特許第6242002号(P6242002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242002
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】高分子凝集剤溶解装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/01 20060101AFI20171127BHJP
   B01F 3/08 20060101ALI20171127BHJP
   B01F 5/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   B01D21/01 B
   B01D21/01 101A
   B01F3/08 Z
   B01F5/00 E
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-55704(P2014-55704)
(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公開番号】特開2015-178054(P2015-178054A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2016年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142148
【氏名又は名称】ハイモ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大原 工
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−088790(JP,A)
【文献】 実開昭50−087564(JP,U)
【文献】 特開2009−082826(JP,A)
【文献】 特開2004−057908(JP,A)
【文献】 特開2011−194348(JP,A)
【文献】 特開2011−167651(JP,A)
【文献】 特開2008−093530(JP,A)
【文献】 特開2005−177602(JP,A)
【文献】 特開2008−173543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/01
B01F 3/08
B01F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が1000万以上の油中水型エマルジョンである高分子凝集剤溶液をインラインミキサーに通過後、前記高分子凝集剤溶液を供給する貯留槽を有する溶解装置において、前記貯留槽が、開口部を有する隔壁を三枚以上設置し、貯留槽内を四つ以上の区画に分割している溶解装置であり、前記貯留槽に高分子凝集剤溶液が供給される最初の区画に設けられた隔壁の開口部が、隔壁を上下左右に四等分した領域において、高分子凝集剤溶液を供給する位置からの直線距離が最も長い領域に開口部を有し、前記開口部を有する隔壁において、平行に隣接する二枚の隔壁の二つの開口部が、各隔壁を上下左右に四等分した領域において対角上の領域に位置し、且つ、下記式(1)及び式(2)を満たす容積滞留時間を有することを特徴とする溶解装置。
式(1):
貯留槽内の有効体積(m)÷高分子凝集剤溶液の供給流量(m/分)>20
式(2):
高分子凝集剤溶液の供給流量(m/分)の値≧貯留槽内の有効体積(m)の値×0.05


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子凝集剤を溶解する溶解装置に関するものであり、詳しくは、高分子凝集剤を溶解する貯留槽において、仕切り板を設置し流路を設けることで未溶解のままで通過することを防ぎ、高分子凝集剤溶液の粘度を最大限に引き出した溶解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子凝集剤は、廃水処理用薬剤、汚泥脱水用薬剤や歩留向上剤や濾水性向上剤等の製紙用添加剤として広範囲に使用され、既に工業的になくてはならない薬剤となっている。これら凝集剤は水溶性高分子であり、水で希釈・溶解して0.05〜0.5質量%程度で使用する。通常では、溶解には溶解槽を用いて高分子凝集剤原液と溶解水を投入し、撹拌溶解され高分子凝集剤溶解液添加ラインを通じて排水や汚泥、製紙原料等の対象物に添加される。対象物に添加される前に貯留槽を用いて滞留時間を設け溶解を促進する場合もある。貯留槽を用いた溶解については様々な方法が開示されており、例えば、特許文献1では、溶解槽の内部に水位保持用仕切板を設けて一定水位を保持するよう形成し、一定水位保持側に撹拌機を設け、上記溶解槽の上面板に粉末状凝集剤定量供給装置及び圧力水給水管を設け、上記上面板に上記凝集剤の定量給粉口を開口し、該給粉口の近傍に上記給水管の下向給水ノズルを配設した凝集剤溶解装置について開示されており、特許文献2では、粉末状高分子凝集剤を水に添加して膨潤液を調製する膨潤工程と、前記膨潤液を濾過部材に供給し、前記濾過部材の濾過面を通過させることにより凝集剤水溶液を得る溶解工程を有する技術について開示されている。しかし、これらは粉末状高分子凝集剤についての技術である。現在では粉末状高分子凝集剤の他に分散型高分子凝集剤、油中水型エマルジョン、塩水中分散液等が汎用されている。これら分散型高分子凝集剤原液の濃度は15〜50質量%程度であり、分散型高分子凝集剤の成分である水溶性高分子は、溶解当初は水と接触すると膨潤し粘性が出るため順々に移送されるのではなく、粘性が低い状態では移送が速く未溶解のまま高分子凝集剤溶解液添加ラインに移送され効果が十分に発揮されない場合や未溶解物によるトラブルが発生する場合がある。そのため、分散型高分子凝集剤を十分に溶解させ効果を最大限に発揮させる溶解装置が要望されている。
【0003】
【特許文献1】特開2008−93530号公報
【特許文献2】WO2007/119720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、高分子凝集剤を溶解する貯留槽において、高分子凝集剤成分である高分子凝集剤溶液の粘性が低い状態で早く移送され、未溶解のまま、あるいは溶解が不完全な状態で高分子凝集剤溶解液移送ラインに移行することがあり、本発明では、高分子凝集剤溶液の粘性が低い状態で早く移送されるのを防ぎ、高分子凝集剤溶液の粘度を最大限に引き出す、簡易で安定した溶解を可能にする溶解装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明者は、鋭意検討した結果、以下に述べる発明に達した。即ち、貯留槽に隔壁として仕切り板を三枚以上設置し、貯留槽内を四つ以上の区画に分割し流路を設けることで高分子凝集剤溶液の粘性が低い状態で早く移送されるのを防ぎ、高分子凝集剤溶液の粘度を最大限に引き出す滞留時間を調節した溶解装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の溶解装置は、高分子凝集剤溶液の粘性が低い状態で早く移送されることがないため、完全な溶解が可能となるため高分子凝集剤の最大限の効果を発揮させることができ、更には未溶解物が生じないため溶解トラブルが無くなり、簡易で安定した溶解及び効果が達成できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の高分子凝集剤を溶解する溶解装置について説明する。
【0008】
高分子凝集剤は、廃水処理用薬剤、汚泥脱水用薬剤や歩留向上剤や濾水性向上剤等の製紙用添加剤として広範囲に使用され、既に工業的になくてはならない薬剤となっている。現在では分散型高分子凝集剤が主流となっており、その形態としては油中水型エマルジョン、塩水中分散液が汎用されている。これらは、水溶性高分子(ポリマー)から構成されているので水に溶解すると高粘性溶液となるため、原液濃度15〜50質量%を通常、0.05〜0.5質量%程度の濃度に希釈溶解してから排水や汚泥、製紙原料に添加される。そのため高粘性液体を攪拌するため溶解装置が必要であり、より効果的な溶解装置が要望されている。本発明の溶解装置も高分子凝集剤として分散型高分子凝集剤、即ち、油中水型エマルジョン、塩水中分散液タイプを適用する。特に油中水型エマルジョンタイプは溶液の粘性が高く、膨潤物、未溶解物による溶解装置配管の閉塞等のトラブルが生じやすいので本発明の溶解装置を適用するとその効果が顕著である。高分子凝集剤の重量平均分子量は、これまでは、100万〜800万のものが汎用されてきたが、近年では1000万以上のものも使用される様になっている。本発明の溶解装置では特に溶液粘性が高い重量平均分子量が1000万以上のものに適用すると、適用しない場合に比べてより一層、その効果が顕著に発揮される。
【0009】
本発明は、高分子凝集剤溶液を供給する貯留槽を有する溶解装置において、前記貯留槽が、開口部を有する隔壁を三枚以上設置し、貯留槽内を四つ以上の区画に分割していることを特徴とする溶解装置である。貯留槽の形状は特に問わないが、通常は直方体が使用される。隔壁としては仕切り板を使用する。仕切り板の材質は一般的に貯留槽や溶解装置で使用されるステンレス製や鉄製が好ましいが、仕切り板として機能する形状を有するならばプラスチックや木材等、特に問わない。
【0010】
仕切り板は、開口部を有しており高分子凝集剤溶液の流路となる。開口部の形状は特に問わないが、大きさは仕切り板を上下左右に四等分した場合の一つの領域を超えない大きさが好ましい。四等分した領域の一つの大きさを超えると高分子凝集剤溶液が早く移送されることになり好ましくはない。
【0011】
本発明の高分子凝集剤溶液を溶解する貯留槽を有する溶解装置において、下記式(1)及び式(2)を満たす容積滞留時間を有することが好ましい。
式(1):
貯留槽内の有効体積(m)÷高分子凝集剤溶液の供給流量(m/分)>20
式(2):
高分子凝集剤溶液の供給流量(m/分)の値≧貯留槽内の有効体積(m)の値×0.05
ここで、容積滞留時間とは、高分子凝集剤溶液が貯留槽の流入口に移送された時点から貯留槽の流出口から流出されるまでの貯留槽内に滞留する時間である。理論上は、貯留槽内の有効体積(m)÷高分子凝集剤溶液の供給流量(m/分)で表されるが、本発明ではその値が20(分)を超えることが好ましい。
【0012】
通常では、高分子凝集剤溶液を実用の流量で流す場合、理論滞留時間よりも短くなる。これは、粘性のある高分子凝集剤溶液、特に油中水型エマルジョンや塩水中分散液は粘性が低い状態で早く移送され易く、貯留槽内では高分子凝集剤が完全に溶解しないと部分的に膨潤、粘性が出ることにより束の様な挙動を取り、移送が速くなることによる。そのため、通常では平均滞留時間が20分を超えることはなく、理論時間よりもかなり短い滞留時間となる。
【0013】
分散型高分子凝集剤は、粉末型高分子凝集剤に比べて溶解性が改善し、溶解に関しては効率が高くなったものであるが、水と混合、溶解し粘度が一定になり、凝集剤としての効果を十分に発現させるには滞留時間が20分を超える必要が有る。20分を下回ると未溶解あるいは溶解が不十分であり、凝集剤の効果が最大限に発揮されない。
【0014】
高分子凝集剤溶液の供給流量を減少させることで、20分を超える滞留時間を取ることはできるが、高分子凝集剤溶解液を対象物に供給する量が決定されているので供給流量を減少させることは添加対象物を含有する工程の効率が低下するため好ましくはない。そのため、ある一定量の供給流量が必要となる。そのために、本発明では、式(2)の高分子凝集剤溶液の供給流量(m/分)の値≧貯留槽内の有効体積(m)の値×0.05を満たすことが好ましい。例えば、貯留槽内の有効体積が100mでの時は、高分子凝集剤溶液の供給流量は5m/分となる。この数値は、本発明の分野において実用されている貯留槽の有効体積と高分子凝集剤の供給流量の範囲であり、式(1)及び式(2)を満たすことで、ある程度の量の高分子凝集剤溶液の供給流量で最大限に溶解性能を発揮することが可能となる。本発明では、貯槽内に開口部を有する隔壁として仕切り板を設置することで粘性が低い状態で早く移送されることを減らし、滞留時間を長くすることで高分子凝集剤溶液の粘性を引き出す。粘性を引き出すこと、即ち最大限に溶解されることになり最大限の効果を発揮する。更に開口部を有する仕切り板を三枚以上設置し、この内、平行に隣接する二枚の仕切り板の開口部が、互いに対角上に設置すると溶解効果が向上する。対角上に設置するということは、仕切り板を上下左右に四等分した領域において、開口部が仕切り板の下部の左の領域にある時は、同一方向から見てその隣接する仕切り板の上部の右の領域に開口部があることを意味する。この高分子凝集剤溶液の流れは層流であり高分子が切断されることなく移送され溶解性が向上することになる。
【0015】
仕切り板の底部は、完全に貯留槽の側面部に接している方が好ましいが、仕切り板の縦方向全長(高さ)の一割以下であるならば、隙間があっても本発明の効果は発揮される。例えば、仕切り板の高さが1mならば隙間は10cm以下ならばあっても差し支えない。
【0016】
本発明の高分子凝集剤を溶解する溶解装置を図1に基づいて説明する。又、図1を上部より俯瞰したものが図2である。図1中の1は、高分子凝集剤溶液流入口であり、高分子凝集剤が溶解水と混合された状態で貯留槽の区画1に供給ポンプにより移送されてくる。通常は上方向から移送されてくるが、横方向でも良いし、底面部からでも良い。貯留槽上方部の横方向、あるいは貯留槽下方部の横方向、貯留槽中部の横方向から移送されてきても良い。次いで、2の仕切り板A中の3の開口部Aを通じて区画2に移送される。開口部Aの位置は、高分子凝集剤溶液を供給する位置からの直線距離が最も長い領域に開口部を有することが好ましい。
【0017】
更に4の仕切り板B中の5の開口部Bを通過し、区画3に移送される。この時、開口部Bは、開口部Aに対して対角上に位置すると効果が向上するので好ましい。その後、6の仕切り板C中の7の開口部Cを通過する。この時も、開口部Bが貯留槽の上部にある時は、貯留槽の下部にあることが好ましい。四番目の区画において、高分子凝集剤溶液流出口から高分子凝集剤溶解液添加ラインへ移送され対象物に添加される。図1では、仕切り板C中の開口部Cが下部にあるので四番目の区画に有する高分子凝集剤流出口は上部にある。開口部と次の開口部の位置関係は、上部の次は下部、下部の次は上部という順番が好ましい。
【0018】
本発明の効果を得るには、仕切り板は三枚必要であり、貯留槽は、四つの区画に分割されることになる。これにより平均滞留時間は20分を超える様になる。平均滞留時間60分以上となると粘度が一定となるため大幅な効果の向上は望めなくなる。仕切り板が四枚で区画が五つの場合、五番目の区画から高分子凝集剤溶液が流出される。
【0019】
本発明においては、貯留槽内に攪拌機を設置しても良い、攪拌機による撹拌により一層溶解を促進するためである。撹拌機の撹拌シェアについては強すぎると高分子鎖が切断されることになるので好ましくはなく、現場の溶解状況によって任意に調整する。
【0020】
又、高分子凝集剤溶液を本発明の溶解装置に流入する前にインラインミキサーに通過させても良い。インラインミキサーと本発明の溶解装置を組み合わせることで溶解効果が促進される場合があり、現場条件によって好適に使用される。インラインミキサーと本発明の溶解装置を併用することで、溶解時の撹拌に掛かる動力が必要なく電力消費が抑制され経済的である。
【0021】
本発明の溶解装置の前に撹拌機の付いた溶解槽で一次溶解しても良く、更に溶解槽が二つ以上あっても良い。本発明は溶解を促進するための貯留槽を有する溶解装置であり、本発明自体で高分子凝集剤を溶解する必要はなく溶解条件に応じて適宜に使用される。
【0022】
本発明の溶解装置の形態として、貯留槽を配管で構成しても良い。配管で構成するとは、配管中に隔壁を三枚以上設置し、開口部を設けて配管内を四つ以上の区画に分割することである。
【実施例】
【0023】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0024】
(実施例1)有効体積90mの貯留槽を仕切り板で四分割し、本発明の溶解装置を組み立てた。図1に示す。図2は、図1に示した貯留槽において、上部より俯瞰した図である。図の線上の円は、仕切り板の開口部を示している。開口部A、Bの位置は、仕切り板を上下左右に四等分した何れかの領域の範囲内に収まる位置にある。図中X〜Zの場所に電気伝導度センサーを設置し、硫酸アンモニウムをトレーサー物質として、高分子凝集剤溶液流入口に並行して投入し拡散の度合いを測定した。
【0025】
希釈水と油中水型エマルジョンポリマーA (アクリルアミド/アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(85/15モル%)共重合体、重量平均分子量1300万、濃度35%)をT字管に200倍希釈となるような比率で注入し、この混合液をラインミキサー(ノリタケ(株)製、商品名:スタティックミキサー)を通し溶解液を得て流入口に導入した。本試験での溶解液供給量は4.5L/分とし、貯留槽が満水になり流出口から溶解液がオーバーフローした時点で、流入口に20質量%硫酸アンモニウム溶液800gを添加、この時点を0分とし、図2のX、Y、Zの位置に設置した電気伝導度センサーで経時的に電気伝導度を測定した。結果を表1に示す。
【0026】
(表1)
【0027】
この装置の理論滞留時間は20分である。結果からも20分後に電気伝導度の値が400mS/m台となり、24分後に値がピークとなり、多くのトレーサー物質が場所Zに到達したことが分かる。
【0028】
(比較例1)実施例1で使用した貯留槽において、6の仕切り板Cを除去、図3に示す様にし、実施例1の手順で溶液の拡散状況を確認した。結果を表2に示す。
【0029】
(比較例2)実施例1で使用した貯留槽において、2の仕切り板Aの上部に開口部を設け、実施例1の手順で高分子凝集剤溶液の拡散状況を測定した。開口部の位置は、高分子凝集剤溶液が供給される場所から観て、隔壁を上下左右に四等分した右上の領域に該当する。結果を表3に示す。
【0030】
(比較例3)実施例1で使用した貯留槽において、4の仕切り板Bの下部に開口部を設け、実施例1の手順で高分子凝集剤溶液の拡散状況を測定した。開口部の位置は、高分子凝集剤溶液が供給される場所から観て、隔壁を上下左右に四等分した左下の領域に該当する。結果を表4に示す。
【0031】
(表2)
【0032】
(表3)
【0033】
(表4)
【0034】
比較例2の仕切り板が少ない場合、比較例3の高分子凝集剤溶液が供給される最初の区画に設けられた隔壁の開口部が、高分子凝集剤溶液を供給する位置からの直線距離が最も長い領域ではない場合、比較例4の平行に隣接する二枚の隔壁の二つの開口部が、各隔壁を上下左右に四等分した領域において対角上に位置しない場合は、その間を粘性が低い状態で早く移送され、理論滞留時間より短い時間で流出口に到達してしまう。いずれの比較例においても電気伝導度400mS/m台の値は20分より短い時間で測定され、ピーク値も20分より短い時間であった。又、比較例2〜4では30分まで測定しても400mS/mを超える値は測定されなかった。
【0035】
(実施例2)油中水型エマルジョンポリマーA(アクリルアミド/アクリロイルオキシトリエチルアンモニウムクロリド(85/15モル%)共重合体、重量平均分子量1300万、濃度35%)を、実施例1で使用した溶解設備(図1及び図2)を用いて実施例1と同条件で溶解した。図2の数字で示した場所Zでサンプリングした溶液を製紙原料の歩留向上剤として、ブリット式ダイナミックジャーテスターを用いた歩留率の測定試験を行なった。200メッシュワイヤー使用。使用製紙原料は、固形分濃度0.75質量%で、軽質炭酸カルシウム等Ash分として47.3%対固形分濃度含有するPPC用紙抄造原料を用いた。製紙原料の物性値は、pH7.96、Whatman No.41濾紙濾過液のミューテック社製PCD−03型を使用したカチオン要求量は、12.5μeq/Lである。ブリット式ダイナミックジャーテスターの攪拌回転数は800rpmに設定した。
【0036】
対製紙原料固形分に対して150ppm添加し、攪拌回転数800rpmで30秒間攪拌後、濾液を採取しADVANTEC、No.2濾紙にて濾過後、SSを測定、総歩留率を測定後、濾紙を525℃で2時間灰化し、灰分歩留率を測定した。結果を表5に示す。
【0037】
(比較例4)実施例2と同様に油中水型エマルジョンポリマーAを、実施例1で使用した溶解設備を用いて同条件で溶解した。図2の数字で示した場所X、Yでサンプリングした溶液について実施例と同条件で歩留率測定試験を実施した。結果を表5に示す。
【0038】
(表5)
【0039】
流出口付近の場所Zの高分子凝集剤溶液を使用した方が、場所X、Yの高分子凝集剤溶液を使用したものよりも歩留効果が大きく向上することが確認できた。






















【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の溶解装置のフローシート図である。1から高分子凝集剤溶液が流入し、破線に沿って移送され、8の流出口から流出し、高分子凝集剤溶解液添加ラインを通過し、対象物に添加される。
図2図1を上部より俯瞰した図である。仕切り板上の丸印は開口部を示す。
図3】本発明の範囲外の溶解装置を上部より俯瞰した図である。
【符号の説明】
【0041】
1 高分子凝集剤溶液流入口
2 仕切り板A
3 開口部A
4 仕切り板B
5 開口部B
6 仕切り板C
7 開口部C
8 高分子凝集剤溶液流出口
9 高分子凝集剤溶解液添加ライン
図1
図2
図3