(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
《第1の実施形態》
以下、図面を参照しながら第1の実施形態について詳しく説明する。
図1は、第1の実施形態に係るフォークリフトの構成を示す概略図である。
本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るフォークリフト1は、リーチ型のフォークリフトである。フォークリフト1は、作業者が搭乗する運転台を有する車体2と、この車体2に設けられた荷役装置3とを備えている。
【0019】
車体2には、バッテリー(不図示)、及びモータ(不図示)によって駆動される複数の車輪が設けられており、作業者の操作によって走行する。なお、以下の説明では、車両の走行する方向を前後方向と呼ぶ。
【0020】
車体2の前側には、前後方向に移動可能な荷役装置3が設けられている。荷役装置3は、複数の車輪を備えたリーチキャリッジ31と、リーチキャリッジ31上に設けられたマスト装置32とを備えている。
リーチキャリッジ31は、複数の車輪を備えている。リーチキャリッジ31は、これら車輪により、車体2に設けられたレールに沿って前後方向に移動可能とされている。なお、リーチキャリッジ31をレールに沿って進出させる制御を、リーチアウト制御という。他方、リーチキャリッジ31をレールに沿って後退させる制御を、リーチイン制御という。
マスト装置32は、アウターマスト301、インナーマスト302、リフトブラケット303、フォーク304、チェーン305、リフトシリンダ306、油圧ホース307を備える。
【0021】
アウターマスト301は、リーチキャリッジ31から上方向に延びるように左右1つずつ立設されたアウターガイド311を備える。
インナーマスト302は、これらアウターマスト301に支持・案内されることで上下方向に昇降可能とされる装置である。インナーマスト302は、アウターガイド311から上方向に延びるように左右1つずつ立設されたインナーガイド321と、インナーガイド321の上方において2つのインナーガイド321を連結し、リフトシリンダ306の動力をインナーガイド321に伝達するチェーンサポート322と、チェーン305を支持・案内するチェーンホイール323と、油圧ホース307を掛け回されるプーリー324とを備える。チェーンホイール323およびプーリー324の回転軸は、チェーンサポート322に設けられる。
【0022】
リフトブラケット303には、チェーン305の第1端が接続される。リフトブラケット303には、車体前方へ略水平方向に延びることで荷物を支持可能なフォーク304が取り付けられている。フォーク304は、リフトブラケット303に対し、車体横方向に伸びる軸回りに揺動可能に取り付けられている。また、リフトブラケット303には、フォーク304を軸回りに揺動させるティルトシリンダ(不図示)が設けられる。
ティルトシリンダは、リフトブラケット303上に設けられた油圧装置である。ティルトシリンダは、リフトブラケット303上に固定されたシリンダ部と、シリンダ部から油圧によって出没可能なロッド部とを有している。このロッド部の先端部は、接続体を介してフォーク304と接続されている。すなわち、ロッド部が前方に進出することで、フォーク304が軸回りに傾斜することが可能となっている。なお、ロッド部とフォーク304の接続の態様は上記に限定されない。ティルトシリンダは、プーリー324に支持された油圧ホース307を介して作動油の供給を受ける。
なお、ティルトシリンダの伸長によりフォーク304の先端部を上方向に傾ける制御をティルトアップ制御という。他方、ティルトシリンダの収縮によりフォーク304の先端部を下方向に傾ける制御をティルトダウン制御という。
【0023】
リフトシリンダ306は、リーチキャリッジ31上に設けられた油圧装置である。リフトシリンダ306は、リーチキャリッジ31上に固定されたシリンダ部361と、シリンダ部361から油圧によって出没可能なロッド部362とを有している。このロッド部362の上端部は、チェーンサポート322と接続されている。すなわち、ロッド部362が上方に進出した場合、インナーマスト302も同じく上方に進出することが可能となっている。なお、ロッド部362とインナーマスト302の接続の態様は上記に限定されない。
なお、リフトシリンダ306の伸長によりフォーク304を上昇させる制御を、リフトアップ制御という。他方、リフトシリンダ306の収縮によりフォーク304を下降させる制御を、リフトダウン制御という。
リフトシリンダ306のシリンダ部361には、チェーン305の第2端が接続される。つまり、リフトブラケット303は、チェーン305を介してシリンダ部361と接続されている。すなわち、チェーン305は、リフトブラケット303を起点として上方に向かって延びた後、チェーンホイール323を介して下方に向きを転じて、シリンダ部361に接続される。チェーン305の長さは、リフトブラケット303およびインナーマスト302が最も下方に位置した状態において、リフトブラケット303とシリンダ部361とを互いに接続可能な長さに設定される。
【0024】
油圧ホース307は、作動油をティルトシリンダに供給する配管である。油圧ホース307の第1端は、車体2に内蔵される油圧モータ(不図示)に接続される。油圧ホース307の第2端は、ティルトシリンダに接続される。すなわち、油圧ホース307は、車体2を起点として上方に向かって延びた後、プーリー324を介して下方に向きを転じて、ティルトシリンダに接続される。油圧ホース307の長さは、リーチキャリッジ31がリーチアウトされた状態、かつリフトブラケット303およびインナーマスト302が最も下方に位置した状態において、車体2とティルトシリンダとを互いに接続可能な長さに設定される。
【0025】
図2は、第1の実施形態に係る油圧ホースの断面図である。
油圧ホース307は、内面層371、補強層372、外面層373からなる3層構造をなす。内面層371は、油圧ホース307の最も内側の層である。内面層371は、作動油に直接触れるため、耐油性合成ゴムにより構成される。補強層372は、内面層371と外面層373の間に設けられる層である。補強層372は、引っ張りによる油圧ホース307の変形を防ぐため、高抗張力鋼線のメッシュにより構成される。外面層373は、油圧ホース307の最も外側の層である。外面層373は、プーリー324と直接触れ、また外気に曝されるため、耐摩・耐候性合成ゴムにより構成される。各層の厚みは、例えばそれぞれ2ミリメートルとすることができる。
外面層373の内部には、電線374および電線375がらせん状に配される。電線374および電線375は、外面層373が伸長方向に裂けることで断線するよう、引張強さが外面層373を形成する耐摩・耐候性合成ゴムより小さい。電線374および電線375は、例えば互いに10ミリメートルの間隔を空けてらせん状に配される。これにより、外面層373に10ミリメートルの亀裂が生じたときに、電線374または電線375の少なくとも一方が断線する。また、電線374および電線375は、油圧ホース307の第2端において電気的に接続される。これにより、電線374と電線375との間に電圧をかけることで、電線374および電線375に電流が流れる。電線374および電線375は、例えば外面層373の深さ1ミリメートルの位置に配されることができる。
【0026】
なお、本実施形態では、油圧ホース307の第2端は、ティルトシリンダに接続されるが、これに限られない。例えば、他の実施形態において、フォークリフト1のマスト装置32が3段以上のマストである場合、アウターマスト301とインナーマスト302との間にミドルマストが設けられる。この場合、油圧ホース307の第2端は、フォーク304をリフトするためのシリンダに接続されることがある。
【0027】
また車体2には、作業者が搭乗する運転席が設けられる。運転席には、アクセルレバー201、リフトレバー202、リーチレバー203、ティルトレバー204、ディスプレイ205、および制御装置206が設けられる。
【0028】
アクセルレバー201は、車体2の前進・後退を制御するためのレバーである。具体的には、アクセルレバー201を前方(運転席の奥側)へ倒すことで車体2が前進し、アクセルレバー201を後方(運転席の手前側)へ倒すことで車体2が後退する。
リフトレバー202は、リフト制御(リフトアップ制御及びリフトダウン制御)のためのレバーである。具体的には、リフトレバー202を前方へ倒すことでリフトダウン制御がなされ、リフトレバー202を後方へ倒すことでリフトアップ制御がなされる。
リーチレバー203は、リーチ制御(リーチイン制御及びリーチアウト制御)のためのレバーである。具体的には、リーチレバー203を前方へ倒すことでリーチアウト制御がなされ、リーチレバー203を後方へ倒すことでリーチイン制御がなされる。
ティルトレバー204は、ティルト制御(ティルトアップ制御及びティルトダウン制御)のためのレバーである。具体的には、ティルトレバー204を前方へ倒すことでティルトダウン制御がなされ、ティルトレバー204を後方へ倒すことでティルトアップ制御がなされる。
ディスプレイ205は、バッテリーの残存容量、走行速度、走行距離、フォーク304の負荷などの情報を表示する。ディスプレイ205は、例えばVFD(Vacuum Fluorescent Display:蛍光管ディスプレイ)によって実現される。
制御装置206は、フォークリフト1の制御および管理を行う。
【0029】
ここで、マスト装置32の動作について、
図3と
図4を参照して説明する。
図3は、リフトシリンダを最も収縮させたときのマスト装置の断面図である。
図4は、リフトシリンダを最も伸長させたときのマスト装置の断面図である。
図3に示すように、初期の状態では、リフトシリンダ306のロッド部362はシリンダ部361の内部に格納されている。これにより、インナーマスト302はアウターマスト301に重なるようにして、最も下方に位置した状態となる。さらに、このときリフトブラケット303およびフォーク304も下方端に位置した状態となる。
【0030】
上記の状態から、ロッド部362を上方に進出させると、
図4に示すような状態となる。すなわち、ロッド部362、及びチェーンサポート322によって持ち上げられて、インナーマスト302は上方に進出する。ここで、リフトブラケット303とリフトシリンダ306のシリンダ部361とは一定の長さのチェーン305によって接続され、チェーン305の第2端はシリンダ部361に固定されている。これにより、インナーマスト302の上昇に伴ってチェーン305の第1端は上方に引っ張られる。チェーン305が引っ張られるに伴って、インナーマスト302が備えるチェーンホイール323が回転する。すなわち、このチェーンホイール323は動滑車として機能している。
【0031】
以上により、リフトブラケット303およびフォーク304は、インナーマスト302とアウターマスト301の高さ寸法の和に概ね等しい高さにまで上昇する。これにより、フォークリフト1は、高所にある貨物等を扱うことが可能となる。
【0032】
ところで、インナーマスト302の上昇に伴いリフトブラケット303が上昇すると、リフトブラケット303に設けられたティルトシリンダも上昇する。そのため、ティルトシリンダに接続された油圧ホース307は、プーリー324を回転させながら上昇する。このとき、プーリー324と油圧ホース307との間には摩擦が生じる。経年使用に伴ってプーリー324と油圧ホース307との間で摩擦が繰り返されると、ゴム等で形成された油圧ホース307の表面に摩耗を生じる可能性がある。このような摩耗が進行した場合、油圧ホース307から作動油が漏出する等して、フォークリフト1の動作に影響を及ぼす可能性がある。
【0033】
そこで、本実施形態に係るフォークリフト1は、上記のような油圧ホース307の劣化を検出するため、油圧ホース307の電線374に電圧をかけ、電線374および電線375に電流が流れるか否かを判定する。
【0034】
制御装置206は、電線374の第1端(油圧ポンプ側の端)および電線375の第1端に接続される。制御装置206は、電線374の第1端に電圧を印加する。また制御装置206は、電線374の第1端と電線375の第1端の間の電流値を計測する。制御装置206は、検出した電流値に基づいて、油圧ホース307の劣化を推定する。またディスプレイ205は、制御装置206による劣化の推定結果を表示する。制御装置206は、電線374および電線375に流れる電流を検出する電流検出部、および電流を検出したか否かに基づいて油圧ホース307の劣化を推定する劣化推定部の一例である。
【0035】
次に、本実施形態に係る制御装置206の動作について説明する。
図5は、第1の実施形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
制御装置206は、所定の周期で劣化推定処理を実行する。制御装置206は、劣化推定処理を開始すると、電線374の第1端に電圧を印加する(ステップS1)。次に、制御装置206は、電線374の第1端と電線375の第1端との間の電流値を計測する(ステップS2)。次に、制御装置206は、計測された電流値が所定の閾値以下であるか否かを判定する(ステップS3)。当該閾値は、電線374および電線375に電流が流れていると判定するための閾値であって、0または制御装置206における電流検出の雑音に相当する値である。
【0036】
電流値が閾値以下である場合(ステップS3:YES)、制御装置206は、油圧ホース307に亀裂が生じていると判定し、ディスプレイ205に油圧ホース307の寿命を警告する画面を表示させる(ステップS4)。また制御装置206は、油圧動作(リフトアップ動作、ティルトアップ動作およびティルトダウン動作)の速度を通常の半分の速度に変更する(ステップS5)。制御装置206は、リフトアップ動作の速度を半減させることで、油圧ホース307とプーリー324との間に生じるすべりの量を低減し、油圧ホース307に掛かる摩擦を低減することができる。また制御装置206は、ティルトアップ動作およびティルトダウンの速度を半減させることで、油圧ホース307に掛かる内圧を下げ、油圧ホース307が内圧により破損することを防ぐことができる。
電流値が閾値より大きい場合(ステップS3:NO)、制御装置206は、油圧ホース307に亀裂が生じていないと判定し、ディスプレイ205への警告表示および油圧動作の制限を行わずに処理を終了する。なお、油圧動作の速度が制限されている場合、制御装置206は、電流値が閾値より大きくなったときに、当該制限を解除してもよい。
【0037】
このように、本実施形態によれば、制御装置206は、油圧ホース307に配された電線374および電線375に電流が流れるか否かに基づいて、油圧ホース307の劣化を推定する。そのため、制御装置206は、ディスプレイ205などの提示装置を介して油圧ホース307の寿命や交換時期などを利用者に通知することができる。これにより、利用者による油圧ホース307の交換やメンテナンスが促進され、油圧ホース307の不意の破損を防ぐことができる。
また、本実施形態に係る制御装置206、プーリー324、およびディスプレイ205は、従来のフォークリフトに備えられているものと同様である。なお、従来のフォークリフトの制御装置206には、機能拡張のための電圧印加回路および電流検出回路が設けられている。したがって、従来のフォークリフトの油圧ホースを電線が配されたものに交換し、当該電線と制御装置206とを接続し、制御装置206に上記処理を実行するためのプログラムをインストールすることで、本実施形態に係るフォークリフト1を容易に実現することができる。
【0038】
なお、本実施形態に係る電線374および電線375は、油圧ホース307の内層に配される。これにより、電線374および電線375がプーリー324に直接接触することで断線することを防ぐことができる。つまり、電線374および電線375は、油圧ホース307の内層に配されることで、油圧ホース307の劣化によらない要因で断線することを防ぐことができる。
【0039】
なお、本実施形態に係る油圧ホース307は、外面層373に電線が配されたものであるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る油圧ホース307は、他の層にそれぞれ電線が配されたものであっても良い。
【0040】
《第2の実施形態》
以下、図面を参照しながら第2の実施形態について詳しく説明する。第1の実施形態に係る油圧ホース307は、電線374と電線375の組み合わせを1対備えるが、第2の実施形態に係る油圧ホース307は、電線374と電線375の組み合わせを複数対備える。
なお、第2の実施形態に係るフォークリフト1の構造は、第1の実施形態と同様である。ただし、第2の実施形態に係る油圧ホース307は、外面層373の内部に電線374と電線375の組み合わせを4対備える。
【0041】
次に、第2の実施形態に係る制御装置206の動作について説明する。
図6は、第2の実施形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
制御装置206は、所定の周期で劣化推定処理を実行する。制御装置206は、劣化推定処理を開始すると、各電線374の第1端に電圧を印加する(ステップS11)。次に、制御装置206は、電線374と電線375の組み合わせ(以下、電線対という)それぞれについて、電流値を計測する(ステップS12)。次に、制御装置206は、計測された電流値のうち、所定の閾値以下であるものの数を算出する(ステップS13)。
【0042】
次に、制御装置206は、計測された電流値のうち、所定の閾値以下であるものがあるか否かを判定する(ステップS14)。つまり、制御装置206は、断線した電線対があるか否かを判定する。断線した電線対が存在する場合(ステップS14:YES)、制御装置206は、油圧ホース307に亀裂が生じていると判定し、ディスプレイ205に油圧ホース307の寿命を警告する画面を表示させる(ステップS15)。また制御装置206は、油圧動作の速度を、電流値が閾値以下となる電線対の数に応じた速度に変更する(ステップS16)。例えば、電流値が閾値以下となる電線対が1対である場合、制御装置206は、油圧動作の速度を通常速度の75%に低減する。また例えば、電流値が閾値以下となる電線対が2対である場合、制御装置206は、油圧動作の速度を通常速度の50%に低減する。また例えば、電流値が閾値以下となる電線対が3対である場合、制御装置206は、油圧動作の速度を通常速度の25%に低減する。また例えば、電流値が閾値以下となる電線対が4対すべてである場合、制御装置206は、油圧動作を停止させる。
他方、断線した電線対がない場合(ステップS14:NO)、制御装置206は、油圧ホース307に亀裂が生じていないと判定し、ディスプレイ205への警告表示および油圧動作の制限を行わずに処理を終了する。なお、油圧動作の速度が制限されている場合、制御装置206は、電流値が閾値より大きくなったときに、当該制限を解除してもよい。
【0043】
このように、本実施形態によれば、制御装置206は、電流が流れない電線対の本数に基づいて、油圧ホース307の劣化の程度を推定する。これは、電流が流れない電線対が多いほど、油圧ホース307の亀裂の数が多く、または亀裂の長さが長い可能性が高いためである。これにより、制御装置206は、油圧ホース307の劣化の程度に応じた制御を行うことができる。
【0044】
《第3の実施形態》
以下、図面を参照しながら第3の実施形態について詳しく説明する。第2の実施形態に係る油圧ホース307は、外面層373の内部に電線374と電線375の組み合わせを複数備える。これに対し、第3の実施形態に係る油圧ホース307は、異なる層の内部にそれぞれ電線374と電線375の組み合わせを備える。
なお、第3の実施形態に係るフォークリフト1の構造は、第1の実施形態と同様である。
【0045】
図7は、第3の実施形態に係る油圧ホースの断面図である。
第3の実施形態に係る油圧ホース307は、内面層371に、さらに電線376および電線377がらせん状に配される。電線376および電線377は、油圧ホース307の第2端において電気的に接続される。
【0046】
次に、第3の実施形態に係る制御装置206の動作について説明する。
図8は、第3の実施形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
制御装置206は、所定の周期で劣化推定処理を実行する。制御装置206は、劣化推定処理を開始すると、電線374の第1端と電線376の第1端に電圧を印加する(ステップS21)。次に、制御装置206は、電線374と電線375の間の電流値と、電線376と電線377の間の電流値を計測する(ステップS22)。次に、制御装置206は、電線376と電線377の間の電流値が所定の閾値以下であるか否かを判定する(ステップS23)。
【0047】
電線376と電線377の間の電流値が閾値以下である場合(ステップS23:YES)、制御装置206は、油圧ホース307の内面層371に亀裂が生じていると判定し、ディスプレイ205に油圧ホース307の寿命を警告する画面を表示させる(ステップS24)。また制御装置206は、油圧動作を停止させる(ステップS25)。これは、油圧ホース307に作動油が流れると、油圧ホース307の内面層371に生じた亀裂から作動油が噴出するためである。
他方、電線376と電線377との間の電流値が閾値より大きい場合(ステップS23:NO)、制御装置206は、電線374と電線375の間の電流値が所定の閾値以下であるか否かを判定する(ステップS26)。電線374と電線375の間の電流値が閾値以下である場合(ステップS26:YES)、制御装置206は、油圧ホース307の外面層373に亀裂が生じていると判定し、ディスプレイ205に油圧ホース307の寿命を警告する画面を表示させる(ステップS27)。また制御装置206は、油圧動作の速度を半減させる(ステップS28)。これは、亀裂が油圧ホース307の外面層373だけに生じているため、油圧動作によって作動油が噴出する可能性が低いためである。
電線374と電線375の間の電流値が閾値より大きい場合(ステップS26:NO)、油圧ホース307に亀裂が生じていないと判定し、ディスプレイ205への警告表示および油圧動作の制限を行わずに処理を終了する。なお、油圧動作の速度が制限されている場合、制御装置206は、電流値が閾値より大きくなったときに、当該制限を解除してもよい。
【0048】
このように、本実施形態によれば、制御装置206は、どの層に配された電線対に電流が流れているかに基づいて、油圧ホース307の劣化の程度を推定する。これにより、制御装置206は、油圧ホース307の劣化の程度に応じた制御を行うことができる。
【0049】
なお、本実施形態に係る油圧ホース307は、内面層371と外面層373にそれぞれ電線が配されたものであるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る油圧ホース307は、3層以上の層にそれぞれ電線が配されたものであっても良い。
【0050】
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、上述した実施形態に係る油圧ホース307は、らせん状に配された電線374および電線375を備えるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る油圧ホース307の電線は、油圧ホース307のうちプーリー324と当接し得る部分にのみ巻き回されていてもよい。また例えば、他の実施形態に係る油圧ホース307の電線は、油圧ホース307の第1端に両端が表れる1本の電線であってもよい。
なお、上述した実施形態に係る油圧ホース307は、容易に量産することが可能である。つまり、上述した実施形態にかかる油圧ホース307は、らせん状に配された電線374および電線375を備える長いホースを一定間隔で切り分け、切り分けられたそれぞれのホースの第2端で電線374および電線375を電気的に接続すること生成することができる。また、電線374および電線375は、らせん状に配されるなど、幅方向に亘って配されることで、油圧ホース307の伸長方向に生じる亀裂を検出することができる。
【0051】
なお、上述した実施形態に係るフォークリフト1は、油圧動作の制限として、リフトアップ動作、ティルトアップ動作およびティルトダウン動作を制限するが、これに限られいない。例えば、他の実施形態に係るフォークリフト1は、油圧ホース307の内圧を抑えるために、ティルトアップ動作およびティルトダウン動作のみを制限してもよい。また上述した実施形態に係るフォークリフト1は、リフトシリンダ306への作動油の供給を停止することで、マスト装置32の自重によりリフトダウン動作をするため、リフトダウン動作の速度が制限されないが、これに限られない。例えば、他の実施形態では、リフトダウン動作時に、作動油を微小に供給することで、リフトダウン速度を低減してもよい。
【0052】
制御装置206は、CPU、主記憶装置、補助記憶装置、インタフェースを備える。上述した制御装置206の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置に記憶されている。CPUは、プログラムを補助記憶装置から読み出して主記憶装置に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。
【0053】
なお、少なくとも1つの実施形態において、補助記憶装置は、一時的でない有形の媒体の一例である。一時的でない有形の媒体の他の例としては、インタフェースを介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等が挙げられる。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータに配信される場合、配信を受けたコンピュータが当該プログラムを主記憶装置に展開し、上記処理を実行しても良い。
【0054】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。