【実施例1】
【0019】
実施例1では、半導体装置として、窒化物半導体を用いた高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)を例に説明する。
図1(a)から
図3(c)は、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図1(a)のように、炭化シリコン(SiC)からなる基板10上に、窒化アルミニウム(AlN)からなるバッファ層12を成膜する。基板10は、SiC基板の他に、シリコン(Si)基板又はサファイア基板を用いてもよい。バッファ層12は、基板10の上面に接して形成される。バッファ層12上に、窒化物半導体層20として、アンドープ窒化ガリウム(GaN)からなる電子走行層14、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)からなる電子供給層16、及びn型GaNからなるキャップ層18をこの順に成膜する。なお、電子供給層16は、AlGaNの他にも、窒化インジウムアルミニウム(InAlN)からなる場合でもよい。電子走行層14は、バッファ層12の上面に接して形成される。電子供給層16は、電子走行層14の上面に接して形成される。キャップ層18は、電子供給層16の上面に接して形成される。これら各層の成膜は、例えば有機金属気相成長(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法を用いて行うことができる。なお、実施例1では、バッファ層12を設けているが、設けない場合でもよい。
【0020】
バッファ層12の厚さは、例えば300nmであり、電子走行層14の厚さは、例えば1.0μmであり、電子供給層16の厚さは、例えば20nmであり、キャップ層18の厚さは、例えば5nmである。HEMTでは、電子走行層14と電子供給層16との界面に2次元電子ガス(2DEG:Two Dimensional Electron Gas)が生じる。
【0021】
図1(b)のように、キャップ層18上に、窒化シリコン(SiN)からなる絶縁膜22を成膜する。絶縁膜22は、キャップ層18の上面に接して形成される。絶縁膜22の成膜は、例えばプラズマ化学気相成長(PECVD:Plasma-Enhanced Chemical Vapor Deposition)法を用いて行うことができる。絶縁膜22の厚さは、例えば20nmである。絶縁膜22の屈折率は、例えば2.35であり、電流コラプスを抑えることを目的として、シリコン(Si)リッチの膜となっている。なお、電流コラプスを抑える観点から、絶縁膜22の窒素(N)に対するシリコン(Si)の組成比(Si/N)は、例えば0.76以上の場合が好ましく、0.85以上の場合がより好ましく、1.0以上の場合がさらに好ましい。絶縁膜22を成膜した後、絶縁膜22の表面をオゾン雰囲気に曝して、絶縁膜22の表面に対して酸化処理を行う。オゾン雰囲気に曝すことによる酸化処理は、以下の条件によって行うことができる。
オゾン濃度:10%〜100%(残りは酸素)
圧力 :0.1Torr〜10Torr
温度 :150℃〜350℃
処理時間 :1分〜5分
なお、オゾン濃度は、30%〜100%が好ましく、50%〜100%がより好ましい。圧力は、1torr〜8torrが好ましく、3torr〜5torrがより好ましい。温度は、200℃〜300℃が好ましく、220℃〜280℃がより好ましい。処理時間は、2分〜4分が好ましく、2.5分〜3.5分がより好ましい。また、酸化処理を行う前に、絶縁膜22の表面をイソプロピルアルコール(IPA)に浸して洗浄する前処理を行ってもよい。IPAに浸す時間は、例えば5分とすることができる。
【0022】
SiNからなる絶縁膜22は、Si−Nの結合以外にも、例えばSi−H(水素)の結合やSi原子の未結合手等が存在する。絶縁膜22の表面に対して酸化処理を行うことで、Si−H結合のHをO(酸素)と置換させたり、Si原子の未結合手にOを結合させたりすることができ、絶縁膜22の欠陥を低減することができる。
図4は、酸化処理後の絶縁膜22を示す断面図である。
図4のように、絶縁膜22の表面に対して酸化処理を行うことで、絶縁膜22の表面部分を欠陥が低減された領域22aとでき、それ以外の部分をSiリッチな領域22bとすることができる。
【0023】
図1(c)のように、絶縁膜22上に、レジスト膜40を形成する。レジスト膜40は、紫外線を利用した露光で用いられるレジスト膜であり、例えばノボラック系樹脂からなるレジスト膜である。レジスト膜40に対して、紫外線照射の露光及び現像を行うことで、ソース電極及びドレイン電極を形成すべき領域のレジスト膜40を除去する。その後、レジスト膜40をマスクとして、絶縁膜22に対してエッチング処理を行い、ソース電極及びドレイン電極を形成すべき領域の絶縁膜22を除去する。エッチング処理は、ドライエッチングで行ってもよいし、ウエットエッチングで行ってもよい。
【0024】
図1(d)のように、ソース電極及びドレイン電極を形成すべき領域に開口を有するリフトオフ用のレジスト膜42を形成する。レジスト膜42は、上述のレジスト膜40と同様に、紫外線を利用した露光で用いられるレジスト膜である。レジスト膜42を形成した後、蒸着法を用いて、キャップ層18側からチタン(Ti)とアルミニウム(Al)が順に積層された金属膜44を形成する。
【0025】
図2(a)のように、リフトオフによってレジスト膜42を除去する。その後、金属膜44に対して、例えば500℃以上且つ800℃以下の温度でアニールを行い、キャップ層18にオーミック接触するオーミック電極であるソース電極24及びドレイン電極26を形成する。
【0026】
図2(b)のように、絶縁膜22、ソース電極24、及びドレイン電極26上に、電子ビーム(EB:Electron Beam)露光用のレジスト膜であるEBレジスト膜46を形成する。EBレジスト膜46は、例えば厚さ400nmのアクリル系樹脂からなるレジスト膜である。なお、
図2(b)では、絶縁膜22の表面上にEBレジスト膜46を形成しているが、絶縁膜22の表面上に他の絶縁膜(例えば、窒化シリコン、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、及び酸化シリコンの何れかを用いることができる)を介してEBレジスト膜46が形成されていても良い。このように、他の絶縁膜を設けることで、ドリフト、コラプス、通電劣化あるいは寄生容量の変動などを改善することができる。次に、EBレジスト膜46上に、帯電防止膜48を形成する。なお、帯電防止膜48の代わりに、アルミニウム(Al)又はチタン(Ti)等からなる薄膜金属膜を用いてもよい。また、帯電防止膜48及び薄膜金属膜を用いない場合でもよい。ゲート電極を形成すべき領域のEBレジスト膜46に開口を形成するために、EBレジスト膜46に対して電子ビーム露光(例えば、加速電圧:40kV、電流値:0.2nA、ドーズ量:20μC/cm
2)、帯電防止膜除去、及び現像を行う。なお、電子ビーム露光の条件の範囲としては、次の通りである。加速電圧は、25kV〜50kVとすることができ、30kV〜45kVが好ましく、35kV〜40kVがより好ましい。電流値は、0.01nA〜0.5nAとすることができ、0.1nA〜0.4nAが好ましく、0.2nA〜0.3nAがより好ましい。ドーズ量は、2μC/cm
2〜50μC/cm
2とすることができ、10μC/cm
2〜40μC/cm
2が好ましく、20μC/cm
2〜30μC/cm
2がより好ましい。照射時間は、EBレジスト膜46の膜厚および上記条件などにより、変化させることができる。電子ビーム露光を用いることで、紫外線を用いた露光に比べて、ゲート長の短いゲート電極の形成が可能となり、ゲート容量の低減が図れる。
【0027】
図2(c)のように、電子ビーム露光及び現像によってEBレジスト膜46に開口50を形成した後、EBレジスト膜46をマスクとして、絶縁膜22に対してエッチング処理を行い、ゲート電極を形成すべき領域の絶縁膜22を除去する。エッチング処理は、ドライエッチング及びウエットエッチングのどちらで行ってもよい。
【0028】
図3(a)のように、ゲート電極を形成すべき領域に開口を有するリフトオフ用のレジスト膜52を形成する。レジスト膜52は、上述のレジスト膜40、42と同様に、紫外線を利用した露光で用いられるレジスト膜である。レジスト膜52を形成した後、蒸着法を用いて、キャップ層18側からニッケル(Ni)と金(Au)が順に形成された金属膜54を形成する。
【0029】
図3(b)のように、リフトオフによってレジスト膜52を除去し、キャップ層18にショットキー接触をするゲート電極28を形成する。
【0030】
図3(c)のように、ゲート電極28、ソース電極24、及びドレイン電極26を覆うように、SiNからなる層間絶縁膜30を成膜する。層間絶縁膜30の成膜は、例えばプラズマCVD法を用いて行うことができる。層間絶縁膜30の厚さは、例えば500nmである。ソース電極24及びドレイン電極26上の層間絶縁膜30を除去し、除去した領域に、ソース電極24に電気的に接続するソース配線32とドレイン電極26に電気的に接続するドレイン配線34とを形成する。ソース配線32及びドレイン配線34は、電極側からTi、Al、Auメッキが順に形成された金属膜である。以上のような工程を含んで、実施例1の半導体装置が形成される。
【0031】
実施例1では、
図1(b)で説明したように、絶縁膜22の表面に対する酸化処理を、絶縁膜22の表面をオゾン雰囲気に曝すことで行っているが、絶縁膜22の表面を酸素プラズマに曝すことで行ってもよい。酸素プラズマに曝すことによる酸化処理は、以下の条件によって行うことができる。
酸素濃度:3%〜100%(残りは窒素)
圧力 :0.03Torr〜5Torr
RF電力:50W〜800W
温度 :25℃〜350℃
処理時間:1分〜10分
なお、酸素濃度は、30%〜100%が好ましく、50%〜100%がより好ましい。圧力は、0.5torr〜3torrが好ましく、1torr〜2torrがより好ましい。RF電力は、200W〜600Wが好ましく、300W〜500Wがより好ましい。温度は、25℃〜200℃が好ましく、25℃〜100℃がより好ましい。処理時間は、2分〜8分が好ましく、3分〜5分がより好ましい。
【0032】
ここで、発明者が行った酸化処理に関する実験について説明する。発明者は、複数の基板上にプラズマCVD法を用いて厚さ10nmのSiN膜を形成し、SiN膜の表面をオゾン雰囲気又は酸素プラズマに曝すことで酸化処理を行った。オゾン雰囲気に曝すことによる酸化処理は、以下の条件を用いて行った。
オゾン濃度:50%(残りは酸素)
圧力 :3Torr
温度 :250℃
処理時間 :3分
酸素プラズマに曝すことによる酸化処理は、以下の条件を用いて行った。
酸素濃度:100%
圧力 :1Torr
RF電力:400W
温度 :25℃
処理時間:3分
【0033】
酸化処理前後のSiN膜をFTIR(フーリエ変換赤外分光)法を用いて測定することで比較をした。FTIR法とは、物質に赤外光を照射し、分子の振動エネルギーに対応したエネルギーを有する赤外光の吸収量から物質の組成等を調べる測定方法である。
図5は、FTIRの測定結果を示す図である。
図5の横軸は波数であり、縦軸は任意座標の吸収量である。
図5中の細実線は酸化処理を行う前のSiN膜の測定結果であり、太実線はオゾン雰囲気に曝した酸化処理後の測定結果であり、太破線は酸素プラズマに曝した酸化処理後の測定結果である。
図5のように、オゾン雰囲気及び酸素プラズマのいずれの方法を用いて酸化処理を行った場合でも、Si−H結合が減少し、Si−O結合が増加していることが確認できる。つまり、SiN膜の表面に対して酸化処理を行うことで、Si−H結合のHがOと置換したり、Si原子の未結合手にOが結合したりすることが確認できる。なお、酸化処理によってSiN膜の表面が一様に酸化されているとした場合、FTIRの測定結果から、酸化された厚さは2nm程度と見積もることができる。また、FTIRの測定スペクトル(特に、太破線)に生じている乱れは、SiN膜に付着していた水分によるものであるため、ここでは特段考慮しない。
【0034】
次に、絶縁膜22の表面に対して酸化処理を行う理由について説明する。発明者は、絶縁膜22の表面を以下の条件でオゾン雰囲気に曝すことで酸化処理を行った場合における、
図2(c)で説明した絶縁膜22に対するドライエッチングで形成されたパターンを測長用の走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)によって測定した。
オゾン濃度:50%(残りは酸素)
圧力 :3Torr
温度 :250℃
処理時間 :3分
また、比較のために、絶縁膜22の表面に対して酸化処理を行っていない点を除いて、実施例1と同じ方法で製造した比較例1に対しても、絶縁膜22に対するドライエッチングで形成されたパターンを測長用SEMで測定した。
【0035】
図6(a)は、比較例1における絶縁膜22に形成されたパターンを測長用SEMで測定した結果であり、
図6(b)は、実施例1における絶縁膜22に形成されたパターンを測長用SEMで測定した結果である。なお、
図6(a)及び
図6(b)は、EBレジスト膜46を除去した後の測長用SEMによるプロファイルを示している。
図6(a)のように、酸化処理を行っていない比較例1では、絶縁膜22に形成されたパターンに異常侵食が生じていて、パターン幅が広がった形状となってしまっている。一方、
図6(b)のように、酸化処理を行った実施例1では、異常侵食が抑えられ、絶縁膜22に良好な形状をしたパターンが形成されている。
【0036】
このように、絶縁膜22の表面に対して酸化処理を行った実施例1では、絶縁膜22に形成されたパターン形状が良好となり、酸化処理を行っていない比較例1では、パターン形状が異常となった理由について以下に説明する。
図7(a)は、比較例1における電子ビーム露光の感光状態を示す断面図であり、
図7(b)は、実施例1における電子ビーム露光の感光状態を示す断面図である。なお、図の明瞭化のためにハッチは省略している。
【0037】
図7(a)のように、電子ビーム露光によってEBレジスト膜46に電子が照射されると、EBレジスト膜46内で分子に散乱されながら広がっていく前方散乱電子60と、窒化物半導体層20で大きく散乱されて跳ね返ってくる後方散乱電子62と、が生じる。窒化物半導体層20を構成する窒化物半導体の結晶性から、後方散乱電子62の散乱角度は小さく、その結果、絶縁膜22の狭い領域に電子が蓄積される。また、窒化物半導体はバンドギャップエネルギーが大きいため(例えば、GaNでは3.39eV)、窒化物半導体層20に入り込んだ電子は、ホールと再結合がされ難く、窒化物半導体層20内に蓄積される。窒化物半導体層20内に蓄積された電子による斥力によって、新たな電子が窒化物半導体層20内に入り込み難くなり、その結果、絶縁膜22に電子がさらに蓄積される。絶縁膜22の表面に対して酸化処理を行っていない場合では、
図5で説明したように、絶縁膜22にSi−H結合やSi原子の未結合手による欠陥が多い。このため、絶縁膜22に蓄積された電子は、これら欠陥を経由するホッピング伝導によって、絶縁膜22とEBレジスト膜46との界面付近を移動する(
図7(a)での電子移動64)。この電子移動64によって、EBレジスト膜46が感光してしまい、EBレジスト膜46に形成される開口50の形状が悪くなり、その結果、絶縁膜22に形成されるパターンの形状も悪くなってしまったと考えられる。
【0038】
一方、絶縁膜22の表面に対して酸化処理を行った場合、
図5で説明したように、絶縁膜22のSi−H結合のHがOと置換したり、Si原子の未結合手にOが結合したりし、欠陥を低減させることができる。したがって、
図7(b)のように、絶縁膜22に電子が蓄積されるのは変わらないが、絶縁膜22の表面の欠陥が低減されることで、絶縁膜22とEBレジスト膜46との界面付近を移動する電子移動64が生じ難くなる。このため、EBレジスト膜46の不要な感光を抑えることができ、その結果、EBレジスト膜46に形成される開口50の形状が良好となり、絶縁膜22に形成されるパターンも良好な形状になったものと考えられる。
【0039】
以上説明したように、実施例1によれば、窒化物半導体層20上に形成した窒化シリコンからなる絶縁膜22の表面に対して酸化処理を行った後、絶縁膜22上にEBレジスト膜46を形成し、EBレジスト膜46に対して電子ビーム露光を行う。これにより、
図7(b)で説明したように、EBレジスト膜46に対する不要な感光を抑えることができ、その結果、EBレジスト膜46に良好な形状をした開口50を形成することができる。なお、実施例1では、
図1(b)のように、ソース電極24及びドレイン電極26を形成する前に、絶縁膜22の表面に対して酸化処理を行っているが、EBレジスト膜46の形成前であれば、その他のタイミングで酸化処理を行ってもよい。例えば、
図2(a)でのソース電極24及びドレイン電極26を形成した後に、絶縁膜22の表面に対して酸化処理を行ってもよい。
【0040】
EBレジスト膜46に形成される開口50の形状が良好となることで、
図2(c)のように、開口50から絶縁膜22に対してエッチング処理を行うことで、絶縁膜22に形成されるパターンを良好な形状とすることができる。例えば、寸法制御性の良好なパターンを形成することができる。
【0041】
窒化物半導体を用いたHEMTでは、上述したように、絶縁膜22の表面に対して酸化処理を行わないと、EBレジスト膜46に形成される開口50の形状が悪くなってしまう。しかしながら、砒化ガリウム(GaAs)系半導体を用いたHEMTでは、このようなことが起こらない。この理由を
図8を用いて説明する。
図8は、GaAs系半導体を用いたHEMTの場合での電子ビーム露光の感光状態を示す断面図である。なお、図の明瞭化のためにハッチは省略している。
図8のように、GaAsからなる基板10上に、GaAsからなるバッファ層12、GaAsからなる電子走行層14、砒化アルミニウムガリウム(AlGaAs)からなる電子供給層16、GaAsからなるキャップ層18が形成されている。キャップ層18上に、SiNからなる絶縁膜22が形成されている。絶縁膜22上に、EBレジスト膜46と帯電防止膜48とが順に形成され、このEBレジスト膜46に対して電子ビーム露光が行われる。
【0042】
GaAs系半導体では、その結晶性から、後方散乱電子62の散乱角度が大きいという特徴がある。このため、絶縁膜22の狭い領域に電子が蓄積されるということが起こり難い。また、GaAs系半導体のバンドギャップエネルギーは窒化物半導体に比べて小さいため(例えば、GaAsでは1.43eV)、GaAs系半導体層に入り込んだ電子は、ホールと再結合が行われ易い。したがって、新たな電子がGaAs系半導体層内に順次入り込むことが可能となり、これによっても、絶縁膜22に電子が蓄積されるということは起こり難い。このように、GaAs系半導体を用いたHEMTでは、絶縁膜22に電子が蓄積されることが起こり難いため、絶縁膜22に欠陥があったとしても、絶縁膜22とEBレジスト膜46との界面付近を電子が移動することが生じ難い。したがって、EBレジスト膜46に形成される開口50の形状が悪くなることが起こり難い。
【0043】
このように、EBレジスト膜46と絶縁膜22との界面付近を電子移動64が生じて、EBレジスト膜46に不要な感光が生じるのは、窒化物半導体のようなワイドバンドギャップ材料を用いた場合に起こるものと考えられる。したがって、実施例1では、電子ビーム露光を行うにあたり、窒化物半導体層20上に形成された絶縁膜22の表面に対して酸化処理を行う場合を例に示したが、炭化シリコン層上に絶縁膜が形成された場合でも、絶縁膜の表面に対して酸化処理を行うことが望ましい。
【0044】
実施例1では、絶縁膜22の表面に対して酸化処理を行う場合を例に示したが、窒化処理を行うことで、Si−H結合のHをNと置換させたり、Si原子の未結合手にNを結合させたりして、欠陥を低減させる場合でもよい。窒化処理は、例えば絶縁膜22の表面を窒素プラズマに曝すことによって行うことができる。窒素プラズマに曝すことによる窒化処理は、以下の条件によって行うことができる。
窒素濃度:100%
圧力 :0.03Torr〜5Torr
RF電力:50W〜800W
温度 :25℃〜350℃
処理時間:1分〜10分
なお、圧力は、0.5torr〜3torrが好ましく、1torr〜2torrがより好ましい。RF電力は、200W〜600Wが好ましく、300W〜500Wがより好ましい。温度は、25℃〜200℃が好ましく、25℃〜100℃がより好ましい。処理時間は、2分〜8分が好ましく、3分〜5分がより好ましい。
【0045】
絶縁膜22は、電流コラプスを抑える観点から、Siリッチの窒化シリコンを含むことが好ましい。しかしながら、Siリッチの窒化シリコンでは、Si原子の未結合手等が多いため、電子移動64が生じ易い。このような場合に、絶縁膜22の表面に対して酸化処理を行うことで、
図4のように、絶縁膜22の表面部分を欠陥が低減された領域22aとでき、それ以外の部分をSiリッチな領域22bとできる。これにより、絶縁膜22とEBレジスト膜46との界面付近での電子移動64を抑制できると共に、電流コラプスを抑制することができる。欠陥が低減された領域22aの厚さは、2nm以上の場合が好ましく、3nm以上の場合がより好ましく、4nm以上の場合がさらに好ましい。なお、Siリッチな領域22bで電子移動が生じることも考えられるが、仮に領域22bを電子が移動したとしても、EBレジスト膜46は感光され難いため問題ない。
【0046】
図2(c)から
図3(b)のように、電子ビーム露光によってEBレジスト膜46に形成した開口50から絶縁膜22に対してエッチング処理を行い、エッチング処理で形成した開口にゲート電極28を形成している。このように、実施例1では、ゲート電極28の形成に電子ビーム露光を用いた場合を例に示しているが、ソース電極24及びドレイン電極26のようなオーミック電極の形成に電子ビーム露光を用いてもよい。即ち、電子ビーム露光によってEBレジスト膜に形成した開口から絶縁膜に対してエッチング処理を行い、エッチング処理で形成した開口にオーミック電極を形成する場合でもよい。
【0047】
実施例1では、電子走行層14と電子走行層14よりもバンドギャップの大きい電子供給層16とを含む窒化物半導体層20を有するHEMTの場合を例に示したが、これに限られる訳ではない。本発明は、窒化物半導体層又は炭化シリコン層上に絶縁膜が形成された構造で、絶縁膜上に形成したEBレジスト膜に対して電子ビーム露光を行う半導体装置の製造方法に適用することができる。なお、窒化物半導体とは、III−V族窒化物半導体のことをいい、GaN及びAlGaNの他にも、InN、InAlN、InGaN、及びInAlGaN等が挙げられる。また、絶縁膜は、窒化シリコン(SiN)からなる場合の他にも、酸化シリコン(SiO
2)又は酸窒化シリコン(SiON)からなる場合でもよい。これらの場合でも、
図7(a)で説明したような、電子移動64が生じ易いためである。なお、絶縁膜は、化学量論的な組成であってもよいし、そうでない場合であってもよい。
【0048】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。