(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コンクリート打設工程において、前記施工対象位置に、前記床コンクリートを打設する高さまで延びる複数のボルトを立設した状態で、前記床コンクリートを打設することを特徴とする請求項1記載のステンレス製床の施工方法。
前記ユニット加工工程において、前記ステンレス製床材に表面から裏面まで貫通する貫通孔を設けることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のステンレス製床の施工方法。
前記ユニット打込み工程において、平面視矩形の前記ステンレス製床ユニットの、4つの辺のうちの1つの辺側が下方になるように、前記ステンレス製床ユニットを斜めに楊重した状態で、前記1つの辺側を前記床コンクリートに打込み、前記ステンレス製床ユニットの前記1つの辺側と対向する辺側を徐々に下げることで、前記ステンレス製床ユニットの全体を前記床コンクリートに打込むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のステンレス製床の施工方法。
前記ユニット打込み工程において、打込み済みのステンレス製床ユニットの隣に新たなステンレス製床ユニットを打込む際に、前記新たなステンレス製床ユニットの、前記打込み済みのステンレス製床ユニットに隣接する一辺側が下方になるように、前記新たなステンレス製床ユニットを斜めに楊重した状態で、前記一辺側を前記床コンクリートに打込み、前記新たなステンレス製床ユニットの前記一辺側と、該一辺側に隣接する前記打込み済みのステンレス製床ユニットの隣接辺側とを仮溶接した後、前記新たなステンレス製床ユニットの前記一辺側と対向する辺側を徐々に下げることで、前記新たなステンレス製床ユニットの全体を前記床コンクリートに打込むことを特徴とする請求項5記載のステンレス製床の施工方法。
前記コンクリート打設工程に先立ち、施工対象範囲の外周部に型枠を構築し、該型枠の少なくとも一部に沿って、前記ユニット打込み工程において前記ステンレス製床ユニットを打込む位置の基準となる基準部材を設置する型枠構築工程を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載のステンレス製床の施工方法。
前記ユニット打込み工程の後に、前記床コンクリート上の前記ステンレス製床ユニットの表面に振動を与える振動付与工程を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載のステンレス製床の施工方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上術した従来の施行方法では、床コンクリートが固まるまで、ステンレス製床材の据え付けを行うことができず、更に、ステンレス製床材を現場で1枚ずつ溶接することになるため、他の一般の床施工と比較して、工程が大幅に必要となる。又、現場溶接によるステンレス製床材の溶接歪みに起因して、ステンレス製床に不陸が発生しやすく、将来的に溶接破断につながる虞がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ステンレス製床の施工期間を短縮すると共に、ステンレス製床の品質を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0007】
(1)複数枚のステンレス製床材を用いてステンレス製床を施工する方法であって、裏面にアンカー部材を溶接した少なくとも2枚の前記ステンレス製床材を平面方向に溶接して、平面視矩形のステンレス製床ユニットへと加工するユニット加工工程と、施工対象位置に床コンクリートを打設するコンクリート打設工程と、前記床コンクリートが固まる前に、該床コンクリート上に複数の前記ステンレス製床ユニットを打込むユニット打込み工程と、前記床コンクリート上で隣接する前記ステンレス製床ユニット同士を溶接するユニット溶接工程と、を含むステンレス製床の施工方法(請求項1)。
【0008】
本項に記載のステンレス製床の施工方法は、ユニット加工工程、コンクリート打設工程、ユニット打込み工程、及び、ユニット溶接工程を含んでいる。ユニット加工工程では、ステンレス製床材の裏面の複数個所に、例えばL型のアンカー部材を溶接し、更に、アンカー部材を溶接した少なくとも2枚のステンレス製床材を、平面方向に溶接することで、平面視矩形のステンレス製床ユニットへと加工する。すなわち、通常は矩形であるステンレス製床材を、取り回し可能な大きさの範囲で、平面視矩形になるように2枚以上溶接して、ステンレス製床ユニットを加工する。ステンレス製床ユニットの加工は、例えば専用のラインを立ち上げて工場で行う。そして、コンクリート打設工程では、ステンレス製床を施工する対象位置に床コンクリートを打設し、その床コンクリートが固まる前に、ユニット打込み工程において、床コンクリートの上に複数のステンレス製床ユニットを敷設する。この際、各ステンレス製床ユニットは、その裏面に溶接されたアンカー部材が、まだ柔らかい床コンクリートの内部に入り込んだ状態で敷設される。その後、例えば床コンクリートが固まった後に、ユニット溶接工程において、隣接するステンレス製床ユニット同士を溶接するものである。
【0009】
すなわち、本項に記載のステンレス製床の施工方法は、ステンレス製床材を1枚ずつ敷設するのではなく、少なくとも2枚のステンレス製床材を平面方向に溶接したステンレス製床ユニット単位で敷設する。このため、ステンレス製床材を1枚ずつ敷設する場合と比較して、ステンレス製床材間の不陸が発生し難くなり、又、施工現場で行う溶接個所が削減される。この溶接個所の削減により、溶接歪みの影響が低減されると共に、溶接に要する工数が削減される。更に、ステンレス製床ユニットの加工は、施工現場ではなく工場等で行うため、複数のステンレス製床ユニットが効率よく加工され、又、ステンレス製床ユニットを構成するステンレス製床材間が、現場溶接よりも品質良く溶接される。加えて、床コンクリートが固まる前のフレッシュコンクリートに対してステンレス製床ユニットを打込むため、アンカー部材を介してステンレス製床ユニットが床コンクリートに強固に固定される。又、ステンレス製床ユニットが床コンクリートに密着するため、ユニット溶接工程における溶接時の熱の影響による、ステンレス製床ユニットの変形が抑制される。更に、床コンクリートが固まる前に、ステンレス製床ユニットの打込みが行えるため、施工作業が効率よく進むこととなる。上記のような様々な作用を奏することで、ステンレス製床の施工期間が短縮されると共に、ステンレス製床の品質が向上されるものである。
【0010】
(2)上記(1)項における、前記コンクリート打設工程において、前記施工対象位置に、前記床コンクリートを打設する高さまで延びる複数のボルトを立設した状態で、前記床コンクリートを打設するステンレス製床の施工方法(請求項2)。
本項に記載のステンレス製床の施工方法は、コンクリート打設工程においてコンクリートを打設する際に、床コンクリートを打設する高さまで延びる複数のボルトを、施工対象位置に立設した状態で、床コンクリートを打設する。すなわち、複数のボルトは、その天端が僅かに床コンクリートの表面に出る態様で、コンクリート内に立設することになる。これにより、床コンクリート上に敷設されるステンレス製床ユニットが、複数のボルトによって支持され、適切な高さに維持される。更に、立設した複数のボルトは、根太組よりもコンクリートが回り込み易いため、床コンクリートの打設が円滑に行われることとなる。なお、複数のボルトを立設する間隔は、床コンクリートが固まる前にステンレス製床ユニット上に作業者が乗っても、ステンレス製床ユニットの撓みが発生しないような適切な間隔とする。
【0011】
(3)上記(2)項における、前記コンクリート打設工程において、前記ボルトの先端に袋ナットを取り付けるステンレス製床の施工方法。
本項に記載のステンレス製床の施工方法は、コンクリート打設工程において立設する複数のボルトの先端に、袋ナットを取り付けるものである。このとき、複数のボルトの長さは、袋ナットが取り付けられた状態で、袋ナットの先端が僅かに床コンクリートの表面に出るような長さとする。これにより、複数のボルトの先端が露出することを防止しながら、ステンレス製床ユニットを適切な高さに維持することになる。
【0012】
(4)上記(1)から(3)項における、前記ユニット加工工程において、前記ステンレス製床材の裏面に補強材を溶接するステンレス製床の施工方法(請求項3)。
本項に記載のステンレス製床の施工方法は、ステンレス製床ユニットを構成する各ステンレス製床材の裏面に、補強材を溶接するものである。補強材は、例えば、断面L型のアングル補強材やフラット補強材等を用い、ステンレス製床材の裏面の外周部や中仕切り部分にグリッド状に溶接する。これにより、ステンレス製床ユニットの打込み時や打込み後に、ステンレス製床ユニットの反りや撓み等の変形が抑制される。更に、補強材の交差部分に切欠きを設けることとすれば、ステンレス製床ユニットの打込み時に、ステンレス製床ユニットと床コンクリートとの間に溜まることが懸念される空気の抜け道が確保されるため、そのような空気溜まりが抑制されるものである。
【0013】
(5)上記(1)から(4)項における、前記ユニット加工工程において、前記ステンレス製床材に表面から裏面まで貫通する貫通孔を設けるステンレス製床の施工方法(請求項4)。
本項に記載のステンレス製床の施工方法は、ステンレス製床ユニットを構成する各ステンレス製床材に、表面から裏面まで貫通する貫通孔を設けるものである。これにより、上記(4)項に記載したように、ステンレス製床ユニットの打込み時に、ステンレス製床ユニットと床コンクリートとの間に溜まることが懸念される空気の抜け穴として貫通孔を利用し、空気溜まりを抑制するものである。なお、貫通孔を設ける位置や数量は、ステンレス製床材の大きさや、打込み時のステンレス製床ユニットの姿勢等を考慮して、空気が効率よく抜けるような適切な位置や数量に設定すればよい。
【0014】
(6)上記(1)から(5)項における、前記ユニット打込み工程において、平面視矩形の前記ステンレス製床ユニットの、4つの辺のうちの1つの辺側が下方になるように、前記ステンレス製床ユニットを斜めに楊重した状態で、前記1つの辺側を前記床コンクリートに打込み、前記ステンレス製床ユニットの前記1つの辺側と対向する辺側を徐々に下げることで、前記ステンレス製床ユニットの全体を前記床コンクリートに打込むステンレス製床の施工方法(請求項5)。
【0015】
本項に記載のステンレス製床の施工方法は、ユニット打込み工程において、まず、敷設する平面視矩形のステンレス製床ユニットを、その4つの辺のうちの1つの辺側が下方になるように、クレーン等を用いて斜めに楊重する。そして、この状態でステンレス製床ユニットを降ろすことで、下方にあるステンレス製床ユニットの1つの辺側を、床コンクリートに先に打込む。その後、ステンレス製床ユニットの、先に打込んだ1つの辺側と対向する辺側を徐々に下げることで、ステンレス製床ユニット全体を床コンクリートに打込むものである。これにより、ステンレス製床ユニットは、先に打込まれる1つの辺側からそれに対向する辺側に向かって、徐々に床コンクリートに密着することになるため、ステンレス製床ユニットと床コンクリートとの間に溜まることが懸念される空気が、対向する辺側へと抜けていくことになる。このため、ステンレス製床ユニットは、上記の空気溜まりが抑制されながら、床コンクリートへ密着するように、効率よく敷設されることとなる。なお、ステンレス製床ユニットの4つの辺に、一対の長辺と一対の短辺とが含まれる場合は、空気の抜けや作業性等を考慮して、ステンレス製床ユニットを一方の長辺側から打込むことが望ましい。
【0016】
(7)上記(6)項における、前記ユニット打込み工程において、打込み済みのステンレス製床ユニットの隣に新たなステンレス製床ユニットを打込む際に、前記新たなステンレス製床ユニットの、前記打込み済みのステンレス製床ユニットに隣接する一辺側が下方になるように、前記新たなステンレス製床ユニットを斜めに楊重した状態で、前記一辺側を前記床コンクリートに打込み、前記新たなステンレス製床ユニットの前記一辺側と、該一辺側に隣接する前記打込み済みのステンレス製床ユニットの隣接辺側とを仮溶接した後、前記新たなステンレス製床ユニットの前記一辺側と対向する辺側を徐々に下げることで、前記新たなステンレス製床ユニットの全体を前記床コンクリートに打込むステンレス製床の施工方法(請求項6)。
【0017】
本項に記載のステンレス製床の施工方法は、打込み済みのステンレス製床ユニットの隣に新たなステンレス製床ユニットを打込む際に、新たなステンレス製床ユニットの、斜めに楊重された状態で下方となる辺側を、打込み済みのステンレス製床ユニットと隣接する一辺側とする。すなわち、新たなステンレス製床ユニットを、打込み済みのステンレス製床ユニットと隣接する一辺側から打込み、更に、その新たなステンレス製床ユニットの一辺側と、この一辺側と隣接する打込み済みのステンレス製床ユニットの隣接辺側とを、スポット溶接等で仮固定する。その後、新たなステンレス製床ユニットの、仮固定した一辺側と対向する辺側を徐々に下げることで、新たなステンレス製床ユニット全体を床コンクリートに打込むものである。このように、新たなステンレス製床ユニットの一辺側を、打込み済みのステンレス製床ユニットの隣接辺側へ仮固定した状態で、新たなステンレス製床ユニットを打込むため、打込みの作業性が向上すると共に、新たなステンレス製床ユニットの位置精度が高められることとなる。
【0018】
(8)上記(1)から(7)項において、前記コンクリート打設工程に先立ち、施工対象範囲の外周部に型枠を構築し、該型枠の少なくとも一部に沿って、前記ユニット打込み工程において前記ステンレス製床ユニットを打込む位置の基準となる基準部材を設置する型枠構築工程を含むステンレス製床の施工方法(請求項7)。
本項に記載のステンレス製床の施工方法は、コンクリート打設工程に先立ち、施工対象範囲の外周部に型枠を構築する型枠構築工程を含むものである。更に、この型枠構築工程では、型枠の少なくとも一部に沿って、基準部材を設置する。この基準部材は、ユニット打込み工程においてステンレス製床ユニットを打込む際に、特に型枠沿いに打込むステンレス製床ユニットの基準位置として利用されるものである。これにより、型枠沿いに打込むステンレス製床ユニットの位置精度が高まることになる。更に、型枠沿いに打込んだステンレス製床ユニットを基準として、その隣に打込むステンレス製床ユニットの位置精度も高まることになるため、延いては、全てのステンレス製床ユニットの位置精度が高まることになる。又、型枠沿いにステンレス製床ユニットを打込む際に、基準部材にステンレス製床ユニットを仮固定することとすれば、ステンレス製床ユニットの位置精度に加えて、打込み作業の作業性が高まるものである。
【0019】
(9)上記(1)から(8)項における、前記ユニット打込み工程の後に、前記床コンクリート上の前記ステンレス製床ユニットの表面に振動を与える振動付与工程を含むステンレス製床の施工方法(請求項8)。
本項に記載のステンレス製床の施工方法は、ユニット打込み工程の後に、床コンクリート上のステンレス製床ユニットの表面に、例えばバイブレータ等で振動を与える振動付与工程を含むものである。これにより、ステンレス製床ユニットに溶接されたアンカー部材の周りの、コンクリートの充填性がより高められるため、ステンレス製床ユニットがより強固に固定され、更に、ステンレス製床ユニットと床コンクリートとの密着性がより高まるものである。
【0020】
(10)複数枚のステンレス製床材が用いられたステンレス製床の構造であって、裏面にアンカー部材が溶接された少なくとも2枚の前記ステンレス製床材が平面方向に溶接されて加工された、平面視矩形のステンレス製床ユニットが、施工対象位置に打設された床コンクリートに複数打込まれ、隣接する前記ステンレス製床ユニット同士が溶接されていることを特徴とするステンレス製床の構
造。
【0021】
(11)上記(10)項において、前記床コンクリートの内部に、該床コンクリートの打設高さまで延びる複数のボルトが立設されているステンレス製床の構
造。
(12)上記(11)項において、前記ボルトの先端に袋ナットが取り付けられているステンレス製床の構造。
(13)上記(10)から(12)項において、前記ステンレス製床ユニットを構成する各ステンレス製床材の裏面に、補強材が溶接されているステンレス製床の構
造。
【0022】
(14)上記(10)から(13)項において、前記ステンレス製床ユニットを構成する各ステンレス製床材に、表面から裏面まで貫通する貫通孔が設けられているステンレス製床の構
造。
そして、(10)から(14)項に記載のステンレス製床の構造は、各々、上記(1)から(5)項のステンレス製床の施工方法によって構築されるものであり、上記(1)から(5)項のステンレス製床の施工方法と同等の作用を奏するものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明は上記のような構成であるため、ステンレス製床の施工期間を短縮することができると共に、ステンレス製床の品質を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づき説明する。なお、図面の全体にわたって、同一部分又は対応する部分は、同一符号で示している。
図1は、本発明の実施の形態に係るステンレス製床の施工方法の一例を示すフロー図である。この
図1のフロー図に沿って、
図2〜
図7を参照しながら、本発明の実施の形態に係るステンレス製床の施工方法を具体的に説明する。
【0026】
S10(ユニット加工):本工程では、施工現場に敷設するステンレス製床材を、施工現場に搬入する前に、工場等でステンレス製床ユニットへと加工する。
図2には、ステンレス製床ユニットに用いるために加工したステンレス製床材12を示している。なお、
図2(a)のイメージ平面図は、ステンレス製床材12の表面12a側から図示したものであるが、説明の便宜上、ステンレス製床材12をハッチングで示すと共に、ステンレス製床材12の紙面奥側にある部材が図示されるように、ステンレス製床材12を透過させて示している。又、
図2(b)は、
図2(a)の右方向から見たイメージ断面図である。
【0027】
具体的には、まず、
図2に示すように、各ステンレス製床材12の裏面12bに、複数のアンカー部材14と、複数の補強部材16とを溶接する。
図2の例では、L型のアンカー部材14を、そのL型の短辺部が
図2(b)の下方側となる向きで、1枚のステンレス製床材12の裏面12bに、互いに間隔を空けて23箇所に溶接している。又、
図2の例では、補強部材16として、アングル補強材16Aとフラット補強材16Bとを用いており、アングル補強材16Aを主にステンレス製床材12の裏面12bの外周部に、フラット補強材16Bを主にステンレス製床材12の裏面12bの中仕切り部分に、夫々溶接している。すなわち、アングル補強材16Aとフラット補強材16Bとを、ステンレス製床材12の裏面12bにグリッド状に溶接している。この際、
図2(a)の縦方向と横方向とに延在するフラット補強材16B同士の交差部分には、切欠き18を設けている。
【0028】
更に、アングル補強材16Aは、ステンレス製床材12の裏面12bの外周端部から、僅かにシフトした位置に溶接している。すなわち、
図2(a)における上側に溶接されたアングル補強材16Aは、ステンレス製床材12の外周端部よりも、僅かに上方向にシフトした位置に溶接されており、
図2(a)における左側に溶接されたアングル補強材16Aは、ステンレス製床材12の外周端部よりも、僅かに左方向にシフトした位置に溶接されている。これにより、これらのアングル補強材16Aが溶接された箇所には、ステンレス製床材12とアングル補強材16Aとの段差部22が形成されている。一方、
図2(a)における下側に溶接されたアングル補強材16Aは、ステンレス製床材12の外周端部よりも、僅かに上方向にシフトした位置に溶接されており、
図2(a)における右側に溶接されたアングル補強材16Aは、ステンレス製床材12の外周端部よりも、僅かに左方向にシフトした位置に溶接されている。これにより、これらのアングル補強材16Aが溶接された箇所には、ステンレス製床材12がアングル補強材16Aよりも突出した突出部24が形成されている。
【0029】
更に、本工程では、ステンレス製床材12に、その表面12aから裏面12bまで貫通する貫通孔20を設けている。
図2(a)の例では、ステンレス製床材12の
図2(a)における上辺側の端部近傍に、左右方向に間隔を空けて2箇所の貫通孔20が設けられている。貫通孔20を設ける位置や数量は、ステンレス製床材12の大きさや、打込み時のステンレス製床ユニットの姿勢等を考慮して設定する。なお、詳細は後述するが、
図2(a)の例で貫通孔20が設けられたステンレス製床材12の上辺側は、ステンレス製床ユニットとして加工された状態で、ステンレス製床材12の下辺側よりも後に、床コンクリートに打込まれる部位である。又、
図2(a)に符号52で示されている部材については、後程詳しく説明する。
【0030】
次に、本工程では、
図3に示すように、上記のように加工したステンレス製床材12を、少なくとも2枚、
図3の例では4枚溶接して、ステンレス製床ユニット30へと加工する。すなわち、
図3(a)に示すようなステンレス製床材12を、まず、
図3(b)に示すように平面方向に2枚並べて、符号Xで示す箇所を溶接することで、小ユニット30´を形成する。この際、2枚のステンレス製床材12を同じ向きに並べ、一方のステンレス製床材12の突出部24(
図2参照)を、他方のステンレス製床材12の段差部22(
図2参照)に重ねて、ステンレス製床材12同士の位置合わせをする。この状態で、専用の溶接架台の上に2枚のステンレス製床材12をセットし、ステンレス製床材12同士を仮止めした上で、例えばティグ溶接等で、符号Xで示す箇所を溶接する。
【0031】
更に、
図3(c)に示すように、
図3(b)の如く2枚のステンレス製床材12を溶接した小ユニット30´を、平面方向に2枚並べて、符号Yで示す箇所を溶接することで、平面視矩形のステンレス製床ユニット30へと加工する。この際、2枚の小ユニット30´を同じ向きに並べ、一方の小ユニット30´を構成するステンレス製床材12の突出部24(
図2参照)を、他方の小ユニット30´を構成するステンレス製床材12の段差部22(
図2参照)に重ねて、小ユニット30´同士の位置合わせをする。この状態で、専用の溶接架台の上に2枚の小ユニット30´をセットし、小ユニット30´同士を仮止めした上で、例えばティグ溶接等で、符号Yで示す箇所を溶接する。
【0032】
上記のように加工された平面視矩形のステンレス製床ユニット30は、例えば、
図3(c)における上の辺30a側と左の辺30c側とに、
図2に示したステンレス製床材12の段差部22が配置され、
図3(c)における下の辺30b側と右の辺30d側とに、
図2に示したステンレス製床材12の突出部24が配置される態様となる。本工程では、このようなステンレス製床ユニット30を、現場の全施工範囲に敷設するのに十分な数量分、加工しておくものである。
【0033】
ここで、これらに限定するものではないが、ステンレス製床材12やステンレス製床ユニット30等の、具体的な大きさの例を挙げる。
図2を参照して、ステンレス製床材12は、例えば、長辺の長さが3000mm、短辺の長さが1000mm、厚さが4mmである。アンカー部材14は、例えば、直径が10mm、長辺部の長さが75mm、短辺部の長さが15mmである。又、アンカー部材14は、
図2(a)における横375mm×縦500mmの間隔で、千鳥格子状に23か所溶接されている。アングル補強材16Aは、断面L型の両辺部の長さが40mm、厚さが3mm、フラット補強材16Bは、ステンレス製床材12の裏面12bからの突出長さが50mm、厚さが5mmである。又、アングル補強材16Aとフラット補強材16Bとは、
図2(a)における横750mm×縦500mmのグリッド状に溶接されている。アンカー部材14は、L型以外の形状であってもよく、補強材16も、アングル補強材16Aとフラット補強材16Bとに限定されるものではない。更に、
図3を参照して、小ユニット30´は、横の長さが約3000mm、縦の長さが約2000mmであり、ステンレス製床ユニット30は、横の長さが約6000mm、縦の長さが約2000mmである。
【0034】
S20(型枠構築):現場の施工対象範囲の外周部に型枠を構築する。具体的には、
図4に示すように、施工対象範囲を囲うようにして型枠40を構築し、更に、型枠40の少なくとも一部に沿って、基準部材44を設置する。
図4の例において、基準部材44は、板状の基準スターター44Aと、断面L型の基準アングル44Bとで構成されている。より詳しくは、型枠40から所定距離離れた位置に、下方に固定用のコンクリート等を打設して下がり防止材42を立設し、この下がり防止材42の上に、基準アングル44Bを固定する。そして、基準アングル44Bの設置高さまで、型枠40から下がり防止材42の周囲までの範囲に、コンクリート48を打設する。更に、打設したコンクリート48の上面に、型枠40に沿わせて基準スターター44Aを設置し、基準スターター44Aの図中右側の一部を、基準アングル44Bの上面に固定する。ここで、下がり防止材42を立設する位置は、下がり防止材42上に固定した基準アングル44Bと、型枠40に沿わせた基準スターター44Aとの間に、段差部46が形成されるような位置とする。なお、基準アングル44Bの設置高さは、次工程で床コンクリートを打設する高さであり、コンクリート48は、床コンクリートの一部を成すものである。
【0035】
S30(コンクリート打設):型枠40で囲まれた施工対象範囲の少なくとも一部、すなわち、少なくとも次工程でステンレス製床ユニット30を打込む施工対象位置に、床コンクリート50を打設する。具体的には、
図4に示すように、まず、先端に袋ナット54を取り付けた複数のボルト52を、下方に固定用のコンクリート等を打設することで、施工対象位置に互いに間隔を空けて立設する。そして、複数のボルト52を立設した状態の施工対象位置に、各ボルト52の先端に取り付けた袋ナット54の先端高さまで、例えばバルチップ等を混入した床コンクリート50を打設する。更に、打設した床コンクリート50の天端を、浮陸を無くす程度にトンボ曳き等で均して平滑にする。
【0036】
ここで、複数のボルト52は、例えば、次工程で敷設するステンレス製床ユニット30を構成する1枚のステンレス製床材12に対して、
図2(a)に示すような配置になる数量及び位置に立設する。すなわち、
図2(a)の例では、1枚のステンレス製床材12が打込まれる範囲当たりに、横750mm×縦500mmの等間隔で8本のボルトが立設されている。更に、理由については後述するが、ステンレス製床ユニット30を構成する4枚のステンレス製床材12のうち、
図3(c)の上側2枚のステンレス製床材12が打込まれる範囲には、
図2(a)の上方側に5本のボルト52が増し打ちされている。なお、袋ナット54を含むボルト52の高さは、上記S20で説明した基準アングル44Bの設置高さと同じであり、コンクリート48や床コンクリート50の打設高さと同じである。これに限定されるものではないが、ボルト52は、例えば、直径が12mm、長さが140mmである。
【0037】
S40(ユニット打込み):上記S10で加工した複数のステンレス製床ユニット30を、工場等から現場へと搬入し、上記S30で打設した床コンクリート50が固まる前に、床コンクリート50上に打込む。具体的には、床コンクリート50の表面を平滑にした後に、例えば、バキュームリフター及びクレーン等を用いてステンレス製床ユニット30を楊重する。この際、平面視矩形のステンレス製床ユニット30は、長辺側でありかつ突出部24が配置された、
図3(c)に示した辺30b側が下方になるように、斜めに楊重する。この状態で、
図5(a)に示すように、ステンレス製床ユニット30の辺30b側の突出部24を、基準スターター44Aと基準アングル44Bとの間の段差部46に沿わせて位置合わせし、辺30b側の突出部24を、基準アングル44Bに対してスポット溶接等で仮固定する。その後、ステンレス製床ユニット30の辺30a側を徐々に下げ、ステンレス製床ユニット30の全体を床コンクリート50に打込む。
【0038】
すなわち、
図3(c)を参照して、ステンレス製床ユニット30を構成するステンレス製床材12単位で説明すると、まず、下方の2枚のステンレス製床材12の下辺側から打込み、その後、下方の2枚のステンレス製床材12の上辺側、上方の2枚のステンレス製床材12の下辺側、上方の2枚のステンレス製床材12の上辺側の順で、打込むことになる。これにより、上述したように、貫通孔20(
図2(a)参照)が設けられた各ステンレス製床材12の上辺側は、各ステンレス製床材12の下辺側よりも後に、床コンクリート50に打込まれる。なお、
図5では、説明の便宜上、ステンレス製床ユニット30の裏面に溶接したアンカー部材14と補強材16との図示を省略している。
【0039】
続いて、
図6を参照して、打ち込み済みのステンレス製床ユニット30Xの隣に、新たなステンレス製床ユニット30Yを打込む場合について説明する。この場合は、長辺側でありかつ段差部22が配置されている、打ち込み済みのステンレス製床ユニット30Xの辺30a側に、長辺側でありかつ突出部24が配置されている、新たなステンレス製床ユニット30Yの辺30b側を隣接させることになる。そこで、まず、バキュームリフター及びクレーン等を用いて、辺30b側が下方になるように、新たなステンレス製床ユニット30Yを楊重する。この状態で、
図6(a)に示すように、新たなステンレス製床ユニット30Yの辺30b側の突出部24を、打ち込み済みのステンレス製床ユニット30Xの辺30a側の段差部22に沿わせて位置合わせする。そして、新たなステンレス製床ユニット30Yの突出部24を、打ち込み済みのステンレス製床ユニット30Xの段差部22に対して、スポット溶接等で仮固定する。その後、新たなステンレス製床ユニット30Yの辺30a側を徐々に下げ、新たなステンレス製床ユニット30Yの全体を床コンクリート50に打込む。すなわち、この場合も、貫通孔20(
図2(a)参照)が設けられた各ステンレス製床材12の上辺側は、各ステンレス製床材12の下辺側よりも後に、床コンクリート50に打込まれる。なお、
図6では、説明の便宜上、一部を除いて、ステンレス製床ユニット30X、30Yの裏面に溶接したアンカー部材14と補強材16との図示を省略している。
【0040】
ここで、上記S30において言及した、ボルト52が増し打ちされている理由について説明する。ボルト52が増し打ちされている位置は、
図3(c)の上側2枚のステンレス製床材12が打込まれる位置の上方側、すなわち、ステンレス製床ユニット30の辺30a側が打込まれる位置である。このステンレス製床ユニット30の辺30a側は、
図6で説明したように、隣接するステンレス製床ユニット30を打込む際の掛かりとなる部分であるため、隣接するステンレス製床ユニット30の重量の一部を支えることになる。このため、隣接するステンレス製床ユニット30を打込む際の掛かりとなる辺30a側の高さが、より確実に維持されるように、ステンレス製床ユニット30の辺30a側が打込まれる位置に、ボルト52が増し打ちされているものである。
【0041】
S50(振動付与):上記S40において床コンクリート50上に敷設したステンレス製床ユニット30の表面に、バイブレータ等を利用して振動を付与する。
S60(ユニット打込み判定):全施工対象範囲にステンレス製床ユニット30を打込んだか否かを判定する。そして、全施工対象範囲にステンレス製床ユニット30を打込んだ場合(YES)は、S70へ移行し、まだステンレス製床ユニット30を打込んでいない施工対象範囲が残っている場合(NO)は、上記S30へ復帰する。すなわち、全施工対象範囲にステンレス製床ユニット30を打込むまで、上記S30からS50を繰り返し行うものである。換言すれば、本実施例では、施工対象範囲を複数の領域に区切って、領域毎に上記S30からS50を連続して行っているが、施工対象範囲の大きさ等に応じて、全施工対象範囲に対して上記S30からS50を連続して行ってもよい。
【0042】
ここで、面積等の制約によってステンレス製床ユニット30を打込むことができない施工対象位置、及び、施工対象範囲に複数のステンレス製床ユニット30を打込む順序について言及する。例えば、
図7は、施工対象範囲を示すイメージ平面図であり、この施工対象範囲は、ステンレス製床ユニット30の大きさに対応する面積の12個の施工対象位置A〜D、F〜I、K〜Nと、ステンレス製床ユニット30の大きさよりも小さい面積の3個の施工対象位置E、J、Oとに分割できる。更に、施工対象位置M、Nには、柱60が立てられている。すなわち、施工対象位置A〜D、F〜I、K、Lには、ステンレス製床ユニット30をそのまま敷設できるが、施工対象位置E、J、M〜Oには、ステンレス製床ユニット30をそのまま敷設することはできない。
【0043】
そこで、本発明の実施の形態に係るステンレス製床の施工方法では、施工対象位置E、J、M〜Oのような施工対象位置には、平面視矩形状に加工したステンレス製床ユニット30を敷設するのではなく、形状を加工したステンレス製床材12を敷設する。すなわち、まず、各施工対象位置の平面視形状に合わせて、複数又は単数のステンレス製床材12の形状を加工する。そして、各施工対象位置に打設した床コンクリート50の天端を、金鏝等で均して平坦にした後、形状を加工した複数又は単数のステンレス製床材12を、各施工対象位置の床コンクリート50上に直に敷設する。その状態で、あと施工アンカー等を用いて、各施工対象位置に複数又は単数のステンレス製床材12を固定する。なお、裏面にアンカー部材14及び補強材16を溶接したステンレス製床ユニット30の平面視形状を、施工対象位置E、J、M〜Oの各々の平面視形状に倣って加工し、それらを各施工対象位置に打込むこととしてもよい。
【0044】
一方、ステンレス製床ユニット30を打込む順序について言及すると、
図7のような施工対象範囲では、図中上方側に構築した型枠40に沿って基準部材44を設置する(
図4参照)。そして、基本的には、施工対象位置A〜D、F〜I、K、Lに、この記載順序で、段差部22が
図7中下側及び右側に配置され、突出部24が
図7中上側及び左側に配置される向きで、ステンレス製床ユニット30を敷設する(
図2参照)。この際、施工対象位置A、F、Kには、
図5で説明した要領で、基準部材44に沿ってステンレス製床ユニット30を敷設する。又、施工対象位置B〜D、G〜I、Lには、
図6で説明した要領で、
図7中上側に隣接する打込み済みのステンレス製床ユニット30に沿って、ステンレス製床ユニット30を敷設する。
【0045】
更に、施工対象位置F〜Iの各々では、それらの
図7中左側の施工対象位置A〜Dに先に敷設したステンレス製床ユニット30の、
図7中右側に配置された段差部22に、施工対象位置F〜Iの各々に敷設するステンレス製床ユニット30の、
図7中左側に配置される突出部24が重なるように、各ステンレス製床ユニット30を敷設する。同様に、施工対象位置K、Lでは、施工対象位置F、Gに敷設したステンレス製床ユニット30の、
図7中右側に配置された段差部22に、施工対象位置K、Lの各々に敷設するステンレス製床ユニット30の、
図7中左側に配置される突出部24が重なるように、各ステンレス製床ユニット30を敷設する。その後、施工対象位置E、J、M〜Oの順序で、上述したように形状を加工した、ステンレス製床材12又はステンレス製床ユニット30を敷設する。なお、施工対象位置A〜Oの順序で、ステンレス製床ユニット30やステンレス製床材12を敷設してもよい。
【0046】
S70(ユニット溶接):床コンクリート50上で隣接するステンレス製床ユニット30同士を溶接する。具体的に、
図7を例に説明すると、
図7で上下方向及び左右方向に隣接する施工対象位置に敷設したステンレス製床ユニット30(形状を加工したステンレス製床ユニット30及びステンレス製床材12を含む)の間、すなわち、
図7に破線で示している箇所を、例えばティグ溶接によって溶接する。本工程は、床コンクリート50の強度と、床コンクリート50の水分量の減少とが、所定の基準値を満たすことを確認した上で実行する。又、ステンレス製床ユニット30を構成する各ステンレス製床材12に設けた貫通孔20(
図2(a)参照)を、本工程において塞ぐように溶接してもよい。なお、本工程についても、施工対象範囲に含まれる複数の領域毎に行ってもよい。
【0047】
続いて、
図8には、上述した本発明の実施の形態に係るステンレス製床の施工方法によって構築された、本発明の実施の形態に係るステンレス製床の構造10を示している。
図8及び上述した施工方法から明らかなように、ステンレス製床の構造10は、施工対象位置に打設された床コンクリート50に、複数のステンレス製床ユニット30が打込まれ、隣接するステンレス製床ユニット30同士が溶接された構造である。ステンレス製床ユニット30の各々は、少なくとも2枚のステンレス製床材が平面方向に溶接されて、平面視矩形に加工されている。又、ステンレス製床ユニット30を構成するステンレス製床材12の各々には、その裏面に、複数のアンカー部材14と、複数の補強部材16(16A、16B)とが溶接されており、更に、表面から裏面まで貫通する貫通孔20(
図2(a)参照)が設けられている。又、床コンクリート50内部には、袋ナット54が先端に取り付けられた状態で床コンクリート50の打設高さまで延びた、複数のボルト52が立設されている。
【0048】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係るステンレス製床の施工方法は、
図1に示すように、ユニット加工工程S10、コンクリート打設工程S30、ユニット打込み工程S40、及び、ユニット溶接工程S70を含んでいる。ユニット加工工程S10では、
図2に示すように、ステンレス製床材12の裏面12bの複数個所(
図2の例では23箇所)に、例えばL型のアンカー部材14を溶接する。更に、
図3に示すように、アンカー部材14を溶接した少なくとも2枚(
図3の例では4枚)のステンレス製床材12を、平面方向に溶接することで、平面視矩形のステンレス製床ユニット30へと加工する。すなわち、通常は矩形であるステンレス製床材12を、取り回し可能な大きさの範囲で、平面視矩形になるように2枚以上溶接して、ステンレス製床ユニット30を加工する。ステンレス製床ユニットの30加工は、例えば専用のラインを立ち上げて工場で行う。
【0049】
そして、コンクリート打設工程S30では、
図4に示すように、ステンレス製床を施工する対象位置に床コンクリート50を打設する。更に、その床コンクリート50が固まる前に、
図5及び
図6に示すように、ユニット打込み工程S40において、床コンクリート50の上に複数のステンレス製床ユニット30を敷設する。この際、各ステンレス製床ユニット30は、その裏面に溶接されたアンカー部材14が、まだ柔らかい床コンクリート50の内部に入り込んだ状態で敷設される(
図8参照)。その後、例えば床コンクリート50が固まった後に、ユニット溶接工程S70において、隣接するステンレス製床ユニット30同士を溶接するものである。
【0050】
すなわち、本発明の実施の形態に係るステンレス製床の施工方法は、ステンレス製床材12を1枚ずつ敷設するのではなく、少なくとも2枚のステンレス製床材12を平面方向に溶接したステンレス製床ユニット30単位で敷設する。このため、ステンレス製床材12を1枚ずつ敷設する場合と比較して、ステンレス製床材12間の不陸が発生し難くなり、又、施工現場で行う溶接個所を削減することができる。この溶接個所の削減により、溶接歪みの影響を低減できると共に、溶接に要する工数を削減することができる。更に、ステンレス製床ユニット30の加工は、施工現場ではなく工場等で行うため、複数のステンレス製床ユニット30を効率よく加工することが可能であり、又、ステンレス製床ユニット30を構成するステンレス製床材12間を、現場溶接よりも品質良く溶接することができる。
【0051】
加えて、床コンクリート50が固まる前のフレッシュコンクリートに対してステンレス製床ユニット30を打込むため、アンカー部材14を介して、ステンレス製床ユニット30を床コンクリート50に強固に固定することができる。又、ステンレス製床ユニット30が床コンクリート50に密着するため、ユニット溶接工程S70における溶接時の熱の影響による、ステンレス製床ユニット30の変形を抑制することができる。更に、床コンクリート50が固まる前に、ステンレス製床ユニット30の打込みが行えるため、施工作業を効率よく進めることが可能となる。本発明の実施の形態に係るステンレス製床の施工方法は、上記のような様々な作用効果を奏することで、ステンレス製床の施工期間を短縮できると共に、ステンレス製床の品質を向上することが可能となる。
【0052】
又、本発明の実施の形態に係るステンレス製床の施工方法は、ユニット加工工程S10において、
図2に示すように、ステンレス製床ユニット30を構成する各ステンレス製床材12の裏面12bに、補強材16を溶接するものである。補強材16は、例えば、断面L型のアングル補強材16Aやフラット補強材16B等を用い、ステンレス製床材12の裏面12bの外周部や中仕切り部分にグリッド状に溶接する。これにより、ステンレス製床ユニット30の打込み時や打込み後に、ステンレス製床ユニット30の反りや撓み等の変形を抑制することができる。更に、補強材16の交差部分に切欠き18を設けることとすれば、ステンレス製床ユニット30の打込み時に、ステンレス製床ユニット30と床コンクリート50との間に溜まることが懸念される空気の抜け道が確保されるため、そのような空気溜まりを抑制することができる。すなわち、
図2(a)に示す位置に切欠き18を設けることで、ステンレス製床ユニット30へと加工したステンレス製床材12を、その
図2(a)における下辺側から上辺側へと徐々に床コンクリート50に打込む際に、下辺側から上辺側へと空気が抜けるものである。
【0053】
更に、本発明の実施の形態に係るステンレス製床の施工方法は、ユニット加工工程S10において、ステンレス製床ユニット30を構成する各ステンレス製床材12に、表面12aから裏面12bまで貫通する貫通孔20を設けるものである。これにより、ステンレス製床ユニット30の打込み時に、ステンレス製床ユニット30と床コンクリート50との間に溜まることが懸念される空気の抜け穴として、貫通孔20を利用することができる。すなわち、
図2(a)に示すような位置に貫通孔20を設けることで、ステンレス製床ユニット30の打込み時に、上述したように切欠き18を介してステンレス製床材12の下辺側から上辺側へと抜ける空気を、ステンレス製床材12の上辺側に設けた貫通孔20から排出して、空気溜まりを抑制することができる。
【0054】
又、本発明の実施の形態に係るステンレス製床の施工方法は、
図1に示すように、コンクリート打設工程S30に先立ち、施工対象範囲の外周部に型枠40を構築する型枠構築工程S20を含むものである。更に、この型枠構築工程S20では、
図4に示すように、型枠40の少なくとも一部に沿って、基準部材44を設置する。この基準部材44は、ユニット打込み工程S40においてステンレス製床ユニット30を打込む際に、特に型枠40沿いに打込むステンレス製床ユニット30の基準位置として利用されるものである。
図4の例では、基準部材44は、基準スターター44Aと基準アングル44Bとで構成され、基準スターター44Aと基準アングル44Bとの間に、段差部46が形成されている。この段差部46に沿わせるようにして、ステンレス製床ユニット30を打込むことで、型枠40沿いに打込むステンレス製床ユニット30の位置精度を高めることができる。更に、型枠40沿いに打込んだステンレス製床ユニット30を基準として、その隣に打込むステンレス製床ユニット30の位置精度も高めることができるため、延いては、全てのステンレス製床ユニット30の位置精度を高めることが可能となる。又、型枠40沿いにステンレス製床ユニット30を打込む際に、基準部材44にステンレス製床ユニット30を仮固定することとすれば、ステンレス製床ユニット30の位置精度に加えて、打込み作業の作業性を高めることができる。
【0055】
又、本発明の実施の形態に係るステンレス製床の施工方法は、
図4に示すように、コンクリート打設工程S30において床コンクリート50を打設する際に、床コンクリート50を打設する高さまで延びる複数のボルト52を、施工対象位置に立設した状態で、床コンクリート50を打設する。
図4の例では、複数のボルト52の先端に、袋ナット54を取り付けている。すなわち、複数のボルト52の長さは、袋ナット54が取り付けられた状態で、袋ナット54の先端が僅かに床コンクリート50の表面に出るような長さである。これにより、床コンクリート50上に敷設するステンレス製床ユニット30を、袋ナット54によって先端の露出を防止した複数のボルト52によって支持し、適切な高さに維持することができる。又、複数のボルト52を立設する間隔を適切に設定することで、床コンクリート50が固まる前にステンレス製床ユニット30上に作業者が乗っても、ステンレス製床ユニット30の撓み等の発生を抑制することができる。更に、立設した複数のボルト52は、根太組よりもコンクリートが回り込み易いため、床コンクリート50の打設を円滑に行うことが可能となる。
【0056】
又、本発明の実施の形態に係るステンレス製床の施工方法は、
図5に示すように、ユニット打込み工程S40において、まず、敷設する平面視矩形のステンレス製床ユニット30を、その4つの辺のうちの1つの辺側が下方になるように、クレーン等を用いて斜めに楊重する。
図5(a)の例では、長辺側でありかつ突出部24が配置された辺30b側が下方になるように楊重している。そして、この状態でステンレス製床ユニット30を降ろすことで、下方にあるステンレス製床ユニットの辺30b側を、床コンクリート50に先に打込む。この際、ステンレス製床ユニット30の辺30b側に配置された突出部24を、基準スターター44Aと基準アングル44Bとの間の段差部46に重ねて沿わせるようにして、ステンレス製床ユニット30の辺30b側を打込む。
【0057】
その後、ステンレス製床ユニット30の、先に打込んだ辺30b側と対向する辺30a側を徐々に下げることで、
図5(b)に示すように、ステンレス製床ユニット30全体を床コンクリート50に打込むものである。これにより、ステンレス製床ユニット30は、先に打込まれる辺30b側からそれに対向する辺30a側に向かって、徐々に床コンクリート50に密着することになる。このため、ステンレス製床ユニット30と床コンクリート50との間に溜まることが懸念される空気が、貫通孔20(
図2(a)参照)が設けられた辺30a側へと抜けていくことになる。従って、ステンレス製床ユニット30を、上記の空気溜まりを抑制しながら、床コンクリート50へ密着するように、効率よく敷設することができる。
【0058】
更に、本発明の実施の形態に係るステンレス製床の施工方法は、
図6に示すように、打込み済みのステンレス製床ユニット30Xの隣に、新たなステンレス製床ユニット30Yを打込む際に、新たなステンレス製床ユニット30Yの、斜めに楊重された状態で下方となる辺側を、打込み済みのステンレス製床ユニッ30Xと隣接する辺側とする。
図6(a)の例では、新たなステンレス製床ユニット30Yを、その辺30b側が打込み済みのステンレス製床ユニッ30X側に配置されるように、かつ、その辺30b側が下方になるように、斜めに楊重している。そして、新たなステンレス製床ユニット30Yを、打込み済みのステンレス製床ユニット30Xと隣接する辺30b側から先に打込む。この際、新たなステンレス製床ユニット30Yの辺30b側に配置された突出部24を、打込み済みのステンレス製床ユニット30Xの辺30a側に配置された段差部22に重ねて沿わせるようにして、新たなステンレス製床ユニット30Yの辺30b側を打込む。
【0059】
更に、その新たなステンレス製床ユニット30Yの辺30b側と、それに隣接する打込み済みのステンレス製床ユニット30Xの辺30a側とを、スポット溶接等で仮固定する。その後、新たなステンレス製床ユニット30Yの、仮固定した辺30b側と対向する辺30a側を徐々に下げることで、
図6(b)に示すように、新たなステンレス製床ユニット30Y全体を床コンクリート50に打込むものである。このように、新たなステンレス製床ユニット30Yの辺30b側を、打込み済みのステンレス製床ユニット30Xの辺30a側へ仮固定した状態で、新たなステンレス製床ユニット30Yを打込むため、打込みの作業性を向上できると共に、新たなステンレス製床ユニット30Yの位置精度を高めることが可能となる。
【0060】
又、本発明の実施の形態に係るステンレス製床の施工方法は、
図1に示すように、ユニット打込み工程S40の後に、床コンクリート50上のステンレス製床ユニット30の表面に、例えばバイブレータ等で振動を与える振動付与工程S50を含むものである。これにより、ステンレス製床ユニット30に溶接されたアンカー部材14周りのコンクリートの充填性を、より高めることができる。このため、ステンレス製床ユニット30をより強固に固定することができ、更に、ステンレス製床ユニット30と床コンクリート50との密着性をより高めることが可能となる。
一方、
図8に示すような本発明の実施の形態に係るステンレス製床の構造10は、上術した本発明の実施の形態に係るステンレス製床の施工方法によって構築されるものであり、本発明の実施の形態に係るステンレス製床の施工方法と同等の作用効果を奏するものである。
【解決手段】本発明は、裏面にアンカー部材を溶接した少なくとも2枚のステンレス製床材を平面方向に溶接して、平面視矩形のステンレス製床ユニットへと加工するユニット加工工程S10と、施工対象位置に床コンクリートを打設するコンクリート打設工程S30と、床コンクリートが固まる前に、床コンクリート上に複数のステンレス製床ユニットを打込むユニット打込み工程S40と、床コンクリート上で隣接するステンレス製床ユニット同士を溶接するユニット溶接工程S70とを含んでいる。このため、固まったコンクリート上にステンレス製床材を1枚ずつ敷設する場合と比較して、ステンレス製床の施工期間を短縮できると共に、ステンレス製床の品質を向上することが可能となる。