特許第6242080号(P6242080)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242080
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】ナビゲーション装置および地図描画方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 11/60 20060101AFI20171127BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   G06T11/60 300
   G09B29/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-111550(P2013-111550)
(22)【出願日】2013年5月28日
(65)【公開番号】特開2014-232343(P2014-232343A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年2月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】阿部 誠
【審査官】 村松 貴士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−058530(JP,A)
【文献】 特開平11−237834(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/026909(WO,A1)
【文献】 特開2014−186570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 11/00 − 19/20
G09B 29/00 − 29/14
G01C 21/00 − 21/36
G01C 23/00 − 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オブジェクトの描画に必要な地図データを取得する地図データ取得手段と、
前記地図データに基づいて、前記オブジェクトに対応する画像情報を生成してフレームバッファに格納する描画手段と、
前記フレームバッファに格納された画像情報を読み出して表示装置に地図画像を表示する表示処理手段と、
前記フレームバッファと同じ大きさの作業領域を有する作業領域格納手段と、
を備え、前記描画手段は、前記オブジェクトの外形と、前記オブジェクトを所定方向にずらした後の外形とで挟まれた領域であって前記オブジェクトに含まれる領域を、前記オブジェクトの陰影領域として陰影を示す画像情報を生成するものであって、前記作業領域格納手段の作業領域を用いて、前記オブジェクトに対応する第1の画像を影色で生成するとともに、前記オブジェクトの位置を所定方向にずらした第2の画像を透明色で生成して前記第1の画像に上書きすることにより、前記オブジェクトに対応する陰影の画像を生成することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記オブジェクトは、背景画像に含まれる水系のオブジェクトであることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記所定方向は、表示画面における右下の方向であることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、
前記描画手段は、前記オブジェクトを示す描画処理を行った後、この描画結果に前記陰影の画像を上書きすることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
オブジェクトの描画に必要な地図データを地図データ取得手段によって取得する地図データ取得ステップと、
前記地図データに基づいて、前記オブジェクトに対応する画像情報を生成してフレームバッファに格納する動作を描画手段によって行う描画ステップと、
前記フレームバッファに格納された画像情報を読み出して表示装置に地図画像を表示する動作を表示処理手段によって行う表示処理ステップと、
を有し、前記描画ステップにおいて、前記描画手段は、前記オブジェクトの外形と、前記オブジェクトを所定方向にずらした後の外形とで挟まれた領域であって前記オブジェクトに含まれる領域を、前記オブジェクトの陰影領域として陰影を示す画像情報を生成するものであって、作業領域格納手段が有する作業領域であって前記フレームバッファと同じ大きさの作業領域を用いて、前記オブジェクトに対応する第1の画像を影色で生成するとともに、前記オブジェクトの位置を所定方向にずらした第2の画像を透明色で生成して前記第1の画像に上書きすることにより、前記オブジェクトに対応する陰影の画像を生成することを特徴とする地図描画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両位置周辺の地図画像等を表示するナビゲーション装置および地図描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水域を表す特定背景ポリゴンを立体的に表示するために、特定背景ポリゴンをその重心位置を中心として縮小変換して表示するとともに、その縮小変換後のポリゴンと縮小変換前の特定背景ポリゴンとに挟まれた領域を枠ポリゴンとして表示するようにしたナビゲーション装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このナビゲーション装置では、特定背景ポリゴンの上面と枠ポリゴンで示す側面に、所定位置の光源の下で特定背景ポリゴンの見え方を想定して、陰影を表す色が付加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−58530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、最も簡単には、建物等の図形を斜め方向にずらして陰影を付加することができるが、この方法では水系の特定形状、例えば海に細長い桟橋が突き出したような場合の海の形状を斜め方向にずらすと細長い桟橋が陰影で上書きされて隠れてしまうという問題があった。これに対し、特許文献1に開示されたナビゲーション装置では、海の形状に対して縮小して陰影を生成することになるためこのような不都合はないが、陰影を付加するために縮小処理を行う必要があり、処理が複雑になるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、地図表示を行う際にオブジェクトの周囲の画像が隠れることなく簡単な処理によってオブジェクトに陰影を付加することができるナビゲーション装置および地図描画方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明のナビゲーション装置は、オブジェクトの描画に必要な地図データを取得する地図データ取得手段と、地図データに基づいて、オブジェクトに対応する画像情報を生成してフレームバッファに格納する描画手段と、フレームバッファに格納された画像情報を読み出して表示装置に地図画像を表示する表示処理手段と、フレームバッファと同じ大きさの作業領域を有する作業領域格納手段とを備え、描画手段は、オブジェクトの外形と、オブジェクトを所定方向にずらした後の外形とで挟まれた領域であってオブジェクトに含まれる領域を、オブジェクトの陰影領域として陰影を示す画像情報を生成するものであって、作業領域格納手段の作業領域を用いて、オブジェクトに対応する第1の画像を影色で生成するとともに、オブジェクトの位置を所定方向にずらした第2の画像を透明色で生成して第1の画像に上書きすることにより、オブジェクトに対応する陰影の画像を生成している。
【0007】
また、本発明の地図描画方法は、オブジェクトの描画に必要な地図データを地図データ取得手段によって取得する地図データ取得ステップと、地図データに基づいて、オブジェクトに対応する画像情報を生成してフレームバッファに格納する動作を描画手段によって行う描画ステップと、フレームバッファに格納された画像情報を読み出して表示装置に地図画像を表示する動作を表示処理手段によって行う表示処理ステップとを有し、描画ステップにおいて、描画手段は、オブジェクトの外形と、オブジェクトを所定方向にずらした後の外形とで挟まれた領域であってオブジェクトに含まれる領域を、オブジェクトの陰影領域として陰影を示す画像情報を生成するものであって、作業領域格納手段が有する作業領域であってフレームバッファと同じ大きさの作業領域を用いて、オブジェクトに対応する第1の画像を影色で生成するとともに、オブジェクトの位置を所定方向にずらした第2の画像を透明色で生成して第1の画像に上書きすることにより、オブジェクトに対応する陰影の画像を生成している。特に、上述したオブジェクトは、背景画像に含まれる水系のオブジェクトであることが望ましい。
【0008】
これにより、細い桟橋等の陸地部分に対応する形状が一部に含まれる水系のオブジェクトであっても、この陸地部分を遮蔽することなく、オブジェクトに陰影を付加することが可能となる。また、オブジェクトを所定方向にずらして陰影を示す画像情報を生成しているため、画像の縮小を行う場合に比べて簡単な処理による陰影の生成が可能となる。
【0009】
また、陰影を付加するオブジェクトが複数の図葉にわたって存在する場合であっても、図葉の境界位置に関係なく陰影部分のみを正確に生成することができるため、図葉が分かれることにより、境界部分で表示が不自然になることを防止することができる。
【0010】
上述した所定方向は、表示画面における右下の方向であることが望ましい。これにより、水系のオブジェクトが地面よりも窪んだ状態をオブジェクトの左上に陰影を付加することで表現することができる。
【0011】
また、上述した描画手段は、オブジェクトを示す描画処理を行った後、この描画結果に陰影の画像を上書きすることが望ましい。これにより、陰影付加の対象となるオブジェクトだけでなく、それ以外のオブジェクトについても並行して描画処理を行い、その後で陰影画像を付加することができるため、処理手順を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態のナビゲーション装置の詳細構成を示す図である。
図2】水系のオブジェクトに陰影を付加する動作手順を示す流れ図である。
図3図2に示した動作手順にしたがった描画状態の説明図である。
図4図2に示した動作手順にしたがった描画状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態のナビゲーション装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態のナビゲーション装置の構成を示す図である。図1に示すナビゲーション装置は、ナビゲーションコントローラ1、地図データ記憶装置3、操作部4、車両位置検出部5、表示装置6、オーディオ部7を含んで構成されている。このナビゲーション装置は、車両に搭載されている。
【0014】
ナビゲーションコントローラ1は、CPU、ROM、RAM等を用いて所定の動作プログラムを実行することにより、自車位置周辺の地図画像表示動作や施設検索動作、経路探索・誘導動作などの各種機能を実現する。ナビゲーションコントローラ1の詳細構成については後述する。
【0015】
地図データ記憶装置3は、地図表示、施設検索、経路探索などに必要な地図データが格納されている記憶媒体およびその読み取り装置である。この地図データ記憶装置3には、経度および緯度で適当な大きさに区切られた矩形形状の図葉を単位とした地図データが格納されている。各図葉の地図データは、図葉番号を指定することにより特定され、読み出すことが可能となる。
【0016】
この地図データは、経緯度で表現された点(ノード)の座標集合で表されており、また、道路は2以上のノードの連結からなり、2つのノードを連結した部分はリンクと呼ばれる。地図データは、道路リスト、ノードテーブル、交差点構成ノードリスト、交差点ネットリスト等からなるマップマッチング用及び経路探索用の道路データ、地図画面上に道路、公園、河川、目印となる建物や施設等の各種物件を表示するための背景データ、市町村名などの行政区画名、道路名、交差点名、建物の名前等の文字や地図記号等を表示するための文字・記号データなどから構成されている。
【0017】
地図データを構成する各種データのうち本発明に関連するのは背景データであり、そのデータ構造について特に図示はしないが、背景データには、海や湖などの水系ポリゴンや、森林、田、畑、建物密集地などの土地利用ポリゴン、行政界を表す住所ポリゴン、建物を表す建物ポリゴンや施設の敷地を表す敷地ポリゴンなどの多種多様な形状データが含まれる。
【0018】
地図データ記憶装置3は、ハードディスク装置や半導体メモリによって、あるいは、DVDとその読み取り装置によって実現される。また、地図データ記憶装置3を通信装置に置き換えて、外部の地図配信サーバ(図示せず)から地図データを取得するようにしてもよい。
【0019】
操作部4は、利用者の指示(操作)を受け付けるためのものであり、各種の操作ボタンや操作つまみ類を備えている。また、操作部4は、表示装置6の画面に取り付けられたタッチパネルを含んでおり、画面上の一部を直接利用者が指等で指し示すことにより、操作指示を行うことができるようになっている。車両位置検出部5は、例えば、GPS受信機、方位センサ、距離センサなどを備えており、所定のタイミングで車両位置(経度、緯度)の検出を行い、検出結果を出力する。
【0020】
表示装置6は、例えばLCD(液晶表示装置)によって構成されており、ナビゲーションコントローラ1から出力される映像信号に基づいて自車位置周辺の地図画像や交差点案内画像、あるいは、施設検索によって得られた施設やその周辺駐車場が含まれる検索結果画像などを表示する。例えば、この表示装置6は、ダッシュボード中央あるいはダッシュボード上に配置されたナビゲーション装置の筐体と一体になっている。なお、表示装置6は、ナビゲーション装置の筐体とは分離し、運転者の見やすい位置に離して配置するようにしてもよい。オーディオ部7は、ナビゲーションコントローラ1から入力される音声信号に基づいて生成した案内音声等を車室内に出力する。
【0021】
次に、ナビゲーションコントローラ1の詳細構成について説明する。図1に示すナビゲーションコントローラ1は、地図バッファ10、地図読出制御部12、地図描画部14、車両位置計算部20、目的地設定部22、経路探索処理部24、経路誘導処理部26、入力処理部30、表示処理部40を含んで構成されている。
【0022】
地図バッファ10は、地図データ記憶装置3から読み出された地図データを一時的に格納する。地図読出制御部12は、車両位置計算部20により算出される車両位置や利用者が操作部4を操作して指定した位置に応じて、所定範囲の地図データの読み出し要求を地図データ記憶装置3に出力する。地図描画部14は、地図バッファ10に格納された地図データに基づいて、表示装置6に地図画像を表示するために必要な描画処理を行って地図画像描画データを作成する。地図描画部14の詳細については後述する。
【0023】
車両位置計算部20は、車両位置検出部5から出力される検出データに基づいて自車位置を計算するとともに、計算した自車位置が地図データの道路上にない場合には、自車位置を修正するマップマッチング処理を行う。
【0024】
目的地設定部22は、経路探索処理の目的地を設定する。例えば、目的地設定部22は、利用者によって指定される検索条件を満足する施設を検索して目的地として設定する。経路探索処理部24は、出発地と目的地(あるいは経由地)との間を所定の探索条件にしたがって結ぶ走行経路(誘導経路)を探索する。経路誘導処理部26は、経路探索処理部24による探索処理によって得られた誘導経路を地図上に重ねて表示したり、右左折交差点の拡大図を表示するための誘導経路描画データを作成するとともに、誘導経路に沿って車両を誘導するために必要な交差点案内等の音声信号を生成する。
【0025】
入力処理部30は、操作部4から入力される各種の操作指示に対応する動作を行うための命令をナビゲーションコントローラ1内の各部に向けて出力する。表示処理部40は、地図描画部14によって作成される地図画像描画データが入力されており、この描画データに基づいて所定範囲の地図画像を表示装置6の画面に表示する。
【0026】
次に、地図描画部14の詳細について説明する。図1に示すように、地図描画部14は、ポリゴン演算部50、53、テクスチャ処理部51、55、フレームメモリ52、描画位置オフセット部54、作業用メモリ56、影上書き処理部57、初期化処理部58、文字・記号情報描画部59、アイコン描画部60を備えている。本実施形態では、表示対象となる地図画像は、背景画像とその上に表示される文字・記号情報およびアイコンによって構成されているものとする。また、背景画像には、海や湖等の水系と、道路や建物、森林等の陸系とが含まれている。これらの領域の各構成要素はポリゴンによって表現され、各ポリゴンに対してテクスチャ画像を貼り付けるテクスチャマッピングの処理を行うことによって背景画像が生成される。また、この背景画像上に、地名や地図記号等の文字・記号情報と、表示が指示された特定施設を示すアイコン画像とが重ねて合成されて、地図画像が生成される。
【0027】
ポリゴン演算部50は、背景画像の水系と陸系のそれぞれのオブジェクトを構成する各ポリゴンの頂点座標を計算する。テクスチャ処理部51は、計算されたポリゴンの頂点座標に基づいて、各ポリゴンにテクスチャ画像を貼り付けるテクスチャマッピング処理を行う。例えば、背景画像の一部に海を表す水系のオブジェクトが含まれる場合には、テクスチャ処理部51は、この水系のオブジェクトを構成するポリゴンに対して、海をイメージする色彩のテクスチャ画像(青色の画像)を貼り付ける処理を行って、背景画像に対応する地図画像描画データを生成する。この地図画像描画データは、フレームメモリ52に格納される。フレームメモリ52は、現在の表示縮尺に対応する複数の図葉について地図画像描画データを格納する。例えば、自車位置周辺の地図画像表示を行う際には、自車位置が含まれる図葉と、その周囲に配置される8枚の図葉の合計9枚分の図葉について生成された地図画像描画データが格納される。
【0028】
ポリゴン演算部53は、背景画像に水系のオブジェクトが含まれる場合に、この水系のオブジェクトを構成するポリゴンの頂点座標を計算する。水系のオブジェクトの場合のポリゴンの頂点座標の計算自体はポリゴン演算部50と同じなので、その計算結果を用いることによりポリゴン演算部53を省略してもよい。描画位置オフセット部54は、ポリゴン演算部53によって計算された水系のオブジェクトのポリゴンの頂点座標を右下(表示画面における右下)にオフセット、すなわち頂点位置を右下にシフトする。テクスチャ処理部55は、ポリゴン演算部53によって計算されたポリゴンの頂点座標に基づいて、各ポリゴンに影色のテクスチャ画像を貼り付けるテクスチャマッピング処理を行う。また、テクスチャ処理部55は、描画位置オフセット部54によるオフセット後の頂点座標に基づいて、各ポリゴンに透明色のテクスチャ画像を貼り付けるテクスチャマッピング処理を行う。作業用メモリ56は、フレームメモリ52と同じ大きさおよび格納位置を有し、テクスチャ処理部55によって生成された影色あるいは透明色の描画データを格納する。影上書き処理部57は、作業用メモリ56に格納された描画データをフレームメモリ52に格納された描画データに上書きする処理を行う。初期化処理部58は、作業用メモリ56を透明色で初期化する。具体的には、全ての格納領域に透明色の画像データが書き込まれて初期化が行われる。
【0029】
文字・記号情報描画部59は、描画範囲の地図画像上に重ねて表示される地名や建物名称等の各種の文字情報画像を描画する。アイコン描画部60は、表示が指示された特定施設のアイコン画像(例えば、コンビニエンスストアのアイコン表示が指示されている場合にはコンビニエンスストアの種類に応じた各種形状を有するアイコン画像)を描画する。これらの文字情報画像やアイコン画像は、フレームメモリ52に格納された背景画像に対応する地図画像描画データに重ねられる。
【0030】
上述した地図データ記憶装置3、地図バッファ10が地図データ取得手段に、地図描画部14が描画手段に、表示処理部40が表示処理手段にそれぞれ対応する。また、地図データ記憶装置3および地図バッファ10を用いて地図データを取得する動作が地図データ取得ステップの動作に、地図描画部14による描画処理(具体的には、後述する図2に示された動作)が描画ステップの動作に、表示処理部40を用いて地図画像を表示する動作が表示処理ステップの動作にそれぞれ対応する。
【0031】
本実施形態のナビゲーション装置はこのような構成を有しており、次に、水系のオブジェクトに陰影を付加する描画処理について説明する。図2は、水系のオブジェクトに陰影を付加する動作手順を示す流れ図である。また、図3および図4は、図2に示した動作手順にしたがった描画状態の説明図である。
【0032】
まず、ポリゴン演算部50は、背景画像の水系のオブジェクトを構成する各ポリゴンの頂点座標を計算する。また、テクスチャ処理部51は、計算されたポリゴンの頂点座標に基づいて、各ポリゴンに水系であることを示すテクスチャ画像を貼り付けるテクスチャマッピング処理を行う。このようにして、水系のオブジェクトに対応する描画処理が行われ、その描画結果がフレームメモリ52に書き込まれる(ステップ100)。なお、水系以外のオブジェクトが含まれる場合には、水系以外のオブジェクトについても並行して描画処理が行われ、描画結果がフレームメモリ52に書き込まれる。
【0033】
次に、初期化処理部58は、作業用メモリ56(作業領域)を透明色の画像データで初期化する(ステップ102)。また、ポリゴン演算部53は、水系のオブジェクトを構成する各ポリゴンの頂点座標を計算し、テクスチャ処理部55は、計算されたポリゴンの頂点座標に基づいて、各ポリゴンに影色を示すテクスチャ画像を貼り付けるテクスチャマッピング処理を行う。これにより、水系のオブジェクトが影色で描画され(ステップ104)、描画結果が作業用メモリ56に格納される。
【0034】
次に、描画位置オフセット部54は、ポリゴン演算部53によって計算された水系のオブジェクトのポリゴンの頂点座標を右下にオフセットする(ステップ106)。また、テクスチャ処理部55は、オフセット後の頂点座標に基づいて、各ポリゴンに透明色のテクスチャ画像を貼り付けるテクスチャマッピング処理を行う。これにより、右下に位置がずらされた水系のオブジェクトが透明色で描画され(ステップ108)、描画結果が作業用メモリ56に上書きされて格納される。
【0035】
ステップ104、108の2回の描画処理によって、水系のオブジェクトの左上の内側に沿って影を示す画像が生成される。影上書き処理部57は、生成された影画像を作業用メモリ56から読み出し、フレームメモリ52の対応位置に上書きする(ステップ110)。
【0036】
このように、本実施形態のナビゲーション装置では、細い桟橋等の陸地部分に対応する形状が一部に含まれる水系のオブジェクトであっても、この陸地部分を遮蔽することなく、オブジェクトに陰影を付加することが可能となる。また、オブジェクトを所定方向にずらして陰影を示す画像情報を生成しているため、画像の縮小を行う場合に比べて簡単な処理による陰影の生成が可能となる。
【0037】
また、陰影を付加するオブジェクトが複数の図葉にわたって存在する場合であっても、図葉の境界位置に関係なく陰影部分のみを正確に生成することができるため、図葉が分かれることにより、境界部分で表示が不自然になることを防止することができる。
【0038】
また、表示画面における右下の方向に、陰影を生成するためにオブジェクトをずらしている。これにより、水系のオブジェクトが地面よりも窪んだ状態をオブジェクトの左上に陰影を付加することで表現することができる。
【0039】
また、陰影付加の対象となるオブジェクトだけでなく、それ以外のオブジェクトについても並行して描画処理を行い、その後で陰影画像を付加することができるため、処理手順を簡略化することができる。
【0040】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、ポリゴンで表された水系のオブジェクトの画像に陰影を付加する場合について説明したが、ポリゴン以外で表されたオブジェクト画像に陰影を付加する場合にも本発明を適用することができる。また、水系以外のオブジェクトに陰影を付加するようにしてもよい。
【0041】
また、上述した実施形態では、フレームメモリ52とは別に作業用メモリ56を備えるようにしたが、フレームメモリ52の一部を作業用メモリ56として用いるようにしてもよい。
【0042】
また、上述した実施形態では、太陽が地図画像の左上上空に存在する場合を想定して水系のオブジェクトの陰影をこのオブジェクトの左上に生成したが、太陽の想定位置が変更される場合には陰影の位置を適宜変更すればよい。また、水系以外の地面より高いオブジェクト(例えば、建物)については、同じ手法でオブジェクトの右上に生成された陰影を明るい色にすることにより、地面よりも高いオブジェクトの一方の面に光が当たった様子を表すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
上述したように、本発明によれば、細い桟橋等の陸地部分に対応する形状が一部に含まれる水系のオブジェクトであっても、この陸地部分を遮蔽することなく、オブジェクトに陰影を付加することが可能となる。また、オブジェクトを所定方向にずらして陰影を示す画像情報を生成しているため、画像の縮小を行う場合に比べて簡単な処理による陰影の生成が可能となる。
【符号の説明】
【0044】
1 ナビゲーションコントローラ
3 地図データ記憶装置
6 表示装置
10 地図バッファ
12 地図読出制御部
14 地図描画部
20 車両位置計算部
40 表示処理部
、50、53 ポリゴン演算部
51、55 テクスチャ処理部
52 フレームメモリ
54 描画位置オフセット部
56 作業用メモリ
57 影上書き処理部
58 初期化処理部
59 文字・記号情報描画部
60 アイコン描画部
図1
図2
図3
図4