(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記段差構造は、前記遊星歯車減速機の径方向に延在する第1の面と、前記第1の面の前記径方向の端部と接続される一端部から前記遊星歯車及び前記保持ピンから離れる側の前記軸方向に延在する第2の面と、前記第2の面の前記軸方向の他端部から前記径方向に延在する第3の面を有すると共に、前記第1の面及び前記第3の面が、それぞれ、前記遊星歯車及び前記保持ピンと前記軸方向で対向する、
請求項1又は2に記載のショベル。
前記保持ピンの前記突出側の端面、若しくは、前記遊星歯車が前記軸方向の前記対向部の存在する側に移動する際、前記遊星歯車と前記対向部とが接触する前に、前記保持ピンと接触する面のうち、少なくとも一方は表面処理がされていることを特徴とする、
請求項1乃至4の何れか一項に記載のショベル。
平歯車である遊星歯車と、前記遊星歯車を回転可能に保持し、フローティング支持された遊星キャリアと、前記遊星歯車を前記遊星キャリアに保持する保持ピンであって、前記遊星歯車から前記遊星キャリアの軸方向に突出した保持ピンと、を含む遊星歯車減速機と、
前記遊星歯車減速機を収容する収容部材と、を備え、
前記収容部材は、前記保持ピンが前記遊星歯車から前記軸方向で突出した突出側において、前記保持ピン及び前記遊星歯車に対して前記軸方向に対向する対向部を含み、
前記対向部は、前記保持ピンと対向する部分から前記遊星歯車と対向する部分に向けて、前記遊星歯車及び前記保持ピンに近づく前記軸方向の段差構造を有し、
前記段差構造は、前記遊星歯車が前記軸方向の前記対向部の存在する側に移動する際、前記遊星歯車と前記対向部とが接触する前に、前記保持ピンと前記対向部とが接触するように構成されることを特徴とする、
減速機。
平歯車である遊星歯車と、前記遊星歯車を回転可能に保持し、フローティング支持された遊星キャリアと、前記遊星歯車を前記遊星キャリアに保持する保持ピンであって、前記遊星歯車から前記遊星キャリアの軸方向に突出した保持ピンと、を含む遊星歯車減速機と、
前記遊星歯車減速機を収容する収容部材と、を備え、
前記収容部材は、前記保持ピンが前記遊星歯車から前記軸方向で突出した突出側において、前記保持ピン及び前記遊星歯車に対して前記軸方向に対向する対向部を含み、
前記対向部は、前記保持ピンと対向する部分から前記遊星歯車と対向する部分に向けて、前記遊星歯車及び前記保持ピンに近づく前記軸方向の段差構造を有し、
前記遊星歯車が前記軸方向の前記対向部の存在する側に移動する際、前記遊星歯車と前記対向部とが接触する前に、前記保持ピンと接触するように構成される保持ピン対向部材を更に備えることを特徴とする、
減速機。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。
【0014】
まず、本発明の一実施形態による旋回駆動装置が組み込まれたショベルの全体構成及び駆動系の構成について説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施形態による旋回駆動装置が組み込まれたショベルを示す側面図である。なお、ショベルは建設機械の一例であり、本発明の一実施形態による旋回駆動装置は、旋回体を旋回する機構を有する建設機械に組み込むことができる。
【0016】
図1に示すショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端には、アーム5が取り付けられ、アーム5の先端には、バケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン等の動力源が搭載される。
【0017】
なお、
図1に示すショベルは、旋回駆動装置に供給する電力を蓄積する蓄電装置を有するショベルである。しかしながら、本発明は、電動旋回を採用したショベルであれば、例えば外部電源から充電電力が供給される電気駆動式ショベルにも適用され得る。
【0018】
図2は、
図1に示すショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。
図2において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは太い実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は細い実線でそれぞれ示されている。
【0019】
機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、変速機13の2つの入力軸にそれぞれ接続されている。変速機13の出力軸には、油圧ポンプとしてメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続されている。
【0020】
コントロールバルブ17は、ハイブリッド式ショベルにおける油圧系の制御を行う制御装置である。下部走行体1用の走行用油圧モータ1A(右用)、1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9は、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17に接続される。また、コントロールバルブ17には、油圧ライン27を介して操作装置26が接続され、パイロットポンプ15の出力圧を元圧として、操作装置26の操作量に応じて調整されたパイロット圧(信号圧)が供給される。コントロールバルブ17は、供給されたパイロット圧に応じて、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、走行用油圧モータ1A(右用)、及び走行用油圧モータ1B(左用)のうちの一又は複数のものに対し、メインポンプ14から供給された作動油を選択的に供給する。なお、以下の説明では、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、走行用油圧モータ1A(右用)、及び走行用油圧モータ1B(左用)を集合的に「油圧アクチュエータ」と呼ぶ場合がある。
【0021】
電動発電機12には、インバータ18を介して、蓄電器としてのキャパシタを含む蓄電系(蓄電装置)120が接続される。蓄電系120には、インバータ20を介して電動作業要素としての旋回用電動機21が接続されている。旋回用電動機21の出力軸21bには、レゾルバ22、及び旋回減速機24が接続される。旋回減速機24の出力軸24Aにはメカニカルブレーキ23が接続される。旋回用電動機21と、レゾルバ22と、メカニカルブレーキ23と、旋回減速機24とにより、負荷駆動系としての旋回駆動装置40が構成される。ここで、旋回用電動機21は、上部旋回体3を旋回駆動するための旋回用電動モータに相当し、メカニカルブレーキ23は、上部旋回体3を旋回停止状態に保持するために上部旋回体3に機械的にブレーキをかけるブレーキ装置に相当する。なお、本図においては、簡単のため、旋回減速機24とメカニカルブレーキ23とを別のブロック要素として記載したが、後述するように、本実施形態におけるメカニカルブレーキ23は、旋回減速機24に含まれる複数の減速機の間に組み込まれて構成される。メカニカルブレーキ23と旋回減速機24の詳細については、後述する。
【0022】
操作装置26は、レバー26A、26B、及びペダル26Cを含む。レバー26A、26B、及びペダル26Cは、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及び圧力センサ29にそれぞれ接続される。圧力センサ29は、電気系の駆動制御を行うコントローラ30に接続されている。
【0023】
コントローラ30は、ハイブリッド式ショベルの駆動制御を行う主制御部としての制御装置である。コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、CPUが内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムを実行することにより実現される装置である。
【0024】
コントローラ30は、圧力センサ29から供給される信号を速度指令に変換し、旋回用電動機21の駆動制御を行う。圧力センサ29から供給される信号は、旋回機構2を旋回させるために操作装置26を操作した場合の操作量を表す信号に相当する。なお、コントローラ30は、レゾルバ22から旋回用電動機21の回転位置(旋回用電動機21内のロータの位置や旋回用電動機21の回転角速度等)に関する信号を受信し、該信号に基づき、上記駆動制御を行う。
【0025】
コントローラ30は、電動発電機12の運転制御(電動(アシスト)運転又は発電運転の切り替え)を行うとともに、蓄電系120に含まれる昇降圧コンバータを駆動制御することによりキャパシタの充放電制御を行う。コントローラ30は、キャパシタの充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)、及び旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づいて、蓄電系120に含まれる昇降圧コンバータの昇圧動作と降圧動作の切替制御を行い、これによりキャパシタの充放電制御を行う。また、コントローラ30は、キャパシタに充電する量(充電電流又は充電電力)の制御も行なう。
【0026】
上述のような構成のショベルによる作業では、上部旋回体3を旋回駆動するために、インバータ20を介して供給される電力により旋回用電動機21が駆動される。旋回用電動機21の出力軸21bの回転力は、旋回減速機24とメカニカルブレーキ23を介して旋回駆動装置40の出力軸40Aに伝達される。
【0027】
図3は本発明の一実施形態による旋回駆動装置40の構成を示すブロック図である。上述のように、旋回駆動装置40は、駆動源としての電動モータである旋回用電動機21と旋回用電動機21(電動モータ)の回転位置を検出するレゾルバ22とを含む。旋回用電動機21の出力軸側に旋回減速機24が接続される。
【0028】
具体的には、旋回減速機24は、第1旋回減速機24−1、第2旋回減速機24−2、及び第3旋回減速機24−3の3段構成を有する。第1旋回減速機24−1、第2旋回減速機24−2、及び第3旋回減速機24−3は、それぞれ遊星歯車減速機で構成される。より具体的には、第1段の第1旋回減速機24−1は、旋回用電動機21に組み付けられる。また、第1旋回減速機24−1の出力軸となる遊星キャリア46には、メカニカルブレーキ23としてのディスクブレーキが設けられる。また、第2段の第2旋回減速機24−2は、メカニカルブレーキ23を間に挟んで第1旋回減速機24−1に組み付けられ、第3段の第3旋回減速機24−3は第2旋回減速機24−2に組み付けられる。そして、第3旋回減速機24−3の出力軸が旋回駆動装置40の出力軸40Aとなる。後述するように、第1旋回減速機24−1とメカニカルブレーキ23とは、同一の収容部材(第1ギヤケース50、第2ギヤケース52等)で密閉された収容空間に収容され、高速段減速機150を構成する。また、第2旋回減速機24−2と第3旋回減速機24−3とは、同一の収容部材(第3ギヤケース54等)により密閉された収容空間に収容され、低速段減速機200を構成する。なお、図示はしないが、旋回駆動装置40の出力軸40Aは旋回機構2に接続され、出力軸40Aの回転力により旋回機構2が駆動される。
【0029】
次に、
図4及び
図5を参照しながら、旋回駆動装置40の具体的な構成について説明する。
【0030】
図4は、旋回駆動装置40の上面図であり、
図4中の破線は、第1旋回減速機24−1の主要構成部品のかくれ線を表す。
【0031】
図4を参照するに、かくれ線で表された主要構成部品は、第1旋回減速機24−1の遊星歯車機構と、遊星歯車機構の外周部に設けられるメカニカルブレーキ23のスプリング66である。遊星歯車機構は、第1旋回減速機の軸心に設けられる太陽歯車42と、太陽歯車42に噛み合う3つの遊星歯車44と、遊星歯車44に噛み合う内歯歯車48が表されている。
【0032】
また、
図5は、
図4のV−V線断面図であり、旋回駆動装置40のうち、第1旋回減速機24−1、メカニカルブレーキ23、第2旋回減速機24−2、及び第3旋回減速機24−3を構成する部分の断面図である。高速段減速機150に含まれる第1旋回減速機24−1及びメカニカルブレーキ23は、第1ギヤケース50、第2ギヤケース52等により構成される収容空間に収容される。また、低速段減速機200に含まれる第2旋回減速機24−2及び第3旋回減速機24−3は、第3ギヤケース54等により構成される収容空間に収容される。また、高速段減速機150(第2ギヤケース52)と低速段減速機200(第3ギヤケース54)とは、アダプタリング58を介して結合される。具体的には、高速段減速機150に含まれる第2ギヤケース52と低速段減速機200に含まれる第3ギヤケース54との間にアダプタリング58を介在させ、第2ギヤケース52と第3ギヤケース54との結合形状の差異をアダプタリング58に吸収させる。なお、アダプタリング58と第2ギヤケース52、及び第3ギヤケース54とは、ボルト締結される。
【0033】
まず、高速段減速機150(第1旋回減速機24−1、メカニカルブレーキ23)について説明をする。
【0034】
図5を参照するに、第1旋回減速機24―1を構成する遊星歯車減速機の太陽歯車42が、旋回用電動機21の出力軸21bに固定されている。また、太陽歯車42は、遊星キャリア46とベアリング51を介して回転可能に支えられている。また、太陽歯車42は、3つの遊星歯車44のそれぞれに係合している。遊星歯車44のそれぞれは、保持ピン44aを介して第1旋回減速機24−1の出力軸を構成する遊星キャリア46に回転可能に支持されている。そして、各遊星歯車44は、第1ギヤケース50の内面に形成された内歯歯車48に係合している。なお、保持ピン44aは、遊星歯車44の旋回用電動機21側の端面から軸方向に突出し、突出した部分の径を大きくすることにより遊星歯車44の軸方向の移動を規制している。
【0035】
内歯歯車48が形成された第1ギヤケース50は、旋回用電動機21のエンドプレート21aに固定されており、自ら回転することはできない。一方、出力軸を構成する遊星キャリア46は、第1ギヤケース50に固定された第2ギヤケース52に対して、ベアリング56を介して回転可能に支えられている。
【0036】
また、遊星キャリア46は、第1ギヤケース50に固定された第2ギヤケース52に対して、ベアリング56を介してフローティング支持(遊星キャリア46の径方向、軸方向に移動可能に支持)されている。これにより、各歯車(太陽歯車42、遊星歯車44、及び内歯歯車48)の噛合反力によって遊星歯車44(遊星キャリア46)をセンタリングさせ、各歯車の分担荷重の均一化を図ることができる。遊星キャリア46は、例えば、ベアリング56が第2ギヤケース52にスプライン結合される等によりフローティング支持されてよい。
【0037】
第1旋回減速機24−1に含まれる太陽歯車42、遊星歯車44、及び内歯歯車48は、例えば、はすば歯車として構成されてよい。第1旋回減速機24−1は、旋回用電動機21の回転駆動力が入力され、回転速度が速い状態であるため、はすば歯車とすることにより歯当たりによる騒音を低減することができる。
【0038】
なお、上述の第1旋回減速機24−1は、各歯車を潤滑するための潤滑油が、旋回用電動機21のエンドプレート21a、出力軸21b、第1ギヤケース50、第2ギヤケース52、及び遊星キャリア46によって密閉される構造となっている。
【0039】
以上のような構成の第1旋回減速機24−1において、旋回用電動機21の出力軸21bが回転して太陽歯車42が回転すると、遊星歯車44が回転(自転)する。遊星歯車44は第1ギヤケース50の内面に形成された内歯歯車48に係合しており、遊星歯車44の回転力で内歯歯車48が形成された第1ギヤケース50が回転しようとする。ところが、第1ギヤケース50は旋回用電動機21のエンドプレート21aに固定されているので、回転することはできない。その結果、遊星歯車44を支持しながら自ら回転可能に支持されている遊星キャリア46のほうが回転する。即ち、3つの遊星歯車44のそれぞれは、自転しながら公転することによって遊星キャリア46を回転させる。以上のような歯車作用により、旋回用電動機21の出力軸21bの回転が減速されて遊星キャリア46から出力される。なお、遊星キャリア46は、第1旋回減速機24−1の出力軸を構成する。
【0040】
次に、メカニカルブレーキ23を構成するディスクブレーキの構造について説明する。ディスクブレーキは固定部である第2ギヤケース52と出力軸である遊星キャリア46との間に形成される。遊星キャリア46の外周から遊星キャリア46の回転半径方向外側に向けてブレーキディスク60が延在する。ブレーキディスク60は、遊星キャリア46に対して回転はできないが、遊星キャリア46の軸方向には移動可能な状態で、例えば、スプライン結合のような結合構造を介して遊星キャリア46に結合されている。
【0041】
ブレーキディスク60の上下両側には、ブレーキプレート62が配置されている。ブレーキプレート62は、固定部である第2ギヤケース52に対して回転はできないが、遊星キャリア46の軸方向には移動可能な状態で、例えば、スプライン結合のような結合構造を介して第2ギヤケース52の内面側に結合されている。本実施形態では、3枚のブレーキプレート62のそれぞれの間に2枚のブレーキディスク60が挟まれる構成を採用する。しかしながら、ディスクブレーキは、当該構成に限定されるものではない。例えば、2枚のブレーキプレート62の間に1枚のブレーキディスク60が挟まれる構成であってもよく、4枚以上のブレーキプレート62のそれぞれの間に3枚以上のブレーキディスク60が挟まれる構成であってもよい。
【0042】
最も高い位置にあるブレーキプレート62の上には、ピストン64が、遊星キャリア46の軸方向に移動可能な状態で配置されている。ピストン64はスプリング66により押圧されて最も高い位置にあるブレーキプレート62に押し付けられている。本実施形態では、スプリング66としてコイルスプリングを用いているが、小さな変位で高出力を得ることのできる多段重ねの皿バネを用いることもできる。なお、
図4に示したとおり、スプリング66は、旋回駆動装置40の周方向に等角度間隔(
図4の例では、30°間隔で12個設けられる)で全周配置されており、ピストン64も同様に配置されている。
【0043】
ブレーキプレート62とブレーキディスク60とは、遊星キャリア46の軸方向に移動可能である。そのため、上側のブレーキプレート62がピストン64により押圧されると、ブレーキディスク60は上下のブレーキプレート62により挟まれて押圧される。ブレーキプレート62とブレーキディスク60の表面は摩擦係数の大きな被膜に覆われている。そして、ブレーキディスク60がブレーキプレート62により挟まれて押圧されることで、ブレーキディスク60の回転を阻止しようとするブレーキ力がブレーキディスク60に作用する。また、ブレーキディスク60は遊星キャリア46に対して回転できないように接続されている。そのため、ブレーキディスク60に作用するブレーキ力が遊星キャリア46に加わるブレーキ力となる。これにより、上部旋回体3の旋回停止状態の保持を安定させることができる。
【0044】
ピストン64と第2ギヤケース52との間には、作動油が供給可能な油圧空間68が形成され、油圧空間68にブレーキ解除ポート69が接続されている。また、ピストン64と第2ギヤケース52との間にはOリング等のシール部材91が配置され、油圧空間68内の作動油が漏れ出ないようにシールしている。パイロットポンプ15から操作装置26、油圧ライン27a(
図2参照)及びブレーキ解除ポート69を介して油圧空間68に油圧が供給されると、ピストン64が油圧により押し上げられてブレーキプレート62を押圧する力が無くなり、ブレーキは解除される。
【0045】
以上のような構成の第1旋回減速機24−1において、本実施形態では、第1ギヤケース50の上面にリング状の凹部が形成され、リング状の凹部の底面に複数の貫通孔が形成されている。この貫通孔のそれぞれに上述のスプリング66が挿入されている。各スプリング66の下端は、第1ギヤケース50の貫通孔から突出し、ピストン64に形成された穴の底面に当接している。そして、第1ギヤケース50のリング状の凹部には、スプリング押さえ部材90が嵌合している。スプリング押さえ部材90は、複数のボルト92により第1ギヤケース50に締め付けられて固定されている。
【0046】
スプリング押さえ部材90が第1ギヤケース50のリング状の凹部内に固定される前は、各スプリング66の上端はリング状の凹部の底面から上方に突出している。したがって、スプリング押さえ部材90を第1ギヤケース50のリング状の凹部内に固定する際に、各スプリング66はスプリング押さえ部材90により押圧されて圧縮される。スプリング押さえ部材90を第1ギヤケース50のリング状の凹部内に固定すると、各スプリング66は、スプリング押さえ部材90とピストン64との間に挟まれて圧縮された状態となっている。このときの各スプリング66の復元力(スプリング付勢力)が、ピストン64(すなわち、ブレーキプレート62)をブレーキディスク60に押し付ける力となり、遊星キャリア46に加わるブレーキ力となる。
【0047】
スプリング押さえ部材90が第1ギヤケース50のリング状の凹部内に固定された状態では、スプリング押さえ部材90全体がリング状の凹部内に収容される。そのため、スプリング押さえ部材90は、旋回用電動機21のエンドプレート21a(フランジとも呼ぶ場合もある)に当接する第1ギヤケース50の合わせ面から突出することはない。したがって、第1ギヤケース50の合わせ面のみが旋回用電動機21のエンドプレート21aに当接する。ただし、スプリング押さえ部材90の上面にはOリング等のシール部材93が配置され、第1ギヤケース50内の遊星歯車44を潤滑・冷却する潤滑油が漏れ出ないようにシールしている。また、スプリング押さえ部材90の下面にもOリング等のシール部材94が配置され、スプリング66が収容された部分に充填された潤滑油が漏れ出ないようにシールしている。同様に、第1ギヤケース50と第2ギヤケース52との間にもOリング等のシール部材95が配置され、スプリング66が収容された部分に充填された潤滑油が漏れ出ないようにシールしている。
【0048】
次に、低速段減速機200(第2旋回減速機24−2、第3旋回減速機24−3)について説明をする。
【0049】
第2旋回減速機24−2を構成する遊星歯車減速機の太陽歯車82は、第1旋回減速機24−1の出力軸としての遊星キャリア46に固定されている。また、太陽歯車82は、3つの遊星歯車84のそれぞれに係合している。遊星歯車84のそれぞれは、保持ピン84aを介して第2旋回減速機24−2の出力軸を構成する遊星キャリア86に回転可能に支持されている。そして、各遊星歯車84は、第3ギヤケース54の内面に形成された内歯歯車88に係合している。なお、保持ピン84aは、遊星歯車84の第1旋回減速機24−1側の端面から軸方向に突出し、突出した部分の径を大きくすることにより遊星歯車84の軸方向の移動を規制している。
【0050】
また、遊星キャリア86は、フローティング支持(遊星キャリア86の径方向、軸方向に移動可能に支持)されている。具体的には、遊星キャリア86は、遊星歯車84を介して、フローティング支持された太陽歯車82(遊星キャリア46)に係合し、第3旋回減速機24−3の太陽歯車102を介して、フローティング支持された遊星歯車104(遊星キャリア106)に係合する。なお、第3旋回減速機24−3の遊星キャリア106のフローティング支持の詳細については、後述する。これにより、各歯車(太陽歯車82、遊星歯車84、及び内歯歯車88)の噛合反力によって遊星歯車84(遊星キャリア86)をセンタリングさせ、各歯車の分担荷重の均一化を図ることができる。
【0051】
内歯歯車88が形成された第3ギヤケース54は、上述したとおり、アダプタリング58を介して、第2ギヤケース52に固定されており、自ら回転することはできない。一方、出力軸を構成する遊星キャリア86は、第3ギヤケース54には支持固定されず、後述する第3旋回減速機24−3の太陽歯車102を介して遊星歯車104と係合することにより回転可能となっている。
【0052】
第2旋回減速機24−2に含まれる太陽歯車82、遊星歯車84、及び内歯歯車88は、平歯車として構成される。第2旋回減速機24−2には、旋回用電動機21の回転駆動力を第1旋回減速機24−1により減速した動力が入力されるため、回転速度は減速され、歯当たりによる騒音は低減される。よって、平歯車を用いることによりコストを抑制することができる。
【0053】
以上のような構成の第2旋回減速機24−2において、第1旋回減速機24−1の出力軸としての遊星キャリア46が回転して太陽歯車82が回転すると、遊星歯車84が回転(自転)する。遊星歯車84は第3ギヤケース54の内面に形成された内歯歯車88に係合しており、遊星歯車84の回転力で内歯歯車88が形成された第3ギヤケース54が回転しようとする。ところが、第3ギヤケース54はアダプタリング58を介して第2ギヤケース52に固定されているので、回転することはできない。その結果、遊星歯車84を支持しながら自ら回転可能に支持されている遊星キャリア86のほうが回転する。即ち、3つの遊星歯車84のそれぞれは、自転しながら公転することによって遊星キャリア86を回転させる。以上のような歯車作用により、第1旋回減速機24−1の出力軸としての遊星キャリア46の回転が減速されて遊星キャリア86から出力される。なお、遊星キャリア86は、第2旋回減速機24−2の出力軸を構成する。
【0054】
第3旋回減速機24−3を構成する遊星歯車減速機の太陽歯車102は、第2旋回減速機24−2の出力軸としての遊星キャリア86に固定されている。また、太陽歯車102は、3つの遊星歯車104のそれぞれに係合している。遊星歯車104のそれぞれは、保持ピン104aを介して第3旋回減速機24−3の出力軸を構成する遊星キャリア106に回転可能に支持されている。そして、各遊星歯車104は、第3ギヤケース54の内面に形成された内歯歯車108に係合している。なお、保持ピン104aは、遊星歯車104の第2旋回減速機24−2側の端面から軸方向に突出し、突出した部分の径を大きくすることにより遊星歯車104の軸方向の移動を規制している。
【0055】
また、遊星キャリア106は、第3ギヤケース54に対して、ベアリング110を介してフローティング支持(遊星キャリア106の径方向、軸方向に移動可能に支持)されている。これにより、各歯車(太陽歯車102、遊星歯車104、及び内歯歯車108)の噛合反力によって遊星歯車104(遊星キャリア106)をセンタリングさせ、各歯車の分担荷重の均一化を図ることができる。遊星キャリア106は、例えば、ベアリング110が第3ギヤケース54にスプライン結合される等によりフローティング支持されてよい。
【0056】
内歯歯車108が形成された第3ギヤケース54は、上述したとおり、アダプタリング58を介して、第2ギヤケース52に固定されており、自ら回転することはできない。一方、出力軸を構成する遊星キャリア106は、第3ギヤケース54に対して、ベアリング110を介して回転可能に支えられている。
【0057】
第3旋回減速機24−3に含まれる太陽歯車102、遊星歯車104、及び内歯歯車108は、平歯車として構成される。第3旋回減速機24−3には、旋回用電動機21の回転駆動力を第1旋回減速機24−1、第2旋回減速機24−2により減速した動力が入力されるため、回転速度は更に減速され、歯当たりによる騒音は更に低減される。よって、平歯車を用いることによりコストを抑制することができる。
【0058】
以上のような構成の第3旋回減速機24−3において、第2旋回減速機24−2の出力軸としての遊星キャリア86が回転して太陽歯車102が回転すると、遊星歯車104が回転(自転)する。遊星歯車104は第3ギヤケース54の内面に形成された内歯歯車108に係合しており、遊星歯車104の回転力で内歯歯車108が形成された第3ギヤケース54が回転しようとする。ところが、第3ギヤケース54はアダプタリング58を介して第2ギヤケース52に固定されているので、回転することはできない。その結果、遊星歯車104を支持しながら自ら回転可能に支持されている遊星キャリア106のほうが回転する。即ち、3つの遊星歯車104のそれぞれは、自転しながら公転することによって遊星キャリア106を回転させる。以上のような歯車作用により、第2旋回減速機24−2の出力軸としての遊星キャリア86の回転が減速されて遊星キャリア106から出力される。なお、遊星キャリア106は、旋回減速機24の出力軸40Aを構成する。
【0059】
上述の構成により、旋回駆動装置40は、旋回用電動機21の出力軸21bの回転速度を減じて出力軸40Aのトルクを増大させる。
【0060】
具体的には、旋回駆動装置40は、出力軸21bの時計回りの高速・低トルクの回転に応じて、遊星歯車44を反時計回りに自転させながら時計回りに公転させ、遊星キャリア46を時計回りに回転させる。そして、旋回駆動装置40は、遊星キャリア46の時計回りの回転に応じて、遊星歯車84を反時計回りに自転させながら時計回りに公転させ、遊星キャリア86を時計回りに回転させる。さらに、旋回駆動装置40は、遊星キャリア86の時計回りの回転に応じて、遊星歯車104を反時計回りに自転させながら時計回りに公転させ、遊星キャリア106、すなわち、出力軸40Aを時計回りに低速・高トルクで回転させる。出力軸21bが反時計回りに回転する場合も、各歯車の回転方向が逆になることを除き、同様である。
【0061】
また、旋回駆動装置40は、出力軸21b、エンドプレート21a、第1ギヤケース50、第2ギヤケース52、及び遊星キャリア46で密閉される空間SP1を有する。なお、出力軸21bには、図示しないオイルシールが装着される。また、遊星キャリア46には、ベアリング56の下にオイルシール57が装着される。空間SP1は、細かいドットパターンで表される潤滑油LB1で潤滑される太陽歯車42、遊星歯車44、遊星キャリア46、ブレーキディスク60、ブレーキプレート62、及びピストン64等を収容する。
【0062】
また、旋回駆動装置40は、遊星キャリア46、第2ギヤケース52、第3ギヤケース54、アダプタリング58、及び遊星キャリア106で密閉される空間SP2を有する。なお、遊星キャリア106には、図示しないオイルシールが装着される。空間SP2は、粗いドットパターンで表される潤滑油LB2で潤滑される太陽歯車82、102、遊星歯車84、104、及び、遊星キャリア86、106等を収容する。なお、潤滑油LB2は、オイルシール57によって潤滑油LB1から隔離されている。また、潤滑油LB2は、潤滑油LB1と同じ種類の潤滑油であってもよく、異なる種類の潤滑油であってもよい。例えば、旋回駆動装置40は、高回転用の潤滑油LB1を、低回転用の潤滑油LB2とは異なる種類の潤滑油としてもよい。
【0063】
以上のような構成の旋回駆動装置40において、遊星キャリア86、106は、フローティング支持されており、且つ、第2旋回減速機24−2、第3旋回減速機24−3の各歯車は平歯車であるため、旋回用電動機21の回転に伴い軸方向に移動する場合がある。この場合、遊星キャリア86、又は、遊星キャリア86と遊星キャリア106との軸方向の移動に伴い、遊星歯車84が遊星キャリア86の軸方向で対向する部材(第2ギヤケース52)と接触したり、摺動したりするおそれがある。特に、潤滑油LB1を液密に保つため、回転体である遊星キャリア46側面にオイルシール57が設けられており、オイルシール57近傍の第2ギヤケース52の下端と遊星歯車84とが近づく構造となっている。
【0064】
そこで、本実施形態では、保持ピン84aと、該保持ピン84aに対して遊星キャリア86の軸方向で対向する部材との該軸方向の隙間が、遊星歯車84と、該遊星歯車84に対して該遊星キャリア86の軸方向で対向する部材との該軸方向の隙間よりも小さくなるようにするとよい。
【0065】
ここで、
図6は、第2旋回減速機24−2の遊星歯車84及び保持ピン84aと遊星キャリア86の軸方向に対向する部材(第2ギヤケース52)との関係の一例を示す詳細図である。なお、
図6は、
図5と同様、
図4におけるV−V線断面図である。
【0066】
図6を参照するに、保持ピン84aと、該保持ピン84aに対して遊星キャリア86の軸方向に対向する第2ギヤケース52の下端面PL1との該軸方向の隙CL1は、遊星歯車84と、該遊星歯車84対して遊星キャリア86の軸方向に対向する第2ギヤケース52の下端面PL0との該軸方向の隙CL0よりも小さくなっている。具体的には、第2ギヤケース52の下端部において、強度上必要な形状(
図6中の点線)に対して、部分的に下方への張り出し部を設けることにより保持ピン84aと第2ギヤケース52との遊星キャリア86の軸方向での隙間を小さくしている。これにより、遊星キャリア86が軸方向(上方)に移動した場合であっても、保持ピン84aが先に第2ギヤケース52に接触するため、遊星歯車84と第2ギヤケース52との接触、摺動による遊星歯車84、第2ギヤケース52の破損等を防止することができる。また、遊星歯車84の回転(自転)速度に比して、保持ピン84a(遊星キャリア86)の公転速度は、減速されて非常に遅くなっている。よって、遊星歯車84と第2ギヤケース52が接触、摺動した場合に対して、潤滑油の油温上昇を抑制することができる。
【0067】
また、保持ピン84aの端面84aPLは、遊星キャリア86の軸方向に対して略垂直な平面である。又、端面84aPLと対向し、前記保持ピンとの隙CL1を構成する平面である第2ギヤケース52の下端面PL1と、保持ピン84aの端面84aPLとは、略平行である。そのため、遊星キャリア86の軸方向の移動に伴い保持ピン84aと第2ギヤケース52とが接触しても、保持ピン84aは、第2ギヤケース52に面接触して摺動することになるため、保持ピン84a、第2ギヤケース52の磨耗等を抑制することができる。また、上述した潤滑油の油温上昇も更に抑制することができる。
【0068】
また、遊星キャリア86の軸方向への移動に伴い、接触する保持ピン84aの端面84aPLと第2ギヤケース52の下端面PL1とのうち、少なくとも一方は、摩擦係数を小さくする表面処理が行われてよい。例えば、研磨や切削による表面処理が行われてよい。これにより、保持ピン84aと第2ギヤケース52との摺動による磨耗を更に低減し、潤滑油の油温上昇を更に抑制することができる。
【0069】
また、上述した第2ギヤケース52の下端部に設けられた張り出し部の径方向外側の端部には、面取り部(又は曲線部)R1が設けられ、保持ピン84aと第2ギヤケース52とが接触した場合に端部のエッジで保持ピン84aが損傷することを防止している。
【0070】
また、遊星歯車84と対向する第2ギヤケースの下端面PL0は、保持ピン84aの端面84aPLと対向する第2ギヤケース52の下端面PL1よりも一段高さが下がっており、下端面PL0と下端面PL1とで段形状が構成されている。即ち、遊星歯車84と対向する第2ギヤケースの下端面PL0は、保持ピン84aの端面84aPLと対向する第2ギヤケース52の下端面PL1より遊星キャリア86の軸方向下方に突出し、下端面PL0は、保持ピン84aの端面84aPLと同程度の高さまで下がっている。これにより、遊星キャリア46側面に設けられるオイルシール57やカラーを上下方向に長く確保することが可能となり、潤滑油のシール性を向上させることができる。
【0071】
また、保持ピン84aと遊星キャリア86の軸方向に対向し、保持ピン84aと遊星キャリア86の軸方向での隙間を構成する部材は、第2ギヤケース52以外の部材であってもよい。
【0072】
図7は、第2旋回減速機24−2の遊星歯車84及び保持ピン84aと遊星キャリア86の軸方向に対向する部材(第2ギヤケース52及びアダプタリング58)との関係の他の例を示す詳細図である。なお、
図7は、
図6と同様、
図4におけるV−V線断面図である。
【0073】
図7を参照するに、
図6と異なり、保持ピン84aと遊星キャリア86の軸方向に対向する部材であって、保持ピン84aと遊星キャリア86の軸方向での隙間を構成する部材は、第2ギヤケース52ではなく、アダプタリング58である。
図6の場合に対して、アダプタリング58を旋回駆動装置40の径方向内側に延長し、保持ピン84aに対して遊星キャリア86の軸方向で対向するように構成している。
【0074】
図6の場合と同様、保持ピン84aと、該保持ピン84aに対して遊星キャリア86の軸方向に対向するアダプタリング58の下端面PL2との該軸方向の隙CL2は、遊星歯車84と、該遊星歯車84に対して遊星キャリア86の軸方向に対向する第2ギヤケース52の下端面PL0との該軸方向の隙CL0よりも小さくなっている。これにより、遊星キャリア86が軸方向(上方)に移動した場合であっても、保持ピン84aが先にアダプタリング58に接触するため、遊星歯車84と第2ギヤケース52との接触、摺動による遊星歯車84、第2ギヤケース52の破損等を防止することができる。また、遊星歯車84の回転(自転)速度に比して、保持ピン84a(遊星キャリア86)の公転速度は、減速されて非常に遅くなっている。よって、遊星歯車84と第2ギヤケース52が接触、摺動した場合に対して、潤滑油の油温上昇を抑制することができる。
【0075】
また、
図6の場合と同様、保持ピン84aの端面84aPLは、遊星キャリア86の軸方向に対して略垂直な平面である。又、端面84aPLと対向し、前記保持ピンとの隙CL2を構成する平面であるアダプタリング58の下端面PL2と、保持ピン84aの端面84aPLとは、略平行である。そのため、遊星キャリア86の軸方向の移動に伴い保持ピン84aとアダプタリング58とが接触しても、保持ピン84aは、アダプタリング58に面接触して摺動することになるため、保持ピン84a、アダプタリング58の磨耗等を抑制することができる。また、上述した潤滑油の油温上昇も更に抑制することができる。
【0076】
また、
図6の場合と同様、遊星キャリア86の軸方向への移動に伴い、接触する保持ピン84aの端面84aPLとアダプタリング58の下端面PL2とのうち、少なくとも一方は、摩擦係数を小さくする表面処理が行われてよい。例えば、研磨や切削による表面処理が行われてよい。これにより、保持ピン84aとアダプタリング58との摺動による磨耗を更に低減し、潤滑油の油温上昇を更に抑制することができる。
【0077】
また、本例のように、アダプタリング58によって、遊星歯車84と、遊星キャリア86の軸方向に対向する部材(第2ギヤケース52)との接触を回避する構造を採用することで、第2ギヤケース52の構造を変更する必要がなく、汎用性が高まる場合がある。例えば、本実施形態における高速段減速機150に組み合わせる減速機が低速段減速機200を含めて複数種ある場合、第2ギヤケース52の構造を低速段減速機200に合わせて変更するのは、コストと手間の観点から現実的でない。これに対して、アダプタリング58は、高速段減速機150と低速段減速機200とを組み合わせる場合に必須の部品であるため、コストや手間を抑制することができ、遊星歯車84と遊星キャリア86の軸方向に対向する部材との接触を回避する構造を容易に採用できる。但し、アダプタリング58は、切削加工により形成される場合が多く、歩留まりが下がる傾向にある。そのため、例えば、高速段減速機150が低速段減速機200以外とは組み合わせられない場合は、
図6のように、鋳造加工により形成される場合が多い第2ギヤケース52によって、遊星歯車84と、第2ギヤケース52との接触を回避する構造を構成するとよい。
【0078】
なお、
図6の場合と同様、アダプタリング58の径方向内側の端部には、面取り部(又は曲線部)R2が設けられ、保持ピン84aとアダプタリング58とが接触した場合に端部のエッジで保持ピン84aが損傷することを防止している。
【0079】
以上、本発明を実施するための形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0080】
上述した実施形態における遊星歯車及び保持ピンと遊星キャリアの軸方向で対向する部材との関係は、第2旋回減速機24−2のみならず、第1旋回減速機24−1に用いてもよい。例えば、第1旋回減速機24−1の各歯車に、はすば歯車でなく、平歯車を用いた場合、遊星キャリア46はフローティング支持されているため、旋回用電動機21の回転に伴い、遊星キャリア46は軸方向に移動するおそれがある。この場合、遊星歯車44が旋回用電動機21のエンドプレート21aに接触したり、摺動したりするおそれがある。よって、遊星歯車44及び保持ピン44aと遊星キャリア46の軸方向で対向するエンドプレート21aとの関係に、上述した実施形態の構成を適用してもよい。即ち、保持ピン44aとエンドプレート21aとの遊星キャリア46の軸方向での隙間が、遊星歯車44とエンドプレート21aとの該軸方向での隙間より小さくなるようにしてよい。これにより、上述した実施形態と同様の効果を奏する。