(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1に備えられた処理ユニット2の内部を水平に見た模式図である。
図2は、スピンチャック5、赤外線ヒータ31、および純水ノズル38を水平に見た模式図である。
図3は、スピンチャック5、赤外線ヒータ31、および純水ノズル38を示す模式的な平面図である。
【0018】
基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、処理液や処理ガスなどの処理流体を用いて基板Wを処理する複数の処理ユニット2(
図1には1つの処理ユニット2のみを図示)と、基板処理装置1に備えられた装置の動作やバルブの開閉を制御する制御装置3とを含む。なお、基板処理装置1が有する処理ユニット2は単数でもよい。
【0019】
処理ユニット2は、内部空間を有する箱形のチャンバー4と、チャンバー4内で基板Wを水平に保持して基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック5と、基板Wに処理液を供給する処理液供給装置(リン酸供給装置6、SC1供給装置7、リンス液供給装置8、純水供給装置36)と、スピンチャック5を取り囲む筒状のカップ9と、基板Wを加熱する加熱装置10とを含む。
【0020】
図1に示すように、チャンバー4は、スピンチャック5等を収容する箱形の隔壁11と、隔壁11の上部から隔壁11内に清浄空気(フィルターによってろ過された空気)を送る送風ユニットとしてのFFU12(ファン・フィルタ・ユニット12)と、隔壁11の下部からチャンバー4内の気体を排出する排気ダクト13とを含む。FFU12は、隔壁11の上方に配置されている。FFU12は、隔壁11の天井からチャンバー4内に下向きに清浄空気を送る。排気ダクト13は、カップ9の底部に接続されており、基板処理装置1が設置される工場に設けられた排気設備に向けてチャンバー4内の気体を案内する。したがって、チャンバー4内を上方から下方に流れるダウンフロー(下降流)が、FFU12および排気ダクト13によって形成される。基板Wの処理は、チャンバー4内にダウンフローが形成されている状態で行われる。
【0021】
図1に示すように、スピンチャック5は、水平な姿勢で保持された円板状のスピンベース14と、スピンベース14の上方で基板Wを水平な姿勢で保持する複数のチャックピン15と、スピンベース14の中央部から下方に延びる回転軸16と、回転軸16を回転させることにより基板Wおよびスピンベース14を回転軸線A1まわりに回転させる基板回転手段としてのスピンモータ17とを含む。スピンチャック5は、複数のチャックピン15を基板Wの周端面に接触させる挟持式のチャックに限らず、非デバイス形成面である基板Wの裏面(下面)をスピンベース14の上面に吸着させることにより基板Wを水平に保持するバキューム式のチャックであってもよい。
【0022】
図1に示すように、カップ9は、スピンチャック5に保持されている基板Wよりも外方(回転軸線A1から離れる方向)に配置されている。カップ9は、スピンベース14を取り囲んでいる。スピンチャック5が基板Wを回転させている状態で、処理液が基板Wに供給されると、基板Wに供給された処理液が基板Wの周囲に振り切られる。処理液が基板Wに供給されるとき、上向きに開いたカップ9の上端部9aは、スピンベース14よりも上方に配置される。したがって、基板Wの周囲に排出された薬液やリンス液などの処理液は、カップ9によって受け止められる。そして、カップ9に受け止められた処理液は、図示しない回収装置または廃液装置に送られる。
【0023】
図1に示すように、リン酸供給装置6は、スピンチャック5に保持されている基板Wに向けてリン酸水溶液を吐出するリン酸ノズル18と、リン酸ノズル18にリン酸水溶液を供給するリン酸配管19と、リン酸配管19からリン酸ノズル18へのリン酸水溶液の供給および供給停止を切り替えるリン酸バルブ20と、リン酸ノズル18に供給されるリン酸水溶液の温度を室温(20℃〜30℃の範囲内の所定温度)よりも高い温度まで上昇させるリン酸温度調節装置21とを含む。
【0024】
リン酸バルブ20が開かれると、リン酸温度調節装置21によって温度調節されたリン酸水溶液が、リン酸配管19からリン酸ノズル18に供給され、リン酸ノズル18から吐出される。リン酸温度調節装置21は、リン酸水溶液の温度をたとえば80〜215℃の範囲内の一定温度に維持している。リン酸温度調節装置21によって調節されるリン酸水溶液の温度は、その濃度における沸点であってもよいし、沸点未満の温度であってもよい。リン酸水溶液は、リン酸を主成分とする水溶液であり、その濃度は、たとえば、50%〜100%の範囲、好ましくは80%前後である。
【0025】
図1に示すように、リン酸供給装置6は、さらに、リン酸ノズル18が先端部に取り付けられたノズルアーム22と、スピンチャック5の周囲で上下方向に延びる回動軸線A2まわりにノズルアーム22を回動させると共に回動軸線A2に沿って鉛直方向にノズルアーム22を上下動させることにより、リン酸ノズル18を水平および鉛直に移動させるリン酸ノズル移動装置23とを含む。リン酸ノズル移動装置23は、リン酸ノズル18から吐出されたリン酸水溶液が基板Wの上面に供給される処理位置と、リン酸ノズル18が平面視で基板Wの周囲に退避した退避位置との間で、リン酸ノズル18を水平に移動させる。
【0026】
図1に示すように、SC1供給装置7は、スピンチャック5に保持されている基板Wに向けてSC1(NH
4OHとH
2O
2とを含む混合液)を吐出するSC1ノズル24と、SC1ノズル24にSC1を供給するSC1配管25と、SC1配管25からSC1ノズル24へのSC1の供給および供給停止を切り替えるSC1バルブ26と、SC1ノズル24を水平および鉛直に移動させるSC1ノズル移動装置27とを含む。SC1バルブ26が開かれると、SC1配管25からSC1ノズル24に供給されたSC1が、SC1ノズル24から吐出される。SC1ノズル移動装置27は、SC1ノズル24から吐出されたSC1が基板Wの上面に供給される処理位置と、SC1ノズル24が平面視で基板Wの周囲に退避した退避位置との間で、SC1ノズル24を水平に移動させる。
【0027】
図1に示すように、リンス液供給装置8は、スピンチャック5に保持されている基板Wに向けてリンス液を吐出するリンス液ノズル28と、リンス液ノズル28にリンス液を供給するリンス液配管29と、リンス液配管29からリンス液ノズル28へのリンス液の供給および供給停止を切り替えるリンス液バルブ30とを含む。リンス液ノズル28は、リンス液ノズル28の吐出口が静止された状態でリンス液を吐出する固定ノズルである。リンス液供給装置8は、リンス液ノズル28を移動させることにより、基板Wの上面に対するリンス液の着液位置を移動させるリンス液ノズル移動装置を備えていてもよい。
【0028】
リンス液バルブ30が開かれると、リンス液配管29からリンス液ノズル28に供給されたリンス液が、リンス液ノズル28から基板Wの上面中央部に向けて吐出される。リンス液は、たとえば、純水(脱イオン水:Deionzied Water)である。リンス液は、純水に限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、IPA(イソプロピルアルコール)、および希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
【0029】
図1に示すように、加熱装置10は、輻射によって基板Wを加熱する輻射加熱装置を含む。輻射加熱装置は、赤外線を基板Wに照射する赤外線ヒータ31と、赤外線ヒータ31が先端部に取り付けられたヒータアーム32と、ヒータアーム32を移動させるヒータ移動装置33とを含む。
図2に示すように、赤外線ヒータ31は、赤外線を発する赤外線ランプ34と、赤外線ランプ34を収容するランプハウジング35とを含む。赤外線ランプ34は、ランプハウジング35内に配置されている。
図3に示すように、ランプハウジング35は、平面視で基板Wよりも小さい。したがって、このランプハウジング435内に配置されている赤外線ヒータ31は、平面視で基板Wよりも小さくなる。赤外線ランプ34およびランプハウジング35は、ヒータアーム32に取り付けられている。したがって、赤外線ランプ34およびランプハウジング35は、ヒータアーム32と共に移動する。
【0030】
赤外線ランプ34は、フィラメントと、フィラメントを収容する石英管とを含む。加熱装置10における赤外線ランプ34(例えば、ハロゲンランプ)は、カーボンヒータであってもよいし、これら以外の発熱体であってもよい。ランプハウジング35の少なくとも一部は、石英などの光透過性および耐熱性を有する材料で形成されている。
赤外線ランプ34が発光すると、当該赤外線ランプ34からは赤外線を含む光が放出される。この赤外線を含む光はランプハウジング35を透過してランプハウジング35の外表面から放射され、あるいは、ランプハウジング35を加熱してその外表面から輻射光を放射させる。基板Wおよびその上面に保持されたリン酸水溶液の液膜はランプハウジング35の外表面からの透過光と輻射光とにより加熱される。上記のようにランプハウジング35の外表面からは赤外線を含む光が透過または輻射により放射されているが、以下ではランプハウジング35の外表面を透過する赤外線に着目して赤外線ランプ34に関する説明を行う。
【0031】
図2に示すように、ランプハウジング35は、基板Wの上面と平行な底壁を有している。赤外線ランプ34は、底壁の上方に配置されている。底壁の下面は、基板Wの上面と平行でかつ平坦な基板対向面を含む。赤外線ヒータ31が基板Wの上方に配置されている状態では、ランプハウジング35の基板対向面が、間隔を空けて基板Wの上面に上下方向に対向する。この状態で赤外線ランプ34が赤外線を発すると、赤外線が、ランプハウジング35の基板対向面を透過して基板Wの上面に照射される。基板対向面は、たとえば、直径が基板Wの半径よりも小さい円形である。基板対向面は、円形に限らず、長手方向の長さが基板Wの半径以上である矩形状であってもよいし、円形および矩形以外の形状であってもよい。
【0032】
図1に示すように、ヒータ移動装置33は、赤外線ヒータ31を所定の高さで保持している。ヒータ移動装置33は、赤外線ヒータ31を鉛直に移動させる。さらに、ヒータ移動装置33は、スピンチャック5の周囲で上下方向に延びる回動軸線A3まわりにヒータアーム32を回動させることにより、赤外線ヒータ31を水平に移動させる。これにより、赤外線等の光が照射され加熱される加熱領域(基板Wの上面内の一部の領域)が基板Wの上面内で移動する。
図2に示すように、ヒータ移動装置33は、平面視で基板Wの中心を通る円弧状の軌跡X1に沿ってヒータアーム32の先端部を水平に移動させる。したがって、赤外線ヒータ31は、スピンチャック5の上方を含む水平面内で移動する。
【0033】
赤外線ヒータ31からの赤外線は、基板Wの上面内の加熱領域に照射される。制御装置3は、赤外線ヒータ31が発光している状態で、スピンチャック5によって基板Wを回転させながら、ヒータ移動装置33によって赤外線ヒータ31を回動軸線A3まわりに回動させる。これにより、基板Wの上面が、赤外線ヒータ31の加熱領域によって走査される。したがって、赤外線等の光が基板Wの上面および当該基板Wの上面に保持されている処理液の液膜の少なくとも一方に吸収され、輻射熱が赤外線ランプ34から基板Wに伝達される。そのため、処理液などの液体が基板W上に保持されている状態で赤外線ランプ34が発光すると、基板Wの温度が上昇し、それに伴って、基板W上の液体の温度も上昇する。あるいは基板W上の液体自体が加熱され昇温する。
【0034】
図1に示すように、処理ユニット2は、基板Wに向けて純水を吐出する純水供給装置36を含む。純水供給装置36は、純水吐出口37から純水を基板Wに向けて吐出する純水ノズル38と、純水ノズル38に純水を供給する純水配管39と、純水配管39から純水ノズル38への純水の供給および供給停止を切り替える純水バルブ40と、純水配管39から純水ノズル38に供給される純水の流量を調整する純水流量調整バルブ41とを含む。
【0035】
純水ノズル38は、純水を間欠的に、好ましくは純水の液滴を一つずつ吐出する単一の純水吐出口37を含む。純水ノズル38は、複数の純水吐出口37を備えていてもよい。純水は、液滴吐出口としての純水吐出口37から鉛直下方に滴下される。したがって、純水吐出口37が基板Wの上面に上下方向に対向している状態では、純水の液滴が基板Wの上面に向かって鉛直下方に落下する。液滴の吐出および吐出停止は、純水バルブ40によって切り替えられ、液滴の粒径は、純水流量調整バルブ41の開度によって調節される。
【0036】
図1に示すように、純水ノズル38は、ヒータアーム32に取り付けられている。したがって、純水ノズル38は、赤外線ヒータ31と共に水平方向および鉛直方向に移動する。赤外線ヒータ31は、純水ノズル38よりもヒータアーム32の根元側でヒータアーム32に取り付けられている。これにより、回動軸線A3から純水ノズル38までの水平方向の距離は、回動軸線A3から赤外線ヒータ31までの水平方向の距離よりも長くなる。
【0037】
図3に示すように、ヒータ移動手段33によりヒータアーム32が回動すると、純水ノズル38からの純水は基板Wの中心を通る円弧状の軌跡X1に沿って基板Wの上面に着液する。一方、赤外線ヒータ31は軌跡X1よりも小さい回転半径で基板Wの上面を移動する。ヒータ移動手段33は赤外線ヒータ31だけでなく純水ノズル38も基板Wの上面に沿って移動させる。このため、ヒータ移動手段33は純水供給位置移動手段としても機能する。
【0038】
図3に示すように、制御装置3は、スピンチャック5によって基板Wを一定の回転方向Drに回転させる。
後述する加熱工程及び純水供給工程(
図4のステップS4)を実行する際には、制御装置3は純水ノズル38から吐出される純水の着液位置が
図3中の矢印で示す範囲内で往復移動するように、ヒータアーム32を基板Wの上面中心部(
図3に示す位置)と、基板Wの上面周縁部との間で往復回動させる。これにより、純水ノズル38から吐出される純水は、赤外線ヒータ31の赤外線照射領域よりも基板Wの回転方向Drに関して上流側のリン酸水溶液の領域に着液するようになる。
【0039】
回転状態の基板Wの上面に落下した純水の液滴は、基板Wの回転方向Drに移動する。つまり、純水の液滴は、基板Wの回転方向Drにおける下流側に移動する。赤外線ヒータ31は、純水の着液位置よりも下流領域に赤外線等の光を照射して加熱している。したがって、基板Wが回転しており、赤外線ヒータ31が赤外線等の光を発している状態で、純水の液滴が基板Wの上面内の一部の領域に落下すると、この領域が即座に加熱領域に移動し加熱される。そのため、基板Wよりも低温の液滴が基板Wに供給されたとしても、基板Wの温度が元の温度(液滴が供給される前の温度)に近づけられる。
【0040】
図4は、処理ユニット2によって行われる基板Wの処理の一例について説明するための工程図である。
図5A、
図5B、および
図5Cは、処理中の基板Wを示す模式図である。以下では、
図1を参照する。
図4、
図5A、
図5B、および
図5Cについては適宜参照する。
以下では、シリコン窒化膜の一例であるLP−SiN(Low Pressure -Silicon Nitride)の薄膜と、シリコン酸化膜の一例であるLP−TEOS(Low Pressure -Tetraethyl orthosilicate)の薄膜とが表層に形成された基板W(シリコンウエハ)の表面にリン酸水溶液を供給して、LP−SiNの薄膜を選択的にエッチングする選択エッチングについて説明する。シリコン酸化膜は、TEOSの薄膜に限らず、熱酸化膜であってもよいし、シリケートガラス(silicate glass)系の酸化膜であってもよい。
【0041】
処理ユニット2によって基板Wが処理されるときには、チャンバー4内に基板Wを搬入する搬入工程(
図4のステップS1)が行われる。具体的には、制御装置3は、全てのノズルがスピンチャック5の上方から退避している状態で、基板Wを保持している搬送ロボット(図示せず)のハンドをチャンバー4内に進入させる。そして、制御装置3は、搬送ロボットに基板Wをスピンチャック5上に載置させる。その後、制御装置3は、スピンチャック5に基板Wを保持させる。続いて、制御装置3は、スピンチャック5によって基板Wを低速(たとえば1〜30rpm)で回転させ始める。制御装置3は、基板Wがスピンチャック5上に置かれた後、搬送ロボットのハンドをチャンバー4内から退避させる。
【0042】
次に、エッチング液の一例であるリン酸水溶液を基板Wに供給するエッチング工程としてのリン酸供給工程(
図4のステップS2)が行われる。具体的には、制御装置3は、リン酸ノズル移動装置23を制御することにより、リン酸ノズル18を退避位置から処理位置に移動させる。これにより、リン酸ノズル18が基板Wの上方の、基板Wの回転軸線A1上に配置される。その後、制御装置3は、リン酸バルブ20を開いて、リン酸温度調節装置21によって温度が調節されたリン酸水溶液を回転状態の基板Wの上面に向けてリン酸ノズル18から吐出させる。制御装置3は、この状態でリン酸ノズル移動装置23を制御することにより、基板Wの上面に対するリン酸水溶液の着液位置を中央部と周縁部との間で移動させる。
【0043】
図5Aに示すように、リン酸ノズル18から吐出されたリン酸水溶液は、基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。そのため、リン酸水溶液が基板Wの上面全域に供給され、基板Wの上面全域を覆うリン酸水溶液の液膜が基板W上に形成される。これにより、基板Wの上面がエッチングされ、シリコン窒化膜が選択的に除去される。さらに、制御装置3は、基板Wが回転している状態で、基板Wの上面に対するリン酸水溶液の着液位置を中央部と周縁部との間で移動させるので、リン酸水溶液の着液位置が、基板Wの上面全域を通過し、基板Wの上面全域が走査される。そのため、リン酸ノズル18から吐出されたリン酸水溶液が、基板Wの上面全域に直接供給され、基板Wの上面全域が均一に処理される。
【0044】
次に、基板Wへのリン酸水溶液の供給を停止させた状態でリン酸水溶液の液膜を基板W上に保持するパドル工程(
図4のステップS3)が行われる。具体的には、制御装置3は、スピンチャック5を制御することにより、基板Wの上面全域がリン酸水溶液の液膜に覆われている状態で、基板Wを静止させる、もしくは、リン酸供給工程での基板Wの回転速度よりも遅い低回転速度(たとえば10rpm未満)まで基板Wの回転速度を低下させる。そのため、基板W上のリン酸水溶液に作用する遠心力が弱まり、基板W上から排出されるリン酸水溶液の量が減少する。制御装置3は、基板Wが静止している状態もしくは基板Wが低回転速度で回転している状態で、リン酸バルブ20を閉じて、リン酸ノズル18からのリン酸水溶液の吐出を停止させる。これにより、
図5Bに示すように、基板Wへのリン酸水溶液の供給が停止された状態で、基板Wの上面全域を覆うリン酸水溶液のパドル状の液膜が基板W上に保持される。制御装置3は、基板Wへのリン酸水溶液の供給を停止した後、リン酸ノズル移動装置23を制御することにより、リン酸ノズル18をスピンチャック5の上方から退避させる。
【0045】
次に、基板W上のリン酸水溶液を加熱する加熱工程(
図4のステップS4)と、基板W上のリン酸水溶液に純水の液滴を供給する純水供給工程(
図4のステップS4)とが、パドル工程と並行して行われる。具体的には、制御装置3は、赤外線ヒータ31からの発光を開始させる。その後、制御装置3は、ヒータ移動装置33によって赤外線ヒータ31および純水ノズル38を退避位置から処理位置に移動させる。制御装置3は、赤外線ヒータ31および純水ノズル38が基板Wの上方に配置された後、基板Wの上面に対する赤外線の照射領域が
図3中の矢印で示す領域において基板Wの中央部と周縁部との間で往復移動するように、ヒータ移動装置33によって赤外線ヒータ31および純水ノズル38を水平に移動させる。このとき、制御装置3は、赤外線ヒータ31の基板対向面が基板W上のリン酸水溶液の液膜に接触している状態で赤外線ヒータ31を移動させてもよいし、赤外線ヒータ31の下面が基板W上のリン酸水溶液の液膜から所定距離だけ離隔した状態で赤外線ヒータ31を移動させてもよい。
【0046】
制御装置3は、赤外線の照射位置が基板Wの上面中央部と基板Wの上面周縁部との間で往復移動している間に、純水バルブ40を複数回開閉する。これにより、
図5Cに示すように、純水の着液位置が基板Wの上面中央部と基板Wの上面周縁部との間で移動すると共に、複数の純水の液滴が純水ノズル38の純水吐出口37から一つずつ吐出される。したがって、基板Wからのリン酸水溶液の排出が停止されている状態で、複数の純水の液滴が基板Wの上面内の複数の位置に供給される。制御装置3は、赤外線ヒータ31による基板Wの加熱が所定時間にわたって行われた後、純水ノズル38からの液滴の吐出を停止させると共に、赤外線ヒータ31および純水ノズル38を基板Wの上方から退避させる。その後、制御装置3は、赤外線ヒータ31の発光を停止させる。
【0047】
このように、制御装置3は、基板Wを回転させている状態で、基板Wの上面に対する赤外線の照射位置を中央部および周縁部との間で往復移動させるので、基板Wが均一に加熱される。したがって、基板Wの上面全域を覆うリン酸水溶液の液膜も均一に加熱される。赤外線ヒータ31による基板Wの加熱温度は、リン酸水溶液のその濃度における沸点以上の温度(100℃以上。たとえば、140℃〜160℃内の所定温度)に設定されている。したがって、基板W上のリン酸水溶液が、その濃度における沸点まで加熱され、沸騰状態に維持される。特に、赤外線ヒータ31による基板Wの加熱温度が、リン酸水溶液のその濃度における沸点よりも高温に設定されている場合には、基板Wとリン酸水溶液との界面の温度が、沸点よりも高温に維持され、基板Wのエッチングが促進される。
【0048】
加熱工程(S4)ではリン酸水溶液が沸騰状態に維持されるためリン酸水溶液から多くの水分が蒸発する。当該蒸発に伴い、2H
3PO
4→H
4P
2O
7+H
2Oの反応によって、シリコン酸化膜をエッチングするピロリン酸(H
4P
2O
7)が発生する。しかし、制御装置3は、リン酸水溶液からの水の蒸発量に相当する量の純水を基板W上のリン酸水溶液に供給するので、リン酸水溶液から蒸発した水分が補われ、リン酸水溶液の濃度変化が低減される。これにより、エッチングレートの変動が抑えられる。さらに、リン酸水溶液中で一旦発生したピロリン酸が、補充された純水との反応により減少するので、エッチング選択比の低下が抑制または防止される。
【0049】
シリコン酸化膜のエッチングは、基板Wとリン酸水溶液との界面に存在するピロリン酸を減少させることにより効率的に抑制される。純水供給工程では、液滴の形態で純水が基板W上のリン酸水溶液に供給される。供給された純水の液滴は固まったままリン酸水溶液中を移動するため(
図5C参照)、純水を基板Wとリン酸水溶液との界面に確実に到達させ、基板Wとリン酸水溶液との界面に存在するピロリン酸を確実に低減させることができる。これにより、エッチング選択比の低下が確実に抑制または防止される。
【0050】
リン酸水溶液に補充される純水は、純水吐出口37から噴霧されてもよい。しかし、霧状の純水ではその多くがリン酸水溶液の表層で吸収されるため、十分な量の純水を基板Wとリン酸水溶液との界面まで到達させることができないおそれがある。このため、純水吐出口37から吐出される純水は液滴状であることが望ましい。また、基板W上のリン酸水溶液が100℃以上に加熱されているので、蒸発し易い霧状の純水ではそもそもリン酸水溶液の表層に到達させること自体が難しい。この観点からも、純水吐出口37から吐出される純水は液滴状であることが望ましい。
【0051】
リン酸水溶液に補充される純水は、純水吐出口37から連続的に吐出されてもよいし、純水吐出口37から間欠的に吐出されてもよい。但し、微量の水を高い精度で連続的に供給することは困難である。これに対して、純水を間欠的に吐出する場合には微量の水を比較的高い精度で供給することができる。このため、純水吐出口37から純水を間欠的に吐出させると、リン酸水溶液の濃度および温度の変化をより確実に抑制することができる。
【0052】
なお、
図5Cのように赤外線ヒータ31の基板対向面が基板W上のリン酸水溶液の液膜に接触している状態でステップS4の基板加熱と純水供給とを行う場合には、供給された純水がリン酸水溶液の液膜と赤外線ヒータ31の基板対向面との間に挟み込まれないようにすることが望ましい。純水はリン酸水溶液よりも沸点が低いため上記のように挟み込まれると赤外線ヒータ31の加熱によって瞬時に気化するおそれがあるためである。
【0053】
次に、基板W上のリン酸水溶液を排出するリン酸排出工程(
図4のステップS5)が行われる。具体的には、制御装置3は、スピンチャック5を制御することにより、基板Wへの液体の供給が停止されている状態で、パドル工程での基板Wの回転速度よりも速い回転速度(例えば500〜3000rpm)で基板Wを回転させる。これにより、パドル工程のときよりも大きな遠心力が基板W上のリン酸水溶液に加わり、基板W上のリン酸水溶液が基板Wの周囲に振り切られる。また、基板Wの周囲に飛散したリン酸水溶液は、カップ9によって受け止められ、カップ9を介して回収装置に案内される。そして、回収装置に案内されたリン酸水溶液は、再び基板Wに供給される。これにより、リン酸水溶液の使用量が低減される。
【0054】
次に、リンス液の一例である純水を基板Wに供給する第1リンス液供給工程(
図4のステップS6)が行われる。具体的には、制御装置3は、リンス液バルブ30を開いて、基板Wを回転させながら、リンス液ノズル28から基板Wの上面中央部に向けて純水を吐出させる。これにより、基板Wの上面全域を覆う純水の液膜が形成され、基板Wに残留しているリン酸水溶液が純水によって洗い流される。そして、リンス液バルブ30が開かれてから所定時間が経過すると、制御装置3は、リンス液バルブ30を閉じて純水の吐出を停止させる。
【0055】
次に、薬液の一例であるSC1を基板Wに供給する薬液供給工程(
図4のステップS7)が行われる。具体的には、制御装置3は、SC1ノズル移動装置27を制御することにより、SC1ノズル24を退避位置から処理位置に移動させる。制御装置3は、SC1ノズル24が基板Wの上方に配置された後、SC1バルブ26を開いて、回転状態の基板Wの上面に向けてSC1をSC1ノズル24から吐出させる。制御装置3は、この状態でSC1ノズル移動装置27を制御することにより、基板Wの上面に対するSC1の着液位置を中央部と周縁部との間で往復移動させる。そして、SC1バルブ26が開かれてから所定時間が経過すると、制御装置3は、SC1バルブ26を閉じてSC1の吐出を停止させる。その後、制御装置3は、SC1ノズル移動装置27を制御することにより、SC1ノズル24を基板Wの上方から退避させる。
【0056】
SC1ノズル24から吐出されたSC1は、基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。そのため、基板W上の純水は、SC1によって外方に押し流され、基板Wの周囲に排出される。これにより、基板W上の純水の液膜が、基板Wの上面全域を覆うSC1の液膜に置換される。さらに、制御装置3は、基板Wが回転している状態で、基板Wの上面に対するSC1の着液位置を中央部と周縁部との間で移動させるので、SC1の着液位置が、基板Wの上面全域を通過し、基板Wの上面全域が走査される。そのため、SC1ノズル24から吐出されたSC1が、基板Wの上面全域に直接吹き付けられ、基板Wの上面全域が均一に処理される。
【0057】
次に、リンス液の一例である純水を基板Wに供給する第2リンス液供給工程(
図4のステップS8)が行われる。具体的には、制御装置3は、リンス液バルブ30を開いて、基板Wを回転させながら、リンス液ノズル28から基板Wの上面中央部に向けて純水を吐出させる。これにより、基板W上のSC1が、純水によって外方に押し流され、基板Wの周囲に排出される。そのため、基板W上のSC1の液膜が、基板Wの上面全域を覆う純水の液膜に置換される。そして、リンス液バルブ30が開かれてから所定時間が経過すると、制御装置3は、リンス液バルブ30を閉じて純水の吐出を停止させる。
【0058】
次に、基板Wを乾燥させる乾燥工程(
図4のステップS9)が行われる。具体的には、制御装置3は、スピンチャック5によって基板Wの回転を加速させて、第2リンス液供給工程までの回転速度よりも速い高回転速度(たとえば500〜3000rpm)で基板Wを回転させる。これにより、大きな遠心力が基板W上の液体に加わり、基板Wに付着している液体が基板Wの周囲に振り切られる。このようにして、基板Wから液体が除去され、基板Wが乾燥する。そして、基板Wの高速回転が開始されてから所定時間が経過すると、制御装置3は、スピンチャック5による基板Wの回転を停止させる。
【0059】
次に、基板Wをチャンバー4内から搬出する搬出工程(
図4のステップS10)が行われる。具体的には、制御装置3は、スピンチャック5による基板Wの保持を解除させる。その後、制御装置3は、全てのノズルがスピンチャック5の上方から退避している状態で、搬送ロボット(図示せず)のハンドをチャンバー4内に進入させる。そして、制御装置3は、搬送ロボットのハンドにスピンチャック5上の基板Wを保持させる。その後、制御装置3は、搬送ロボットのハンドをチャンバー4内から退避させる。これにより、処理済みの基板Wがチャンバー4から搬出される。
【0060】
図6は、基板Wの中心から純水の着液位置までの半径方向への距離と着液位置の半径方向の移動速度および純水供給流量との関係の一例を示すグラフである。
図7は、基板Wの中心から純水の着液位置までの半径方向への距離と着液位置の半径方向の移動速度および純水供給流量との関係の他の例を示すグラフである。
制御装置3は、ヒータ移動装置33によって純水ノズル38を水平に移動させることにより、基板Wの上面に対する純水の着液位置を移動させる。さらに、制御装置3は、純水流量調整バルブ41の開度を制御することにより、純水ノズル38から吐出される液滴の粒径(体積)を変更し、純水吐出口37からの純水吐出流量を制御する。
【0061】
シリコン窒化膜のエッチング量は基板Wの上面全面に亘って均一であることが望ましい。そのためには、エッチングレートの面内均一性を高くする必要がある。換言すると、基板Wの上面周縁部と上面中心部とのシリコン窒化膜のエッチングレートを略同一にする必要がある。シリコン窒化膜のエッチングレートはリン酸水溶液の濃度に依存するため、当該濃度が基板Wの上面全面において一定となるように純水を補充する必要がある。基板Wが停止しているとき、または実質的に停止しているとき(数rpmで回転しているとき)には純水の着液位置が基板Wの上面を基板Wの半径方向に移動する速度(基板横行速度という。以下に同じ。)を一定にするとともに、純水吐出口37からの純水の吐出流量を一定にすることが望ましい。こうすると基板Wの上面周縁部と上面中心部とには単位面積あたりで実質的に同量の純水が補給されるためリン酸水溶液の濃度を基板Wの上面に亘って均一にすることができる。よって、エッチングレートの面内均一性を高くすることができる。
【0062】
ところが、前述の純水供給工程で基板Wを比較的高速度で回転させると、基板W上のリン酸水溶液には基板Wの半径方向に濃度むらが生じるほどの遠心力が作用する。リン酸水溶液は水よりも粘度が高いため、純水よりも基板Wの外方に移動し難いと考えられる。したがって、基板Wの上面中心部から多くの純水が基板Wの上面周縁部に移動し、基板Wの中心部でリン酸水溶液の濃度が相対的に高くなり、逆に基板Wの周縁部でリン酸水溶液の濃度が相対的に低くなると考えられる。
【0063】
事実、本願発明者らは、基板横行速度が一定で、純水吐出口37からの純水の吐出流量が一定である場合において、基板Wの回転速度をたとえば10rpm程度まで増加させると、基板Wの上面周縁部のシリコン窒化膜のエッチング量が基板Wの上面中央部のエッチング量よりも小さくなる現象を確認した。
これは、前記したメカニズムが基板W上の液膜に作用したためであると考えられる。すなわち、基板Wの回転速度が10rpm程度の場合、基板W上の液膜の厚みは概ね均一であるが、それにもかかわらず、エッチング量に差が生じているのは、多くの純水が基板Wの周縁部に移動し、その結果、基板Wの周縁部でのリン酸水溶液の濃度が低下したためであると考えられる。したがって、基板Wを比較的高速度(たとえば10rpm以上)で回転させながら基板W上のリン酸水溶液の液膜に純水を供給する際には基板Wの上面周縁部よりも基板Wの上面中心部において単位面積当たりの純水供給量を多くすれば、リン酸水溶液の濃度の基板Wの半径方向についてのばらつきを低減でき、その結果、エッチングレートの基板Wの半径方向についてのばらつきを抑制または防止できると考えられる。
【0064】
単位面積あたりの純水供給量を基板Wの上面周縁部よりも上面中心部で多くするには、基板横行速度および純水吐出口37からの純水の吐出流量の少なくとも一方を、純水着液位置に応じて制御すればよい。たとえば、制御装置3は、基板横行速度が基板Wの上面周縁部よりも基板Wの上面中心部で小さくなるようにヒータ移動手段33を制御する。あるいは、純水吐出口37からの純水吐出流量が基板Wの上面周縁部よりも基板Wの上面中心部で多くなるように純水供給装置36を制御すればよい(
図6参照)。
【0065】
基板Wをさらに高速で回転させる場合には単位面積あたりの純水供給量を基板Wの上面中心部でさらに多くする必要がある。この場合、制御装置3は
図7のように制御すればよい。すなわち、制御装置3が、純水の着液位置が基板Wの上面周縁部から上面中心部に近づくにつれて基板横行速度が低下するようにヒータ移動手段33を制御するとともに、純水吐出口37からの純水の吐出流量が増加するように純水供給装置36を制御すると、両者の相乗作用で、基板Wの単位面積あたりに供給される純水の量は純水ノズル38が基板Wの中心部に近づくにつれて急激に増加することになる。
【0066】
また、制御装置3が、純水の着液位置が基板Wの上面中心部から遠ざかるにつれて基板横行速度が増加するようにヒータ移動手段33を制御するとともに、純水吐出口37からの純水の吐出流量が減少するように純水供給装置36を制御すると、両者の相乗作用で、基板Wの単位面積あたりに供給される純水の量は純水ノズル38が基板Wの中心部から遠ざかるに近づくにつれて急激に減少することになる。
【0067】
図8は、基板Wに供給されるリン酸水溶液の温度とエッチングレートおよびエッチング選択比との関係を示すグラフである。
図8に示すように、シリコン窒化膜の一例であるLP−SiNのエッチングレートは、リン酸水溶液の温度上昇に伴って加速度的に増加している。これに対して、シリコン酸化膜の一例であるLP−TEOSのエッチングレートは、リン酸水溶液の温度が140℃以下の範囲ではほぼ零である。LP−TEOSのエッチングレートは、リン酸水溶液の温度が140℃から170℃までの範囲ではリン酸水溶液の温度上昇に伴って緩やかに増加しており、リン酸水溶液の温度が170℃以上の範囲ではリン酸水溶液の温度上昇に伴って加速度的に増加している。リン酸水溶液の温度を高めれば、それ伴ってシリコン窒化膜のエッチングレートが増加するものの、リン酸水溶液の温度が140℃以上の範囲ではシリコン酸化膜もエッチングされてしまう。そのため、エッチング選択比が低下してしまう。したがって、リン酸水溶液の温度を120℃〜160℃内の所定温度(好ましくは、140℃)に設定することにより、高いエッチング選択比を維持しつつ、エッチングレートを高めることができる。
【0068】
第1実施形態では、少量の純水がリン酸水溶液の液膜に供給される。より具体的には、基板Wへの純水の供給流量は、純水流量調整バルブ41によって、リン酸水溶液が基板Wから排出されない、換言すると基板W上にパドル状のリン酸水溶液の液膜が保持される値に設定されている。そのため、十分な活性を有するリン酸水溶液が基板Wから排出されることを防止できる。これにより、リン酸水溶液を効率的に使用できる。さらに、基板W上のリン酸水溶液に供給される純水が少ないので、リン酸水溶液の濃度および温度の変化を抑制できる。これにより、エッチングレートの変動を抑制できる。
【0069】
また第1実施形態では、リン酸水溶液の液膜から蒸発する水の量に相当する量の純水が、リン酸水溶液の液膜に供給される。つまり、蒸発した分だけ純水がリン酸水溶液の液膜に補充される。したがって、供給された純水との反応によりリン酸水溶液中のピロリン酸が減少すると共に、純水の供給によるリン酸水溶液の濃度変化が実質的に防止される。さらに、基板W上のリン酸水溶液に供給される純水が少ないので、リン酸水溶液の濃度および温度の変化を抑制できる。これにより、エッチング選択比の低下を抑制しながら、エッチングレートの変動を抑制できる。
【0070】
また第1実施形態では、霧状の形態でなく、純水の液滴が、純水吐出口37から基板Wの上面に向けて一つずつ吐出される。すなわち、純水の液滴が、純水吐出口37から間欠的に吐出される。基板W上のリン酸水溶液に着液した純水の液滴は、固まったまま基板Wとリン酸水溶液との界面に向かってリン酸水溶液中を移動する。純水は即座にリン酸水溶液中で拡散しないため比較的多くの純水を基板Wとリン酸水溶液との界面に到達させることができる。これにより、基板Wとリン酸水溶液との界面に存在するピロリン酸を減少させることができるため、エッチング選択比の低下を抑制または防止することができる。
【0071】
また第1実施形態では、赤外線ヒータ31から放出された赤外線が、基板Wに照射され、輻射熱が、赤外線ヒータ31から基板Wに伝達される。これにより、基板Wが加熱される。そのため、基板W上のリン酸水溶液が加熱される。あるいは赤外線がリン酸水溶液を直接に加熱する。赤外線ヒータ31は、赤外線ヒータ31の少なくとも一部がリン酸水溶液の液膜に接触している状態で赤外線を放出する。したがって、リン酸水溶液からの水の蒸発が赤外線ヒータ31によって抑制される。これにより、リン酸水溶液の濃度変化を抑制できる。さらに、リン酸水溶液中のピロリン酸の発生を抑制することができる。そのため、エッチングレートを安定させつつエッチング選択比の低下を防止することができる。
【0072】
また第1実施形態では、基板W上のリン酸水溶液が、加熱装置10によって沸点まで加熱される。これにより、シリコン窒化膜のエッチングレートを高めることができる。なお、リン酸水溶液からの水の蒸発量が増加するものの、純水供給装置36が蒸発量に相当するだけの純水をリン酸水溶液に補充するので、リン酸水溶液の濃度が大きく変化することはない。そのため、エッチングレートを安定させることができる。
【0073】
また第1実施形態では、リン酸水溶液の沸点以上の温度まで基板Wが加熱される。したがって、リン酸水溶液に接する基板Wの上面の温度が、リン酸水溶液の沸点以上の温度まで上昇する。そのため、基板Wとリン酸水溶液との界面においてリン酸水溶液を沸騰状態に維持できる。これにより、エッチングレートを高めることができる。
また第1実施形態では、ヒータ移動装置33は、純水の着液位置と赤外線の照射位置との位置関係を一定に維持した状態で、赤外線ヒータ31および純水ノズル38を移動させる。このとき、ヒータ移動装置33は、純水の着液位置に隣接する領域が赤外線ヒータ31によって加熱されるように、赤外線ヒータ31を移動させる。したがって、純水の着液位置の近傍が、赤外線ヒータ31によって加熱される。そのため、純水の供給によって基板Wおよびリン酸水溶液の温度が変化したとしても、基板Wおよびリン酸水溶液が元の温度に戻る時間を短縮できる。これにより、エッチングの均一性の低下を抑制できる。
【0074】
また第1実施形態では、ヒータ移動装置33は、基板Wの回転方向Drに関して、基板Wの上面に対する純水の着液位置よりも下流の領域が加熱されるように赤外線ヒータ31を移動させる。したがって、純水が着液した領域(基板Wの一部)は、基板Wの回転によって即座に加熱領域(赤外線の照射領域)に移動し、赤外線ヒータ31によって加熱される。そのため、純水の供給によって基板Wおよびリン酸水溶液の温度が一時的に低下したとしても、基板Wおよびリン酸水溶液の温度を短時間のうちに元に戻すことができる。これにより、エッチングの均一性の低下を抑制できる。
【0075】
また第1実施形態では、制御装置3は、基板Wの回転速度に応じて純水の着液位置が基板Wを横切って基板周縁部から中心部に向かう速度(あるいは基板Wを横切って基板中心部から基板周縁部に向かう速度。基板横行速度。)を変更する。具体的には、基板Wの回転速度が所定速度未満の場合、制御装置3は、着液位置を一定の基板横行速度で基板Wの上面中央部と基板Wの上面周縁部との間で移動させる。一方、基板Wの回転速度が前記所定速度以上の場合、制御装置3は、着液位置が基板Wの周縁部から上面中央部に近づくに従って、着液位置の基板横行速度を減少させ、あるいは着液位置が基板の上面中央部から遠ざかるに従って着液位置の基板横行速度を増加させる。したがって、基板Wの回転速度が前記所定速度以上の場合、基板Wの上面周縁部に供給される純水よりも多くの純水が、基板Wの上面中央部に供給される。
【0076】
本願発明者らは、基板Wの回転速度が大きい場合、基板Wの上面中央部でのエッチング量が、基板Wの上面周縁部でのエッチング量よりも大きくなる現象を確認した。このエッチング量の差は、基板Wの上面中央部でのリン酸水溶液の濃度が基板Wの上面周縁部でのリン酸水溶液の濃度よりも高いためであると考えられる。したがって、制御装置3は、基板Wの上面周縁部に供給される純水よりも多くの純水を基板Wの上面中央部に供給することにより、基板Wの上面中央部でのリン酸水溶液の濃度を低下させることができる。これにより、制御装置3は、基板Wの上面中央部でのエッチング量の増加を防止することができ、これによって、エッチングの面内均一性を高めることができる。
【0077】
第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態と第1実施形態との主要な相違点は、処理ユニット2が、加湿装置242をさらに備えていることである。以下の
図9および
図10において、前述の
図1〜
図8に示された各部と同等の構成部分については、
図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0078】
図9は、本発明の第2実施形態に係る赤外線ヒータ231およびスピンチャック5を水平に見た模式図である。
図10は、本発明の第2実施形態に係る赤外線ヒータ231の縦断面図である。
第2実施形態に係る処理ユニット2は、チャンバー4内の湿度よりも高湿度の加湿ガスを基板Wの上方で吐出する加湿装置242をさらに含む。加湿装置242は、加湿ガスを基板Wの上方で吐出する加湿ノズル250を含む。加湿ノズル250は、赤外線ヒータ31と一体のノズルあってもよいし、赤外線ヒータ31とは別のノズルであってもよい。
図9および
図10は、加湿ノズル250が赤外線ヒータ31と一体である例を示している。
【0079】
加熱装置10は、第1実施形態に係る赤外線ヒータ31に代えて、赤外線ヒータ231を含む。赤外線ヒータ231は、赤外線を発する赤外線ランプ234と、赤外線ランプ234を収容するランプハウジング235とを含む。赤外線ランプ234は、ランプハウジング235内に配置されている。ランプハウジング235は、平面視で基板Wよりも小さい。したがって、このランプハウジング435内に配置されている赤外線ヒータ231も、平面視で基板Wよりも小さくなる。赤外線ランプ234およびランプハウジング235は、ヒータアーム32に取り付けられている。したがって、赤外線ランプ234およびランプハウジング235は、ヒータアーム32と共に回動軸線A3(
図1参照)まわりに回動する。
【0080】
赤外線ランプ234は、フィラメントと、フィラメントを収容する石英管とを含む。
図10示すように、赤外線ランプ234は、水平面に沿って配置された有端の円環部243aと、円環部243aの一端部および他端部から上方に延びる一対の鉛直部243bとを含む。赤外線ランプ234(例えばハロゲンランプ)は、カーボンヒータであってもよいし、これら以外の発熱体であってもよい。ランプハウジング235の少なくとも一部は、石英などの光透過性および耐熱性を有する材料で形成されている。
【0081】
赤外線ランプ234が発光すると、当該赤外線ランプ234からは赤外線を含む光が放出される。この赤外線を含む光はランプハウジング235を透過してランプハウジング235の外表面から放射され、あるいは、ランプハウジング235を加熱しその外表面から輻射光を放射させる。基板Wおよびその上面に保持されたリン酸水溶液の液膜はランプハウジング235の外表面からの透過光と輻射光とにより加熱される。上記のようにランプハウジング235の外表面からは赤外線を含む光が透過または輻射により放射されているが、以下ではランプハウジング235の外表面を透過する赤外線に着目して赤外線ランプ234に関する説明を行う。
【0082】
ランプハウジング235は、赤外線を透過させる透過部材を含む。
図10示すように、透過部材は、上下方向に延びる筒状の収容部244と、収容部244の下端を塞ぐ円板状の底板部245と、収容部244の中心線に沿って上下方向に延びており、底板部245の下面から下方に突出する中心管246と、底板部245の下方に配置されており、中心管246の下端によって支持された円板状の対向板247とを含む。ランプハウジング235は、さらに、収容部244の上端を塞ぐ蓋部材248と、赤外線ランプ234の一対の鉛直部243bを支持する支持部材249とを含む。赤外線ランプ234は、支持部材249を介して蓋部材248に支持されている。
【0083】
図10示すように、赤外線ランプ234の円環部243aは、収容部244と底板部245と中心管246とによって区画された筒状の空間に配置されている。赤外線ランプ234の円環部243aは、収容部244の内側で中心管246を取り囲んでいる。底板部245は、赤外線ランプ234の下方に配置されており、間隔を空けて赤外線ランプ234に上下方向に対向している。同様に、対向板247は、底板部245の下方に配置されており、間隔を空けて底板部245に上下方向に対向している。底板部245および対向板247は、互いに等しい外径を有している。底板部245の下面と対向板247の上面とは、平行であり、間隔を空けて上下方向に対向している。
【0084】
赤外線ランプ234からの赤外線は、石英で形成された底板部245および対向板247を下向きに透過して、対向板247の下面から下向きに放出される。対向板247の下面は、基板Wの上面と平行でかつ平坦な照射面を含む。赤外線ヒータ231が基板Wの上方に配置されている状態では、ランプハウジング235の照射面が、間隔を空けて基板Wの上面に上下方向に対向する。この状態で赤外線ランプ234が赤外線を発すると、ランプハウジング235を透過した赤外線が、ランプハウジング235の照射面から基板Wの上面に向かい、基板Wの上面に照射される。これにより、輻射熱が赤外線ランプ234から基板Wに伝達され、基板Wが加熱される。
【0085】
図10示すように、加湿装置242は、底板部245と対向板247とによって構成された加湿ノズル250と、中心管246に加湿ガスを供給する加湿ガス配管251と、加湿ガス配管251から中心管246への加湿ガスの供給および供給停止を切り替える加湿ガスバルブ252とを含む。中心管246の下端は、対向板247によって塞がれている。中心管246は、底板部245の下面と対向板247の上面との間の高さに配置された複数(たとえば、8つ)の貫通孔253を含む。複数の貫通孔253は、中心管246の内周面から中心管246の外周面まで延びており、中心管246の外周面で開口している。複数の貫通孔253は、周方向に間隔を空けて配置されている。加湿ノズル250は、底板部245の外周部と対向板247の外周部とによって構成された環状吐出口254を含む。環状吐出口254は、全周にわたって連続しており、複数の貫通孔253の周囲に配置されている。
【0086】
加湿ガスバルブ252が開かれると、加湿ガス配管251から中心管246に供給された加湿ガスが、複数の貫通孔253から中心管246の周囲に吐出され、底板部245の下面と対向板247の上面との間を基板Wの径方向外方に流れる。そして、底板部245および対向板247の外周部に達した加湿ガスは、環状吐出口254から水平に吐出される。これにより、環状吐出口254から放射状に広がる加湿ガスの気流が形成される。加湿ガスは、100℃未満の水蒸気である。加湿ガスは、水蒸気に限らず、純水のミスト(室温の純水を霧状にしたもの)であってもよいし、100℃以上の過熱水蒸気であってもよい。
【0087】
基板Wが処理ユニット2によって処理されるとき、制御装置3(
図1参照)は、加湿ガスの一例である水蒸気をチャンバー4内で吐出する加湿工程を、前述の輻射加熱工程、純水供給工程、およびパドル工程と並行して行う。具体的には、制御装置3は、赤外線ヒータ231および純水ノズル38を基板Wの上方に移動させる前に、加湿ガスバルブ252を開いて、加湿ノズル250からの水蒸気の吐出を開始させる。これにより、チャンバー4内の湿度が高まり、水蒸気圧が飽和水蒸気圧に近づいていく。また、当該加湿ノズル250からの水蒸気の吐出は制御装置3が赤外線ヒータ231および純水ノズル38を基板の上方に移動させた後も継続するため、基板Wの上方の雰囲気を飽和水蒸気圧に近づけることができる。なお、本実施形態では加湿ノズル250からの水蒸気の吐出を赤外線ヒータ231からの赤外線の開始前から行っているが、赤外線ヒータ231からの赤外線照射の開始後に加湿ノズル250からの水蒸気の吐出を開始するようにしてもよい。
【0088】
制御装置3は、赤外線ヒータ231および純水ノズル38が基板Wの上方に配置された後、基板Wの上面に対する赤外線の照射位置が中央部および周縁部の一方から他方に移動するように、ヒータ移動装置33によって赤外線ヒータ231および純水ノズル38を水平に移動させる。このとき、制御装置3は、対向板247の下面が基板W上のリン酸水溶液の液膜に接触している状態で、赤外線ヒータ231を移動させてもよいし、赤外線ヒータ231の下面が基板W上のリン酸水溶液の液膜から所定距離だけ離隔した状態で、赤外線ヒータ231を移動させてもよい。
【0089】
制御装置3は、赤外線の照射位置が基板Wの上面中央部と基板Wの上面周縁部との間で移動している間に、純水バルブ40を複数回開閉する。これにより、純水の着液位置が基板Wの上面中央部と基板Wの上面周縁部との間で移動すると共に、純水ノズル38の純水吐出口37から純水が間欠的に、好ましくは純水の液滴が一つずつ複数滴分、吐出される。したがって、基板Wからのリン酸水溶液の排出が停止されている状態で、複数の純水の液滴が基板Wの上面内の複数の位置に供給される。制御装置3は、赤外線ヒータ231による基板Wの加熱が所定時間にわたって行われた後、純水ノズル38からの液滴の吐出を停止させると共に、赤外線ヒータ231および純水ノズル38を基板Wの上方から退避させる。その後、制御装置3は、赤外線ヒータ231の発光と、加湿ノズル250からの水蒸気の吐出とを停止させる。加湿ノズル250からの水蒸気の吐出は、赤外線ヒータ231が赤外線の放出を停止する前に停止されてもよいし、赤外線ヒータ231が赤外線の放出を停止した後に停止されてもよい。
【0090】
このように、制御装置3は、基板W上のリン酸水溶液が加熱されている状態で、チャンバー4内の湿度よりも高湿度の加湿ガスを加湿ノズル250から吐出させるので、チャンバー4内の湿度が高まる。したがって、リン酸水溶液からの水の蒸発量が低減される。特に、第2実施形態では、加湿ガスが環状吐出口254から放射状に吐出され、基板Wの上面に沿って流れる加湿ガスの気流が形成されるので、液膜の上面全域が、加湿ガスの気流によって覆われる。そのため、基板Wから離れた位置で加湿ガスが吐出される場合よりも、基板Wの近傍での湿度を確実に高めることができ、リン酸水溶液からの水の蒸発を効率的に抑制できる。これにより、ピロリン酸の発生を効率的に抑制でき、エッチング選択比の低下を抑制することができる。
【0091】
以上のように第2実施形態では、チャンバー4内の湿度よりも高湿度の加湿ガスが、チャンバー4内に供給される。これにより、チャンバー4内の湿度が高まり、チャンバー4内の水蒸気圧が飽和水蒸気圧以下の値まで上昇する。したがって、基板W上のリン酸水溶液からの水の蒸発が抑制される。そのため、リン酸水溶液中のピロリン酸の発生を効率的に抑制でき、エッチング選択比の低下を抑制することができる。
【0092】
また第2実施形態では、チャンバー4内の湿度よりも高湿度で、かつ、チャンバー4内の雰囲気温度(室温)よりも高温の加湿ガスが、チャンバー4内に供給される。これにより、チャンバー4内の湿度が高まると共に、チャンバー4内の雰囲気温度が高まる。したがって、エッチングレートの低下を抑制できる。
また第2実施形態では、加湿ガスが、環状吐出口254から基板Wの上面と平行な方向に放射状に吐出される。これにより、環状吐出口254から放射状に広がる加湿ガスの気流が、リン酸水溶液の液膜の上方に形成され、リン酸水溶液の液膜が、加湿ガスの気流によって覆われる。したがって、リン酸水溶液の液膜の上方の湿度が確実に高まる。これにより、基板W上のリン酸水溶液からの水の蒸発が抑制される。そのため、リン酸水溶液中のピロリン酸の発生を抑制することができ、エッチング選択比の低下を抑制できる。
【0093】
第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態と第1実施形態との主要な相違点は、加熱装置10が、第1実施形態に係る輻射加熱装置に加えて、基板Wの下面に加熱流体を供給して基板Wを加熱する加熱流体供給装置を備えていることである。以下の
図11において、前述の
図1〜
図10に示された各部と同等の構成部分については、
図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0094】
図11は、本発明の第3実施形態に係る流体ノズル356およびスピンチャック5を水平に見た模式図である。
第3実施形態に係る加熱装置10は、加熱流体を基板Wに吐出することによって基板Wを加熱すると共に、チャンバー4内の湿度を上昇させる加熱流体供給装置をさらに含む。加熱流体供給装置は、基板Wよりも高温の加熱流体を流体吐出口355から基板Wの下面に向けて吐出する流体ノズル356と、加熱流体を流体ノズル356に供給する流体配管357と、流体配管357から流体ノズル356への加熱流体の供給および供給停止を切り替える流体バルブ358とを含む。流体ノズル356は、上向きに加熱流体を吐出する流体吐出口355を含む。
【0095】
流体ノズル356の流体吐出口355は、基板Wの下面とスピンベース14の上面との間に配置されている。流体ノズル356の流体吐出口355は、間隔を空けて基板Wの下面中央部に上下方向に対向している。加熱流体は、過熱水蒸気である。加熱流体は、過熱水蒸気に限らず、高温純水(基板Wよりも高温の純水)であってもよいし、高温ガス(基板Wよりも高温の不活性ガスまたは清浄空気)であってもよい。すなわち、加熱流体は、液体(加熱液)であってもよいし、気体(加熱ガス)であってもよい。
【0096】
流体バルブ358が開かれると、加熱流体が、基板Wの下面中央部に向けて流体ノズル356の流体吐出口355から吐出される。加熱流体が加熱液である場合、基板Wが回転している状態で加熱液が流体ノズル356の流体吐出口355から吐出されると、吐出された加熱流体は、基板Wの下面中央部に衝突した後、遠心力によって、基板Wの下面中央部から基板Wの下面周縁部まで基板Wの下面に沿って放射状に広がる。また、加熱流体が加熱ガスである場合、流体ノズル356から吐出された加熱流体は、基板Wの下面中央部に衝突した後、基板Wの下面とスピンベース14の上面との間に放射状に広がり、基板Wとスピンベース14との間の空間に拡散する。したがって、加熱流体が加熱液および加熱ガスのいずれの場合でも、加熱流体が基板Wの下面全域に供給され、基板Wが全面にわたって均一に加熱される。
【0097】
基板Wが処理ユニット2によって処理されるとき、制御装置3(
図1参照)は、前述のリン酸供給工程が開始される前に、加熱流体の一例である過熱水蒸気を基板Wの下面に向けて吐出する加熱流体供給工程を開始する。具体的には、制御装置3は、流体バルブ358を開いて、基板Wの下面中央部に向けて過熱水蒸気を流体ノズル356から吐出させる。過熱水蒸気の吐出は、基板Wが回転している状態で開始されてもよいし、基板Wが回転していない状態で開始されてもよい。
【0098】
流体ノズル356から吐出された過熱水蒸気は、基板Wの下面中央部に衝突した後、基板Wの下面とスピンベース14の上面との間に放射状に広がり、基板Wとスピンベース14との間の空間に拡散する。これにより、過熱水蒸気が、基板Wの下面全域および基板Wの周端面に接触し、過熱水蒸気の熱が、基板Wの下面全域に伝達される。これにより、基板Wが均一に加熱される。
【0099】
制御装置3は、流体ノズル356が過熱水蒸気を吐出している状態で、前述のリン酸供給工程を行う。同様に、制御装置3は、流体ノズル356が過熱水蒸気を吐出している状態で、前述の輻射加熱工程、純水供給工程、およびパドル工程を行う。そして、制御装置3は、赤外線ヒータ31および純水ノズル38を基板Wの上方から退避させた後、流体バルブ358を閉じて、流体ノズル356からの過熱水蒸気の吐出を停止させる。流体ノズル356からの過熱水蒸気の吐出は、赤外線ヒータ31が赤外線の放出を停止する前に停止されてもよいし、赤外線ヒータ31が赤外線の放出を停止した後に停止されてもよい。
【0100】
以上のように第3実施形態では、赤外線ヒータ31から放出された赤外線が、基板Wの上面に照射され、基板Wが加熱される。さらに、流体ノズル356から吐出された加熱流体が、基板Wの下面全域に供給され、基板Wの全域が加熱される。このように、基板Wよりも高温の加熱流体が基板Wの下面全域に供給されるので、基板Wの全面にわたって処理温度の均一性を高めることができる。したがって、リン酸水溶液の液膜の温度の均一性を高めることができる。そのため、エッチングの均一性を高めることができる。
【0101】
特に、加熱流体および加湿ガスとしての100℃以上の過熱水蒸気が、加熱装置としての流体ノズル356から吐出され、基板Wの下面全域に供給された場合には、基板Wおよび当該基板Wの上のリン酸水溶液の液膜を効率的に加熱することができる。さらに、基板Wの下面の過熱水蒸気は基板Wの周端面から基板Wの上面に回り込み、あるいは基板Wを保持するスピンチャック5の周囲に拡散し、チャンバー4内を加湿状態にすることができる。したがって、基板W上のリン酸水溶液からの水の蒸発が抑制される。そのため、リン酸水溶液中のピロリン酸を減少させることができ、エッチング選択比の低下を抑制できる。
【0102】
第4実施形態
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態と第1実施形態との主要な相違点は、純水を吐出する純水吐出口37が、赤外線ヒータ431の下面中央部に設けられていることである。以下の
図12において、前述の
図1〜
図11に示された各部と同等の構成部分については、
図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0103】
図12は、本発明の第4実施形態に係る赤外線ヒータ431および純水ノズル38の縦断面および底面を示す模式図である。
第4実施形態に係る加熱装置10は、第1実施形態に係る赤外線ヒータ31に代えて、赤外線ヒータ431を含む。赤外線ヒータ431は、赤外線を発する赤外線ランプ234と、赤外線ランプ234を収容するランプハウジング435とを含む。赤外線ランプ234は、ランプハウジング435内に配置されている。ランプハウジング435は、平面視で基板Wよりも小さい。したがって、このランプハウジング435内に配置されている赤外線ヒータ431は、平面視で基板Wよりも小さくなる。赤外線ランプ234およびランプハウジング435は、ヒータアーム32(
図1参照)に取り付けられている。したがって、赤外線ランプ234およびランプハウジング435は、ヒータアーム32と共に回動軸線A3(
図1参照)まわりに回動する。なお、第1実施形態の加熱及び純水供給工程S4では、純水着液位置が基板Wの上面中心位置と基板Wの一方周縁位置との間(
図3中の矢印で示す範囲)だけで移動するようにヒータアーム32を回動させていた。しかし、第4実施形態では基板Wの2つの周縁位置の間で純水着液位置が移動するように、加熱及び純水供給工程S4におけるヒータアーム32の回動範囲を拡大させている。
【0104】
赤外線ランプ234は、フィラメントと、フィラメントを収容する石英管とを含む。赤外線ランプ234は、水平面に沿って配置された有端の円環部243aと、円環部243aの一端部および他端部から上方に延びる一対の鉛直部243bとを含む。加熱手段としての赤外線ランプ234は、(例えば、ハロゲンランプ)はカーボンヒータであってもよいし、これら以外の発熱体であってもよい。ランプハウジング435の少なくとも一部は、石英などの光透過性および耐熱性を有する材料で形成されている。
【0105】
赤外線ランプ234が発光すると、当該赤外線ランプ234からは赤外線を含む光が放出される。この赤外線を含む光は、ランプハウジング435を透過してランプハウジング435の外表面から放射され、あるいは、ランプハウジング435を加熱しその外表面から輻射光を放射させる。 基板Wおよび その上面に保持されたリン酸水溶液の液膜はランプハウジング435の外表面からの透過光と輻射光とにより加熱される。上記のようにランプハウジング435の外表面からは赤外線を含む光が透過または輻射により放射されているが、以下ではランプハウジング435の外表面を透過する赤外線に着目して赤外線ランプ234に関する説明を行う。 ランプハウジング435は、赤外線を透過させる透過部材を含む。透過部材は、上下方向に延びる筒状の収容部244と、収容部244の下端を塞ぐ円板状の底板部245と、収容部244の中心線に沿って上下方向に延びており、底板部245の下面中央部で開口する中心管246とを含む。ランプハウジング435は、さらに、収容部244の上端を塞ぐ蓋部材248と、赤外線ランプ234の一対の鉛直部243bを支持する支持部材249とを含む。赤外線ランプ234は、支持部材249を介して蓋部材248に支持されている。
【0106】
赤外線ランプ234の円環部243aは、収容部244と底板部245と中心管246とによって区画された筒状の空間に配置されている。赤外線ランプ234の円環部243aは、収容部244の内側で中心管246を取り囲んでいる。底板部245は、赤外線ランプ234の下方に配置されており、間隔を空けて赤外線ランプ234に上下方向に対向している。純水ノズル38は、中心管246内に挿入されている。純水ノズル38の純水吐出口37は、中心管246内に配置されている。
図12の下側に示すように、赤外線ヒータ431を下から見ると、純水吐出口37は、照射面としての底板部245の下面によって取り囲まれている。したがって、純水ノズル38から吐出された純水の液滴は、底板部245の下面から吐出される。
【0107】
この構成によれば、純水の液滴が、赤外線ヒータ431の照射面から吐出されるので、純水の着液位置が、赤外線の照射位置によって取り囲まれる。そのため、基板Wが回転しており、赤外線ヒータ431が赤外線を発している状態で、純水吐出口37が純水の液滴を吐出すると、純水の液滴が着液した領域が、基板Wの上面内のいずれの領域であったとしても、この領域は、即座に照射位置に移動し加熱される。したがって、純水の液滴が基板Wの上面周縁部に着液する2つの位置の間で、赤外線ヒータ431および純水ノズル38が移動したとしても、純水の液滴が着液した領域が即座に加熱される。これにより、基板Wの温度の変動を抑制できる。
【0108】
第5実施形態
次に、本発明の第5実施形態について説明する。第5実施形態と第1実施形態との主要な相違点は、純水供給装置36が、純水ノズル38から吐出される純水の温度を調節する純水温度調節装置559をさらに備えていることである。以下の
図13において、前述の
図1〜
図12に示された各部と同等の構成部分については、
図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0109】
図13は、本発明の第5実施形態に係る純水供給装置36の模式図である。
純水供給装置36は、純水ノズル38、純水配管39、純水バルブ40、および純水流量調整バルブ41に加えて、純水配管39から純水ノズル38に供給される純水の温度を調節する純水温度調節装置559をさらに含む。純水温度調節装置559は、純水配管39内を流れる純水の温度を調節する温度調節器560(ヒータおよびクーラの少なくとも一方)を含む。
図13は、ヒータおよびクーラの両方が純水温度調節装置559に設けられている例を示している。純水温度調節装置559は、温度調節器560によって温度調節された純水の温度を検出する温度センサー561をさらに含んでいてもよい。
【0110】
この構成によれば、純水温度調節装置559によって温度が調節された純水の液滴が、前述の純水供給工程において基板Wに供給される。純水の温度が高すぎると、基板Wとリン酸水溶液との界面に到達する前に純水が蒸発してしまう場合がある。その一方で、純水の温度が低すぎると、基板W上のリン酸水溶液の温度が大幅に変化してしまう場合がある。したがって、純水温度調節装置559によって温度が調節された純水の液滴を純水ノズル38から吐出させることにより、基板W上のリン酸水溶液の温度の変動を抑制しつつ、基板Wとリン酸水溶液との界面に純水を到達させることができる。また、温度センサー561が、純水温度調節装置559に設けられている場合には、制御装置3は、温度センサー561の検出値に基づいて温度調節器560の温度を調節できる。したがって、制御装置3は、基板Wに供給される純水の温度をより精密に制御できる。
【0111】
他の実施形態
本発明の第1〜第5実施形態の説明は以上であるが、本発明は、前述の第1〜第5実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、第1〜第5実施形態では、赤外線ランプ34を備える赤外線ヒータ31がヒータとして用いられている場合について説明したが、電熱線などの他の発熱体が、基板Wを加熱する加熱手段として赤外線ランプ34の代わりに用いられてもよい。
【0112】
また第1〜第5実施形態では、基板Wを水平に保持して回転させるスピンチャック5が、基板保持装置として用いられている場合について説明したが、処理ユニット2は、スピンチャック5の代わりに、基板Wを静止状態で水平に保持する基板保持装置を備えていてもよい。
また第1〜第5実施形態では、赤外線ヒータ31および純水ノズル38が、共通の可動アーム(ヒータアーム32)に取り付けられている場合について説明したが、赤外線ヒータ31および純水ノズル38は、別々の可動アームに取り付けられていてもよい。すなわち、純水供給装置36は、純水ノズルが先端部に取り付けられたノズルアーム(ヒータアーム32とは異なる可動アーム)と、ノズルアームを移動させることにより、純水ノズルを移動させる純水ノズル移動装置とを備えていてもよい。この場合、赤外線の照射位置と純水の着液位置との位置関係は、一定でなくてもよい。また、リン酸ノズル18、赤外線ヒータ31、純水ノズル38が、共通の可動アーム(たとえば、ヒータアーム32)に取り付けられていてもよい。なお、第4実施形態においては純水ノズル38が赤外線ヒータ431内に配置されているため、純水ノズル38と赤外線ヒータ431とは同一の可動アーム(ヒータアーム32)に取り付けられることになる。
【0113】
また第1、第2、第3実施形態および第5実施形態では、制御装置3は、純水の着液位置が基板Wの上面中央部に位置するセンター位置と、純水の着液位置が基板Wの上面周縁部に位置するエッジ位置との間で、赤外線ヒータ31および純水ノズル38を回動させる場合について説明したが、制御装置3は、純水ノズル38から吐出された純水の液滴が基板Wの上面周縁部に着液する2つのエッジ位置の間で、赤外線ヒータ31および純水ノズル38を移動させてもよい。
【0114】
また第1、第2、第3実施形態および第5実施形態では、純水ノズル38が、赤外線ヒータ31よりもヒータアーム32の先端側でヒータアーム32に取り付けられている場合について説明したが、純水ノズル38は、赤外線ヒータ31よりもヒータアーム32の根元側でヒータアーム32に取り付けられていてもよい。また、赤外線ヒータ31および純水ノズル38は、平面視で回動軸線A3からの距離が等しい位置に配置されており、ヒータアーム32の回動方向に並んでいてもよい。
【0115】
また第1〜第5実施形態では、純水バルブ40の開閉によって純水の液滴が形成される場合について説明したが、純水ノズル38は、純水バルブ40が開かれている状態で純水吐出口37から吐出される純水に振動を加えることにより、純水吐出口37から吐出される純水を分断する圧電素子(piezo element)を備えていてもよい。
また第1〜第5実施形態では、純水供給工程が行われている期間中、基板Wの回転速度が一定に維持される場合について説明したが、純水供給工程が行われている期間中に、基板Wの回転速度が変更されてもよい。
【0116】
具体的には、リン酸供給工程での基板Wの回転速度よりも遅い低回転速度(たとえば1〜30rpm)で基板Wを回転させる低速回転工程と、前記低回転速度よりも速い高回転速度(たとえば50rpm)で基板Wを回転させる高速回転工程とが、純水供給工程と並行して行われてもよい。この場合、基板Wに供給された純水の液滴に加わる遠心力が、高速回転工程において大きくなるので、基板Wの上面内のより広い範囲に純水を短時間で拡散させることができる。
【0117】
また第1〜第5実施形態では、リン酸水溶液が基板Wに供給された後に、赤外線ヒータ31による基板Wの加熱が開始される場合について説明したが、赤外線ヒータ31による基板Wの加熱は、リン酸水溶液が基板Wに供給される前に開始されてもよい。この場合、基板Wが加熱されている状態で、リン酸水溶液が基板Wに供給されるので、リン酸水溶液の温度を所定温度まで上昇させる時間を短縮できる。
【0118】
また第1〜第5実施形態では、基板Wへのリン酸水溶液の供給が停止されている状態で、赤外線ヒータ31による基板Wの加熱と、純水ノズル38からの純水の供給とが行われる場合について説明したが、リン酸ノズル18がリン酸水溶液を吐出している状態で、赤外線ヒータ31による基板Wの加熱と、純水ノズル38からの純水の供給とが行われてもよい。すなわち、輻射加熱工程および純水供給工程は、リン酸供給工程と並行して行われてもよい。この場合、パドル工程は省略されてもよい。
【0119】
また第3実施形態では、基板Wに向けて加熱流体を吐出する流体ノズル356が設けられている場合について説明したが、発熱体が内蔵されたホットプレートが、スピンベース14の代わりに用いられる場合には、流体ノズル356が省略されてもよい。この場合、基板Wの下面全域がホットプレートの上面に接触している状態で、基板Wがホットプレートに水平に保持されるので、ホットプレートから常時放出される熱が基板Wの全域に均一に伝達される。これにより、基板Wが均一に加熱される。
【0120】
また第1〜第5実施形態では、基板処理装置1が、円板状の基板Wを処理する装置である場合について説明したが、基板処理装置1は、液晶表示装置用基板などの多角形の基板Wを処理する装置であってもよい。
また、第1〜第5実施形態を含む全ての実施形態のうちの2つ以上が組み合わされてもよい。たとえば、第2実施形態に係る加湿工程と、第3実施形態に係る伝導加熱工程とが並行して行われてもよい。
【0121】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。