(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されたパウチ容器によれば、貫通路に指を挿入して容器を保持することで上記作業性がある程度改善できる。しかし、当該パウチ容器の場合、同文献の図面に記載されているように、容器を保持したときに貫通路から指先が出るため、栄養剤等の充填物が指にかかる恐れがあるなど、未だ改良の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るパウチ容器は、少なくとも表面部及び裏面部を構成する壁面シート
と、該シートに囲まれた内容物の充填部とを備え
、前記充填部に繋がる開口部が容器上部の前記表面部と前記裏面部との間に形成されるパウチ容器において、前記表面部及び前記裏面部の上部にそれぞれ設けられた袋状部を備え、前記各袋状部は、前記充填部から隔離された内部空間を有し、容器幅方向から該空間への指の挿入を可能とする挿入口を有することを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、容器幅方向から袋状部の内部空間に指を挿入することができる。袋状部内に挿入される指(例えば、親指と人差し指)は容器幅方向に沿った状態となり、この状態で親指と人差し指の間隔を開けることにより開口部を容易に広げることができる。
親指と人差し指は袋状部内にすっぽりと挿入されるため、容器の保持性に優れ、内容物の重量が重い場合であっても指が抜け難く容器を安定に保持できる。そして、親指と人差し指は指先まで袋状部に覆われているため、充填物が指にかかることを防止できる。また、親指と人差し指との間隔を開けておくだけで開口状態が維持されるので、例えば、注入作業中に開口部が閉じてしまい充填物が零れるといった不具合を防止できる。
【0008】
本発明に係るパウチ容器において、前記各袋状部は、前記壁面シートの全幅に亘って設けられることが好適である。
当該構成によれば、長尺状のシートを用いた生産性の高いプロセスによって袋状部を備えたパウチ容器を製造できる。
【0009】
本発明に係るパウチ容器において、前記壁面シートには、前記開口部を閉じるチャックが設けられ、前記各袋状部は、前記チャックよりも上方に設けられることが好適である。
当該構成によれば、容器を保持する手によって充填部が隠れ難いため、充填物の量を確認し易い。
【0010】
また、前記各袋状部が前記チャックよりも上方に設けられた構成において、前記各挿入口は、前記袋状部の幅方向一端部側に設けられ、前記各袋状部の間には、幅方向他端部同士を接合するシール部が設けられていることが好適である。
当該構成によれば、開口部をより広げ易くなる。幅方向他端部同士が接合されていない場合、例えば、親指と人差し指の間隔を広げたときに各袋状部がその付け根で外側に折れ曲がり易くなるが、シール部を設けることで当該折れ曲がりを抑えることができ、開口部を広げる方向に力が作用し易くなる。
【0011】
前記シール部は、前記各袋状部の上下方向に沿って隙間なく形成されていることが好適である。
当該構成によれば、充填物を注入する際に、容器幅方向他端部から充填物が漏れることを防止できる。また、当該他端部領域があたかも漏斗様に機能し、当該シール部に沿わして充填物を注入することが可能となる。
【0012】
また、前記シール部が設けられた構成において、前記各袋状部には、容器上下方向に沿った折り曲げ部を形成するための折曲形成部を設けることが好適である。特に、袋状部内に挿入される指が届かない幅方向他端部側に折曲形成部を設けることが好ましい。
当該構成によれば、開口部をより広げ易くなる。パウチ容器は柔軟性が高いことから、袋状部の指が挿入された部分は指に沿った形状を呈する。一方、指先よりも前方に位置する部分は、例えば、指先の位置から幅方向他端部にかけて湾曲する又は指先の位置で折れ曲がるが、折曲形成部を設けることによって、開口部を広げたときに折曲形成部で袋状部が優先的に折れ曲がり、容器上下方向に延びる折り曲げ部(例えば、折れ線等)が形成される。これにより、例えば、指先よりも前方に位置する部分が、指に沿って折れ線(折曲形成部)まで真っ直ぐに延び、開口部がより広がり易くなる。
【0013】
また、前記各袋状部が前記チャックよりも上方に設けられた構成において、前記各袋状部は、前記表面部及び前記裏面部の間に挿入された1枚のガゼットシートにより形成され、前記ガゼットシートの折り目線上に切断補助線が形成された構成とすることができる。
当該構成によれば、容器を使用する際に、切断補助線に沿ってガゼットシートを切断することで各袋状部を分離し、開口部を開口することが可能となる。使用前においては、例えば、チャックの上方をガゼットシートが覆っているため充填部の密封性が向上する。
【0014】
本発明に係るパウチ容器において、前記各袋状部には、前記各挿入口を塞ぐ舌片が設けられ、前記各挿入口は、前記舌片が前記内部空間内に折り込まれることで開口することが好適である。
当該構成によれば、袋状部内に指を挿入し易くなる。内部空間内に折り込まれた舌片によって、例えば、挿入口の縁部が浮き上がって指の挿入性が向上する。
【0015】
本発明に係るパウチ容器において、前記各挿入口は、前記袋状部の幅方向一端部側に設けられ、前記各袋状部の前記挿入口よりも幅方向他端側の上部には、前記袋状部の内面同士を接合する指掛け用シール部が設けられていることが好適である。
当該構成によれば、指掛け用シール部に、例えば親指の先を引っ掛けることができるので、袋状部における親指の掛かりが良くなって開口部を広げる方向に力が作用し易くなる。当該構成は、特に手の小さな女性等の使用に有用である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、充填物が指にかかる等の不具合を防止できると共に、開口部を広げながら容器を安定に保持することが容易なパウチ容器を提供できる。本発明のパウチ容器は、例えば、長尺状のシートを用いた既存の製袋プロセスによって簡便且つ安価に製造可能である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1〜
図7は、第1の実施形態を、
図8〜
図17は、第2〜第7の実施形態をそれぞれ示す。
【0019】
以下では、パウチ容器に注入される充填物として液状の栄養剤(図示せず)を例示する。但し、充填物は、これに限定されず、例えば、栄養剤を希釈するための水等であってもよく、ゼリー状やペースト状の物であってもよい。また、本発明の適用は、医療用途に限定されず、各種食料品等の容器に適用されてもよい。
【0020】
以下では、袋状部を除く部分が表面シート11及び裏面シート12のみから構成される平パウチを例示するが、スタンディングパウチやサイドガゼットパウチなど、他のパウチ形態に本発明の構成を適用してもよい。
【0021】
本明細書では、開口部が形成される部分を容器の「上部」とし、上部に対向する部分を容器の「下部」とする。また、各シートが積層される方向を容器の「表裏方向」とし、上下方向及び表裏方向に直交する方向を容器の「幅方向」とする。以下では、単に、上下方向、表裏方向、幅方向という場合がある。
【0022】
<第1の実施形態>
図1〜
図7を参照しながら、第1の実施形態であるパウチ容器10について詳説する。
まず、
図1〜
図3を参照する。
図1,2は、パウチ容器10の正面図であって、
図2では、舌片26A,26Bを袋状部20A,20Bの内側(内部空間22A,22B)に折り込んだ様子を示している。
図3は、幅方向に平行な
図2のA‐A線で、袋状部20A,20Bを表裏方向に切断したときの断面を示す。
【0023】
パウチ容器10は、互いに重ね合わされた表面シート11及び裏面シート12を備える。表面シート11及び裏面シート12は、容器の表面部及び裏面部をそれぞれ構成する一対の壁面シートである。パウチ容器10は、各シートの上端縁を除く端縁同士を接合して形成された端縁シール部13を有する。即ち、表裏面シートの幅方向両端縁(側端縁)及び下端縁に端縁シール部13が形成され、容器上部には充填部14に繋がる開口部15(後述の
図7参照)が形成されている。開口部15は、上方に向いた開口部であって、表面シート11と裏面シート12とが接合されないことにより各シートの間に形成される。
【0024】
パウチ容器10には、開口部15を閉じるチャック16が設けられる。そして、端縁シール部13とチャック16とにより、壁面シートに囲まれた容器内部空間が密閉される。この密閉される容器内部空間が、栄養剤が充填される充填部14である。チャック16は、例えば、凸条部付きの第1のシートと、凸条部に嵌合する凹条部付きの第2のシートとを対向配置して構成される。例えば、第1のシートが表面シート11の内面に接合され、第2のシートが裏面シート12の内面に接合される。
【0025】
また、パウチ容器10には、充填部14に充填された栄養剤を注出するための注出部17が設けられる。注出部17は、例えば、栓付きのプラスチック管であって、壁面シートの斜めにカットされた下端と側端との角部に取り付けられている。具体的には、表面シート11と裏面シート12の間に注出部17を挟んだ状態で各部材を接合することにより注出部17が取り付けられる。
【0026】
また、パウチ容器10には、注出部17の長手方向の延長線上に吊り下げ孔18が設けられる。吊り下げ孔18は、端縁シール部13の一部を幅広に形成し、当該幅広シール部を表裏方向に打ち抜くことで形成される。パウチ容器10に充填された栄養剤を患者に投与する際には、吊り下げ孔18をフック等に引っ掛けることで注出部17の長手方向が鉛直方向に沿った状態となり、栄養剤を容易に注出することができる。
【0027】
なお、パウチ容器10では、吊り下げ孔18が形成される幅方向端部と反対側にカット部19が形成されて、容器上部の幅が容器下部の幅よりも狭くなっている。容器上部の幅を狭くする、特に後述の挿入口24A,24B側をカットして縮幅することで、容器の保持性等を向上させることができる。
【0028】
さらに、パウチ容器10は、表面部の上部に設けられた袋状部20A、及び裏面部の上部に設けられた袋状部20Bを備える。袋状部20A,20Bは、開口部15を広げて栄養剤を充填部14に注入する際に使用される部分であって、一対の壁面シートと、その間に挿入された袋状部形成シート21A,21B(以下、単に「シート21A,21B」という)とにより形成される。具体的には、シート21Aと表面シート11が端縁シール部23Aにより、シート21Bと裏面シート12が端縁シール部23Bによりそれぞれ接合されて袋状部20A,20Bが形成される。
【0029】
パウチ容器10を構成する各シートは、通常、樹脂フィルムから構成される。シートを構成する樹脂フィルムには、耐衝撃性、耐磨耗性、及び耐熱性など、包装体としての基本的な性能を備えることが要求される。また、上記各シール部は、通常、ヒートシールにより形成されるので、シートには、ヒートシール性も要求される。シートとしては、ベースフィルム層と、ヒートシール性を付与するシーラント層とを有する複層シートが好適であり、高いガスバリア性が要求される場合には、ベースフィルム層とシーラント層との間にガスバリア層を設けることが好適である。
【0030】
ここで、ベースフィルム層、シーラント層、及びガスバリア層の構成材料を例示する。なお、これら各層の積層は、慣用のラミネート法、例えば、接着剤によるドライラミネーション、熱接着性層を挟んで熱により接着させる熱ラミネーションなどにより行うことができる。
【0031】
ベースフィルム層を構成するフィルムとしては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)など)、ポリオレフィン(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66など)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルスルフォン(PES)及びエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等から構成される一層又は二層以上の延伸又未延伸フィルムが例示できる。
【0032】
シーラント層を構成するフィルムとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−プロピレン共重合体(EP)、未延伸ポリプロピレン(CPP)、二軸延伸ナイロン(ON)、エチレン−オレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)及びエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等から構成される一層又は二層以上の延伸又未延伸フィルムが例示できる。
【0033】
ガスバリア層としては、アルミニウム等の金属薄膜、又は塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)などの樹脂フィルム、或いは任意の合成樹脂フィルム(例えば、ベースフィルム層であってもよい)に、アルミニウム、酸化アルミニウムやシリカ等の無機酸化物などを蒸着(又はスパッタリング)したフィルムが例示できる。
【0034】
壁面シートには、例えば、栄養剤の液量を計測するための目盛り(図示せず)を設けることが好適である。なお、目盛りの他にも、商品名や原材料、使用上の注意事項などを表示する印刷層を設けてもよい。
【0035】
以下、袋状部20A,20Bの構成について、さらに詳説する。
【0036】
パウチ容器10は、チャック16よりも上方に袋状部20A,20Bを備える。チャック16は幅方向に沿って設けられ、袋状部20A,20Bはチャック16(幅方向)と略平行に設けられている。パウチ容器10は、チャック16より下部は2枚の壁面シートから構成される平パウチの形態であるが、チャック16より上部は4枚のシートから構成されている。上記のように、袋状部20Aは、表面シート11の内面にシート21Aを接合することで形成され、袋状部20Bは、裏面シート12の内面にシート21Bを接合することで形成されている。
【0037】
袋状部20A,20Bは、表裏方向に重なり、開口部15を挟んで対向配置されている。本実施形態では、シート21A,21Bが互いに接合されておらず、袋状部20A,20Bは分離されている。袋状部20A,20Bは、上下方向よりも幅方向に長くなった略矩形形状を呈し、互いに同じ形状、同じ寸法を有している。以下、袋状部20A,20Bで共通する内容は、袋状部20Aを例に挙げて説明する。
【0038】
袋状部20Aは、壁面シートの全幅に亘って設けられている。即ち、壁面シートのチャック16よりも上方に位置する部分の幅方向長さと、シート21Aの幅方向長さとが同じである。シート21Aの幅方向長さはより短くてもよいが、生産性の観点から当該構成とすることが好ましい。これにより、長尺状シートを用いた既存の製袋プロセスによって簡便且つ安価にパウチ容器10を製造することができる。
【0039】
袋状部20Aは、充填部14から隔離された内部空間22Aを有する。また、袋状部20Aは、幅方向から内部空間22Aへの指の挿入を可能とする挿入口24Aを有する。なお、
図1に示す形態では、挿入口24Aが後述の舌片26Aにより塞がれている。
【0040】
内部空間22Aは、充填部14と連通しない独立の空間であって、正面視状態(
図1参照)における周縁が端縁シール部23Aにより塞がれている。内部空間22Aは、少なくとも1本の指、例えば、親指を収容可能な寸法を有する(内部空間22Bには、例えば、人差し指が収容される)。より詳しくは、指の先から付け根まですっぽりと収容できる程度の寸法に設定することが好適である。また、内部空間22Aには、指が幅方向に沿った状態で収容されるため、幅方向に長く延びた空間となっている。内部空間22Aは、挿入口24Aだけが外部との接続口であり、その他の部分はシート及び端縁シール部23Aにより閉塞されている。
【0041】
挿入口24Aは、カット部19が形成された袋状部20Aの幅方向一端部側、即ち吊り下げ孔18が形成された幅方向他端部と反対側に設けられている。挿入口24Bは、挿入口24Aのちょうど裏側に設けられる。挿入口24Aは、幅方向一端部側から指が挿入される設計であって、挿入口24Aから挿入された指は内部空間22Aにおいて指先が幅方向他端部側を向いた状態で収容される。
【0042】
挿入口24Aは、表面部の外面(袋状部20Aを構成する表面シート11)に切り込み線25Aを形成することで設けられる。容器の保持性等の観点から、幅方向一端部に近接して切り込み線25Aを形成することが好適である。
【0043】
切り込み線25Aは、正面視略U字状を呈し、その両端(以下、「切り込み端」という)が幅方向他端側を向くように形成されている。即ち、切り込み線25Aの略直線状の部分が幅方向に沿って形成され、切り込み線25Aの円弧状の部分が幅方向一端部側に凸となるように形成されている。袋状部20Aには、切り込み線25Aと切り込み端同士を結んだ線(以下、舌片26Aの「付け根線」という)とに囲まれた部分である舌片26Aが設けられており(
図1参照)、付け根線で舌片26Aを折り曲げることで挿入口24Aが開口する(
図2参照)。なお、挿入口24Aに幅方向一端部から指を挿入する場合、幅方向他端部側の縁部(即ち、付け根線部分)とシート21Aとの間から挿入される。
【0044】
切り込み線25Aは、指を挿入し易くしながら容器の保持性を高めるため、上側の直線部分よりも下側の直線部分の方が長くなっている。そして、付け根線は、その下端が上端よりも幅方向他端側に位置し、上下方向及び幅方向に対して傾いている。これにより、容器の重量がかからない指の下側では挿入口24Aの寸法を大きくとり、容器の重量がかかる指の上側では挿入口24Aの寸法を小さくしている。このため、指にかかる負担が低減されると共に、指を挿入することが容易になる。
【0045】
舌片26Aは、内側(内部空間22Aの中)に折り込まれていることが好適である(
図2,3参照)。舌片26Aは、挿入口24Aの幅方向他端部側の縁部に繋がっており、これを内側に折り込むことで当該縁部が浮き上がり易くなる。即ち、当該構成では、指の挿入性を高めるため、舌片26Aを利用して指を挿入する隙間(当該縁部とシート21Aとの隙間)を広げている。なお、舌片26Aは、使用時に折り込まれてもよいし、製造時に折り込まれてもよい。また、舌片26Aは内側に折り込まれた状態で表面シート11に接合されていてもよい。
【0046】
図4に、第1の実施形態の変形例を示す。
図4は、袋状部20A,20Bを斜め上方から見た斜視図であって、一部を上下方向に切断した断面図としている。
図4に示す形態では、シート21A,21Bの代わりに、ガゼットシート21Gを用いて袋状部20A,20Bを形成している。ガゼットシート21Gは、下方に向かって山折りされた断面視V字状のシートである。ガゼットシート21Gは、折り目線27が幅方向に対して略平行となるように一対の壁面シートの間に挿入されている。そして、折り目線27により二分された一方のシート部分が表面シート11の内面に接合され、他方のシート部分が裏面シート12の内面に接合されて、2つの袋状部20A,20Bが形成されている。
【0047】
図4に示す形態では、一対の壁面シート及び1枚のガゼットシート21Gにより袋状部20A,20Bが形成されているため、使用される前(開封前)において各袋状部は互いに繋がっている。これにより、開封前における充填部14の密封性を高めることができる。ガゼットシート21Gには、例えば、折り目線27上に、ハーフカット線やミシン目線等の切断補助線を形成することができ、使用時に切断補助線に沿ってガゼットシート21Gを切断することで袋状部20A,20Bを互いに分離することができる。当該分離によって、シート21A,21Bを用いた場合と同様の形態となり、開口部15の開口が可能となる。
【0048】
次に、
図5を参照しながら、
図1の構成を備えるパウチ容器10の製造方法の一例について説明する。
図5は、パウチ容器10の製造工程のうち、各シートの長尺体を積層し、各シール部を形成する工程を模式的に示す。
【0049】
図5に示すように、まず、表面シート11、裏面シート12、チャック16を構成するシート(例えば、凸条部付きの第1のシート及び凹条部付きの第2のシート)、及びシート21A,21Bの長尺体(以下、「長尺体11z,12z,16z,21Az,21Bz」とする)をそれぞれ準備して互いに積層する。長尺体16zは、第1のシートの凸条部と第2のシートの凹条部とが嵌合した状態で積層され、長尺体21Az,21Bzは、互いに重ね合わされた状態で積層される。
【0050】
各長尺体の積層工程では、まず、互いに重ね合わされた長尺体11z,12zの間に長尺体16z,21Az,21Bzをそれぞれ挿入する。このとき、長尺体11z,12zは各々のシーラント層同士が向かい合うように積層され、長尺体21Azのシーラント層は長尺体11zのシーラント層と向かい合うように、長尺体21Bzのシーラント層は長尺体12zのシーラント層と向かい合うように積層される。これにより、ヒートシール工程で長尺体21Az,21Bz同士が接合することを防止しながら、上記各シール部を形成することができる。
【0051】
積層工程を経た上記各長尺体には、ヒートシール工程で各シール部が形成される。ヒートシール工程では、例えば、注出部17を取り付ける部分を残して、長尺体11z,12zの下端縁、TD方向に沿って所定部位をヒートシールすることにより端縁シール部13を形成する。ここで、長尺体の下端縁は、パウチ容器10の下端縁となる部分であり、所定部位は、パウチ容器10の側端縁となる部分である。ヒートシール工程では、さらに、長尺体16z,21Az,21Bzを長尺体11z,12zにそれぞれ接合する。これにより、開口部15が閉じられ、また端縁シール部23A,23Bが形成される。
【0052】
続いて、ダイカットロール等を用いて、例えば、切断予定線Xに沿って上記長尺体をカットし、個々の容器サイズに分割する。なお、上記ヒートシール及び当該カットは同時に行なわれてもよい。このとき又は別工程で、吊り下げ孔18及び切り込み線25A,25Bが形成される。これにより、内部空間22A,22Bに指が挿入可能な袋状部20A,20Bが形成される。最後に、注出部17を取り付けてパウチ容器10が得られる。
【0053】
本製造工程では、
図1に示すパウチ容器を製造するために長尺体21Az,21Bzを用いた例を説明したが、
図4に示す形態のパウチ容器を製造するためには、これら長尺体21Az,21Bzの代わりに、長尺状のガゼットシート21Gを用いればよい。また、
図1に示すパウチ容器を製造するには、長尺状のガゼットシート21Gを製袋機に供給し、壁面シートにヒートシールする前又はヒートシールした後、折り目線に沿ってガゼットシート21Gを切断して長尺体21Az,21Bz又は袋状部20A,20Bに分離してもよいし、壁面シートの上部を内側又は外側に折り返して袋状部20A,20Bを形成することも可能である。
【0054】
次に、
図6,7に示すパウチ容器10の使用状態の一例を参照しながら、パウチ容器10の作用効果について詳説する。
【0055】
パウチ容器10の開口部15から充填部14に栄養剤を注入する際には、例えば、片手(以下、右手とする)で容器を保持しながらチャック16を開けて開口部15を広げる。まず初めに、袋状部20Aの内部空間22Aには親指を挿入し、袋状部20Bの内部空間22Bには人差し指を挿入して容器を保持する。このとき、親指と人差し指は、幅方向一端部側から挿入口24A,24Bを通って各内部空間に挿入される。挿入口24A,24Bは、幅方向一端部に近接して形成され、また上側よりも下側の方が長くなった略U字状の切り込み線25A,25Bにより形成され、また舌片26A,26Bが内側に折り込まれて開口している。このため、挿入口24A,24Bから指をスムーズに挿入することができる。
【0056】
続いて、袋状部20A,20B内に挿入された親指と人差し指との間隔を開けることによりチャック16を外して開口部15を広げる。即ち、親指を表側に動かし、人差し指を裏側に動かす。親指と人差し指の間隔をさらに広げることで、開口部15を大きく広げることができる。
【0057】
続いて、親指と人差し指の間隔を開けて開口部15を大きく広げた状態で、栄養剤の注入を開始する。親指と人差し指との間隔を開けておくだけで開口状態が維持されるので、例えば、栄養剤を袋状部20A,20Bの付け根付近まで近づけて注入でき、且つ注入作業中に開口部15が閉じて栄養剤が零れることを防止できる。また、栄養剤を注入することにより容器の重量が増加するが、容器を保持する指は袋状部20A,20B内にすっぽりと挿入されているため抜け難く、容器を安定に保持することができる。さらに、栄養剤が誤って容器の外側に流れ出た場合であっても、親指と人差し指は指先まで各袋状部に覆われているため、栄養剤が指にかかることを防止できる。
【0058】
以上のように、パウチ容器10によれば、片手で容器を保持しながら栄養剤の注入作業を容易に行なうことができ、当該注入作業の作業性を大幅に改善することが可能となる。
【0059】
<第2の実施形態>
図8〜
図11を参照し、第2の実施形態であるパウチ容器30について説明する。ここでは、第1の実施形態との相違点を主に説明し、第1の実施形態と同様の構成には同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0060】
図8に示すように、パウチ容器30は、袋状部20A,20Bの幅方向他端部同士が接合されてシール部31が設けられている点でパウチ容器10と異なる。シール部31は、挿入口24A,24Bと反対側に設けられている。
図8に示す形態では、シート21A,21Bの幅方向他端部に切り欠き32A,32Bがそれぞれ形成されており、シール部31は、切り欠き32A,32Bが形成された部分のみに設けられるポイントシール部である。具体的に、シール部31は、切り欠き32A,32Bを介して表面シート11と裏面シート12の内面同士が接合された形態である。
【0061】
図9,10に、
図8に示す形態の変形例を示す。
図9,10に示す形態では、シール部31は、各袋状部の上下方向に沿って隙間なく形成されている。当該シール部31は、シート21A,21B同士が接合されて形成されることが好適である。当該シール部31は、例えば、両面全域又は一部の領域にシーラント層を有する所謂両面ヒートシール性のシート21A,21Bを用いてヒートシール工程により形成される。なお、袋状部20A,20Bの幅方向他端部のみでシート21A,21Bがヒートシールされるように、例えば、シート21A,21Bが向かい合う面のシーラント層の軟化温度を、壁面シートと向かい合う面のシーラント層の軟化温度よりも高く設定することができる。また、シート21A,21B同士を接着剤で接合してもよい。
【0062】
図11に示すように、シール部31を設けて袋状部20A,20Bの幅方向他端部同士を接合することにより、開口部15をより広げ易くなる。例えば、幅方向他端部同士が接合されていない場合(第1の実施形態)よりも小さな力で開口部15をより大きく開くことが可能となる。第1の実施形態では、例えば、親指と人差し指の間隔を広げたときに各袋状部がその付け根等で外側に折れ曲がり各袋状部のみが外側に開く場合があるが、シール部31で幅方向他端部同士を固定して幅方向他端部が外側に開かないようにすることで、開口部15を広げる方向に力が作用し易くなる。これにより、開口部15の開口性がさらに向上する。
【0063】
さらに、各袋状部の上下方向に沿って隙間なくシール部31を形成することで、栄養剤を注入する際に、幅方向他端部から栄養剤が漏れることを防止できる。また、当該他端部領域があたかも漏斗様に機能し、当該シール部31に沿わして栄養剤を注入することが可能となる。
【0064】
<第3の実施形態>
図12〜
図16を参照し、第3の実施形態であるパウチ容器40について説明する。以下では、上記実施形態との相違点を主に説明し、上記実施形態と同様の構成には同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0065】
図12に示すように、パウチ容器40は、袋状部20A,20Bの上端縁に位置する端縁シール部23A,23Bに折曲形成部であるノッチ41A,41Bが設けられている点でパウチ容器30と異なる。ノッチ41A,41Bは、袋状部20A,20Bの幅方向中央部から幅方向他端部との間の袋状部内に挿入された指先が届かない位置、例えば、袋状部内に挿入された指先の位置と幅方向他端部との中間に形成されている。
【0066】
折曲形成部は、袋状部の剛性を局部的に低くして又は高くして上下方向に延びる折り曲げ部(例えば、折れ線等)を形成する機能を有する。折曲形成部としては、ノッチに限定されず、例えば、
図13に示す上下方向に沿ったミシン目線42、
図14に示す上下方向に沿ったシール部43であってもよい。また、ミシン目線42の代わりにハーフカット線を形成してもよく、
図15に示すように、シール部43の位置から幅方向他端部に亘って幅広のシール部44を形成してもよい。シール部43,44は、例えば、袋状部の内面同士をヒートシールすることにより形成できる。なお、ミシン目線42、シール部43,44等は、袋状部20Aだけでなく袋状部20Bにも形成されることが好適である。
【0067】
図16に示すように、袋状部20A,20Bに挿入される指先よりも前方にノッチ41A,41Bを設けることにより、開口部15の開口性をさらに向上させることができる。袋状部20A,20Bの指先よりも前方に位置する部分は、例えば、指先の位置から幅方向他端部にかけて湾曲する又は指先の位置で折れ曲がる(
図11参照)。そこで、ノッチ41A,41Bを設けることによって、それが形成された部分で袋状部20A,20Bが優先的に折れ曲がり、上下方向に沿った折れ線42A,42Bが形成され易い構成とする。これにより、指先よりも前方に位置する部分が、指に沿って折れ線42A,42Bの位置まで真っ直ぐに延び、開口部15がより広がり易くなる。開口部15の開口形状は、例えば、上から見ると略ホームベース状を呈する。
【0068】
<第4の実施形態>
図17を参照し、第4の実施形態であるパウチ容器50について説明する。
【0069】
パウチ容器50は、正面視略U字状の切り込み線25Aの代わりに、無端状の切り込み線52Aにより挿入口51Aが形成されている点(袋状部20Bについても同様)でパウチ容器30と異なる。即ち、挿入口51Aは、表面シート11を打ち抜いて形成された貫通孔であって、その縁部には舌片が存在しない。挿入口51Aは、正面視略楕円形状を呈し、その長軸は幅方向に沿っている。但し、挿入口51Aの形状は、これに限定されず、正面視真円形状や半円形状、四角形等の多角形状であってもよい。
【0070】
<第5の実施形態>
図18を参照し、第5の実施形態であるパウチ容器60について説明する。
【0071】
パウチ容器60は、袋状部20Aの幅方向一端部に端縁シール部23Aを設けず、幅方向一端部から指の挿入を可能にした挿入口61Aを有する点(袋状部20Bについても同様)でパウチ容器30と異なる。挿入口61Aは、幅方向に向いた開口部であって、表面シート11とシート21Aとの間に形成されている。袋状部20Aを構成する表面シート11の幅方向一端部には、切り欠き62Aを形成することができ、これにより、挿入口61Aを広げ易くなって指の挿入性が向上する。
【0072】
<第6の実施形態>
図19を参照し、第6の実施形態であるパウチ容器70について説明する。
【0073】
パウチ容器70は、容器上部の幅方向両側にカット部71,72が形成されて容器上部の幅が容器下部の幅よりも小さくなっている点、及び袋状部20Aに2つ挿入口を形成する切り込み線25A,73Aが設けられている点(袋状部20Bについても同様)でパウチ容器10と異なる。切り込み線73Aは、袋状部20Aの幅方向他端側に近接して形成されており、切り込み線25Aと同様に正面視略U字状を呈する。なお、切り込み線25Aは幅方向一端部側から指が挿入される設計であり、切り込み線73Aは幅方向他端部側から指が挿入される設計である。パウチ容器70は、上半分の幅が狭く各袋状部の幅方向長さも短いため、例えば、袋状部内に挿入される指先が幅方向中央部に位置する。或いは、幅方向中央部を超えて反対側の幅方向端部の近傍に位置する。これにより、例えば、開口部15を広げる力が開口部15の全幅に亘って作用し、小さな力で開口部15を大きく広げることができる。また、開口部15の開口状態を維持することがさらに容易となる。
【0074】
<第7の実施形態>
図20を参照し、第7の実施形態であるパウチ容器80について説明する。
【0075】
パウチ容器80は、パウチ容器70と同様の外形形状を有するが、チャック16よりも下方に袋状部20Aが設けられている点(袋状部20Bについても同様)でパウチ容器70と異なる。袋状部20Aは、例えば、表面シート11の内面にシート21Aが接合されて形成されている。そして、切り込み線25Aは、表面シート11に形成されている。一対の壁面シートのチャック16よりも上方に位置する部分には、充填部14の密封性をたかめるために端縁シール部13が形成されている。また、当該端縁シール部13とチャック16との間には、開封用のノッチ74が形成されている。
【0076】
なお、上記実施形態は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。例えば、上記では、袋状部形成シートを壁面シートの内面に設けて袋状部を形成する形態を例示したが、袋状部形成シートを壁面シートの外面に設けて袋状部を形成してもよい。
【0077】
<第8の実施形態>
図21〜
図23を参照し、第8の実施形態であるパウチ容器90について説明する。
【0078】
図21に示すように、パウチ容器90には、袋状部20Aの内面同士を接合する指掛け用シール部91Aが設けられている(袋状部20Bについても同様)。具体的には、挿入口24Aよりも幅方向他端側の上部に指掛け用シール部91Aが設けられている。指掛け用シール部91Aは、袋状部20Aの挿入口24Aよりも幅方向他端側であって、挿入口24Aの上端近傍に設けられることが好適である。また、指掛け用シール部91Aは、袋状部20Aにおいて、舌片26Aが内側に折り込まれたときに該舌片と干渉しない位置、即ち内側に折り込まれた舌片26Aよりも上部側に設けられることが好適である。なお、舌片26Aを有さない場合は、袋状部20Aの上半分、好ましくは袋状部20Aの上端から該袋状部の上下方向長さの1/3程度の範囲内に設けることが好ましい。
【0079】
指掛け用シール部91Aは、袋状部20Aの上端に沿って形成された端縁シール部23Aの一部が下部側に突出して設けられている。指掛け用シール部91は、挿入口24Aから挿入される親指が引っ掛かり易い形状であれば特に限定されず、例えば、
図21に示すように山型に突出した形状を有する。
【0080】
図22に示すように、パウチ容器90では、指掛け用シール部91Aに、親指の先を引っ掛けることができる。親指は人差し指よりも袋状部の奥まで入り難いが、指掛け用シール部91Aを設けたことで、袋状部20Aにおける親指の掛かりが良くなって開口部15を広げる方向に力が作用し易くなる。パウチ容器90は、特に手の小さな女性等の使用に有用である。
【0081】
図23に示すように、端縁シール部23Aから離れた位置にポイントシール部として、指掛け用シール部92Aを設けてもよい。この場合も、挿入口24Aの上端近傍であって、内側に折り込まれた舌片26Aよりも上部側に指掛け用シール部92Aを設けることが好適である。
【0082】
なお、上記実施形態は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。例えば、上記では、袋状部形成シートを壁面シートの内面に設けて袋状部を形成する形態を例示したが、袋状部形成シートを壁面シートの外面に設けて袋状部を形成してもよい。