(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記胴部は、該胴部が医療器具のチャネル内に挿入された状態において該チャネルの外側に位置する部分に、非円形の横断面形状を有する被把持部分を備える請求項1または請求項2に記載の医療装置。
前記センサによって前記医療器具および前記処置具のいずれも検出されない場合に、前記制御部が、前記医療器具、前記処置具または前記操作入力部の作動を制限する請求項12に記載の医療システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2のように、アクチュエータ等の駆動部を内蔵する操作入力部は重いため、使用中の様々な場面での操作性に問題がある。例えば、術者は、重い操作入力部を持ち続けなければならず、術者の疲労感が大きいという不都合がある。
【0005】
また、一般的な使用方法において、術者は、左手に内視鏡の操作部を持ち、右手に処置具を持ち、右手のみで処置具の進退および捻り操作と関節の操作との両方を行う。このときに、処置具の進退および捻り操作を、チャネルの導入口から離れた操作入力部を把持してこれを進退または捻ることによって行った場合には、処置具が途中位置で座屈したり弾性変形したりすることによって、手元の進退および捻り操作が処置具の先端側まで伝達され難くなるという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、関節を有する処置具の、進退および捻り操作と関節の操作との両方を片手のみを用いて楽に行うことができ、操作性に優れた医療装置および医療システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、可撓性を有する細長い胴部と、該胴部の先端側に位置する先端処置部と、前記胴部と前記先端処置部とを連結する関節部とを有する処置具と、前記胴部の基端に接続され、前記関節部に該関節部を作動させる駆動力を供給する駆動部と、操作者の片手に把持可能な寸法および形状を有する本体と、該本体を把持している前記片手の
親指を用いて操作可能な位置に配置され前記関節部に対する操作指示が入力される操作部材とを有し、前記処置具および前記駆動部とは別体である操作入力部と、該操作入力部に入力された前記操作指示に従って前記駆動部を制御する制御部とを備え
、前記操作入力部が、前記本体との間に前記胴部を径方向に挟んで把持する把持部材、または、前記本体に形成され前記胴部の側面の一部を収容する溝を備え、前記把持部材または前記溝が、前記片手の親指で前記操作部材を操作可能なように前記片手の掌と中指、薬指および小指との間に前記本体を把持したときに、前記片手の人差し指に対応する位置に設けられている医療装置を提供する。
【0008】
本発明によれば、術者は、操作入力部の本体を片方の手に把持し、いずれかの指を用いて操作部材を操作すると、この操作指示を受信した制御部が駆動部を制御し、該駆動部が、操作指示に応じた動作を関節部に実行させる。これにより、術者は、先端処置部の向きを変更することができる。また、術者は、本体を把持している手の余っている指で胴部を把持し、この胴部を進退および捻り操作することによって、先端処置部を進退および回転させることができる。
【0009】
この場合に、操作入力部と、モータ等の重い部品を含む駆動部とは別体であるので、両者の位置を、互いに独立に選択することができる。すなわち、駆動部を床等によって支持し、術者は、軽い操作入力部のみを支持すればよい。これにより、処置具の進退および捻り操作と関節の操作との両方を片手のみを用いて楽に行うことができ、優れた操作性を実現することができる。
【0010】
上記発明においては、前記操作入力部が、前記制御部に対して接続および分離可能であってもよい。
このようにすることで、滅菌操作に弱い部品を含む制御部から操作入力部を分離することによって、操作入力部のみを滅菌処理することができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記胴部は、該胴部が医療器具のチャネル内に挿入された状態において該チャネルの外側に位置する部分に、非円形の横断面形状を有する被把持部分を備えていてもよい。
このようにすることで、術者は、被把持部分を安定に把持することができ、特に、被把持部分を捻ったときに回転トルクを胴部に容易に与えることができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記操作入力部が、前記本体との間に前記胴部を径方向に挟んで把持する把持部材を備えていてもよい。
このようにすることで、術者が指で胴部を把持する場合に比べて、指にかかる負担を軽減することができる。また、非円形の横断面形状を有する被把持部分を把持部材によって把持した場合には、把持部材によって胴部をより安定に把持することができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記胴部の基端部分を回転自在に支持する回転支持機構を備えていてもよい。
このようにすることで、術者が胴部に捻り操作を行ったときに、術者が把持している位置よりも基端側において胴部に捩じれが生じ、胴部の基端部分に回転トルクが発生する。この回転トルクに従って胴部の基端部分が回転することによって捩じれを解消することができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記関節部が、互いに異なる方向の軸周りに揺動可能な複数の関節を備え、前記制御部は、前記操作部材に入力される前記操作指示の方向に応じて、該各操作指示の方向に対応付けられている前記関節を揺動させるように前記駆動部を制御し、前記制御部の、前記操作指示の方向と前記関節との対応付けを変更する対応変更手段を備えていてもよい。
このようにすることで、先端処置部の映像を内視鏡等で観察しながら該先端処置部を操作する場合に、先端処置部の周方向の向きに応じて、映像内の各関節の揺動方向が異なるため、操作部材の操作方向と、映像内の先端処置部の動作方向との対応関係も変化する。このときに、操作部材の操作方向と、映像内の先端処置部の動作方向とが対応するように、操作指示の方向と前記関節との対応付けを対応変更手段によって変更することによって、先端処置部の直観的な操作性を常に確保することができる。
【0015】
また、上記発明においては、前記操作入力部が、その操作対象である前記処置具を識別する処置具識別手段を備え、前記制御部が、前記処置具識別手段によって識別された処置具に応じて前記駆動部を制御してもよい。この場合、前記処置具が、2つ以上備えられていてもよい。
このようにすることで、複数の処置具を取り替えながら使用する場合に、術者が現在使用している処置具を処置具識別手段によって識別することによって、いずれの処置具の関節部も適切に作動させることができる。
また、上記発明においては、前記制御部が、前記処置具識別手段からの識別信号を受信できない場合に、前記処置具あるいは前記操作入力部の作動を制限してもよい。
このようにすることで、操作者が意図せずに処置具を作動させてしまうことを未然に防ぐことができる。
【0016】
また、本発明は、上記いずれかに記載の医療装置と、細長い挿入部と、該挿入部の先端部分に設けられた湾曲部と、該湾曲部を電動駆動する駆動部とを有し、前記挿入部に、前記処置具の前記胴部が挿入されるチャネルが形成された医療器具を備え、前記操作入力部の操作対象を、前記処置具の関節部と、前記医療器具の前記湾曲部との間で切り替える操作対象切替手段を備え、前記制御部が、前記操作対象切替手段によって選択されている操作対象に対応する駆動部を制御する医療システムを提供する。
本発明によれば、操作対象切替手段によって、処置具および医療器具のうちいずれかを選択して操作することによって、処置具の関節部のみならず医療器具の湾曲部も操作入力部を用いて操作することができる。
【0017】
上記発明においては、前記操作対象切替手段は、前記操作対象が前記医療器具および前記処置具のうちいずれであるかを検出するセンサを備え、前記制御部が、その制御対象を前記センサによって検出された操作対象に切り替えてもよい。
このようにすることで、操作者が、使用する器具を医療器具から処置具へ、または、処置具から医療器具へ変更したときに、この使用器具の変更をセンサによって検出し、操作入力部の操作対象を自動的に切り替えることができる。
【0018】
また、上記発明においては、前記センサによって前記医療器具および前記処置具のいずれも検出されない場合に、前記制御部が、前記医療器具、前記処置具または前記操作入力部の作動を制限してもよい。
このようにすることで、医療器具、処置具または操作入力部が、操作者が意図していない動作をしてしまうことを未然に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、関節を有する処置具の、進退および捻り操作と関節の操作との両方を片手のみを用いて楽に行うことができ、優れた操作性を提供することができるこという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の一実施形態に係る医療システム100について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る医療システム100は、
図1および
図2に示されるように、体内に挿入して使用される医療器具1と、該医療器具1が有するチャネル11a内に挿入される処置具2と、該処置具2の関節部23を駆動する駆動部3と、処置具2の関節部に対する操作指示が術者によって入力される操作入力装置(操作入力部)4と、制御装置(制御部)5とを備えている。
なお、本発明に係る医療装置は、処置具2と、駆動部3と、操作入力装置4と、制御装置5とによって構成される。
【0022】
医療器具1は、例えば、内視鏡、シェイプロック部材またはマニピュレータであり、患者の体内に挿入される細長い挿入部11と、該挿入部11の内部に長手方向に貫通形成された少なくとも1つのチャネル11aとを有している。本実施形態においては、医療器具1として内視鏡を想定している。以下、内視鏡を符号1で示す。
【0023】
内視鏡1は、挿入部11の先端部分に設けられた湾曲部12と、挿入部11の基端側に設けられた操作部13とを備えている。また、内視鏡1の先端面には、チャネル11aの出口から突出した処置具2を上側から俯瞰撮影するカメラ14が設けられている。符号
6は、カメラ14によって撮影された内視鏡映像を表示する表示
部である。湾曲部12は、カメラ14によって撮影される内視鏡映像の上下(UD)方向および左右(LR)方向に対応する4方向に湾曲可能である。操作部13には、術者によって手動操作される2つのアングルレバー13a,13bが設けられており、一方のアングルレバー13aが操作されることによって湾曲部12がUD方向に湾曲し、他方のアングルレバー13bが操作されることによって湾曲部12がLR方向に湾曲する。
【0024】
処置具2は、細長い胴部21と、該胴部21の先端側に位置するエンドエフェクタ(先端処置部)22と、胴部21とエンドエフェクタ22とを連結する関節部23と、胴部21の基端側に設けられた基端部24とを備え、基端部24において駆動部3に接続されている。
胴部21は、内視鏡1のチャネル11aの内径寸法よりも小さい外径寸法を有し、チャネル11a内おいて進退および回転可能である。
エンドエフェクタ22は、治療部位を処置する鉗子やハサミ、電気メス等である。
【0025】
関節部23は、基端側から順に、第1の軸A1周りに揺動可能な第1の関節23aと、第2の軸A2周りに揺動可能な第2の関節23bとを有している。第1の軸A1および第2の軸A2は、胴部21の長手方向に直交すると共に、互いに直交している。これにより、内視鏡映像内のエンドエフェクタ22の向きを、第1の関節23aおよび第2の関節23bのうち一方を駆動することによってUD方向に変更し、他方を駆動することによってLR方向に変更することができる。
なお、本実施形態においては、説明のために、関節23a,23bの揺動方向をUD方向およびLR方向としているが、関節23a,23bの揺動方向はこれに限定されるものではなく、互いに異なる方向であればよい。
【0026】
ここで、
図3(a),(b)に示されるように、湾曲部12のUDおよびLR方向の湾曲動作と、処置具2の進退および回転動作と、関節部23のUDおよびLR方向の回転動作とに対応し、エンドエフェクタ22は、合計6個の自由度を有している。したがって、エンドエフェクタ22を、その動作可能範囲内において任意の位置および姿勢に配置することができる。
【0027】
操作入力装置4は、術者(操作者)の片方の手に把持可能な形状および寸法を有する本体41と、該本体41に設けられたジョイスティック42(操作部材)とを備えている。
図1および
図3には、楕円球状の本体41が示されているが、本体41の形状は適宜変更可能である。ジョイスティック42は、本体41を把持している片方の手の親指によって操作可能な位置に設けられ、UD方向およびLR方向に操作可能である。操作入力装置4は、ジョイスティック42のUD方向およびLR方向の各々の操作量に基づいてUD操作信号およびLR操作信号を生成し、生成された操作信号を制御装置5に送信する。
また、操作入力装置4は、処置具2および駆動部3とは別体であり、処置具2および駆動部3に対して独立して持ち運び可能になっている。
【0028】
なお、参照する図面には、操作入力装置4と制御装置5とをケーブル14で接続し、操作信号をケーブル14を介して操作入力装置4から制御装置5に送信する構成が示されているが、これに代えて、操作信号を無線通信によって操作入力装置4から制御装置5に送信してもよい。
また、操作部材の形態は、ジョイスティック42に限定されるものではなく、例えば、上下左右の4個の方向キーであってもよい。
【0029】
操作入力装置4が、制御装置5にケーブル14を介して接続されている場合、操作入力装置4は、制御装置5に接続および分離可能に構成される。これにより、操作入力装置4を制御装置5から取り外すことによって、操作入力装置4のみを単体で取り扱い可能となる。
患者に直接接触する胴部21と、該胴部21に触れる術者の手は、使用前に洗浄および滅菌され、手術中は清潔に維持される。操作入力装置4はこの胴部21と術者の手に直接接触するものであるため、操作入力装置4もまた、少なくとも使用前に滅菌する必要がある。そこで、電子回路やモータ等の滅菌処理に弱い部品を含まない操作入力装置4を、その他の構成から単離可能とすることによって、オートクレーブやガンマ線照射等の一般的な滅菌方法を用いて操作入力装置4を滅菌することができる。
また、操作入力装置4は手術中に汚れることがあるため、1回の使用毎に使い捨てるディスポーザブルであってもよい。その場合にも、操作入力装置4をその他の構成から単離可能であることが有効である。
【0030】
駆動部3は、第1の関節23aおよび第2の関節23bの揺動動作を電動駆動する。具体的には、駆動部3は、制御装置5から受信した駆動信号に従って駆動力を発生し、発生した駆動力を、各関節23a,23bに接続された駆動ワイヤ(図示略)の基端部分に供給する。駆動ワイヤは、各関節23a,23bから胴部21内を通って基端部24まで延びている。この駆動ワイヤの基端部分が駆動力によって長手方向に押し引きされることによって、各関節23a,23bが揺動駆動されるようになっている。
【0031】
制御装置5は、操作入力装置4から受信したUD操作信号およびLR操作信号を用い、UD操作信号から第1の関節23aを揺動駆動させるための第1の駆動信号を生成し、LR操作信号から第2の関節23bを揺動駆動させるための第2の駆動信号を生成する。そして、制御装置5は、各駆動信号を駆動部3に送信する。駆動部3には、各駆動ワイヤに対応して設けられた図示しないモータが設けられており、各駆動信号に従って各モータが作動する。これにより、術者がジョイスティック42を
UD方向に操作すると、第1の関節23aが揺動し、LR方向に操作すると、第2の関節23bが揺動するようになっている。
なお、
駆動部3は、前述のように、ジョイスティック42の操作方向と対応付けられた関節23a,23bを動作させることに代えて、ジョイスティック42の操作に従ってエンドエフェクタ22を内視鏡映像の座標系の上下左右方向に動かすように、上下左右の入力に対して2つの関節23a,23bを協調して駆動させてもよい。
【0032】
また、駆動部3および制御装置5は、床上、または、床上に載置されたラックやテーブル、手術台等の上に載置されている。なお、
図1において、駆動部3が制御装置5に内蔵されている構成を示しているが、駆動部3と制御装置5とは別体であってもよい。
【0033】
次に、このように構成された医療システム100の作用について説明する。
本実施形態に係る医療システム100を用いて患者の体内を処置するには、まず、術者は、内視鏡1の挿入部11を患者の体内に挿入し、次に、チャネル11a内に処置具2の胴部21を挿入し、挿入部11の先端およびエンドエフェクタ22をそれぞれ体内の適切な位置に配置する。
【0034】
次に、術者は、本例においては右手に操作入力装置4および処置具2を把持する。具体的には、右手の掌と中指、
薬指および小指との間に本体41を把持し、親指と人差し指の間に、胴部21の、チャネル11aから外側に延びている部分を把持する。親指はジョイスティック42の操作にも使用するので、胴部21を人差し指と操作入力装置4との間に挟み、人差し指で胴部21を操作入力装置4に対して押さえ付けることによって胴部21を把持してもよい。また、術者は、操作入力装置4を把持する手とは反対の手(本例においては左手)には、内視鏡1の操作部13を把持する。
【0035】
この状態において、術者は、左手の指でアングルレバー13a,13bを操作することによって、湾曲部12をUD方向およびLR方向に湾曲させ、エンドエフェクタ22全体をUD方向またはLR方向に移動させることができる。また、術者は、右手の親指でジョイスティック42を操作することによって、第1の関節23aおよび第2の関節23bを揺動させ、エンドエフェクタ22の向きをUD方向およびLR方向に変更することができる。さらに、術者は、右手の親指および人差し指で胴部21を長手方向に進退させることによってエンドエフェクタ22を前進および後退させることができ、胴部21を周方向に捻ることによって、エンドエフェクタ22を回転させることができる。
【0036】
このときに、術者は、第2の関節23bの揺動によるエンドエフェクタ22の動作方向が内視鏡映像のLR方向に対応するように、挿入部11に対するエンドエフェクタ22の向きを調整することによって、ジョイスティック42の操作方向と、内視鏡映像内のエンドエフェクタ22の動作方向とを対応させ、該エンドエフェクタ22を直感的に操作することができる。
【0037】
この場合に、本実施形態によれば、操作入力装置4と駆動部3とが別体であるため、駆動部3を床上に載置した状態で操作入力装置4のみをケーブル14の届く範囲内において持ち運ぶことができる。すなわち、術者の右手に作用する重さは、モータ等の重い部品を含まない十分に軽い操作入力装置4とケーブル14との重さのみであるので、術者は楽に操作入力装置4を把持し続けることができ、術者の疲労感を軽減することができるという利点がある。さらに、内視鏡1の操作部13と、処置具2の胴部21と、操作入力装置4との全てを、一人の術者が両手を用いて楽に把持し、これら3つを容易に操作することができる。これにより、エンドエフェクタ22の合計6自由度の動作を一人で操作することができ、使い勝手に優れた医療システム100を実現することができるという利点がある。
【0038】
また、本実施形態によれば、操作入力装置4は、処置具2の基端に接続されている駆動部3とは独立して持ち運び可能であるので、術者は、胴部21の任意の位置を右手で把持することができる。すなわち、術者は、チャネル11aの導入口近傍において胴部21を把持し、この位置において胴部21を進退および捻り操作することによって、エンドエフェクタ22を効果的に進退および回転動作させることができるという利点がある。
【0039】
さらに、術者が胴部21を捻ったときに、術者による胴部21の回転量に対してエンドエフェクタ22の回転量は小さくなることがある。これは、チャネル11a内において胴部21に作用する摩擦等の影響によって、胴部21を伝達する間に回転運動が減衰するためである。これにより、術者のジョイスティック42の操作方向と、内視鏡映像内のエンドエフェクタ22の動作方向との対応関係にずれが生じる。このときに、本実施形態によれば、処置具2に対する操作入力装置4の位置および姿勢を自由に変更可能であるため、前記対応関係のずれを容易に修正することができる。すなわち、術者は、まず、ジョイスティック42をLR方向に操作することによって、ジョイスティック42の座標系とエンドエフェクタ22の座標系とのずれ角度を確認し、次に、このずれ角度の分だけ胴部21に対する操作入力装置4の角度を調整することによって、第2の関節23bの動作方向にジョイスティック42のLR方向を対応させることができる。
【0040】
なお、本実施形態においては、術者が、操作入力装置4を把持している手の親指および人差し指で胴部21を把持することとしたが、これに代えて、
図4に示されるように、操作入力装置4が、本体41との間に胴部21を径方向に挟み、摩擦によって胴部21を把持する把持部材43を備えてもよい。
図4において二点鎖線は、操作入力装置4を把持する術者の指を示している。このようにすることで、人差し指で直接挟持する場合よりも人差し指にかかる負担を軽減して、より楽に胴部21を挟持することができる。
【0041】
この場合に、内視鏡映像内のエンドエフェクタ22の前後上下左右の動作方向と同様に、把持部材43に把持された胴部21の長手方向(BF方向)と、ジョイスティック42のUD方向およびLR方向とが、互いに直交することが好ましい。
また、把持部材43は、
図5に示されるように、本体41からから離間した位置(左図参照。)と、本体41に近接する位置(右図参照。)との間で相対移動可能に設けられていてもよい。
【0042】
また、胴部21の、チャネル11aの導入口の近傍であって、常時チャネル11aの外側に位置する部分(以下、この部分を被把持部分21aという。)の横断面形状は、真円以外であることが好ましく、
図6に示されるように、多角形であることがさらに好ましい。このようにすることで、術者が被把持部分21aを指で直接把持する場合には、被把持部分21aを安定に把持することができるので、胴部21に回転トルクをより容易に与えることができる。また、把持部材43を備える場合には、
図7に示されるように、把持部材43と本体41との間に被把持部分21aを安定に把持することができので、術者は、胴部21に回転トルクをさらに容易に与えることができる。
【0043】
胴部21の被把持部分21aそのものを変形することに代えて、
図8(a),(b)に示されるように、胴部21の側面に、角筒状の付属部材7を取り付けてもよい。付属部材7は、角筒体を軸方向に沿って分割してなる2つの半筒体をヒンジで連結して構成されており、開閉可能である。
図8(a)は開状態、
図8(b)は閉状態をそれぞれ示している。符号7aは、付属部材7の開動作を閉状態にロックするロック機構である。付属部材7は、閉状態において、その内面と胴部21の側面との間の摩擦によって被把持部分21aを把持するようになっている。付属部材7の内面には、胴部21との間の摩擦を高めるために、ゴム等からなる滑り止め部材7bが設けられていてもよい。
【0044】
付属部材7は、胴部21よりも高い剛性を有していることが好ましい。剛性が低い胴部21は、進退および捻り操作の際に座屈または弾性変形しやすく、術者による進退および捻り操作が胴部21の先端側まで伝達されないことがある。そこで、胴部21に十分な剛性を有する付属部材7を取り付けることによって、胴部21の座屈や弾性変形を防止し、胴部21を把持している手の動作を胴部21の先端側まで確実に伝達することができる。
【0045】
また、本実施形態においては、操作入力装置4が、
図9に示されるように、把持部材43に把持されている処置具2を識別する処置具識別手段8を備え、制御装置5が、処置具識別手段8によって識別された処置具2用の制御信号を生成してもよい。
【0046】
具体的には、被把持部分21aに、その処置具2の識別情報を記録した媒体8aが取り付けられている。一方、操作入力装置4の本体41の、把持部材43と対向する位置には、処置具識別手段8が設けられている。媒体8aは、例えば、RFIDタグや、バーコードであり、処置具識別手段8は、媒体8aの形態に対応した読取手段を有している。これにより、処置具2の使用時に、胴部21の被把持部分21aを把持部材43によって把持した状態において、媒体8aに接触した処置具識別手段8が媒体8aから識別情報を読み取るようになっている。処置具識別手段8は、識別した処置具2を示す信号を制御装置5に送信する。
【0047】
さらには、処置具識別手段8は、識別した処置具2を示す信号を所定の時間間隔で制御装置5に繰り返し送信してもよい。その際に、制御装置5は、処置具識別手段8から前記信号を所定の時間間隔で受信できなかった場合には、処置具2が操作入力装置4に把持されていない状態であると判断し、処置具2の動作または操作入力装置4に対する入力を制限をしてもよい。このようにすることで、術者が意図しない操作をしてしまうことを未然に防ぐことができる。
【0048】
複数の処置具2を駆動部3を介して制御装置5に同時に接続してこれら複数の処置具2を常時使用可能な状態としておき、術者が、これら処置具2の中から1つを任意に選択して使用することがある。このような状況において、把持部材43に把持されている処置具2を識別する機能を設けることによって、制御装置5が使用中の処置具2を確実に自動識別し、その処置具2の関節23a,23bを適切に駆動させることができる。
【0049】
また、本実施形態においては、操作入力装置4が、処置具2の周方向の向きを認識する方向認識手段を備えていてもよい。方向認識手段を備えることによって、挿入部11の先端から突出するエンドエフェクタ22の向きを手元側において容易に把握することができる。
【0050】
図10および
図11は、方向認識手段の例を示している。
図10および
図11に示されるように、方向認識手段は、胴部21に設けられた被認識部9aと、操作入力装置4に設けられた検出部9bとを備えている。被認識部9aは、被把持部分21aに設けられ、周方向の位置に応じて異なる特性を有している。検出部9bは、把持部材43と対向する位置に設けられ、検出部9bに接触する被認識部9aの特性を検出する。検出部9bによって検出された特性に基づいて、処置具2の周方向の位置を認識することができる。
【0051】
具体的には、被認識部9aは、
図10に示されるように、全ての辺の長さが互いに異なる多角形の横断面形状を有する被把持部分21aから構成される。あるいは、
図11に示されるように、周方向の位置に応じて異なる色を有する被把持部分21aから構成される。
図10においては、検出部9bとして、被認識部9aとの接触を検出する接触センサが用いられ、胴部21の周方向の向きに応じて接触センサと接触する被認識部9aの側面の面積が異なることに基づいて、胴部21の周方向の向きを認識する。
図11においては、検出部9bとして、被認識部9aの色を検出する比色センサが用いられ、胴部21の周方向の向きに応じて、比色センサと接触する被認識部9aの側面の色が異なることに基づいて、胴部21の周方向の向きを認識する。
【0052】
また、被認識部9aと検出部9bとを、前述した処置具2の識別に利用してもよい。例えば、処置具2毎に被認識部9aの色を異ならせ、被認識部9aの色を比色センサによって検出することによって、検出された色に基づいて処置具2を識別することができる。
【0053】
また、本実施形態においては、
図12から
図14に示されるように、処置具2の基端部24を、周方向に回転自在に支持する回転支持機構10を備えていてもよい。
基端部24が駆動部3に固定されている場合、術者が胴部21を捻ったときに、胴部21の、術者が把持している位置と基端部24との間には捩じれが生じ、胴部21を把持している術者は、捩じりによって生じるトルク力を感じる。このトルク力は、術者による胴部21の捻り操作方向とは逆方向であるため、術者は、捻り操作に対する抵抗力を感じる。そこで、回転支持機構10を設けることによって、胴部21に生じる捩じれが基端部24の回転によって解消されるので、術者は、負荷を感じることなく、胴部21の捻り操作をさらに楽に行うことができる。
【0054】
図12においては、処置具2の基端部24に設けられたボールベアリング等の回転支持機構10によって、基端部24が回転自在になっている。
図13においては、駆動部3を保持する保持部20に設けられた回転支持機構10によって、駆動部3が回転自在に支持されており、胴部21の捩じれによって駆動部3が回転することによって、基端部24も回転するようになっている。符号25a,25bは、関節23a,23bを駆動するための駆動ワイヤである。または、
図14に示されるように、胴部21の基端部分を保持する保持部20に回転支持機構10を設け、保持部20によって胴部21が回転自在に支持されていてもよい。
図14において、駆動部3は省略されている。
【0055】
また、本実施形態においては、操作入力装置4に、
図15(a),(b)に示されるように、内視鏡1の挿入部11の側面の一部を収容可能な溝44が設けられていてもよい。本例の操作入力装置4は、把持部材43に代えて、胴部21の側面の一部を収容可能な溝45を有している。手術中に、術者は、内視鏡1の挿入部11についても、進退または捻り操作を手動で行うことがある。このときに、操作入力装置4を処置具2から取り外し、溝44に挿入部11を嵌め込み、人差し指で押さえることによって、内視鏡1の手動操作と、操作入力装置4を用いた処置具2の関節部23の操作とを、並行して行うことができる。
【0056】
このときに、操作入力装置4の操作対象を、処置具2と内視鏡1との間で切り替える操作対象切替手段を備え、該操作対象切替手段によって操作対象が内視鏡1に設定されているときは、ジョイスティック42の上下左右操作によって、湾曲部12を上下左右に湾曲動作させるように構成してもよい。この場合、内視鏡1の湾曲部12は、図示しない駆動部によって電動駆動可能に構成される。
【0057】
操作対象切替手段16は、例えば、
図15(b)に示されるように、操作入力装置4に設けられたトグルスイッチであり、術者は、トグルスイッチによって、処置具2および内視鏡1のうち一方を操作対象として選択することができる。操作入力装置4は、操作信号と一緒に、トグルスイッチによって選択されている操作対象を示す信号を制御装置5に送信する。この信号に基づき、制御装置5は、操作信号から生成した制御信号を、術者が選択した操作対象の駆動部3に送信して、当該操作対象の関節部23または湾曲部12を作動させる。
【0058】
あるいは、操作対象切替手段は、各溝44,45内の内視鏡1または処置具2の有無を検出するセンサを備え、このセンサによって、操作入力装置4が内視鏡1および処置具2のいずれに取り付けられているかを自動認識してもよい。センサは、例えば、各溝44,45の内面に設けられた接触センサ、赤外線センサまたは押しボタンスイッチである。センサによって内視鏡1または処置具2が溝44,45内に無いことが検出された場合には、制御装置5が、内視鏡1や処置具2の作動を停止したり、操作入力装置4による操作を無効にしたりするなどの制限を加えてもよい。このようにすることで、術者が意図していない操作が操作入力装置4に与えられてしまい、それによって内視鏡1または処置具2が、術者が意図していない動作をしてしまうことを未然に防ぐことができる。さらには、
図16(a),(b)に示されるように、術者が内視鏡1と処置具2とを持ち替えたときに、操作入力装置4の操作対象を自動的に変更することができる。例えば、術者が内視鏡1に持ち替えた場合、操作入力装置4の操作対象は内視鏡1の湾曲部12となるように変更され、処置具2に持ち替えた場合、操作入力装置4の操作対象は処置具2の関節部23となるように変更される。
【0059】
また、本実施形態においては、処置具2に、エンドエフェクタ22の向きを検出する方向検出部を設け、ジョイスティック42の上下左右の操作方向と、内視鏡映像内のエンドエフェクタ22の上下左右の動作方向との対応関係にずれが生じた場合には、このずれの補正を促す表示を表示部6に表示してもよい。方向センサは、例えば、エンコーダのような回転量検出器であり、内視鏡1に対するエンドエフェクタ22の周方向の向きを検出する。方向センサに代えて、画像認識を利用して内視鏡映像内のエンドエフェクタ22の像から該エンドエフェクタ22の向きを検出してもよい。
【0060】
具体的には、
図17(a)に示されるように、第1の軸A1が内視鏡映像のLR方向を向くときのエンドエフェクタ22の向きを基準に設定する。そして、
図18に示されるように、方向センサによってエンドエフェクタ22の向きを検出し(ステップS1)、検出されたエンドエフェクタ22の方向の、基準からのずれを示す表示、例えば、
図17(b)に示されるように、矢印Bを内視鏡映像内に表示する(ステップS2)。術者は、操作入力装置4を、この矢印Bの示す方向に胴部21に対して回転させることによって、ジョイスティック42の操作方向と各関節23a,23bの動作方向との対応関係を修正することができる。
【0061】
方向センサは、エンドエフェクタ22に加えて、操作入力装置4にも設けられていてもよい。この場合には、
図19に示されるように、さらに、操作入力装置4の方向を方向センサによって検出し(ステップS3)、検出されたエンドエフェクタ22および操作入力装置4の2つの方向の差異を計算する(ステップS4)。
【0062】
そして、差異が所定の範囲内である場合には(ステップS5のYES)、そのまま操作入力装置4による関節23a,23bの操作を続行する(ステップS6)。一方、差異が所定の範囲から外れている場合には(ステップS5のNO)、制御装置5が、操作入力装置4からの操作信号の有無にかかわらず、関節23a,23bの制御を強制的に中断する(ステップS7)。そして、2つの方向の差異に基づいて、前述した矢印B等の表示を内視鏡映像に表示する(ステップS2)。
このようにすることで、エンドエフェクタ22の座標系と、ジョイスティック42の座標系とのずれが十分に大きい不適切な状態で関節23a,23bが操作されることを禁止することができる。
【0063】
2つの方向センサを備える場合には、術者による関節23a,23bの操作を禁止することに代えて、
図20に示されるように、2つの座標系のずれに基づいて制御信号を補償しながら関節23a,23bの駆動を続行してもよい。すなわち、エンドエフェクタ22および操作入力装置4の2つの方向の差異を計算した後(ステップS4)、これら2つの方向の差異に基づいて操作信号を制御信号に変換するための変換式を生成し(ステップS8)、変換式を用いて操作信号から制御信号を生成し(ステップS9)、制御信号を駆動部3に送信する(ステップS10)。
【0064】
あるいは、
図18から
図20のような制御に代えて、
図21(a),(b)に示されるように、ジョイスティック42の操作方向と関節23a,23bとの対応関係を切り替えるトグルスイッチのような対応変更手段17を、操作入力装置4に設けてもよい。
図21(a),(b)に示されるように、エンドエフェクタ22の向きが90度異なると、内視鏡映像における2つの関節23a,23bの揺動方向が逆転する。
【0065】
そこで、対応変更手段17によって第1のモードを選択しているときには、
図21(a)に示されるように、ジョイスティック42のUD方向の操作を第1の関節23aに対応付け、LR方向の操作を第2の関節23bに対応付ける。一方、対応変更手段17によって第2のモードを選択しているときには、
図21(b)に示されるように、ジョイスティック42のUD方向の操作を第2の関節23bに対応付け、LR方向の操作を第1の関節23aに対応付ける。このようにすることで、エンドエフェクタ22の向きに応じて、ジョイスティック42の操作方向と内視鏡映像内におけるエンドエフェクタ22の動作方向とを適切に対応させ、エンドエフェクタ22の直感的な操作性を確保することができる。
【0066】
また、本実施形態においては、操作入力装置4の把持部材43が、
図22に示されるように、筒状であり、患者体表から体内へ挿入されるポート部材46を構成していてもよい。ポート部材46は、例えば、
図24に示されるように、腹腔鏡手術において使用されるものであり、腹部に小さな穴を空け、この穴にポート部材46を設置し、ポート部材46を介して処置具2を腹腔C内に導入することができる。ポート部材46内に挿入された胴部21は、ポート部材46の基端部分に設けられたロック機構46aによって、ポート部材46に対して固定することができる。
図23(a)は、ロック機構が胴部21を解放している状態、
図23(b)はロック機構46aが胴部21を固定している状態を示している。
このように、医療器具1が、操作入力装置4と一体的に構成された管状のものである場合にも、操作入力装置4が駆動部3と別体であることによって、術者は、駆動部3の重さを感じることなく処置具2を楽に操作することができる。