることで、外層部により複数の素線をより確実に被覆することができ、被覆部により複数の素線をより確実に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るシールドケーブルの斜視図である。
【
図2】
図1のシールドケーブルの一端部の拡大斜視図である。
【
図3】
図1のシールドケーブルが備える信号線を説明する図であって、(a)は平面図であり、(b)は直線形状に伸ばした状態の斜視図であり、(c)は屈曲させた状態の斜視図である。
【
図4】
図3(a)のX1−X1線に沿う断面図(通常形状部の横断面図)である。
【
図5】
図3(a)のX2−X2線に沿う断面図(曲げ方向規制部の横断面図)である。
【
図6】加工により
図3に示す信号線となる被覆電線中間材を説明する図であって、(a)は縦断面図であり、(b)は横断面図である。
【
図7】
図6の被覆電線中間材の加工に用いる金型を説明する断面図である。
【
図8】
図3の信号線を得るために
図6の被覆電線中間材を加熱圧縮する工程を説明する図であって、(a)は縦断面図であり、(b)は横断面図である。
【
図9】
図1のシールドケーブルの製造方法を説明する図である(シールド箔に包む工程)。
【
図10】
図1のシールドケーブルの製造方法を説明する図である(保護テープを巻き付ける工程)。
【
図11】
図6の被覆電線中間材の変形例の構成を説明する図であって、(a)は縦断面図であり、(b)は横断面図である。
【
図12】
図11の被覆電線中間材を加工して得た信号線における通常形状部の横断面図である。
【
図13】
図11の被覆電線中間材を加工して得た信号線における曲げ方向規制部の横断面図である。
【
図14】
図5の曲げ方向規制部の変形例の構成を示す横断面図である。
【
図15】従来のワイヤハーネスが有するコルゲートチューブの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係るワイヤハーネスとしてのシールドケーブルについて説明する。本実施形態のシールドケーブルは、例えば、車両内に配索されて各種電子機器等の接続に用いられる。
【0018】
まず、シールドケーブルの構成について、
図1〜
図5を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係るシールドケーブルの斜視図である。
図2は、
図1のシールドケーブルの一端部の拡大斜視図である。
図3は、
図1のシールドケーブルが備える信号線を説明する図であって、(a)は曲げ方向規制部を直線形状に伸ばした状態での平面図であり、(b)は曲げ方向規制部を伸ばした状態の斜視図であり、(c)は曲げ方向規制部を屈曲させた状態の斜視図である。
図4は、信号線の通常形状部の横断面図(長手方向と直交する断面図)であり、
図5は、曲げ方向規制部の横断面図である。
【0020】
図1、
図2に示すように、本実施形態のシールドケーブル1は、複数の被覆電線としての信号線2と、ドレイン線3と、シールド箔5と、保護テープ6と、を有している。なお、
図1において、保護テープ6の端末6aからシールド箔5がはみ出ているが、説明の便宜上このような表現にしており、実際には保護テープ6の端末6aとシールド箔5の端末(縁5a)は同一位置とされ、または、保護テープ6の端末の方が、シールド箔5の端末よりシールドケーブル1の端部寄りの位置となるように設定されている。
【0021】
シールドケーブル1は、配索された状態において、複数の直線部分Sと、これら直線部分をつなぐ屈曲部分Cと、を有している。
【0022】
複数の信号線2は、後述する被覆電線中間材20を加工して得られる被覆電線である。
図3〜
図5に示すように、複数の信号線2のそれぞれは、銅等の導電金属からなる複数の素線21と、これら複数の素線21を絶縁被覆する被覆部22と、両端部において複数の素線21に接続して設けられた端子8と、を有している。本実施形態において、複数の信号線2は、それぞれ同一の長さとされている。
【0023】
被覆部22は、複数の素線21が内部に位置づけられる内層部23と、この内層部23の外周面全体に重ねて設けられた外層部24と、を有している。外層部24は、内層部23よりも融点の高い材料で構成されている。
【0024】
また、複数の信号線2のそれぞれは、複数の通常形状部25と、曲げ方向規制部26と、が長手方向に交互に並ぶように設けられており、各信号線2において、複数の通常形状部25と曲げ方向規制部26とは同一位置に配置されている(
図9)。なお、
図3等においては、通常形状部25と曲げ方向規制部26とを明確に区別して認識できるように、これら部分の外形の違いを強調して記載している。
【0025】
通常形状部25は、
図4に示すように、被覆部22が後述する被覆電線中間材20の形状を維持した部分であり、即ち、被覆部22の内側に複数の素線21が挿通された中空形状(チューブ形状)とされている。
【0026】
曲げ方向規制部26は、
図5に示すように、後述する被覆電線中間材20の被覆部22の内層部23が溶融されて複数の素線21の間隙に浸透したのち固化した部分である。曲げ方向規制部26は、横断面形状が楕円状となる本体部分27と、本体部分27の横断面形状である楕円状の長径方向(
図5において左右方向)に相対する周面部分から突出し、長手方向に延在する一対のリブ部分28とを一体に有している。被覆部22は、曲げ方向規制部26において中実(内部に空間のない)形状とされている。本発明において、「楕円状」とは、数学的に厳密な意味の楕円形状に加えて、例えば、長円形や卵形などを含んでいる。
【0027】
即ち、曲げ方向規制部26は、柱状の本体部分27と、本体部分27を互いの間に挟むように当該本体部分27の周面から突出しかつ当該本体部分27の長手方向に延在する一対のリブ部分28とを有している。また、曲げ方向規制部26の横断面形状における一対のリブ部分の対向方向(
図5の左右方向)の径が、当該対向方向以外の方向の径より大きくなるように、曲げ方向規制部26が形成されている。また、曲げ方向規制部26の本体部分27が、横断面形状が楕円状となるように形成され、一対のリブ部分28が、本体部分27の横断面形状である楕円状の長径方向(
図5の左右方向)に突出している。
【0028】
本実施形態において、各信号線2について曲げ方向規制部26は1箇所のみ設けられていたが、配索形状に応じて、複数箇所設けられていてもよい。
【0029】
ここで、この信号線2の作製方法について、
図6〜
図8を参照して説明する。
【0030】
図6は、加工により
図3に示す信号線となる被覆電線中間材を説明する図であって、(a)は縦断面図であり、(b)は横断面図である。
図7は、
図6の被覆電線中間材の加工に用いる金型を説明する断面図であり、(a)は、金型単体を示し、(b)は金型の金型部分間に被覆電線中間材を位置づけた状態を示す。
図8は、
図3の信号線を得るために
図6の被覆電線中間材を加熱圧縮する工程を説明する図であって、(a)は縦断面図であり、(b)は横断面図である。
【0031】
図6(a)、(b)に示すように、加工されることにより信号線2となる被覆電線中間材20は、銅等の導電金属からなる複数の素線21と、これら複数の素線21が内側に挿通収容されたチューブ形状の絶縁被覆である被覆部22と、を有している。被覆電線中間材20は、例えば、押出成形により製造される。被覆部22は、複数の素線21が内部に位置づけられる内層部23と、この内層部23の外周面全体に重ねて設けられた外層部24と、を有している。外層部24は、内層部23よりも融点の高い材料で構成されている。一例として、内層部23は、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(Ethylene‐vinyl acetate、以下、EVAと記載する)等の絶縁性合成樹脂を材料として構成され、外層部24は、EVA等よりも融点が高いポリエチレン樹脂やポリ塩化ビニル樹脂等の絶縁性合成樹脂を材料として構成されている。
【0032】
このような被覆電線中間材20について、始めに、両端部に端子8を取り付けるための被覆部22の皮むき加工をして複数の素線21を露出させ、次に、
図7、
図8に示す加熱圧縮金型40を用いて加熱圧縮加工を施す(加熱圧縮工程)。
【0033】
加熱圧縮金型40は、接離可能に対向配置された一対の金型部分41、41を有している。一対の金型部分41、41のそれぞれの先端面41aには、主凹溝部42と、主凹溝部42の幅方向両縁に隣接して並ぶ当該主凹溝部42と平行に配置された一対の副凹溝部43、43とが形成されている。これら一対の金型部分41、41が互いに組み合わされ、それぞれの先端面41aが互いに接合されると、主凹溝部42によって曲げ方向規制部26の本体部分27の外形と同一の空間M1が形成され、副凹溝部43によってリブ部分28の外形と同一の空間M2が形成される。
【0034】
加熱圧縮金型40は、図示しないヒータなどにより、被覆部22の内層部23が溶融しかつ外層部24が溶融しない温度に加熱されて、被覆電線中間材20における上述したシールドケーブル1の屈曲部分Cに対応する部分を一対の金型部分41、41の間に挟み込む。即ち、被覆部22が外部から部分的に加熱圧縮される。これにより当該部分が加熱圧縮されて上記空間M1、M2に応じた形状となるように力が加えられて、内層部23が周方向全体にわたって溶融して複数の素線21の間隙に浸透し、また、加熱圧縮により外層部24も変形して上記空間M1、M2に応じた外形となる。
【0035】
本実施形態においては、加熱圧縮金型40の上記空間M1、M2が、溶融された内層部23の一部が複数の素線21の間隙K全体に浸透するように(即ち、間隙K全体を埋めるように)圧縮可能な大きさに形成されている。
図8(a)において、一対の金型部分41、41に挟まれていない部分(外径の大きい部分)が通常形状部25に対応し、一対の金型部分41、41に挟まれた部分(外径の小さい部分)が曲げ方向規制部26に対応する。
【0036】
そして、被覆電線中間材20を、加熱圧縮金型40から取り外して常温まで冷却することにより溶融した被覆部22の内層部23を固化させて、曲げ方向規制部26を形成する(曲げ方向規制部形成工程)。このようにして、加熱圧縮していない部分に通常形状部25が形成され、加熱圧縮した部分に曲げ方向規制部26が形成されて、これらが長手方向に交互に並ぶ。最後に、被覆電線中間材20の両端部に露出している複数の素線21に端子8を取り付けることにより、信号線2が完成する。
【0037】
ドレイン線3は、撚り線からなる芯線3aと、この芯線3aの両端部のみ覆う絶縁被覆3bと、を有し、中間部において芯線3aが露出された電線である(
図9)。ドレイン線3も、両端末に端子8が設けられている。本実施形態において、ドレイン線3は、複数の信号線2と同一の長さとされている。ドレイン線3は、複数の信号線2より長くてもよく、この場合、ドレイン線3における保護テープ6の端末から延在する部分が、複数の信号線2における当該延在する部分より長くなる。
【0038】
シールド箔5は、アルミ箔、銅箔などの導電性の矩形状の金属箔である。シールド箔5は、各信号線2及びドレイン線3が束ねられた電線束10に巻き付けられて、ドレイン線3の中間部の芯線3aが接触することにより、当該ドレイン線3と電気的に接続されている。
【0039】
保護テープ6は、絶縁性を有する可撓性の長尺状のテープである。保護テープ6の一方の面は、粘着材が塗布された粘着面6bとなっており(
図10)、シールド箔5の周囲にらせん状に巻き付けられている。シールド箔5及び保護テープ6におけるシールドケーブル1の長手方向に沿う長さ(即ち、全長)は同一とされ、または、保護テープ6がシールド箔5の端末を含む全体を覆うように、保護テープの方がシールド箔5より全長が長く設定されている。また、保護テープ6は単一の部材である必要はなく、いくつかの部材(テープやシートなど)を組み合わせて同等の機能を実現してもよい。
【0040】
次に、シールドケーブル1の製造方法について、
図9、
図10を参照して説明する。
【0041】
図9、
図10は、
図1のシールドケーブルの製造方法を説明する図であって、それぞれ、電線束をシールド箔に包む工程、電線束に保護テープを巻き付ける工程を示している。
【0042】
まず、複数の信号線2とドレイン線3とを、それぞれが同一長さとなるように作製する。そして、
図9に示すように、広げた状態のシールド箔5上に複数の信号線2とドレイン線3とを互いに平行に並べて配置して電線束10とする。このとき、複数の信号線2における各通常形状部25が長手方向について同位置に配置され、かつ、曲げ方向規制部26が長手方向について同位置に配置される。また、各信号線2の曲げ方向規制部26が同一方向を向く(即ち、曲げ方向規制部26の本体部分27の横断面形状における長径方向と短径方向が一致する)ように束ねられる。
【0043】
次に、シールド箔5を丸めて電線束10の中間部分を包む。このとき、シールド箔5の端末から各信号線2の端部とドレイン線3の端部が同じ長さだけ外部に延在するようにする。そして、
図10に示すように、シールド箔5の一端から他端にわたって保護テープ6を隣接する巻回部分が若干重なるようにしてらせん状に巻き付ける。このようにして、シールドケーブル1が完成する。
【0044】
このようにして製造されたシールドケーブル1は、複数の信号線2の通常形状部25同士が束ねられ、曲げ方向規制部26同士が束ねられている。このとき、曲げ方向規制部26は、上述したように同一方向を向けられている。これら曲げ方向規制部26は、長手方向全体にわたる横断面形状が楕円状となる本体部分27と、本体部分27におけるその横断面形状である楕円状の長径方向端部から突出し、当該本体部分27の長手方向に延在する一対のリブ部分28と、を有している。そのため、一対のリブ部分28のうちの一方が内側となり、他方が外側となるような長径方向への曲げ剛性が、他の方向への曲げ剛性より高くなる。
【0045】
以上より、本実施形態によれば、曲げ方向規制部26は、リブ部分28が屈曲形状の内側又は外側となる方向(上記長径方向)への曲げ剛性が、他の方向への曲げ剛性よりも高くなるので、曲げ方向規制部26において当該方向に曲げにくくなり、そのため、簡易な構成で効果的に曲げ方向を規制できる。
【0046】
また、本体部分27が、横断面形状が楕円状であるので、本体部分27自体も長径方向に曲げにくく、そのため、簡易な構成でより効果的に曲げ方向を規制できる。
【0047】
また、被覆部22が、内層部23と、当該内層部23の外周面全体に重ねて設けられ、内層部よりも融点が高い材料からなる外層部24と、を有している。このようにしたことから、加熱圧縮により内層部23のみ溶融させることで、外層部24により複数の素線21をより確実に被覆することができ、被覆部22により複数の素線21をより確実に保護することができる。
【0048】
以上、本発明について、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明の被覆電線、被覆電線中間材、ワイヤハーネス及び被覆電線の製造方法は、これらの実施形態の構成に限定されるものではない。
【0049】
例えば、上述した実施形態では、内層部23及び外層部24を有する被覆部22を備えた被覆電線中間材20を加工することにより、信号線2を得ているものであったが、これに限定されるものではない。例えば、
図11(a)、(b)に示すように、単層部23Aのみからなる被覆部22Aを備えた被覆電線中間材20Aを加工することにより、上述した信号線2と同様のものを得るようにしてもよい。この構成の被覆電線中間材20Aの被覆部22Aの単層部23Aを加熱圧縮していない通常形状部25A、及び、単層部23Aを加熱圧縮して複数の素線21の間隙に浸透させることにより形成した曲げ方向規制部26Aを、それぞれ
図12、
図13に示す。曲げ方向規制部26Aは、横断面形状が楕円状の本体部分27Aと、本体部分27Aの長径方向端部から突出した一対のリブ部分28Aとを有する。このような構成においても、上述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0050】
また、上述した実施形態では、
図5に示すように、曲げ方向規制部26が、横断面形状が楕円状となる本体部分27を有する構成であったが、これに限定されるものではない。このような曲げ方向規制部26に代えて、例えば、
図14に示すように、横断面形状が円形状となる本体部分27Bを有する構成の曲げ方向規制部26Bとしてもよい。このような構成でも、上述した実施形態と同様の作用効果を奏するものであり、本体部分が柱状に形成されていれば、本発明の目的に反しない限り、本体部分の形状は任意である。
【0051】
また、上述した実施形態では、保護部材としてテープ状の保護テープ6を有する構成であったが、これに限定されるものではなく、保護部材として矩形のシート状の絶縁シートを有し、当該絶縁シートでシールド箔5の周囲を包んだ構成等としてもよい。
【0052】
また、上述した実施形態において、より高い防水性能が必要な場合には、例えば、シールド箔5と保護テープ6との間に塩ビペーストなどの防水部材を設けた構成等としてもよい。また、ドレイン線3及びシールド箔5を省略して、複数の信号線2からなる電線束に直接保護テープ6を巻き付けた構成としてもよい。
【0053】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の被覆電線、被覆電線中間材、ワイヤハーネス及び被覆電線の製造方法の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。