(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
その外面がトレッド面をなすトレッドと、それぞれが上記トレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォールと、それぞれが上記サイドウォールの端から半径方向略内向きに延びる一対のクリンチと、それぞれが上記クリンチよりも軸方向内側に位置する一対のビードと、上記トレッド及び上記サイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスと、それぞれが上記サイドウォールよりも軸方向内側に位置する一対の荷重支持層とを備えており、
上記カーカスがカーカスプライを備えており、
上記ビードが、リング状のコアと、半径方向外向きに先細りな第一エイペックス及び第二エイペックスとを備えており、
上記カーカスプライが上記コアの周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返されており、
この折り返しにより、上記カーカスプライには主部と折り返し部とが形成されており、
上記第一エイペックスが上記主部と上記折り返し部との間に位置しており、
上記第二エイペックスが上記折り返し部の軸方向外側に位置しており、
ビードベースラインからこのタイヤが軸方向最大幅を示す外面上の位置までの半径方向高さが基準高さHWとされたとき、
上記ビードベースラインから上記第二エイペックスの外端までの半径方向高さHSの上記基準高さHWに対する比が0.8以上1.3以下であり、
上記ビードベースラインから上記第一エイペックスの外端までの半径方向高さHBの上記基準高さHWに対する比が0.2以上0.6以下であり、
それぞれが上記折り返し部よりも軸方向外側に位置する一対のフィラーをさらに備えており、
上記第二エイペックスが内層とこの内層よりも軸方向外側に位置する外層とを備えており、
半径方向において上記外層の外端が上記内層の外端よりも外側に位置しており、
上記フィラーが上記内層と上記外層との間に位置しておりこの外層に沿って半径方向に延在しており、
半径方向において上記フィラーの外端が上記外層の外端よりも内側に位置しており、
上記外層の外端から上記フィラーの外端までの半径方向距離が5.0mm以上10.0mm以下である、空気入りタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0016】
図1には、空気入りタイヤ2が示されている。
図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。
図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表わす。このタイヤ2の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。
図1において、実線BBLはビードベースラインを表している。このビードベースラインは、タイヤ2が装着されるリム(図示されず)のリム径(JATMA参照)を規定する線である。このビードベースラインは、軸方向に延びる。符号TCは、このタイヤ2の赤道上の点を表している。両矢印Hは、ビードベースラインからこの赤道上の点TCまでの半径方向高さを表している。この高さHは、このタイヤ2の断面高さである。符号PWは、このタイヤ2が軸方向最大幅を示す、このタイヤ2の外面上の位置を表している。本願では、この位置PWは基準位置とも称される。両矢印HWは、ビードベースラインからこの基準位置PWまでの半径方向高さを表している。本願では、この高さHWは基準高さとも称される。
【0017】
このタイヤ2は、トレッド4、ウィング6、サイドウォール8、クリンチ10、ビード12、カーカス14、荷重支持層16、ベルト18、バンド20、エッジバンド22、インナーライナー24及びチェーファー26を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、乗用車に装着される
【0018】
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、路面と接触するトレッド面28を形成する。図示されていないが、このタイヤ2のトレッド面28には、溝が刻まれている。この溝により、トレッドパターンが形成されている。トレッド4は、ベース層30とキャップ層32とを有している。キャップ層32は、ベース層30の半径方向外側に位置している。キャップ層32は、ベース層30に積層されている。ベース層30は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。ベース層30の典型的な基材ゴムは、天然ゴムである。キャップ層32は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。
【0019】
ウィング6は、トレッド4とサイドウォール8との間に位置している。ウィング6は、トレッド4及びサイドウォール8のそれぞれと接合している。ウィング6は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。
【0020】
サイドウォール8は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール8の半径方向外端は、トレッド4及びウィング6と接合されている。このサイドウォール8の半径方向内端は、クリンチ10と接合されている。このサイドウォール8は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。サイドウォール8は、軸方向においてカーカス14よりも外側に位置している。サイドウォール8は、カーカス14の損傷を防止する。
【0021】
損傷防止の観点から、サイドウォール8の硬さは50以上が好ましく、55以上がより好ましい。通常状態の乗り心地性の観点から、硬さは70以下が好ましく、65以下がより好ましい。本願において、硬さは「JIS K6253」の規定に準じ、タイプAのデュロメータによって測定される。
図1に示された断面にこのデュロメータが押し付けられて、硬さが測定される。測定は、23℃の温度下でなされる。
【0022】
クリンチ10は、サイドウォール8の端から半径方向略内向きに延びている。クリンチ10は、軸方向において、ビード12及びカーカス14よりも外側に位置している。クリンチ10は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。クリンチ10は、リムのフランジと当接する。
【0023】
耐摩耗性の観点から、クリンチ10の硬さは60以上が好ましく、65以上がより好ましい。通常状態の乗り心地性の観点から、硬さは90以下が好ましく、80以下がより好ましい。このクリンチ10の硬さは、前述のサイドウォール8のそれと同様にして測定される。
【0024】
ビード12は、クリンチ10よりも軸方向内側に位置している。ビード12は、コア34、第一エイペックス36及び第二エイペックス38を備えている。コア34はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。第一エイペックス36は、コア34から半径方向外向きに延びている。第一エイペックス36は、半径方向外向きに先細りである。第一エイペックス36は、高硬度な架橋ゴムからなる。第二エイペックス38は、第一エイペックス36よりも軸方向外側に位置している。第二エイペックス38は、半径方向において、内向きに先細りであり外向きにも先細りである。第二エイペックス38の内端40は、コア34の近傍に位置している。第二エイペックス38の外端42は、第一エイペックス36の外端44よりも半径方向外側に位置している。第二エイペックス38は、高硬度な架橋ゴムからなる。このタイヤ2では、この第二エイペックス38の架橋ゴムは第一エイペックス36の架橋ゴムと同等である。この第二エイペックス38が、第一エイペックス36の架橋ゴムとは異なる架橋ゴムから構成されてもよい。
【0025】
このタイヤ2では、第一エイペックス36の硬さは75以上100以下が好ましい。この硬さが75以上に設定されることにより、この第一エイペックス36がタイヤ2の剛性に効果的に寄与する。このタイヤ2は、操縦安定性に優れる。さらにパンクによってこのタイヤ2の内圧が低下した場合には、この第一エイペックス36が車重の支持に効果的に寄与しうる。この観点から、この硬さは80以上がより好ましい。この硬さが100以下に設定されることにより、第一エイペックス36によるサイドウォール8の部分の撓みへの影響が抑えられる。このタイヤ2では、乗り心地が適切に維持される。この観点から、この硬さは95以下がより好ましい。この第一エイペックス36の硬さは、前述のサイドウォール8のそれと同様にして測定される。
【0026】
このタイヤ2では、第二エイペックス38の硬さは75以上100以下が好ましい。この硬さが75以上に設定されることにより、この第二エイペックス38がタイヤ2の剛性に効果的に寄与する。このタイヤ2は、操縦安定性に優れる。さらにパンクによってこのタイヤ2の内圧が低下した場合には、この第二エイペックス38が車重の支持に効果的に寄与しうる。この観点から、この硬さは80以上がより好ましい。この硬さが100以下に設定されることにより、第二エイペックス38によるサイドウォール8の部分の撓みへの影響が抑えられる。このタイヤ2では、乗り心地が適切に維持される。この観点から、この硬さは95以下がより好ましい。この第二エイペックス38の硬さは、前述のサイドウォール8のそれと同様にして測定される。
【0027】
カーカス14は、カーカスプライ46からなる。カーカスプライ46は、両側のビード12の間に架け渡されている。カーカスプライ46は、トレッド4及びサイドウォール8の内側に沿っている。カーカスプライ46は、コア34の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ46には、主部48と折り返し部50とが形成されている。折り返し部50の端52は、トレッド4の近傍にまで至っている。詳細には、折り返し部50の端52はベルト18の直下にまで至っている。換言すれば、折り返し部50はベルト18とオーバーラップしている。このカーカス14は、いわゆる「超ハイターンアップ構造」を有する。超ハイターンアップ構造を有するカーカス14は、パンク状態におけるタイヤ2の耐久性に寄与する。このカーカス14は、パンク状態での耐久性に寄与する。
【0028】
図示されていないが、カーカスプライ46は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、75°から90°である。換言すれば、このカーカス14はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0029】
荷重支持層16は、サイドウォール8よりも軸方向内側に位置している。この支持層16は、カーカス14よりも軸方向内側に位置している。この支持層16は、カーカス14とインナーライナー24とに挟まれている。支持層16は、半径方向において、内向きに先細りであり外向きにも先細りである。この支持層16は、三日月に類似の形状を有する。支持層16は、高硬度な架橋ゴムからなる。タイヤ2がパンクしたとき、この支持層16が荷重を支える。この支持層16により、パンク状態であっても、タイヤ2はある程度の距離を走行しうる。このタイヤ2は、ランフラットタイヤとも称されている。このタイヤ2は、サイド補強タイプである。このタイヤ2が、
図1に示された支持層16の形状とは異なる形状を有する支持層16を備えてもよい。
【0030】
カーカス14のうち、支持層16とオーバーラップしている部分は、インナーライナー24と離れている。換言すれば、支持層16の存在により、カーカス14は湾曲させられている。パンク状態のとき、支持層16には圧縮荷重がかかり、カーカス14のうち支持層16と近接している領域には引張り荷重がかかる。支持層16はゴム塊なので、圧縮荷重に十分に耐えうる。カーカス14のコードは、引張り荷重に十分に耐えうる。支持層16とカーカス14のコードとにより、パンク状態でのタイヤ2の縦撓みが抑制される。縦撓みが抑制されたタイヤ2は、パンク状態での操縦安定性に優れる。
【0031】
パンク状態での縦撓みの抑制の観点から、支持層16の硬さは60以上が好ましく、65以上がより好ましい。通常状態の乗り心地性の観点から、硬さは90以下が好ましく、80以下がより好ましい。この支持層16の硬さは、前述のサイドウォール8のそれと同様にして測定される。
【0032】
ベルト18は、トレッド4の半径方向内側に位置している。ベルト18は、カーカス14と積層されている。ベルト18は、カーカス14を補強する。ベルト18は、内側層54及び外側層56からなる。
図1から明らかなように、軸方向において、内側層54の幅は外側層56の幅よりも若干大きい。図示されていないが、内側層54及び外側層56のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の絶対値は、通常は10°以上35°以下である。内側層54のコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層56のコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。ベルト18の軸方向幅は、タイヤ2の最大幅の0.7倍以上が好ましい。ベルト18が、3以上の層を備えてもよい。
【0033】
バンド20は、ベルト18の半径方向外側に位置している。軸方向において、バンド20の幅はベルト18の幅と同等である。図示されていないが、このバンド20は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンド20は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。このコードによりベルト18が拘束されるので、ベルト18のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0034】
エッジバンド22は、ベルト18の半径方向外側であって、かつベルト18の端の近傍に位置している。このタイヤ2では、エッジバンド22はベルト18とバンド20との間に位置している。このエッジバンド22が、バンド20とトレッド4との間に位置してもよい。図示されていないが、このエッジバンド22は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは、螺旋状に巻かれている。このエッジバンド22は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。このコードによりベルト18の端が拘束されるので、ベルト18のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0035】
このタイヤ2では、ベルト18、バンド20及びエッジバンド22は、補強層を構成している。ベルト18のみから、補強層が構成されてもよい。ベルト18及びエッジバンド22を組み合わせて、補強層が構成されてもよい。バンド20のみから、補強層が構成されてもよい。バンド20及びエッジバンド22を組み合わせて、補強層が構成されてもよい。補強層の構成は、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
【0036】
インナーライナー24は、カーカス14の内側に位置している。インナーライナー24は、タイヤ2の内面を構成している。トレッド4の半径方向内側においては、インナーライナー24はカーカス14の内面に接合されている。サイドウォール8の軸方向内側においては、インナーライナー24は荷重支持層16の内面に接合されている。インナーライナー24は、架橋ゴムからなる。インナーライナー24には、空気遮蔽性に優れたゴムが用いられている。インナーライナー24の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー24は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0037】
チェーファー26は、ビード12の近傍に位置している。タイヤ2がリムに組み込まれると、このチェーファー26がリムと当接する。この当接により、ビード12の近傍が保護される。この実施形態では、チェーファー26は布とこの布に含浸したゴムとからなる。このチェーファー26がクリンチ10と一体とされてもよい。この場合、チェーファー26の材質はクリンチ10の材質と同じとされる。
【0038】
図1に示されるように、ビード12の第一エイペックス36はカーカスプライ46の主部48とその折り返し部50との間に位置している。このビード12の第二エイペックス38は、この折り返し部50の軸方向外側に位置している。この第二エイペックス38は、クリンチ10の軸方向内側においてコア34の近傍から折り返し部50に沿って半径方向外向きに延在している。この第二エイペックス38の外端42は、基準位置PWの近傍に位置している。
【0039】
このタイヤ2では、折り返し部50のうち、第二エイペックス38とオーバーラップしている部分は、クリンチ10と離れている。換言すれば、第二エイペックス38の存在により、折り返し部50は湾曲させられている。パンク状態のとき、第二エイペックス38には圧縮荷重がかかり、折り返し部50のうち第二エイペックス38と接触している領域には引張り荷重がかかる。第二エイペックス38はゴム塊なので、圧縮荷重に十分に耐えうる。折り返し部50のコードは、引張り荷重に十分に耐えうる。このタイヤ2では、パンク状態において、折り返し部50が圧縮されることによるコードの切断が防止されている。このタイヤ2は、パンク時の耐久性(以下、ランフラット耐久性)に優れる。
【0040】
このタイヤ2では、第二エイペックス38はビード12の部分の剛性に寄与しうる。このタイヤ2では、このビード12の部分の変形が抑えられている。変形の抑制は、発熱を抑えうる。このタイヤ2のパンク状態では、発熱に伴う損傷が防止される。通常の走行状態では、タイヤ2の転がり抵抗が低減される。このタイヤ2は、ランフラット耐久性及び燃費性能に優れる。
【0041】
このタイヤ2では、第一エイペックス36の外端44の位置と、第二エイペックス38の外端42の位置とが適切に調整されている。このタイヤ2では、ビード12の部分における変形が抑制され、バットレスに撓みが集中する。このタイヤ2では、縦剛性及び転がり抵抗が効果的に低減される。本発明によれば、パンク時の耐久性を損なうことなく、縦剛性及び転がり抵抗の低減が達成されたタイヤ2が得られる。薄い支持層16を採用できるので、このタイヤ2では軽量化も達成されうる。
【0042】
図1において、両矢印HSはビードベースラインから第二エイペックス38の外端42までの半径方向高さを表している。両矢印HBは、ビードベースラインから第一エイペックス36の外端44までの半径方向高さを表している。
【0043】
このタイヤ2では、高さHSの基準高さHWに対する比は0.8以上1.3以下である。この比が0.8以上に設定されることにより、第二エイペックス38が剛性に適切に寄与しうる。このタイヤ2は、ランフラット耐久性に優れる。この観点から、この比は0.9以上が好ましく、1.0以上がより好ましく、1.1以上がさらに好ましい。この比が1.3以下に設定されることにより、第二エイペックス38による剛性への影響が抑えられる。このタイヤ2では、縦剛性及び転がり抵抗の低減が達成される。
【0044】
このタイヤ2では、高さHBの基準高さHWに対する比は0.2以上0.6以下である。この比が0.2以上に設定されることにより、第一エイペックス36が剛性に適切に寄与しうる。このタイヤ2は、ランフラット耐久性に優れる。この観点から、この比は0.3以上が好ましい。この比が0.6以下に設定されることにより、第一エイペックス36による剛性への影響が抑えられる。このタイヤ2では、縦剛性及び転がり抵抗の低減が達成される。この観点から、この比は0.5以下が好ましい。
【0045】
本発明では、タイヤ2の各部材の寸法及び角度は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。このタイヤ2が乗用車用である場合は、内圧が180kPaの状態で、寸法及び角度が測定される。本明細書において正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最高負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。後述するタイヤも、同様である。
【0046】
図2は、本発明の他の実施形態に係るタイヤ58の一部が示された断面図である。
図2において、上下方向がタイヤ58の半径方向であり、左右方向がタイヤ58の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ58の周方向である。このタイヤ58のサイド面60には、ディンプル62が設けられている。このタイヤ58は、サイド面60にディンプル62が設けられていることを除いて、
図1に示されたタイヤ2と同等の構成を有している。このタイヤ58は、トレッド64、ウィング66、サイドウォール68、クリンチ70、ビード72、カーカス74、荷重支持層76、ベルト78、バンド80、エッジバンド82、インナーライナー84及びチェーファー86を備えている。このタイヤ58のビード72は、コア88、第一エイペックス90及び第二エイペックス92を備えている。
【0047】
図3には、タイヤ58のサイド面60が示されている。この
図3に示されるように、このサイド面60には周方向に沿って並ぶ多数のディンプル62が設けられている。本発明においてサイド面60とは、タイヤ58の外面のうち軸方向から目視されうる領域を意味する。典型的には、ディンプル62は、サイドウォール68の表面に形成される。サイド面60のうち、ディンプル62以外の部分は、ランド94である。このディンプル62が、クリンチ70の表面に形成されてもよい。
【0048】
図4は、
図3のタイヤ58の一部が示された拡大正面図である。
図4において、左右方向は周方向であり、上下方向は半径方向である。
図4には、多数のディンプル62が示されている。このディンプル62の輪郭は、実質的に長方形である。
【0049】
図4において矢印L1で示されているのは、ディンプル62の周方向長さである。矢印L2で示されているのは、このディンプル62の半径方向長さである。
【0050】
このディンプル62では、周方向長さL1は、半径方向長さL2よりも長い。このディンプル62のコーナーは、丸められている。コーナーに土が詰まりにくいとの観点から、この丸めの曲率半径R1は0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上が特に好ましい。タイヤ58の軽量の観点から、曲率半径R1は3.0mm以下が好ましく、2.5mm以下が特に好ましい。なお、コーナーを丸めることなく、このディンプル62の輪郭が長方形とされてもよい。このディンプル62の輪郭が長円とされてもよい。このディンプル62の輪郭が平行四辺形とされてもよい。
【0051】
車輌の走行時、ディンプル62によって乱流が発生する。この乱流は、サイドウォール68からの放熱を促進する。半径方向長さよりも周方向長さの方が大きいディンプル62では、乱流が持続しやすい。このタイヤ58は、パンク状態であっても昇温しにくい。このタイヤ58は、パンク状態での耐久性に優れる。薄い支持層76を採用できるので、このタイヤ58は質量も低減されうる。
【0052】
乱流が持続しやすいとの観点及びタイヤ58の軽量の観点から、ディンプル62の周方向長さL1は、4mm以上が好ましく、10mm以上が特に好ましい。多数の箇所において乱流が発生するとの観点から、長さL1は55mm以下が好ましい。タイヤ58の軽量の観点から、ディンプル62の半径方向長さL2は、2mm以上が好ましく、5mm以上が特に好ましい。多数の箇所において乱流が発生するとの観点から、長さL2は35mm以下が好ましい。
【0053】
このディンプル62の輪郭は、半径方向に延びる直線に対して、対称である。このディンプル62による放熱効果は、回転方向に依存しない。
【0054】
図4には、第一列のディンプル62a及び第二列のディンプル62bが示されている。第一列のディンプル62aは、周方向に沿って並んでいる。第二列のディンプル62bは、周方向に沿って並んでいる。この実施形態では、列の数は2である。列の数が3以上とされてもよい。適切な大きさのディンプル62が形成されるとの観点から、この列の数は6以下が好ましい。
【0055】
図4から明らかなように、第一列のディンプル62aと第二列のディンプル62bとは、ジグザグに配置されている。このサイドウォール68では、乱流発生箇所が偏らない。このタイヤ58では、サイドウォール68からの放熱が促進される。
【0056】
図4において矢印L3で示されているのは、第一列に属するディンプル62aの位置と、第二列に属するディンプル62bの位置との、周方向における距離である。乱流発生箇所が偏らないとの観点から、距離L3は3.0mm以上が好ましく、7.0mm以上が特に好ましい。
【0057】
図4において矢印P1で示されているのは、ディンプル62の周方向ピッチである。長さL1が大きなディンプル62が形成されうるとの観点から、ピッチP1は5mm以上が好ましく、12mm以上が特に好ましい。多数の箇所において乱流が発生するとの観点から、ピッチP1は60mm以下が好ましい。
図4において矢印P2で示されているのは、ディンプル62の半径方向ピッチである。長さL2が大きなディンプル62が形成されうるとの観点から、ピッチP2は2mm以上が好ましく、6mm以上が特に好ましい。多数の箇所において乱流が発生するとの観点から、ピッチP2は40mm以下が好ましい。
【0058】
図4において、矢印W1で示されているのは周方向におけるランド94の幅であり、矢印W2で示されているのは半径方向におけるランド94の幅である。ランド94が摩滅しにくいとの観点から、幅W1及びW2は0.3mm以上が好ましく、1mm以上が特に好ましい。タイヤ58の軽量の観点から、幅W1及びW2は3mm以下が好ましく、2mm以下が特に好ましい。
【0059】
本発明において、「面積占有率」とは、ディンプル62の輪郭の面積の、基準面積に対する比率を意味する。基準面積は、長辺が周方向ピッチP1と同じ長さであり、短辺が半径方向ピッチP2と同じ長さである長方形の面積である。ディンプル62の列数が1である場合、長さL2に0.5mmが加算された値が、便宜的にピッチP2とみなされる。タイヤ58の軽量の観点から、面積占有率は75%以上が好ましく、79%以上が特に好ましい。軽量なタイヤ58は、燃費性能、操縦性能及び乗り心地性能に優れる。ランド94が摩滅しにくいとの観点から、面積占有率は93%以下が好ましく、92%以下が特に好ましい。
【0060】
図5は、
図4のV−V線に沿った断面図である。
図5において、左右方向は周方向であり、上下方向は軸方向である。
【0061】
このタイヤ58では、ディンプル62は側面96と底面98とを備えている。側面96は、ランド94に連続している。底面98は、側面96に連続している。この側面96と底面98とのコーナーは、丸められている。丸めにより、コーナーへ応力集中が抑制され、クラックが防止されうる。
図5において矢印R2で示されているのは、この丸めの曲率半径である。クラックの防止の観点から、曲率半径R2は0.5mm以上が好ましい。タイヤ58の軽量の観点から、曲率半径R2は2.0mm以下が好ましい。
【0062】
図5において矢印Deで示されているのは、ディンプル62の深さである。乱流が発生しやすいとの観点から、深さDeは0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上が特に好ましい。タイヤ58の軽量の観点から、深さDeは4.0mm以下が好ましく、3.0mm以下が特に好ましい。
【0063】
図2には、ディンプル62が設けられうる半径方向位置が符号AからEによって示されている。符号Aで示された位置は、バットレスの近傍である。符号Bで示された位置は、荷重支持層76の最大厚さ位置である。符号Cで示された位置は、第二エイペックス92の外端100の位置である。符号Dで示された位置は、クリンチ70の外端102の位置である。符号Eで示された位置は、第一エイペックス90の外端104の位置である。タイヤ58のサイズ、用途等に応じ、ディンプル62の位置は適宜決定される。
【0064】
このタイヤ58では、パンク時での走行時、第二エイペックス92の外端100及びクリンチ70の外端102に応力が集中する傾向にある。このタイヤ58では、ディンプル62は、その半径方向位置が第二エイペックス92の外端100の位置C及びクリンチ70の外端102の位置Dと一致するように設けられている。これにより、第二エイペックス92の外端100の近傍及びクリンチ70の外端102の近傍におけるゴム部材間の剥離が抑制される。
【0065】
このタイヤ58では、バットレスにおいて撓みが集中する。このバットレスの近傍におけるゴム部材間の剥離防止の観点から、バットレスの近傍位置Aに一致するようにディンプル62が設けられてもよい。
【0066】
パンク状態での走行時、荷重支持層76の厚さが最大となる部分では発熱量が大きい。この最大厚さ位置Bの近傍におけるゴム部材間の剥離が抑制されるとの観点から、荷重支持層76の最大厚さ位置Bに一致するように、ディンプル62が設けられてもよい。
【0067】
このタイヤ58では、パンク時での走行時、第一エイペックス90の外端104に応力が集中する傾向にある。この第一エイペックス90の外端104の位置Eにおけるゴム部材間の剥離が抑制されるとの観点から、この第一エイペックス90の外端104の位置Eに一致するように、ディンプル62が設けられてもよい。
【0068】
図6は、本発明のさらに他の実施形態に係るタイヤ106の一部が示された断面図である。
図6において、上下方向がタイヤ106の半径方向であり、左右方向がタイヤ106の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ106の周方向である。このタイヤ106では、トレッド108からウィング110を経てサイドウォール112に至る外面の輪郭以外は、
図1に示されたタイヤ2と同等の構成を有している。
【0069】
この
図6において、両矢印W/2で示されているのはタイヤ106の幅Wの半分である。幅Wは、最も軸方向外側にある点P
100が基準とされて決定される。この点P
100は、
図1に示された基準位置PWでもある。なお、タイヤ106のサイド面114に軸方向外向きに突出するリブが設けられている場合は、このリブを除いて最も軸方向外側にある点が基準とされる。なお、
図6の矢印Hはタイヤ106の断面高さを表している。
【0070】
このタイヤ106では、トレッド108からウィング110を経てサイドウォール112に至る外面の輪郭は、プロファイルとも称される。
図6において符号TCで示されているのは、プロファイルと赤道CLとの交点である。点P
100は、前述の通り、最も外側にある点である。プロファイルは点TCから点P
100に至っている。
【0071】
このタイヤ106は、CTTプロファイルを有している。CTTプロファイルでは、点TCから点P
100の間において、その曲率半径が徐々に減少する。CTTプロファイルは、典型的には、インボリュート曲線に基づいて決定される。インボリュート曲線に近似された多数の円弧から、CTTプロファイルが構成されてもよい。他の関数曲線に依拠して、CTTプロファイルが決定されてもよい。
【0072】
図6おいて、点P
60は点TCからの軸方向距離がタイヤ106の幅の半分(W/2)の60%であるプロファイル上の点を表し、点P
75は点TCからの軸方向距離がタイヤ106の幅の半分(W/2)の75%であるプロファイル上の点を表し、点P
90は点TCからの軸方向距離がタイヤ106の幅の半分(W/2)の90%であるプロファイル上の点を表す。
図6において、Y
60は点TCと点P
60との半径方向距離を表し、Y
75は点TCと点P
75との半径方向距離を表し、Y
90は点TCと点P
90との半径方向距離を表し、Y
100は点TCと点P
100との半径方向距離を表す。このCTTプロファイルは、下記数式(1)から(4)を満たす。なお、各数式において「H」は前述のタイヤ106の断面高さを表している。
0.05 < Y
60/H ≦ 0.10 (1)
0.10 < Y
75/H ≦ 0.2 (2)
0.2 < Y
90/H ≦ 0.4 (3)
0.4 < Y
100/H ≦ 0.7 (4)
このCTTプロファイルは、タイヤ106の諸性能に寄与する。
【0073】
このタイヤ106では、プロファイルが全体として丸みを帯びている。このプロファイルを備えたタイヤ106では、バットレスに撓みが集中しやすい。このプロファイルは、タイヤ106の乗り心地に寄与しうる。しかも第二エイペックス116が、ビードの部分における変形を抑制する。このタイヤ106では、パンク時の耐久性を損なうことなく、縦剛性及び転がり抵抗が効果的に低減されうる。薄い支持層118を採用できるので、このタイヤ106では質量も低減されうる。
【0074】
図7は、本発明のさらに他の実施形態に係るタイヤ120の一部が示された断面図である。
図7において、上下方向がタイヤ120の半径方向であり、左右方向がタイヤ120の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ120の周方向である。このタイヤ120は、トレッド122、ウィング124、サイドウォール126、クリンチ128、ビード130、カーカス132、荷重支持層134、ベルト136、バンド138、エッジバンド140、インナーライナー142、チェーファー144及びフィラー146を備えている。このタイヤ120では、ビード130及びフィラー146以外は、
図1に示されたタイヤ2と同等の構成を有している。
【0075】
ビード130は、コア148、第一エイペックス150及び第二エイペックス152を備えている。コア148及び第一エイペックス150は、
図1に示されたタイヤ2のそれと同等である。
【0076】
このタイヤ120では、第二エイペックス152は内層154と外層156とを備えている。内層154は、カーカス132をなすカーカスプライ158の折り返し部160よりも軸方向外側に位置している。外層156は、この内層154よりも軸方向外側に位置している。
図7に示されているように、外層156の外端162は内層154の外端164よりも半径方向外側に位置している。このタイヤ120では、この外層156の外端162から内層162の外端164までの半径方向距離は4.0mm以上12.0mm以下とされる。この外層156の外端162は、第二エイペックス152の外端でもある。このタイヤ120では、内層154の架橋ゴムは外層156のそれと同等である。内層154が、外層156の架橋ゴムとは異なる架橋ゴムで構成されてもよい。
【0077】
このタイヤ120では、内層154の硬さは75以上100以下が好ましい。この硬さが75以上に設定されることにより、この内層154がタイヤ120の剛性に効果的に寄与する。このタイヤ120は、操縦安定性に優れる。さらにパンクによってこのタイヤ120の内圧が低下した場合には、この内層154が車重の支持に効果的に寄与しうる。この観点から、この硬さは80以上がより好ましい。この硬さが100以下に設定されることにより、内層154によるサイドウォール126の部分の撓みへの影響が抑えられる。このタイヤ120では、乗り心地が適切に維持される。この観点から、この硬さは95以下がより好ましい。この内層154の硬さは、
図1に示されたタイヤ2のサイドウォール8のそれと同様にして測定される。
【0078】
このタイヤ120では、外層156の硬さは75以上100以下が好ましい。この硬さが75以上に設定されることにより、この外層156がタイヤ120の剛性に効果的に寄与する。このタイヤ120は、操縦安定性に優れる。さらにパンクによってこのタイヤ120の内圧が低下した場合には、この外層156が車重の支持に効果的に寄与しうる。この観点から、この硬さは80以上がより好ましい。この硬さが100以下に設定されることにより、外層156によるサイドウォール126の部分の撓みへの影響が抑えられる。このタイヤ120では、乗り心地が適切に維持される。この観点から、この硬さは95以下がより好ましい。この外層156の硬さは、前述の内層154の硬さと同様、
図1に示されたタイヤ2のサイドウォール8のそれと同様にして測定される。
【0079】
フィラー146は、折り返し部160よりも軸方向外側に位置している。フィラー146の内端166は、コア148の近傍に位置している。詳細には、フィラー146の内端166はコア148の外端168よりも半径方向外側に位置している。成形容易の観点から、このフィラー146の内端166とコア148の外端168との半径方向距離は3mm以上7mm以下である。好ましくは、この距離は5mmである。
【0080】
図示されていないが、フィラー146は並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、半径方向に対して傾斜している。このコードが半径方向に対してなす角度(以下、傾斜角度)の絶対値は、通常は10°以上60°以下である。このタイヤ120では、コードは有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。このコードに炭素繊維からなるコードが用いられてもよいし、ガラス繊維からなるコードが用いられてもよい。このコードに、材質がスチールとされたコードが用いられてもよい。
【0081】
このタイヤ120では、フィラー146は内層154と外層156との間に位置している。フィラー146は、コア148の近傍から外層156に沿って半径方向外向きに延在している。このフィラー146の外端170は、内層154の外端164よりも半径方向外側に位置している。
【0082】
このタイヤ120では、フィラー146は横剛性に寄与しうる。詳細には、折り返し部160の軸方向外側に第二エイペックス152を設けたことで低下した横剛性を、このフィラー146は補う。このタイヤ120では、縦剛性を適切に維持しつつ、横剛性の向上が達成されうる。このタイヤ120は、乗り心地だけでなく操縦安定性にも優れる。
【0083】
前述したように、フィラー146は並列された多数のコードを含む。横剛性への寄与の観点から、このフィラー146に含まれるコードの密度は25エンズ/5cm以上が好ましく、45エンズ/5cm以下が好ましい。コードの密度は、フィラー146におけるコードの長手方向に垂直な断面において、このフィラー146の5cm幅あたりに存在するコードの断面の数(エンズ)が計測されることにより得られる。
【0084】
このタイヤ120では、フィラー146の外端170は外層156の外端162よりも半径方向内側に位置している。フィラー146の外端170は、外層156に覆われている。これにより、外層156の外端162、言い換えれば、第二エイペックス152の外端への歪みの集中が抑えられている。このタイヤ120は、パンク時の耐久性に優れる。
【0085】
このタイヤ120では、フィラー146の外端170は折り返し部160に積層されている。このフィラー146の半径方向内側部分において、第二エイペックス152の内層154は、折り返し部160とこのフィラー146との間に位置している。この内層154は、パンク時において、折り返し部160とフィラー146とが直接接触することを防止する。フィラー146の折り返し部160からの剥離が抑えられるので、このタイヤ120はパンク時の耐久性に優れる。
【0086】
図7において、両矢印HDは外層156の外端162からフィラー146の外端170までの半径方向距離を表している。
【0087】
このタイヤ120では、距離HDは5.0mm以上10.0mm以下が好ましい。この距離HDが5.0mm以上に設定されることにより、第二エイペックス152の外端42への歪みの集中が効果的に抑えられる。この観点から、この距離HDは6.0mm以上がより好ましい。この距離HDが10.0mm以下に設定されることにより、フィラー146が横剛性に効果的に寄与しうる。この観点から、この距離HDは9.0mm以下がより好ましい。
【実施例】
【0088】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0089】
[実験1]
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた実施例1の空気入りタイヤ(ランフラットタイヤ)を得た。このタイヤのサイズは、「225/60R18」とされた。ビードベースラインから第二エイペックスの外端までの半径方向高さHSの基準高さHWに対する比(HS/HW)は、1.1とされた。このビードベースラインから第一エイペックスの外端までの半径方向高さHBの基準高さHWに対する比(HB/HW)は、0.4とされた。
【0090】
[実施例2−5及び比較例1−2]
比(HS/HW)を下記の表1に示された通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2−5及び比較例1−2のタイヤを得た。
【0091】
[実施例6−7及び比較例4−5]
比(HB/HW)を下記の表2に示された通りとした他は実施例1と同様にして、実施例6−7及び比較例4−5のタイヤを得た。
【0092】
[比較例3]
比較例3は、従来のランフラットタイヤである。この比較例3には、第二エイペックスは設けられていない。
【0093】
[実施例8]
図2に示された基本構成を備え、下記の表2に示された仕様を備えた実施例8の空気入りタイヤ(ランフラットタイヤ)を得た。このタイヤのサイズは、「225/60R18」とされた。この実施例8では、サイド面にディンプルが設けられている以外は実施例1のタイヤと同等の構成を有している。
【0094】
この実施例8では、ディンプルの列数は2とされた。第一列のディンプルの半径方向位置は、クリンチの外端位置Dと一致する。第二列のディンプルの半径方向位置は、第二エイペックスの外端位置Cと一致する。その他の仕様は、以下の通りである。
ディンプルの周方向長さL1=16.0mm
ディンプルの半径方向長さL2=8.0mm
ディンプルの周方向ピッチP1=17.0mm
ディンプルの半径方向ピッチP2=8.5mm
ディンプルの深さDe=2.0mm
ディンプルのコーナーの曲率半径R1=3.0mm
面積占有率=83%
【0095】
[縦剛性の評価]
下記の条件にて、タイヤの縦バネ定数を測定した。
使用リムのサイズ:6.5J
内圧:230kPa
荷重:5.0kN
この結果が、実施例1の縦バネ定数を100とした指数値で、下記の表1及び表2に示されている。数値が低いほど、縦剛性が小さく、乗り心地に優れることを表す。
【0096】
[転がり抵抗]
転がり抵抗試験機を用い、下記の測定条件で転がり抵抗を測定した。
使用リム:6.5J(アルミニウム合金製)
内圧:230kPa
荷重:5.0kN
速度:80km/h
この結果が、実施例1の転がり抵抗を100とした指数値で、下記の表1及び表2に示されている。数値が低いほど転がり抵抗が小さいことを表す。
【0097】
[質量]
タイヤの質量を計測した。この結果が、実施例1の質量を100とした指数値で、下記の表1及び表2に示されている。数値が低いほど質量が小さいことを表す。
【0098】
[耐久性(パンク時)]
タイヤを正規リム(サイズ=6.5J)に組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を230kPaとした。このタイヤをドラム式走行試験機に装着した。装着後、JATMAにて規定される最大負荷荷重の65%に相当する縦荷重をタイヤに負荷した。このタイヤの内圧を常圧としてパンク状態を再現し、このタイヤを80km/hの速度で、半径が1.7mであるドラムの上を走行させた。タイヤが破壊するまでの走行距離を、測定した。この結果が、実施例1の走行距離を100とした指数値で下記の表1及び表2に示されている。数値が大きいほど、好ましい、つまり、ランフラット耐久性に優れる。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
[実験2]
[実施例9]
図6に示された基本構成を備え、下記の表3に示された仕様を備えた実施例9の空気入りタイヤ(ランフラットタイヤ)を得た。このタイヤのサイズは、「225/60R18」とされた。この実施例9では、CTTプロファイルが採用されている以外は実施例4のタイヤと同等の構成を有している。このプロファイルの仕様は、下記の通りである。
Y
60/H=0.06
Y
75/H=0.12
Y
90/H=0.22
Y
100/H=0.41
【0102】
[参考例2]
CTTプロファイルを採用しなかった他は実施例9と同様にして、参考例2のタイヤを得た。この参考例2は、表1の実施例4と同等の構成を有している。この参考例2のプロファイルは、ノーマルタイプである。このプロファイルの仕様は、下記の通りである。
Y
60/H=0.03
Y
75/H=0.09
Y
90/H=0.24
Y
100/H=0.47
【0103】
[参考例1]
参考例1は、従来のランフラットタイヤである。この参考例1のプロファイルは、参考例2と同様、ノーマルタイプである。この参考例1には、第二エイペックスは設けられていない。この参考例1は、表2の比較例3と同等の構成を有している。
【0104】
[縦剛性の評価]
実験1と同様にして、タイヤの縦バネ定数を測定した。この結果が、参考例1の縦バネ定数を100とした指数値で、下記の表3に示されている。数値が低いほど、縦剛性が小さく、乗り心地に優れることを表す。
【0105】
[転がり抵抗]
実験1と同様にして、転がり抵抗を測定した。この結果が、参考例1の転がり抵抗を100とした指数値で、下記の表3に示されている。数値が低いほど転がり抵抗が小さいことを表す。
【0106】
[質量]
実験1と同様にして、タイヤの質量を計測した。この結果が、参考例1の質量を100とした指数値で、下記の表3に示されている。数値が低いほど質量が小さいことを表す。
【0107】
[耐久性(パンク時)]
実験1と同様にして、ランフラット耐久性を評価した。この結果が、参考例1の走行距離を100とした指数値で下記の表3に示されている。数値が大きいほど、好ましい、つまり、ランフラット耐久性に優れる。
【0108】
【表3】
【0109】
[実験3]
[実施例10]
図7に示された基本構成を備え、下記の表4に示された実施例10の空気入りタイヤ(ランフラットタイヤ)を得た。このタイヤのサイズは、「225/60R18」とされた。この実施例10では、第二エイペックスを内層及び外層で構成し、この内層と外層との間に位置し、この外層に沿って半径方向に延在するフィラーを設けた以外は、実施例4のタイヤと同等の構成を有している。フィラーには、ナイロン繊維からなるコードが用いられた。このコードの構成は、900dtex/3とされた。コードの密度は、42エンズ/5cmとされた。
【0110】
この実施例10では、半径方向においてフィラーの外端は外層の外端よりも内側に配置された。外層の外端からフィラーの外端までの半径方向距離HDは、8.0mmとされた。
【0111】
[実施例11−12及び参考例5−6]
距離HDを下記の表4の通りとした他は実施例10と同様にして、実施例11−12及び参考例5−6のタイヤを得た。
【0112】
[参考例4]
フィラーを採用しなかった他は実施例10と同様にして、参考例4のタイヤを得た。この参考例4は、表1の実施例4と同等の構成を有している。
【0113】
[参考例5]
参考例5は、従来のランフラットタイヤである。この参考例5には、フィラーは設けられていない。この参考例5は、表2の比較例3と同等の構成を有している。
【0114】
[縦剛性及び横剛性の評価]
下記の条件にて、タイヤの縦バネ定数及び横バネ定数を測定した。
使用リムのサイズ:6.5J
内圧:230kPa
荷重:5.0kN
この結果が、参考例3の縦バネ定数及び横バネ定数を100とした指数値で、下記の表4に示されている。縦剛性に関しては、数値が低いほど、縦剛性が小さく、乗り心地に優れることを表す。横剛性に関しては、数値が高いほど、横剛性が大きく、操縦安定性に優れることを表す。
【0115】
[転がり抵抗]
実験1と同様にして、転がり抵抗を測定した。この結果が、参考例3の転がり抵抗を100とした指数値で、下記の表4に示されている。数値が低いほど転がり抵抗が小さいことを表す。
【0116】
[質量]
実験1と同様にして、タイヤの質量を計測した。この結果が、参考例3の質量を100とした指数値で、下記の表4に示されている。数値が低いほど質量が小さいことを表す。
【0117】
[耐久性(パンク時)]
実験1と同様にして、ランフラット耐久性を評価した。この結果が、参考例3の走行距離を100とした指数値で下記の表4に示されている。数値が大きいほど、好ましい、つまり、ランフラット耐久性に優れる。
【0118】
【表4】
【0119】
表1−4に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。