(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242004
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
H02M3/28 C
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-92568(P2014-92568)
(22)【出願日】2014年4月28日
(65)【公開番号】特開2015-211579(P2015-211579A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2016年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直久
【審査官】
麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−169467(JP,A)
【文献】
特開2004−199509(JP,A)
【文献】
特開平11−069624(JP,A)
【文献】
特開昭62−053176(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0117759(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスの二次巻線に誘起された電圧から生成した直流出力電圧を出力する第1出力ラインと、前記第1出力ラインに接続された第2出力ラインと、前記第2出力ラインに介装された電圧制御型のスイッチ素子と、前記スイッチ素子に制御電圧を与える制御用抵抗と、前記制御用抵抗に電流を通流させることで前記スイッチ素子を導通状態にして前記直流出力電圧を前記第2出力ラインからも出力させる導通制御部と、前記直流出力電圧が目標電圧となるように前記トランスの一次巻線に与えられた電圧をスイッチングするスイッチング部とを備えたスイッチング電源装置であって、
通常時に充電され、前記第2出力ラインによって電力供給されていた負荷が短絡したときに放電するコンデンサと、
前記コンデンサの放電電流が前記制御用抵抗に向かうように、前記放電電流の流れを規制するダイオードと、
を備え、
前記スイッチング部は、前記一次巻線に流れる電流が過電流になると前記直流出力電圧を前記目標電圧よりも低下させ、前記直流出力電圧が低下したまま所定の時間が経過すると前記スイッチングを停止させる過電流保護機能を有し、
前記所定の時間が経過するまでの間、前記制御電圧が、前記スイッチ素子を導通状態とすることができる電圧となるように前記制御用抵抗に前記コンデンサの前記放電電流が流れる
ことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記スイッチ素子は、P型のMOSトランジスタであり、
前記制御用抵抗は、前記MOSトランジスタのソース−ゲート間に接続され、
前記導通制御部は、コレクタが前記MOSトランジスタのゲートに接続され、エミッタが前記ダイオードのアノードに接続され、かつベースに外部信号が入力されるNPNトランジスタを含み、
前記コンデンサは、一端が前記MOSトランジスタのソースに接続され、他端が前記NPNトランジスタのエミッタに接続され、
前記ダイオードは、カソードが前記第1および第2出力ラインと組をなす基準ラインに接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の出力を有するスイッチング電源装置に関し、特に、複数の出力のうちの全部ではない幾つかを外部信号に基づいてオン状態とオフ状態とに切り替え可能なスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5に、従来のスイッチング電源装置10を示す。スイッチング電源装置10は、交流電源2から入力された交流電圧に基づいて生成した直流出力電圧をOUT1端子およびOUT2端子から出力する。また、OUT2端子からの直流出力電圧の出力は、CNT端子に入力される外部信号に基づいてオン状態とオフ状態とに切り替え可能となっている。
【0003】
同図に示すように、スイッチング電源装置10の一次側には、交流電源2からの交流電圧を整流するダイオードブリッジD
1と、整流後の電圧を平滑するコンデンサC
1と、整流・平滑後の電圧が印加されるトランスTの一次巻線T
1と、一次巻線T
1に直列接続されたスイッチング素子Q
1と、スイッチング素子Q
1のスイッチングを制御する制御部3と、スイッチング素子Q
1に直列接続された電流検出用抵抗R
2と、起動抵抗R
1とが備えられている。
【0004】
また、スイッチング電源装置10の一次側には、トランスTの補助巻線T
3と、補助巻線T
3に誘起された電圧を整流するダイオードD
3と、整流後の電圧を平滑するコンデンサC
3とを含む補助電源部4も備えられている。補助電源部4が出力する直流電圧は、制御部3の電源電圧として使用される。
【0005】
スイッチング電源装置10の二次側には、トランスTの二次巻線T
2と、二次巻線T
2に誘起された電圧を整流するダイオードD
2と、整流後の電圧を平滑するコンデンサC
2と、整流・平滑により得られた直流出力電圧を出力する第1出力ラインL
1と、第1出力ラインL
1に接続された第2出力ラインL
2と、第2出力ラインL
2に介装されたP型のMOSトランジスタQ
2と、MOSトランジスタQ
2に制御電圧を与える制御用抵抗R
3と、制御用抵抗R
3に並列接続されたコンデンサC
4と、CNT端子に入力される外部信号に基づいて制御用抵抗R
3に電流を通流させることでMOSトランジスタQ
2を導通状態にする導通制御部5とが備えられている。OUT1端子は第1出力ラインL
1に設けられ、OUT2端子は第2出力ラインL
2に設けられている。
【0006】
導通制御部5は、NPNトランジスタQ
3と、3つの抵抗R
4、R
5、R
6とを含む。CNT端子に入力される外部信号がLレベルからHレベルになると、NPNトランジスタQ
3がオンする。そして、制御用抵抗R
3→抵抗R
4→NPNトランジスタQ
3の経路で電流が流れ、制御用抵抗R
3の両端に制御電圧が発生し、MOSトランジスタQ
2が導通状態となることで、OUT1端子からだけでなくOUT2端子からも直流出力電圧が出力されるようになる。
【0007】
制御部3は、二次側からフィードバックされた直流出力電圧をモニターしながら(図示せず)、当該直流出力電圧が目標電圧V
Tに一致するようにスイッチング素子Q
1を制御する。また、制御部3は、過電流保護機能を有している。過電流保護機能は、(1)電流検出用抵抗R
2による電圧降下、すなわち一次巻線T
1を流れる電流が過大となったときに、直流出力電圧を目標電圧V
Tよりも十分低く設定された閾値電圧V
THにまで低下させる第1保護動作と、(2)直流出力電圧が閾値電圧V
THに一致したまま所定の時間が経過するとスイッチング素子Q
1のスイッチングを停止させる第2保護動作とからなる。
【0008】
なお、スイッチング電源装置10の二次側の回路構成は、例えば、特許文献1(特に
図6)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4888028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来のスイッチング電源装置10は、OUT2端子が短絡したときに過電流保護機能が十分に働かないという問題があった。この問題について、
図6を参照しながら説明する。なお、V
OUT1はOUT1端子の電圧、V
OUT2はOUT2端子の電圧、V
GはMOSトランジスタQ
2のゲート電圧、V
DSはMOSトランジスタQ
2のドレイン−ソース間電圧、I
DはMOSトランジスタQ
2のドレイン電流である。また、CNT端子には、Hレベルの外部信号が入力されているものとする。
【0011】
短絡が発生していない時間t
0において、電圧V
OUT1は目標電圧V
Tに維持され、電圧V
OUT2は目標電圧V
TよりもMOSトランジスタQ
2が介装されている分だけ低いV
T’に維持されている。また、MOSトランジスタQ
2のゲート電圧V
Gは、MOSトランジスタQ
2を導通状態とするのに必要な閾値電圧V
GTHよりも十分に高いV
G1となっている。ここで、導通状態とは、線形領域ではなく飽和領域で動作している状態を意味する。
【0012】
時間t
1においてOUT2端子が短絡すると、過電流保護機能の第1保護動作により、制御部3が電圧V
OUT1(=直流出力電圧)を閾値電圧V
THに向かって低下させる。
【0013】
電圧V
OUT1が低下すると、MOSトランジスタQ
2のゲート電圧V
Gも低下する。そして、時間t
2においてゲート電圧V
Gが閾値電圧V
GTHを下回ると、MOSトランジスタQ
2は線形領域で動作し始める。言い換えると、MOSトランジスタQ
2は、導通状態と非導通状態の間の、中途半端に導通したような状態となる。MOSトランジスタQ
2がこのような状態になると、電流検出用抵抗R
2に流れる電流は減少する。そして、制御部3の過電流保護機能は、第1保護動作が終了する前、すなわち、電圧V
OUT1が閾値電圧V
THに到達する前に終了し、制御部3は、スイッチング素子Q
1をスイッチングさせ続ける。
【0014】
以上のように、従来のスイッチング電源装置10では、OUT2端子が短絡したときにスイッチング素子Q
1のスイッチングが停止されないので、MOSトランジスタQ
2において過大な損失P’=V
DS2×I
D2が発生してしまう。
【0015】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、オン状態とオフ状態とに切り替え可能な出力が短絡したときに発生する損失を、従来のものよりも低減することができるスイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明に係るスイッチング電源装置は、トランスの二次巻線に誘起された電圧から生成した直流出力電圧を出力する第1出力ラインと、第1出力ラインに接続された第2出力ラインと、第2出力ラインに介装された電圧制御型のスイッチ素子と、スイッチ素子に制御電圧を与える制御用抵抗と、制御用抵抗に電流を通流させることでスイッチ素子を導通状態にして直流出力電圧を第2出力ラインからも出力させる導通制御部と、直流出力電圧が目標電圧となるようにトランスの一次巻線に与えられた電圧をスイッチングするスイッチング部とを備えたスイッチング電源装置であって、
通常時に充電され、第2出力ラインによって電力供給されていた負荷が短絡したときに放電するコンデンサ
と、コンデンサの放電電流が制御用抵抗に向かうように、放電電流の流れを規制するダイオードとを備え、
スイッチング部は、一次巻線に流れる電流が過電流になると直流出力電圧を目標電圧よりも低下させ、直流出力電圧が低下したまま所定の時間が経過するとスイッチングを停止させる過電流保護機能を有し、上記所定の時間が経過するまでの間、制御電圧が、スイッチ素子を導通状態とすることができる電圧となるように制御用抵抗にコンデンサの放電電流が流れることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、負荷が短絡した時に放電するコンデンサを備え、しかもコンデンサの放電電流が過電流保護機能の第2保護動作が開始されるまで制御用抵抗に流れ続けてスイッチ素子の導通状態が維持されるので、過電流保護機能の第2保護動作によりスイッチングを停止させてその後の損失の発生を防ぐことができる。
【0018】
また、この構成によれば、スイッチングが停止させられるまでスイッチ素子の導通状態が維持される、すなわち、スイッチ素子が線形領域ではなく飽和領域で動作し続けるので、スイッチングが継続している間に発生する損失を低減することもできる。
【0019】
また、この構成によれば、コンデンサの放電電流の流れを規制するダイオードをさらに備えることにより、放電電流を制御用抵抗に向かわせることができる。
【0020】
上記スイッチング電源装置の具体的な構成としては、例えば、スイッチ素子が、P型のMOSトランジスタであり、制御用抵抗が、MOSトランジスタのソース−ゲート間に接続され、導通制御部が、コレクタがMOSトランジスタのゲートに接続され、エミッタがダイオードのアノードに接続され、かつベースに外部信号が入力されるNPNトランジスタを含み、コンデンサの一端がMOSトランジスタのソースに接続され、他端がNPNトランジスタのエミッタに接続され、ダイオードのカソードが第1および第2出力ラインと組をなす基準ラインに接続された構成がある。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、オン状態とオフ状態とに切り替え可能な出力が短絡したときに発生する損失を、従来のものよりも低減することができるスイッチング電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施例に係るスイッチング電源装置の回路図である。
【
図2】実施例に係るスイッチング電源装置における、コンデンサの放電電流の経路を示す図である。
【
図3】実施例に係るスイッチング電源装置における、ダイオードにより規制されるコンデンサの放電電流の経路を示す図である。
【
図4】実施例に係るスイッチング電源装置の動作波形図である。
【
図5】従来のスイッチング電源装置の回路図である。
【
図6】従来のスイッチング電源装置の動作波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係るスイッチング電源装置の実施例について説明する。
【0024】
[構成]
図1に、本発明の一実施例に係るスイッチング電源装置を示す。同図に示すように、スイッチング電源装置1の一次側には、交流電源2からの交流電圧を整流するダイオードブリッジD
1と、整流後の電圧を平滑するコンデンサC
1と、整流・平滑後の電圧が印加されるトランスTの一次巻線T
1と、一次巻線T
1に直列接続されたスイッチング素子Q
1と、スイッチング素子Q
1のスイッチングを制御する制御部3と、スイッチング素子Q
1に直列接続された電流検出用抵抗R
2と、起動抵抗R
1とが備えられている。
【0025】
また、スイッチング電源装置1の一次側には、トランスTの補助巻線T
3と、補助巻線T
3に誘起された電圧を整流するダイオードD
3と、整流後の電圧を平滑するコンデンサC
3とを含む補助電源部4も備えられている。補助電源部4が出力する直流電圧は、制御部3の電源電圧として使用される。
【0026】
スイッチング電源装置1の二次側には、トランスTの二次巻線T
2と、二次巻線T
2に誘起された電圧を整流するダイオードD
2と、整流後の電圧を平滑するコンデンサC
2と、整流・平滑により得られた直流出力電圧を出力する第1出力ラインL
1と、第1出力ラインL
1に接続された第2出力ラインL
2と、第2出力ラインL
2に介装されたP型のMOSトランジスタQ
2と、MOSトランジスタQ
2に制御電圧を与える制御用抵抗R
3と、MOSトランジスタQ
2のゲート電圧を緩やかに上昇または下降させるためのコンデンサC
4と、CNT端子に入力される外部信号に基づいて制御用抵抗R
3に電流を通流させることでMOSトランジスタQ
2を導通状態にする導通制御部5と、二次巻線T
2のダイオードD
2が接続されていない方の端部に接続された基準ラインL
3とが備えられている。第1出力ラインL
1にはOUT1端子が設けられ、第2出力ラインL
2にはOUT2端子が設けられている。また、基準ラインL
3にはGND端子が設けられている。
【0027】
制御用抵抗R
3およびコンデンサC
4は、MOSトランジスタQ
2のゲート−ソース間に設けられている。なお、
図1において、第2出力ラインL
2は第1出力ラインL
1から分岐しているように描かれているが、第2出力ラインL
2はダイオードD
2のカソードに直接接続されていてもよい。
【0028】
導通制御部5は、NPNトランジスタQ
3と、3つの抵抗R
4、R
5、R
6とを含む。CNT端子に入力される外部信号がLレベルからHレベルになると、NPNトランジスタQ
3がオンする。そして、制御用抵抗R
3→抵抗R
4→NPNトランジスタQ
3の経路で電流が流れ、制御用抵抗R
3の両端に制御電圧が発生し、MOSトランジスタQ
2が導通状態となることで、OUT1端子からだけでなくOUT2端子からも直流出力電圧が出力されるようになる。
【0029】
抵抗R
4は、NPNトランジスタQ
3のコレクタとMOSトランジスタQ
2のゲートとの間に設けられている。抵抗R
5は、NPNトランジスタQ
3のベースとCNT端子との間に設けられている。また、抵抗R
6は、NPNトランジスタQ
3のベース−エミッタ間に設けられている。
【0030】
図1では図示を省略しているが、OUT1端子とGND端子の間には負荷6が接続され、OUT2端子とGND端子の間には負荷7が接続されている(
図2参照)。CNT端子にHレベルの外部信号が入力されると、負荷6だけでなく負荷7にも直流出力電圧が供給される。
【0031】
スイッチング電源装置1の二次側には、さらに、コンデンサC
5、ダイオードD
4および抵抗R
7が備えられている。コンデンサC
5および抵抗R
7は、MOSトランジスタQ
2のソースとNPNトランジスタQ
3のエミッタとの間に設けられている。また、ダイオードD
4のアノードはNPNトランジスタQ
3のエミッタに接続され、カソードは基準ラインL
3に接続されている。
【0032】
制御部3は、二次側からフィードバックされた直流出力電圧をモニターしながら(図示せず)、当該直流出力電圧が目標電圧V
Tに一致するようにスイッチング素子Q
1を制御する。また、制御部3は、過電流保護機能を有している。過電流保護機能は、(1)電流検出用抵抗R
2による電圧降下、すなわち一次巻線T
1を流れる電流が過大となったときに、直流出力電圧を目標電圧V
Tよりも十分低く設定された閾値電圧V
THにまで低下させる第1保護動作と、(2)直流出力電圧が閾値電圧V
THに一致した状態で所定の時間T
WAITが経過するとスイッチング素子Q
1のスイッチングを停止させる第2保護動作とからなる。この過電流保護機能は、従来のスイッチング電源装置10における過電流保護機能と同じものである。
【0033】
なお、上記スイッチング電源装置1の構成要素のうち、スイッチング素子Q
1および制御部3は本発明の「スイッチング部」の一例である。また、MOSトランジスタQ
2は本発明の「電圧制御型のスイッチ素子」の一例である。
【0034】
[動作]
続いて、スイッチング電源装置1の動作について説明する。スイッチング電源装置1が起動し、制御部3がスイッチング素子Q
1のスイッチングを制御し始めると、トランスTの二次巻線T
2に電圧が誘起され、OUT1端子の電圧V
OUT1が上昇を始める。この上昇の過程で、コンデンサC
5→ダイオードD
4の経路で流れる電流によりコンデンサC
5は充電される。なお、スイッチング電源装置1が起動するとき、通常、CNT端子に入力される外部信号はLレベルとされる。このため、スイッチング電源装置1が起動したとき、MOSトランジスタQ
2は非導通状態となっている。
【0035】
スイッチング電源装置1が起動した後、外部信号がLレベルからHレベルになると、NPNトランジスタQ
3がオンし、制御用抵抗R
3に電流が流れ、MOSトランジスタQ
2が導通状態となる。
【0036】
この状態でOUT2端子とGND端子の間に接続された負荷7が短絡すると、
図2に示すように、コンデンサC
5の放電電流が制御用抵抗R
3→抵抗R
4→NPNトランジスタQ
3の経路で流れる。これにより、本実施例に係るスイッチング電源装置1では、負荷7が短絡した後においても、コンデンサC
5の容量に応じた時間だけMOSトランジスタQ
2の導通状態を維持することができる。
【0037】
なお、ダイオードD
4が存在しているので、
図3に示す負荷7を通る経路でコンデンサC
5の放電電流が流れることはない。ダイオードD
4は、コンデンサC
5の放電電流が制御用抵抗R
3に向かうように、放電電流の流れを規制していると言える。
【0038】
図4に、スイッチング電源装置1の動作波形を示す。
図6と同様、V
OUT1はOUT1端子の電圧、V
OUT2はOUT2端子の電圧、V
GはMOSトランジスタQ
2のゲート電圧、V
DSはMOSトランジスタQ
2のドレイン−ソース間電圧、I
DはMOSトランジスタQ
2のドレイン電流である。また、CNT端子には、Hレベルの外部信号が入力されているものとする。
【0039】
短絡が発生していない時間t
0において、電圧V
OUT1は目標電圧V
Tに維持され、電圧V
OUT2は目標電圧V
TよりもMOSトランジスタQ
2が介装されている分だけ低いV
T’に維持されている。また、MOSトランジスタQ
2のゲート電圧V
Gは、MOSトランジスタQ
2を導通状態とするのに必要な閾値電圧V
GTHよりも十分に高いV
G1となっている。
【0040】
時間t
1においてOUT2端子に接続された負荷7が短絡すると、過電流保護機能の第1保護動作により、制御部3が電圧V
OUT1(=直流出力電圧)を閾値電圧V
THに向かって低下させる。電圧V
OUT1が低下すると、MOSトランジスタQ
2のゲート電圧V
Gもそれに追従して低下しそうになる。しかしながら、上記の通り、本実施例に係るスイッチング電源装置1では、負荷7が短絡したときにコンデンサC
5の放電電流が制御用抵抗R
3に流れるので、制御電圧(=MOSトランジスタQ
2のゲート電圧V
G)は従来よりも非常に緩やかに低下する。そして、その結果、電圧V
OUT1が閾値電圧V
THに到達する時間t
2においても、制御電圧は閾値電圧V
GTHよりも高い電圧に保たれる。
【0041】
時間t
2において過電流保護機能の第1保護動作が終了すると、第2保護動作が開始される。そして、電圧V
OUT1が閾値電圧V
THに一致した状態(MOSトランジスタQ
2のドレイン−ソース間電圧V
DSが電圧V
OUT1として出力された状態)で所定の時間T
WAITが経過すると(時間t
3)、制御部3はスイッチング素子Q
1のスイッチングを停止させる。これにより、スイッチング電源装置1は、時間t
4において完全に停止する。
【0042】
コンデンサC
5は、所定の時間T
WAITが経過するまでの間、制御電圧が閾値電圧V
GTHを下回ることがないように容量が設定されている。このため、本実施例に係るスイッチング電源装置1では、負荷7が短絡した場合に過電流保護機能の第1保護動作および第2保護動作を確実に作動させることができる。また、本実施例に係るスイッチング電源装置1では、短絡後もMOSトランジスタQ
2の導通状態が維持されるので、MOSトランジスタQ
2のドレイン−ソース間電圧V
DSが短絡の前後において変動せず、時間t
2以降に発生する損失P=V
DS1×I
D2が従来のスイッチング電源装置10における損失P’=V
DS2×I
D2よりも随分と小さいものとなる。
【0043】
以上、本発明に係るスイッチング電源装置の実施例について説明したが、本発明は実施例の構成に限定されるものではない。
【0044】
例えば、実施例に係るスイッチング電源装置1は、一次側に起動抵抗R
1および補助電源部4を備えているが、これらは適宜省略することができる。また、スイッチング電源装置1は、二次側に抵抗R
7およびコンデンサC
4を備えているが、これらも適宜省略することができる。
【0045】
また、導通制御部5は、外部信号に応じて制御用抵抗R
3に電流を流し得る任意の回路に置き換えることができる。
【0046】
また、オン状態とオフ状態とに切り替え可能な出力の数、および切り替え不能な出力の数は、駆動すべき負荷の数等に応じてそれぞれ2以上にすることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 スイッチング電源装置
2 交流電源
3 制御部
4 補助電源部
5 導通制御部
6 負荷
7 負荷