(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
湾曲可能な湾曲部を有する長尺な挿入部を備え、前記湾曲部は、管状に形成されて前記湾曲部の先端側に配置され、前記湾曲部を湾曲操作するための線状部材の先端部が取り付けられた支持部材を有する内視鏡装置を製造する内視鏡装置の製造方法であって、
前記支持部材の内周面に、前記支持部材の管路側に突出するように形成された突出部と前記支持部材との間に形成される隙間に前記線状部材の先端部を配置する配置工程と、
前記支持部材および前記突出部が、前記線状部材を径方向に挟むように押圧して回転冷間鍛造により塑性変形し、前記支持部材および前記突出部に前記線状部材の先端部を固定する固定工程と、
を備えることを特徴とする内視鏡装置の製造方法。
【背景技術】
【0002】
内視鏡装置の挿入部には、被観察体へ挿入部を容易に挿入できるようにするために、湾曲操作可能な湾曲部が設けられている場合がある。湾曲部は、一般的に以下のように構成されている。すなわち、管状に形成された支持部材の基端側に複数の節輪が揺動可能に接続されている。支持部材の管路には、湾曲部を湾曲操作するための操作ワイヤ(線状部材)の先端部が固定されている。操作ワイヤは基端側に延び、挿入部の基端部に設けられた操作部に固定されている。
【0003】
このように構成された湾曲部において、支持部材に操作ワイヤを固定するための様々な方法が検討されている。
例えば、支持部材の一部を管路側に切り起こし、その切り起こした部分に操作ワイヤの先端部を当接させる。そして、当接部にフラックスを塗布した後で、ろう材を用いて支持部材に操作ワイヤをろう接するものがある。
他の方法として、操作ワイヤの先端部に筒状の止め部材を形成し、この止め部材を支持部材に嵌め込んで固定する方法がある。
【0004】
さらに別の方法として、特許文献1に記載された内視鏡装置では、操作ワイヤを中央部付近で互いに反対方向に複数回螺線に巻いて螺線部を形成している。螺線部は、モールド加工、接着などにより筒状体に形成されている。筒状体を嵌める先端硬性部(支持部材)は管状に形成されていて、その長手方向の中間部に鍔部が設けられている。鍔部には、操作ワイヤを通す通孔が形成されている。先端硬性部における鍔部よりも基端側には、通孔に連続する溝が形成されている。
先端硬性部の鍔部に筒状体を係合させ、操作ワイヤを鍔部の通孔に挿通させるとともに溝内に配置し、内視鏡装置の操作部に操作ワイヤを連結させている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された内視鏡装置では、操作ワイヤの形状を複雑に加工する必要がある。
また、ろう接により接続する方法は、フラックスが腐食性を有するため、接続後にフラックスを洗浄することが必要になる。ろう材の濡れ広がりは制御が難しく高い技能が必要なうえに、ろう材が不要な部分に、ろう材の流れ出しを除去するための加工が必要になるという問題がある。
一方で、嵌め込みによる固定は、支持部材内に止め部材を嵌め込むためのスペースが必要となり、挿入部内に撮像素子などを組み込むスペースが少なくなったり、止め部材を筒状に形成する必要があったりする。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、支持部材に線状部材の先端部を簡単かつ確実に固定した内視鏡装置、および支持部材に線状部材の先端部を簡単かつ確実に固定できる内視鏡装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の内視鏡装置は、湾曲可能な湾曲部を有する長尺な挿入部を備える内視鏡装置であって、前記湾曲部は、管状に形成されて前記湾曲部の先端側に配置され、線状部材の先端部が固定された支持部材を有し、前記支持部材の内周面には、前記支持部材の管路側に突出する突出部が形成され、前記支持部材および前記突出部が前記線状部材の先端部を前記線状部材
の径方向に挟むように押圧して
回転冷間鍛造により塑性変形することで、前記支持部材および前記突出部に前記線状部材の先端部が固定されていることを特徴としている。
【0010】
また、上記の内視鏡装置において、前記支持部材と前記突出部との間に形成される隙間は、前記挿入部の長手方向に沿って延びるように形成されていることがより好ましい。
また、上記の内視鏡装置において、前記突出部における突出方向先端部と前記支持部材とを接続する接続部を有することがより好ましい。
また、上記の内視鏡装置において、前記線状部材は、複数の素線を前記線状部材の延在方向に螺線状に縒り合わせることで構成されていることがより好ましい。
【0011】
また、上記の内視鏡装置において、前記線状部材の先端部は、前記支持部材にカシメ付けられていることがより好ましい。
【0012】
また、本発明の内視鏡装置の製造方法は、湾曲可能な湾曲部を有する長尺な挿入部を備え、前記湾曲部は、管状に形成されて前記湾曲部の先端側に配置され、前記湾曲部を湾曲操作するための線状部材の先端部が取り付けられた支持部材を有する内視鏡装置を製造する内視鏡装置の製造方法であって、前記支持部材の内周面に、前記支持部材の管路側に突出するように形成された突出部と前記支持部材との間に形成される隙間に前記線状部材の先端部を配置する配置工程と、前記支持部材および前記突出部
が、前記線状部材を径方向に挟むように押圧して
回転冷間鍛造により塑性変形
し、前記支持部材および前記突出部に前記線状部材の先端部を固定する固定工程と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の内視鏡装置によれば、支持部材に線状部材の先端部を簡単かつ確実に固定したものとすることができる。また、本発明の内視鏡装置の製造方法によれば、支持部材に線状部材の先端部を簡単かつ確実に固定することができる。支持部材に線状部材を固定する際にろう接を用いないため、フラックスの洗浄やろう材の流れ出しを除去するための加工が不要となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る内視鏡装置の第1実施形態を、
図1から
図9を参照しながら説明する。
図1に示すように、本内視鏡装置1は、長尺で可撓性を有する挿入部10と、挿入部10が外周面に沿って巻回される略円筒状のドラム100とを備えている。また、本発明に必須ではないが、本内視鏡装置1は、ドラム100を収納するケース110を備えている。
【0017】
挿入部10は、挿入部10の先端部に設けられた先端硬質部20と、先端硬質部20の基端側に設けられ湾曲可能な湾曲部30と、湾曲部30の基端側に設けられ可撓性を有する可撓管部40とを有している。
先端硬質部20には、先端側に向けて配置された結像レンズ群21と、先端硬質部20の内部において結像レンズ群21から入射した像が結像され、この像による映像を取得するCCDあるいはCMOSエリアイメージセンサを有する固体撮像装置(不図示)と、結像レンズ群21の周囲に配置されたLED等の発光装置を有する照明部22とを備える。
【0018】
前述の固体撮像装置に結像された被観察体の画像情報を、図示しない信号線を通じて例えばケース110などに組み込まれた操作部111において表示できるようになっている。操作部111には、例えばLCD等のディスプレイ装置112を有する構成を採用することができる。
操作部111は、後述するように湾曲部30の湾曲操作もできるようになっている。
【0019】
図2および
図3に示すように、湾曲部30は、湾曲部30の先端側に配置された先リング(支持部材)31と、先リング31に対して径方向に対向する2カ所で先リング31の壁部に揺動自在に連結された複数の湾曲駒32と、複数の湾曲駒32のうちの最も基端側の湾曲駒32に対して径方向に対向する2カ所で揺動自在に連結された基リング33とを備える。
【0020】
先リング31、湾曲駒32、および基リング33は、それぞれ管状に形成されている。
先リング31の基端部には、先端部より縮径した段部31aが形成されている。
図3および
図4に示すように、先リング31の基端部の内周面には、一対の肉厚部36が対向するように形成されている。それぞれの肉厚部36は、先リング31の内周面から先リング31の管路側に突出する突出部37と、突出部37における突出方向先端部と、先リング31と接続する接続部38とを有している。この例では、突出部37は後述する操作ワイヤ51に沿って湾曲するように形成されている。
先リング31、突出部37、および接続部38に囲まれることで形成された透孔(隙間)36aは、挿入部10の長手方向に見たときに、挿入部10の径方向に潰れた楕円形状に形成されるとともに、長手方向に沿って延びるように形成されている。
先リング31および突出部37は、操作ワイヤ(線状部材)51の先端部を操作ワイヤ51の径方向に挟むように押圧している。先リング31、突出部37、および接続部38は、ステンレス鋼などの金属で一体に形成されている。
【0021】
ここで、操作ワイヤ51について説明する。
図5に示すように、操作ワイヤ51は、複数の素線51aを、操作ワイヤ51の延在方向に螺線状に縒り合わせることで構成されている。本実施形態では、操作ワイヤ51は、素線51aを、構成記号「1×7」で表される7本縒りにすることで形成されている。
先リング31および突出部37は、操作ワイヤ51を押圧することで塑性変形し、先リング31および突出部37の一部が、隣り合う素線51aの間に入り込んでいる(
図5参照。)。この例では、先リング31および突出部37の変形は、後述するスウェージング加工により行われる。操作ワイヤ51は、
図3に示すように先端部が肉厚部36の先端部に一致するように、肉厚部36の透孔36a内に配置されている。
操作ワイヤ51の素線51aと、先リング31および突出部37とが係合することで、先リング31に操作ワイヤ51を固定している。
【0022】
湾曲駒32および基リング33の内周面には、
図2に示すように、ワイヤ支持部32a、33aがそれぞれ設けられている。湾曲駒32および基リング33の外径は、先リング31の段部31aの外径にほぼ等しく設定されている。
ワイヤ支持部32a、33aは、内部に挿通された操作ワイヤ51を支持している。
操作ワイヤ51の基端部は、可撓管部40を通して前述の操作部111まで延びている。操作ワイヤ51の基端部は、操作部111に設けられた不図示の湾曲モータにより、挿入部10に対して進退可能となっている。操作部111を操作して湾曲モータを駆動し操作ワイヤ51を進退させることで、挿入部10の軸線Cに直交する直交方向Dに湾曲部30を湾曲操作することができる
図2および
図3に示すように、先リング31の段部31a、湾曲駒32、および基リング33は外套シース53に覆われている。外套シース53は、例えば、ワイヤを編んだブレードと、ブレードを覆うゴムとで構成されている。
【0023】
次に、以上のように構成された内視鏡装置1を製造する本実施形態の内視鏡装置1の製造方法について説明する。
以下では、湾曲部30に重点をおき、湾曲部30が外套シース53に覆われていなく、先リング31、湾曲駒32、および基リング33が互いに連結されている状態からの製造方法について説明する。
なお、このときには、先リング31の透孔36aは、挿入部10の長手方向に見たときに操作ワイヤ51の外径より大きな直径の円形状に形成されている。
【0024】
まず、
図4および
図6に示すように、先リング31内に鉄鋼などの金属で形成された支持用治具G10を挿入する。支持用治具G10は、挿入部10の長手方向に見たときに、先リング31の内周面および肉厚部36に沿うように、略円柱状に形成されている。支持用治具G10の先端部には、一対の肉厚部36に対応する形状に凹んだ凹部G11が形成されている。
突出部37と先リング31との間に操作ワイヤ51の先端部を配置する。長手方向において操作ワイヤ51の先端部が肉厚部36の先端部に一致するように、肉厚部36の透孔36a内に操作ワイヤ51を配置する(配置工程)。
【0025】
次に、スウェージング加工(回転冷間鍛造)により、
図6に示すように先リング31に対してダイスG20を軸線C周りに相対的に回転させながらダイスG20で先リング31を径方向内側に押圧する。この加工には、公知のスウェージング機を用いることができる。
これにより、ダイスG20および支持用治具G10に挟まれた先リング31および突出部37を、
図3に示すように操作ワイヤ51を操作ワイヤ51自身の径方向に挟むように押圧して塑性変形させ、先リング31および突出部37に操作ワイヤ51の先端部を固定する(固定工程)。このとき、透孔36aにおける内径の最も小さな部分が、操作ワイヤ51の外径より小さくなるように変形させる。
続いて、先リング31の段部31a、湾曲駒32、および基リング33を外套シース53で覆う。
以上の工程により、本内視鏡装置1が製造される。
【0026】
このように構成され、製造された内視鏡装置1の使用時の動作について説明する。
操作者は操作部111を操作して、照明部22により挿入部10の前方を照明するとともに、ディスプレイ装置112に表示された画像を確認しながら、配管などの被観察体内に挿入部10を挿入していく。
挿入部10の先端が配管における折れ曲がり部に達したときに、操作部111を操作して湾曲部30を適宜湾曲させる。このとき、湾曲モータにより操作ワイヤ51が牽引されるが、突出部37と先リング31との間に操作ワイヤ51が固定されているため、操作ワイヤ51が牽引される力は先リング31に確実に伝達され、湾曲部30が湾曲する。
操作ワイヤ51の先端部が固定されている透孔36aは、挿入部10の長手方向に沿って延びるように形成されているため、操作ワイヤ51の先端部もこの長手方向に沿って配置されている。したがって、操作ワイヤ51を長手方向に牽引する力を、摩擦などによる損失を抑えて効果的に先リング31に伝達することができる。
【0027】
配管の観察が終了したら、必要に応じて湾曲部30を湾曲させながら、配管から挿入部10を抜き出す。
【0028】
以上説明したように、本実施形態の内視鏡装置1および内視鏡装置1の製造方法によれば、先リング31および突出部37が、操作ワイヤ51の先端部を操作ワイヤ51の径方向に挟むように押圧して塑性変形している。先リング31に操作ワイヤ51を固定する際に、従来の固定方法とは異なりろう接を用いないため、フラックスの洗浄や、ろう材の流れ出しを除去するための加工が不要となる。これにより、先リング31および突出部37に操作ワイヤ51の先端部を簡単かつ確実に固定することができる。
【0029】
透孔36aは挿入部10の長手方向に沿って延びるように形成されている。先リング31と突出部37との間に固定される操作ワイヤ51の先端部の向きと、操作ワイヤ51における先端部よりも基端側との向きとがほぼ一致する。このため、操作ワイヤ51を牽引する力を、先リング31に効果的に伝達させることができる。
突出部37と先リング31と接続する接続部38を有しているため、突出部37と先リング31との間から操作ワイヤ51の先端部が挿入部10の周方向に外れるのを防止することができる。
【0030】
操作ワイヤ51は、複数の素線51aを螺線状に縒り合わせることで構成されている。隣り合う素線51aの間に入り込んだ先リング31および突出部37の一部により、操作ワイヤ51に対して先リング31および突出部37が挿入部10の長手方向に移動するのが規制される。これにより、操作ワイヤ51を牽引する力を、先リング31により効果的に伝達させることができる。
操作ワイヤ51は先リング31にスウェージング加工により固定されている。したがって、操作ワイヤ51の固定を精度を高めて確実に行うことができる。
【0031】
先リング31に段部31a設け、この段部31aより基端側を外套シース53で覆うことで、挿入部10の外径が大きくなるのを抑えることができる。
また、前述した従来の固定方法とは異なり操作ワイヤ51に止め部材を形成しないため、先リング31内のスペースを確保することができる。
【0032】
なお、本実施形態では、操作ワイヤ51の先端部が肉厚部36の先端部に一致するように配置した。しかし、肉厚部36の先端部に対して操作ワイヤ51の先端部が先端側に突出するように構成してもよい。このように構成することで、操作ワイヤ51を牽引したときに、肉厚部36の透孔36aから操作ワイヤ51が抜けてしまうのを抑制することができる。
また、肉厚部36の先端部に対して操作ワイヤ51の先端部が基端側に位置するように構成してもよい。操作ワイヤ51をこのように配置することで、挿入部10内に配置されたケーブルなどが操作ワイヤ51の先端部に接触して擦れることで傷つくのを防止することができる。
【0033】
本実施形態では、肉厚部36の構成を以下に示すように様々に変形させることができる。
図7に示すように、肉厚部36は接続部38を備えなくてもよい。この場合、先リング31と突出部37との間に形成される隙間は、肉厚部36における挿入部10の周方向となる部分に開口を有する溝部61となる。このように構成しても、先リング31と突出部37との間で操作ワイヤ51を挟むことにより、先リング31に操作ワイヤ51を固定することができる。
【0034】
また、
図8に示すように、先リング31に、挿入部10の周方向に隣り合う肉厚部36同士を接続する第二の接続部63を備えてもよい。この例では、一対の肉厚部36の間に第二の接続部63をそれぞれ備え、一対の肉厚部36と一対の第二の接続部63とで全体として筒状の部材を形成している。このように構成することで、先リング31の基端部の剛性を高めることができる。
【0035】
図9に示すように、先リング31が、肉厚部36に代えて、肉厚部66を備えるように構成してもよい。この肉厚部66は、先リング31の内周面から先リング31の管路側に突出する一対の突出部67により構成されている。一対の突出部67は、互いに周方向に間隔を開けて配置され、一対の突出部67の間に、操作ワイヤ51の先端部を配置する溝部68が形成されている。この変形例では、一対の突出部67を操作ワイヤ51の先端部をその径方向に挟むように押圧して塑性変形させる、すなわち、カシメ付けることで、一対の突出部67に操作ワイヤ51の先端部を固定している。
この変形例によれば、スウェージング加工により操作ワイヤ51を固定した場合と同様の効果を奏することができる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図10から
図13を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図10および
図11に示すように、本実施形態の内視鏡装置の製造方法において、スウェージング加工する前の先リング71Aは、先リング71Aの外周面に凸部72を有している。凸部72は、各透孔36aに対する先リング71Aの径方向外側にそれぞれ形成されている。凸部72は、軸線C方向において透孔36aに重なる位置に、軸線C方向に延びるように形成されている。
なお、この先リング71Aには前述の段部31aは形成されていない。
【0037】
このように構成された先リング71Aを用いた本実施形態の内視鏡装置の製造方法について、先リング71Aの加工に重点をおいて説明する。
肉厚部36の透孔36a内に、操作ワイヤ51を配置する(配置工程)。先リング71A内に、前述の支持用治具G10を挿入する。
【0038】
スウェージング加工により、
図11に示すように先リング71Aに対してダイスG20を軸線C周りに相対的に回転させながらダイスG20で先リング71Aの凸部72を径方向内側に押圧する。このとき、
図10に示すように、凸部72が形成されていない先リング71Aの外周面である領域R内の外周面は径方向内側に押圧しないように、ダイスG20の押圧力や位置を調整する。
ダイスG20および支持用治具G10に挟まれた先リング71Aの凸部72および突出部37を、操作ワイヤ51を操作ワイヤ51自身の径方向に挟むように押圧して塑性変形させ、先リング71Aおよび突出部37に操作ワイヤ51の先端部を固定する(固定工程)。これにより、先リング71Aが変形して
図12に示す先リング71となる。先リング71では、凸部72は先リング71Aにおける凸部72に比べて径方向内側に塑性変形している。
【0039】
以上説明したように、本実施形態の内視鏡装置の製造方法によれば、先リング71に操作ワイヤ51を簡単かつ確実に固定することができる。
さらに、凸部72が先リング71Aの外周面から径方向外側に突出しているため、領域R内の先リング71Aの外周面に比べて凸部72がダイスG20により径方向内側に荷重を強めて押圧されるため、先リング71に操作ワイヤ51をより確実に固定することができる。
領域R内の先リング71Aの外周面は径方向内側に押圧しないため、固定工程における先リング71Aの変形を抑制することができる。
【0040】
なお、先リング71Aが前述の第二の接続部63を備える場合には、先リング76Aは
図13に示すようになる。この場合、先リング76A内に円柱状の支持用治具G15を挿入して、前述のような固定工程を行う。
【0041】
本実施形態では、固定工程において、領域R内の先リング71Aの外周面は径方向内側に押圧しないようにした。しかし、領域R内の先リング71Aの外周面を径方向内側に押圧してもよい。押圧力が比較的小さい場合には、先リング71Aはほとんど変形しないからである。
【0042】
以上、本発明の第1実施形態および第2実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
【0043】
例えば、前記第1実施形態および第2実施形態では、先リングの透孔は、挿入部の長手方向に沿って延びるように肉厚部に形成されているとしたが、透孔は長手方向に対して曲がって形成されてもよい。
図14に示すスウェージング加工する前の先リング81には、肉厚部36に透孔82が形成されている。透孔82は、肉厚部36の基端側に設けられ長手方向に沿って延びるように形成された基端側孔部82aと、肉厚部36の先端側に設けられ先端側に向かうにしたがって軸線Cから離間するように曲った先端側孔部82bとを有している。先端側孔部82bは、先端が先リング81の外周面に開口し、基端側孔部82aに連通している。
この先リング81は、図示はしないが、周方向に隣り合う肉厚部36同士を接続する前述の第二の接続部63を備えている。
【0044】
このように構成された先リング81を用いた本内視鏡装置の製造方法では、肉厚部36の透孔82内に、操作ワイヤ51を配置する(配置工程)。このとき、操作ワイヤ51の先端部を開口から外側に突出させてもよい。先リング81内に、前述の支持用治具G15を挿入する。
スウェージング加工により、先リング81に対してダイスG20を軸線C周りに相対的に回転させながらダイスG20で先リング81を径方向内側に押圧する。
すると、
図15に示すように、先リング81および肉厚部36が透孔82内に挿通された操作ワイヤ51を操作ワイヤ51の径方向に挟むように押圧して塑性変形する。これにより、透孔82の内径が操作ワイヤ51の外径よりも小さくなり、先リング81および肉厚部36に操作ワイヤ51の先端部を固定する(固定工程)。操作ワイヤ51の先端部は、先リング81の外周面に埋め込まれる。
【0045】
前記第1実施形態および第2実施形態では、操作ワイヤ51は、素線51aを7本縒りにすることで構成されていた。しかし、操作ワイヤの構成はこの限りでなく、素線51aを公知の3本縒りや、19本縒りにすることなどで構成してもよい。操作ワイヤとして、縒り線ではない、単線のワイヤを用いることもできる。
また、肉厚部36における挿入部10の径方向の長さが比較的長い場合などには、内視鏡装置の製造時において、支持用治具を用いなくてもよい。
【0046】
前記実施形態および変形例では、一対の操作ワイヤ51を備え、湾曲部30が直交方向Dに湾曲操作可能であるとした。しかし、湾曲駒32を直交方向Dだけでなく、直交方向Dおよび挿入部10の軸線Cにそれぞれ直交する第2の直交方向にも揺動可能となるように連結するとともに2対の操作ワイヤ51を備えることで、湾曲部30が直交方向Dおよび第2の直交方向にそれぞれ湾曲操作可能となるように構成してもよい。