(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0015】
図1−3に示されたラケット2は、フレーム4と、第一発泡体6aと、第二発泡体6bとを有している。フレーム4は、ヘッド8、2つのスロート10、シャフト12及びグリップ14を備えている。このラケット2に、グロメット、グリップテープ、エンドキャップ等が取り付けられうる。さらに、このラケット2に、ストリングが張られ得る。このラケット2は、硬式テニス用である。
図1において、上下方向はラケット2の軸方向であり、左右方向はラケット2の幅方向である。
【0016】
フレーム4は、繊維強化樹脂からなる。この繊維強化樹脂のマトリクス樹脂は、熱硬化樹脂である。典型的な熱硬化樹脂は、エポキシ樹脂である。繊維強化樹脂の典型的な繊維は、カーボン繊維である。この繊維は、長繊維である。
【0017】
ヘッド8は、打球面の輪郭を形成している。ヘッド8の正面形状は、略楕円である。楕円の長径方向は、フレーム4の軸方向と一致している。楕円の短径方向は、フレーム4の幅方向と一致している。
図3から明らかなように、ヘッド8は中空である。ヘッド8は、内側部16、外側部18及び2つの中間部20を有している。外側部18は、ガット溝22を有している。
図2に示されるように、ガット溝22はヘッド8の周方向に沿って延在している。このガット溝22に、グロメット(図示されず)が嵌め込まれる。
【0018】
それぞれのスロート10の一端は、ヘッド8と連続している。このスロート10は、他端の近傍で他のスロート10と合流している。スロート10は、ヘッド8から延びてシャフト12に至っている。シャフト12は、2つのスロート10が合流する箇所から延びている。シャフト12は、スロート10と連続的にかつ一体的に形成されている。グリップ14は、シャフト12と連続的にかつ一体的に形成されている。ヘッド8のうち2つのスロート10に挟まれた部分は、ヨーク24である。
【0019】
図3に示されるように、それぞれの発泡体6は、中間部20の内面に接合されている。発泡体6は、内側部16と離間している。発泡体6は、外側部18と離間している。
図3において符号26で示される線は、打球面と一致している。この打球面に対し、第一発泡体6aの形状と第二発泡体6bの形状とは、対称である。
【0020】
発泡体6は、マトリクスと、このマトリクス中に分散した多数の気泡とを有する。マトリクスの材質は、樹脂組成物である。この樹脂組成物の典型的な基材樹脂は、ポリウレタンである。マトリクスの材質が、ゴム組成物であってもよい。
【0021】
典型的には、気泡は、熱分解型発泡剤の発泡によって形成される。好ましい熱分解型発泡剤としては、アゾ化合物、ニトロソ化合物及びトリアゾール化合物が例示される。機械攪拌法等の物理的発泡方法により、発泡体が得られてもよい。
【0022】
発泡体6が独立気泡を有してもよく、連続気泡を有してもよい。発泡体6が吸水しにくいとの観点から、独立気泡が好ましい。
【0023】
この発泡体6は、インパクト時の衝撃を吸収しうる。さらにこの発泡体6は、フレーム4の振動減衰に寄与しうる。この発泡体6を有するラケット2では、優れた打球感が得られる。
【0024】
図3から明らかなように、発泡体6はシート状である。この発泡体6は、フレーム4のスペースを部分的に占めている。フレーム4のスペースの残余の部分には、空気が存在する。換言すれば、この発泡体6は、スペースを独占していない。この発泡体6は、軽量である。従ってこのラケット2は、軽量である。
【0025】
発泡体6は、フレーム4の内部に位置している。従って、プレーヤーのストロークによってフレーム4が地面に衝突しても、発泡体6は摩耗しない。さらに、プレーヤーは発泡体6の存在を認識しないので、発泡体6がプレーを妨げることがない。
【0026】
フレーム4のスペースの面積S1に対する、発泡体6の面積S2の比率Pは、5%以上50%以下が好ましい。この比率Pが5%以上であるラケット2は、打球感に優れる。この観点から、この比率Pは10%以上が特に好ましい。この比率Pが50%以下であるラケット2は、軽量である。軽量なラケットは、スイングしやすい。この観点から、この比率Pは40%以下が特に好ましい。比率Pは、フレーム4の中に発泡体6が存在する個所において測定される。比率Pは、フレーム4が延在する方向と直交する断面において測定される。面積S1は、フレーム4の内面に囲まれた図形の面積である。本実施形態に係るラケット2は、前述の通り、第一発泡体6a及び第二発泡体6bを有する。このラケット2では、第一発泡体6aの面積と第二発泡体6bの面積との合計が、面積S2である。
【0027】
発泡体6の密度は、0.50g/cm
3以下が好ましい。この発泡体6は、ラケット2の打球感に寄与する。しかもこの発泡体6を有するラケット2は、軽量である。これらの観点から、この密度は0.35g/cm
3以下が特に好ましい。発泡体6の強度の観点から、この密度は0.10g/cm
3以上が好ましい。密度は、「JIS K 6401」の規定に準拠して測定される。
【0028】
発泡体6の25%CLDは、0.10MPa以下が好ましい。この発泡体6は、ラケット2の打球感に寄与する。この観点から、25%CLDは0.06MPa以下が特に好ましい。発泡体6の強度の観点から、25%CLDは0.01MPa以上が好ましい。25%CLDは、「JIS K6254」の規定に準拠して測定される圧縮荷重たわみ(Compression Load Deflection)である。25%CLDは、発泡体6を25%圧縮変形させるのに必要な圧力である。
【0029】
図1において、矢印Lで示されているのはヘッド8の長さであり、矢印Wで示されているのはヘッド8の幅である。符号28で示されているのは、トップ30からの距離が長さLの1/2である直線である。符号32で示されているのは、ラケット2の軸線である。符号Oで示されているのは、フレーム4の中心点である。中心点Oにおいて、直線28が軸線32と交差する。
【0030】
図1において、符号34で示されているのは発泡体6の一端であり、符号36で示されているのは発泡体6の他端である。符号θで示されているのは、中心点Oにおける発泡体6の中心角度である。中心角度θは、100°以上が好ましい。中心角度θが100°以上であるラケット2は、打球感に優れる。この観点から、中心角度θは150°以上がより好ましく、180°以上が特に好ましい。軽量の観点から、中心角度θは240°以下が好ましい。
【0031】
図4及び5には、プリプレグ38、第一発泡片40a及び第二発泡片40bが示されている。プリプレグ38は、マトリクス樹脂と並列された多数の長繊維とを有している。マトリクス樹脂は、熱硬化性樹脂である。それぞれの発泡片40は、多数の気泡を含んでいる。発泡片40は、プリプレグ38に積層されており、かつプリプレグ38に接合されている。接合は、粘着剤によってなされうる。
図5において、矢印Wで示されているのは発泡片40の幅であり、矢印Tで示されているのは発泡片40の厚みである。
【0032】
図6には、チューブ42とこのチューブ42に挿入されたマンドレル44とが示されている。このチューブ42に、プリプレグ38が巻かれる。巻かれることにより、プリプレグ38は筒状を呈する。巻かれることにより、発泡片40はプリプレグ38の内面に位置する。
【0033】
マンドレル44がチューブ42から抜かれた後、プリプレグ38、発泡片40及びチューブ42が金型に入れられる。金型内で、チューブ42に気体が充填され、チューブ42が膨張する。この膨張により、プリプレグ38が金型のキャビティ面に押し付けられる。このプリプレグ38が加熱され、マトリクス樹脂が硬化する。硬化により、フレーム4が得られる。第一発泡片40aからは、第一発泡体6aが形成される。第二発泡片40bからは、第二発泡体6bが形成される。第一発泡片40a及び第二発泡片40bは、プリプレグ38の加熱時に損傷しない程度の耐熱性を有する。
【0034】
この製造方法では、発泡体6の位置が正確に制御されうる。この製造方法では、発泡体6のボリュームが正確に制御されうる。この製造方法では、発泡体6の発泡倍率が正確に制御されうる。
【0035】
発泡片40の具体例として、イノアックコーポレーション社の「PORON LE−20」、「PORON SR−S−24」、「PORON SR−L−20」、「PORON SR−L−24」及び「PORON BB−32」が例示される。
【0036】
図7は、本発明の他の実施形態に係るラケットが示された断面図である。このラケットは、ヘッド46と、第一発泡体48aと、第二発泡体48bとを有している。ヘッド46は、内側部50、外側部52及び2つの中間部54を有している。外側部52は、ガット溝56を有している。それぞれの発泡体48は、外側部52の内面に接合されている。発泡体48の位置以外のこのラケットの構造は、
図1−3に示されたラケット2の構造と同一である。
【0037】
発泡体48の材質は、
図3に示された発泡体6の材質と同一である。このラケットでも、発泡体48は、インパクト時の衝撃を吸収しうる。さらにこの発泡体48は、フレームの振動減衰に寄与しうる。この発泡体48を有するラケットでは、優れた打球感が得られる。この発泡体48は、フレームのスペースを部分的に占めている。フレームのスペースの残余の部分には、空気が存在する。このラケットは、軽量である。
【0038】
このラケットでも、スペースの面積S1に対する、発泡体48の面積S2の比率Pは、5%以上50%以下が好ましい。この比率Pは、10%以上が特に好ましい。この比率Pは、40%以下が特に好ましい。
【0039】
図8は、本発明のさらに他の実施形態に係るラケットが示された断面図である。このラケットは、ヘッド58と、第一発泡体60aと、第二発泡体60bとを有している。ヘッド58は、内側部62、外側部64及び2つの中間部66を有している。外側部64は、ガット溝68を有している。それぞれの発泡体60は、内側部62の内面に接合されている。発泡体60の位置以外のこのラケットの構造は、
図1−3に示されたラケット2の構造と同一である。
【0040】
発泡体60の材質は、
図3に示された発泡体6の材質と同一である。このラケットでも、発泡体60は、インパクト時の衝撃を吸収しうる。さらにこの発泡体60は、フレームの振動減衰に寄与しうる。この発泡体60を有するラケットでは、優れた打球感が得られる。この発泡体60は、フレームのスペースを部分的に占めている。フレームのスペースの残余の部分には、空気が存在する。このラケットは、軽量である。
【0041】
このラケットでも、スペースの面積S1に対する、発泡体60の面積S2の比率Pは、5%以上50%以下が好ましい。この比率Pは、10%以上が特に好ましい。この比率Pは、40%以下が特に好ましい。
【0042】
図9は、本発明のさらに他の実施形態に係るラケットが示された断面図である。このラケットは、ヘッド70と発泡体72とを有している。ヘッド70は、内側部74、外側部76及び2つの中間部78を有している。外側部76は、ガット溝80を有している。発泡体72は、外側部76の内面に接合されている。発泡体72以外のこのラケットの構造は、
図1−3に示されたラケット2の構造と同一である。
【0043】
発泡体72の材質は、
図3に示された発泡体6の材質と同一である。このラケットでも、発泡体72は、インパクト時の衝撃を吸収しうる。さらにこの発泡体72は、フレームの振動減衰に寄与しうる。この発泡体72を有するラケットでは、優れた打球感が得られる。この発泡体72は、フレームのスペースを部分的に占めている。フレームのスペースの残余の部分には、空気が存在する。このラケットは、軽量である。
【0044】
このラケットでも、スペースの面積S1に対する、発泡体72の面積S2の比率Pは、5%以上50%以下が好ましい。この比率Pは、10%以上が特に好ましい。この比率Pは、40%以下が特に好ましい。
【0045】
図10には、プリプレグ82及び発泡片84が示されている。プリプレグ82の材質は、
図4−6に示されたプリプレグ38の材質と同一である。発泡片84の材質は、
図4−6に示された発泡片40の材質と同一である。発泡片84は、プリプレグ82に積層されており、かつプリプレグ82に接合されている。このプリプレグ82が巻かれることにより、プリプレグ82は筒状を呈する。巻かれることにより、発泡片84はプリプレグ82の内面に位置する。このプリプレグ82が加熱され、マトリクス樹脂が硬化する。硬化により、フレームが得られる。発泡片84からは、発泡体72が形成される。
【0046】
図11は、本発明のさらに他の実施形態に係るラケットが示された断面図である。このラケットは、ヘッド86と発泡体88とを有している。ヘッド86は、内側部90、外側部92及び2つの中間部94を有している。外側部92は、ガット溝96を有している。発泡体88は、内側部90の内面に接合されている。発泡体88以外のこのラケットの構造は、
図1−3に示されたラケット2の構造と同一である。
【0047】
発泡体88の材質は、
図3に示された発泡体6の材質と同一である。このラケットでも、発泡体88は、インパクト時の衝撃を吸収しうる。さらにこの発泡体88は、フレームの振動減衰に寄与しうる。この発泡体88を有するラケットでは、優れた打球感が得られる。この発泡体88は、フレームのスペースを部分的に占めている。フレームのスペースの残余の部分には、空気が存在する。このラケットは、軽量である。
【0048】
このラケットでも、スペースの面積S1に対する、発泡体88の面積S2の比率Pは、5%以上50%以下が好ましい。この比率Pは、10%以上が特に好ましい。この比率Pは、40%以下が特に好ましい。
【0049】
図12は、本発明のさらに他の実施形態に係るラケット98が示された正面図である。このラケット98は、ヘッド100と、第一発泡体102aと、第二発泡体102bとを有している。ヘッド100の周方向において、第一発泡体102aは第二発泡体102bと離間している。発泡体102以外のこのラケット98の構造は、
図1−3に示されたラケット2の構造と同一である。
【0050】
それぞれの発泡体102の材質は、
図3に示された発泡体6の材質と同一である。このラケット98でも、発泡体102は、インパクト時の衝撃を吸収しうる。さらにこの発泡体102は、フレームの振動減衰に寄与しうる。この発泡体102を有するラケット98では、優れた打球感が得られる。この発泡体102は、フレームのスペースを部分的に占めている。フレームのスペースの残余の部分には、空気が存在する。このラケット98は、軽量である。
【0051】
図12において、符号104で示されているのは第一発泡体102aの一端であり、符号106で示されているのは第一発泡体102aの他端である。符号θ1で示されているのは、中心点Oにおける第一発泡体102aの中心角度である。符号108で示されているのは第二発泡体102bの一端であり、符号110で示されているのは第二発泡体102bの他端である。符号θ2で示されているのは、中心点Oにおける第二発泡体102bの中心角度である。このラケット98では、中心角度θは、中心角度θ1と中心角度θ2との和である。中心角度θは、100°以上が好ましい。中心角度θが100°以上であるラケット98は、打球感に優れる。この観点から、中心角度θは150°以上がより好ましく、180°以上が特に好ましい。軽量の観点から、中心角度θは240°以下が好ましい。
【0052】
図13には、プリプレグ112、第一発泡片114a及び第二発泡片114bが示されている。プリプレグ112の材質は、
図4−6に示されたプリプレグ38の材質と同一である。それぞれの発泡片114の材質は、
図4−6に示された発泡片40の材質と同一である。発泡片114は、プリプレグ112に積層されており、かつプリプレグ112に接合されている。このプリプレグ112が巻かれることにより、プリプレグ112は筒状を呈する。巻かれることにより、発泡片114はプリプレグ112の内面に位置する。このプリプレグ112が加熱され、マトリクス樹脂が硬化する。硬化により、フレームが得られる。第一発泡片114aからは、第一発泡体102aが形成される。第二発泡片114bからは、第二発泡体102bが形成される。
【0053】
第一発泡体102aの材質が、第二発泡体102bの材質と異なっていてもよい。第一発泡体102aの密度が、第二発泡体102bの密度と異なっていてもよい。第一発泡体102aのサイズが、第二発泡体102bのサイズと異なっていてもよい。
【0054】
ラケットが、3以上の発泡体を有してもよい。この場合、それぞれの発泡体の中心角度の和が、中心角度θである。中心角度θは、100°以上が好ましい。中心角度θが100°以上であるラケット98は、打球感に優れる。この観点から、中心角度θは150°以上がより好ましく、180°以上が特に好ましい。軽量の観点から、中心角度θは240°以下が好ましい。これらの発泡体において、材質、密度、サイズ等が互いに異なってもよい。
【実施例】
【0055】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0056】
[実施例1]
図1−3に示されたラケットを製作した。このラケットには、発泡片(前述の「PORON SR−S−24」を用いた。この発泡片では、密度は0.24g/cm
3であり、幅Wは5.0mmであり、長さは680mmである。
【0057】
[実施例2−4]
発泡片の長さを下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2−4のラケットを得た。
【0058】
[実施例5−13]
下記の表2及び3に示される発泡片を用いた他は実施例1と同様にして、実施例5−13のラケットを得た。
【0059】
[比較例1]
発泡片を用いなかった他は実施例1と同様にして、比較例1のラケットを得た。
【0060】
[比較例2]
プリプレグとチューブとの間に発泡剤を含有する樹脂組成物を配置し、プリプレグの加熱時にこの発泡剤を発泡させて、ラケットを得た。このラケットでは、ヘッドのスペースを発泡体が独占している。
【0061】
[評価]
各ラケットに、グロメット、グリップテープ及びエンドキャップを取り付けた。さらに、このラケットにストリングを張った。このラケットにてプレーヤーにテニスボールを打たせ、下記基準に基づいて打球感及びスイングしやすさを格付けさせた。
A:よい
B:悪くない
C:悪い
この結果が、下記の表1−3に示されている。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
表1−3に示されるように、各実施例のラケットは、打球感及びスイングしやすさに優れる。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。