(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241904
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】プラズマ穿孔
(51)【国際特許分類】
A24C 5/56 20060101AFI20171127BHJP
B26F 1/26 20060101ALI20171127BHJP
H05H 1/26 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
A24C5/56
B26F1/26 Z
H05H1/26
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-507953(P2016-507953)
(86)(22)【出願日】2014年4月17日
(65)【公表番号】特表2016-524460(P2016-524460A)
(43)【公表日】2016年8月18日
(86)【国際出願番号】AT2014050096
(87)【国際公開番号】WO2014169313
(87)【国際公開日】20141023
【審査請求日】2017年4月13日
(31)【優先権主張番号】A50268/2013
(32)【優先日】2013年4月19日
(33)【優先権主張国】AT
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514133542
【氏名又は名称】タンパピエル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Tannpapier GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】リントナー,ミヒャエル
【審査官】
豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭52−020425(JP,B1)
【文献】
特開昭54−081596(JP,A)
【文献】
特開昭50−067254(JP,A)
【文献】
特開平05−329655(JP,A)
【文献】
特開平08−019886(JP,A)
【文献】
特開2000−084686(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0258534(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24C 1/00 − 5/60
B23K 9/00 − 10/02
B23K 26/00 − 26/70
H05H 1/00 − 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チッピング紙をプラズマ穿孔する方法において、可能な限り点形状であるエネルギー源により短時間でイオン化されるガス混合気によって、チッピング紙の表面にプラズマを生成するステップを具え、イオン化ガス混合気が、前記チッピング紙の非常に小さな表面領域に局所的に制限されており、前記エネルギー源が、一方の側から前記チッピング紙に向けられるレーザ光線であり、前記イオン化ガスまたはガス混合気が、前記レーザ光線内に配置され、当該レーザ光線よってイオン化され、前記レーザ光線が、レンズによって前記イオン化ガス混合気に集光され、
加圧不活性ガスまたは高い不活性ガス濃度を有する加圧ガス混合気が、前記レンズの周囲に、前記チッピング紙の方向に、環状に導入され、ここで高い不活性ガス濃度とは、前記イオン化ガス混合気の不活性ガス濃度よりも高い不活性ガス濃度であり、
前記レンズが、チューブ内に設けられており、ノズルが、前記チッピング紙に対向する前記チューブの端部に配置されており、当該ノズルが、前記加圧不活性ガスまたは高い不活性ガス濃度を有する前記加圧ガス混合気用の出口開口部として機能し、前記レンズが前記ノズル内に同軸に配置されており、
前記レンズが、前記チューブのノズルから、前記チッピング紙の方向に突出していることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チッピング紙のプラズマ穿孔のための方法と、プラズマ穿孔のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフィルタ付き紙巻タバコの主要な5つの部分は、タバコロッド、それを囲むシガレットペーパ、フィルタ、フィルタラッピング紙、およびチッピング紙(吸口被覆紙)である。
【0003】
多くの場合、「チッピング紙」または省略して「チッピング」としても称される吸口被覆紙は、フィルタおよびフィルタラッピング紙を囲んでいる。それは、フィルタ付き紙巻タバコが吸われる場合、紙巻タバコを吸う人の唇が触れるフィルタ付き紙巻タバコの一部である。フィルタ付き紙巻タバコの長手方向において、チッピング紙はまた、タバコロッドの長さに沿った領域に概して僅かに突出し、ここで、それはシガレットペーパを囲み、接着ボンドによってそれに接続される。この接着ボンドを設定することにより、フィルタ部とタバコロッド部とが紙巻タバコ製造機において機械的に接続される。チッピング紙は通常、実際に紙であるが、例えば、フィルムまたはフォイルであってもよい。チッピング紙がフィルムまたはフォイルとして形成される場合において、それは、例えば、水和セルロースから成っていてもよい。
【0004】
チッピング紙は通常、見た目を引く印刷が施されている。この印刷は、多くの場合、コルクに似ている。
【0005】
タバコロッド近傍の端部において、チッピング紙は通常、部分的に穿孔された形状をしており、そのため、紙巻タバコを吹かすと、周囲からの空気がフィルタに進入し、それらとタバコロッドから入る煙の流れが混合され、それによって、煙の値が有利に変えられる。
【0006】
チッピング紙は一般に、穿孔穴が印刷によって再び塞がれることを防ぐために、印刷後に穿孔される。
【0007】
先行技術によれば、3つの方法が、紙、巻紙、または他の材料の穿孔のために用いられる。
−機械的穿孔
−レーザ穿孔
−電気穿孔
【0008】
機械的穿孔の場合、鋭いピンまたは針刺しが用いられて、チッピング紙に孔を開ける。かかる方法は、フィルタラッピング紙の穿孔に対して欧州特許出願公開第0222973A1号明細書に説明されている。この方法の場合の通気貫通孔の平均直径(孔寸法)は、約0.05および約0.4mmの間である。これは、ピンが機械的摩耗を受け、従って、孔寸法が変動するか、一定の孔寸法を達成するために、ピンを頻繁に交換する必要がある点で不利である。
【0009】
レーザ穿孔の場合、紙は集中させた光線によって穿孔される。かかる方法は、例えば、独国特許出願公開第2751522A1号明細書および独国特許出願公開第102004001327A1号明細書に説明されている。孔寸法は、機械的穿孔の孔寸法に略相当しており、従って、直径0.05mmからの孔を作製できる。これは、機械的穿孔と比較して、装置の摩耗が起こらず、孔の直径および孔の位置を非常に正確に設定できる点で有利である。直径0.05mm未満の孔を作製できない点が不利である。
【0010】
静電穿孔としても公知の電気穿孔の場合、紙は、放電火花が紙を貫通するため、燃焼によって穿孔される。これは、巻紙の一方の側に配置されるニードル状の電極を用いることを伴う。他方の側には、平坦に形成される対向電極、または再度、多数のニードル電極がある。ニードル電極および対向電極は、巻紙および狭い空隙によって離間されている。電極への高電圧の印加により、放電を空隙および巻紙に貫通させる。火花放電の高い熱エネルギーは、巻紙を小さな領域で燃焼させ、孔を形成する効果がある。これは、直径0.01mmの極小の孔を作製できる点で有利である。燃焼により視認できる跡が孔の縁部に生じ(焦げた縁部)、制御が困難な放電により孔の寸法に大きなバラツキを生じ、沿面放電により散乱する火花を生じ、これによって、所望の穿孔穴の周囲に更に微小な孔を生じる点が不利である。電気穿孔の例は、独国特許出願公開第3016622A1号明細書、米国特許第4094324A号明細書、および独国特許出願公開第2934045A1号明細書に示されている。
【0011】
本発明が基づく目的は、0.01mmからの小さい孔寸法を作製できる一方で、電気穿孔の不利を回避することができる方法を提供することにある。
【0012】
目的を達成するために、特殊な性質を有する低温プラズマを生成することによって、チッピング紙の穿孔を生じさせることを画策している。
【0013】
本発明の課題は、制御され、再現可能な低温プラズマを生成することにあり、これが、正確な孔寸法および孔位置をチッピング紙に作製する結果を得る唯一の方法であるためである。プラズマは、ガスまたはガス混合気をイオン化することによって生成される。供給されるエネルギーおよび現行の圧力は別として、特に、ガスまたはイオン化ガス混合気の組成は、イオン化の程度およびプラズマの温度に対する決め手となる。
【0014】
固形材料を低温プラズマと接触させた場合、昇華および酸化という2つの効果が、その表面に生じる。昇華は、物質の、固体状態から気体状態への直接的な変化である。酸化は、化学物質の電子の放出との化学反応である。化学物質と酸素との酸化は、燃焼としての火炎形成により観察できる。酸化は、開始物質を変化させ、新規化合物を生成する効果を有している。
【0015】
低温プラズマがチッピング紙の表面近傍のガス混合気に生成されると、前記の2つの効果は、孔が低温プラズマの領域に形成される結果を有する。酸化は、開始物質の組成にもよるが、毒作用も有する可能性のある望ましくない燃焼生成物をもたらす恐れがあるため、昇華の効果は、酸化(燃焼)の効果に勝ってここでは好ましいものとなる。燃焼生成物は、視覚的印象を損ねる可能性のある燃焼残渣の形で視認でき、ある状況下では、タバコの味を変える恐れがある。昇華の場合、チッピング紙の固形物質は、何の残渣も無く蒸発する。従って、本発明の場合、低温プラズマが生成され、その性質は、昇華プロセスが略排他的に行われるように制御される。
【0016】
これは、チッピング紙の局所的に制限された表面領域に、規定されたガス混合気または特定のガスを導入し、限られた時間にわたってエネルギーの集中した供給によりこのガスをイオン化することによって、技術的に実施される。ガス混合気および供給されたエネルギーが非常に限られた領域において局所的に互いに合流するのみである事実により、低温プラズマが、この小さな領域に生成されるのみであり、従って、チッピング紙の表面の非常に小さな領域と接触するのみであるという効果が達成される。これにより結果として、小さな孔寸法と、孔の高い位置精度を生じる。
【0017】
レーザ穿孔および機械的穿孔と比較して、非常に小さな孔直径が達成できるため、そして、電気穿孔と比較して、非常に正確な孔寸法と正確な孔位置が達成できるため、本発明は、従来技術と比較して有利である。更に、孔の縁部における視認できる燃焼跡が回避される点で、電気穿孔と比較して有利である。
【0018】
本発明を、図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明による装置の実施例を断面図で示す。
【
図2】
図2は、本発明による装置の第2の実施例を断面図で示す。
【
図3】
図3は、レーザ光線がエネルギー源として機能する、本発明による装置の実施例を示す。
【0020】
図1において、巻紙、特に、チッピング巻紙、すなわちチッピング紙4のプラズマ穿孔のための本発明による装置が示されている。できる限り小さな領域を有するエネルギー源が、チッピング紙4の少なくとも1つの平坦に形成された側に配置される。この実施例において、2つの電極2、5間のより正確な電圧の印加を行うよう、ニードル状の電極2がエネルギー源として用いられている。電極2は、チューブ1に嵌合されている。チューブ1は、加圧ガスまたはガス混合気を運ぶことに役立つ。より良好に理解するために、ガス流は矢印で図中に示されている。チューブ1の前端部には、ガス流を圧縮するためのノズル1.1がある。このノズル1.1は、チッピング紙4に面する電極2の先端の領域において、電極2の周囲に同軸に嵌合される。したがって、加圧ガスまたはガス混合気は、電極2の周囲で、チッピング紙4の方向に、チューブ1およびノズル1.1によって囲まれる空洞1.2を通って、環状に導入される。チッピング紙4の他の側には、ニードル状の対向電極5、すなわち、
図2に示すような平坦に形成される対向電極5が同様に形成されてもよい。
【0021】
空洞1.2を通る高い不活性ガス濃度を有する不活性ガスまたはガス混合気の導入は、異なるガス組成を有する狭い領域が、このガス流の中間、すなわち、チッピング紙4に向かう電極2の先端の直ぐ前方に残ることを意味する。この領域において、不活性ガスの濃度は、ノズル1.1からの直接流におけるよりも幾分低い。結果として、この領域において、より容易にガスをイオン化することができ、従って、局所的に限定されたプラズマ3を生成することができ、それにより最終的に、昇華によってチッピング紙4に孔を生成する。既に、プラズマ3内、そして特に、その周囲で高い濃度の不活性ガスが存在するため、チッピング紙4の表面における酸化は防止され、それによって、孔の縁部における視認できる燃焼の跡は回避される。低い不活性ガス濃度を有する領域の範囲、および、その結果としてのプラズマ3は、ノズル1.1の構成を狭くするか、幾分広げることによって、または、電極2がノズル1.1から突出する距離を変更することによって、増加または減少できる。装置の可能性のある最良の構成および理想不活性ガスまたはガス混合気は、これらが穿孔される材料、特に、チッピング紙4の性質によって決まるため、試行錯誤によって最良に決定できる。
【0022】
図3は、エネルギー源としてレーザ光線6を用いる、本発明による方法を示している。いま一度、ノズル1.1はチューブ1の下端に配置されている。このノズルには、2つのタスクを行うレンズ7が中央にある。レンズ7は、第1に、レーザ光線6をチッピング紙の表面に集中させることに役立つ。レンズ7は、第2に、所望の方法で、正確には、ガス流がレンズ7の周囲で環状に生じるような方法でノズル1.1からのガス流に影響を及ぼすことに役立つ。不活性ガスまたはガス混合気がレンズ7の周囲から流れ出ることができるように、レンズは例えば、細いワイヤによってチューブ1内に固定されるか、電極2のように、チューブ1内で垂直に延在する剛体の光導波路の端部に設置される。プラズマ3は、この場合、レーザ光線6のエネルギー密度が十分に低い不活性ガス濃度を有するガス混合気をイオン化するよう十分高い領域に制限される。レンズ7の焦点において、レーザ光線6のエネルギー密度は最高であり、また不活性ガス濃度は最低であり、従って、局所的な、狭い範囲のプラズマ3を生じることができる。
【0023】
窒素(N
2)、アルゴン(Ar)、または二酸化炭素(CO
2)を、例えば、不活性ガスとして用いてもよい。不活性ガスまたはガス混合気は加圧下でノズル1.1から出るため、ガスまたはガス混合気の密度は、電極2またはレンズ7周囲の環状領域において、電極2またはレンズ7の直ぐ前方の領域よりも高い。ガスが濃くなればなる程、より多くのエネルギーが、それをイオン化するために必要となる。加えて、イオンおよび電子はガス流によって押し流される。これら2つの効果はまた、プラズマ3が局所的に制限されることに寄与する。特に、エネルギー源としてレーザ光線6を用いる用途において、レーザにより生成されるプラズマ3の場合、昇華の効果が酸化よりも優位であるため、圧縮空気はガス混合気として十分であることができる。