(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242031
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】イチョウ抽出物を製造するための改良法
(51)【国際特許分類】
A61K 36/16 20060101AFI20171127BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20171127BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20171127BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20171127BHJP
A61K 31/343 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
A61K36/16
A61P9/00
A61P25/28
A61K31/7048
A61K31/343
【請求項の数】12
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-550792(P2016-550792)
(86)(22)【出願日】2015年1月12日
(65)【公表番号】特表2017-505334(P2017-505334A)
(43)【公表日】2017年2月16日
(86)【国際出願番号】EP2015050401
(87)【国際公開番号】WO2015117793
(87)【国際公開日】20150813
【審査請求日】2016年9月5日
(31)【優先権主張番号】102014202318.1
(32)【優先日】2014年2月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500287282
【氏名又は名称】ドクター.ヴィルマー シュワーベ ゲーエムベーハー ウント ツェーオー.カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100080609
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 正孝
(74)【代理人】
【識別番号】100109287
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 泰三
(72)【発明者】
【氏名】フランク・ウェイマー
(72)【発明者】
【氏名】ステッフェン・ラインハルド
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン・ハウエル
【審査官】
横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−279332(JP,A)
【文献】
特表2009−501169(JP,A)
【文献】
特開2009−173663(JP,A)
【文献】
特表2008−540354(JP,A)
【文献】
特表2008−540355(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/146592(WO,A1)
【文献】
van Beek Teris A,Chemical analysis and quality control of Ginkgo biloba leaves, extracts, and phytopharmaceuticals.,Journal of chromatography. A, (2009 Mar 13) Vol. 1216, No. 11, pp. 2002-32.,2009年
【文献】
国民生活センター,イチョウ葉食品の安全性 〜アレルギー物質とその他の特有成分について考える〜,http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20021125.pdf,2002年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00
A61K 31/343
A61K 31/7048
A61P 9/00
A61P 25/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラボングリコシドとして計算して、22.0重量%〜27.0重量%のフラボノイド含量、2.6重量%〜3.2重量%のビロバライド、2.8重量%〜3.4重量%のギンコリド A、BおよびCならびに5ppmを超えないギンコール酸の含量を有するイチョウ葉の乾燥抽出物を製造するための方法であって、下記工程:
(a)水含有アセトン、水含有炭素原子1〜3のアルカノールまたは無水メタノールで、約40〜100℃の温度で、新鮮なあるいは乾燥した生のイチョウ葉を抽出して粗抽出溶液を得、
(b)工程(a)の粗抽出溶液からアセトンまたは炭素原子1〜3アルカノールの大部分の量を蒸留により分離して10重量%を超えない含量とし、ここで工程(a)で無水メタノールが用いられる場合には、最後の蒸留工程で水が添加されて濃縮された水溶液を得る、
(c)工程(b)の濃縮水溶液を固形含有量5〜25重量%まで水で希釈し、25℃より低い温度に冷却し、沈殿が形成されるまで冷却を維持しそして形成された沈殿を分離して再度水溶液を得る、
(d)工程(c)の得られた水溶液に硫酸アンモニウムを添加しそして硫酸アンモニウムを含む生成溶液をメチルエチルケトンまたはメチルエチルケトンとアセトンの混合物で抽出し、水相をメチルエチルケトンもしくはメチルエチルケトン−アセトン相から分離してメチルエチルケトンもしくはメチルエチルケトン−アセトン相を得る、
(e)工程(d)のメチルエチルケトンもしくはメチルエチルケトン−アセトン相を40〜80重量%の乾燥抽出部分まで濃縮して濃縮物を得る、
(f)工程(e)の濃縮物の10〜60重量%の部分を水とメチルエチルケトンを用いて60重量%を超えない乾燥抽出部分と30重量%を超えないメチルエチルケトン含量に調整して調整抽出溶液を得そして得られた調整抽出液を、メチルエチルケトンと60〜100℃の沸点の脂肪族溶媒との7/3〜9/1(m/m)の比の混合物で抽出して水−メチルエチルケトン相とメチルエチルケトン−脂肪族溶媒相を得る、
(g)工程(e)の濃縮物の90〜40重量%の残余部分を工程(f)の水−メチルエチルケトン相または工程(f)のメチルエチルケトン−脂肪族溶媒相と一緒にして溶液を得る、
(h)工程(g)の溶液を固形分含量50〜70重量%に濃縮しそして得られた濃縮物を、50重量%を超えない固形分含量まで水で希釈して溶液を得る、
(i)工程(h)で得られた溶液を水と混和しないブタノールまたはペンタノールを用いて多段抽出してブタノール相またはペンタノール相を得る、
(j)工程(i)のブタノールもしくはペンタノール相を少なくとも50重量%の固形分含量まで濃縮して濃縮物を得る、
(k)工程(j)で得られた濃縮物を、必要により、水もしくは60重量%を超えない水性エタノール中の、5〜20重量%乾燥抽出物を有する溶液が得られるような量の水とエタノールを添加することにより希釈し、
(l)工程(k)の水溶液または水性エタノール溶液を、沸点60〜100℃の脂肪族溶媒を用いて抽出し、脂肪族溶媒相から水相を分離して水相を得る、
(m)工程(l)で得られた水相を、減圧下60〜80℃を超えない温度で濃縮して5重量%未満の水含量を有する乾燥抽出物を得る、
からなる上記方法。
【請求項2】
工程(a)における抽出溶媒として、アセトン含有割合が約50〜70重量%の水含有アセトンが用いられる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)における抽出溶媒として、アセトン含有割合が約60重量%である水含有アセトンが用いられる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)における抽出溶媒として、メタノール、エタノール、1−プロパノールおよび2−プロパノールから選ばれるアルカノールの含有割合が約50重量%〜70重量%である水含有アルカノールが用いられる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)における抽出溶媒として、エタノール含有割合が約60重量%である水含有エタノールが用いられる請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(c)において、希釈された水溶液が12℃よりも低い温度に冷却される請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
工程(d)において、工程(c)の水溶液について少なくとも30重量%の硫酸アンモニウムが添加される、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
工程(d)において、それは7/3〜3/4(m/m)の比率のメチルエチルケトンとアセトンの混合物で抽出される請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
工程(i)において、それは1−ブタノールで抽出される請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
工程(l)において、それはヘプタンで抽出される、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ヘプタンがn−ヘプタンまたはn−ヘプタンが35重量%を超える部分を占めるヘプタン異性体の混合物である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
下記付加工程:
(n)工程(k)の水相からあるいは工程(m)の乾燥抽出物から、エタノール含有率40重量%〜60重量%の水性エタノール性イチョウ抽出溶液を調製し、
(o)工程(n)の水性エタノール性イチョウ抽出溶液をスルホン酸基が結合されているポリスチレン樹脂である強酸性イオン交換体に適用して残存する4’−O−メチルピリドキシンを該イオン交換体で除去しそして水性エタノールを用いて溶出して4’−O−メチルピリドキシンを含まない抽出液を溶離液として得、
(p)工程(o)の溶離液を減圧下で濃縮しそして60〜80℃の温度で乾燥して水分含有率が5重量%未満の乾燥抽出物を得る、
をさらに有する請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬として使用するための、イチョウの葉の抽出物を製造するための改良された多段法に関する。
【背景技術】
【0002】
イチョウの葉からの抽出物は薬として何世紀にもわたって使用されてきた。現在、それらはいろいろな種類の痴呆およびその症状、ならびに脳および抹消循環不全の治療のために用いられている。活性が関係する成分はテルペンラクトン(ギンコリドA、B、Cおよびビロバライド)およびフラボン類のグリコシド類(ケルセチン、ケムフェロールおよびイソラムネチン)である。全イチョウの葉抽出物について記載している現行欧州薬局方(改訂版8.0;モノグラフ 04/2008:1827“イチョウ乾燥抽出物、精製且つ定量化品”)によれば、薬局方の範囲内で薬として認可され得るイチョウ葉抽出物は、フラボングリコシド類として計算して、22.0〜27.0%のフラボノイド類、2.6〜3.2%のビロバライド類、2.8〜3.4%のギンコライド類A、BおよびCならびに5ppm以下のギンコール酸類を含有する。調合物は(“薬の認可と登録のための告示(ヒト医薬領域のための調合モノグラフ)−ギンコーフォリウム(イチョウの葉)”)(連邦新聞出版社46(133),7360−7361(1994))に次のとおり記載されている:“アセトン−水でそして濃縮物あるいは単離成分の添加なしに引き続く精製工程で、イチョウ葉LINNEの乾燥葉から調製された乾燥抽出物”。
【0003】
最近、各成分の含量を伴うイチョウ葉が多く得られているが、それは公知の方法の抽出では、欧州薬局方の求めによる抽出物を与えることはない。特に、現在、異常に高いテルペンラクトン含量のイチョウ葉は、増加して収穫されているため抽出物中の含量も増加する結果となっている。しかしながら、時々、イチョウ葉も異常に高いフラボノイド含量を有している。
適切なイチョウ葉が用いられるとき、欧州薬局方の求めに沿う抽出物を与える最も重要な抽出法は、EP 431535B1(ドクター.ヴィルマー シュワーベ社)およびEP 360556B1(インデナ社)に記載されている。最近になって、EP 431536B1(ドクター.ヴィルマー シュワーベ社)による方法が一層重要になって来た。その理由は、この方法では鉛塩(EP 431535B1)あるいは芳香族炭化水素(EP 360556B1)のような毒性学的に危険な化合物が求められないからである。
【0004】
EP 431536B1のクレーム1によれば、イチョウ葉の抽出物を製造する請求された方法は、次の(a)〜(j)によって特徴づけられる。
(a)新鮮なあるいは乾燥した生のイチョウの葉が、水含有アセトン、水含有炭素原子1〜3のアルカノールまたは無水メタノールで約40〜100℃の温度で抽出される。
(b)有機溶媒の大部分の量が抽出物が分離され、10重量%を超えない量にされる。その際最後の蒸留工程では、必要により、水が添加される。
(c)残余の濃縮された水溶液は固形分含量5〜25重量%まで水により希釈され、攪拌下に25℃よりも低い温度まで冷却され、沈殿が生成するまで放置されそして水への溶解性が弱い脂溶性成分からなる形成された沈殿が分離される。
(d)硫酸アンモニウムが残余の水溶液に添加されそして形成された溶液をメチルエチルケトンでまたはメチルエチルケトンとアセトンの混合物で抽出される。
(e)得られた抽出物が固形分含有量50〜70%まで濃縮されそして得られた濃縮物が水で固体含有量5〜20%まで希釈される。
(f)かく得られた溶液が水と混和しないブタノールまたはペンタノールで多段工程で抽出される。
(g)ブタノール相とペンタノール相は、それぞれ、固形分含有量50〜70%まで濃縮される。
(h)濃縮物が、20〜60重量%の水性エタノール中に、5〜20重量%乾燥抽出物を有する溶液が得られるような量の水とエタノールを添加され、希釈される。
(i)水性アルコール溶液が、アルキルフェノール化合物をさらに分離するために、沸点60〜100℃の脂肪族もしくは環状脂肪族溶媒で抽出される。
(j)水相が減圧下で濃縮されそして60〜80℃を超えない温度で乾燥されて水分含量5%未満の乾燥抽出物を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、望ましくない成分スペクトル特にテルペンラクトン類の含有量の多い、しかしまたフラボノイド類の含有量も多いイチョウ葉を使用した場合でも、欧州薬局方の求めを充足するイチョウ葉抽出物を製造するための改良された方法を提供することにある。さらに、本発明の目的は、純水な化合物やほぼ純粋な濃縮物は薬品として使用されるイチョウ葉抽出物のためには許可されていないので、それらを添加しないで上記方法を達成することにある。
【0006】
驚いたことに、EP 431536B1による方法における付加的方法工程によっても、望ましくない成分スペクトルを持つイチョウ葉から欧州薬局方による抽出物を得ることができる。この目的のために、工程(d)による抽出(液液分配)後、水相がメチルエチルケトンおよびメチルエチルケトン−アセトン相からそれぞれ分離され、それは濃縮物を得るまで、40〜80重量%の乾燥抽出部に濃縮される。この濃縮物の10〜60重量%の部分が水とメチルエチルケトンを用いて60重量%を超えない乾燥抽出部分と30重量%を超えないメチルエチルケトン含量に調節され、そしてメチルエチルケトンと60〜100℃の沸点を持つ脂肪族溶媒との7/3〜9/1(m/m)の比の混合物で抽出されて水−メチルエチルケトン相とメチルエチルケトン−脂肪族溶媒相とを得る。
【0007】
水−メチルエチルケトン相は残余の90〜40重量%の濃縮物と一緒にされて溶液を得そしてそれによって最終製品のテルペンラクトン類の含量があまり高くなりすぎないように和らげる。
あるいは、得られたメチルエチルケトン−脂肪族溶媒相は残余の、90〜40重量%の濃縮物と一緒にされて最終製品のフラボノイド類の含量があまり高くなりすぎないように和らげる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
それ故、フラボングリコシドとして計算して、22.0重量%〜27.0重量%のフラボノイド含量、2.6重量%〜3.2重量%のビロバライド、2.8重量%〜3.4重量%のギンコリドA、BおよびCならびに5ppmを超えないギンコール酸の含量を有するイチョウ葉の乾燥抽出物を製造するための本発明方法は、下記工程(a)〜(m)からなる。
【0009】
(a)水含有アセトン、水含有炭素原子1〜3のアルカノールまたは無水メタノールで、約40〜100℃の温度で、新鮮なあるいは乾燥した生のイチョウ葉を抽出して粗抽出溶液を得、
(b)工程(a)の粗抽出溶液からアセトンまたは炭素原子1〜3アルカノールの大部分の量を蒸留により分離して10重量%を超えない含量とし、ここで工程(a)で無水メタノールが用いられる場合には、最後の蒸留工程で水が添加されて濃縮された水溶液を得る、
(c)工程(b)の濃縮水溶液を固形分含量5〜25重量%まで水で希釈し、25℃より低い温度に冷却し、沈殿が形成されるまで冷却を維持しそして形成された沈殿を分離して再度水溶液を得る、
(d)工程(c)の得られた水溶液に硫酸アンモニウムを添加しそして硫酸アンモニウムを含む生成溶液をメチルエチルケトンまたはメチルエチルケトンとアセトンの混合物で抽出し、水相をメチルエチルケトンもしくはメチルエチルケトン−アセトン相から分離してメチルエチルケトンもしくはメチルエチルケトン−アセトン相を得る、
(e)工程(d)のメチルエチルケトンもしくはメチルエチルケトン−アセトン相を40〜80重量%の乾燥抽出部分まで濃縮して濃縮物を得る、
(f)工程(e)の濃縮物の10〜60重量%の部分を水とメチルエチルケトンを用いて60重量%を超えない乾燥抽出部分と30重量%を超えないメチルエチルケトン含量に調整して調整抽出溶液を得そして得られた調整抽出液を、メチルエチルケトンと60〜100℃の沸点の脂肪族溶媒との7/3〜9/1(m/m)の比の混合物で抽出して水−メチルエチルケトン相とメチルエチルケトン−脂肪族溶媒相を得る、
(g)工程(e)の濃縮物の90〜40重量%の残余部分を工程(f)の水−メチルエチルケトン相または工程(f)のメチルエチルケトン−脂肪族溶媒相と一緒にして溶液を得る、
(h)工程(g)の溶液を固形分含量50〜70重量%に濃縮しそして得られた濃縮物を、50重量%を超えない固形分含量まで水で希釈して溶液を得る、
(i)工程(h)で得られた溶液を水と混和しないブタノールまたはペンタノールを用いて多段抽出してブタノール相またはペンタノール相を得る、
(j)工程(i)のブタノールもしくはペンタノール相を少なくとも50重量%の固形分含量まで濃縮して濃縮物を得る、
(k)工程(j)で得られた濃縮物を、必要により、水もしくは60重量%を超えない水性エタノール中の、5〜20重量%乾燥抽出物を有する溶液が得られるような量の水とエタノールを添加することにより希釈し、
(l)工程(k)の水溶液または水性エタノール溶液を、沸点60〜100℃の脂肪族溶媒を用いて抽出し、脂肪族溶媒相から水相を分離して水相を得る、
(m)工程(l)で得られた水相を、減圧下60〜80℃を超えない温度で濃縮して5重量%未満の水含量を有する乾燥抽出物を得る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好ましい態様では
・工程(a)の抽出溶媒として、アセトン含有率が約50〜70重量%、特に好ましくはアセトン含有率が約60重量%の水含有アセトンが用いられる。
・工程(a)の抽出溶媒として、メタノール、エタノール、1−プロパノールおよび2−プロパノールから選ばれるアルカノールの含有率が約50重量%〜70重量%の水含有アルカノール、特に好ましくはエタノール含有率が約60重量%の水含有エタノールが用いられる。
・工程(c)において、希釈された活性溶液が12℃未満の温度に冷却される。
・工程(d)において、工程(c)の水溶液について少なくとも30重量%の硫酸アンモニウム、特に好ましくは30〜50重量%の硫酸アンモニウムが添加される。
・工程(d)において、それは7/3〜3/4(m/m)の比のメチルエチルケトンとアセトンの混合物で抽出される。
・工程(i)において、それは1−ブタノールで抽出され、および/または
・工程(l)において、それはヘプタンで、特に好ましくはn−ヘプタンでまたはn−ヘプタンが35重量%を超える割合のヘプタン異性体の混合物で、抽出される。
【0011】
さらに、EP1868625B1およびEP1868568B1と同様にして、4’−O−メチルピリドキシンを除去するための下記追加方法が実施できる:
(n)工程(k)の水相からあるいは工程(m)の乾燥抽出物から、エタノール含有率40重量%〜60重量%の水性エタノール性イチョウ抽出溶液を調製し、
(o)工程(n)の水性エタノール性イチョウ抽出溶液を強酸性イオン交換体に適用して残存する4’−O−メチルピリドキシンを該イオン交換体で除去しそして水性エタノールを用いて溶出して4’−O−メチルピリドキシンを含まない抽出液を溶離液として得、
(p)工程(o)の溶離液を減圧下で濃縮しそして60〜80℃の温度で乾燥して水分含有率が5重量%未満の乾燥抽出物を得る。
【0012】
強酸性イオン交換体の例はメルク(Merck)Iおよびアンバーライト(Amberlite)IR−120である。典型的には、強酸性イオン交換体はスルホン酸基が結合されているポリスチレン樹脂である。
下記において、本発明の方法に関連して用いられる用語の定義が幾つか記載される。
【0013】
乾燥抽出物:乾燥抽出物は、一般に、欧州薬局方による5重量%以下の水分含有率を有している。
例えば工程(a)における無水メタノールに関して、無水の言及は、本発明に関して水分含有率≦1重量%のことを言う。
抽出は、一工程、多工程および連続の抽出を包含する。
【0014】
沸点60〜100℃の脂肪族溶媒は、好ましくはn−ヘプタンであるかまたは沸点により定義され且つ石油エーテルもしくは石油ガソリンとして知られ、市販品として入手可能な、飽和脂環式および/または環状脂肪族炭化水素の混合物である。好ましくは、n−ヘプタンおよび他のC7アルカンから実質的になる脂肪族炭化水素の混合物が用いられる。35重量%n−ヘプタン(沸点98℃)を超える、n−ヘプタンの可成りの部分が例えば94〜100℃画分中に見られる。
工程(i)中で述べられた水混和性でないブタノールまたはペンタノールは、好ましくは、1−ブタノールまたは1−ペンタノールである。
下記において、本発明方法がEP 431536B1の比較例1および本発明の実施例1によりさらに説明され、記述される。
【実施例】
【0015】
実施例1と比較例1のための出発溶液
(EP 431536B1の工程(a)〜(d)および本発明方法による)
下記実施例において、“ペプタン”という用語は沸点範囲94〜100℃の飽和脂肪族炭化水素と35重量%を超えるn−ヘプタン部分の混合物を意味する。
乾燥され且つ粉砕されたイチョウ葉500gが3.75kgの60重量%アセトンで60℃、30分抽出された。植物性物質が濾過され、3.75kgの60重量%アセトンで60℃、30分再度抽出され、そして再度濾過された。かくして得られた2つの抽出溶液が一緒にされそして濃縮された(438g:乾燥抽出部分36.9%)。
得られた濃縮物は400gの水で希釈されそして12℃で1時間撹拌された。形成された沈殿は濾過されそして240gの硫酸アンモニウムが濾液に添加されそして溶解された。この溶液は、メチルエチルケトン/アセトン6/5(mm)のそれぞれ400mlで2回抽出された。メチルエチルケトン/アセトン相は一緒にされた(808g)。
【0016】
EP 431536B1による比較例1
(工程(e)〜(j)による)
上記出発溶液の半分(404g)が濃縮された(27.2g);乾燥抽出部分(50%)。この濃縮物が水107.8gで希釈され(乾燥抽出部分10%)そして水飽和1−ブタノール各65mlで3回振とうすることによって抽出された。1−ブタノール相が一緒にされ、濃縮されそして真空中50℃で16時間乾燥された(6.72g)。
このようにして得られた乾燥抽出物は、20.2gのエタノールと40.3gの水の混合物中に溶解された(乾燥抽出物10%)。この溶液は、各20mlのヘプタンで3回振とうすることによって抽出され、濃縮されそして50℃で16時間真空中で乾燥された:6.11g(この薬品に対し2.4%)。
【0017】
【表1】
【0018】
かくして得られた抽出物は、ビロバライドおよびギンコリドA、BおよびCの含有量に関して欧州薬局方の要求に合致していない。
【0019】
本発明による実施例1
(本発明の工程(e)〜(m)による)
上記出発溶液のもう一方の半分(404g)が濃縮された(20.5g:乾燥抽出部分68.2%)。この濃縮物の10.75gが8.1gの水と5.6gのメチルエチルケトンを用いて乾燥抽出物部分30%とメチルエチルケトン含有割合23重量%に調製され、そして各18.3gのメチルエチルケトン/ヘプタン8/2(m/m)で2回振とうすることによって抽出された。
この水−メチルエチルケトン相は出発溶液の残余の濃縮物(9.75g)と一緒にされた。この溶液は24.17gに濃縮され、115.5gの水で10%の乾燥抽出物部分に調節されそして各65mlの水で飽和された1−ブタノールで3回振とうすることによって抽出された。これらの1−ブタノール相は一緒にされ、濃縮されそして50℃で16時間真空中で乾燥された(5.93g)。
このようにして得られた乾燥抽出物は17.8gのエタノールと35.6gの水の混合物中に溶解された(乾燥抽出部分10%)。この溶液は各20mlのヘプタンで3回振とうすることによって抽出され、濃縮されそして50℃で16時間真空中で乾燥された:5.29g(この薬品に対し2.1%)。
【0020】
【表2】
【0021】
かくして得られた抽出物は、全ての含有量、特にビロバライドおよびギンコリドA、BおよびCの含有量に関して欧州薬局方の要求を必要としている。