【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1では、縁部固定板に樹脂製シートを温風溶着機で溶着する場合には、樹脂製シートを捲りながら樹脂製シートと縁部固定板との間に温風を送り込んで所定の温度以上となるまで加熱し、その加熱状態を所定時間保持することにより、樹脂製シートと縁部固定板の被覆樹脂層の表面とを溶融しなければならないため、技術的に高度で熟練を要する。また、電磁誘導加熱の場合は、加熱コイルを縁部固定板に押し付けた部分のみ溶融することができるが、縁部固定板の基材の金属板が渦電流によって高温になるため、溶融した樹脂製シート及び被覆樹脂層の樹脂が冷却固化して接着強度が出るまでに接着部分のズレを防ぐ必要がある。ホットメルト接着性樹脂の場合も同様である。また、樹脂製シート同士の接続部は2枚重ね部や3枚重ね部の処理が発生し、防水施工には高度の技術と熟練を要す。
【0009】
また、樹脂製シートの接合部を断続的に溶着することで水路の壁面と樹脂製シートとの間に浸入した水やエアーを水路内へ導入させることができるようにしているが、水路内の水圧が水路外の水圧よりも高い場合には、水路内の水が水路外へ漏れてしまい、水路の改修目的を達成することができない場合がある。
【0010】
また、特許文献2、3のように樹脂製シートの溶着を行わないようにする技術があるが、既設水路の場合は、カーブしていたり、目地部に段差が発生していたりする。このような場合、特許文献2の水路補修材を水流方向に並べて設けること自体が困難になる。また、特許文献2の水膨張ゴムは、乾燥時には収縮状態にあり、流入する水を吸い取るには時間がかかり、この間に漏水してしまう恐れがある。また、水路の目地部が地盤沈下や地震等により変位した場合、水路補修板はそのような変位に追従できず、水路補修板間から漏水してしまう恐れがある。
【0011】
また、特許文献3は、目地部の可とう継手であり、水路の壁面に沿って複数のシートを接続しながら水流方向に長く連続した防水構造とすることができない。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、水路の壁面を防水シートで被覆することによって水路の改修を行う場合に、防水シート同士の接続に融着または溶着法を用いることなく、かつ、漏水を確実に防止できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明では、剛性板状体、不定形シーリング材及び固定部材を用いて防水シートを水路に固定するようにした。
【0014】
第1の発明は、
既設水路の壁面を防水シートで覆うことによって水路の改修を行う水路の改修構造において、
複数枚の長尺状の熱可塑性エラストマー系防水シートと、
剛性板状体と、
不定形シーリング材と、
固定部材とを備え、
上記各防水シートは、水路の一方の側壁の上側から底壁、他方の側壁の上側に亘るように形成されるとともに、水流方向に所定の長さを有した形状とされ、
上記防水シートは
水路長手方向に複数枚並べて設置され、
水流方向最上流に位置する最上流防水シートの上流側の縁部における水路壁面側には、上記剛性板状体が
接着され、該剛性板状体と水路壁面との間には上記不定形シーリング材が介在され、上記固定部材によって最上流防水シートの上流側の縁部が上記剛性板状体及び上記不定形シーリング材と共に水路に固定され、
水流方向最下流に位置する最下流防水シートの下流側の縁部における水路壁面側には、上記剛性板状体が
接着され、該剛性板状体と水路壁面との間には上記不定形シーリング材が介在され、上記固定部材によって最下流防水シートの下流側の縁部が上記剛性板状体及び上記不定形シーリング材と共に水路に固定され、
水路長手方向に隣接する防水シートの端部が互いに厚み方向に重なるように配置されており、上記厚み方向に重なるように配置された防水シートのうち、水路内に臨むように位置する防水シートの端部における水路壁面側には、上記剛性板状体が
接着され、水路壁面側に位置する防水シートの端部には、上記剛性板状体に接するように上記不定形シーリング材が設けられ、上記固定部材は、上記厚み方向に重なるように配置された水路内に臨むように位置する防水シートの端部、上記剛性板状体及び上記不定形シーリング材及び水路壁面側に位置する防水シートの端部を貫通して水路に固定されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、最上流防水シートの上流側の縁部に接合された剛性板状体と水路壁面との間に不定形シーリング材が介在しており、この不定形シーリング材が介在した状態で固定部材によって最上流防水シートを剛性板状体と共に固定するので、最上流防水シートと水路壁面との間の止水性が確保される。同様に、最下流防水シートの下流側の縁部に接合された剛性板状体と水路壁面との間に不定形シーリング材が介在しているので止水性が確保される。また、水流方向に隣接する防水シートの端部の間にも同様に剛性板状体と不定形シーリング材が介在しているので、止水性が確保される。
【0016】
例えば地震等による変位が生じた場合には、防水シートがエラストマー系の材料からなるので、変位に追従するように変形して変位を吸収する。
【0017】
よって、本改修構造によって改修された全域に止水性が確保されることになるので、漏水が確実に防止される。
【0018】
また、各防水シートは剛性板状体や不定形シーリング材を貫通する固定部材によって水路に固定するので、防水シートの同士の接続に従来のような融着または溶着法が不要になり、施工作業性が良好になる。また、各防水シートの接続位置を調整することにより、水路のカーブや目地の段差に対しても取り付けが可能である。
【0019】
第2の発明は、第1の発明において、
上記防水シートには貫通孔が形成され、該貫通孔には、上記防水シートと水路壁面との間に浸入した水を水路に排水するための排水装置が接続され、
上記排水装置は、第1シート材及び第2シート材を備え、
上記第1シート材及び上記第2シート材は、上記防水シートの水路内に臨む面に、この順で重なるように設けられ、
上記第1シート材には、上記貫通孔に連通する連通孔が形成され、該第1シート材の連通孔周縁部と上記防水シートの貫通孔周縁部とが全周に亘って接着され、
上記第1シート材と上記第2シート材とは、上記連通孔から離れた周囲が互いに接着され、上記第1シート材と上記第2シート材との周囲の一部には、非接着部からなる排水口が形成されることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、防水シートと水路壁面との間に水が浸入した場合に、防水シートの貫通孔から排水装置の第1シートの連通孔を通って第1シートと第2シートとの間に流入し、第1シートと第2シート間が水圧により開き、排水口から水路内に排水される。これにより、防水シートの背面側の水圧を低減して防水シートの破損が防止され、また、背面水の水圧によるシート膨れで内空断面が侵され流下性能が阻害されることも防止できる。
【0021】
一方、水路内の水圧の方が高い場合には、その水圧によって第2シートが第1シートに押し付けられて閉鎖状態となるので、水路内の水が外部に漏れることはない。
【0022】
第3の発明は、第1または2の発明において、
上記防水シートにおける水路の隅部に対応する部位には、上記剛性板状体が配設され、該剛性板状体は、上記不定形シーリング材を介して上記固定部材により水路に固定されていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、防水シートにおける水路の隅部近傍を水路に確実に固定することが可能になる。
【0024】
第4の発明は、第1から3のいずれか1つの発明において、
上記防水シートにおける水路の側壁上側に対応する部位には、上記剛性板状体が配設され、該剛性板状体は、上記不定形シーリング材を介して上記固定部材により水路に固定されていることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、防水シートにおける水路の側壁上側近傍を水路に確実に固定することが可能になる。
【0026】
第5の発明は、第1から4のいずれか1つの発明において、
上記防水シートが軟質の塩化ビニル樹脂製であり、
上記剛性板状体が鋼鈑と該鋼鈑に積層された軟質の塩化ビニル樹脂とを有しており、
上記剛性板状体は、積層された塩化ビニル樹脂を上記防水シートと接着することによって上記防水シートに接合されていることを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、塩化ビニル樹脂製の防水シートを剛性板状体の塩化ビニル樹脂層に接着することで、剛性板状体を防水シートに対して容易に、かつ、強固に接合することが可能になる。防水シートの端部の剛性板状体は予め工場等で溶剤による溶着や、熱風等による融着で防水シートに接合しておく。
【0028】
第6の発明は、第1から5のいずれか1つの発明において、
上記防水シートの水流方向の端部における水路壁面側には剛性板状体が接合され、上記固定部材によって上記水路壁面側の剛性板状体が上記防水シートの端部と共に水路に固定されていることを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、防水シートの端部を水路の形状に合わせ確実に固定することができ、防水シートと剛性板状体との接合で防水シート接続部にかかる応力を剛性板状体で分散することができる。
【0030】
第7の発明は、
既設水路の壁面を防水シートで覆うことによって水路の改修を行う水路の改修方法において、
複数枚の長尺状の防水シートと、
剛性板状体と、
不定形シーリング材と、
固定部材とを用意し、
上記各防水シートは、水路の一方の側壁の上側から底壁、他方の側壁の上側に亘るように形成されるとともに、水流方向に所定の長さを有した形状としておき、
水流方向最上流に位置することになる最上流防水シートの上流側の縁部における水路壁面側には、上記剛性板状体を接着しておき、
水流方向最下流に位置することになる最下流防水シートの下流側の縁部における水路壁面側には、上記剛性板状体を接着しておき、
水路長手方向に隣接する防水シートの端部を互いに厚み方向に重なるように配置したとき、上記厚み方向に重なるように配置された防水シートのうち、水路内に臨むように位置することになる防水シートの端部における水路壁面側には、上記剛性板状体を接着しておき、
その後、上記防水シートを
水路長手方向に複数枚並べて設置し、
水流方向最上流に位置する最上流防水シートの上流側の縁部における水路壁面側に
接着されている上記剛性板状体と水路壁面との間には上記不定形シーリング材を介在させ、上記固定部材によって最上流防水シートの上流側の縁部を上記剛性板状体及び上記不定形シーリング材と共に水路に固定し、
水流方向最下流に位置する最下流防水シートの下流側の縁部における水路壁面側に
接着されている上記剛性板状体と水路壁面との間には上記不定形シーリング材を介在させ、上記固定部材によって最下流防水シートの下流側の縁部を上記剛性板状体及び上記不定形シーリング材と共に水路に固定し、
水路長手方向に隣接する防水シートの端部を互いに厚み方向に重なるように配置し、上記厚み方向に重なるように配置された防水シートのうち
、水路壁面側に位置する防水シートの端部には、
水路内に臨むように位置することになる防水シートの端部における水路壁面側に接着されている上記剛性板状体に接するように上記不定形シーリング材を設け、上記固定部材は、上記厚み方向に重なるように配置された水路内に臨むように位置する防水シートの端部、上記剛性板状体及び上記不定形シーリング材及び水路壁面側に位置する防水シートの端部を貫通して水路に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
第1、7の発明によれば、複数枚の長尺状の熱可塑性エラストマー系防水シートと剛性板状体と不定形シーリング材とを固定部材で水路に固定するようにしたので、防水シート同士の接続に融着または溶着法を用いることなく、施工作業性が容易になるとともに、漏水を確実に防止できる。また、例えば地震等による変位が生じた場合に変位に追従するように防水シートが変形して変位を吸収するので、漏水を防止できる。
【0032】
第2の発明によれば、防水シートに排水装置を設けて防水シートと水路壁面との間に浸入した水を水路に排水するようにしたので、背面側の水圧による防水シートの破損を防止でき、また、水圧によるシート膨れで流下性能を阻害することも防止することができる。
【0033】
第3の発明によれば、防水シートにおける水路の隅部に対応する部位に剛性板状体を配設し、この剛性板状体を水路に固定したので、防水シートを水路に確実に固定することができ、熱可塑性エラストマー系防水シートが経時で収縮しようとしても固定部材により剛性板状体及び不定形シーリング材で水路に固定されているので隅部のシートの浮きを防ぐことができる。
【0034】
第4の発明によれば、防水シートにおける水路の側壁上側に対応する部位に剛性板状体を配設し、この剛性板状体を水路に固定したので、防水シートを水路に確実に固定することができ、側壁上側からの水や異物の浸入や防水シートの収縮によるシート端部のズレ等を防ぐことができる。
【0035】
第5の発明によれば、塩化ビニル樹脂製の防水シートを剛性板状体の塩化ビニル樹脂層に溶剤による溶着や熱風等による融着で接着することで、剛性板状体を防水シートに対して容易に、かつ、強固に接合できる。
【0036】
第6の発明によれば、防水シートの水流方向の端部における水路壁面側に剛性板状体を接合し、その剛性板状体と防水シートの端部とを固定部材によって水路に固定するようにしたので、防水シートの端部の浮きを防ぐことができる。