(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の従来技術では、パイプを嵌め合わせる前記縦移動または横移動の煩雑なドッキング作業が必要になる。
【0007】
本発明の目的は、車椅子を、横付けした固定設置物に固定/解放自在に連結するにあたって、位置合わせ(横付け)が容易であるとともに、車椅子の位置ずれを防止することができる車椅子固定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車椅子固定装置は、車椅子を、該車椅子が横付けされる固定設置物に連結する車椅子固定装置であって、前記車椅子側に設けられる第1の係止部材と、前記固定設置物側に設けられ、前記第1の係止部材と相互に係合する第2の係止部材とを備え、前記第1の係止部材および第2の係止部材は、互いに剛性の部品から成り、前記車椅子が固定設置物に横付けされた後、何れか一方の作動変位によって、何れか他方に係合することを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、車椅子を、横付けした固定設置物に固定/解放自在に連結するにあたって、相互に係合する第1の係止部材および第2の係止部材を、それぞれ前記車椅子および固定設置物に設け、連結の際、横付けしながら係合させるのではなく、横付けの後、前記の第1の係止部材および第2の係止部材の内の何れか一方の作動変位によって何れか他方に係合させる。
【0010】
したがって、係合のための位置合わせ(横付け)が容易であるとともに、剛性の部品で第1の係止部材および第2の係止部材が構成され、それらが係合することで車椅子が固定設置物に連結されるので、車椅子の位置ずれや変形を生じ難く、使用者が移乗や立ち上がる際に片側に体重が掛かったり、斜めに体重が掛かっても、車椅子の横倒れや横滑りなどの位置ずれを防止することができ、安全性を向上することができる。
【0011】
たとえば、前記固定設置物は、使用者が車椅子から移乗する浴槽や、浴槽に設置されるバスボード、浴槽近くの壁、もしくはベッド、便器、またはトイレの壁であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の車椅子固定装置では、前記車椅子は、その背凭れ付近に、使用者が把持するグリップが形成されていることを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、背凭れの付近に、たとえば背凭れ布にくり貫いた孔の部分のパイプや、パイプの基端部などからなるグリップを設ける。このように、車椅子側に手摺(グリップ)を設置していると、使用者が移乗する際に体を支え易く、また車椅子に使用者自身の体を引き寄せることが可能になり、移乗の際の負担を軽減することができる。しかしながら、車椅子に手摺(グリップ)を設けると、転倒のリスクがある。
【0014】
そこで、前記の車椅子固定装置と併用することで、そのような転倒を防止することができる。また、車椅子を横付けする壁や、床に手摺(グリップ)を固定すると、車椅子の保管や、前記の横付けの際等に邪魔になるのに対して、そのような問題も無い。
【0015】
さらにまた、本発明の車椅子固定装置では、前記車椅子は、そのアームレストが、使用者のアームを支持する支持部および前記支持部から垂下する支柱とを備え、前記支柱が車椅子本体に取付けられた案内部材によって昇降変位自在に支持されることで使用者の側部から待避可能に構成されており、前記支柱が前記第1の係止部材となり、前記第2の係止部材は前記アームレストが待避位置に下降されることで前記支柱が嵌り込むホルダであることを特徴とする。
【0016】
上記の構成によれば、使用者が移乗などのためにアームレストを一番下の待避位置まで下げると、そのアームレストの支柱が固定設置物側のホルダに嵌り込み、前記係合が行われる。
【0017】
したがって、使用者は固定設置物に車椅子を横付けし、アームレストを下げるだけで、前記車椅子の位置ずれや変形の生じ難い係合を、簡単に行うことができる。なお、前記支柱の下端部にホルダを形成し、そのホルダが移動して、固定設置物側のピンなどに嵌り込むようにしてもよい。
【0018】
また、本発明の車椅子固定装置では、前記支持部および支柱は、側面視でT字状に形成され、前記支持部の底面には、1または複数本の係合ピンが垂下して形成されており、前記固定設置物には、前記アームレストが待避位置に下降された状態で前記係合ピンが嵌り込むピン孔が形成されていることを特徴とする。
【0019】
上記の構成によれば、アームレストがT字状に形成される場合に、該アームレストを下げた状態では、係合ピンおよびそれに対応するピン孔によって、該アームレストの回転やねじれを防止することができる。
【0020】
さらにまた、本発明の車椅子固定装置では、車椅子本体を構成する脚部が前記第1の係止部材となり、前記第2の係止部材は、前記車椅子が横付けされた後、前記脚部を側面の前後から挟み込む一対の挟持片から成ることを特徴とする。
【0021】
上記の構成によれば、車椅子本体を構成する脚部がパイプなどで形成されて、横付けされた側面からチャック可能な場合に、その脚部をチャックすることで前記係合を実現する。
【0022】
したがって、前記車椅子の位置ずれ、特に前後へのずれの生じ難い係合を行うことができる。
【0023】
また、本発明の車椅子固定装置では、前記一対の挟持片は、水平断面が略L字状に形成され、前記車椅子の横付け時に、前記脚部が先に挟み込まれる一方の挟持片は固定されており、前記脚部が後に挟み込まれる他方の挟持片は、前記略L字の一方の遊端で鉛直軸線回りに揺動自在とされており、前記略L字の他方の遊端側は、端面が前記略L字の外面側から内面側に競り上がる案内斜面に形成され、前記第2の係止部材は、前記車椅子の横付け時に、脚部によって他方の挟持片における案内斜面の押圧によって該他方の挟持片が揺動し、前記脚部が案内斜面を乗り越えて前記略L字の内側に嵌り込んだ際に前記他方の挟持片を引き戻し、前記略L字の内側に前記脚部を抱え込ませるバイアスばねをさらに備えることを特徴とする。
【0024】
上記の構成によれば、横付けされた車椅子の脚部を一対の挟持片でチャックするにあたって、前記一対の挟持片は水平断面が略L字状に形成され、前記車椅子の横付け時に、前記脚部が先に挟み込まれる一方の挟持片は固定されており、前記脚部が後に挟み込まれる他方の挟持片は、前記略L字の一方の遊端で鉛直軸線回りに揺動自在とされるとともに、他方の遊端側が、端面が前記略L字の外面側から内面側に競り上がる案内斜面に形成されている。これに対応して、前記第2の係止部材は、バイアスばねをさらに備える。そのバイアスばねは、前記車椅子の横付け時に、脚部によって他方の挟持片がその案内斜面が押圧されて揺動し、脚部が案内斜辺を乗り越えると、他方の挟持片を引き戻し、前記略L字の内側に脚部を抱え込ませる。
【0025】
したがって、介護者または使用者は、車椅子を固定設置物に横付けするだけで、固定を行うことができる。
【0026】
さらにまた、本発明の車椅子固定装置では、車椅子本体を構成する脚部には、前記第1の係止部材として、前後方向に延びる第1の筒が取付けられ、前記固定設置物には、前記第2の係止部材として、前記第1の筒を前後から挟み込み、かつ該第1の筒に連通する一対の第2の筒が取付けられるとともに、前記第1および第2の筒を貫通するロックピンを有することを特徴とする。
【0027】
上記の構成によれば、一対の第2の筒間に第1の筒が嵌り込むことで、第1の筒、したがって車椅子の前後方向への位置ずれが阻止されるとともに、該一対の第2の筒で保持されるロックピンによって第1の筒が固定されることで、該第1の筒、したがって車椅子の上下および左右方向への位置ずれも阻止される。
【0028】
したがって、特に第1の筒の上下方向への位置ずれ、すなわち車椅子の片側に体重が掛かった場合の横倒れを防止することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の車椅子固定装置は、以上のように、車椅子を、横付けした固定設置物に固定/解放自在に連結するにあたって、互いに剛性の部品から成り、相互に係合する第1の係止部材および第2の係止部材を、それぞれ前記車椅子および固定設置物に設け、連結の際、横付けしながら係合させるのではなく、横付けの後、前記の第1の係止部材および第2の係止部材の内の何れか一方の作動変位によって何れか他方に係合させる。
【0030】
それゆえ、係合のための位置合わせ(横付け)が容易であるとともに、車椅子の位置ずれや変形を生じ難く、使用者が移乗や立ち上がる際に片側に体重が掛かったり、斜めに体重が掛かっても、車椅子の横倒れや横滑りなどの位置ずれを防止することができ、安全性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(実施の形態1)
図1〜
図3は、本発明の実施の第1の形態に係る車椅子固定装置1の使用例を示す図である。
図1は車椅子2を正面から見た断面図であり、
図2は側面図であり、
図3は平面図である。この
図1〜
図3の例では、車椅子固定装置1は、浴室3における浴槽4に設置されるバスボード5に、車椅子2を横付けした状態で、固定/解放自在に連結するために使用されている。
【0033】
図4は、車椅子2を説明するための図であり、(a)は側面図であり、(b)は平面図であり、(c)は正面図である。
図4を参照して、この車椅子2は、介護用の車椅子であり、いわゆるシャワーキャリーと称され、使用者(被介護者)のシャワー入浴に使用可能で、また、入浴、用便、就寝などのために、それらを行う宅内の固定設置物、たとえば、それぞれ、バスボード、便座、ベッド間を移動可能である。そして、それらの固定設置物に該車椅子2を横付けした状態で、使用者が立ち上がったり、前記固定設置物との間で移乗したりする。
【0034】
車椅子2は、パイプなどで組上げられた車椅子本体21に、座面板22および脚乗せ板23が取付けられ、また背凭れ布24が掛け渡されるとともに、側部には左右一対のアームレスト25,26が設けられ、下部には前後にそれぞれ一対のキャスター27,28が設けられて構成されている。キャスター27,28は、鉛直軸線周りに回転(角変位)可能なホルダ271,281に、水平軸線周りに回転自在に車輪272,282が枢支されて構成されている。
【0035】
この車椅子2において、アームレスト25,26は、使用者の体格に合わせた高さ調整が可能であるとともに、上述のような使用者の移乗を可能にするために、使用者の側部から待避(格納)可能に構成されている(
図1では、浴槽4に接する左側のアームレスト25を待避(格納)させている)。そのため、アームレスト25,26は、使用者のアームを支持する支持部251,261および前記支持部251,261から垂下する支柱252,262を備え、前記支柱252,262が前記車椅子本体21に取付けられた案内部材2111,2112によって昇降変位自在に支持されるようになっている。また、前記支持部251,261の底面には、前記支柱252,262を挟んで対称に、一対の係合ピン2511,2512;2611,2612が垂下して形成される。
【0036】
前記の高さ調整は、前記支柱252,262において、鉛直方向に複数個が配列されているピン孔253,263の何れかに、案内部材2111,2112を挿通したロックレバー2121,2122の一端に設けられた係止片2141,2142が係止することで行われる。詳しくは、前記ピン孔253,263は、支柱252,262の長手方向、すなわち鉛直方向に形成される長孔254,264の下端部側において、該長孔254,264に連通して形成される。一方、前記ロックレバー2121,2122は、側面視で略L字状に形成されて、その一端から外方へ延びて、前記係止片2141,2142が形成されており、この係止片2141,2142は前記ピン孔253,263の直径線に対応した幅に形成される。そして、ロックレバー2121,2122は、前記係止片2141,2142の軸線周りに揺動自在となっており、前記係止片2141,2142が水平となるようにロックレバー2121,2122が操作されていると、該係止片2141,2142はピン孔253,263の内周面に係止してアームレスト25,26は固定され、前記係止片2141,2142が鉛直となるようにロックレバー2121,2122が操作されていると、該係止片2141,2142は長孔254,264内を遊嵌し、アームレスト25,26の昇降変位が可能となる。そのため、ロックレバー2121,2122の他端には、介護者や使用者が操作する太径の把持部2131,2132が形成されている。
【0037】
図5は、バスボード5を説明するための図であり、(a)は側面から見た断面図であり、(b)は平面図であり、(c)は正面から見た断面図である。
図1〜
図3および
図5を参照して、バスボード5は、大略的に、長方形の座板51と、前記座板51の一端511から立ち上がる固定片52と、他端512から垂下する垂下片53とを備えて構成される。
【0038】
座板51は、
図1〜
図3で示すように、浴槽4を跨ぐように、その縁部41間に掛け渡され、前記車椅子2から移乗した使用者が腰掛ける。固定片52は、その先端が円弧状の受け面521に形成されており、上述のように座板51が浴槽4を跨ぐように掛け渡されると、前記受け面521が浴室3の壁面31に取付けられた手摺32の水平ポール321に係合し、また前記座板51の一端511が浴槽4の縁部41と壁面31との隅角部に嵌り込むことで、バスボード5の位置ずれが抑えられている。以上がバスボードとして機能する部分の構成である。
【0039】
本実施の形態のバスボード5には、上記の構成に、車椅子2を連結するために、垂下片53が設けられている。垂下片53は、浴槽4の側壁42に沿って垂下し、その下端部531にはホルダ532が設けられ、上端部533付近には一対の連結ブロック534,535が設けられている。連結ブロック534,535には、鉛直方向に延びるピン孔5341,5351が形成されている。
【0040】
このように構成される車椅子2およびバスボード5において、
図1〜
図3を参照して、バスボード5が浴槽4に取付けられた状態で、介護者または使用者が、入浴のために車椅子2を浴槽4に横付けし、移乗のために、ロックレバー2121,2122を操作して、アームレスト25または26(
図1〜
図3の例では車椅子2の左側を浴槽4に横付けするので、以降、左側のアームレスト25で説明する。)を待避(格納)のために完全に下降させると、支柱252の下端部2521は案内部材2111から突出し、ホルダ532に嵌り込む。同時に、係合ピン2511,2512が、連結ブロック534,535のピン孔5341,5351にそれぞれ嵌り込む。
【0041】
したがって、介護者または使用者は、固定設置物であるバスボード5に車椅子2を横付けし、固定/解放自在に連結するにあたって、横付けしながら係合させるのではなく、横付けの後、アームレスト25を下げると言う作動変位を行うだけで、第1の係止部材となる支柱252の下端部2521を第2の係止部材となるホルダ532に簡単に係合させ、固定を行うことができる。また、車椅子2の解放も、アームレスト25を上げると言う作動変位を行うだけで、簡単に行うことができる。これらの支柱252およびホルダ532は、本発明の実施の一形態に係る車椅子固定装置1を構成する。
【0042】
そして、車椅子2側に設けられて第1の係止部材となる支柱252は、剛性の金属角筒などから成る。また、バスボード5の座板51、固定片52および垂下片53は、剛性のプラスチックの成型品などから成り、その成型品に、第2の係止部材となるホルダ532の金具が取付けられてバスボード5が構成される。したがって、車椅子2の位置ずれや変形を生じ難く、使用者が移乗や立ち上がる際に片側に体重が掛かったり、斜めに体重が掛かっても、車椅子2の横倒れや横滑りなどの位置ずれを防止することができ、安全性を向上することができる。
【0043】
なお、前記支柱252の下端部2521にホルダを形成し、そのホルダが移動して、バスボード5側のピンなどに嵌り込むようにしてもよい。また、バスボード5の位置ずれ防止のためには、座板51の裏面に、浴槽4の縁部41に当接する突起などが形成されてもよいが、座板51の上に使用者の体重が掛かっていない状態では、横ずれを生じ易く、車椅子2を連結し、使用者の移乗の際に車椅子2を固定する必要のある該バスボード5としては、上述のように、手摺32の水平ポール321に係合する方が、位置ずれし難く、好適である。
【0044】
また、前記支柱252は、複数本設けられてもよいが、
図1〜
図4の例では、ロックレバー2121の機構を簡単にするために、1本で形成されており、支持部251および支柱252は、側面視でT字状に形成されている。そこで、前記支持部251の底面には係合ピン2511,2512が設けられており、連結ブロック534,535のピン孔5341,5351にそれぞれ嵌り込むことで、アームレスト25の回転やねじれを防止できるようになっている。前記係合ピン2511,2512は、支持部251に、少なくとも1本設けられていればよい。
【0045】
また、上述の実施形態の車椅子2は、アームレスト25,26が、下降によって使用者の側部から待避(格納)可能に構成されているが、跳ね上げによって待避可能に構成されていてもよい。そして、本実施形態の車椅子2では、アームレスト25,26が待避(格納)可能で、使用者が、座っている状態から横にずれて移乗可能なことに対応して、背凭れのパイプ2151,2152には、その移乗の際に好適に使用されるグリップ291,292が形成されている。
図1〜
図4の例では、背凭れ布24にくり貫いた孔の部分のパイプがグリップ291,292となっている。
【0046】
このように、車椅子2側に手摺(グリップ291,292)を設置していると、使用者が移乗する際に体を支え易く、また車椅子2に使用者自身の体を引き寄せることが可能になり、移乗の際の負担を軽減することができる。また、単に車椅子2に手摺(グリップ291,292)を取り付けると、転倒のリスクがあるのに対して、前記の車椅子固定装置1と併用することで、そのような転倒を防止することができる。さらにまた、車椅子2を横付けする壁や、床に手摺(グリップ)を固定すると、車椅子2の保管や、前記の横付けの際等に邪魔になるのに対して、そのような問題も無い。
【0047】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の第2の形態に係る車椅子固定装置1aの使用例を示す図である。
図6は、
図3と同様に、平面図である。本実施形態は、車椅子2に関しては上述の実施形態と同様であり、浴槽4側の構成が異なるだけであり、対応する部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。本実施形態では、第2の係止部材となる前記ホルダ532および連結ブロック534,535が、浴槽4の側壁42に取付けられる点が異なる。そのため、それらのホルダ532および連結ブロック534,535は、剛性を有する金属板などから成るベースボード61に取付けられて連結ボード6が構成されており、その連結ボード6が浴槽4に取付けられるようになっている。これによって、前記ホルダ532および連結ブロック534,535間の位置ずれが無くなるとともに、取付けが容易になっている。
【0048】
図7は、連結ボード6を説明するための図であり、(a)は側面から見た断面図であり、(b)は平面図であり、(c)は正面から見た断面図である。この
図7は、前述のバスボード5の
図5に対応している。前記ベースボード61は、長方形の板から成り、その下端部611にホルダ532が形成され、上端部613に連結ブロック534,535が形成される。ベースボード61の部分が、ねじ止めや接着などで浴槽4の側壁42に取付けられる。
【0049】
このように構成することで、前記のような別途のバスボード5を使用する必要が無くなる。そのため、介護用に、跳ね上げやスライドなどで浴槽4の周囲への介護者の立ち入りを可能とする既設のバスボード5aを使用する場合や、浴槽4の縁部43が使用者の腰を降ろせる程度に幅が広く形成されている場合に、好適である。また、連結ボード6を、浴槽4の車椅子2側の側面から、バスボード5a下の側面に移動可能に構成しておくことで、該連結ボード6の収納が可能になり、健常者の入浴の際に、ホルダ532や連結ブロック534,535に引っ掛かったりすることもなく、安全である。
【0050】
(実施の形態3)
図8は、本発明の実施の第3の形態に係る車椅子固定装置1bの使用例を示す斜視図である。本実施形態に係る車椅子固定装置1bは、浴槽4側に取付けられる連結ボード7が主要な構成となり、第2の係止部材を構成し、第1の係止部材は、車椅子2bの車椅子本体21bにおける前後の脚部11,12となる。前記連結ボード7は、ベースボード71と、一対の挟持片72,73と、支持片74と、締め付けつまみ75と、連絡片76とを備えて構成される。
【0051】
ベースボード71は、剛性のプラスチックの成型品などで、矩形に形成された板から成り、ねじ止めや接着などで浴槽4の側壁42に取付けられる。そのベースボード71において、横付けされた車椅子2bの後部の脚部12に対応して、先端が前部側に屈曲された挟持片72が立設されており、前部の脚部11に対応して、支持片74が立設されている。その支持片74には、締め付けつまみ75によって挟持片73が支持されており、この挟持片73は、挟持片72に対向して、先端が後部側に屈曲されている。
【0052】
したがって、介護者または使用者は、
図8において、参照符号A1で示すように車椅子2bの後部の脚部12を挟持片72に嵌め込み、参照符号A2で示すように車椅子2bの前部を幅寄せして脚部11を挟持片73の内側に嵌め込み、参照符号A3で示すように締め付けつまみ75を締め付けることで、挟持片73が挟持片72に近接変位して、それらの間に脚部11,12を抱え込み、浴槽4の側壁42に車椅子2bが固定される。締め付けつまみ75を緩めることで、挟持片73が挟持片72から離反変位して、脚部11から脚部12の引き出しが可能になる。
【0053】
このように本実施形態の車椅子固定装置1bでは、車椅子2bの脚部11,12が剛性を有する金属パイプなどで形成されて、横付けされた側面からチャック可能な場合に、その脚部11,12を、剛性を有する板金成形品などから成る一対の挟持片72,73によってチャックすることで係合を実現するので、車椅子2bの位置ずれ、特に前後へのずれの生じ難い係合を行うことができる。上述の例では、後側の脚部12の後側と、前側の脚部11の前側とが、挟持片72,73によってチャックされたけれども、前後の脚部11,12が、それぞれ前後両方からチャックされてもよい。
【0054】
また、本実施形態の車椅子2bでは、浴槽4との固定/解放にアームレスト26bは関与しないので、該アームレスト26bは、簡単に、跳ね上げによって使用者の側部から待避(格納)可能になっている。そのため、参照符号A3で示すように締め付けつまみ75を締め付けて浴槽4の側壁42に車椅子2bを固定した後、使用者の浴槽4への移動のために、参照符号Aで示すようにアームレスト26bを跳ね上げると、車椅子2bの座面板22と、浴槽4の縁部41との間に、前記車椅子固定装置1bによる隙間が生じる。つまり、前述の車椅子2では、アームレスト25,26が下降することで、その隙間を塞いでいる。このため、連結ボード7には前記隙間を無くすために連絡片76が設けられており、これによって前記車椅子2bの座面板22と浴槽4の縁部41との間を、略面一にすることができる。
【0055】
さらにまた、本実施形態の車椅子2bでは、アームレスト26bは跳ね上げ式であるので、グリップ291,292は、車椅子本体21bにおいて、背凭れ布24を支持するパイプ2151,2152の基端部に形成される。本実施形態では、グリップ291,292は、前記パイプ2151,2152に巻付けられたウレタン樹脂発泡体などによって大径に形成されており、使用者が把持し易くなっている。
【0056】
(実施の形態4)
図9は、本発明の実施の第4の形態に係る車椅子固定装置1cの使用例を示す斜視図である。本実施形態に係る車椅子固定装置1cは、浴槽4側に取付けられる連結ボード8が第2の係止部材を構成し、第1の係止部材は、車椅子2cの車椅子本体21cの前後の脚部11,12間に設けられる第1の筒13となる。前記第1の筒13は、剛性を有する金属パイプなどから成り、前後方向に延びて配置され、車椅子本体21cの側方からはみ出して取付けられる。この第1の筒13は、1または複数本設けられ、
図9では2本の例を示している。
【0057】
一方、連結ボード8は、ベースボード81と、第2の筒82,83と、ロックピン84と、連絡片76とを備えて構成される。ベースボード81は、剛性のプラスチックの成型品などで、矩形に形成された板から成り、ねじ止めや接着などで浴槽4の側壁42に取付けられる。そのベースボード81において、横付けされた車椅子2cの第1の筒13に対応して、剛性を有する金属パイプなどから成る第2の筒82,83が前記第1の筒13に対応した数(
図9では2組)取付けられており、該第2の筒82,83は、一対で、前記第1の筒13を前後から挟み込み、かつ第1の筒13に連通する。これらの第2の筒82、第1の筒13および第2の筒83を、剛性を有する金属棒などから成るロックピン84が貫通する。
図9の例では、第1の筒13およびそれに対応する第2の筒82,83は2組設けられているので、操作を容易にするために、ロックピン84の基端側は連動片85によって連結されている。
【0058】
したがって、介護者または使用者は、
図9において、参照符号B1で示すように車椅子2cを浴槽4に横付けしつつ、第1の筒13が第2の筒82,83間に嵌り込むように位置合わせを行い、参照符号B2で示すように、連動片85を操作してロックピン84を差し込むことで、浴槽4の側壁42に車椅子2cが固定される。ロックピン84を引き抜くことで、車椅子2cの引き出しが可能になる。
【0059】
このように本実施形態の車椅子固定装置1cでは、一対の第2の筒82,83間に第1の筒13が嵌り込むことで、第1の筒13、したがって車椅子2cの前後方向への位置ずれが阻止されるとともに、該一対の第2の筒82,83で保持されるロックピン84によって第1の筒13が固定されることで、該第1の筒13、したがって車椅子2cの上下および左右方向への位置ずれも阻止することができる。
【0060】
アームレスト26bは、前述の
図8と同様に跳ね上げ式であり、そのため参照符号B3で示すように跳ね上げた後の使用者の移動のために、車椅子2cの座面板22と、浴槽4の縁部41との間に、前記車椅子固定装置1cによる隙間を塞ぐための連絡片76が、ベースボード81の上端に設けられている。
【0061】
(実施の形態5)
図10は、本発明の実施の第5の形態に係る車椅子固定装置1dの使用例を示す斜視図である。本実施形態に係る車椅子固定装置1dは、前述の
図8で示す車椅子固定装置1bに類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。先ず本実施形態では、車椅子2dにおいて、グリップ291,292は、背凭れのパイプ2151,2152に取付けられるハンドル(握り手)293,294に設けられている。このようにグリップ291,292は、背凭れのパイプ2151,2152だけに限らず、背凭れ付近に設けられていればよい。
【0062】
また、本実施形態では、車椅子2dにおいて、介護者が把持するハンドル(握り手)2191,2192は、折りたたみ式となっている。
図10では、左側のハンドル2191を折りたたんでいる。ハンドル2191,2192を伸ばした使用状態では、図示しないロックピンなどで、不所望にハンドル2191,2192が動かないように、固定される。
【0063】
そして、本実施形態では、第1の係止部材は、車椅子2dの車椅子本体21dにおける前後の脚部11,12である点は
図8と同様であるが、第2の係止部材を構成する連結ボード7dが、
図8の連結ボード7と異なる。詳しくは、ベースボード71および連絡片76、ならびに車椅子2dの後部の脚部12に対応した挟持片72は、連結ボード7と同様であるが、車椅子2dの前部の脚部11に対応した挟持片73dに関する構成が異なる。
【0064】
挟持片72,73dは、水平断面が略L字状に形成されており、ベースボード71に固定される挟持片72に対して、挟持片73dは、ベースボード71に上下一対で設けられる支持片74dに支持される軸77によって、略L字の一方の遊端で鉛直軸線回りに揺動自在に支持されている。挟持片73dにおける前記略L字の他方の遊端側は、端面が前記略L字の外面側から内面側に競り上がる案内斜面731に形成される。また、ベースボード71に設けられたフック711と、挟持片73dの上端に立設されたピン732との間には、軸77に巻き掛けられたバイアスばね78の端部がそれぞれ係合している。バイアスばね78は、挟持片73dを閉じる方向、すなわち挟持片72に対向する方向に付勢している。
【0065】
したがって、介護者または使用者は、
図10において、参照符号A1で示すように車椅子2bの後部の脚部12を挟持片72に嵌め込み、参照符号A2で示すように車椅子2bの前部を幅寄せして脚部11を挟持片73dの案内斜面731に押し当ててゆくと、挟持片73dは、参照符号A4で示すように、バイアスばね78の弾発力に抗して一旦外側に開き、脚部11が案内斜面731を乗り越えると、バイアスばね78の弾発力によって引き戻され、前記略L字の内側に前記脚部11を抱え込む。これによって、車椅子2dを浴槽4に横付けするだけで、固定を行うことができる。車椅子2dの解放は、介護者または使用者が、挟持片73dに設けられたつまみ79を保持して、該挟持片73dを開く(挟持片72から離反させる)ことで行うことができる。