【0009】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態では、フレキシブル熱電変換素子について説明する。
本発明者らは、柱状結晶フェライト材料を用いることで、単結晶フェライトを用いた場合と同等の性能を有するフレキシブル熱電変換素子が形成可能であることを見出した。
ここで、柱状結晶とは、膜を構成する一つ一つの結晶粒が柱状の形状を有しており、面直方向に細長く伸びている結晶構造を指す。このような柱状結晶膜では、粒界がランダムな方向に多数存在する多結晶膜に比べ、面直方向の熱スピン流駆動を阻害する散乱要因が少なくなることから、スピンゼーベック効果に基づく熱電変換素子用の磁性体膜として特に望ましいことが分かった。
さらに、柱状結晶フェライト層内において面直方向に伸びる大きな結晶粒界が、曲げ応力を吸収するクッションの役割を果たすことから、素子が高い可撓性を有することも確認された。
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る熱電変換素子100の構成を概略的に示す斜視図、
図1(b)は
図1(a)の一部拡大断面図である。また、
図2は、
図1(a)及び(b)の熱電変換素子の作用効果である可撓性を示す断面図で、
図2(a)は曲げる前の状態、
図2(b)は曲げた状態を示している。
図3は
図1(a)及び
図1(b)のフェライトめっき法によって作製された柱状結晶フェライトを用いた熱電変換素子の断面を示す電子顕微鏡写真を模した図である。
図1(a)及び
図1(b)に示すように、熱電変換素子100は、起電膜3、柱状結晶フェライト層2、及びそれらを支える基体4を備えている。
柱状結晶フェライト層2は、基体4上に形成されており、起電膜3は柱状結晶フェライト層2に接して形成されている。つまり、基体4、柱状結晶フェライト層2、起電膜3は、この順番で積層されている。この積層方向は、以下、面直方向もしくはz方向と参照される。z方向と直交する面内方向は、x方向とy方向である。なお、x方向とy方向は、互いに直交している。
ここでは、柱状結晶フェライト層2と起電膜3の積層構造からなる発電部11が熱電変換動作を担い、起電膜3の両端部にそれぞれ設けられた端子5a、5bから起電力を外部に取り出す。
柱状結晶フェライト層2は、スピンゼーベック効果を発現するスピン流生成部であり、スピンゼーベック効果によって面直方向に印加された温度勾配∇Tからスピン流Jsを生成(駆動)する。駆動されるスピン流Jsの方向は、温度勾配∇Tの方向と平行あるいは反平行である。
図1(a)及び
図1(b)で示される例では、+z方向の温度勾配∇Tが印加され、+z方向あるいは−z方向に沿ったスピン流Jsが生成される。
非特許文献2によると、柱状結晶フェライト層2の膜厚が200nm以下においては、膜厚が薄いほど得られる熱電力が小さくなる。従って、柱状結晶フェライト層2の膜厚は少なくとも200nm以上であることが望ましい。また、これに加えて後述する性能向上効果、および可撓性という観点から、柱状結晶粒は縦長であることが望ましい。すなわち、柱状結晶粒の高さ(長軸)をa、太さ(短軸)をbとすると、a>bであることが望ましい。
なお、後に述べるフェライトめっき法を用いれば、結晶が柱状であり、柱状結晶の長軸aが0.1μm〜50μm、短軸bが0.01μm〜1μmの範囲内である柱状結晶フェライト層2が得られる。
また、柱状結晶粒は必ずしも理想的な円柱形状を有しているわけではなく、斜めに若干傾いていたり、底部と頂部で太さが異なっていたりする。前者のような斜め円柱の場合、長軸aは膜面に垂直方向の高さ(膜厚に相当)として定義し、後者のように太さが変化する円柱の場合、短軸bはその太さの平均値として定義する。
このスピンゼーベック効果の発現には、柱状結晶フェライト層2が磁化を有する必要がある。磁化の方向は、面内で、かつ起電力を取り出す方向(端子5aと端子5bを結ぶ方向)に垂直な方向であることが望ましい。
本発明の第1の実施の形態では、柱状結晶フェライト層2は+y方向の磁化Mを有している。熱電変換素子を安定に動作させるには、この磁化Mを安定に保持するフェライト材料が望ましく、磁化を保持する強さの指標となる保磁力H
cは、H
c>0.8KA/mであることが望ましい。また、保磁力を高めるために、保磁力の大きなハード磁石や磁性膜を近接配置してもよい。
また、同じく磁化が必要という理由から、柱状結晶フェライト層2は磁化を保持可能なキュリー温度T
C以下で用いられることが望ましい。具体的には、熱電変換素子に印加する高温側温度をT
Hとした場合、T
C>T
Hであることが望ましい。
本発明の第1の実施の形態では、柱状結晶フェライト層2の材料として、組成MFe
2O
4からなるスピネルフェライト材料を、基体4上にフェライトめっき法で作製する。ここで、Mは金属元素であり、例えば、Ni、Zn、Co、Mn、Feなどが用いられる。
フェライトめっき法では、
(i)基体表面に、Ni
2+、Zn
2+、Fe
2+イオンなどを含む水溶液を接触させることで水酸化金属イオンを吸着した後、
(ii)これらを酸化剤により酸化させ(Fe
2+→Fe
3+)、
(iii)これをさらに水溶液中の水酸化金属イオンとフェライト結晶化反応させることにより、基体表面上にフェライト膜を形成する。
上述した(i)〜(iii)のプロセスを順次繰り返すことで、膜厚0.2〜50μmのフェライト膜が形成される。
このフェライトめっきは、基体表面から一層ごとに結晶化する成膜プロセスであることから、面直方向に比べて面内方向の結晶粒界は生じにくい。すなわち、結晶粒が細長い柱状結晶構造が、めっきプロセスにより作製される。フェライトめっきにより作製される結晶構造は、典型的には結晶粒の長さ(長軸)がa=0.2〜50μm、太さ(短軸)がb=20nm〜500nm程度の柱状結晶となる。
図3は、実際にフェライトめっき法を用いて作製した熱電変換素子の電子顕微鏡写真を模した図である。
図3に示すように、長軸がa=1μm、短軸がb=100nmの柱状結晶が形成されている。
本発明の第1の実施の形態のスピネルフェライト材料MFe
2O
4のキュリー温度T
Cは、典型的に200〜400℃程度である。大きなT
Cが必要とされる場合、MとしてNiやCo、Feなどの磁性体元素を含むことが望ましい。例えば、(Ni,Zn)Fe
2O
4は、非特許文献2などで報告されているガーネットフェライト系材料に比べて大きなキュリー温度が得られる。
また、最適な方向(面内で、起電力取り出し方向に垂直な方向)に磁化を保持するために、上記(i)〜(iii)の製造プロセス中に外部磁場を印加することで、柱状結晶フェライト層2において磁気異方性を生成することができる。
具体的には、フェライトめっき形成時に、
図1(a)に示されるy軸に相当する方向に8〜80KA/m程度の外部磁場を印加することで、y軸を柱状結晶フェライト層2の磁化容易軸にすることができる。さらにこの方法では、磁化初期化後に磁場をゼロに戻した場合の残留磁化を高める効果もある。これにより、素子の磁化が最適な方向に保持されやすくなり、熱電変換素子の動作信頼性を高めることができる。なお、この方法で大きな磁気異方性を得るためには、前記金属元素MとしてCoを含むことが望ましい。
起電膜3は、逆スピンホール効果を発現するスピン流−電流変換部である。つまり、起電膜3は、逆スピンホール効果によって上記スピン流Jsから電流Jeを発生する。ここで、発生する起電力の方向は、フェライト膜2の磁化Mの方向と温度勾配∇Tの方向との外積で与えられる(Je∝M×∇T)。
図1(a)及び
図1(b)に示される本発明の第1の実施の形態では、柱状結晶フェライト層2の磁化Mの方向は+y方向であり、温度勾配∇Tの方向は+z方向であることから、電流Jeは+x方向に生成される。
起電膜3には、「スピン軌道相互作用」が大きな原子が含有した材料が用いられる。例えば、Pt、Au、Ir、Pd、Ag、Bi、W、その他f軌道を有する金属、あるいは、それらのうち任意のものを含む合金が用いられる。例えば、Cuなどの母体金属にIrやBi等の重い元素からなる不純物を少量含んだ合金材料であってもよい。尚、電力取り出し効率の観点から言えば、起電膜3の膜厚を、材料に依存する「スピン拡散長(スピン緩和長)」程度かそれ以下に設定することが望ましい。例えば、起電膜3がPt膜である場合、その膜厚をPtのスピン拡散長か同程度、もしくはそれ以下の、1〜30nm程度に設定することが好ましい。
端子5aと端子5bはそれぞれ起電膜3の両端部に電気的に接続されており、起電膜3で生成された起電力を外部に取り出す役割を担う。従って、これらの端子から
図1(a)のように負荷10を接続することで、負荷10への電力供給が可能となる。最大の電力を供給するというインピーダンスマッチングの観点から、端子5aと端子5bの間の起電膜3の内部抵抗は、電力供給先である負荷10の外部抵抗と同程度であることが望ましい。
さらに、本発明の第1の実施の形態では、基体4として可撓性を有する基板などを用いている。例えば、ポリイミド基板やポリエステル基板などの有機樹脂基板が望ましい。基体4の望ましい膜厚は用途や適用シーンによって異なるが、有機樹脂を用いる場合は一般的に材料の熱伝導率が低いため、発電部11に有効に温度差を印加するためにも、基体4の膜厚は30μm以下であることが望ましい。
本発明の第1の実施の形態では、起電膜3の上部にはカバー層6を設けている。ここではカバー層6の材料としても、可撓性を有するものが望ましく、例えば、ポリイミドやポリエステルなどの有機樹脂材料が望ましい。なお、熱電変換機能を具備するにあたって、カバー層6は必須ではない。
以上のような構造を採用することで、(1)単結晶フェライトを用いた素子を超える熱電変換性能と、(2)高い可撓性を両立可能な熱電変換素子が実現できる。
上記本発明の第1の実施の形態による熱電変換素子の作用効果について説明する。
第1の作用効果としては、熱電変換性能の向上を挙げることができる。
スピンゼーベック効果に基づく熱電変換素子では、温度差を保持しながら良好な発電を行うために、スピン流伝播特性が高いと同時に、熱伝導特性が低いことが望ましい。しかし、従来の単結晶フェライトや多結晶フェライトを用いた素子では、これらを同時に満たすことが難しかった。
柱状結晶構造では、単結晶と同等の良好なスピン流伝播特性が期待できる。柱状結晶フェライト層2においては、温度勾配∇Tによって駆動されるスピン流Jsと、結晶粒界12とは、互いに平行(ともに面直方向)となる。従って、絶縁体であるフェライト中のスピン流伝播(局在電子スピン間の微視的な相互作用を通してスピン流が伝播)の場合、このような伝播方向に沿った結晶粒界12がスピン流を散乱する確率は小さい。このため、結晶粒界12がスピン流Jsの伝播を大きく阻害することなく、単結晶フェライトを用いた場合と同様の良好なスピン流伝播特性が得られる。
一方で、柱状結晶構造では、熱伝導を担うフォノンの伝播特性は大きく低下する。結晶粒の短軸bが数十〜数百nmのナノスケールになると、フォノンの平均自由工程に比べて構造のサイズが小さくなることから、フェライト層の結晶粒界12において、フォノンが後方散乱される確率が大きくなり、熱伝導率が低下する。すなわち、大きな熱抵抗によって温度差を保持することが容易になる。この場合、結晶粒の短軸bはb<500nmであることが望ましく、b<200nmであることがさらに望ましい。
このように、本発明の熱電材料(フェライト)では、単結晶と同等の高いスピン流伝導性と、単結晶より低い熱伝導性が同時に得られることから、高い熱電変換性能が実現できる。
第2の作用効果としては、高い可撓性の実現が上げられる。
さらに、柱状結晶構造により、高い可撓性が実現される。柱状結晶フェライト層2中の結晶粒界12は、曲げ応力を吸収するクッションとしての役割を果たす。これにより、曲げ時のフェライト層の破断や、応力による変換性能の低下の可能性が小さく、可撓性の高い熱電変換素子が容易に実現できる。
さらに、カバー層6は、発電部11を外部の損傷要因から保護する役割を果たすと同時に、発電部11に掛かる曲げ応力を弱める働きを担う。
図2(a)から
図2(b)に示されるように熱電変換素子100を湾曲させた場合、上部のカバー層6には引張り応力が、基体4には圧縮応力がそれぞれ掛かるが、内部の発電部11に掛かる応力は比較的小さくできる。これにより、フレキシブルな熱電変換素子の信頼性をさらに高めることができる。
このような高い可撓性を確保するために、柱状結晶フェライト層2の結晶粒が、長軸a>短軸bとなるような縦長の形状を有することが望ましい。
次に、本発明の第1の実施の形態による熱電変換素子の具体例について、
図4(a)及び
図4(b)に基づいて説明する。
図4(a)は本発明の第1の実施の形態の具体例によるポリイミド基板上に形成された熱電変換素子を示す斜視図で、
図4(b)は
図4(a)の熱電変換素子の熱起電力測定結果を示す図である。
本発明例では、基体4として厚さ25μmのポリイミド基板、柱状結晶フェライト層2として厚さ3μmのNi
0.2Zn
0.3Fe
0.5Fe
2O
4、起電膜3として膜厚10nmのPtをそれぞれ採用した。
本発明例では、上記のフェライトめっき法によって、ポリイミド基板上に膜厚3μmのNi
0.2Zn
0.3Fe
0.5Fe
2O
4を作製した。さらにこの上面に、起電膜3として膜厚10nmのPtをスパッタ法により成膜した。素子サイズは幅4mm、長さ6mmで、これに温度印加手段7を用いた温度差ΔTを与えることで、ΔTに比例する熱起電力Vが生じる。
得られた単位温度差あたりの起電力はV/ΔT=2.5μV/Kで、これまでに報告されている単結晶、あるいは単結晶に近いフェライトを用いた素子(非特許文献2)と比較しても大きな値が得られている。これは、本発明の柱状結晶フェライトを用いた素子において、単結晶と同等のスピン流伝導性と、単結晶より低い熱伝導性が両立していることを示唆する結果と考えられる。
本素子の保磁力について調べるために、熱起電力の外部磁場依存性についても評価した。
図5(a)は本発明の第1の実施の形態の具体例によるポリイミド基板上に形成された熱電変換素子を示す斜視図であり、
図5(b)は
図5(a)の熱電変換素子の熱起電力の磁場依存性の実験結果を示すグラフである。
図5(a)及び
図5(b)に示すように、素子に対して外部磁場Hを印加すると、この向きに沿ってフェライトNi
0.2Zn
0.3Fe
0.5Fe
2O
4の磁化が変化し、これによって熱起電力Vが変化したり符号反転したりすることが確認されている。この結果から評価された保磁力H
Cは、H
C=1.6KA/mとなる。
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態においては、多層熱電変換素子について説明する。
図6(a)は本発明の第2の実施の形態による柱状結晶フェライトを用いた多層熱電変換素子を示す斜視図であり、
図6(b)は
図6(a)の一部拡大断面図である。
第1の実施の形態においては、柱状結晶フェライト層2と起電膜3からなる発電部11が一層しかなく、これらの膜厚が薄い場合、大きな温度差を保持することが難しく、大きな電力が得られない。
図6(a)及び
図6(b)に示すように、本発明の第2の実施の形態においては、発電部11を多層積層することにより、より大きな電力を取り出す熱電変換素子が構成できる。
従来報告されていた単結晶フェライトを用いた熱電変換素子の場合、結晶成長のための格子整合性の高い下地や、加熱プロセスが必要とされたため、このような多層化が難しかった。これに対し本発明の柱状結晶フェライトの場合、フェライトめっき法を用いて、例えば、起電膜3の表面や、任意のバッファ層上にも良好な膜形成が可能となる。
図6(a)及び
図6(b)を参照すると、本発明の第2の実施の形態による熱電変換素子100においては、第1の実施の形態と同様の発電部11を、ここでは3段重ねることで多層化を行っている。この多層化により、3つの起電膜3からそれぞれ電流を取り出すことができることから、これらの起電膜3を電気的に並列接続して、外部の負荷10に接続することで、負荷10により大きな電力を与えることが可能となる。
(変形例)
図7は本発明の第2の実施の形態における変形例に係る熱電変換素子を示す斜視図で、
図6(a)に示した発電部間にバッファ層を挿入した多層熱電変換素子を示している。
図7に示すように、変形例に係る熱電変換素子100は、発電部11の間にバッファ層8を挿入してもよい。バッファ層8として弾力性の高い有機樹脂材料を用いれば、フェライトめっきを厚膜化した際に歪み応力が残るのを防ぐ効果もある。このような目的では、例えばポリイミドやポリエステルなどの有機樹脂材料などを用いることが望ましい。
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態では、曲面や凹凸面を有する熱源への熱電変換コーティングについて説明する。
図8は本発明の第3の実施の形態による熱電変換素子を示す断面図で、柱状結晶フェライトを用いた熱電コーティングを示している。
図9は、
図8の柱状結晶フェライトを用いた熱電コーティングの作用効果の説明に供せられる断面図である。
本発明の第3の実施の形態として、曲面や凹凸面を有する熱源への熱電コーティングについて示す。曲面・凹凸面熱源に対しては、第1の実施の形態で示したフレキシブル熱電変換素子を熱源に沿って配置するようにしてもよいが、柱状結晶フェライト層2と起電膜3を熱源に直接コーティングする方法(熱電コーティング)でも同様の効果が容易に得られる。
図8に示すように、本発明の第3の実施の形態では、曲面を有する熱源44に対し、柱状結晶フェライト層2と起電膜3とからなる発電部11を直接コーティングすることで、熱電変換を行う。
柱状結晶フェライト層2は、熱源44の上に直接フェライトめっき法を利用して作製する。このような曲面にフェライトめっき成膜した場合、一つ一つの結晶粒は、局所的な熱源面に対して垂直に成長する。この結果、曲面を持った熱源44に対しても、
図8に示すように、結晶粒界12は熱源面45に対して常に垂直となる。
このため、
図9に示すように、熱源44の温度を一定と仮定した場合、温度勾配∇Tも熱源面45に垂直に生じるため、温度勾配∇Tおよびそれが駆動するスピン流Jsと、結晶粒界12とは、局所的には常に互いに垂直となる。このため、結晶粒界12がスピン流Jsの伝播を大きく阻害することなく、良好な熱電変換動作が期待できる。
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態においては、熱電変換素子として熱源に対して外部から貼り付け可能な熱電変換テープについて説明する。
図10は、本発明の第4の実施の形態による熱電変換素子を示す斜視図で、柱状結晶フェライトを用いた熱電変換シートを示している。
図11は
図10の柱状結晶フェライトを用いた熱電変換シートの実装例を示す断面図である。
図10に示すように、熱電変換素子100としての熱電変換テープは、柱状結晶フェライト層2と起電膜3とからなる発電部11と、シート基材13、および粘着剤14とを備えている。
発電部11には、従来の熱電変換素子と同様の材料を用いる。シート基材13は、可撓性のある薄い膜が望ましく、膜厚30μm以下の有機樹脂材料が望ましい。
粘着剤14は、粘着性のある材料で、様々な熱源に直接貼り付けることが可能となる。
図11に示すように、本発明の第4の実施の形態による熱電変換素子は、素子全体が可撓性を有するため、曲面を有する熱源44にも柔軟に適用可能である。この場合、本発明の第3の実施の形態の場合と同様に、結晶粒界12は熱源面45に対して常に垂直となることから、スピン流が散乱されることなく、良好な熱電変換性能が得られる。