【実施例1】
【0025】
次に、具体的な実施例として、実験に使用した抗体および抗体フラグメントの作製方法と標識、および結果を説明する。実施例では、抗原としてテネイシンCを用いている。また、このテネイシンCに対するモノクローナル抗体やそのフラグメントは、第1診断剤8や第2診断剤9となるものである。なお、本発明は、この実施例に限定されず、様々な形態をとることができる。
【0026】
≪モノクローナル抗体、ハイブリドーマ≫
本実施例では、抗原としてテネイシンCを用いる場合のモノクローナル抗体(IgG)について説明する。このモノクローナル抗体は、1つの抗原の異なるエピトープを認識するものであれば良く、本実施例では、テネイシンCの選択的スプライシング部位のN末端側を認識する抗テネイシンCモノクローナル抗体4F10TT(以下、抗TNC−4F10という)と、テネイシンC分子内のフィブロネクチンIII型反復配列のBCD配列部分を認識する抗テネイシンCモノクローナル抗体4C8MS(以下、抗TNC−4C8という)を用いる。
【0027】
抗TNC−4F10は、特許第3837374号に開示されている方法により、平成14年10月10日付で独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(郵便番号305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)にFERM P−19063として寄託されたハイブリドーマ細胞を用いて産生できる。
【0028】
抗TNC−4C8は、特許第3646159号に開示されている方法を用いて、2000年10月4日付けで工業技術院生命工学工業技術研究所に受託番号FERM P−18070として寄託されたハイブリドーマα−hTNC/B−Dにより産生した。
【0029】
≪モノクローナル抗体フラグメント≫
モノクローナル抗体は、低分子化することが好ましいため、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fd、scFv、またはsdFvといった適宜の抗体フラグメントとすることができる。以下、Fabフラグメント、scFvフラグメントの製作方法について説明する。
【0030】
≪Fabの製作≫
Fabフラグメントは、モノクローナル抗体をパパインで分解することで、N末端側の産物として得られる。
抗TNC−4F10のFabフラグメント(以下、Fab
4F10という)は、抗TNC−4F10をパパインで分解して産生する。
抗TNC−4C8のFabフラグメント(以下、Fab
4C8という)は、抗TNC−4C8をパパインで分解して産生する。
なお、Fab
4F10、Fab
4C8といった抗TNCモノクローナル抗体のFabフラグメントを、まとめて抗TNC−Fabという。
【0031】
≪scFvの製作≫
さらに低分子化した抗体を得るため、抗体一本鎖Fvフラグメント(以下、scFvという)を作製する。scFvは、抗体を構成するH鎖とL鎖の可変部ドメイン(V
HとV
L)を可動性に富むリンカーペプチドで連結した人工の抗体フラグメントであり、分子量は25,000〜28,000程度、すなわちIgGの約1/6、Fabの約1/2である。
【0032】
本発明者らは、抗TNC−4F10のscFvフラグメント(以下、scFv
4F10という)と、抗TNC−4C8のscFvフラグメント(以下、scFv
4C8という)の作製に成功した。scFv
4F10とscFv
4C8の作製方法は、いずれも共通しており、以下に具体的に説明するとおりである。なお、scFv
4F10とscFv
4C8といった抗TNCモノクローナル抗体のscFvフラグメントを、まとめて抗TNC−scFvという。
【0033】
ScFv遺伝子は、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマからH鎖およびL鎖の可変部ドメイン(V
HおよびV
L)の遺伝子をクローニングして、これらを連結することにより得られる。そこで、4C8および4F10抗体のV
HおよびV
L遺伝子をクローニングし、その塩基配列並びにアミノ酸配列を決定した。
抗体可変部の遺伝子(V遺伝子)をクローニングするためには、抗体産生ハイブリドーマから得られるmRNAを鋳型として、その両端の塩基配列に相補的なプライマーを用いてPCRを行うのが効果的である。V遺伝子の3’末端は、定常部の遺伝子(C遺伝子)と隣接するが、C遺伝子はそのサブクラスに応じたほぼ一定の塩基配列を示す。したがって、forwardプライマーとしては、C遺伝子上に相補性を示すオリゴDNAを用いることができる。しかし、5’末端側の枠組み領域(framework region:FR)あるいは、さらに上流のリーダー配列は大きな多様性を示すため、backプライマーの設計には特別な配慮が必要で、このため抗体V遺伝子のPCRクローニングは必ずしも容易でない。
このように、目的遺伝子の5’側に未知の塩基配列を有する遺伝子のクローニングには、5’RACE(5’ rapid amplification of cDNA ends)(Frohman MA, Dush MK, Martin GR. Rapid production of full−length cDNAs from rare transcripts: amplification using a single gene−specific oligonucleotide primer. Proc Natl Acad Sci USA 1988; 85: 8998−9002.)が有用である。そこで、まず本法により4C8および4F10抗体のV
H遺伝子のクローニングを行った。以下、
図3(A)の5’RACEによる抗体V
H遺伝子クローニングの概略工程説明図に沿って説明する。
<V
Hのクローニング>
まず、抗TNC−4F10および抗TNC−4C8の両抗体を産生する各ハイブリドーマ株(FERM P−19063として寄託されたハイブリドーマ細胞、FERM P−18070として寄託されたハイブリドーマα−hTNC/B−D)より全RNAを抽出し、逆転写酵素を作用させ、first−strand cDNAを合成した。このとき、抗体V遺伝子のcDNAを選択的に得るために、定常部サブクラスに特異的なプライマー(group−specific primer:GSP−1)を用いた。
【0034】
ついで、調製したcDNAの3’末端にdCTP存在下、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)を用いてポリC配列を付加し、このポリC配列に特異的なプライマー(AAP)と、C遺伝子上、GSP−1より5’側に相補性を示すGSP−2を用いるPCRを行った。
【0035】
得られた遺伝子断片を、AUAP(5’末端に制限酵素認識部位を導入するためのプライマー)およびGSP−3(GSP−2よりさらに5’側に相補性を示す)を用いるnested PCRに付した。
【0036】
得られたDNA断片を、各々pBluescriptIIベクターにサブクローニングした後、大腸菌XL1−Blue株にエレクトロポーレーション法により導入した。
形質転換体からプラスミドを単離し、ジデオキシ法によりscFv遺伝子の塩基配列を解析した。
【0037】
以上の方法で、抗TNC−4F10および抗TNC−4C8のいずれについてもV
H遺伝子をクローニングすることができた。塩基配列からアミノ酸配列を推定し、Kabatの抗体シークエンスデータベース(Kabat EA, Wu TT, Perry HM, Gottesman KS, Foeller C. Sequences of proteins of immunological interest. Washington, DC: U. S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health; 1991.)と比較して、各抗体のCDRを決定した。
【0038】
<V
Lのクローニング>
V
L遺伝子のクローニングに際して、V
Hのクローニングに使用した5’RACE法では、困難を伴った。これは、MOPC−21由来ミエローマ細胞(例えば、P3/NS1/1−Ag4−1やP3X63−Ag8.653など)を細胞融合のパートナーとしたハイブリドーマから得られるRNAには、ミエローマに由来するκ鎖のmRNAが混在することに起因している。そこで、抗TNC−4F10および抗TNC−4C8のV
L遺伝子については、“ユニバーサルプライマー”を用いるクローニングを試み、クローニングに成功した。
【0039】
V遺伝子をPCRクローニングする際、backプライマーのハイブリダイゼーション部位として、FRのうちN末端に位置するFR1、あるいはリーダー配列が考えられるが、これらの塩基配列は多様性が大きい。そこで、こうした多様な塩基配列に対応できるように設計されたV遺伝子増幅用の縮重プライマーのセット、すなわち、ユニバーサルプライマーのセットがこれまでに種々報告されている。本実施例では、そのうちNichollsらによって開発されたκ型L鎖可変部遺伝子クローニング用のプライマーセット(Nicholls PJ, Johnson VG, Blanford MD, Andrew SM. An improved method for generating single−chain antibodies from hybridomas. J Immunol Methods 1993;165:81−91.)を用いた。これは、6種類の縮重backプライマーを含むもので、 いずれもFR1の5’末端に相補性を示すものである。このうち1種をbackプライマーに、κ型L鎖定常部[C(κ)]の遺伝子に相補的なプライマー(MKC)をforwardプライマーに用いて上述のcDNAの増幅を試みたところ、いずれの抗体についても目的のVL(κ)遺伝子を含む約400bpのDNA断片を得ることができた。これらの塩基配列を解析してアミノ酸配列を推定し、各抗体のCDRを特定した。
【0040】
配列番号1は、抗TNC−4F10のV
H鎖の塩基配列である。
配列番号2は、配列番号1のCDR1領域の塩基配列である。
配列番号3は、配列番号1のCDR2領域の塩基配列である。
配列番号4は、配列番号1のCDR3領域の塩基配列である。
配列番号5は、抗TNC−4F10のV
H鎖のアミノ酸配列である。
配列番号6は、配列番号5のCDR1領域のアミノ酸配列である。
配列番号7は、配列番号5のCDR2領域のアミノ酸配列である。
配列番号8は、配列番号5のCDR3領域のアミノ酸配列である。
配列番号9は、抗TNC−4F10のV
L鎖の塩基配列である。
配列番号10は、配列番号9のCDR1領域の塩基配列である。
配列番号11は、配列番号9のCDR2領域の塩基配列である。
配列番号12は、配列番号9のCDR3領域の塩基配列である。
配列番号13は、抗TNC−4F10のV
L鎖のアミノ酸配列である。
配列番号14は、配列番号13のCDR1領域のアミノ酸配列である。
配列番号15は、配列番号13のCDR2領域のアミノ酸配列である。
配列番号16は、配列番号13のCDR3領域のアミノ酸配列である。
配列番号17は、抗TNC−4C8のV
H鎖の塩基配列である。
配列番号18は、配列番号17のCDR1領域の塩基配列である。
配列番号19は、配列番号17のCDR2領域の塩基配列である。
配列番号20は、配列番号17のCDR3領域の塩基配列である。
配列番号21は、抗TNC−4C8のV
H鎖のアミノ酸配列である。
配列番号22は、配列番号21のCDR1領域のアミノ酸配列である。
配列番号23は、配列番号21のCDR2領域のアミノ酸配列である。
配列番号24は、配列番号21のCDR3領域のアミノ酸配列である。
配列番号25は、抗TNC−4C8のV
L鎖の塩基配列である。
配列番号26は、配列番号25のCDR1領域の塩基配列である。
配列番号27は、配列番号25のCDR2領域の塩基配列である。
配列番号28は、配列番号25のCDR3領域の塩基配列である。
配列番号29は、抗TNC−4C8のV
L鎖のアミノ酸配列である。
配列番号30は、配列番号29のCDR1領域のアミノ酸配列である。
配列番号31は、配列番号29のCDR2領域のアミノ酸配列である。
配列番号32は、配列番号29のCDR3領域のアミノ酸配列である。
配列番号33は、リンカーの塩基配列である。
配列番号34は、リンカーのアミノ酸配列である。
【0041】
<scFv
4F10およびscFv
4C8の調製>
上述したV遺伝子塩基配列の情報を基盤として、scFv(scFv
4F10およびscFv
4C8)の調製を試みた。すなわち、抗TNC−4F10および抗TNC−4C8の各V
H及びV
L遺伝子を、サブクローニングのための制限酵素部位(Nco IとSal I)および両遺伝子の連結に必要なリンカー配列を含むプライマーで各々増幅した。
【0042】
ついで、
図3(B)のscFv遺伝子構築の概略工程説明図に示すように、得られたV
H、V
L両遺伝子断片を、リンカー部分のハイブリダイゼーションを利用するoverlap extension PCR スプライシング法により連結させて、scFv遺伝子を構築した。リンカーペプチドは、可動性に富み、scFvの構築に一般的に多用される(Gly
4Ser)
3を採用した。また、本scFvの発現の確認に有用と思われるFLAG 配列の遺伝子を3’末端に付加した。得られたscFv遺伝子は、いずれも期待どおり約800bpのサイズを有することがアガロースゲル電気泳動により確認された。これらscFv遺伝子断片を、それぞれ抗体発現用ベクターであるpEXmide 5(Kobayashi N, Shibahara K, Ikegashira K, Shibusawa K, Goto J. Single−chain Fv fragments derived from an anti−11−deoxycortisol antibody. Affinity, specificity, and idiotype analysis. Steroids 2002; 67: 733−42.)にサブクローニングし、大腸菌XLOLR株を形質転換した。この組換え菌では、 scFv遺伝子の産物は、5’上流のpel B リーダーペプチドの働きにより大腸菌のペリプラズムへ送達されるものと期待される。そこで、得られた形質転換体クローンをisopropyl β−D−thiogalactopyranoside(IPTG)存在下で培養し、浸透圧ショック法によりそのペリプラズム抽出液を調製した。これら抽出液について下記のELISAにより抗原結合活性を調べたところ、対応するマウス抗体に匹敵する十分な抗原結合活性が認められている。
【0043】
≪scFv
4F10およびscFv
4C8の諸性質と有用性≫
上述したscFvのうち、scFv
4F10の結合特性について述べる。まず、ペリプラズム抽出液を、FLAG固定化アガロースを用いるアフィニティークロマトグラフィーに付してscFvを精製し、SDSポリアクリルアミド電気泳動(SDS−PAGE)に付した。その結果、クーマシーブルー染色において本scFvの分子量(約29KDa)と符合する位置にバンドが認められた。さらに、 抗FLAG抗体を検出プローブとするイムノブロッティングにおいても同じ位置に単一のバンドが認められ、目的の可溶型scFvが発現されていることが示された。
【0044】
次に、
図3(C)のELISA原理説明図に示す方法により、ペリプラズム抽出液を、テネイシンCを固定化したマイクロプレートを用いるELISAに付したところ、強い陽性シグナルが得られた。さらに、遊離のテネイシンCを添加して競合反応を行い、用量作用曲線を作成したところ、midpoint(50%阻害率を示す抗原量)はおよそ8ng(約0.3pmol)であり、本scFvを用いて高感度なテネイシンCのELISAが可能なことが示された。表面プラズモン共鳴センサー(Biacore 2000)を用いて本scFvのテネイシンCに対する解離定数Kdを求めた。
図3(D)は、scFvの表面プラズモン共鳴センサーグラムのグラフ図を示す。この図に示すように、scFvは由来するマウス抗体(4F10)Fab(解離定数K
d=7×10
−8M)に全く遜色のない親和力(解離定数K
d=4×10
−8M)を保持していることを確認した。
本scFvをラット血清と混合し、その一部を経時的に上記のELISAに付して、scFvの分解の有無を調べた。その結果、混合して2時間後からゆるやかなシグナルの低下が認められるものの、24時間後でも約80%が分解することなく血清中に存在していることが示された。従って、本ScFvは、標的組織へ到達するに充分な時間、血液中で分解を受けず、安定に循環でき、体内診断薬として応用できる。
【0045】
本scFvを放射性同位体で標識するため、上記のscFv遺伝子の3’末端にシステイン(cys)のコドンをPCRにより付加し、XLOLR菌内で発現させて、C末端にcys残基を導入したscFv−cysを調製した。 このscFv−cysは、cys導入前のscFvと変わらないテネイシンC結合活性をもつことを確認した。
【0046】
≪キレートの開発≫
放射性核種標識scFvの体内動態を検討するためには、scFvが移行した組織において、放射活性が長時間滞留することが望ましい。そこで、インジウム−111と安定な錯体を形成することが知られ、標的組織において、滞留すること期待できるDTPA(diethylenetriamine pentaacetic acid)を金属キレート部位として選択した。また、scFvは分子量が29000程度と小さく、アミノ基修飾によるキレートの導入では、アミノ末端など抗原認識に関わる部位へ修飾が懸念される。そこで、カルボキシ末端にシステインを導入したscFvのスルフヒドリル基を介して、位置選択的にキレートを導入することにした。本実施例では、スルフヒドリル基との選択的に結合するマレイミド基を選択し、キレート部位としてDTPA骨格を有するEMCS−Bz−DTPAを二官能性キレート試薬として設計合成した。
【0047】
≪EMCS−Bz−DTPAの合成≫
<実験材料>
1H−NMRおよびFAB−MSはそれぞれJEOL JNM−ALPHA 400 spectrometer, JEOL JMS−AX500 (JEOL Ltd., Tokyo, Japan)を用いて測定した。試薬は特級を使用した。
【0048】
<Methyl−p−nitrophenyalanine(1)の合成>
無水methanol(40mL)を−10℃以下に冷却し、thionyl chloride(2mL,27.4mmol)を温度を維持したままゆっくりと滴下した。10分間温度を維持したまま撹拌した後、4−nitro−L−phenylalanine(5g,23.8mmol)を加えた。室温に戻した後、一晩灌流した。溶媒を減圧留去し、次の[化1]に示す化合物1を白色固体(4.58g,収率85.8%)として得た。
【化1】
FAB−MS:m/z224(M+H)
+,found224.
【0049】
<p−Nitrophenylalanine−N−(2−aminoethyl)amide(2)の合成>
化合物1(2.78g,12.4mmol)を乾燥methanol(5mL)に溶解した。窒素気流下、ethylenediamine(45mL,692mmol)をゆっくりと加え、一晩撹拌した。溶媒を留去し、赤色の油状物質2を得た。得られた[化2]に示す化合物2はそのまま次の反応に用いた。
【化2】
FAB−MS:m/z253(M+H)
+,found253.
【0050】
<1−(p−Nitrobenzyl)diethylenetriamine(3)の合成>
化合物2(2.7g,10.6mmol)をtetrahydrofuran(THF,43mL)に溶解した。窒素気流下−10℃に冷却した後、1.0M borane−THF complex(55.7mL)を滴下した。そのまま1時間撹拌後、一晩灌流した。溶媒を−10℃に冷却後、methanol(10mL)をゆっくりと加えた。溶媒を留去し、同様の操作をもう一度繰り返した後、ethanol(25mL)を加え、氷令した。次いで、HClガスを飽和になるまで吹き込んだ後、2時間灌流した。冷蔵庫で一晩放置した後、結晶をろ取した。結晶を12mLの水に溶解した後、50%NaOHを氷零下滴下し、pHを約14とした。Chloroform(25x3)で抽出した後、chloroform−methanol−ammonia(12:4:1)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製し、[化3]に示す化合物3である油状物質3(1.9g,70%)を得た。
【化3】
FAB−MS:m/z239(M+H)
+,found239.
【0051】
<1−(p−Nitrobenzyl)diethylenetriaminepentaacetic acid penta−t−butylester(4)の合成>
化合物3(0.62g,2.58mmol)をacetonitrile(7mL)に溶解し、次いで、K
2CO
3(3.57g,25.8mmol)を加えた。t−Butyl bromoacetate(2.67g,13.7mmol)を氷零下滴下し、遮光下一晩撹拌した。溶媒を減圧留去した後、水(20mL)を加え、chloroform(20mLx3)で抽出した。Ethyl acetate−hexane(1:4)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製し、[化4]に示す化合物4である黄色の油状物質4(1.63g,収率78.1%)を得た。
【化4】
1H−NMR(CDCl
3):δ1.37(s,45H,t−butyl),2.43−3.01(overlap,9H,CH
2,CH),3.25−3.44(m,10H,CH
2−COO),7.24−8.11(d,4H,benzyl).
FAB−MS:831(M+Na)
+,found831.
【0052】
<1−(p−aminobenzyl)diethylenetriaminepentaacetic acid penta−t−butylester(5)の合成>
化合物4(0.71g,0.88mol)をethyl acetate(20mL)に溶解し、次いで10% Pd/C(0.39g)を加え、水素気流下9時間撹拌した。Pd/Cをろ去し、[化5]に示す化合物5を無色透明の油状物質(0.65g,95.1%)として得た。
【化5】
1H−NMR(CDCl
3):δ1.38−1.42(s,45H,t−butyl),2.45−2.80(overlap,8H,CH
2),3.00(m,1H,CH),3.33−3.71(m,10H,CH
2−COO),6.55−6.98(d,4H,benzyl).
FAB−MS:802(M+Na)
+,found802.
【0053】
<N−(2−Hydroxyethyl)maleimide(6)の合成>
Maleimide(3.0g,30.9mmol)をethyl acetate(40mL)に溶解し、氷令下N−methylmorpholine(3.92g,38.8mmol)をゆっくりと滴下した。3時間後沈殿をろ去し、残渣をethyl acetate−hexan(1:2)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製し、[化6]に示す化合物6を白色結晶(3.8g,79.3%)として得た。
【化6】
【0054】
<N−Maleimidehexanoic acid(7)の合成>
6−Amino−n−hexanoic acid(193mg,1.47mmol)を飽和NaHCO
3(4mL)に溶解し、氷零下化合物6を加えた。氷零下40分、室温で50分間反応させた後、H
2SO
4を加え、pHを3とした。Ethyl acetate(10mLx3)で抽出し、[化7]に示す化合物7を白色固体(129mg,41.6%)として得た。
【化7】
1H−NMR(CDCl
3):δ1.23−1.36(m,2H,CH
2),1.55−1.67(m,4H,CH
2),2.30−2.34(m,2H,CH
2),3.48−3.66(m,2H,CH
2−COO),6.67(s,2H,maleimide).
FAB−MS:211(M+H)
+,found211.
【0055】
<1−(N−maleimidehexanoyl)−3−amidobenzyldiethylenetriaminepentaacetic acid penta−t−butylester(8)の合成>
化合物7(81.4mg,0.39mmol)をTHF(1.93mL)に溶解し、−15℃に冷却した。N−Methylmorpholine(38.1μL,0.35mmol)を加え、次いでisobutyl chloroformate(55.4μL,0.43mmol)を加えた。2分後、THF(0.38mL)に溶解した化合物5(150mg,0.193mmol)を加え、30分間撹拌した。さらに、室温に戻した後、90分間撹拌した。溶媒を減圧留去した後、残渣をethyl acetate 10mLに溶解し、5%NaHCO
3溶液(10mL)、水(10mL)、1M HCl溶液(10mL)で洗浄した。有機層を乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣をethyl acetate−hexane(1:1)を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製し、[化8]に示す化合物8を油状物質(260mg,67%)として得た。
【化8】
1H−NMR(CDCl
3):δ1.23−1.72(overlap,51,t−butyl,CH
2),2.23−2.70(overlap,8H,CH
2),3.05(m,1H,CH),3.36−3.53(m,10H,CH
2−COO),6.66(s,2H,maleimide),7.14−7.38(d,4H,benzyl).
FAB−MS:994(M+Na)
+,found994.
【0056】
<1−(N−maleimidehexanoyl)−3−amidobenzyldiethylenetriaminepentaacetic acid (EMCS−BZ−DTPA)の合成>
化合物8(355mg,0.37mmol)をtrifluoroacetic acid−anisole(9:1,200μL)に溶解し、3時間撹拌した。Ethyl acetate(5mL)を加え、[化9]に示すEMCS−Bz−DTPA(77mg,30%)を白色固体として得た。
【化9】
1H−NMR(DMSO−d6):δ1.24−1.25(m,2H,CH
2),1.49−1.59(m,4H,CH
2),2.24−2.27(m,2H,CH
2),2.75−2.98(overlap,10H,CH
2),3.16−3.59(overlap,13H,CH,CH
2),7.00(s,2H,maleimide),7.11−7.49(d,4H,benzyl).
FAB−MS:692(M+H)
+,found692.
【0057】
≪抗体の標識≫
本発明には様々な標識が利用できるが、この実施例では、抗TNC−Fabのヨウ素−125/131標識、抗TNC−Fabのインジウム−111標識、ScFv−EMCS−Bz−DTPAのインジウム−111標識について説明する。
【0058】
Na[
125I]IはMP biomedicals(Irvine,USA)から、Na[
131I]IはPerkinElmer Japan(Yokohama,Japan)から購入した。インジウム−111(
111In)は日本メジフィジックス株式会社(Tokyo,Japan)より購入した。その他の試薬は特級を購入し、そのまま使用した。
【0059】
<抗TNC−Fabのヨウ素−125/131(
125/131I)標識>
Fab
4F10あるいはFab
4C8(1mg/mL,0.1Mphosphate buffer pH6.8)100μLにNa[
125I]IあるいはNa[
131I]Iを加えた。その溶液にchloramine T(0.1mg/mL,0.1M phosphate buffer pH6.8)を6μL加え、室温で5分間反応させた。その後、亜硫酸水素ナトリウム(0.1mg/mL,0.1M phosphate buffer pH6.8)を20μL加え、反応を終了させた。その後、Sephadex G−50(Pharmacia Biotech KK, Tokyo, Japan)を担体とするスピンカラム(0.1M acetate buffer pH6.0)により精製した。放射化学的純度は80%methanolによるTLCにより求めた。放射化学的純度は96%、収率は59.2%(
125I−Fab
4F10)または50.2%(
131I−Fab
4C8)である。
【0060】
<抗TNC−Fabのインジウム−111標識>
ホウ酸緩衝液(0.05M,pH8.5)に溶解したFab(5mg/mL,100μL)にホウ酸緩衝液(0.05M,pH8.59)に溶解したSCN−Bz−DTPA(15eq,10μL)を加えた。15時間37℃で反応させた後、Sephadex G−50を担体とするスピンカラム(0.1M acetate buffer pH6.0)により精製し、Fab−SCN−Bz−DTPAを得た。
【0061】
1M酢酸緩衝液(pH6.0)200μLに
111Inを200μL加え、室温で5分間放置した。次いで、Fab−SCN−Bz−DTPA(1mg/mL,100μL)を加え、60分間反応させた。反応液をSephadex G−50を担体とするスピンカラム(0.1M phosphate buffer pH7.4)により精製した。放射化学的純度は電気泳動(veronal buffer pH8.6, I=0.06,60分)により求めた。放射化学的純度は95%である。
【0062】
<抗TNC−Fabのテクネシウム−99m標識>
抗TNC−Fabのテクネシウム−99m標識は、論文「99mTc−HYNIC−derivatized ternary ligand complexes for 99mTc−labeled polypeptides with low in vivo protein binding」, Nuclear Medicine and Biology,28(2001),215−224 に記載の方法により行った。
【0063】
<ScFv−EMCS−Bz−DTPAのインジウム−111標識>
1M酢酸緩衝液(pH6.0)100μLに111Inを100μL加え、室温で5分間放置した。次いで、Fab−SCN−Bz−DTPA(0.45mg/mL,220μL,0.1M酢酸緩衝液pH6.0)を加え、60分間反応させた。反応液をSephadex G−25を担体とするスピンカラム(0.1M phosphate buffer pH7.4)により精製した。放射化学的純度は電気泳動(veronal buffer pH8.6,I=0.06,60分)により求めた。放射化学的純度は95.1%である。
【0064】
≪テネイシンCと標識化抗体≫
テネイシンCの異なるエピトープを認識する標識化抗体は、上述した、抗TNC−4F10(マウスIgG)と抗TNC−4C8(マウスIgG)、またはそのFabフラグメント、若しくはそのscFvフラグメントとすることができる。分子量が最も低く好ましいscFvフラグメントの場合について説明する。
図4(A)は、テネイシンC33と、In−111標識4F10TT抗テネイシンC scFv抗体(以下、
111In−anti−TNC−scFv
4F10という)31と、Tc−99m標識4C8MS抗テネイシンC scFv抗体(以下、
99mTc−anti−TNC−scFv
4C8という)32を示す説明図である。テネイシンC33は、複数のエピトープを有している。
111In−anti−TNC−scFv
4F10は、テネイシンC33の上皮成長因子(EGF)様ドメインに集積する。
99mTc−anti−TNC−scFv
4C8は、テネイシンC33のフィブロネクチンIII様配列部分に集積する。
【0065】
このように、選択的スプライシング部位のN末端側の「上皮成長因子(EGF)様ドメイン」と、「フィブロネクチンIII様配列部分」という異なるエピトープにそれぞれ集積するため、1つの抗テネイシンCに2つの標識抗体が集積した状態を実現することができる。
また、標識に、インジウム(In−111)とテクネシウム(Tc−99m)というエネルギーピークの異なる放射性核種を用いているため、SPECT装置1による体外評価において、それぞれ分離してデータ収集することができる。
また、分子量が低いscFvフラグメントを用いているため、IgGやFabに比べて組織/血液分布比がより大きく、より鮮明なシンチグラムを与えることができる。
【0066】
≪ラットへの投与結果≫
図4(B)は、隣接切片のオートラジオグラフィーと組織染色像を示す説明図である。上から順に、(1)
111In−anti−TNC−Fabを投与した心筋梗塞部、(2)
111In−anti−TNC−Fabを投与した非心筋梗塞部、(3)抗パラインフルエンザウイルス2型蛋白モノクローナル抗体のFab抗体を投与した心筋梗塞部、(4)
111In−anti−TNC−scFvを投与した心筋梗塞部を示している。
【0067】
図示するように、非特異抗体としてアイソタイプの抗パラインフルエンザウイルス2型蛋白モノクローナル抗体のFab抗体を投与した場合には心筋梗塞部に集積しないことが確認でき、FabとscFvが心筋梗塞による心筋壊死部に集積することを確認できた。
【0068】
図4(C)は、心筋梗塞モデルラットに同量で同時投与した4C8と4F10の比を測定した結果である。この実施例では、25μg(111kBq)の
125I−Fab
4F10と25μg(111kBq)の
131I−Fab
4C8を混和し、ラット(300μL,saline)に尾静脈より投与している。そして、臓器分布により測定している。
【0069】
図示するように、4C8/4F10比は、30分虚血再灌流後3日に1.48、30分虚血再灌流後4日に1.37となっている。急性心筋梗塞後3日に1.30であった4C8/4F10比は、急性心筋梗塞後4日に1.38となっている。また、陳旧性心筋梗塞の場合、4C8/4F10比は0.88である。ラットの場合、心筋梗塞4日後からは、再灌流していても同様の比であり、治療効果への反応は乏しいが、3日後では大きく変わる。このように、病期によって4C8/4F10比が変化することがわかる。
【0070】
図4(D)は、心筋梗塞モデルラットに
111In−anti−TNC−Fabを投与して測定した結果である。急性心筋梗塞後3日の4C8/4F10比は、1.45であった。このように、体外画像評価でもヨウ素標識、臓器分布と同様の結果が得られる。なお、この
図4(D)は、
111In−anti−TNC−Fab
4C8を投与し、別の個体に
111In−anti−TNC−scFv
4F10を投与して測定して比を取っているが、
99mTc−anti−TNC−scFv
4C8と
111In−anti−TNC−scFv
4F10を同時投与して比をとっても良い。この場合も、2つの抗体フラグメント(scFv
4C8とscFv
4F10)が集積する2つのエピトープは図示した例と同じであるから、同じ結果が得られる。
【0071】
図4(C)、
図4(D)に示した結果に基づき、急性心筋梗塞後3日のラットに翌日からGCSF注射治療を始めたところ、有意に生存期間の延長を認めた(治療群107.5(週)、対照群76.8(週))。治療群と対照群の「急性心筋梗塞後3日のIn−111−4C8放射活性」を比較すると、同程度(治療群6.23 counts/heart、対照群7.37 counts/heart)であり、明らかな差が得られなかった。このように、4F10の放射活性を勘案した4C8/4F10比を体外評価から算出することにより、治療を必要とする群を選別することが可能である。
【0072】
これらの結果から、4C8/4F10比を測定することで、病期や推奨治療法を判定することが可能となる。例えば、4C8/4F10比を
図2(D)に説明した基準データ5aと比較することで、病期や推奨治療法を容易に判定できる。
また、
図4(A)に示したIn−111標識4F10TT抗テネイシンC scFv抗体31と、Tc−99m標識4C8MS抗テネイシンC scFv抗体32を用いることで、低分子量の診断剤による2核種同時測定を実現することができる。
また、4C8/4F10比を心不全の悪化の指標と用いることもできる。また、病変部を体外定量評価することができる。
また、効果的な薬剤のスクリーニングを定量的な体外評価により実施することも可能となる。
また、炎症部位が複数あっても、4C8/4F10比をとることで画像的に定量評価することができる。
【0073】
以上のように、1つの抗原の異なるエピトープに集積する複数種類の抗体を対で使用し、その比を求めることで、炎症部位を画像的に体外定量評価することができる。従って、このような抗体対を提供することで、病期を判定し治療開始時期を示すという画期的な評価を行える。
抗TNC−4C8及びそのフラグメントは、抗TNC−4F10及びそのフラグメントよりも、炎症の重症度との関連が高く、敏感度が高いと考えられる。また、抗TNC−4F10及びそのフラグメントは、抗TNC−4C8及びそのフラグメントよりも、軽症でも発現が多く重症との差を出しにくくしていると考えられる。従って、免疫染色でのテネイシンCの発現領域は、抗TNC抗体及びそのフラグメントにおいて常に4F10>4C8と考えられる。このように、敏感性や重症度との関連性が異なる複数種類の抗TNC抗体またはそのフラグメントを対として用い、比較することで、病期および適切な治療方法を定量的かつ的確に判定することができる。
【0074】
また、In−111標識4F10TT抗テネイシンC Fab抗体と、Tc−99m標識4C8MS抗テネイシンC Fab抗体により、十分な基礎研究を行うことができる。詳述すると、現在米国でPhaseII臨床治験となっている抗テネイシンCモノクローナル抗体(81C6)は、本発明とは塩基配列が異なっており、ラットおよびマウスのテネイシンCには結合しない。このため、抗テネイシンCモノクローナル抗体(81C6)には、十分な基礎研究ができないという問題点がある。これに対して、本実施例に説明したIn−111標識4F10TT抗テネイシンC Fab抗体と、Tc−99m標識4C8MS抗テネイシンC Fab抗体は、いずれもラットおよびマウスのテネイシンCに結合する。このため、ヒトに投与する前に十分な基礎研究を行うことができる。
【0075】
なお、この実施例ではSPECT装置1を用いたが、これに限らずPET装置等の適宜の装置に応用することもなし得る。
また、scFvは、V
H,V
Lのそれぞれに3箇所ずつ存在する相補性決定部(complementarity−determining region; CDR)のアミノ酸にランダム変異を導入して変異scFvのライブラリーを構築してもよい。これにより、野生型scFvよりも特異性や親和力の向上した変異体を探索することができる。
また、実施例では4C8/4F10の比としたが、4F10/4C8の比とすることもできる。
【0076】
また、4C8と4F10の投与量を同量としたが、これに限らず、あらかじめ定めた適宜の割合とすることができる。この場合でも事前に投与割合がわかっていることから、比をとって判定することができる。
また、4C8と4F10の投与は、静脈内投与に限らず、サプリメントとして経口投与する、経口吸引する、または皮膚吸収するなど、適宜の投与方法で投与することができる。サプリメントによる場合は、4C8と4F10とを有する抗体対を含むサプリメントを作製し提供すればよい。