特許第6241921号(P6241921)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241921
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】雪崩予防柵設置方法
(51)【国際特許分類】
   E01F 7/04 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
   E01F7/04
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-206475(P2013-206475)
(22)【出願日】2013年10月1日
(65)【公開番号】特開2015-68156(P2015-68156A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】391009291
【氏名又は名称】弘和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】特許業務法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野 口 明
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭42−011250(JP,B1)
【文献】 特開2007−303274(JP,A)
【文献】 特開2003−041518(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01921210(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雪崩を予防するべき法面(1)の上下方向の複数段に複数の雪崩予防柵(10)を設置し、
前記雪崩予防柵(10)の各々は杭部材(11)及び直線状に延在する複数の横桟部材(12)を備え、
直線状に延在する複数の横桟部材(12)を備えた前記雪崩予防柵(10)を水平方向に対して傾斜して配置し、
法面(1)上方の直線状に延在する複数の横桟部材(12)を備えた前記雪崩予防柵(10)の延長線(Lc1、Lc2)上に法面下方の雪崩予防柵(10)を上方の雪崩予防柵(10)と逆方向に傾斜して配置し、前記法面(1)下方の雪崩予防柵(10)は法面(1)上方の直線状に延在する複数の横桟部材(12)を備えた前記雪崩予防柵(10)傾斜した延長線(Lc)に対して所定の角度で傾斜して配置ることを特徴とする雪崩予防柵設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雪崩を防止するための技術に関する。より詳細には、本発明は雪崩予防柵を設置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
雪崩を防止するために、雪崩予防柵が従来から種々提案されている。
図4及び図5は、従来の雪崩予防柵の一例を示している。図4図5において、符号1は法面を示し、符号Rは道路(路面)を示している。
図4図5で例示する従来の雪崩予防柵10は、3本の杭部材11と複数の横桟部材12を備えている。
法面1の上下方向(斜面)に沿った方向については所定のピッチP(図5参照)にて、また、横方向(水平方向)については隣接する雪崩予防柵10間に隙間W(図4参照)を隔てて、複数の雪崩予防柵10が配置されている。
【0003】
しかし、図4図5で示す従来の雪崩予防柵においては、地山(法面)1上の積雪20が雪崩予防柵10で分断されてしまう(図5のL2の領域)。そのため、雪崩予防柵10を設けない場合(積雪が一定の深さで地山1を被覆している:図示せず)に比較して、積雪20が地山(法面)1に接触する面積(接地面積:図5の符号L1で示す領域の面積)が減少する。
また、積雪20と地山1の摩擦力が低下すると、積雪20を支持する力が低下し、雪崩が発生する可能性が高くなってしまう。
【0004】
また、図4図5で従来の雪崩予防柵においては、短時間で大量の新雪が降った場合には、図6で示すように、乾雪表層雪崩が雪崩予防柵10の横桟部材12間をすり抜けて下方に流下してしまう(乾雪表層雪崩のすり抜け)。そして、雪崩予防柵10の下方の領域に堆積した積雪20に覆い被さり、当該領域における雪の崩落を惹起して、最下段柵下からの全層雪崩を誘発する可能性がある。
乾雪表層雪崩のすり抜けを防止するため、図7で示すように、雪崩予防柵10に鋼製メッシュ13を張設する対策が採られている。
【0005】
しかし、網目の細かいメッシュ13を張設すれば、当該メッシュが小規模なスラフ(点発生表層雪崩)を全て細くしてしまう為、短時間で雪が溜まり、雪崩予防柵10の堆雪容量をオーバーしてしまう、という問題が存在する。
また、最下段柵下からの全層雪崩という問題については、人力や重機による雪の除去を行って対処しているのが現状である。
【0006】
さらに、例えば図5で示すように、雪崩予防柵10の上部には庇状の雪塊(いわゆる「巻き垂れ」)21が形成されてしまう。当該庇状の雪塊(いわゆる「巻き垂れ」)21が崩れ落ちると、雪崩を惹起する恐れがある。係る巻き垂れ21は、道路維持管理の現場では、管理者の負担となっている。そして、雪崩予防柵10の高さ寸法が必要以上に高いことが、巻き垂れ21の発達を促進している可能性がある。
従来の雪崩予防柵10は、係る巻き垂れ21の形成を抑制することは開示されておらず、巻き垂れ21が崩れ落ちて雪崩を惹起することを抑制することも開示していない。
【0007】
さらに、図5で示す様に従来の雪崩予防柵10では地山(法面)1上の積雪20を分断してしまうので、雪が滑り落ちて地表が露出した領域が発生する(図5において符号L2で示す領域)。
従来の雪崩予防柵10が庇の様に作用して雪が積もらず、地表が露出した領域L2においては、積雪による保温効果が喪失するので、当該領域L2における凍上(地面内部が凍り、地表面が盛り上がる現象)という問題を生じる場合がある。
【0008】
その他の従来技術としては、例えば、雪崩予防柵の上方にグライド抑止柵を設置して、雪崩予防柵が負荷する積雪の荷重を軽減する技術が提案されている(特許文献1参照)。
しかし、係る従来技術(特許文献1)においても、積雪量が一定の限界を超えてしまうと、堆雪容量をオーバーして雪崩予防柵を越えて雪崩が発生してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013−104214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、積雪の接地面積を一定に維持することが出来て、積雪が堆雪容量をオーバーしてしまう事態を未然に防止することが出来る雪崩予防柵設置方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の雪崩予防柵設置方法は、雪崩を予防するべき法面(1)の上下方向の複数段に複数の雪崩予防柵(10)を設置し、
前記雪崩予防柵(10)の各々は杭部材(11)及び直線状に延在する複数の横桟部材(12)を備え、
直線状に延在する複数の横桟部材(12)を備えた前記雪崩予防柵(10)を水平方向に対して傾斜して配置し、
法面(1)上方の直線状に延在する複数の横桟部材(12)を備えた前記雪崩予防柵(10)の延長線(Lc1、Lc2)上に法面下方の雪崩予防柵(10)を上方の雪崩予防柵(10)と逆方向に傾斜して配置し、前記法面(1)下方の雪崩予防柵(10)は法面(1)上方の直線状に延在する複数の横桟部材(12)を備えた前記雪崩予防柵(10)の傾斜した延長線(Lc)に対して所定の角度で傾斜して配置することを特徴としている。
ここで、前記「所定の角度」は、法面(1)の角度、設置する雪崩予防柵(10)の間隔、予想降雪量等の条件により、ケース・バイ・ケースで設定される。これ等の条件により、雪の滑り落ちる力が変化するためである。
また、前記「所定の角度」は、一定の角度に限定されるのではなく、個々の雪崩予防柵(10)で異なる場合(ランダムに変更する場合も含む)を包含する趣旨である。
【0012】
本発明において、法面(1)の最下段(道路R近傍)の雪崩予防柵(10B)を、水平に配置することが可能である。その場合、法面(1)の最下段(道路R近傍)の雪崩予防柵(10B)を除いた雪崩予防柵(10)を、水平方向(図1の矢印H方向)に対して所定の角度(傾斜角度θにて)傾斜させることになる。
或いは、水平に配置した雪崩予防柵(10B)を省略しても良い。
【発明の効果】
【0013】
上述する構成を具備する本発明によれば、法面全体に堆積した雪が均等になり、雪崩予防柵(10)下方の雪が積もり難い場所に雪を行き渡らせることが出来る。そして、雪崩予防柵(10)の傾斜により、雪崩予防柵(10)の上方で小規模な雪崩を発生し易くせしめ、堆雪量が超過することを抑止することが出来る。さらに、雪崩予防柵(10)が傾斜しているので、雪崩予防柵(10)下方の領域にも雪が移動し易く堆雪し易くなる。
本発明では雪崩予防柵(10)は水平方向(図1の矢印H方向)に対して(傾斜角度θにて)傾斜しているので、雪崩予防柵(10)の法面(1)上方に堆積している雪(20)は当該雪崩予防柵(10)により移動が阻止されることは無く、雪崩予防柵(10)に沿って斜め下方に移動する。
そのため、雪崩予防柵(10)の法面(1)上方に堆積している雪(20)は地山(法面1)に対して接地している状態が常に維持され、雪(20)が移動する速度が減少し、一部の雪が崩落して雪崩が発生する可能性が減少する。
換言すれば、法面下方(下段)の雪崩予防柵(10)は法面上方(上段)の雪崩予防柵(10)の傾斜した延長線(Lc)に対して所定の角度で配置されることにより、雪が接地している面積が増大して、雪崩が発生する可能性を減少せしめている。前記「所定の角度」が一定の角度ではなく、個々の雪崩予防柵(10)で異なる場合(ランダムに変更する場合を含む)も同様である。
【0014】
そして、雪崩予防柵(10)の法面(1)上方に堆積している雪(20)は雪崩予防柵(10)に沿って斜め下方に移動するため、雪崩予防柵(10)にメッシュ(金網)を張って乾燥した雪のすり抜け防止対策を施しても、堆積した雪(20)は斜め下方に移動するので雪崩予防柵(10)が堆積した雪の荷重を全て負荷することは無い。そのため、堆雪容量をオーバーしてしまうこともない。
さらに本発明によれば、雪(20)が接地した状態に維持されるので、雪崩予防柵(10)の下方の領域における凍上が防止される。
【0015】
ここで、地山下方(次段)の雪崩予防柵(10)は、上方の雪崩予防柵(10)の傾斜した延長線(Lc)に対して所定の角度で配置されているので、上方の雪崩予防柵(10)に沿って斜め下方に移動した雪は、下方に配置されている次段の雪崩予防柵(10)に当接して、進行方向が所定の角度で転進して、さらに下方の雪崩予防柵(10)に向って移動する。
その結果、(上方の)雪崩予防柵(10)の法面上方に堆積した雪(20)は、法面下方に向って、所定の角度を付けてジグザグに転進しながら、折曲がった経路(C)を進行する。雪崩予防柵(10)は当該折れ曲った経路(雪が進行する経路C)を遮断しないので、雪(20)はその下方の領域が常に接地した状態が維持される。
【0016】
また、雪崩予防柵(10)の法面上方に堆積した雪(20)は、法面下方の雪崩予防柵(10)に向い、雪崩予防柵で所定の角度を付けてジグザグに転進しながら折曲がって進行するので、当該雪(20)が進行する経路(C)は、崩落して雪崩が生じた場合の経路(雪が法面下方に一直線に移動する経路)に比較して長い。そして、雪崩予防柵(10)において所定の角度を付けてジグザグに転進する度に、雪の移動速度が遅くなる。
そのため本発明によれば、雪(20)が法面下方の領域(例えば道路R)に到達するのに費やす時間が長くなる。従って、積雪が法面下方の道路に乗り上げて交通を阻害するのに長時間が必要となり、その間に降雪が止み、除雪を行うことが出来れば、法面を下降する雪による交通の阻害が未然に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態を示す正面図である。
図2】本発明の実施形態を示す側面図である。
図3】本発明の実施形態の変形例を示す正面図である。
図4】従来技術における雪崩予防柵の配置を示す正面図である。
図5】従来技術における雪崩予防柵の配置を示す側面図である。
図6】従来技術において新雪が雪崩予防柵をすり抜けた場合を説明する側面図である。
図7】従来技術において新雪の雪崩予防柵にメッシュを設けた場合を説明する態様図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1及び図2において、道路Rの上方に存在する法面1には、雪崩予防柵10(10B)が法面1の上方から、符号ST1〜ST4で示す4段に分けて配置されている。
【0019】
最上段ST1から3段目ST3における雪崩予防柵10は、水平方向(図1の符号H方向:横方向)に対して、所定角度θだけ下方に傾斜させて配置されている。
ここで、所定角度θは、例えば15°〜45°の範囲が好ましい。ただし、傾斜角度θは、法面1の傾斜角度と、雪崩予防柵における雪の量(降雪量に比例)により、大きな影響を受ける。その意味で、雪崩予防柵10の水平方向に対する傾斜角度θは、15°未満となる場合もあり、45°より大きくなる場合も存在する。
ここで、雪崩予防柵10の傾斜角度θは一定の角度に限定されるものではなく、雪崩予防柵10毎に当該傾斜角度θが異なる場合(傾斜角度θがランダムに変更する場合を含む)も包含する。例えば、最上段ST1における雪崩予防柵10の傾斜角度θを45°、2段目ST2における雪崩予防柵10の傾斜角度θを30°、3段目ST3における雪崩予防柵10の傾斜角度θを20°に設定する場合もある。或いは、最上段ST1における雪崩予防柵10の傾斜角度θを20°、2段目ST2における雪崩予防柵10の傾斜角度θを30°、3段目ST3における雪崩予防柵10の傾斜角度θを45°に設定することも出来る。
そして傾斜角度θを適宜設定することにより、雪が移動する速度を調整することが可能である。
【0020】
係る所定角度θは、雪崩予防柵10に作用する雪の重量と、雪崩予防柵10の山側(上方)を移動する雪の摩擦力等を用いて算出することが可能である。
しかし、雪崩予防柵10の設置間隔、設計積雪深、法面1の傾斜角度αにより、雪崩予防柵10の傾斜角度θは変動する。
【0021】
2段目ST2の雪崩予防柵10は、最上段ST1の雪崩予防柵10の法面下方への延長線Lc1(仮想線)に対して所定の角度を為す位置に設けられている。当該「所定の角度」は、図1図2では90°となっているが、上述した傾斜角度θと同様に、雪崩予防柵10に作用する雪の重量、雪崩予防柵10の山側(上方)を移動する雪の摩擦力、雪崩予防柵10の設置間隔、設計積雪深、法面1の傾斜角度αにより、変動する。
また、当該「所定の角度」(法面上方の雪崩予防柵10の法面下方への延長線Lc1に対して法面下方の雪崩予防柵10が為す角度)は、図1図3では90°で一定であるが、雪崩予防柵10毎に当該「所定の角度」が異る様に設定する(当該「所定の角度」がランダム変更する)ことも可能である。
さらに、3段目ST3の雪崩予防柵10は、2段目ST2の雪崩予防柵10の法面下方への延長線Lc2と所定の角度を為す位置に配置されている。
ここで、法面1の水平方向(図1の符号H方向:横方向)における位置については、3段目ST1における雪崩予防柵10の配置(配列)は、最上段ST1における雪崩予防柵10の配置(配列)と同様(な配置)になる。
【0022】
図1図2で示す実施形態によれば、雪崩予防柵10を、水平方向(図1の符号H方向)に対して傾斜角度θで傾斜しているので、雪崩予防柵10の法面上方に堆積している雪20(図2参照)は、当該雪崩予防柵10により係る様にして留まる訳ではない。
雪崩予防柵10の法面上方に堆積している雪20は、雪崩予防柵10により移動が阻止されてしまうことは無く、雪崩予防柵10に沿って斜め下方に移動することが出来る。換言すれば、図示の実施形態において、水平方向(図1の符号H方向)に対して傾斜している雪崩予防柵10は、その上方の積雪20を斜め下方に移動するように案内する作用を奏する。
そのため、雪崩予防柵10は、その上方に堆積した雪20の荷重を全て負荷することは無く、堆雪容量をオーバーしてしまうことが防止される。
雪崩予防柵10にメッシュ(金網)を張設して乾いた雪のすり抜け防止対策を施して場合においても、堆積した雪20が雪崩予防柵10の斜め下方に誘導されるので、堆雪容量をオーバーしてしまうこともない。
【0023】
上述したように上方の雪崩予防柵10の延長線と所定の角度を為す様に、次段の雪崩予防柵10が位置している。図4においては、最上段ST1の延長線Lc1と所定の角度を為す様に2段目ST2の雪崩予防柵10が配置されており、2段目ST2の延長線Lc2と所定の角度を為す様に3段目ST3の雪崩予防柵10が配置されている。
そのため、上方の雪崩予防柵10に沿って斜め下方に移動した積雪20(図2参照)は、上方の雪崩予防柵10の延長線(仮想線)と所定の角度を為す様に配置されている次段の雪崩予防柵10に当接する。そして、当接した段の雪崩予防柵10において、積雪20の進行方向が所定の角度を付けてジグザグに転進して、当該次段の雪崩予防柵10の延長線(仮想線)方向へ移動する。
そして、進行方向が所定の角度を付けて転進した積雪20は、さらに斜め下方へ進行する。
【0024】
すなわち、雪崩予防柵10の法面上方に堆積した積雪20は、法面下方に向って、所定の角度を付けてジグザグに転進しながら、折曲がった経路(図1の符号C)を進行する。雪崩予防柵10は当該折れ曲った経路(雪が進行する経路C)を遮断しないので、進行する積雪20はその下方の領域が常に接地した状態が維持される。
積雪20が接地した状態に維持されるので、移動する積雪20と地山(法面)1との間に抵抗力が作用して、積雪20が移動する速度が減少する。
そして、積雪20が接地した状態に維持されるので、一部の積雪20が崩落して雪崩を起こす恐れが減少する。
【0025】
ここで、雪崩予防柵10の法面上方に堆積した積雪20が進行する経路「C」、すなわち、法面下方の雪崩予防柵10に向い、雪崩予防柵10で所定の角度をつけてジグザグに転進しながら折曲がって進行する経路「C」は、崩落して雪崩が生じた場合の経路(積雪20が法面下方に一直線に移動する経路)に比較して長い。そして、雪崩予防柵10で所定の角度だけ転進する度に移動速度が遅くなる。
そのため、図示の実施形態によれば、積雪20が法面下方(図1の下方)の領域(例えば道路R)に到達するのに費やす時間が長くなる。従って、積雪20が法面下方の道路に乗り上げて交通を阻害するのに長時間が必要となり、その間に降雪が止み、除雪を行うことが出来れば、法面1を下降する積雪による交通の阻害が未然に防止される。
所定の角度を付けてジグザグに転進して移動した積雪20が仮に道路R上に乗り上げてしまっても、進行速度が遅いため、一度に大量の雪が道路Rに乗り上げることは無く、車両の通行への影響が最小限で済み、道路Rに乗り上げた雪を除去する時間も確保することが出来る。
【0026】
ここで、図1の「D」で示す直線(法面1の上方から下方に向う直線)上には、雪崩予防柵10が存在しない。
しかし、図1において、雪が経路Cに沿って移動する様に雪崩予防柵10が設けられているので、直線「D」上に雪崩予防柵10が設けられていなくても、直線「D」に沿って雪が崩落してしまうことが防止される。
【0027】
雪崩予防柵10が少ない場合には、図1において符号「D」で示す直線のように雪崩予防柵10が存在しない領域における幅(図1における矢印H方向の幅)が広くなり過ぎて、(直線Dで示す領域において)法面1の上方から下方に向う方向に雪が崩落する恐れがある。
これに対して、雪崩予防柵10の数を多くすれば、法面1の上方から下方に向う方向について雪崩予防柵10が存在しない領域(直線Dで示す領域)の幅は小さくなり、雪の崩落の可能性は減少する。しかし、雪崩予防柵10を多く設置すると、導入コストが増加する。
雪崩予防柵10の設置間隔は、降雪量と、法面1の上方から下方に向う方向における雪の崩落防止効率に基づいて決定することが出来る。
図示の実施形態によれば、法面1の上方から下方に向う方向について雪崩予防柵10が存在しない領域(直線Dで示す領域)に、雪崩予防柵10の延長線に沿って積雪20が移動するので、直線Dで示す領域で仮に雪が崩落しても、積雪20の移動により、雪崩の発生は防止される。
【0028】
なお、法面1下方(図1の下方)における(最下段の)雪崩予防柵10Bは、水平方向(図1の符号H方向)に設置されている。道路Rに積雪20が乗り上げることを防止する必要があることによる。
【0029】
図1で示す実施形態では、全ての流れ防止柵10が傾斜しているが、図3で示すように、法面1の道路Rに最も近い領域(図3では4段目)の雪崩予防柵10Bを水平に(或いは道路Rと平行に)配置することが可能である。隣接する雪崩予防柵10B間は、間隔W(所定の間隔)を空けて配置されている。
雪崩防止柵10により上方から下方へ移動する雪が、道路R上に乗り上げてしまうことを防止するためである。
ここで、所定の間隔Wは、最上段と2段目の配置関係及び2段目と3段目の配置により、ケース・バイ・ケースで設定される。
【0030】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0031】
1・・・法面
10・・・雪崩予防柵
20・・・積雪
R・・・道路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7