(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本実施形態の撮像装置の構成例を示す図である。
図1に示す撮像装置は、デジタルスチルカメラである。なお、本実施形態の撮像装置が、動画撮影機能を有していてもよい。
【0013】
図1に示す撮像装置は、ズームユニット101乃至制御部119を備える。ズームユニット101は、結像光学系を構成する、倍率が可変な撮影レンズの一部である。ズームユニット101は、撮影レンズの倍率を変更するズームレンズを含んでいる。ズーム駆動部102は、制御部119の制御に従ってズームユニット101の駆動を制御する。第1防振レンズ103は、像振れを補正する補正部材である。第1防振レンズ103は、撮影レンズの光軸に対して直交する方向に移動可能に構成されている。第1防振駆動部104は、第1防振レンズ103の駆動を制御する。第2防振レンズ113は、第1防振レンズと同等の構成を有する。また、第2防振駆動部114は、第2防振レンズ113の駆動を制御する。
【0014】
絞り・シャッタユニット105は、絞り機能を有するメカニカルシャッタである。絞り・シャッタ駆動部106は、制御部118の制御に従って絞り・シャッタユニット105を駆動する。フォーカスレンズ107は撮影レンズの一部であり、撮影レンズの光軸に沿って位置を変更可能に構成される。フォーカス駆動部108は、制御部119の制御に従ってフォーカスレンズ107を駆動する。
【0015】
撮像部109は、撮影レンズによる光学像を、CCDイメージセンサや、CMOSイメージセンサなどの撮像素子を用いて画素単位の電気信号に変換する。CCDは、Charge Coupled Deviceの略称である。CMOSは、Complementary Metal−Oxideの略称である。撮像信号処理部110は、撮像部109から出力された電気信号に対して、A/D変換、相関二重サンプリング、ガンマ補正、ホワイトバランス補正、色補間処理等を行い、映像信号に変換する。映像信号処理部111は、撮像信号処理部110から出力された映像信号を、用途に応じて加工する。具体的には、映像信号処理部111は、表示用の映像を生成したり、記録用に符号化処理やデータファイル化を行ったりする。
【0016】
表示部112は、映像信号処理部111が出力する表示用の映像信号に基づいて、必要に応じて画像表示を行う。電源部115は、撮像装置全体に、用途に応じて電源を供給する。外部入出力端子部116は、外部装置との間で通信信号及び映像信号を入出力する。操作部117は、撮像装置にユーザが指示を与えるためのボタンやスイッチなどを有する。記憶部118は、映像情報など様々なデータを記憶する。制御部119は、例えばCPU、ROM、RAMを有し、ROMに記憶された制御プログラムをRAMに展開してCPUで実行することによって撮像装置の各部を制御し、以下に説明する様々な動作を含む撮像装置の動作を実現する。CPUは、Central Processing Unitの略称である。ROMは、Read Only Memoryの略称である。RAMは、Random Access Memoryの略称である。
【0017】
操作部117は、押し込み量に応じて第1スイッチ(SW1)および第2スイッチ(SW2)が順にオンするように構成されたレリーズボタンを有する。レリーズボタンが、半押しさた場合にレリーズスイッチSW1がオンし、レリーズボタンが最後まで押し込まれたときにレリーズスイッチSW2がオンする。レリーズスイッチSW1がオンすると、制御部119が、映像信号処理部111が表示部112に出力する表示用の映像信号に基づいてAF評価値を算出する。そして、制御部119が、AF評価値に基づいて、フォーカス駆動部108を制御することにより自動焦点検出を行う。
【0018】
また、制御部119は、映像信号の輝度情報と、予め定められたプログラム線図とに基づいて、適切な露光量を得るための絞り値及びシャッタスピードを決定するAE処理を行う。レリーズスイッチSW2がオンされると、制御部119は、決定した絞り及びシャッタ速度で撮影を行い、撮像部109で得られた画像データを記憶部118に記憶するように各処理部を制御する。
【0019】
操作部117は、さらに、振れ補正(防振)モードを選択可能にする防振スイッチを有する。防振スイッチにより振れ補正モードが選択されると、制御部119が、第1防振駆動部104および第2防振駆動部114に防振動作を指示し、これを受けた防振駆動部104および防振駆動部114が、防振オフの指示がなされるまで防振動作を行う。また、操作部117は、静止画撮影モードと動画撮影モードとのうちの一方を選択可能な撮時モード選択スイッチを有する。撮影モード選択スイッチの操作による撮影モードの選択を通じて、制御部119は、第1防振駆動部104と第2防振駆動部114の動作条件を変更することができる。第1防振駆動部104と第2防振駆動部114とによって、本実施形態の像振れ補正装置が構成される。
【0020】
また、操作部117は、再生モードを選択するための再生モード選択スイッチも有する。再生モード選択スイッチの操作によって、再生モードが選択されると、制御部119が防振動作を停止する。また、操作部117には、ズーム倍率変更の指示を行う倍率変更スイッチが含まれる。倍率変更スイッチの操作によって、ズーム倍率変更の指示がされると、制御部119を介して指示を受けたズーム駆動部102が、ズームユニット101を駆動して、指示されたズーム位置にズームユニット101を移動させる。
【0021】
図2は、本実施形態の像振れ補正装置の構成を示す図である。
第1振動センサ201は、例えば角速度センサであり、通常姿勢(画像の長さ方向が水平方向とほぼ一致する姿勢)における、撮像装置の垂直方向(ピッチ方向)の振動を検出する。第2振動センサ202は例えば角速度センサであり、通常姿勢における撮像装置の水平方向(ヨー方向)の振動を検出する。第1防振制御部203は、ピッチ方向における防振レンズの補正位置制御信号を出力し、防振レンズの駆動を制御する。第2防振制御部204は、ヨー方向における防振レンズの補正位置制御信号を出力し、防振レンズの駆動を制御する。
【0022】
第1レンズ位置制御部205は、第1防振制御部203からのピッチ方向での補正位置制御信号と、第1ホール素子209からの防振レンズのピッチ方向での位置情報とから、フィードバック制御を行う。これにより、第1レンズ制御部205は、例えば、アクチュエータである第1ドライブ部207を駆動する。同様に、第2レンズ制御部206は、第2防振制御部204からのヨー方向での補正位置制御信号と、第2ホール素子210からの防振レンズのヨー方向での位置情報とから、フィードバック制御を行う。これにより、第2レンズ制御部206は、例えば、アクチュエータである第2ドライブ部208を駆動する。
【0023】
次に、第1防振駆動部104による第1防振レンズ103の駆動制御動作について説明する。
第1防振制御部203、第1振動センサ201から撮像装置のピッチ方向の振れを表す振れ信号(角速度信号)が供給される。また、第2防振制御部204には、第2振動センサ202から撮像装置のヨー方向の振れを表す振れ信号(角速度信号)が供給される。
【0024】
第1防振制御部203は、供給された振れ信号に基づいて、ピッチ方向に防振レンズ103を駆動する補正位置制御信号を生成し、第1レンズ位置制御部205に出力する。また、第2防振制御部204は、供給された振れ信号に基づいて、ヨー方向に防振レンズ103を駆動する補正位置制御信号を生成し、第2レンズ位置制御部206に出力する。
【0025】
第1ホール素子209は、第1防振レンズ103に設けられた磁石による磁場の強さに応じた電圧を有する信号を、第1防振レンズ103のピッチ方向における位置情報として出力する。第2ホール素子210は、第1防振レンズ103に設けられた磁石による磁場の強さに応じた電圧を有する信号を、第1防振レンズ103のヨー方向における位置情報として出力する。位置情報は、第1レンズ制御部205、第2レンズ制御部206に供給される。
【0026】
第1レンズ制御部205は、第1ホール素子209からの信号値が、第1防振制御部203からの補正位置制御信号値に収束するよう、第1ドライブ部207を駆動しながらフィードバック制御する。また、第2レンズ制御部206は、第2ホール素子210からの信号値が、第2防振制御部204からの補正位置制御信号値に収束するよう、第2ドライブ部208を駆動しながらフィードバック制御する。
【0027】
なお、第1ホール素子209、第2ホール素子210から出力される位置信号値には、ばらつきがあるので、所定の補正位置制御信号に対して防振レンズ103が所定の位置に移動するように、第1及び第2ホール素子209,210の出力調整を行う。
【0028】
第1防振制御部203は、第1振動センサ201からの振れ情報に基づき、被写体像の画像振れを打ち消すように第1防振レンズ103の位置を移動させる補正位置制御信号を出力する。第2防振制御部204は、第2振動センサ202からの振れ情報に基づき、画像振れを打ち消すように第1防振レンズ103の位置を移動させる補正位置制御信号を出力する。
【0029】
第2防振制御部204は、第2振動センサ202からの振れ情報に基づき、画像振れを打ち消すように第1防振レンズ103の位置を移動させる補正位置制御信号を出力する。例えば、第1防振制御部203、第2防振制御部204は、振れ情報(角速度信号)または振れ情報にフィルタ処理等を行うことにより、補正速度制御信号または補正位置制御信号を生成する。以上の動作により、撮影時に手振れ等の振動が撮像装置に存在しても、ある程度の振動までは画像振れを防止できる。また、第1防振制御部203、第2防振制御部204は、第1振動センサ201、第2振動センサ202からの振れ情報と、第1ホール素子209、第2ホール素子210の出力に基づいて、撮像装置のパンニング状態を検出し、パンニング制御を行う。
【0030】
第2防振駆動部204による第2防振レンズ113の駆動制御動作は、第1防振駆動部104による第1防振レンズ103の駆動制御動作と同様である。すなわち、第1防振制御部204が、供給された振れ信号に基づいて、ピッチ方向に第2防振レンズ113を駆動する補正位置制御信号を生成し、第3レンズ位置制御部211に出力する。また、第2防振制御部204が、供給された振れ信号に基づいて、ヨー方向に防振レンズ113を駆動する補正位置制御信号を生成し、第4レンズ位置制御部212に出力する。
【0031】
第3レンズ制御部211は、第3ホール素子216からの信号値が、第1防振制御部203からの補正位置制御信号値に収束するよう、第3ドライブ部214を駆動しながらフィードバック制御する。また、第4レンズ制御部212は、第4ホール素子213からの信号値が、第2防振制御部204からの補正位置制御信号値に収束するよう、第4ドライブ部208を駆動しながらフィードバック制御する。
【0032】
本実施例では、第1防振制御部203、第1レンズ位置制御部205および第1ドライブ部207が、ピッチ方向の振れ信号の低周波成分を補正する。また、第1防振制御部203、第3レンズ位置制御部205および第3ドライブ部214が、ピッチ方向の振れ信号の高周波成分を補正する。
【0033】
また、第2防振制御部204、第2レンズ位置制御部206および第2ドライブ部208が、ヨー方向の振れ信号の低周波成分を補正する。また、第2防振制御部204、第4レンズ位置制御部212および第4ドライブ部215が、ヨー方向の振れ信号の高周波成分を補正する。
【0034】
図3は、第1防振レンズ駆動部の分解斜視図の例である。
第1防振レンズ駆動部104は、第1防振レンズ103、可動鏡筒122、固定地板123、転動ボール124、第1電磁駆動部207、第2の電磁駆動部208を備える。また、第1防振レンズ駆動部104は、付勢ばね127、第1位置センサ209、第2位置センサ210、センサーホルダー129を備える。
【0035】
第1電磁駆動部207は、第1磁石1251、第1コイル1252、第1ヨーク1253を備える。第2電磁駆動部208は、第2磁石1261、第2コイル1262、第2ヨーク1263を備える。
【0036】
第1防振レンズ103は、光軸を偏心させることのできる第1の補正光学部材である。第1防振レンズ103は、第1防振制御部203、第2防振制御部204により駆動制御される。これにより、撮像光学系を通過した光像を移動させる像振れ補正動作が行われ、撮像面での像の安定性を確保することができる。なお、本実施例では、補正光学系として補正レンズを用いているが、撮影光学系に対してCCDなどの撮像手段を駆動することでも、撮像面での像の安定性を確保できる。すなわち、撮像手段を、像振れを補正する手段として用いてもよい。
【0037】
可動鏡筒122は、中央の開口部に第1防振レンズ103を保持する第1の可動部である。可動鏡筒122は、第1磁石1251および第2磁石1252を保持する。また、可動鏡筒122は、転動ボール受け部を3個備えており、転動ボール124によって、光軸と直交する面内を移動可能に転動支持される。また、可動鏡筒122は、ばねかけ部を3個所備えており、付勢ばね127の一端を保持できる。
【0038】
固定地板123は、円筒形状に形成される第1の固定部材である。固定地板123は、外周部の3個所にフォロワー1231を備える。固定地板123の中央の開口部に、可動鏡筒122が配置されている。これにより、可動鏡筒122の可動量を制限することができる。
【0039】
また、固定地板123は、第1磁石1251の着磁面と対向する個所において、第1のコイル1252および第1のヨーク1253を保持する。また、固定地板123は、第2磁石1261の着磁面と対向する個所において、第2のコイル1262および第2のヨーク1263を保持する。また、固定地板123は、転動ボール受け部を3個備え、可動鏡筒122を、転動ボール124を介して、光軸と直交する面内を移動可能に支持する。また、固定地板123は、ばねかけ部を3個備える。これにより、付勢ばね127の一端を保持する。
【0040】
第1電磁駆動部207は、この例では、公知のボイスコイルモータである。固定地板123に取り付けられた第1コイル1252に電流を流すことで、可動鏡筒122に固定された第1磁石1251との間にローレンツ力を発生し、可動鏡筒122を駆動することができる。第2電磁駆動部208は、第1電磁駆動部207と同様のボイスコイルモータを90°回転させて配置したものであるので、詳しい説明は省略する。
【0041】
付勢ばね127は、変形量に比例する付勢力を発生する引っ張りばねである。付勢ばね127は、一端を可動鏡筒122に固定され、他端を固定地板123に固定され、その間に付勢力を発生する。この付勢力により、転動ボール124が挟持され、転動ボール124は固定地板123と可動鏡筒122との接触状態を保つことができる。
【0042】
位置センサ209および位置センサ210は、第1磁石1251および第2磁石1261の磁束を読み取るホール素子を利用した2つの磁気センサであり、その出力変化から、可動鏡筒122の平面内の移動を検出することができる。
【0043】
センサーホルダー129は、概略円盤上に構成され、固定地板123に固定される。2つの位置センサ128を、第1磁石1251および第2磁石1261と対向する位置に保持することができる。また、センサーホルダー129は、固定地板123とともに形成された内部の空間に可動鏡筒122を収納することができる。これにより、像振れ補正装置に衝撃力がかかったときや、姿勢差が変化したときでも、内部の部品の脱落を防ぐことができる。上述した構成により、第1防振駆動部104は、光軸と直交する面上の任意の位置に第1防振レンズ103を移動させることができる。
【0044】
図4は、第1防振レンズ駆動部と第2防振レンズ駆動部の位置関係を示す図である。
図4では、説明のために、防振レンズ駆動部の一部を分解・省略して示す。可動鏡筒132は、第2防振駆動部114が備える第2の可動部である。可動鏡筒132は、中央の開口部に第2防振レンズ113を保持する。固定地板133は、第2防振駆動部114が備える第2の固定部材である。第2防振レンズ駆動部は、レンズの形状およびそれを保持する可動鏡筒132の形状以外は、第1防振レンズ駆動部と同様の構成であるため、詳しい説明は省略する。
【0045】
図5は、本実施例の像振れ補正装置が備えるピッチ方向の振れ信号を補正する機構を示す図である。第2防振制御部204、第2レンズ位置制御部206、第4レンズ位置制御部212、第2ドライブ部208、第4ドライブ部215によって実現されるヨー方向の振れ信号を補正する機構については、
図5に示す機構と同様であるので、説明を省略する。
【0046】
図5において、第1振動センサ201は、撮像装置に加わる振れ情報信号(角速度信号)を検出する。第1防振制御部203は、LPF(ローパスフィルタ)501、503、504、パン判定部502、減算器500を備える。LPF501は、第1振動センサ201が検出した振れ信号から、低周波成分を抽出する。LPF501により抽出された低周波の手振れ信号は、フィルタ安定までの時定数が変更可能なLPF503により積分処理され、低周波成分のみ抽出された振れ角度信号が生成される。フィルタ安定までの時定数が変更可能とは、例えば、フィルタの係数を変更することによりカットオフ周波数を変更可能であること、もしくは、フィルタの演算内の演算結果(中間値)を保持するバッファを任意のタイミングで自由に書き換えられることを意味する。
【0047】
パン判定部502は、撮像装置のパン動作を判定し、LPF503およびLPF504のフィルタ安定までの時定数変更処理を行う。具体的には、パン判定部502は、第1振動センサ201が検出した振れ信号が規定値以上となった場合に、パン動作がされたと判定する。パン判定部502が、第1防振レンズ103の現在位置、第2防振レンズ113の現在位置が規定値以上となった場合に、パン動作がされたと判定してもよい。また、パン判定部502が、第1防振レンズ103の目標位置、第2防振レンズ113の目標位置が規定値以上となった場合に、パン動作がされたと判定してもよい。これにより、大きな振れが撮像装置に加わった場合に、第1防振レンズ103、第2防振レンズ113が可動範囲以上に駆動してしまうことを防止し、パン動作直後の揺れ戻しにより撮影画像が不安定になることを防止することができる。
【0048】
減算器500は、第1振動センサ201で検出された手振れ信号からLPF501で抽出された低周波成分を減算することで、手振れ信号から高周波成分を抽出する。LPF504は、抽出された高周波成分を、積分処理することで角速度情報から角度情報に変換し、高周波成分のみ抽出された手振れ角度信号を生成する。なお、LPF503およびLPF504の係数を変更することで、フィルタの出力を任意の倍率で出力することが可能である。
【0049】
以上のように生成された手振れ角度信号の低周波成分から生成された防振レンズ目標位置が、第1駆動リミット505で駆動量が制限された後に、第1レンズ位置制御部205へ入力される。手振れ角度信号の高周波成分から生成された防振レンズ目標位置が、第3駆動リミット506で駆動量を制限された後に、第3レンズ位置制御部211へ入力される。
【0050】
第1ホール素子209で検出された第1防振レンズ103の位置情報が、第1位置検出信号増幅器507によって所定の大きさに増幅された後に第1駆動リミット505から出力されたレンズ目標位置と比較される。そして、第1ドライブ部207を介して、位置フィードバック制御により防振動作が実行される。
【0051】
また、第3ホール素子216で検出された第2防振レンズ113の位置情報が、第3位置検出信号増幅器508によって所定の大きさに増幅された後に第3駆動リミット506から出力されたレンズ目標位置と比較される。そして、第3ドライブ部214を介して位置フィードバック制御により防振動作が実行される。第1レンズ位置制御部205および第3レンズ位置制御部211については、任意の制御演算器を使用してもよい。この例では、第1レンズ位置制御部205および第3レンズ位置制御部211としてPID制御器を使用する。
【0052】
図6は、本実施例の撮像装置による防振レンズの目標位置算出処理を説明するフローチャートである。防振制御演算は、一定周期間隔で実行される。まず、処理が開始すると(ステップS101)、振動センサ201が手振れ信号を取得する(ステップS102)。続いて、LPF501が、手振れ信号の周波数帯域を分割する演算を行い(ステップS103)、LPF501の演算結果が手振れ信号の低周波成分としてメモリに保存される(ステップS104)。
【0053】
次に、パン判定部502が、撮像装置がパン動作(パンニング)中であるか否かを判定する(ステップS105)。撮像装置がパンニング中であると判定された場合は、LPF503、504の演算が安定するまでの時定数を短くする処理が行われる(ステップS106)。パンニング中ではないと判定された場合は、時定数変更の処理は行わず、処理がステップS107に進む。
【0054】
ステップS107において、LPF503が、ステップS104でメモリに保存されたLPF501の出力値を取得する(ステップS107)。そして、LPF503が、取得した出力値を積分して、角速度情報から角度情報へ変換する(ステップS108)。
次に、第1駆動リミット505が、LPF503の出力値を所定の大きさに制限する(ステップS109)。そして、第1駆動リミット505が、LPF503の出力値を第1レンズ位置制御部205へ入力する(ステップS110)。これにより、第1防振レンズ103が駆動される。
【0055】
次に、減算器500が、ステップS102で取得された手振れ信号からステップS104で保存されたLPF501の出力値を減算して(ステップS111)、手振れ信号の高周波数成分が抽出される。このようにして、手振れ信号がLPF501で設定したカットオフ周波数にて低周波成分と高周波成分に分割される。
【0056】
LPF504が、抽出された手振れ信号の高周波成分を積分することで角速度信号から角度信号に変換する(ステップS112)。そして、第3駆動リミット506が、LFP504の出力値を所定の大きさに制限して(ステップS113)、第3レンズ位置制御部211へ入力する(ステップS114)。これにより、第2防振レンズ113が駆動される。
【0057】
本実施例の像振れ補正装置は、手振れ信号を低周波成分と高周波成分とに分割し、それぞれの成分を第1レンズ位置制御部205、第3レンズ位置制御部211によって別個に補正する。これにより、撮影者の手振れ特性の違いや撮影状況の違いによる像振れ補正性能の低下を防止することができる。
【0058】
次に、本実施例の像振れ補正装置が備える第1の補正手段および第2の補正手段の駆動条件について、
図7を参照して説明する。この例では、第1防振レンズ103が、第1の補正手段として機能する。また、第2防振レンズ113が、第2の補正手段として機能する。
【0059】
(防振周波数帯域)
第1の補正手段の防振周波数帯域は、振れ信号の低周波成分である。第2の補正手段の防振周波数帯域は、振れ信号の高周波成分である。
【0060】
(防振の補正角度)
第1の補正手段による防振の補正角度は、第2の補正手段による防振の補正角度に比べて広く設定する。これは、一般的に、振れ信号の低周波成分は、高周波成分に比べて大きく、防振角度が多く必要となるからである。これにより、第1の補正手段に比べて、第2の補正手段に対応するメカ構成を小さくすることができる。
【0061】
(レンズ駆動による光学性能劣化)
一般的に、振れ信号を補正する手段の駆動量が大きくなると、周辺光量、解像度、収差などが劣化する傾向がある。したがって、防振のため駆動量が大きくなりやすい第1の補正手段については、第2の補正手段に比べて、レンズ駆動による光学性能を劣化しにくい構成に設定する。
【0062】
(駆動方式)
防振レンズの駆動方式は、公知である光軸に対してチルトする方式の駆動方法の方が、光軸に直交する面にシフトする方式に比べて、光学性能の劣化が小さい。したがって、第1の補正手段が備える第1防振レンズ103は、チルト方向へ駆動する方式とし、第2の補正手段が備える第2防振レンズ113は、シフト駆動する方式とする。
【0063】
(レンズの配置位置)
本実施例では、第1の補正手段の補正角度は第2の補正手段の補正角度より大きく設定される。したがって、第1防振レンズ103は、第2防振レンズ113よりも、光学性能の劣化が少ない被写体側に近い方へ配置する。
【0064】
(位置検出信号増幅率)
ホール素子が出力する信号(ホール素子信号)は、防振レンズの位置検出信号である。ホール素子信号を所定の倍率に増幅する位置検出信号増幅器の増幅率については、ホール素子信号の増幅率が大きい方が、位置検出に対する分解能は向上する。しかし、増幅後の電気信号をデジタル的にADコンバータなどで取得する場合には、限られた電圧レンジ内でダイナミックレンジが広くとれない場合が多い。したがって、分解能とダイナミックレンジとを両立させるために、ダイナミックレンジの必要な低周波振れを補正する第1の補正手段に対応するホール素子信号の増幅率を小さく設定する。一方、高周波で細かな振れが多い第2の補正手段に対応するホール素子信号の増幅率を大きく設定することで、位置検出の分解能を高くする。具体的には、第1の信号増幅手段である第1位置検出信号増幅器507による信号増幅率を、第2の信号増幅手段である第3位置検出信号増幅器508による信号増幅率よりも小さくする。
【0065】
(防振調整周波数)
防振調整周波数は、補正手段による防振の効果が最も高くなる周波数である。本実施例では、第1の補正手段の防振調整周波数を、第2の補正手段の防振調整周波数に比べて低く設定する。
【0066】
図8は、防振レンズ1つを用いる従来の像振れ補正装置の防振性能と防振レンズ2つを用いる本実施例の像振れ補正装置の防振性能とを示す。
図8(A)は、従来の像振れ補正装置の防振性能を示す。
図8(B)は、本実施例の像振れ補正装置の防振性能を示す。
図8(A),(B)における縦軸は、抑振率を示す。横軸は、手振れ周波数を示す。抑振率は、手振れ性能を示す指標である。抑振率は、例えば、以下の式で表される。
【0067】
抑振率=(手振れ補正切り時の揺れ量−手振れ補正入り時の揺れ量)/手振れ補正切り時の揺れ量×100%
上記式より、手振れ補正入り時の揺れ残りがなくなれば(0となれば)、抑振率は100%となる。
【0068】
図8(A)に示すように、従来の像振れ補正装置では、1つの手振れ周波数で抑振率が最大となる場合が多い。これは、振れセンサの精度、特性、感度ばらつき等の要因、あるいは防振レンズの駆動特性、防振制御器、レンズ位置制御器などのチューニングなどの要因から、すべての手振れ周波数で抑振率が最大となるようにすることが困難だからである。したがって、従来の像振れ補正装置によれば、例えば、低周波側の抑振率を最大となるように制御器のチューニングおよび、防振制御器内の積分LPFのゲインを調整すると、高周波の抑振率が下がってしまう。
【0069】
一方、本実施例の像振れ補正装置は、振れ信号を低周波および高周波に分割して、それぞれを別個の防振レンズで補正する。したがって、本実施例の像振れ補正装置では、
図8(B)に示すように、低周波および高周波それぞれについて、別々に抑振率が最大となるようにチューニングすることで、従来の像振れ補正装置に比べて抑振率が高くなる周波数領域が広がり、防振性能が高くなる。すなわち、本実施例の像振れ補正装置によれば、ユーザによって手振れ周波数傾向が違うことによる防振性能差を吸収することができ、手振れ補正の効果を高くすることができる。
【0070】
(帰還制御手段周波数帯域)
図7の説明に戻る。第2の補正手段は、高周波側の防振を主に行う。したがって、第2の補正手段の現在位置をフィードバック制御する第1のフィードバック制御手段の周波数帯域を、第2の補正手段の現在位置をフィードバック制御する第2のフィードバック制御手段の周波数帯域より高く設定する。第1レンズ位置制御部205が、第1のフィードバック制御手段に相当する。また、第3レンズ位置制御部211が、第2のフィードバック制御手段に相当する。
【0071】
(レンズ駆動ストロークに対する防振角度)
防振レンズの光学特性上、同じ駆動ストロークに対して得られる防振角度は異なる。より大きな防振角度に必要な低周波を主に防振する第1の補正手段として、第2の補正手段に比べて、駆動ストロークに対して得られる防振角度の大きいレンズを使用する。
本実施形態の像振れ補正装置は、第1、第2の補正手段を、振れ周波数の大きさに対応して別々に設計する。これにより、装置を大型化することなく撮影条件、撮影者等の振れ量、振れ周波数の違いによる振れ補正性能への影響を受けにくい、防振効果の高い、像振れ補正処理を実行することができる。