(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る画像記録装置の断面図である。
【0014】
図1に示す画像記録装置では、紙管Sにロール状に巻かれているロール紙Rが記録媒体として用いられる。ロール紙Rは、
図2に示す保持部3に回転可能に保持されている。
図2に示すように、スプールシャフト32は紙管Sに挿入される。スプールシャフト32の一端には基準側ロール紙ホルダ30が設けられている。基準側ロール紙ホルダ30は基準側装填部31を有する。基準側装填部31が半径方向への弾性力によって紙管Sの内壁に食い込む。これにより、ロール紙Rはスプールシャフト32に固定される。さらに、非基準側ロール紙ホルダ34がスプールシャフト32を通過して紙管Sにセットされる。これにより基準側ロール紙ホルダ30と非基準側ロール紙ホルダ34との間にロール紙Rが挟み込まれる。スプールシャフト32の他端には、スプールギア33が取り付けられている。
【0015】
保持部3に回転可能に保持されたロール紙Rは、その先端部より引き出されて搬送路4に挿入される。その先端部は、用紙検知センサ41を経て、LFローラ対9、10に挟まれた状態でプラテン19上へと搬送される。本実施形態では、LFローラ対9、10が、保持部3から引き出されたロール紙Rを搬送する搬送部として機能する。
【0016】
LFローラ対9、10は、バネによりニップされている。用紙検知センサ41がロール紙Rの先端部を検出すると、LFローラ9は回転する。この回転により、ロール紙Rの先端部はLFローラ対9、10の間に自動的に引き込まれる。その後、キャリッジ12と、LFローラ対9、10と、記録ヘッド11との協働によりロール紙Rに画像が記録される。
【0017】
キャリッジ12は、プラテン19の直上に位置し、ロール紙Rの搬送方向に直交する走査方向に移動する。記録ヘッド11は、キャリッジ12に搭載されている。キャリッジ12は、ガイドシャフト16に沿って摺動可能に支持されている。ガイドシャフト16の両端部は、本体1のフレームに固定されている。ロール紙Rが画像記録部2まで搬送された後、キャリッジ12が走査方向に往復移動する。キャリッジ12の往復移動中に記録ヘッド11がインクを吐出する。これにより、ロール紙R上に1ライン分の画像が記録される。1ライン分の画像が記録されると、LFローラ対9、10がロール紙を搬送方向に所定ピッチだけ搬送する。その後、キャリッジ12は再び走査方向に往復移動し、記録ヘッド11は次のラインの画像を記録する。これを繰り返してページ全体に画像が記録される。
【0018】
キャリッジ12の側面には、紙端検知センサ43が取り付けられている。紙端検知センサ43は、反射型光学センサで構成されている。紙端検知センサ43は、キャリッジ12の走査と協同してロール紙Rの先端部の検知、ロール紙Rの幅方向の端部位置の検出などを行う。
【0019】
画像が記録されたロール紙Rは、排紙ガイド22上に搬送される。画像の記録が終了すると、ロール紙Rの後端部は、LFローラ対9、10により、カッタ21まで搬送される。カッタ21は、ロール紙Rの後端部を切断する。
【0020】
図3は、LFローラ9の駆動機構とスプールシャフト32の駆動機構を示す上面図である。
【0021】
まず、LFローラ9の駆動機構について説明する。LFモータ8の動力は、LF伝達ギア55、56を介してLFローラ9に伝えられる。LFローラ9には、円形のLFエンコーダフィルム54が取り付けられている。LFエンコーダフィルム54には、放射状にスリットが設けられている。LFエンコーダセンサ5は、そのスリットを利用してLFローラ9の回転速度および回転量を検出する。
【0022】
次に、スプールシャフト32の駆動機構について説明する。ロールモータ40の動力は、ロール伝達ギア36、ギア37、ギア38を介して、スプールギア33へ伝達される。ギア37とギア38の間にはトルクリミッタ39が設けられている。トルクリミッタ39がロールモータ40の回転をロックした状態でLFローラ9がロール紙Rを搬送方向に搬送した際にロール紙Rにバックテンションが与えられる。LFモータ8とロールモータ40がロール紙Rを搬送させる方向と反対方向に回転することで、バックテンションを与えながらロール紙Rを巻き戻すことができる。
【0023】
ロール紙Rの先端部がLFローラ対9、10に傾いて挿入されたまま搬送されると、いわゆる斜行状態となってしまう。しかし、バックテンションを与えてロール紙Rを引っ張りながら搬送し続けると、斜行状態が矯正される。
【0024】
本実施形態の画像記録装置では、ユーザーがロール紙Rの先端部を搬送路4に挿入する。挿入されたロール紙Rの先端部が用紙検知センサ41に検出されると、LFローラ9が回転し始め、ロール紙Rの先端部が自動的に引き込まれる。その際、ユーザーがロール紙Rの先端部を傾けた状態で挿入すると、LFローラ対9、10がロール紙Rを斜行させた状態で搬送してしまう可能性がある。斜行状態で画像記録部2が記録動作を行うと、画像がロール紙Rからはみ出るおそれがある。そのため、本実施形態の画像記録装置は、ロール紙Rをある程度の距離だけ搬送させて斜行量を算出し、算出した斜行量が、画像記録が可能な許容範囲内か判断する斜行検知動作を行う。
【0025】
しかし、ユーザーがロール紙Rを極端に傾けて搬送路4に挿入すると、斜行検知動作の搬送中に、プラテン19の紙ガイド部材や排紙トレイ22の壁にロール紙Rの先端部が衝突して紙詰まりが生じたり、その紙詰まりによりしわが生じたりする可能性がある。
【0026】
そこで、本実施形態の画像記録装置は、斜行検知動作の前に先行斜行検知動作を実施することで上述した紙詰まりの発生およびしわの発生を防止する。
【0027】
以下、上述した先行斜行検知動作および斜行検知動作の内容について、
図7、
図8を参照しながら説明する。
図7は先行斜行検知動作および斜行検知動作におけるロール紙Rの検出位置を示す上面図である。
図8は、先行斜行検知動作および斜行検知動作に対応するロール紙の搬送状態を示す断面図である。
【0028】
まず、先行斜行検知動作について説明する。ロール紙Rの先端部がLFローラ対9、10間に引き込まれると、LFローラ対9、10がロール紙Rの先端部をプラテン19上に搬送する(
図8(a)参照)。続いて、キャリッジ12が走査方向に移動し始め、紙端検知センサ43がロール紙Rの幅方向の端部位置X3を検出する(
図7(a)参照)。端部位置X3は、
図2に示す保持部3において基準側ロール紙ホルダ30側の端部位置である。
【0029】
検知センサ43の検出後、LFローラ対9、10がロール紙Rの先端部を搬送方向に距離L34(第2の距離)だけ移動させる(
図8(b)参照)。ロール紙Rの搬送後、紙端検知センサ43は、再びロール紙Rの端部位置X4を計測する(
図7(b)参照)。本実施形態では、端部位置X3と端部位置X4の差分が初期斜行量(初期変位量)X34となる。初期斜行量X34がしきい値S34A(第1のしきい値)を超えれば、LFローラ対9、10と保持部3とが、ロール紙Rを巻き戻す。その後、表示部7(
図5参照9がユーザーに対して再装着を要求する表示を行う。初期斜行量X34がしきい値S34Aを超える状態は、後述する斜行検知動作でロール紙Rを搬送するときに紙詰まり等の不具合が起こる可能性が高いことを示す。
【0030】
初期斜行量X34がしきい値S34Aと同じか、又は下回っていれば、斜行検知動作が行われる。斜行検知動作では、LFローラ対9、10がロール紙Rの先端部を搬送方向に距離L51(第1の距離)だけ移動させる(
図8(c)参照)。ロール紙Rの搬送後、紙端検知センサ43がロール紙Rの端部位置X1を検出する(
図7(c)参照)。その後、ロール紙Rの先端部は、搬送方向と反対方向に距離L51と同じ距離L52だけ巻き戻される。その後、紙端検知センサ43が、ロール紙Rの幅方向の端部位置X2を検出する(
図7(d)参照)する。端部位置X1と端部位置X2の差分である変位量が、斜行検知動作で検知された斜行量X12となる。斜行量X12がしきい値S12未満であれば、画像の記録が可能であると判断される。しきい値S12は、正常に画像を記録するための斜行量の許容値である。一方、斜行量X12がしきい値S12以上であれば、LFローラ対9、10と保持部3とが、ロール紙Rを巻き戻す。その後、表示部7(
図5参照)がユーザーに対して再装着を要求する表示を行う。この斜行検知動作により、画像のはみ出しのない正常な画像記録が可能となる。
【0031】
上述した斜行検知動作では、ロール紙Rを巻き戻した後に紙端検知センサ43が端部位置X2を検出している。しかし、本発明では、ロール紙Rを搬送方向にさらに搬送した後に紙端検知センサ43が端部位置X2を検出してもよい。または、ロール紙Rを搬送方向および反対方向に往復移動させた後に紙端検知センサ43が端部位置X2を検出してもよい。
【0032】
上述したしきい値S12、S34Aは、斜行検知動作で記録媒体を搬送しているときの斜行状態の推移に基づいて設定される。
図4は、ロール紙Rの搬送距離と記録媒体の斜行量との関係を示す図である。
図4において、線T1は、斜行検知動作の搬送中に紙詰まりが生じるケースを示す。線T2は、紙詰まりは生じないものの斜行検知動作で斜行エラーになるケースを示す。線T3は、斜行検知動作で、画像記録が可能であると判断できる限界のケースを示す。線T4は、斜行量が小さく画像記録が十分可能なケースを示す。本実施形態では、線T3のケースに基づいてしきい値S12、S34Aが設定されている。
【0033】
図5は、
図1に示す画像記録装置の電気的な制御構成を示すブロック図である。
【0034】
本体1に設けられた制御部101は、インターフェース(不図示)を介してホストコンピュータ100に接続されている。ホストコンピュータ100は、インターフェースを通じて、画像データ及び記録に関わるデータを制御部101に転送する。制御部101は、その画像データに対して色処理、縮小/拡大処理、2値化等の処理を行う。さらに、制御部101は、ドットパターンに変換された記録データを、制御部内の記憶部102に格納する。制御部101は、LFエンコーダ5、用紙検知センサ41、ロール検知センサ42、紙端検知センサ43からの信号を受けて、LFモータ8、ロールモータ40、キャリッジ12を移動するキャリッジモータ61、カッタ21を制御する。
【0035】
次に、本実施形態の画像記録装置の給紙動作について説明する。
図6は、実施形態1の画像記録装置の給紙動作の手順を示すフローチャートである。
図6に示すフローチャートには、上述した先行斜行検知動作の手順および斜行検知動作の手順がそれぞれ示されている。なお、以下に示す各部の動作は、制御部101の制御に従って行われる。
【0036】
まず、ステップS11の動作内容(ロール紙セット)について説明する。ユーザーによって搬送路4に挿入されたロール紙Rの先端部が、用紙検知センサ41に検知されると、LFモータ8が回転し始める。LFモータ8の回転によりLFローラ対9、10がロール紙Rの先端部を引き込む。ロール紙Rの先端部が、プラテン19に到達し、紙端検知センサ43に検知されると、LFローラ対9、10は、所定の距離(本実施形態では30mm)だけロール紙Rを搬送する(
図8(a)参照)。その後、LFモータ8は停止する。
【0037】
次に、キャリッジモータ61の回転によりキャリッジ12が走査方向に移動することによって、紙端検知センサ43が、ロール紙Rの端部位置X3(
図7(a)参照)を検出する(ステップS12)。
【0038】
端部位置X3の検出後、LFモータ8の回転によりLFローラ対9、10が、ロール紙Rの先端部を搬送方向に距離L34(本実施形態では50mm)だけ移動させる(ステップS13)。ロール紙Rの搬送が完了するとLFモータ8は停止する。
【0039】
続いて、キャリッジモータ61の回転によりキャリッジ12が走査方向に移動することによって、紙端検知センサ43が、端部位置X4(
図7(b)参照)を検知する(ステップS14)。
【0040】
端部位置X4の検出後、制御部101は、端部位置X3と端部位置X4の差分で求められる初期斜行量(初期変位量)X34を算出する(ステップS15)。制御部101は、初期斜行量X34がしきい値S34A(本実施形態では2.0mm)を超えているか否か判断する(ステップS16)。
【0041】
初期斜行量X34がしきい値S34Aを超えている場合、制御部101は、斜行検知動作を行うときに紙詰まりが発生する可能性が高いと判断する。その後、制御部101は、この給紙動作を停止し、表示部7に再セットを要求するメッセージを表示させる(ステップS17)。
【0042】
初期斜行量X34が、しきい値S34Aと同じか、または下回っている場合、制御部101は、給紙動作を続けても紙詰まりなどの給紙不良が発生しないと判断する。これにより給紙動作は続行される。初期斜行量X34がしきい値S34Aと同一の場合、
図4に示す線T3によれば、先行斜行検知動作の後に行われる斜行検知動作において画像の記録が可能であると判断される。そのため、斜行検知動作を省略できることが考えられる。しかし、しきい値S34Aは、一律に決まる値ではなくばらつきを持つ。そのため、本実施形態では、斜行検知動作により、画像記録が可能な斜行状態か否か最終判断を行う。
【0043】
ステップS17の後、
図8(c)に示すように、LFモータ8の回転によりLFローラ対9、10がロール紙Rの先端部を距離L51(本実施形態では300mm)だけ移動させる(ステップS18)。ステップS18では、トルクリミッタ39がスプールシャフト32の回転にブレーキをかけるので、ロール紙Rにバックテンションが作用する。これにより、ロール紙Rの偏り、斜行が矯正させる。この後、斜行検知動作が開始される。
【0044】
ロール紙Rの搬送後、キャリッジモータ61の回転によりキャリッジ12が走査方向に移動する。このとき、紙端検知センサ43が、端部位置X1(
図7(c)参照)を検知する(ステップS19)。
【0045】
端部位置X1の検知後、LFモータ8の逆転に伴ってLFローラ9が逆転する。これにより、ロール紙Rが距離L52だけ(本実施形態では300mm)引き戻される(ステップS20)。
【0046】
その後、キャリッジモータ61の回転によりキャリッジ12が走査方向に移動することによって、紙端検知センサ43が、端部位置X2(
図7(d)参照)を検出する(ステップS21)。
【0047】
端部位置X2の検出後、制御部101は、端部位置X1と端部位置X2との差分で求められる斜行量X12を算出する(ステップS22)。制御部101は、斜行量X12がしきい値S12(本実施形態では1.0mm)を超えているか否か判断する(ステップS23)。
【0048】
斜行量X12がしきい値S12を超えている場合、制御部101は、画像がロール紙Rからはみ出す可能性が高いと判断する。制御部101は、この給紙動作を停止して、表示部7に再セットを要求するメッセージを表示させる(ステップS24)。
【0049】
斜行量X12がしきい値S12と同じかまたは下回っている場合、制御部101は、記録動作で正常な画像記録が可能と判断する。
【0050】
その後、キャリッジ12が紙端検知センサ43をロール紙Rの先端部を検出可能な位置に移動させる。その後、LFローラ対9、10がロール紙Rを引き戻し始める。紙端検知センサ43がロール紙Rの先端部を検出すると、LFローラ対9、10は停止する。これで給紙動作は終了する。
【0051】
上述したように、本実施形態の画像記録装置は、ロール紙Rの斜行状態が記録に適した状態か否か判断する斜行検知動作の前に、上述した先行斜行検知動作を行っている。先行斜行検知動作では、斜行検知動作よりも短い搬送距離で斜行量を算出している。これにより、ユーザーがロール紙を誤って大きく曲げて搬送路4に挿入しても、給紙動作の初期段階で、紙詰まりなど給紙不具合が発生しそうな斜行状態を早期に検出できる。また、先行斜行検知動作の後に行う斜行検知動作では、正確な斜行量の算出に必要な搬送距離が確保されているため、斜行エラーの発生頻度を抑えることが可能となる。
【0052】
(実施形態2)
本実施形態の画像記録装置について説明する。以下、実施形態1の画像記録装置と異なる点を中心に説明する。
【0053】
本実施形態の画像記録装置には、先行斜行検知動作で用いるしきい値が2つ設定されている。一方のしきい値34Aは、実施形態1で説明したS34Aである。他方のしきい値S34Bは、斜行検知動作を省略するために設定された値である。
【0054】
図9は、ロール紙Rの搬送距離と記録媒体の斜行量との関係を示す図である。
図9に示すように、ロール紙Rの搬送に伴い、斜行量が減少していく。
図9に示すしきい値S34A(第1のしきい値)は、先行斜行検知動作において斜行検知動作が可能か判断する基準となる値である。しきい値S34Aよりも小さなしきい値S12は、斜行検知動作において画像記録が可能か判断する基準となる値である。しきい値S12よりも小さいしきい値S34B(第2のしきい値)は、斜行検知動作を行うまでもなく先行斜行検知動作のみで画像記録が可能か判断な値である。
【0055】
図10は、実施形態2の画像記録装置の給紙動作の手順を示すフローチャートである。
図10に示すフローチャートにおいて、ステップS11〜S15、及びステップS18〜S24は、上述した実施形態1と同じ内容なので説明は省略する。
【0056】
ステップS15において制御部101が初期斜行量X34(初期変位量)を算出すると、制御部101は、その初期斜行量X34がしきい値S34Aを超えているか否か判断する(ステップS31)。本実施形態では、しきい値S34Aは2.0mmとなっている。
【0057】
斜行量X34がしきい値S34Aを超えている場合、制御部101は、斜行検知動作を行うときに紙詰まりが発生する可能性が高いと判断する。そのため、制御部101は、この給紙動作を停止し、表示部7に再セットを要求するメッセージを表示させる(ステップS17)。
【0058】
初期斜行量X34がしきい値S34Aと同じかまたは下回っている場合、制御部101は、初期斜行量X34がしきい値S34Bを下回っているか否か判断する(ステップS32)。本実施形態では、しきい値S34Bは0.16mmとなっている。
【0059】
初期斜行量X34がしきい値S34Bを下回っている場合、制御部101は、斜行検知動作を実行しなくても記録不良が発生しないと判断する。そのため、ステップS25の動作に移行し、給紙動作は終了する。一方、初期斜行量X34がしきい値S34B以上の場合、上述したステップS18〜ステップS24の斜行検知動作が行われる。
【0060】
上述したように、本実施形態の画像記録装置は、実施形態1と同様に先行斜行検知動作を行うことによって、給紙動作中の紙詰まりの発生を防ぐことが可能となる。さらに、本実施形態の画像記録装置は、2つのしきい値を用いて先行斜行検知動作で画像記録が可能であるか判断している。そのため、操作者が、ほぼ真直ぐにロール紙Rをセットした場合、先行斜行検知動作のみで画像記録が可能であるという判断によって、斜行検知動作を省略することができる。よって、給紙時間の短縮が可能となる。
【0061】
(実施形態3)
本実施形態の画像記録装置では、ロール紙Rの幅に応じて先行斜行検知動作におけるしきい値が設定される。これにより、斜行検知動作で紙詰まりが発生することに関し、より正確に判断することが可能となる。以下、本実施形態の画像記録装置について、実施形態1、2の画像記録装置と異なる点を中心に説明する。
【0062】
ロール紙Rにバックテンションをかけながら、LFローラ対9、10でロール紙Rを搬送する際、ロール紙Rが斜行していると、ロール紙Rの幅方向の両端で、弛み側と張り側が生じる。弛み側は、バックテンション(BT)が小さくなり、張り側はバックテンション(BT)が大きくなる。一方、LFローラ対9、10がロール紙Rをニップして搬送することで発生する搬送力(F)は、ロール紙Rの幅方向でほぼ均一である。よって、正味搬送力P(=F−BT)は、ロール紙Rの弛み側が大きくなり、張り側が小さくなる。これにより、ロール紙Rは張り側から弛み側に回転しようとする。この回転しようとする力が斜行矯正力となる。斜行矯正力によって、ロール紙Rは斜行が矯正される方向にLFローラ9、10間を滑りながら移動する。そのため、LFローラ対9、10のニップ部を滑りやすいロール紙Rの方が、斜行が矯正され易くなる。また、幅の狭いロール紙Rの方が、LFローラ対9、10のニップ部を滑りやすいので、斜行が矯正され易いことになる。
【0063】
幅が異なるロール紙のそれぞれに対して同一のバックテンションをかけると、斜行の矯正具合が変わる。そこで、本実施形態の画像記録装置は、ロール紙Rの幅に応じて先行斜行検知動作で用いるしきい値を変えて斜行検知動作を行うか否か判断する。
【0064】
図11は、ロール紙Rの搬送距離と記録媒体の斜行量との関係を示す図である。
図11において、線T5は、ロール紙Rの幅が、保持部3で保持可能な最小値(本実施形態では254mm)であり、斜行検知動作で算出される斜行量がしきい値S12となるケースを示す。一方、線T6は、ロール紙Rの幅が、保持部3で保持可能な最大値(本実施形態では610mm)であり、斜行検知動作で算出される斜行量がしきい値S12となるケースを示す。しきい値S12とは、画像記録の際、インクが記録媒体からはみ出したりせず、正常な画像記録が可能であると判断できる斜行量である。
図11において、しきい値S34maxは、ロール紙の幅が最小となる場合に先行斜行検知動作で設定される値である。S34minは、ロール紙の幅が最大となる場合に斜行検知動作で設定されるしきい値である。上述したように、幅の狭いロール紙Rの方が、先行斜行検知動作から斜行検知動作への移行時の搬送によって、斜行が矯正されやすい。そのため、先行斜行検知動作では、幅が狭いロール紙Rの方がしきい値が高くなる。
【0065】
本実施形態の画像記録装置では、先行斜行検知動作で算出した初期斜行量を、ロール紙Rの幅に応じて設定されたしきい値と比較することによって、その後の斜行推移を予測できる。最小幅のロール紙Rの搬送距離が距離L1に達したときの斜行量がしきい値S34max未満の場合、斜行検知動作時に搬送距離が距離L2になっても、紙詰まり等の不具合が起きないと予測できる。最大幅のロール紙Rの搬送距離が距離L1に達したときの斜行量がしきい値S34min未満の場合、斜行検知動作時に搬送距離が距離L2に達しても、記録不良が起きないと予測できる。
【0066】
図12は、ロール紙Rの幅と斜行量のしきい値との関係を示す図である。本実施形態では、
図12に示す比例関係に基づいてロール紙Rの幅に応じて斜行量のしきい値が設定される。
【0067】
図13は、実施形態3の画像記録装置の給紙動作の手順を示すフローチャートである。
図14は、実施形態3の給紙動作におけるロール紙Rの検知位置を示す図である。
【0068】
図13に示すフローチャートにおいて、ステップS11〜S15、及びステップS18〜S24は、実施形態1と同じ内容なので具体的な説明は省略する。
【0069】
ステップS15において制御部101が初期斜行量X34(初期変位量)を算出すると、制御部101は、その初期斜行量X34がしきい値S34maxを超えているか否か判断する(ステップS31)。本実施形態では、しきい値S34maxは、予め記憶部102に格納され、その値は4.0mmである。
【0070】
初期斜行量X34がしきい値S34maxを超えている場合、ロール紙Rの幅に関わらず、斜行検知動作の途中で紙詰まりが発生するか、または斜行検知動作で画像記録ができないと判断される可能性が高くなる。そのため、制御部101は、給紙動作を停止し、表示部7に再セットを要求するメッセージを表示させる(ステップS17)。
【0071】
一方、初期斜行量X34がしきい値S34maxと同じかまたは下回っている場合、制御部101は、初期斜行量X34がしきい値S34minを下回っているか判断する(ステップS32)。本実施形態では、しきい値S34minは、予め記憶部102に格納され、その値は2.0mmである。
【0072】
初期斜行量X34がしきい値S34minを下回っている場合、ロール紙Rの幅に関わらず、斜行検知動作において紙詰まりなどの給紙不良が発生しない可能性が高い。この場合、ステップS18の動作へ移行する。
【0073】
一方、斜行量X34がしきい値S34minと同じかまたは超えている場合、制御部101は、ロール紙Rの幅を算出する。具体的には、制御部101はキャリッジモータ61を駆動させてキャリッジ12を走査方向に移動させる。キャリッジ12の移動に伴って、紙端検知センサ43がロール紙Rの端部位置X5(
図14(c)参照)を検出する(ステップS33)。端部位置X5は、ステップS14で検出された端部位置X4の反対側に位置する。続いて、制御部101は、端部位置X5と端部位置X4との差分によりロール紙Rの幅Wを算出する(ステップS34)。
【0074】
制御部101は、ステップS15で算出した初期斜行量X34がしきい値S34m(斜行しきい値)を超えているか否か判断する(ステップS35)。しきい値S34mは、
図12に示す比例関係において幅Wに対応する値である。制御部101は、
図12に示す比例関係を利用してしきい値S34mを算出する。
【0075】
初期斜行量X34がしきい値S34mを超えている場合、斜行検知動作で紙詰まりが発生する可能性が高い。そのため、制御部101は、この給紙動作を停止して、表示部7に再セットを要求するメッセージを表示させる(ステップS17)。
【0076】
一方、差分X34がしきい値S34mと同じかたまたは下回っている場合、斜行検知動作で紙詰まりなどの給紙不良が発生しない可能性が高い。この場合、ステップS18の動作へ移行する。
【0077】
上述したように、本実施形態の画像記録装置は、先行斜行検知動作の際にロール紙Rの幅に応じて斜行量のしきい値を決定している。そのため、斜行検知動作において紙詰まり等の給紙不良が発生するか否かの判断をより正確に行うことが可能となる。
【0078】
本実施形態では、ステップS33にて端部位置X5を検出し、ステップS34にてロール紙Rの幅Wを算出し、その後、斜行検知動作を行うか否か判断している。しかし、本発明では、ステップS33で端部位置X5の検出中に斜行検知動作を行うか否か判断してもよい。具体的には、制御部101が、
図12の比較関係を使って初期斜行量X34に対応する幅W1を算出し、初期斜行量が許容範囲内になる端部位置(=W+X4)を算出する。そして、紙端検知センサ43が実際に検出した端部位置X5が許容範囲内の場合に斜行検知動作を行うと判断してもよい。
【0079】
本実施形態では、紙端検知センサ43がロール紙Rの幅を検出する幅識別手段として機能している。しかし、本発明では、ホストコンピュータ100から予め入力されたロール紙Rの幅を示すデータを記憶部102に格納することによって、ロール紙Rの幅を検出する構成であってもよい。また、搬送路4にセンサを配置して、そのセンサでロール紙幅を自動検出する構成であってもよい。
【0080】
本実施形態では、ロール紙Rの幅と斜行量のしきい値とを対応付けたデータが2つ記憶部102に格納されている。紙端検知センサ43が検出した幅がこれら2つのデータに示されていない場合、制御部101は、これら2つのデータの比例関係を利用してしきい値S34mを算出している。しかし、本発明では、ロール紙Rの幅と斜行量のしきい値との対応関係を示すデータが3つ以上記憶部102に格納されていてもよい。また、ロール紙Rの幅の種類が予め決まっている場合、各幅に対応する個別のしきい値が記憶部102に格納されていてもよい。