特許第6242061号(P6242061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242061
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】スパンレース複合不織布
(51)【国際特許分類】
   D04H 5/03 20120101AFI20171127BHJP
   D04H 3/011 20120101ALI20171127BHJP
   D04H 3/018 20120101ALI20171127BHJP
   D01F 8/14 20060101ALI20171127BHJP
   D01F 6/62 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   D04H5/03
   D04H3/011
   D04H3/018
   D01F8/14 B
   D01F6/62 303G
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-51834(P2013-51834)
(22)【出願日】2013年3月14日
(65)【公開番号】特開2014-177719(P2014-177719A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2016年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木原 幸弘
【審査官】 小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−086256(JP,A)
【文献】 特開2009−052148(JP,A)
【文献】 特表平06−511292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00−18/04
D01F 1/00−6/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両表面層は短繊維ウェブが配され、前記短繊維ウェブ層の間に、長繊維不織布が配された複合不織布であって、該長繊維不織布を構成する長繊維の横断面形状が、略Y字の下端で上下左右に連結した
形状(以下、「略Y4形状」という。)であり、その単糸繊度が10デシテックス以上であり、
長繊維不織布は、該略Y4形状の長繊維のみによって構成され
長繊維不織布は、構成繊維同士が熱接着することにより一体化して長繊維不織布として形態を保持し、長繊維不織布の目付が20〜60g/mであり、
複合不織布は、水流交絡処理によって、両表面の短繊維ウェブ内の構成繊維同士がそれぞれ交絡一体化しているとともに、両表面の短繊維ウェブを構成する短繊維同士が、長繊維不織布の孔を通して互いに絡むことにより両表面層の短繊維ウェブと長繊維不織布とが一体化していることを特徴とするスパンレース複合不織布。
【請求項2】
長繊維不織布は、熱エンボス加工により部分的に熱圧着されて長繊維不織布として形態を保持していることを特徴とする請求項1記載のスパンレース複合不織布。
【請求項3】
長繊維不織布を構成する長繊維がポリエステル系重合体によって構成され、略Y4形状の各々の略V字部が低融点ポリエステルよりなり、その他の略+字部が高融点ポリエステルよりなる複合型ポリエステル長繊維よりなる請求項1または2記載のスパンレース複合不織布。
【請求項4】
請求項1記載のスパンレース複合不織布を用いたワイパー。
【請求項5】
スパンレース複合不織布を製造する方法であって、
ポリエステル樹脂を溶融紡糸して得られたポリエステル長繊維を集積してポリエステル長繊維不織布を得るにあたり、溶融紡糸する際に用いるノズル孔の形状が、Y字の下端で上下左右に連結し、かつ、隣り合うY字の/同士及び\同士が平行である
形状(以下、「Y4形」という。)であり、
溶融紡糸してポリエステル長繊維を得た後、該ポリエステル長繊維を集積し、その後、熱接着処理を施すことにより、ポリエステル長繊維不織布を得、
次いで、得られたポリエステル長繊維不織布の両面に、短繊維ウェブを積層し、高圧水流を施して、長繊維不織布の熱接着を解除することなく、短繊維ウェブ内の構成繊維同士および短繊維ウェブ間での繊維同士を三次元的に交絡させて積層一体化することを特徴とする請求項1記載のスパンレース複合不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水流交絡処理により構成繊維同士が一体化してなるスパンレース複合不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スパンレース不織布は、構成繊維として多くは短繊維が用いられている。短繊維は、繊維端を有し、長繊維のようにエンドレスではないため、水流の作用により容易に交絡するからである。また、スパンレース不織布は、構成繊維同士が水流の作用によって交絡して形態保持しているため、繊維間空隙が大きく、柔軟性に優れるという特徴がある。このため、直接、肌に触れる用途や拭き布として好適に用いられている。
【0003】
しかし、柔軟性に優れるとは、言い換えると、布帛としてのコシに乏しいともいえる。また、構成繊維として主として短繊維を用いられることから、長繊維からなる不織布と比較して、機械的強度には劣っている。
【0004】
特許文献1には、長繊維ウェブと短繊維ウェブとを積層した機械的強力に優れたスパンレース不織布が記載されている。特許文献1によれば、水流交絡処理前の長繊維ウェブに、低温かつ低圧の熱エンボス加工を施して繊維同士を擬似接着させ、次いで、この擬似接着が施された長繊維ウェブと短繊維ウェブとを積層した積層物に水流交絡を施し、水圧によって、長繊維同士の擬似接着を解除し、長繊維が動きやすい状態にして、すなわち、短繊維が絡みやすい状態として、交絡一体化した不織布を得るというものである。得られた不織布は、不織布内部に長繊維が堆積して存在しているため、短繊維のみからなるスパンレース不織布と比較すると、機械的強力は向上する。しかし、繊維同士が交絡のみによって一体化しているため、柔軟性には優れるものの、剛性やコシを有するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3201671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、スパンレース不織布が有する肌触りの良好さや嵩高性は保持した状態で、かつコシや剛性を有するスパンレース不織布を提供することを課題とする。
【0007】
本発明者は、上記課題を達成する方法を検討したところ、水流交絡処理により長繊維不織布の有する熱接着が解除されないような剛性を有する特定の横断面形状の長繊維からなる不織布を用い、この長繊維不織布と短繊維ウェブとを積層して水流交絡処理を施すことにより、表面形態は、従来のスパンレース不織布が有する肌触りの良好さや嵩高性を保持しながら、布帛としてはハリ・コシを付与することができることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、両表面層は短繊維ウェブが配され、前記短繊維ウェブ層の間に、長繊維不織布が配された複合不織布であって、該長繊維不織布を構成する長繊維の横断面形状が、略Y字の下端で上下左右に連結した
形状(以下、「略Y4形状」という。)であり、その単糸繊度が10デシテックス以上であり、
長繊維不織布は、該略Y4形状の長繊維のみによって構成され
長繊維不織布は、構成繊維同士が熱接着することにより一体化して長繊維不織布として形態を保持し、長繊維不織布の目付が20〜60g/mであり、
複合不織布は、水流交絡処理によって、両表面の短繊維ウェブ内の構成繊維同士がそれぞれ交絡一体化しているとともに、両表面の短繊維ウェブを構成する短繊維同士が、長繊維不織布の孔を通して互いに絡むことにより両表面層の短繊維ウェブと長繊維不織布とが一体化していることを特徴とするスパンレース複合不織布を要旨とするものである。
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明のスパンレース不織布は、短繊維ウェブ層の間に特定の長繊維不織布が配され、水流交絡処理によって交絡一体化している複合不織布である。
【0011】
本発明における短繊維ウェブを構成する短繊維としては、水流交絡処理における水流の作用によって、繊維が動き、交絡することができるものであれば特に限定されず、その素材としては、木綿、レーヨンやリヨセル等のセルロース系繊維、ポリエステルやポリオレフィン等の熱可塑性繊維等が挙げられる。繊維長は、交絡性を考慮して、10〜70mm程度がよい。本発明の複合不織布において、両表面層に短繊維ウェブを配置する理由は、長繊維ウェブの場合、繊維はエンドレスであり繊維端を有しにくいために、多大なエネルギーの水流を施さなくては繊維同士が動きにくく十分に絡まないが、短繊維ウェブであると、特定の繊維長であるため繊維端を有し、水流交絡の作用により動きやすく良好に交絡して一体化することができるためである。なお、両表面に配する短繊維ウェブのそれぞれの目付は特に限定されず、用途に応じて適宜選択すればよいが、15〜80g/m程度がよい。
【0012】
本発明における長繊維不織布は、その構成繊維の横断面形状に特徴を有するものである。この横断面形状は、図1に示すような略Y字を四個持つものである。そして、略Y字の下端1で上下左右に連結して、図2に示すような略Y4形状となっている。また、中央の略+字部5と、略+字部5の各先端に連結された四個の略V字部6により、高剛性となっている。すなわち、六角形やY字等の単なる異形ではなく、剛性の高い略+字部5と略V字部6の組み合わせによって、より高剛性となるのである。また、長繊維の異型度が大きいことや、繊度も10デシテックス以上と大きいことから、一定面積中の繊維が存在しない箇所の比率、すなわち二次元的に見たときに繊維が存在しない面積比率が大きく、また、繊維が存在しない箇所(長繊維不織布の孔)の個々の面積が大きくなる。繊維が存在しない面積比率が大きく、かつ繊維が存在しない箇所(長繊維不織布の孔)の個々の面積が大きいことにより、短繊維ウェブと積層して水流交絡処理を施した際、短繊維は、長繊維不織布を構成する単繊維に絡み付きやすくなる。また、さらには、長繊維不織布における繊維が存在しない箇所(孔)において、表裏面に配した短繊維同士がそれぞれ絡みやすくなると共に、複雑に交差する長繊維において、長繊維表面に断面形状に起因する凸部が存在することにより、長繊維間を通じて絡み合っている短繊維群の交絡が解け難くなり短繊維の脱落を防いでいる。一般的なスパンボンド不織布(単糸繊度が10デシテックス未満のもの)においても、目付が小さい(20g/m未満程度)場合は多少の開孔も存在するが、20g/mを超えると、繊維が存在しない箇所の比率やその箇所の面積は極端に小さくなるため、このような現象が生じにくい。本発明においては、目付は20〜60g/mの範囲が好ましく、単糸繊度にもよるが、より好ましくは20〜40g/mである。
【0013】
本発明に用いる糸状断面が略Y4形状の長繊維から構成される長繊維不織布について、以下に説明する。上記したように、長繊維の横断面形状に特徴を有するものであるが、基本的には、本件出願人が提案している特願2011−216377号に記載した長繊維不織布を用いるとよい。
【0014】
長繊維不織布は、剛性および形態安定性の観点から、構成繊維同士が熱接着により一体化してなるものが好ましいことから、熱可塑性重合体によって構成されるが、機械的強度に優れ、剛性が付与できることから、ポリエステル系重合体であることが好ましい。ポリエステル系重合体により構成される長繊維(ポリエステル長繊維)は、一種類のポリエステルからなるものでもよいが、低融点ポリエステルと高融点ポリエステルとを組み合わせるのが好ましい。すなわち、ポリエステル長繊維の横断面形状の略V字部6が低融点ポリエステルで形成され、略+字部5が高融点ポリエステルで形成された複合型するのが好ましい。複合型ポリエステル長繊維を集積した後、低融点ポリエステルを軟化又は溶融させた後、固化させることにより、ポリエステル長繊維相互間が低融点ポリエステルによって融着された不織布が得られるからである。
【0015】
長繊維不織布は、溶融紡糸する際に用いるノズル孔を変更する以外は、従来公知の方法で得られる。すなわち、熱可塑性重合体を溶融紡糸して得られた長繊維を集積して長繊維不織布を製造する方法において、溶融紡糸する際に用いるノズル孔の形状が、Y字の下端で上下左右に連結し、かつ、隣り合うY字の/同士及び\同士が平行である形状(以下、「Y4形」という。)のものを用いるというものである。
【0016】
このノズル孔は、図3に示すY字を四個持つものである。そして、Y字の下端7で上下左右に連結して、図4に示すY4形となっている。このY4形は、隣り合うY字の/8,8同士が平行であり、また\9,9同士が平行となっている。かかるY4形のノズル孔にポリエステル樹脂を供給して溶融紡糸することにより、横断面が略Y4形状のポリエステル長繊維を得ることができるのである。特に、隣り合うY字の/8,8同士及び\9,9同士が平行となっていることにより、四個の凹部2を持つポリエステル長繊維を得ることができる。また、略+字部5と、その各々の先端に設けられた略V字部6とを持つ長繊維を得ることができる。
【0017】
Y4形のノズル孔に供給する熱可塑性重合体は、一種類であってもよいし、二種類であってもよい。特に、低融点ポリエステル樹脂と高融点ポリエステル樹脂の二種類を用いるのが好ましい。すなわち、低融点ポリエステル樹脂をY4形のV字部10に供給し、高融点ポリエステル樹脂をY4形の+字部11に供給するのが好ましい。かかる供給態様で溶融紡糸することにより、略V字部6が低融点ポリエステルで形成され、略+字部5が高融点ポリエステルで形成された複合型ポリエステル長繊維が得られる。
【0018】
長繊維を得た後、これを集積して一般的に繊維ウェブを形成する。そして、繊維ウェブを少なくとも加熱することにより、長繊維を構成する熱可塑性重合体(二種の重合体によって構成されるときは、低融点の重合体)を軟化又は溶融させ、冷却して固化させることにより、長繊維相互間を熱接着して長繊維不織布を得る。熱接着処理は、熱エンボス加工によって形成される部分的に熱圧着することにより熱接着しているものであっても、また、熱カレンダー加工による熱処理により熱接着しているもの、熱風処理により熱接着しているものでもよい。また、これらの方法を併用したものでもよい。本発明においては、長繊維不織布の形態安定性の点から、部分的に熱と圧力とを付加することにより熱圧着する熱エンボス加工によるものであることが好ましい。用いるエンボスロールの圧着面積率(エンボスロールの凸部の面積率)は、15〜45%がよい。なお、本発明に用いられる長繊維不織布における熱接着は、水流交絡の処理によっても解除されない。
【0019】
本発明において長繊維不織布の構成繊維の単糸繊度は、剛性を考慮して10デシテックス以上とする。また、不織布の目付にもよるが、長繊維不織布において二次元的にみたときに繊維が存在しない箇所(孔)の面積比率がより大きくなることから、単糸繊度は15デシテックス以上であることが好ましい。単糸繊度は大きいほど、剛性に優れる傾向にあるが、長繊維不織布を得る際に、延伸可紡性を考慮すれば上限は30デシテックスとする。
【0020】
本発明のスパンレース複合不織布は、上記した略Y4形状断面の長繊維からなる不織布の両面に短繊維ウェブが積層され、短繊維ウェブの構成繊維同士は水流交絡処理により交絡一体化しているとともに、短繊維ウェブ間の短繊維同士が相互に交絡する。また、一部の短繊維は、長繊維不織布を構成する長繊維にも絡む。
【0021】
水流交絡処理は、公知の方法により行えばよい。まず、短繊維ウェブ/長繊維不織布/短繊維ウェブの順に積層し、この積層物をメッシュ状支持体に担持する。次いで、積層物側から高圧水流を施し、短繊維ウェブ内の構成繊維同士および短繊維ウェブ間での繊維同士を三次元的に交絡させて積層一体化させる。この高圧水流は、孔径0.05〜2.0mmの噴射孔が、噴射孔間隔0.05〜10mmで一列又は複数列配置されている噴射装置を用い、水を噴射孔から1.5〜30MPaの圧力で噴射して得られるものである。そうすると、高圧水流はウェブに衝突して、短繊維に運動エネルギーを与える。この運動エネルギーにより、短繊維ウェブ内の短繊維同士あるいは短繊維ウェブ間の短繊維同士が相互に交絡し、一体化する。また、短繊維は、長繊維不織布を構成する長繊維に絡む。なお、この交絡処理によって、長繊維不織布の熱融着は解除されることはない。
【0022】
本発明のスパンレース複合不織布は、短繊維ウェブの目付が大きくない場合(80g/m以下程度)に、表面が若干の凹凸を有する絞り調の独特の外観を呈する。これは、
中層の長繊維不織布が高繊度の略Y4形状断面の長繊維によって構成されているため、長繊維不織布に繊維が存在しない箇所があり、かつその面積および面積率が大きくなり、また、長繊維(略Y4断面形状糸)の外接円の周長が大きいことに起因して、繊維が存在する箇所と繊維が存在しない箇所とにおいて、厚み差が大きくなる(凹凸が大きい)ためと考えられる。長繊維不織布の目付は30〜60g/m、長繊維の繊度は12デシテックス以上とすることにより、このような表面が絞り調の外観を良好に得ることができる。
【0023】
得られるスパンレース複合不織布は、適度なハリ・コシを有するとともに、手で掴んだときのフィット性が良好で掴みやすいため、例えば、ワイパーとして好適なものとなる。ワイパーとして適用する場合は、ウェットタイプでもドライタイプでも、両者ともに良好に適用できる。また、中間層の長繊維不織布を構成する繊維は、横断面に多数の凹部を有しており、この凹部には塵埃が補足しやすいため、フィルター材としての好適に用いることもできる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のスパンレース複合不織布は、両表面層に短繊維ウェブが配され、この短繊維ウェブ層の間に、特定の長繊維不織布が配されて水流交絡により一体化したものであり、長繊維不織布は、略Y4顔面糸から構成され、略Y4断面糸同士は熱接着していることにより形態を保持してなるものである。短繊維ウェブの間に配された長繊維不織布が、高繊度の略Y4断面糸から構成されるため、繊維の外接円の周長が大きく、長繊維が存在しない箇所の面積を大きくすることができる。したがって、両表面層の短繊維ウェブを構成する短繊維同士が、長繊維不織布を通じて良好に絡む。また、長繊維不織布が有する熱接着を解除しなくとも、短繊維ウェブ間が良好に絡むため、長繊維不織布が本来有する剛性や引裂強力を維持した状態で、複合不織布を得ることができる。したがって、本発明のスパンレース複合不織布によれば、不織布表面は、短繊維が交絡しているものであり、良好な肌触り性や嵩高性を有しながら、不織布の中間層には、特定の長繊維不織布が配されているため、布帛としては、ハリ・コシを有する複合不織布を提供することができる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例における各特性値は、以下のようにして求めた。
(1)ポリエステルの極限粘度[η];フェノールと四塩化エタンとの等質量比の混合溶媒100ccに試料0.5gを溶解し、測定した。
(2) 融点(℃);パーキンエルマー社製の示差走査熱量計DSC−7型を用い、昇温速度20℃/分で測定した。
(3)引裂強力(N);JIS L 1906 引裂き強さ ペンジュラム法により、不織布のMD方向の引裂き強力を測定した。
(4)引張強力(N);JIS L 1096−8.12.1 B法 グラブ法に準じて、引張試験機(東洋ボールドウイン社製テンシロンRTM−500型)を用いて、幅100mm、長さ150mmの試験片を、把持間隔76mm、引張速度300mm/分の条件で測定し、試料5点の平均値を求め、引張強力とした。なお、引張強力については、不織布のCD方向(機械方向に直交する方向)のみ求めた。
(5)長繊維不織布を構成する長繊維の繊度(dtex);温度20℃、湿度60%の環境下で1昼夜保管した長さ1.8mの試料(略Y4断面糸)5点の質量について上皿天秤(Mettler AE50)を用いて測定し、その平均値より繊度を求めた。
【0026】
[長繊維不織布の準備]
長繊維不織布の製造例1
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸(TPA)92mol%及びイソフタール酸(IPA)8mol%を用い、ジオール成分としてエチレングリコール(EG)100mol%を用いて共重合し、低融点ポリエステル(相対粘度〔ηrel〕1.44、融点230℃)を得た。この低融点ポリエステルに、結晶核剤として4.0質量%の酸化チタンを添加して、低融点ポリエステル重合体を準備した。一方、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸(TPA)100mol%とジオール成分としてエチレングリコール(EG)100mol%を用いて共重合し、高融点ポリエステル重合体(ポリエチレンテレフタレート、相対粘度〔ηrel〕1.38、融点260℃)を準備した。そして、図4に示したノズル孔を用い、V字部に低融点ポリエステル重合体を供給し、+字部に高融点ポリエステル重合体を供給して、紡糸温度285℃、単孔吐出量8.33g/分で溶融紡糸した。なお、低融点ポリエステル重合体の供給量と高融点ポリエステル重合体の供給量の重量比は、1:2であった。
ノズル孔から排出されたフィラメント群を、2m下のエアーサッカー入口に導入し、複合型ポリエステル長繊維の繊度が17デシテックスとなるように牽引した。エアーサッカー出口から排出された複合型ポリエステル長繊維群を開繊装置にて開繊した後、移動するネット製コンベア上に集積し、繊維ウェブを得た。この繊維ウェブを、表面温度が213℃のエンボスロール(各エンボス凸部先端の面積は0.7mmで、ロール全面積に対するエンボス凸部の占める面積率は15%)とフラットロールからなる熱融着装置に導入し、両ロール間の線圧300N/cmの条件で熱融着して、目付30g/mのポリエステル長繊維不織布を得た。
【0027】
長繊維不織布の製造例2
融点260℃、極限粘度[η]0.70ポリエチレンテレフタレートを準備し、公知の溶融紡糸装置を用い、繊維断面が丸断面となる孔数30ホールの紡糸口金より、紡糸温度280℃で溶融紡出した。紡糸口金とエアーサッカーまでの距離は140cmに設定し、紡出糸条をエアーサッカーに導入した。このとき、ひとつのエアーサッカーに30本の単繊維を導入した。そして、エアーサッカーにて、繊度が3デシテックスとなるように紡糸速度5000m/分で牽引し、紡出糸条は、開繊装置で個々の単繊維がばらばらになるように開繊させた後、コンベアネット上に捕集・堆積させて、長繊維ウェブとした。得られたウエブを、エンボスロール(エンボスロールの凸部の面積0.7mm、面積率15%)とフラットロールとからなる熱エンボス装置に導き、両ロールの表面温度235℃、線圧490N/cmの条件下で部分的に熱圧接処理を施し、目付30g/mの長繊維不織布を得た。
【0028】
[複合不織布の製造方法]
実施例1
精錬・漂白した木綿(繊維長 約25〜35mm)を用いて、大和機工株式会社製のサンプルローラーカード機にて目付38g/mの短繊維ウェブを作成した。次に、長繊維不織布として、上製造例1で得られた略Y4断面糸からなる長繊維不織布を準備した。短繊維ウェブ/長繊維不織布/短繊維ウェブの順に積層し、この積層物を100メッシュのステンレスネット上に載せ、ノズル径0.13mm、水圧8.33MPaの水圧で積層物に水を噴射した。次いで、積層物を反転させて、他面より同様の水圧で水を噴射して、水流交絡処理を施した。その後、乾燥処理を行い、本発明のスパンレース複合不織布を得た。図5は、得られたスパンレース複合不織布の横断面を観察した電子顕微鏡写真である。
【0029】
得られたスパンレース複合不織布のMD方向の引裂強力は7.1N、CD方向の引張強力は58Nであり、優れた機械的強力を示した。また、剛性に優れた長繊維不織布を中央に配し、両表層を木綿を配したため、該スパンレース複合不織布の表層は柔らかく風合いが優れていると共に、縦方向、横方向、斜め方向に引っ張った際にも形態が変形しにくく、良好な形態安定性を有し、不織布自体は反発性(コシ・ハリ)を有し、剛性に優れたものであった。
【0030】
比較例1
実施例1において、長繊維不織布を用いなかったこと、52g/mの短繊維ウェブ2枚を積層して水流交絡処理を施したこと以外は、実施例1と同様にしてスパンレース不織布を得た。
得られたスパンレース不織布のMD方向の引裂強力は4.5N、CD方向の引張強力は40Nであり、実施例のスパンレース複合不織布に較べると、剛性およびコシがなく、縦方向、横方向、斜め方向に引っ張った際にも形態が変形しやすく、形態安定性に劣るものであった。
【0031】
比較例2
実施例1において、長繊維不織布として上製造例2で得られたものを用いたこと以外は実施例1と同様にして水流交絡処理を施したが、長繊維不織布の両面の短繊維ウェブを構成する短繊維は、それぞれ交絡したが、長繊維不織布への絡み付きはなく、容易に3枚(2枚の短繊維不織布と長繊維不織布)に剥がれてしまい、複合化することはできなかった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明に用いる長繊維不織布を構成する長繊維の横断面形状である略Y4形状の一つの略Y字を示した図である。
図2】本発明に用いる長繊維不織布を構成する長繊維の横断面形状である略Y4形状を示した図である。
図3】本発明に用いる長繊維を得るためのY4形のノズル孔のひとつのY字を示した図である。
図4】本発明に用いる長繊維を得るためのY4形のノズル孔を示した図である。
図5】本発明の一例に係るスパンレース複合不織布の横断面を観察した電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0033】
1 ポリエステル長繊維横断面形状である略Y4形状の一つの略Y字の下端
2 略Y4形状で形成された凹部
3 略Y4形状で形成された凸部
4 略Y4形状で形成された小凹部
5 略Y4形状中の略十字部
6 略Y4形状中の略V字部
7 溶融紡糸する際のノズル孔の形状であるY4形状の一つのY字の下端
8 Y字の/
9 Y字の\
10 Y4形のV字部
11 Y4形の十字部
図1
図2
図3
図4
図5