特許第6241949号(P6241949)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6241949作業用走行機体におけるフロントアタッチメント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241949
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】作業用走行機体におけるフロントアタッチメント
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/40 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
   E02F3/40 A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-256339(P2014-256339)
(22)【出願日】2014年12月18日
(65)【公開番号】特開2016-117989(P2016-117989A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2016年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】安藤 博昭
(72)【発明者】
【氏名】井口 亮
(72)【発明者】
【氏名】石塚 英貴
(72)【発明者】
【氏名】山田 晃廉
【審査官】 岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭48−001521(JP,Y1)
【文献】 実開平07−042352(JP,U)
【文献】 特許第4936784(JP,B2)
【文献】 実開平02−136148(JP,U)
【文献】 特開2003−336280(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0011155(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/40
B02C 1/06
B66C 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームの先端部に揺動自在に設けられる第一作動体と、アームの中間部に揺動自在に設けられる第二作動体と、基端部がアームに設けられ、先端部が第二作動体の基端部に設けられる油圧シリンダと、第一作動体と第二作動体とを連結する連結リンクとを備え、油圧シリンダの伸縮作動に伴い第一作動体と第二作動体とが開閉作動するように構成した作業用走行機体におけるフロントアタッチメントであって、前記第一作動体と連結リンクとの連結部に、伸長している油圧シリンダが縮小する過程で第二作動体の閉作動を先行して行わせて第一作動体の閉作動を遅延させる作動遅延手段を設けたことを特徴とする作業用走行機体におけるフロントアタッチメント。
【請求項2】
作動遅延手段は、第一作動体に設けた長孔と、該長孔に移動自在となるよう連結リンクに設けたピンとを備え、油圧シリンダが縮小する前半過程ではピンが長孔を移動することにより第二作動体のみの閉作動を先行して行わせ、ピンが長孔の移動端に移動した以降に油圧シリンダが縮小する後半過程では第一作動体、第二作動体がともに閉作動を行うようにして第一作動体の閉作動が第二作動体の閉作動に対して遅延するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の作業用走行機体におけるフロントアタッチメント。
【請求項3】
第一作動体はバケット、第二作動体はリッパであることを特徴とする請求項1または2記載の作業用走行機体におけるフロントアタッチメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業用走行機体におけるフロントアタッチメントの技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の作業用走行機体においては、フロントアタッチメントとしてバケット等の第一作動体と、リッパ等の第二作動体とを開閉自在に設け、第二作動体で掘削した掘削物を第一作動体で掬い上げたり、両作動体で例えば木材を把持(挟持)するようにしたものが知られている(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2-136148号公報
【特許文献2】特許第4936784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のものは各作業アームにそれぞれ専用の油圧シリンダを設けて両作動体を開閉するように構成したものであるため、部品点数が多くなると共に、これら2本の油圧シリンダを各別に作動させるための機構が複雑で、煩雑な操作が必要になり、特に熟練していないオペレータにとっては多大な作業負担がってしまうという問題がある。
これに対し特許文献2のものは、一つの油圧シリンダで両作動体の開閉作動を行うようにし、これにより部品点数が多くなってしまったりオペレータへの作業負担が大きい等の前記特許文献1の持つ欠点を解消しているが、このものは油圧シリンダを伸縮作動した場合に、両作動体が同時的に開閉作動することになるため、単に把持作業をするような場合にはあまり支障はないが、例えば第二作動体で掘削したものを第一作動体で掬い取るような二つの作業をする場合、掬い取り作業が早すぎることになって作業性が劣るという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、アームの先端部に揺動自在に設けられる第一作動体と、アームの中間部に揺動自在に設けられる第二作動体と、基端部がアームに設けられ、先端部が第二作動体の基端部に設けられる油圧シリンダと、第一作動体と第二作動体とを連結する連結リンクとを備え、油圧シリンダの伸縮作動に伴い第一作動体と第二作動体とが開閉作動するように構成した作業用走行機体におけるフロントアタッチメントであって、前記第一作動体と連結リンクとの連結部に、伸長している油圧シリンダが縮小する過程で第二作動体の閉作動を先行して行わせて第一作動体の閉作動を遅延させる作動遅延手段を設けたことを特徴とする作業用走行機体におけるフロントアタッチメントである。
請求項2の発明は、作動遅延手段は、第一作動体に設けた長孔と、該長孔に移動自在となるよう連結リンクに設けたピンとを備え、油圧シリンダが縮小する前半過程ではピンが長孔を移動することにより第二作動体のみの閉作動を先行して行わせ、ピンが長孔の移動端に移動した以降に油圧シリンダが縮小する後半過程では第一作動体、第二作動体がともに閉作動を行うようにして第一作動体の閉作動が第二作動体の閉作動に対して遅延するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の作業用走行機体におけるフロントアタッチメントである。
請求項3の発明は、第一作動体はバケット、第二作動体はリッパであることを特徴とする請求項1または2記載の作業用走行機体におけるフロントアタッチメントである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、一つの油圧シリンダが縮小する過程において、まず第二作動体が単独で閉作動をし、しかる後、第一、第二作動体が共に閉作動することになる結果、第二作動体で掘削したものを第一作動体で掬い取るような時間差のある作業を円滑に行うことが、熟練していないオペレータであっても簡単にできる。
請求項2の発明とすることにより、第二作動体の閉作動を先行して行わせて第一作動体の閉作動を遅延させる作動遅延手段を簡単に構成することができる。
請求項3の発明とすることにより、硬い土壌の掘削において、最初にリッパで掘削したものを、時間差をおいてバケットで掬い取ることができることになって作業性が向上すると共に、この掘削、掬い取り作業の全てをバケットで行う場合のようにバケットが早期に損耗してしまうことを回避できることになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】油圧ショベルの全体側面図である。
図2】フロントアタッチメントの側面図である。
図3】フロントアタッチメントの要部斜視図である。
図4】アームが巻込み姿勢のときに油圧シリンダが最伸長した状態を示す側面図である。
図5】アームが巻込み姿勢のときに油圧シリンダが縮小してピンが長孔の移動端に移動した状態を示す側面図である。
図6】アームが巻込み姿勢のときに油圧シリンダが最縮小した状態を示す側面図である。
図7】アームが垂直姿勢のときに油圧シリンダが最伸長した状態を示す側面図である。
図8】アームが垂直姿勢のときに油圧シリンダが縮小してピンが長孔の移動端に移動した状態を示す側面図である。
図9】アームが垂直姿勢のときに油圧シリンダが最縮小した状態を示す側面図である。
図10】アームが上げ姿勢のときに油圧シリンダが最伸長した状態を示す側面図である。
図11】アームが上げ姿勢のときに油圧シリンダが縮小してピンが長孔の移動端に移動した状態を示す側面図である。
図12】アームが上げ姿勢のときに油圧シリンダが最縮小した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1は油圧ショベルの走行機体であって、該走行機体1は、クローラ式の下部走行体2に上部旋回体3を縦軸回りに旋回自在に搭載しているが、該上部旋回体2には、後述するフロント作業部4、運転室(キャブ)5、エンジンルーム6、カウンタウエイト7等の各種の部材装置が設けられていること等は何れも従来通りである。
【0009】
前記フロント作業部4は、上部旋回体3に基端部が揺動自在に軸支され、ブームシリンダ8aの伸縮作動により揺動するブーム8、該ブーム8の先端部に支軸9aを介して揺動自在に軸支され、アームシリンダ9bの伸縮作動により揺動するアーム(スティック)9、該アーム9の先端部(前端部)に、本発明が実施されたフロントアタッチメントAが設けられているが、該フロントアタッチメントAは次のように構成されている。まず、アーム9の先端部に支軸10aを介して揺動自在に軸支されるバケット(本発明の「第一作動体」に相当する。)10が設けられ、アーム9の長さ方向中間部に第一支軸11aを介してリッパ(本発明の「第二作動体」に相当する。)11の中間部が揺動自在に軸支されているが、該リッパ11は、硬い地面や岩盤を砕くための爪部11bがバケット10の開口部10bに対して走行機体1側(後側)で対向するよう設けられているが、該爪部11bは一本状であっても、例えば二本状、三本状等に分岐したフォーク形状のものであっても勿論よい。
【0010】
リッパ11には、バケット開口部10bとは反対側(前側)に延出する基端部11cが設けられるが、該基端部11cは、アーム9の基端部に第一支軸12aを介して揺動自在に軸支され、前方にロッド12bが突出するように設けた油圧シリンダ12の該ロッド12bの先端部に第二支軸12cを介して揺動自在に軸支されている。
さらにリッパ11の爪部11b側の中間部には第二支軸11dを介して連結リンク13の一端部が揺動自在に軸支されている。該連結リンク13の他端部(前端部)にはピン13aが設けられるが、該ピン13aは、バケット10の本体とは反対側(前側)に突出する基端部10cに設けた長孔(本発明の「作動遅延手段」に相当する。)10dに移動自在に貫通支持されている。前記長孔10dは、本実施の形態では、バケット支軸10aを軸心とする円弧Bから外れるよう、例えば接線Cとなって上方傾斜状に切り欠き形成されている。
因みに、長孔10dを円弧Bに沿うように形成した場合、後述するようにピン13aによる長孔上側周縁10eによる支持がなくなるため、バケット10は、油圧シリンダの縮小に合わせて自重揺動することになって本発明は成り立たない。
そしてこのものでは、図7に示すように、アーム支軸9aからの垂線(アーム垂線)D上にバケット支軸10aが位置した垂直姿勢のとき、バケット重心Eはアーム垂線Dよりも前方に位置し、この状態ではバケット10は後方に自重揺動しようとし、これによってバケット10は、長孔10dの上端10eにピン13aが当接する姿勢に維持されるようになっている。
【0011】
そして図4〜6では、バケット支軸10aがアーム支軸9aからの垂線(アーム垂線)Dよりも走行機体1側(後側)に位置する場合(アーム巻込み姿勢)のときに油圧シリンダ12を伸縮移動させたときのフロントアタッチメントAの動きを示しているが、油圧シリンダ12が最も伸長した状態にしたとき(図4参照)では、バケット10は、バケット重心Eが長孔10dの範囲内においてバケット支軸10aからの垂線(バケット垂線)K上に位置する設定になっており、これによってバケット10は、長孔上端10eにピン13aが当接する姿勢(図4の仮想線の姿勢)から垂下して長孔10dの中間位置に位置する設定になっている。
この状態から油圧シリンダ12を縮小させていくと、シリンダ第二支軸12cは、油圧シリンダ12の中心線Fと第二支軸12cシリンダ第一支軸12aを中心とする円弧Gとの交点に位置することになり、このときリッパ11は、該円弧Gに連動する状態で第一支軸11aを支点として爪部11bが下側に向けて揺動する一方、第二支軸11dは、第一支軸11aを支点とする円弧Hの。揺動をすることになる。そうすると連結リンク13は、第二支軸11dの揺動に連動して移動するが、ピン13aは、長孔10dの上側周縁10gに支持される状態となって長孔10dの下端(前端)10fに向けて移動し、そしてピン13aが長孔下端10fに当接(図5参照)するまでの前半の縮小過程のあいだは、ピン13aが長孔下端10fを前方に押しやってのバケット10の掬い上げ作動がないことになって、このあいだバケット10の掬い上げ作動が遅延することになり、リッパ11のみが第一支軸11aを支点とする爪部11bの下側揺動による掘削作業を行うことになる。
この状態から更に油圧シリンダ12を縮小させて最も縮小する状態に移動(図6参照)するまでの後半の縮小過程のあいだでは、リッパ11は第二支軸11dの円弧Hに沿う下方揺動をして前記リッパ11の前記揺動作業が継続されると同時に、ピン13aは、リッパ第二支軸11dを中心とする円弧Iとバケット支軸10aを中心とする円弧Jとの交点位置まで長孔下端10fを前方下方に押しやることになってバケット10は開口部10bが上動する掬い上げ作動をすることになり、これによってリッパ爪部11bがバケット開口部10bを塞ぐ姿勢となるようになっている。
【0012】
つぎに図7〜9では、バケット支軸10aがアーム支軸9aからの垂線K上に位置する場合(アーム垂直姿勢)のときに油圧シリンダ12を伸縮移動させたときのフロントアタッチメントAの動きを示している(以降、円弧等の関係記載は同じであるので省略する。)が、油圧シリンダ12が最も伸長した状態にしたとき(図7参照)では、バケット10は、バケット重心Eがアーム垂線Dよりも前方に位置する姿勢になっており、これによってバケット10は、アーム垂線D側に向けて自重揺動しようとすることになって、長孔上端10eにピン13aが当接する姿勢になっている。
この状態から油圧シリンダ12を伸長させていくと、リッパ11は、第一支軸11aを支点として爪部11bが下側に向けて揺動する一方、第二支軸11dは、第一支軸11aを支点とする揺動をすることになるが、バケット10は、ピン13aが長孔10dの上側周縁10gに支持される状態となってピン13aが長孔10dの下端(前端)10fに向けて移動し、そしてピン13aが長孔下端10fに当接(図8参照)するまでの前半の縮小過程のあいだは、ピン13aが長孔下端10fを前方に押しやってのバケット10の掬い上げ作動がないことになって、このあいだバケット10の掬い上げ作動が遅延することになり、リッパ11のみが第一支軸11aを支点とする爪部11bの下側揺動による掘削作業を行うことになる。
この状態から更に油圧シリンダ12を縮小させて最も縮小する状態に移動(図9参照)するまでの後半の縮小過程のあいだでは、前記リッパ11の前記揺動作業が継続されると同時に、ピン13aが長孔下端10fを前方下方に押しやることになってバケット10は開口部10bが上動する掬い上げ作動をすることになり、これによってリッパ爪部11bがバケット開口部10bを塞ぐ姿勢となるようになっている。
【0013】
さらに図10〜12では、バケット支軸10aがアーム垂線Dよりも前方側に位置する場合(アーム上げ姿勢)のときに油圧シリンダ12を伸縮移動させたときのフロントアタッチメントAの動きを示しているが、油圧シリンダ12を最も伸長させた状態にしたとき(図10参照)では、バケット10は、バケット重心Eがアーム垂線Dよりも前方に位置する姿勢になっており、これによってバケット10は、アーム垂線K側に向けて自重揺動しようとなって長孔上端10eにピン13aが当接する姿勢になっている。
この状態から油圧シリンダ12を伸長させていくと、リッパ11は、第一支軸11aを支点として爪部11bが下側に向けて揺動する一方、第二支軸11dは、第一支軸11aを支点とする揺動をすることになるが、バケット10は、ピン13aが長孔10dの上側周縁10gに支持される状態となってピン13aが長孔10dの下端(前端)10fに向けて移動し、そしてピン13aが長孔下端10fに当接(図11参照)するまでの前半の縮小過程のあいだは、ピン13aが長孔下端10fを前方に押しやってのバケット10の掬い上げ作動がないことになって、このあいだバケット10の掬い上げ作動が遅延することになり、リッパ11のみが第一支軸11aを支点とする爪部11bの下側揺動による掘削作業を行うことになる。
この状態から更に油圧シリンダ12を縮小させて最も縮小する状態に移動(図12参照)するまでの後半の縮小過程のあいだでは、前記リッパ11の前記揺動作業が継続されると同時に、ピン13aが長孔下端10fを前方下方に押しやることになってバケット10は開口部10bが上動する掬い上げ作動をすることになり、これによってリッパ爪部11bがバケット開口部10bを塞ぐ姿勢となるようになっている。
【0014】
叙述の如く構成された本発明を実施するための形態において、アーム9にバケット10とリッパ11とが設けられたものにおいて、伸長している油圧シリンダ12を縮小させていった場合、前半の縮小過程ではバケット10とリッパ11とを連結する連結リンク13に設けたピン13aがバケット10に設けた長孔10dを上端10e(若しくは途中)から下端10fに移動することになるが、この前半の縮小過程では、バケット10は掬い上げ揺動はすることなく停止した遅延姿勢に維持され、リッパ11の爪部11bが下動(閉鎖側に移動)して掘削作動をすることになる。
そしてピン13aが長孔10dの下端10fに達した以降の後半の縮小過程では、リッパ13の閉鎖側の下動が続行されると共に、ピン13aが長孔下端10fに当接してバケット10の基端部10cを前方側に押圧することになってバケット10は開口部10bが上動する掬い取り作動をし、リッパ11はバケット開口部10bを塞ぐように作動することになる。
【0015】
このように本発明が実施されたものにおいては、アーム9にバケット10とリッパ11とが一つの油圧シリンダ12の伸縮作動に連動して開閉作動をすることになるが、この場合において、油圧シリンダの前半の伸縮過程においてはリッパ11のみが閉作動をすることになってバケット10は停止したままの遅延姿勢を維持し、そしてピン13aが長孔10dの移動端である前端10fに達した以降の後半の縮小過程になると、リッパ12と共にバケット10も閉作動を行うことになる。つまり、バケット10は、一つの油圧シリンダ12が縮小する過程で、リッパ11に対して時間差を存する状態で後から閉作動することになり、掘削作業により掘削された掘削物をバケット10で後から時間差を置いた遅延状態で掬い取り作業ができることになって、一連の掘削掬い取り作業が時間差を有する状態ででき、作業性が向上する。
そしてこの時間差があるリッパ12による掘削作業とバケット10による掬い取り作業とが一つの油圧シリンダ12の伸縮作業でできるため、構造の簡略化が達成できると共に、熟練していないオペレータであっても簡単に操作ができることになる。
しかも固い土壌を掘削するような場合に、リッパ12で掘削した土壌をバケット10で掬い取ることになるため、掘削および掬い取り作業の両者をバケット10単独で行う場合に比してバケット10の損耗を低減できることになる。
【0016】
しかもこのものは、バケット10の閉作動がリッパ11の閉作動に対して遅延する構成を、バケット10とリッパ11とを連結する連結リンク13に設けたピン13aが、バケット10に設けた長孔10dを移動することでできるようにしたから、遅延機構の構成が簡単になる。
【0017】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されないものであることは勿論であって、バケットに代えてリッパのような作動体とすることもでき、また遅延機構としては、長孔を連結リンクに設け、ピンをバケットに設けるようにしても実施することができる。
【0018】
因みに、長孔10dの形状は、油圧シリンダ12が最伸長状態から前半の縮小作動に基づいて決定されるものであり、その場合においてピン13aが当接する長孔10dの上端(基端)10eと下端(先端)10fの各位置を決定し、この位置間を直線で結ぶようにすることで前半の縮小過程でバケットが揺動しないように設定することができ、前記実施の形態のように接線に限定されないものであることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、油圧ショベル等の作業用走行機体に設けられるフロントアタッチメントとして利用することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 走行機体
9 アーム
9b アームシリンダ
10 バケット
10a 支軸
10b 開口部
10d 長孔
11 リッパ
11a 第一支軸
11b 爪部
11c 基端部
11d 第二支軸
12 油圧シリンダ
12a 第一支軸
12b ロッド
12c 第二支軸
13 連結リンク
13a ピン
D アーム垂線
E バケット重心

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12