特許第6242003号(P6242003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6242003-電圧検出装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242003
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】電圧検出装置
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/08 20060101AFI20171127BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20171127BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   H03M1/08 A
   H01M10/48 P
   G01R19/00 L
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-73939(P2014-73939)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-198276(P2015-198276A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2017年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】赤石 武章
(72)【発明者】
【氏名】吉野 光一郎
【審査官】 ▲高▼橋 義昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−016254(JP,A)
【文献】 特開2012−079618(JP,A)
【文献】 特開2010−130194(JP,A)
【文献】 特開2009−124392(JP,A)
【文献】 特開2004−007385(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0201927(US,A1)
【文献】 特開2012−79618(JP,A)
【文献】 特開2008−76083(JP,A)
【文献】 特開2001−296167(JP,A)
【文献】 特開平5−165573(JP,A)
【文献】 特開平7−5004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 1/08
G01R 19/00
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリを構成する複数の電池セルの電圧をサンプリングすることによってデジタル値に変換するA/D変換器と、
前記A/D変換器を制御する制御手段と、
演算手段とを具備し、
前記制御手段は、低周波ノイズの周期を基準として設けられた複数の異なる第1時間間隔からなる第1テーブルと、高周波ノイズの周期を基準として設けられた複数の異なる第2時間間隔からなる第2テーブルとを有し、時系列的に、前記第1時間間隔と前記第2時間間隔とを異なる組み合わせで加算し、その加算値を次回のサンプリングまでの時間間隔とすることを特徴とする電圧検出装置。
【請求項2】
前記演算手段によって移動平均値を算出する際のサンプリングデータの数は、前記第1テーブルの第1時間間隔の数と、前記第2テーブルの第2時間間隔の数との倍数であることを特徴とする請求項1に記載の電圧検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、バッテリセルの電圧値を検出し、デジタル電圧値を変換するA/D変換器と、デジタル電圧値を伝送する通信手段と、デジタル電圧値を取得するマイクロコンピュータと、電池モジュールとA/D変換器との間に挿入されるアナログLPFと、A/D変換器と通信手段との間に挿入されるアナログLPFと、A/D変換器と通信手段との間に挿入されるデジタルLPFと、を備える技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】再公表WO2011/043311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術では、電気自動車にて派生するインバータのスイッチングノイズ等の比較的高周波帯域のノイズをアナログローパスフィルタで除去し、モータの回転に伴い発生するノイズや商用電源を整流した際に発生するノイズ等の比較的低周波数帯域のノイズをデジタルローパスフィルタで除去している。しかしながら、上記従来技術では、高周波帯用のアナログローパスフィルタと、低周波帯用のデジタルローパスフィルタを電池セルの数に応じて設ける必要があるので、部品点数が増加することに伴ってコストが上昇するおそれがある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、低周波帯及び高周波帯のノイズを除去すると共に、コストの削減を可能とする、ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、第1の解決手段として、バッテリを構成する複数の電池セルの電圧をサンプリングすることによってデジタル値に変換するA/D変換器と、前記A/D変換器を制御する制御手段と、前記A/D変換器から入力された複数のサンプリングデータの移動平均値を前記電池の電圧値とする演算手段とを具備し、前記制御手段は、低周波ノイズの周期を基準として設けられた複数の異なる第1時間間隔からなる第1テーブルと、高周波ノイズの周期を基準として設けられた複数の異なる第2時間間隔からなる第2テーブルとを有し、時系列的に、前記第1時間間隔と前記第2時間間隔とを異なる組み合わせで加算し、その加算値を次回のサンプリングまでの時間間隔とする、という手段を採用する。
【0007】
本発明では、第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記演算手段によって移動平均値を算出する際のサンプリングデータの数は、前記第1テーブルの第1時間間隔の数と、前記第2テーブルの第2時間間隔の数との倍数である、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、バッテリを構成する複数の電池セルの電圧をサンプリングすることによってデジタル値に変換するA/D変換器と、A/D変換器を制御する制御手段と、A/D変換器から入力された複数のサンプリングデータの移動平均値を電池の電圧値とする演算手段とを具備し、制御手段は、低周波ノイズの周期を基準として設けられた複数の異なる第1時間間隔からなる第1テーブルと、高周波ノイズの周期を基準として設けられた複数の異なる第2時間間隔からなる第2テーブルとを有し、時系列的に、第1時間間隔と第2時間間隔とを異なる組み合わせで加算し、その加算値を次回のサンプリングまでの時間間隔とすることによって、低周波帯及び高周波帯のノイズを除去すると共に、コストの削減を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る電圧検出装置Aの回路図である。
図2】本発明の一実施形態に係る電圧検出装置Aの第1テーブル(a)及び第2テーブル(b)を示す模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係る電圧検出装置Aの動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係る電圧検出装置Aは、電気自動車(EV:Electric Vehicle)あるいはハイブリッド自動車(HV:Hybrid Vehicle)等の移動車両に搭載され、バッテリBを構成する各電池セルCの電圧状態を監視するものであり、図1に示すように、フィルタ回路1、マルチプレクサ2、A/D変換器3及びマイコン4を備えている。なお、マイコン4は、本実施形態における制御手段及び演算手段である。
【0011】
電池セルCの各々は、フィルタ回路1を介してマルチプレクサ2と接続されている。各フィルタ回路1は、各セル電圧に重畳するノイズ成分を低減するために設けられたローパスフィルタである。なお、フィルタ回路1は、A/D変換器3のサンプリング周期を調整することによってノイズを除去するので、複雑な構成のアナログフィルタ回路でなくともよい。
【0012】
マルチプレクサ2は、マイコン4から入力される選択切替えタイミングを規定する選択タイミング信号に同期して、電池セルCの各々とA/D変換器3との接続を選択的に順次切替える。
A/D変換器3は、マルチプレクサ2の出力電圧、つまりマルチプレクサ2によって順次接続された電池セルCの各々の電圧をサンプリングすることによってデジタル値に変換してマイコン4に出力する。このA/D変換器3のサンプリング周期は、マイコン4による制御によって任意の値に調整可能となっている。
【0013】
マイコン4は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び各部と各種信号の送受信を行うインターフェイス回路等から構成されている。このマイコン4は、上記ROMに記憶された各種演算制御プログラムに基づいて各種の演算処理を行うと共に各部と通信を行うことにより電圧検出装置Aの全体動作を制御する。
【0014】
次に、このように構成された電圧検出装置Aの動作について説明する。
電圧検出装置Aにおいて、マイコン4は、A/D変換器3を制御するにあたり、以下の特徴的な動作を実行する。
【0015】
マイコン4は、低周波ノイズの周期を基準として設けられた複数の異なる第1時間間隔からなる第1テーブルと、高周波ノイズの周期を基準として設けられた複数の異なる第2時間間隔からなる第2テーブルとを有し、時系列的に、第1時間間隔と第2時間間隔とを異なる組み合わせで加算し、その加算値を次回のサンプリングまでの時間間隔とする。
【0016】
すなわち、マイコン4は、低周波ノイズを除去するための第1時間間隔が登録された第1テーブルと、高周波ノイズを除去するための第2時間間隔が登録された第2テーブルとをROMに記憶し、第1時間間隔と第2時間間隔との加算値を次回のサンプリングまでの時間間隔とする。
【0017】
例えば、第1テーブルには、図2(a)に示すように、「10ms」及び「30ms」という2つの第1時間間隔が登録されている。一方、第2テーブルには、図2(b)に示すように、「0.0ms」、「0.1ms」、「0.2ms」、「0.3ms」、「0.4ms」、「0.5ms」、「0.6ms」、「0.7ms」、「0.8ms」、「0.9ms」、「−0.1ms」、「−0.2ms」、「−0.3ms」、「−0.4ms」、「−0.5ms」、「−0.6ms」、「−0.7ms」、「−0.8ms」、「−0.9ms」及び「0.0ms」という20個の第2時間間隔が登録されている。
【0018】
まず、マイコン4は、図3に示すように、「10ms」に「0.0ms」を加算した「10ms」を、次回のサンプリングまでの時間間隔(1番目の時間間隔)とする。続いて、マイコン4は、「30ms」に「0.1ms」を加算した「30.1ms」を、次回のサンプリングまでの時間間隔(2番目の時間間隔)とする。続いて、マイコン4は、「10ms」に「0.2ms」を加算した「10.2ms」を、次回のサンプリングまでの時間間隔(3番目の時間間隔)とする。続いて、マイコン4は、「30ms」に「0.3ms」を加算した「30.3ms」を、次回のサンプリングまでの時間間隔(4番目の時間間隔)とする。マイコン4は、これを繰り返し、「30ms」に「0.0ms」を加算した「30ms」を、20番目の時間間隔とする。
【0019】
つまり、マイコン4は、第1テーブルに登録される「10ms」及び「30ms」を交互に選択し、選択した「10ms」及び「30ms」に、第2テーブルに登録された第2時間間隔を順番に加算した加算値を、次回のサンプリングまでの時間間隔とする。
【0020】
そして、マイコン4は、上述した次回のサンプリングまでの時間間隔に基づいてA/D変換器3にサンプリングを実行させる。
続いて、マイコン4は、A/D変換器3から入力された複数のサンプリングデータの移動平均値を算出し、移動平均値を電池セルCの電圧値とする。なお、移動平均値は、単純移動平均値でもよいし、また加重移動平均値であってもよい。
【0021】
このように、本実施形態では、第1時間間隔を変えてサンプリングし、サンプリングデータの移動平均値を得ることによって、ある周期を有する低周波ノイズの影響を低減することができる。また、本実施形態では、第2時間間隔を変えてサンプリングし、サンプリングデータの移動平均値を得ることによって、ある周期を有する高周波ノイズの影響を低減することができる。
【0022】
また、マイコン4によって移動平均値を算出する際のサンプリングデータの数は、第1テーブルの第1時間間隔の数と、第2テーブルの第2時間間隔の数との倍数であることが望ましい。例えば、第1テーブル及び第2テーブルが図2に示すものである場合には、サンプリングデータの数は、例えば、20とする。これは、サンプリングデータを採取する際に用いられる第1テーブルの第1時間間隔や第2テーブルの第2時間間隔に偏りを生じさせないためである。
【0023】
例えば、サンプリングデータの数が19である場合、第1時間間隔として「10ms」が10回用いられるが、「30ms」が9回しか用いられないため、移動平均値に偏りが生じる可能性がある。この移動平均値の偏りを可能な限り排除するために、マイコン4によって移動平均値を算出する際のサンプリングデータの数が、第1テーブルの第1時間間隔の数と、第2テーブルの第2時間間隔の数との倍数となるようにしている。
【0024】
このような本実施形態によれば、バッテリBを構成する複数の電池セルCの電圧をサンプリングすることによってデジタル値に変換するA/D変換器3と、A/D変換器3を制御し、A/D変換器3から入力された複数のサンプリングデータの移動平均値を電池の電圧値とするマイコン4とを具備し、マイコン4は、低周波ノイズの周期を基準として設けられた複数の異なる第1時間間隔からなる第1テーブルと、高周波ノイズの周期を基準として設けられた複数の異なる第2時間間隔からなる第2テーブルとを有し、時系列的に、第1時間間隔と第2時間間隔とを異なる組み合わせで加算し、その加算値を次回のサンプリングまでの時間間隔とすることによって、低周波帯及び高周波帯のノイズを除去すると共に、コストの削減を可能とすることができる。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、例えば以下のような変形が考えられる。
上記実施形態は、移動車両に搭載されたものであるが、移動車両以外に、家電製品等の電子機器に搭載されていてもよい。
【符号の説明】
【0026】
A…電圧検出装置、B…バッテリ、C…電池セル、1…フィルタ回路、2…マルチプレクサ、3…A/D変換器、4…マイコン
図1
図2
図3