特許第6241937号(P6241937)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6241937-空気入りタイヤ 図000011
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241937
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/06 20060101AFI20171127BHJP
   B60C 15/00 20060101ALI20171127BHJP
   B60C 5/14 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   B60C15/06 Q
   B60C15/06 C
   B60C15/00 K
   B60C5/14 A
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-33894(P2014-33894)
(22)【出願日】2014年2月25日
(65)【公開番号】特開2015-157583(P2015-157583A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2016年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107940
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 憲吾
(74)【代理人】
【識別番号】100120938
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 教郎
(74)【代理人】
【識別番号】100122806
【弁理士】
【氏名又は名称】室橋 克義
(74)【代理人】
【識別番号】100168192
【弁理士】
【氏名又は名称】笠川 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100174311
【弁理士】
【氏名又は名称】染矢 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100182523
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 由賀里
(72)【発明者】
【氏名】高田 宜幸
(72)【発明者】
【氏名】轟 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岡部 太郎
【審査官】 市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−062662(JP,A)
【文献】 特開2005−125891(JP,A)
【文献】 特開2011−168638(JP,A)
【文献】 特開平11−059139(JP,A)
【文献】 特開2001−130230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00−19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォールと、それぞれがサイドウォールの端から半径方向略内向きに延びる一対のクリンチと、それぞれがクリンチよりも軸方向内側に位置する一対のビードと、このサイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスと、ビードの近傍に位置するチェーファーと、カーカスの内側に沿って延在するインナーライナーと、ゴム組成物からなるシートとを備えており、
このチェーファーがビードの半径方向内側に位置する基部と、ビードの軸方向内側に位置する立ち上げ部を備えており、この立ち上げ部が基部から半径方向外向きに延びており、この立ち上げ部がインナーライナーの軸方向内側に位置しており、この立ち上げ部の半径方向外端がインナーライナーの半径方向内端より半径方向外側に位置しており、
この立ち上げ部とインナーライナーとが軸方向にシートを間にして接合されており、
ビードベースラインから上記シートの半径方向外端まで高さが25mm以上45mm以下である空気入りタイヤ。
【請求項2】
上記シートの基材ゴムにおいて、天然ゴムの質量比が70%以上100%以下である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
上記シートのモジュラス(M200)が7MPa以上13MPa以下である請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
上記シートの最大厚みが0.5mm以上2.0mm以下である請求項1から3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項5】
上記チェーファーのシート面と立ち上げ部の軸方向内側表面とのなす角度が70度以上である請求項1から4のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
上記チェーファーの立ち上げ部の半径方向外端がシートの半径方向外端より半径方向内側に位置しており、
ビードベースラインからこの立ち上げ部の半径方向外端までの高さが3mm以上である請求項1から5のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
上記インナーライナーがゴム組成物からなり、
このゴム組成物が基材ゴム100質量部に対して、粘着性樹脂が5質量部以上添加されている請求項1から6に記載のタイヤ。
【請求項8】
上記チェーファーの立ち上げ部の軸方向内側表面の、周方向に垂直な断面における曲率半径が、60mm以下である請求項1から7のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。詳細には、ビード部の耐久性を向上させたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、リムに組み込まれて使用される。タイヤがリムに組み込まれる際に、タイヤのビード部は大きな外力を受ける。ビード部が大きく変形させられて、リムフランジを乗り越える。タイヤがリムに組み込まれる際に、ビード部に損傷が生じることがある。例えば、ビード部で、インナーライナーからチェーファーが捲れることがある。
【0003】
インナーライナーは、空気遮蔽性に優れたゴムが用いられる。このインナーライナーの基材ゴムは、他のゴム部材との接着性に劣る。チェーファーのモジュラスを小さくすることで、チェーファーとインナーライナーとの粘着性を改善しうる。しかし、モジュラスが小さいチェーファーを備えたタイヤは、ビード部の耐久性に劣る。また、チェーファーの捲れを抑制するために、チェーファーの巻き込み高さを高くすることが考えられる。巻き込み高さを高くすることで、チェーファーの端部をリムフランジから遠ざけられる。これにより、チェーファの端部の捲れが抑制されうる。しかし、チェーファーの巻き込み高さが高いタイヤでは、加硫成型前のロウカバーの成形時に、チェーファーが捲れ易い。このタイヤは、生産性に劣る。
【0004】
特開平10−329515公報には、チェーファーとインナーライナーとが接着性ゴムを介して接合されたタイヤが開示されている。この接着性ゴムが介在することで、チェーファーとインナーライナーとが強固に接合しうる。これにより、ビード部の損傷が抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−329515公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開平10−329515公報のタイヤでは、リムに組み込む際に、接着性ゴムがリムフランジに接触する恐れがある。この接着性ゴムは、チェーファーから捲られる向きにリムフランジに当接する。このタイヤでも、チェーファの捲れを抑制する観点で、改善の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、リムに組み込まれる際に発生する、ビード部の損傷が抑制された空気入りタイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る空気入りタイヤは、半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォールと、それぞれがサイドウォールの端から半径方向略内向きに延びる一対のクリンチと、それぞれがクリンチよりも軸方向内側に位置する一対のビードと、このサイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスと、ビードの近傍に位置するチェーファーと、カーカスの内側に沿って延在するインナーライナーと、ゴム組成物からなるシートとを備えている。このチェーファーは、ビードの半径方向内側に位置する基部と、ビードの軸方向内側に位置する立ち上げ部を備えている。この立ち上げ部は、基部から半径方向外向きに延びている。この立ち上げ部は、インナーライナーの軸方向内側に位置している。この立ち上げ部の半径方向外端は、インナーライナーの半径方向内端より半径方向外側に位置している。この立ち上げ部とインナーライナとは、軸方向にシートを間にして接合されている。
【0009】
好ましくは、このシートの基材ゴムにおいて、天然ゴムの質量比は、70%以上100%以下である。好ましくは、このシートのモジュラス(M200)は、7MPa以上13MPa以下である。
【0010】
好ましくは、このシートの最大厚みは、0.5mm以上2.0mm以下である。好ましくは、ビードベースラインからシートの半径方向外端まで高さは、25mm以上45mm以下である。
【0011】
好ましくは、上記ビードはコアを備えている。このコアの軸方向外端からビード部の軸方向外側表面までの距離Eと、ビード部の幅Fとの比E/Fは、0.3以下である。
【0012】
好ましくは、チェーファーのシート面と立ち上げ部の軸方向内側表面とのなす角度は、70度以上である。
【0013】
好ましくは、このチェーファーの立ち上げ部の半径方向外端は、シートの半径方向外端より半径方向内側に位置している。ビードベースラインからこの立ち上げ部の半径方向外端までの高さは、3mm以上である。
【0014】
好ましくは、このインナーライナーは、ゴム組成物からなる。このゴム組成物は、基材ゴム100質量部に対して、粘着性樹脂が5質量部以上添加されている。
【0015】
好ましくは、このチェーファーの立ち上げ部の軸方向内側表面の、周方向に垂直な断面における曲率半径は、60mm以下である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る空気入りタイヤでは、リムに組み込まれる際に、ビード部に損傷が発生することが抑制されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤのビード部を主に示す断面図である。
図2図2は、図1のビード部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0019】
図1には、重荷重用空気入りタイヤ2のビード部Tbが示されている。図1において、上下方向が半径方向であり、左右方向が軸方向であり、紙面に対して垂直な方向が周方向である。ここでは、このタイヤ2を例に説明がされる。このタイヤ2は、図示されないトレッド部と、その半径方向内側の一部が図示されたサイドウォール部Tsと、ビード部Tbとを備えている。サイドウォール部Tsは、図示されないトレッド部の軸方向端部から半径方向内向きに延在している。ビード部Tbは、サイドウォール部Tsの半径方向内側に位置している。
【0020】
このタイヤ2は、サイドウォール4、ビード6、クリンチ8、カーカス10、補強層12、カバーゴム14、インスレーション15、チェーファー16、インナーライナー18及びシート20を備えている。
【0021】
このタイヤ2は、図示されないが、トレッド及びベルトを更に備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、トラック、バス等に装着される。
【0022】
このタイヤ2は、図示されないが、ほぼ左右対称の形状を呈する。トレッドは、一方のサイドウォール4の上方から他方のサイドォールの上方まで左右方向に延びている。トレッドは、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッドは、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。トレッドの外周面は、路面と接地するトレッド面を構成する。
【0023】
サイドウォール4は、トレッドの端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール4は、架橋ゴムからなる。サイドウォール4は、カーカス10の外傷を防止する。
【0024】
ビード6は、サイドウォール4の半径方向内側に位置している。ビード6は、コア22と、このコア22から半径方向外向きに延びるエイペックス24とを備えている。コア22はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤー(典型的にはスチール製ワイヤー)を含む。エイペックス24は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス24は、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0025】
クリンチ8は、サイドウォール4の半径方向略内側に位置している。クリンチ8は、サイドウォール4の下部から半径方向内向きに延びてチェーファー16に連続している。クリンチ8は、軸方向において、ビード6及びカーカス10よりも外側に位置している。図示されないが、クリンチ8は、リムフランジに係合して締め付けられる部分である。
【0026】
カーカス10はカーカスプライ26からなる。カーカスプライ26は、左右両側のビード6の間に架け渡されており、トレッド及びサイドウォール4に沿っている。カーカスプライ26は、コア22の周りを、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ26には、主部28と折り返し部30とが形成されている。折り返し部30は、チェーファー16及びクリンチ8とエイペックス24との間に積層されている。
【0027】
図示されないが、ベルトは、カーカス10の半径方向外側に積層されている。ベルトは、カーカス10を補強する。ベルトは、例えば、第一層、第二層及び第三層からなる。第一層、第二層及び第三層のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、スチールからなる。コードに、有機繊維が用いられてもよい。このコードは、赤道面に対して傾斜している。
【0028】
補強層12は、コア22の周りを巻かれている。補強層12は、カーカスプライ26と積層されている。補強層12は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、スチールからなる。この補強層12は、スチールフィラーとも称される。補強層12は、タイヤ2の耐久性に寄与する。
【0029】
カバーゴム14は、エイペックス24の軸方向外側に位置している。カバーゴム14は、カーカスプライ26の折り返し部30に積層されている。折り返し部30の先端は、カバーゴム14に覆われている。カバーゴム14により、応力集中が緩和される。補強層12の一端も、カバーゴム14に覆われている。カバーゴム14により、この一端への応力集中が緩和される。
【0030】
インスレーション15は、軸方向において、サイドウォール4の内側に位置している。インスレーション15は、カーカス10とインナーライナー18とに挟まれている。インスレーション15は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。インスレーション15は、カーカス26と強固に接合し、インナーライナー18とも強固に接合する。インスレーション15により、サイドウォール4の軸方向内側において、インナーライナー18が、カーカス10から剥離することが抑制される。
【0031】
チェーファー16は、ビード6の近傍に位置している。チェーファー16は、サイドウォール4の半径方向内側に位置する。チェーファー16は、クリンチ8から半径方向内向きに連続して形成されている。タイヤ2がリムに組み込まれると、このチェーファー16がリムに当接する。この当接により、ビード6の近傍が保護される。チェーファー16は、通常は布とこの布に含浸したゴムとからなる。ゴム単体からなるチェーファー16が用いられてもよい。
【0032】
このチェーファー16は、ビード6の半径方向内側に位置してリムに接する基部32と、ビード6の軸方向内側に位置して基部32から半径方向外向きに延在する立ち上げ部34とを有している。この立ち上げ部34は半径方向内側から外端16aに向かって、軸方向の幅が徐々に小さくなっている。言い換えると、立ち上げ部34は、半径方向外向きに先細りである。
【0033】
インナーライナー18は、軸方向においてカーカス10の内側に位置している。インナーライナー18は、左右のチェーファー16の間を架け渡されている。インナーライナー18は、タイヤ2の内圧を保持する役割を果たす。インナーライナー18は、半径方向内向きに先細りである。言い換えると、インナーライナー18は、ビード6の軸方向内側において半径方向外側からその半径方向の内端18aに向かって先細りである。
【0034】
このインナーライナー18は、ゴム組成物が架橋されることによって成形されている。このゴム組成物は、空気遮蔽性に優れた基材ゴムを含む。インナーライナー18の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー18は、タイヤ2の内圧を保持する。インナーライナー18のゴム組成物は、好ましくは粘着性樹脂を含む。これにより、インナーライナー18とシート20とがより強固に接合される。この粘着性樹脂としては、例えば、炭化水素樹脂、フェノールホルムアルデヒト樹脂等が挙げられる。接合強度の観点から、この粘着性樹脂の量は、基材ゴム100質量部に対して5質量部以上が好ましい。
【0035】
シート20は、ビード6の軸方向内側において、インナーライナー18の軸方向内側に積層されている。シート20は、チェーファー16とインナーライナー18との間に位置している。シート20は、その半径方向内端20aから半径方向外端20bまで、インナーライナー18に沿って延在している。シート20は、インナーライナー18と接着性に優れた架橋ゴムからなる。シート20は、インナーライナー18と強固に接合する。シート20は、チェーファー16と接着性に優れた架橋ゴムからなる。シート20は、チェーファー16とも強固に接合する。このシート20は、ゴム組成物が架橋されることによって成形されている。このシート20の基材ゴムとして、天然ゴム及び乳化重合スチレン−ブタジエン共重合体が例示される。
【0036】
シート20がチェーファー16とインナーライナー18とに強固に接合する観点から、シート20の基材ゴム100質量部において、天然ゴムが70質量部以上であることが好ましい。言い換えると、この基材ゴムにおいて、天然ゴムの質量比が70%以上100%以下が好ましい。この天然ゴムの質量比は80%以上が更に好ましい。
【0037】
このシート20の半径方向内端20aは、インナーライナー18の半径方向内端18aと重ねられている。これにより、チェーファー16とインナーライナー18とが、シート20を介して強固に結合されてる。この観点から、半径方向において、内端20aの位置は、内端18aの位置と同じか、又は内端18aの位置より内側に位置することが好ましい。
【0038】
チェーファー16の立ち上げ部34の半径方向外端16aは、インナーライナー18の内端18aより半径方向外側に位置している。これにより、インナーライナー18とチェーファー16とが、シート20を介して軸方向に重ね合わされている。これにより、チェーファー16とインナーライナー18とが、更に強固に結合されてる。
【0039】
このシート20のモジュラスが大きいタイヤ2は、リムに組み込まれる際に、ビード部Tbの損傷が抑制される。この観点から、このモジュラス(M200)は、好ましくは7.0MPa以上であり、更に好ましくは8.0MPa以上である。一方で、このモジュラスが小さいタイヤ2では、シート20によりビード部Tbの変形が阻害されない。このモジュラスが小さいタイヤ2では、チェーファー16の捲れの発生が抑制される。この観点から、このモジュラス(M200) は、好ましくは13.0MPa以下であり、更に好ましくは12.0MPa以下である。
【0040】
図1の両矢印Aは、シート20の厚みを示している。この厚みAは、シート20の最大厚みである。この厚みAが大きいシート20は、チェーファー16とインナーライナー18との接着性に優れる。この観点から、この厚みAは、好ましくは0.5mm以上であり、更に好ましくは0.7mm以上である。一方で、厚みAが小さいシート20は、ビード部Tbの発熱の抑制に寄与する。この観点から、この厚みAは、好ましくは2.5mm以下であり、更に好ましくは2.0mm以下である。
【0041】
図1の両矢印Bは、ビードベースラインBBLからシート20の外端20bまでの高さを示している。この高さBは、半径方向の距離として測られる。このシート20は、インナーライナー18との接着性に優れるので、この高さBを大きくしても捲れにくい。この高さBが大きいタイヤ2は、シート20の外端20bとリムフランジとの接触が避けらうる。この観点から、この高さBは、好ましくは25mm以上であり、更に好ましくは30mm以上である。一方で、この高さBが大きすぎるタイヤ2では、加硫成型前のロウカバーの成形時に、シート20が捲れ易い。この観点から、この高さBは、好ましくは45mm以下であり、更に好ましくは40mm以下である。
【0042】
図2の点P1は、軸方向におけるコア22の最も内側の位置を示している。点P2は、軸方向におけるコア22の最も外側の位置を示している。二点鎖線L1は、点P1と点P2とを通る直線である。点P3は、ビード部Tbの軸方向外側表面36と直線L1との交点である。点P4は、立ち上げ部34の軸方向内側表面38と直線L1との交点である。言い換えると、点P4は、ビード部Tbの軸方向内側表面と直線L1との交点である。
【0043】
図2の両矢印Dは、ビードベースラインBBLから立ち上げ部34の外端16aまでの高さを示している。この高さDは、半径方向に測られる。両矢印Eは、コア22の点P2から外側表面36の点P3までの距離を示している。両矢印Fは、外側表面36の点P3から内側表面38の点P4までの距離を示している。この発明では、この距離Fがビード部Tbの幅である。この距離E及び幅Fは、直線L1に沿って測られる。
【0044】
この距離Eと幅Fとの比E/Fが小さいタイヤ2では、コア22が内側表面38から離れて位置する。これにより、リムに組み込む際にビード部Tbがリムフランジに引っ掛かることが抑制される。ビード部Tbのトウ40の欠けが抑制される。ビード部Tbの損傷が抑制される。この観点から、この比E/Fは0.3以下が好ましく、0.25以下が更に好ましい。一方で、軸方向外側のビード6を保護する観点から、この比E/Fは0.2以上が好ましい。
【0045】
チャーファー16の基部32は、シート面42を備えている。このシート面42は、半径方向下向きに面している。このシート面42は、リムに組み込まれると、リムに当接する面である。二点鎖線L2は、このシート面42に沿った直線である。内側表面38は、軸方向内向きに凸の曲面である。矢印Rは、この内側表面38の曲率半径を示している。二点鎖線L3は、トウ40の先端における、内側表面38の接線を示している。角度θは、直線L2と直線L3とのなす角度を示している。この角度θは、チェーファー16のシート面42と立ち上げ部34の内側表面38とのなす角度である。
【0046】
この角度θが大きいタイヤ2では、リムに組み込まれる際にトウ40がリムフランジに引っ掛かることが抑制される。これにより、トウ40の欠けが抑制される。この観点から、この角度θは、好ましくは70度以上である。また、この角度θが大き過ぎるタイヤ2では、リムに組み込まれる際にトウ40がリムフランジに越え難い。この角度θが大き過ぎてもトウ欠けが生じ易い。この観点から、この角度θは、90度以下が好ましい。
【0047】
立ち上げ部34の高さDが大きいタイヤ2では、リムに組み込む際に、ビード部Tbに発生する局部的な応力の集中が緩和される。これにより、チェーファー16の捲れが抑制される。この観点から、この高さDは、好ましくは3mm以上であり、更に好ましくは7mm以上である。
【0048】
ビード部Tbの内側表面38の曲率半径Rが小さいタイヤ2では、リムに組み込まれる際に、内側表面38とリムとの接触面積が小さくなる。リムと内側表面38との間の摩擦が軽減される。これによりビード部Tbの損傷が抑制される。この観点から、この曲率半径Rは、好ましくは60mm以下であり、更に好ましくは、50mm以下である。一方で、この曲率半径Rは30mm以上が好ましい。
【0049】
ここでは、トラック、バス等の車両に適用される重荷重用タイヤ2を例に説明がされた。本発明は、このような重荷重用タイヤ2に限られず、リムに組み込まれて使用される空気入りタイヤであれば、その効果を発揮しうる。一方で、重荷重用タイヤ2はビード部Tbの剛性が高いので、重荷重用タイヤ2では本発明の効果が大きい。
【0050】
本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【実施例】
【0051】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0052】
[実施例1]
図1及び図2に示された、ビード部を備える重荷重用空気入りタイヤが得られた。このタイヤのサイズは、12R22.5である。シートの天然ゴムの質量比(NR質量比)及び200%モジュラス(モジュラス(M200))は、表1に示されるとおりである。このモジュラス(M200)は、JIS規格に準じて、加硫ゴムシートからなるゴム試験片を用いて引張試験を行い、200%伸張時応力として測定される。図1に示されたシートの最大厚みA及び高さBは、表1に示されるとおりである。
【0053】
[比較例1]
シートを備えない他は、実施例1と同様の構造を備えたタイヤが得られた。このタイヤでは、インナーライナーとチェーファーの立ち上げ部とが直接接合されている。
【0054】
[実施例2−3]
シートの天然ゴムの質量比が表1に示される通りとされた他は、実施例1と同様にしてタイヤが得られた。
【0055】
[実施例4−7]
シートの200%モジュラスが表2に示される通りとされた他は、実施例1と同様にしてタイヤが得られた。
【0056】
[実施例8−11]
シートの最大厚みAが表3に示される通りとされた他は、実施例1と同様にしてタイヤが得られた。
【0057】
[実施例12−15]
シートの高さBが表4に示される通りとされた他は、実施例1と同様にしてタイヤが得られた。
【0058】
[チェーファー及びシートの捲れ評価]
実施例1−15及び比較例1のタイヤについて、チェーファー及びシートの捲れが評価された。これらのタイヤをそれぞれ100本準備した。これらのタイヤを正規リム(7.50×22.5)に組み込んだ。リム組み後に、チェーファー及びシートの捲れの有無が検査された。その結果が表1から4に記載されている。この評価結果は、チェーファー、シートそれぞれについて、捲れが確認されたタイヤの割合が算出された。この評価は10段階で指数化されている。この数値は、大きいほど好ましい。
【0059】
[耐久性評価]
タイヤを正規リムに組み込み、このタイヤに空気を充填してJTMA規格内圧とした。このタイヤに規格荷重の3倍の荷重を負荷した状態で、走行試験が実施させた。この走行試験により、ビード部に損傷が確認されるまで、所定時間の走行を繰り返した。この損傷が確認された走行時間を10段階で指数化した。その結果が表1から4に記載されている。この数値は、大きいほど好ましい。
【0060】
[ロウカバーのチャーファー捲れ評価]
加硫成型される前に、ロウカバーのチェーファーの捲れが目視確認された。実施例のタイヤではチェーファーがシートから捲れていないかが確認された。比較例のタイヤでは、チェーファーがインナーライナーから捲れていないかが確認された。その結果が表1から4に記載されている。この評価結果は、チェーファー、シートそれぞれについて、捲れが確認されたタイヤの割合が算出された。この評価は10段階で指数化されている。この数値は、大きいほど好ましい。
【0061】
[リム組ダメージ評価]
タイヤを正規リムに組み込んだ後に、ビード部の軸方向内側表面の疵の有無が検査された。その結果が表1から4に記載されている。この評価結果は、疵が確認されたタイヤの割合が算出された。この評価は10段階で指数化されている。この数値は、大きいほど好ましい。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
[実施例16]
図1の基本構造を備えており、図2に示された比E/F、角度θ、立ち上げ部の高さD及び内側表面の曲率半径Rが表5のようにしてタイヤが得られた。このタイヤのインナーライナーには、基材ゴム100質量部に対して6質量部の粘着剤(粘着性樹脂)が添加されていた。
【0067】
[実施例17−19及び比較例2]
比E/Fと、シートの有無とが表5に示される通りとされた他は、実施例16と同様にしてタイヤが得られた。
【0068】
[実施例20−23及び比較例3]
角度θと、シートの有無とが表6に示される通りとされた他は、実施例16と同様にしてタイヤが得られた。
【0069】
[実施例24−25及び比較例4]
粘着剤(粘着性樹脂)の質量と、シートの有無とが表7に示される通りとされた他は、実施例16と同様にしてタイヤが得られた。
【0070】
[実施例26−28及び比較例5]
チェーファーの立ち上げ部の高さDと、シートの有無とが表8に示される通りとされた他は、実施例16と同様にしてタイヤが得られた。
【0071】
[実施例29−31及び比較例6]
チェーファーの立ち上げ部の内側表面の曲率半径Rと、シートの有無とが表9に示される通りとされた他は、実施例16と同様にしてタイヤが得られた。
【0072】
[チェーファーの捲れ及びトウ欠けの評価]
実施例16−31及び比較例2から6のタイヤについて、チェーファーの捲れ及びトウ欠けが評価された。これらのタイヤをそれぞれ100本準備した。これらのタイヤを正規リム(7.50×22.5)に組み込んだ。リム組み後に、チェーファーの捲れ及びトウ欠けの有無が検査された。その結果が表5から9に示されている。この評価結果は、チェーファーの捲れとトウ欠けとについて、それぞれ確認されたタイヤの本数が記載されている。この数値は、小さいほど好ましい。
【0073】
【表5】
【0074】
【表6】
【0075】
【表7】
【0076】
【表8】
【0077】
【表9】
【0078】
表1から表9に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上説明された空気入りタイヤは、トラック、バス等の車両に適用される重荷重用タイヤに特に適しているが、二輪自動車用タイヤ、乗用車用タイヤ等、種々のタイヤに適用しうる
【符号の説明】
【0080】
2・・・タイヤ
4・・・サイドウォール
6・・・ビード
8・・・クリンチ
10・・・カーカス
12・・・補強層
14・・・カバーゴム
15・・・インスレーション
16・・・チェーファー
18・・・インナーライナー
20・・・シート
22・・・コア
24・・・エイペックス
26・・・カーカスプライ
32・・・基部
34・・・立ち上げ部
36・・・外側表面
38・・・内側表面
40・・・トウ
42・・・シート面
Tb・・・ビード部
図1
図2