(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
2プライでのMD方向の乾燥引張強度(T)が240〜320cN/25mmであり、2プライでのCD方向の乾燥引張強度(Y)が90〜140cN/25mmであり、前記乾燥引張強度(T)と乾燥引張強度(Y)の比((T)/(Y))が1.7〜3.0であり、2プライでのCD方向の湿潤引張強度38cN/25mm以上であり、伸びが11%以上である、請求項1〜4の何れか1項に記載のティシュペーパー。
【背景技術】
【0002】
ティシュペーパーには、ポリオール等の保湿剤が原紙に外添により付与されたものと、保湿剤が付与されていないティシュペーパーに大別することができる。
【0003】
保湿剤が付与されたものは保湿ティシュー、薬液付与タイプのティシューなどと称され、その保湿剤による吸湿作用によって、水分率が高められ、柔らかさや滑らかさが向上されている。
【0004】
これに対して、保湿剤が付与されていないティシュペーパーは、汎用ティシュー、汎用タイプなどとも称される。
【0005】
この汎用タイプのティシュペーパーは、上記薬液付与タイプのティシュペーパーが、保湿剤の効果による柔らかさの向上に鑑みて、洟かみ、フェイシャル用途に特化しているのに対して、洟かみ、フェイシャル用途のみならず、埃、塵の拭取りなどにも用いられ、その用途が多岐に亘り、特に、低価格であることが求められる。
【0006】
しかしながら、汎用タイプのティシュペーパーにおいても、洟かみ、フェイシャル用途に用いられる頻度は、非常に高く、その柔らかさや滑らかさなどは需用者において求められるところである。
【0007】
従来、この汎用タイプのティシュペーパーにおける品質の向上、特に柔らかさについては、原料パルプのコストに拘泥される比較的低い坪量、薬液非塗布といった条件のもと、内添の柔軟剤を用い紙自体の紙力を低下させる手法が採られてきた。
【0008】
しかし、この内添の柔軟剤によって紙力を低下させる手法では、十分な紙力を得ることが難しくなり、特に、表面の滑らかさが感じられるまで紙力を低下させると、極めて脆弱な紙力となってしまう。すなわち、従来のように単に、内添の柔軟剤を加えるのみでは、柔らかさを発現させることはできるが、加えて滑らかさと十分な強度の三要件を、ともに十分に発現させることが困難であった。
【0009】
このため、従来の汎用タイプのティシュペーパーは、ある程度の柔らかさがあって、埃、塵の拭取りなどでは使用上問題がないものの、洟かみや肌の清拭などの身体表面を擦るようにして使用する際、特に洟かみを複数回くりかえした際に、鼻が赤くなるという問題や、洟をかんだ際に、ティシュペーパーが破れて洟水が手に付着するという問題が生ずることが多々あった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の主たる課題は、柔らかさに加え、滑らかさにも優れ、洟かみや肌の清拭時に肌を擦るようにして使用しても、肌への負担が少なく肌表面を傷めず、そのうえ洟をかんださいに破れにくい強度を有する、ポリオール等の保湿剤が外添されていない汎用タイプとも称される保湿剤非塗布のティシュペーパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための手段は次のとおりである。
【0013】
〔請求項1記載の発明〕
保湿剤が塗布されていない2プライのティシュペーパーであって、
1プライあたりの坪量が11.0〜13.0g/m
2であり、
2プライの紙厚が120〜140μmであり、
柔軟剤化合物として、脂肪酸エステル系化合物と脂肪酸アミド系化合物とを含み、
湿潤紙力剤として、ポリアミドエピクロロヒドリンを含み、乾燥紙力剤として、ポリアクリルアミド及びカチオンデンプンの少なくとも一方を含み、
前記脂肪酸エステル系化合物の含有量が、パルプ繊維100質量部に対して0.01〜0.30質量部であり、前記脂肪酸アミド系化合物の含有量が、パルプ繊維100質量部に対して0.01〜0.20質量部であり、前記湿潤紙力剤の含有量がパルプ繊維100質量部に対して0.1〜1.0質量部であり、前記乾燥紙力剤の含有量がパルプ繊維100質量部に対して0.01〜0.20質量部であり、
MMDが6.8以下であり、ソフトネス1.0以下であり、
前記脂肪酸アミド系化合物と前記ポリアミドエピクロロヒドリンと前記ポリアクリルアミド及びカチオンデンプンの少なくとも一方との合計含有量に対する前記脂肪酸エステル系化合物の含有量の比が0.20以下である、
ことを特徴とするティシュペーパー。
【0014】
〔請求項2記載の発明〕
前記湿潤紙力剤及び前記乾燥紙力剤の合計含有量に対する前記柔軟剤化合物の合計含有量の比が0.30以下である、請求項1記載のティシュペーパー。
【0015】
【0016】
〔請求項
3記載の発明〕
保湿剤が塗布されていない2プライのティシュペーパーであって、
1プライあたりの坪量が11.0〜13.0g/m
2であり、
2プライの紙厚が120〜140μmであり、
柔軟剤化合物として、脂肪酸エステル系化合物と脂肪酸アミド系化合物とを含み、
湿潤紙力剤として、ポリアミドエピクロロヒドリンを含み、乾燥紙力剤として、ポリアクリルアミド及びカチオンデンプンの少なくとも一方を含み、
前記湿潤紙力剤及び前記乾燥紙力剤の合計含有量に対する前記柔軟剤化合物の合計含有量の比が0.30以下であり、
MMDが6.8以下であり、ソフトネス1.0以下である、
前記脂肪酸アミド系化合物と前記ポリアミドエピクロロヒドリンと前記ポリアクリルアミド及びカチオンデンプンの少なくとも一方との合計含有量に対する前記脂肪酸エステル系化合物の含有量の比が0.20以下である、
ことを特徴とするティシュペーパー。
【0017】
【0018】
〔請求項
4記載の発明〕
保湿剤が塗布されていない2プライのティシュペーパーであって、
1プライあたりの坪量が11.0〜13.0g/m
2であり、
2プライの紙厚が120〜140μmであり、
柔軟剤化合物として、脂肪酸エステル系化合物と脂肪酸アミド系化合物とを含み、
湿潤紙力剤として、ポリアミドエピクロロヒドリンを含み、乾燥紙力剤として、ポリアクリルアミド及びカチオンデンプンの少なくとも一方を含み、
前記脂肪酸アミド系化合物と前記ポリアミドエピクロロヒドリンと前記ポリアクリルアミド及びカチオンデンプンの少なくとも一方との合計含有量に対する前記脂肪酸エステル系化合物の含有量の比が0.20以下であり、
MMDが6.8以下であり、ソフトネス1.0以下である、
ことを特徴とするティシュペーパー。
【0019】
〔請求項
5記載の発明〕
2プライでのMD方向の乾燥引張強度(T)が240〜320cN/25mmであり、2プライでのCD方向の乾燥引張強度(Y)が90〜140cN/25mmであり、前記乾燥引張強度(T)と乾燥引張強度(Y)の比((T)/(Y))が1.7〜3.0であり、2プライでのCD方向の湿潤引張強度38cN/25mm以上であり、伸びが11%以上である、請求項1〜
4の何れか1項に記載のティシュペーパー。
【発明の効果】
【0020】
以上の本発明によれば、柔らかさ、滑らかさに優れ、洟かみや肌の清拭時に肌を擦るようにして使用しても、肌への負担が少なく肌表面を傷めず、そのうえ洟をかんださいに破れにくい強度を有する、汎用タイプとも称される保湿剤非塗布のティシュペーパーが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明に係るティシュペーパーは、汎用ティシュー、汎用タイプなどとも称される、保湿剤が塗布等によって外添されていない保湿剤非塗布のティシュペーパーである。なお、本発明に係る外添剤としての保湿剤は、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、マルトース、マルチトール、マンニトール、トレハロース等の糖類といったポリオールが例示できる。
【0023】
このティシュペーパーのプライ数は、2プライであり、その紙厚は2プライで120〜140μmであり、1プライあたりの坪量は、11.0〜13.0g/m
2である。紙厚が120μm未満となると後述の下記要件(1)〜(
3)との関係で十分な強度、特に洟かみ時にやぶれない十分な強度を確保するのが難しくなり、紙厚140μmを超えると柔らかさが発現し難くなる。また、坪量についても11.0g/m
2を下回ると、下記要件(1)〜(
3)との関係で十分な強度を確保し難くなる。反対に、坪量が13.0g/m
2を超えると、柔らかさが発現し難くなる。また、この坪量11.0〜13.0g/m
2という坪量は、原料パルプとの関係で、汎用タイプとしてのコストを確保する観点からも重要な範囲である。つまり、上記範囲を超えるような坪量であると、原料コストとの関係で、所謂汎用タイプとしての商品訴求力を確保する価格とするのが困難となる。
【0024】
ここで、本発明における坪量とは、JIS P 8124(1998)に基づいて測定した値を意味し、紙厚は、試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定した値を意味する。この紙厚測定の具体的手順は、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。プランジャーの端子は金属製で直径10mmの円形の平面が紙平面に対し垂直に当たるようにし、この紙厚測定時の荷重は、約70gfである。測定を10回行って得られる平均値とする。
【0025】
他方、本発明に係るティシュペーパーは、上記坪量及び紙厚の範囲内において、換言すれば汎用タイプとしての上記坪量及び紙厚である制約のもと、特徴的に、柔らかさ、滑らかさ、十分な強度の三要件を十分に向上すべく、特定の、柔軟剤化合物、湿潤紙力剤、乾燥紙力剤の組み合わせとする。
【0026】
その本発明に係るティシュペーパーにおける前記柔軟剤化合物は、脂肪酸エステル系化合物と脂肪酸アミド系化合物であり、湿潤紙力剤は、ポリアミドエピクロロヒドリンであり、乾燥紙力剤は、ポリアクリルアミド及びカチオンデンプンの少なくとも一方である。
【0027】
本発明に係る前記脂肪酸エステル系化合物は、カチオン性の脂肪酸エステル系化合物、ノニオン性の脂肪酸エステル系化合物のいずれでもよいが、その両者が含まれているのが望ましい。また、脂肪酸エステル系化合物としては、多炭素数が6〜24のアルコールと炭素数7〜25の脂肪酸との化合物であるのが望ましい。アルコールは、直鎖アルコール、分岐鎖を有するアルコール、飽和アルコール、及び不飽和アルコールの何れでも良い。特に、炭素数が10〜22のアルコールが好ましく、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、及びオレイルアルコールが好ましい。これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。また、炭素数7〜25の脂肪酸としては、直鎖脂肪酸、分岐鎖を有する脂肪酸、飽和脂肪酸、及び不飽和脂肪酸の何れでも良い。特に、炭素数が10〜22の脂肪酸が好ましく、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、及びオレイン酸が好ましい。これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0028】
また、本発明に係る前記脂肪酸アミド系化合物は、ポリアルキレンポリアミンおよびカルボン酸を反応させて得ることができる。好適なポリアルキレンポリアミンは、分子中に少なくとも3個のアミノ基を有する、次式(1)で示されるものである。
【0029】
H2N−(R1−NH−)n−R1−NH2・・・(1)
(R1は各々独立して炭素数1〜4のアルキレン基、nは1〜3の整数)
【0030】
このポリアクリルアミンにおいては、分子中に異なるR1が存在していてもよい。また、2種以上のポリアルキレンポリアミンを用いることも可能である。好ましいR1はエチレン基である。
【0031】
一方、前記カルボン酸としては、炭素数10〜24のカルボン酸が望ましく、飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のいずれであってもよい。また、直鎖状カルボン酸、分岐鎖を有するカルボン酸のいずれであってもよい。中でも炭素数12〜22のカルボン酸が好ましく、特に炭素数14〜18のカルボン酸が好ましい。
【0032】
そして、本発明に係るティシュペーパーは、そのMMDが6.8以下である。MMDは、滑らかさの指標であり、上記範囲であれば、使用時に表面の滑らかさが非常に感じられるものとなる。概ね、洟かみや肌の清拭時に肌を擦るようにして使用しても、肌への負担が少なく肌表面を傷め難くなる。
【0033】
ここで、MMDの測定は、
図1に示す測定装置を用い、摩擦子の接触面を所定方向に20g/cmの張力が付与された測定試料の表面に対して25gの接触圧で接触させながら、張力が付与された方向と略同じ方向に速度0.1cm/sで2cm移動させ、このときの、摩擦係数を、摩擦感テスター KES−SE(カトーテック株式会社製)を用いて測定する。その摩擦係数を摩擦距離(移動距離=2cm)で除した値がMMDである。摩擦子は、直径0.5mmのピアノ線Pを20本隣接させてなり、長さ及び幅がともに10mmとなるように形成された接触面を有するものとする。接触面には、先端が20本のピアノ線P(曲率半径0.25mm)で形成された単位膨出部が形成されているものとする。
【0034】
本発明に係るMMDの範囲への調整は、上記坪量及び紙厚において上記の柔軟剤化合物、乾燥紙力剤、そして特に湿潤紙力剤を本発明に係るパルプ繊維に対する質量比で含有せしめることで容易に達成でき、また、さらなる調整を、乾燥引張強度等と同様に、製造時のクレープ率やパルプ繊維の種類及び組成比によって行うことができる。
【0035】
他方、本発明に係るティシュペーパーは、そのソフトネス1.0以下である。ソフトネスは、柔らかさの指標であり、上記範囲であれば、使用時にしなやかで柔らかさが非常に感じられるものとなる。
【0036】
ここで、ソフトネスは、JIS L 1096 E法に準じたハンドルオメータ法に基づいて測定した値をいう。但し、試験片は100mm×100mmの大きさとし、クリアランスは5mmとする。1プライで縦方向、横方向の各々5回ずつ測定し、その全10回の平均値とする、なお、ソフトネスは、無単位であるが、試験片の大きさを考慮して、cN/100mmを単位として表されることもある。
【0037】
本発明に係るティシュペーパーは、上記MMD及びソフトネスを達成すべく、上記坪量及び特定の柔軟剤化合物、湿潤紙力剤及び乾燥紙力剤の使用のもと特徴的に
下記(3)又(3)と少なくとも(1)と(2)の要件を含むようにするのがよい。
【0038】
すなわち(1)脂肪酸エステル系化合物の含有量が、パルプ繊維100質量部に対して0.01〜0.30質量部、脂肪酸アミド系化合物の含有量が、パルプ繊維100質量部に対して0.01〜0.20質量部、湿潤紙力剤の含有量がパルプ繊維100質量部に対して0.1〜1.0質量部、乾燥紙力剤の含有量がパルプ繊維100質量部に対して0.01〜0.20質量部。
【0039】
(2)湿潤紙力剤及び乾燥紙力剤の合計含有量に対する柔軟剤化合物の合計含有量の比((柔軟剤化合物)/(湿潤紙力剤+乾燥紙力剤))が0.30以下。
【0040】
(3)
前記脂肪酸アミド系化合物と前記ポリアミドエピクロロヒドリンと前記ポリアクリルアミド及びカチオンデンプンの少なくとも一方との合計含有量に対する前記脂肪酸エステル系化合物の含有量の比((脂肪酸エステル系化合物)/(脂肪酸アミド系化合物+ポリアミドエピクロロヒドリン+ポリアクリルアミド及び
カチオンデンプンの少なくとも一方))が0.20以下。
【0041】
本発明に係るMMD及びソフトネスの範囲への調整は、上記坪量及び紙厚において上記の柔軟剤化合物、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤を用い、さらに上記(1)〜(3)の要件を満たすことで容易に達成でき、さらなる調整については、製造時のクレープ率やパルプ繊維の種類及び組成比によって行うことができる。
【0042】
上記(1)の要件に関しては、本発明に係るティシュペーパーは、柔軟剤化合物として、脂肪酸エステル系化合物と脂肪酸アミド系化合物の組み合わせとし、さらに湿潤紙力剤としてポリアミドエピクロロヒドリン、乾燥紙力剤としてポリアクリルアミド及びカチオンデンプンの少なくとも一方の組み合わせとするとともに、各々の含有量を上記範囲とすることにより、柔らかさ、滑らかさ及び強度が十分に向上されたものとなる。
【0043】
つまり、本発明に係るティシュペーパーは、上記の限定した特定の柔軟剤化合物、湿潤紙力剤及び乾燥紙力剤を用い、さらに所定のパルプ繊維に対する質量比とすることで、薬液非塗布の汎用タイプでありながら、各々の薬剤の効果が阻害されず相乗の効果が得られる。柔軟剤化合物によるコシの低下等による柔らかさの発現を達成しつつ、柔軟剤化合物の弊害である紙力の低下をその柔軟剤化合物の効果を阻害せずに紙力が向上され、柔らかさ及び滑らかさの向上と紙力の維持がなされるのである。ここで、上記柔軟剤化合物、湿潤紙力剤及び乾燥紙力剤は、汎用タイプのティシュペーパーの製造方法の常法に従って、内添剤として用いられる。すなわち、パルプ繊維となる原料パルプに対して、柔軟剤化合物、湿潤紙力剤及び乾燥紙力剤を添加した抄紙原料(紙料とも言われる)を抄紙することによって製造する。
【0044】
上記(2)の要件に関しては、本発明に係るティシュペーパーは、柔軟剤化合物として、脂肪酸エステル系化合物と脂肪酸アミド系化合物の組み合わせとし、さらに湿潤紙力剤としてポリアミドエピクロロヒドリン、乾燥紙力剤としてポリアクリルアミド及びカチオンデンプンの少なくとも一方の組み合わせとするとともに、湿潤紙力剤及び乾燥紙力剤の合計含有量に対する柔軟剤化合物の合計含有量の比を0.30以下とすることで、柔らかさ、滑らかさ及び強度が十分に向上されたものとなる。つまり、上記範囲とすることで、柔軟剤化合物によるコシの低下等による柔らかさの発現を達成しつつ、柔軟剤化合物の弊害である紙力の低下をその柔軟剤化合物の効果を阻害せずに紙力が向上され、柔らかさ及び滑らかさの向上と紙力の維持がなされるのである。ここで、柔軟剤化合物の比率が高く0.30を超えると、柔軟剤化合物による紙力の低下を抑えられなくなり、パルプ繊維を叩解して紙力を向上させる手法を取らなくてはならず、これによりパルプ繊維が傷つくことで滑らかさの悪化につながるとともに、柔らかさの改善も見込めない。また、湿潤紙力剤と乾燥紙力剤の比率が低く0.30を超える場合、紙力の発現が難しくなる。
【0045】
(3)の要件に関しては、本発明に係るティシュペーパーは、
前記脂肪酸アミド系化合物と前記ポリアミドエピクロロヒドリンと前記ポリアクリルアミド及びカチオンデンプンの少なくとも一方との合計含有量に対する前記脂肪酸エステル系化合物の含有量の比((脂肪酸エステル系化合物)/(脂肪酸アミド系化合物+ポリアミドエピクロロヒドリン+ポリアクリルアミド及び
カチオンデンプンの少なくとも一方))
を0.20以下とすることで、柔らかさ、滑らかさ及び強度が十分に向上されたものとなる。
【0046】
脂肪酸エステル系化合物は、ティシュペーパー表面の濡れ性やふっくらさ(ふんわりさ)を改善する効果を有し、脂肪酸アミド系化合物、ポリアミドエピクロロヒドリン、ポリアクリルアミド、カチオンデンプンは、繊維表面をコーティングする効果を有し、これらの柔軟剤化合物、湿潤紙力剤及び乾燥紙力剤を用いることで、柔らかさのみならず表面の滑らかさが向上される。特に、汎用タイプのティシュペーパーの製造方法の常法に従って内添剤として用いることで、ヤンキドライヤーで湿紙乾燥がなされる際に、脂肪酸エステル系化合物がパルプ繊維になじむとともに、脂肪酸アミド系化合物、ポリアミドエピクロロヒドリン、ポリアクリルアミド、カチオンデンプンがパルプ繊維をコーティングする効果が助長され、滑らかさが向上する。但し、これら特定の柔軟剤化合物、湿潤紙力剤及び乾燥紙力剤を用いても、上述の坪量、紙厚の範囲において上記(3)の要件を満たさない場合には、滑らかさが発現しがたい。つまり、坪量及び紙厚が上記範囲外となると密度が疎となり、本発明に係る特定の柔軟剤化合物、湿潤紙力剤及び乾燥紙力剤を用いてもパルプ繊維自体のざらつきが感じられて、滑らかさが感じられがたいものとなる。
【0047】
なお、特に上記(2)〜(3)の要件においては、柔軟剤化合物、湿潤紙力剤及び乾燥紙力剤における上記パルプ繊維に対する質量比で含有することに拘泥されないが、上記(1)の要件とともに満たすようにすると滑らかさ、柔らかさ、紙力の向上効果において特に顕著な効果が見られる。なお、上記(2)及び(3)の要件における含有量とは、パルプ繊維当たりの質量部を基準とする。
【0048】
さらに、本発明にかかるティシュペーパーは、2プライでのMD方向の乾燥引張強度(T)と2プライでのCD方向の乾燥引張強度(Y)の比((T)/(Y))(以下、縦横比ともいう)が1.7〜3.0であるのが望ましい。この範囲とすることで、さらなる紙力の向上が図られている。すなわち、柔軟剤化合物による柔らかさの発現、湿潤紙力剤及び乾燥紙力剤による柔軟剤化合物による紙力の低下を補うだけでなく、繊維配向性を調整することによって一層の紙力向上と柔らかさ、滑らかさの向上がなされる。上記各添加剤に加えて所定の縦横比とすることによって、薬液非塗布の汎用タイプでありながら、柔らかさ、滑らかさと紙力がこれまで以上に向上されるのである。
【0049】
ここで、本発明に係るティシュペーパーにおける具体的な乾燥引張強度は、2プライでのMD方向(縦方向とも言われる)の乾燥引張強度(T)が240〜320cN/25mmであり、2プライでのCD方向(横方向とも言われる)の乾燥引張強度(Y)が90〜140cN/25mmである。MD方向及びCD方向の乾燥時の紙力の指標である乾燥引張強度が上記範囲であれば使用時における十分な乾燥時の紙力といえる。この乾燥引張強度とするには、上記坪量及び紙厚において上記の柔軟剤化合物、乾燥紙力剤さらに湿潤紙力剤を用い上記(1)〜(3)の要件を満たす範囲で容易に達成できる。さらに、詳細な調整は、製造時のクレープ率やパルプ繊維の種類及び組成比によって行うことができる。また、前記縦横比の調整は、抄紙原料、すなわち原料パルプに対して内添剤を配合したスラリー状の抄紙原料を、その濃度を考慮して、ヘッドボックスからワイヤーやフェルト等の所謂抄紙網に吐出する際における吐出速度を調整して、繊維配向性を調整することで達成される。また、さらなる調整としてクレープ率によって調整することができる。
【0050】
本発明に係るティシュペーパーにおいては、この縦横比とする、換言すればパルプの繊維配向性をやや縦方向に向けるように調整することで、より一層、使用時における強度、特に縦方向とにおける紙力のバランスに優れ、使用時に破れがたいものとなるとともに、柔らかさと滑らかさも向上する。この縦横比の範囲において、柔らかさ、滑らかさが発現するメカニズムは、ティシュペーパーが微細なクレープを有するという特質に関係する。つまり、ティシュペーパーは、MD方向に沿って山谷が連続するクレープを有するためMD方向に伸び易く、破れにくいとともに、その山谷に沿う方向、換言すればCD方向に沿って折れ曲がりやすくなっている。その一方で、CD方向はクレープの山谷のエッジが位置するため伸び難く破れやすいとともに、MD方向に沿って折れ曲がりにくい。本願発明に係るティシュペーパーに係る縦横比を達成する繊維配向性、すなわちパルプ繊維がやや縦方向に向かうように調整されている場合には、ティシュペーパーがCD方向に折れ曲がり易くなっているとともに、エッジがCD方向に向かう繊維が少なくなっているため、全体として十分な紙力を発現しつつも柔らかさと滑らかさが向上するのである。
【0051】
なお、本発明に係る乾燥引張強度とは、JIS P 8113(1998)の引張試験に基づいて測定した値をいう。
【0052】
他方、本発明に係るティシュペーパーの製造時における好ましいクレープ率は、13〜20%である。クレープ率が13%未満となると、本願発明に係る柔軟剤化合物、湿潤紙力剤、乾燥紙力剤及び乾燥引張強度(T)と乾燥引張強度(Y)の比((T)/(Y))との関係で十分な伸び、柔らかさを確保するのが難しくなり、20%を超えると、滑らかさが発現し難くなる。
【0053】
他方、本発明に係るティシュペーパーにおける具体的な湿潤引張強度は、2プライでのCD方向の湿潤引張強度が38cN/25mm以上であるのが望ましい。湿潤時の紙力の指標である湿潤引張強度が上記範囲であれば、使用時、特に洟をかむ操作をしても破れるおそれが格段に小さくなる。この湿潤引張強度とするには、上記坪量及び紙厚において上記の柔軟剤化合物、乾燥紙力剤、そして特に湿潤紙力剤を用い、上記(1)〜(3)の要件を満たすことで容易に達成できる。さらなる調整は、乾燥引張強度と同様に、製造時のクレープ率やパルプ繊維の種類及び組成比によって行うことができる。
【0054】
なお、本発明に係る湿潤引張強度とは、JIS P 8135(1998)の引張試験に基づいて測定した値をいう。
【0055】
また、本発明に係るティシュペーパーは、その伸びは11%以上であるのが望ましい。ここで、伸びは、JIS P 8132の試験方法に基づいてロードセル引張試験機(Minebea テクノグラフTG−200N)にて測定した値をいう。試験片は25mmの幅とし、2プライで縦方向に5回測定し、その平均値とする。
【0056】
他方、本発明に係るティシュペーパーにおけるパルプ繊維は、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)とLBKP(広葉樹クラフトパルプ)とを配合したものが望ましい。特に、パルプ繊維が、NBKPとLBKPのみから構成されているのがよく、配合割合が、NBKP:LBKP=20:80〜80:20がよく、特に、NBKP:LBKP=30:70〜60:40が望ましい。このNBKPとLBKPとの配合比によって、紙力、ソフトネス等を調整することができる。
【実施例】
【0057】
次いで、本発明に係るティシュペーパーの実施例と比較例を作成し、その引張強度、MMD、ソフトネス等の物性値を測定した。各例における組成・物性値は、下記表1に示すとおりである。
【0058】
【表1】
【0059】
表1の結果によれば、本発明に係る柔軟剤化合物、湿潤紙力剤、乾燥紙力剤を用い、さらに本発明に係る要件を満たす実施例1〜3については、引張強度、MMD、ソフトネスともに本発明の範囲内となっており、柔らかさだけでなく、滑らかさ及び強度についても十分に発現し高いものとなっている。
【0060】
ここで、表1において注目すべきは、比較例の結果である。まず、比較例1は、柔軟剤化合物として脂肪酸エステル系化合物のみを用いたものであるが、この場合、滑らかさの指標であるMMDは、本発明に係る6.8以下を達成できているが、柔らかさの指標であるソフトネスが1.0以下を達成できていない。一般には、脂肪酸アミド化合物は、コーティング作用によって滑らかさを高める効果を有するとされるが、比較例1では、脂肪酸アミド系化合物が配合されていないにも関わらず、滑らかさについては十分であるもののソフトネスについては不十分との結果となった。つまり、柔軟剤化合物として、脂肪酸エステル系化合物を増量しただけでは、柔らかさが十分に発現せず、脂肪酸アミド化合物とともに本発明の範囲で用いることで柔らかさが発現する。
【0061】
さらに、比較例2は、柔軟剤化合物として脂肪酸エステル系化合物及び脂肪酸アミド系化合物の双方を用いているが、脂肪酸アミド系化合物が多く本発明の範囲外となっている例である。この比較例2では、ソフトネスは、1.0以下を達成したが、MMDの値が7.2と高くなってしまっており、滑らかさが十分に発現されていない。注目すべき柔軟剤化合物の含有量と、湿潤紙力剤と乾燥紙力剤の含有量との比が1.52となっており、脂肪酸アミド系化合物は上記のとおりコーティング作用によって表面を滑らかにする作用を有するとされるが、必要以上に増量した場合には、おそらくは乾燥紙力剤との相乗によって過度に紙力が高まり、また、表面を過度にコーティングすることによって表面に硬さが発現して却って滑らかさが低下するのではないかと考えられる。また、柔軟剤化合物の高配合によってヤンキドライヤーに対する付着が不十分となり、適切なクレープが形成されてないことも要因として考えられる。
【0062】
他方、比較例3は、比較例2よりも脂肪酸エステル系化合物の配合比を高め、脂肪酸アミド系化合物の量を若干低めたものであるが、柔軟剤化合物の含有量と、湿潤紙力剤と乾燥紙力剤の含有量との比が0.57であり、本発明の範囲外となっている。この比較例3においては、MMD及びソフトネスとも十分に高まらなかった。このことから、脂肪酸アミド系化合物と脂肪酸エステル系化合物とを用いても、本発明の範囲外では、柔らかさや滑らかさが高まるわけではないことが知見される。
【0063】
さらに、比較例4は、柔軟剤化合物を用いず、紙厚を厚くして密度を疎にし、さらに縦横比も本発明の範囲外にしたものであるが、この比較例4では、MMD、ソフトネスともに非常に高い結果となった。
【0064】
以上の実施例及び比較例の結果から本発明に係るティシュペーパーにしたがって、本発明に係る柔軟剤化合物、湿潤紙力剤、乾燥紙力剤を用い、上記(1)〜(3)の要件を満たすようにすることで、柔らかさ、滑らかさ、強度が向上して発現し、もって、洟かみや肌の清拭時に肌を擦るようにして使用しても、肌への負担が少なく肌表面を傷めず、そのうえ洟をかんださいに破れにくい強度を有する、汎用タイプとも称される保湿剤非塗布のティシュペーパーが得られる。