特許第6242199号(P6242199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242199
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】二次電池の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20171127BHJP
   H01M 10/058 20100101ALN20171127BHJP
【FI】
   H01M10/04 Z
   !H01M10/058
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-255846(P2013-255846)
(22)【出願日】2013年12月11日
(65)【公開番号】特開2015-115161(P2015-115161A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120178
【弁理士】
【氏名又は名称】三田 康成
(74)【代理人】
【識別番号】100130638
【弁理士】
【氏名又は名称】野末 貴弘
(73)【特許権者】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】オートモーティブエナジーサプライ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120178
【弁理士】
【氏名又は名称】三田 康成
(74)【代理人】
【識別番号】100130638
【弁理士】
【氏名又は名称】野末 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄三
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 伸明
(72)【発明者】
【氏名】本藤 大祐
(72)【発明者】
【氏名】池田 康春
【審査官】 山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5899316(JP,B2)
【文献】 特開2004−342520(JP,A)
【文献】 特開2009−187711(JP,A)
【文献】 特開2011−070983(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0244093(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0244095(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/058
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装用フィルムが重ね合わされることで構成された外装体の内部に発電要素を格納し封止する工程であって、前記発電要素が前記外装体の周囲辺の少なくとも一部との間に距離をおいて配置される第1封止工程と、前記外装体の周囲辺と前記発電要素との間にガス抜き孔を開ける開孔工程と、前記ガス抜き孔を通して前記外装体内のガスを排出するガス抜き工程と、前記ガス抜き孔を封止する第2封止工程と、を有する二次電池の製造方法であって、
前記開孔工程は、前記外装体に前記ガス抜き孔を開ける前に、前記外装体の前記ガス抜き孔を形成する部分を、前記外装体の両側から重ね合わされた前記外装用フィルムが互いに密着するように押圧する押圧工程と、前記外装体にガス抜き孔を開けた後に、前記押圧工程により互いに密着した前記外装用フィルムを離反方向に引き離す引き剥がし工程と、を備え
前記引き剥がし工程は、前記外装用フィルムを吸着手段により互いに離反方向に引き離すものであることを特徴とする二次電池の製造方法。
【請求項2】
外装用フィルムが重ね合わされることで構成された外装体の内部に発電要素を格納し封止する工程であって、前記発電要素が前記外装体の周囲辺の少なくとも一部との間に距離をおいて配置される第1封止工程と、前記外装体の周囲辺と前記発電要素との間にガス抜き孔を開ける開孔工程と、前記ガス抜き孔を通して前記外装体内のガスを排出するガス抜き工程と、前記ガス抜き孔を封止する第2封止工程と、を有する二次電池の製造方法であって、
前記開孔工程は、前記外装体に前記ガス抜き孔を開ける前に、前記外装体の前記ガス抜き孔を形成する部分を、前記外装体の両側から重ね合わされた前記外装用フィルムが互いに密着するように押圧する押圧工程と、前記外装体にガス抜き孔を開けた後に、前記押圧工程により互いに密着した前記外装用フィルムを離反方向に引き離す引き剥がし工程と、を備え、
前記引き剥がし工程は、前記ガス抜き孔を形成する部分の前記外装用フィルムの一方を他方に対して前記発電要素側にずらすものであることを特徴とす二次電池の製造方法。
【請求項3】
外装用フィルムが重ね合わされることで構成された外装体の内部に発電要素を格納し封止する工程であって、前記発電要素が前記外装体の周囲辺の少なくとも一部との間に距離をおいて配置される第1封止工程と、前記外装体の周囲辺と前記発電要素との間にガス抜き孔を開ける開孔工程と、前記ガス抜き孔を通して前記外装体内のガスを排出するガス抜き工程と、前記ガス抜き孔を封止する第2封止工程と、を有する二次電池の製造方法であって、
前記開孔工程は、前記外装体に前記ガス抜き孔を開ける前に、前記外装体の前記ガス抜き孔を形成する部分を、前記外装体の両側から重ね合わされた前記外装用フィルムが互いに密着するように押圧する押圧工程と、前記外装体にガス抜き孔を開けた後に、前記押圧工程により互いに密着した前記外装用フィルムを離反方向に引き離す引き剥がし工程と、を備え、
前記引き剥がし工程は、前記ガス抜き孔を形成する部分に押し当てるローラを前記発電
要素側に押圧して、前記外装用フィルムの一方を他方に対してずらすものであることを特徴とす二次電池の製造方法。
【請求項4】
外装用フィルムが重ね合わされることで構成された外装体と、前記外装体の周囲辺の少なくとも一部との間に距離をおいて当該外装体内に収容される発電要素と、を備える二次電池の製造装置であって、
前記外装体にガス抜き孔を開ける前に、前記外装体のガス抜き孔を形成する部分を、前記外装体両側から重ね合わされた前記外装用フィルムが互いに密着するように押圧する押圧装置と、
前記外装体にガス抜き孔を開けた後に、前記押圧装置により互いに密着した前記外装用フィルムを互いに引き離す引き剥がし装置と、を備え
前記引き剥がし装置は、前記外装用フィルムを吸着手段により互いに離反方向に引き離すものであることを特徴とする二次電池の製造装置。
【請求項5】
外装用フィルムが重ね合わされることで構成された外装体と、前記外装体の周囲辺の少なくとも一部との間に距離をおいて当該外装体内に収容される発電要素と、を備える二次電池の製造装置であって、
前記外装体にガス抜き孔を開ける前に、前記外装体のガス抜き孔を形成する部分を、前記外装体を両側から重ね合わされた前記外装用フィルムが互いに密着するように押圧する押圧装置と、
前記外装体にガス抜き孔を開けた後に、前記押圧装置により互いに密着した前記外装用フィルムを互いに引き離す引き剥がし装置と、を備え、
前記引き剥がし装置は、前記ガス抜き孔を形成する部分の前記外装用フィルムの一方を他方に対して前記発電要素側にずらすものであることを特徴とす二次電池の製造装置。
【請求項6】
外装用フィルムが重ね合わされることで構成された外装体と、前記外装体の周囲辺の少なくとも一部との間に距離をおいて当該外装体内に収容される発電要素と、を備える二次電池の製造装置であって、
前記外装体にガス抜き孔を開ける前に、前記外装体のガス抜き孔を形成する部分を、前記外装体を両側から重ね合わされた前記外装用フィルムが互いに密着するように押圧する押圧装置と、
前記外装体にガス抜き孔を開けた後に、前記押圧装置により互いに密着した前記外装用フィルムを互いに引き離す引き剥がし装置と、を備え、
前記引き剥がし装置は、前記ガス抜き孔を形成する部分に押し当てるローラを前記発電要素側に押圧して、前記外装用フィルムの一方を他方に対してずらすものであることを特徴とす二次電池の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネートフィルム等の薄く軽量な外装用フィルムにより形成された外装体をもつ二次電池の製造方法および製造装置に関し、特に、コンディショニング工程等で発生するガスを抜く際の液漏れを防止するに好適な二次電池の製造方法および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からラミネートフィルム等の薄く軽量な外装用フィルムにより形成される外装体をもつ二次電池のコンディショニング等に伴うガス抜きを確実に行え、ガス抜き後の密閉性を充分に担保できると記載された二次電池の製造方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
これは、内部と連通し且つ外部から隔離されている未接合部を形成するように、外装用フィルムの開口部を接合して外装体の内部に発電要素を封入する封入工程と、未接合部の厚みを所定厚み以下に拘束しながら、ガス抜き孔を開けるガス抜き工程と、未接合部を接合して発電要素を封入する第2封止工程と、を有する。そして、未接合部の膨張を抑え且つ応力集中を緩和する方法として、外装体の内圧が高い場合に、未接合部の厚みを規制するようにしている。これにより、発生したガスによる内圧上昇で未接合部に大きな膨張や変形が生じ、未接合部を接合するときに元通りの形態に戻らないこと、そして、未接合部の膨張に伴い、未接合部の周辺で応力が集中することによって、接合部の一部が剥離することを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−342520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来例では、発生したガスを外部に放出するガス抜き工程において、内圧による膨らみを規制しつつ未接合部にガス抜き孔を開けるようにしている。しかしながら、未接合部に電解液が残留している場合には、開けたガス抜き孔を通して未接合部に残留している電解液がガスとともに外部に飛び出し、電解液の内蔵量が減少する不具合があった。また、飛び出した電解液が外装体の表面に付着した場合には、拭き取り工程が必要となり、生産コストを上昇させる不具合があった。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、ガス抜き時における液漏れ防止に好適な二次電池の製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、外装用フィルムが重ね合わされることで構成された外装体の内部に発電要素を格納し封止する工程であって、発電要素が外装体の周囲辺の少なくとも一部との間に距離をおいて配置される第1封止工程を備える。続いて、外装体の周囲辺と発電要素との間にガス抜き孔を開ける開孔工程と、ガス抜き孔を通して外装体内のガスを排出するガス抜き工程と、ガス抜き孔を封止する第2封止工程と、を有する二次電池の製造方法を前提としている。そして、開孔工程は、外装体にガス抜き孔を開ける前に、外装体のガス抜き孔を形成する部分を、外装体の両側から重ね合わされた外装用フィルムが互いに密着するように押圧する押圧工程と、外装体にガス抜き孔を開けた後に、押圧工程により互いに密着した外装用フィルムを互いに引き離す引き剥がし工程と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
したがって、本発明では、外装体のガス抜き孔を形成する部位付近の電解液を発電要素側へ移動させた状態でガス抜き孔を開孔するため、ガス抜き孔付近に残留していた電解液が漏れ出すことを防止できる。さらに、電解液が外装体表面に付着することによる生産コスト上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態を示す二次電池の製造方法および製造装置を適用する二次電池の概略平面図である。
図2】本実施形態に係る二次電池の製造方法を説明するための工程図である。
図3】開孔装置の側面図である。
図4】開孔装置の平面図である。
図5】開孔装置の作動状態を示す説明図である。
図6図5に続く開孔装置の作動状態を示す説明図である。
図7】開孔装置により加工される外装体の変化状態(A)〜(C)を説明する説明図である。
図8】ガス抜きが実行される段階の外装体を示す説明図である。
図9】押圧工程が実行された段階のガス抜き孔周辺のガス抜き部を説明する説明図である。
図10】押圧工程後と引き剥がし工程後の残留ガス量を説明するグラフである。
図11】本発明の第2実施形態の二次電池の製造方法および製造装置における開孔装置の概略側面図である。
図12図11の開孔装置の動作状態を示す側面図である。
図13】開孔装置により加工される外装体の変化状態(A)〜(D)を説明する説明図である。
図14】本発明の第3実施形態の二次電池の製造方法および製造装置における開孔装置の作動状態(A)〜(D)を説明する側面図である。
図15】比較例におけるガス抜き孔の加工前後の状態(A),(B)、及び、ガス抜き後の電解液の付着状態(C)を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の二次電池の製造方法および製造装置を各実施形態に基づいて説明する。
【0011】
(第1実施形態)
本発明の二次電池の製造方法を適用する二次電池は、薄く軽量な外装用フィルムからなる外装体を備える電池である。
【0012】
薄く軽量な外装用フィルムは、例えば三層構造を有する高分子−金属複合ラミネートフィルムであり、金属層および金属層の両面に配置される高分子樹脂層を有する。金属層は、例えば、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、銅などの金属箔から構成される。高分子樹脂層は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレン、変性ポリプロピレン、アイオノマー、エチレンビニルアセテート等の熱溶着性樹脂フィルムから構成される。外装用フィルムは、熱溶着や超音波溶着により容易に接着できるとともに、気密性、水分非透過性に優れたものであることが望ましい。
【0013】
外装用フィルムは、図1に示すように、二次電池の発電要素2を収容した状態で、その周縁3カ所の融着部Aを「コの字状」に熱溶着により接合して袋状に形成し、袋状の内部に電解液を注液した状態で、袋状の開口部Bを熱溶着によって接合して外装体1を構成している。開口部Bの熱溶着による接合は、後述するように、第1封止工程による第1封止部C、第2封止工程及び本封止工程による第2封止部D及び本封止部Eの3段階でそれぞれ実施される。
【0014】
二次電池の発電要素2として、リチウムイオン二次電池を例として、その概略を説明する。リチウムイオン二次電池の発電要素2は、正極及び負極を、セパレータを介して重畳したものである。即ち、発電要素2は、正極活物質層が塗布された集電体からなる正極板と、負極活物質層が塗布された集電体からなる負極板とを、セパレータを介して積層することで、形成されている。リチウムイオン二次電池は、非水電池であり製造時に混入した水分が反応することでガスが発生する。また、電解液中に含まれる有機溶媒の蒸発や、電池製造後のコンディショニングにおける電極反応でガスが発生する。
【0015】
正極板は、例えば、アルミニウム箔よりなる集電体と、集電体のタブ領域を除いた両面領域に形成された正極活物質層と、を備える。図1では、タブ領域2Aのみが発電要素2の外側に引出された状態で図示されている。正極活物質層としては、例えば、LiMn2O4等のリチウム−遷移金属複合酸化物からなる正極活物質、導電助剤、バインダ等を含んでいる。
【0016】
負極板は、例えば、銅箔よりなる集電体と、集電体のタブ領域を除いた両面領域に形成された負極活物質層と、を備える。図1では、タブ領域2Bのみが発電要素2の外側に引出された状態で図示されている。負極活物質層は、負極活物質、導電助剤、バインダ等を含んでいる。負極活物質は、例えば、ハードカーボン(難黒鉛化炭素材料)、黒鉛系炭素材料や、リチウム−遷移金属複合酸化物である。
【0017】
セパレータは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミドから形成される。
【0018】
液体電解質(電解液)は、有機溶媒、支持塩等を含んでいる。有機溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート(PC)やエチレンカーボネート(EC)等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類、テトラヒドロフラン等のエーテル類である。支持塩は、リチウム塩(LiPF6)等の無機酸陰イオン塩、LiCF3SO3等の有機酸陰イオン塩である。
【0019】
複数の正極板及び負極板の集電板の同極となるタブ領域2A,2B同士は、図1に示すように、発電要素2から電流を引き出すために、それぞれ同極同士が接続されて、正極端子3A及び負極端子3Bに接続される。そして、当該正極端子3A及び負極端子3Bは外装体1の融着部Aを介して外装体1の外部に引出している。
【0020】
図2は、本実施形態に係る二次電池の製造方法を説明するための工程図である。本実施形態の二次電池の製造方法においては、封止工程と、コンディショニング工程と、ガス抜き・第2封止工程と、本封止・トリミング工程と、必要に応じてなされるその他の工程とを有する。以下、図2に基づいて、本実施形態の二次電池の製造方法を説明する。
【0021】
封止工程では、まず、2枚の略矩形形状の外装用フィルム若しくは二つ折りの外装用フィルムの間に、矩形形状の発電要素2が配置される。発電要素2の正極端子3A及び負極端子3Bは、外装用フィルムから露出するように、位置決めされる。その後、外装用フィルムの周縁が、図1に示すように、1辺を残して「コの字状」に融着Aにより接合され、当該1辺が開口部Bとなる袋体が形成される。
【0022】
電解液注入工程においては、開口部Bを経由し、袋体の内側に、電解液が注入される。電解液の注入方法は、特に限定されず、チューブやノズルを開口部Bに差し込んで直接注入したり、電解質へ浸漬することで注入したり、することも可能である。
【0023】
第1封止工程においては、電解液を注入するために使用した開口部Bを接合して、第1封止部Cを形成することで、外装体1が封止される。この第1封止部Cは、図1に示すように、外装体1の周縁側に寄せた位置で接合される。即ち、発電要素2との距離が遠ざかった位置で接合されて、当該接合部と発電要素2との間に、発電要素2に連通したガス抜き部4を形成している。
【0024】
コンディショニング工程では、初充電工程、及び、電池特性を安定化させるためのエージング工程が実施される。初充電工程により、発電要素2から初期ガスが発生される。また、エージング工程でも、発電要素2から更にガスが発生される。なお、コンディショニング工程は、用途に応じて初充電工程、エージング工程の一方だけでよい場合がある。
【0025】
初充電工程においては、発電要素2の有する電池容量の所定割合、例えば満充電まで充電した場合に得られる電池電圧を、発電要素2が発生させるまで、充電される。なお、初充電の温度は、45℃よりも低い場合には、ガスの発生が不十分となり、70℃よりも高い場合には、電池特性が劣化する虞があるため、45〜70℃が好ましい。また、電池容量の所定割合は、必要に応じて選択される。また、エージング工程においては、発電要素2に充電した状態で、保持される。
【0026】
ガス抜き・第2封止工程では、大気圧のドライエア又は不活性ガス等のドライガスの雰囲気中において開孔工程が実施され、次いで、減圧した雰囲気中においてガス抜き工程と第2封止工程が実施される。
【0027】
開孔工程では、第1封止部Cのガス抜き部4に、図1に示すように、切り込みによるスリット状のガス抜き孔5を形成して、ガス抜き部4を外部に連通させる。
【0028】
ガス抜き工程では、ガス抜き部4がガス抜き穴5により開かれた二次電池に対して、雰囲気を減圧状態とすることにより、電解液中に溶け込んでいるガスを電解液から分離させて、外部に排出させる。このガス抜き工程は、予め設定した所定の時間が経過するまで実行される。
【0029】
次いで、真空雰囲気中において、第1封止部Cよりも発電要素2に近接した部分に、図1に示すように、熱融着による接合を行って第2封止部Dを形成する(第2封止工程)。
【0030】
次いで、第2封止工程を経た二次電池は、真空雰囲気から取出されて、第2封止部Dより広めに熱溶着による接合による本封止が実施される(本封止工程、図1の封止部E参照)。次いで、外装体1の周縁部分の不要な領域を切断するトリミング工程が実施され、検査工程や充放電などの出荷調整工程が実施され、二次電池が完成する。
【0031】
ところで、開孔工程において、一般的に実行されている比較例を、図15により説明する。比較例では、図15Aに示すように、ガス抜き部4内に電解液が残留している場合に、図15Bに示すように、当該部位にカッタ14の切り刃を当ててガス抜き孔5を形成している。図示例では、ガス抜き部4がガスによる内圧上昇により若干膨らんだ状態となっている。このため、図15Bに示すように、残留している電解液も、当該ガス抜き孔5から外部へ飛び出すことがある。このように、電解液が外装体1の外部へ飛び出すと、外装体1内に残留する電解液の液量が減少し、電池の寿命を低下させることとなる。
【0032】
また、外装体1の外部に飛び出した電解液は、図15Cに示すように、外装体1の表面に付着する。このように外装体1の表面に電解液が付着すると、新たに拭き取り工程が必要となり、生産コストを増加させる不具合があった。また、電解液の拭き取り洩れが生じると、複数の二次電池の側面同士を接着して電池パックとして利用する場合に、接着剤の接着力を低下させる等の不具合も発生する。
【0033】
本実施形態においては、開孔工程における電解液の飛び出しを防止するために、図3,4に示す、開孔装置10が使用される。この開孔装置10は、外装体1のガス抜き部4の一方側を支持する拘束パッド11と、当該ガス抜き部4の他方側に臨んで、ローラ13を揺動支持する挟持体12と、ガス抜き部4に切込みを入れてガス抜き孔5を形成するカッタ14と、ガス抜き部4の外装用フィルム同士を引き剥がす引き剥がし装置30と、を備える。
【0034】
拘束パッド11及び挟持体12は、待機状態では外装体1のガス抜き部4から離れた待機位置と、ガス抜き部4が両者間に配置された状態で、互いに接近して、ガス抜き部4を挟み付ける作動位置と、の間で移動可能に構成している。以下では、待機位置から作動位置への移動を前進方向とし、作動位置から待機位置への移動を後進方向とし、これらの方向に直交する水平方向を左右方向とする。
【0035】
挟持体12はその左右方向両端に、前後方向に延びてベース部材17に摺動自在に案内される補助シャフト18を一体に備えると共に、ベース部材17に設けたシリンダ19により進退作動されるロッド19Aの先端に連結されている。これにより、挟持体12は、シリンダ19によるロッド19Aの進退移動により、補助シャフト18により案内されて待機位置と作動位置との間で進退方向に移動される。
【0036】
拘束パッド11は、図示しないが、挟持体12と同様に、前後方向に延びてベース部材に摺動自在に案内される補助シャフトを一体に備えると共に、ベース部材に設けたシリンダにより進退されるロッドの先端に連結されている。そして、拘束パッド11は、シリンダによるロッドの進退移動により、補助シャフトにより案内されて待機位置と作動位置との間で進退方向に移動される。拘束パッド11は、作動位置では、ガス抜き部4の一方の面に接触して、ガス抜き部4を一方から支持する。拘束パッド11には、カッタ14の切り刃を貫通させて拘束パッド11の前面に突出させるよう設けた横方向のスリットによる貫通孔11Aを備える。貫通孔11Aは、電解液が付着しても溜まらない程度の幅としている。
【0037】
カッタ14は、待機位置で拘束パッド11の後方に配置され、拘束パッド11の貫通孔11Aを貫通して、切り刃を拘束パッド11の前方に突出させる作動位置に移動可能である。また、カッタ14は、作動位置では切り刃を貫通孔11Aに沿って横移動可能である。カッタ14の厚さは、貫通孔11Aを通過する厚さとしている。これにより、拘束パッド11により支持した範囲内において、ガス抜き部4にガス抜き孔5を形成する。
【0038】
挟持体12は、ガス抜き部4の他方の面に接触することでガス抜き部4を挟み付けるローラ13を有する。ローラ13は、図3に示すように、基端側を軸12Aを介して挟持体12に揺動自在に支持されたアーム15の先端に回転自在に支持されている。このため、ローラ13は、挟持体12に対して揺動自在となっている。アーム15の基端側の端面は平面に形成され、挟持体12に基部を固定した板ばね16の先端がこの基端側端面に面接触することにより、アーム15の回動位置及びローラ13の上下方向の位置が初期位置となるように規制している。当該初期位置では、アーム15は最も上方へ回動された状態となり、ローラ13は挟持体12から突出された状態となる。
【0039】
初期状態におけるローラ13の上下方向の位置は、アーム15の基端側の軸12Aの位置よりも下方に位置するようオフセットして配置され、例えば、軸12Aの位置を含む水平面に対して数度(2〜3°)の角度を持つ面上に配置されている。そして、ローラ13は、図5に示すように、挟持体12の作動位置への前進によりガス抜き部4に接触した際には、軸12Aの位置とのオフセットにより下方へ付勢され、図6に示すように、アーム15を下方へ回動させつつガス抜き部4をしごきながら下方へ転動するよう作動する。板ばね16は、アーム15の下方への回動によりアーム15に対する係合が、アーム15基端側端面への面接触状態から当該端面の下方隅R部への点接触状態となり、これにより、アーム15には初期位置に戻す方向の付勢力が板ばね16から付与されることとなる。
【0040】
引き剥がし装置30は、ガス抜き部4の両側に配置される一対の吸着パッド31と、吸着パッド31をロッド33により待機位置とガス抜き部に接触する作動位置との間で進退させる、ベース17に固定されたシリンダ32と、を備える。吸着パッド31は、負圧発生装置34からの負圧と大気とを切換弁35を介して導入可能であり、切換弁35を切換えて大気を導入した際には、吸着作動が解除され、切換弁35により負圧発生装置34よりの負圧を導入した際には、吸着作動が実行される。そして、吸着パッド31が作動位置に移動された際には、切換弁35を介して導入した負圧によりガス抜き部4の外装用フィルムを吸着して、シリンダ32によるロッド33の後進動作により、互いに引き剥がすように動作可能である。
【0041】
引き剥がし装置30は、拘束パッド11及び挟持体12の下方に配置されている。そして、拘束パッド11と挟持体12及びカッタ14によるガス抜き部4へのガス抜き孔5の開孔作業が終了した段階において、ベース17を昇降シリンダ36により上昇させることにより、拘束パッド11と挟持体12及びカッタ14を上昇させることに連動して、引き剥がし装置30を作動線(図3の二点鎖線で示す位置)上に上昇させる。そして、上記の引き剥がし作動を行い、作業完了後に昇降シリンダ36によりベース部材17を下降させることにより初期位置(図3の実線で示す位置)に復帰される。
【0042】
本実施形態においては、以下に示す様に、開孔工程が実行される。拘束パッド11、挟持体12及びカッタ14は、いずれも待機位置に位置している待機状態の開孔装置10に、コンディショニング工程からの二次電池がセットされると、図3に示すように、先ず、拘束パッド11が待機位置から前進して作動位置にセットされる。拘束パッド11は、ガス抜き部4の一方の面に接触してガス抜き部4を支持する。
【0043】
コンディショニング工程を経由した二次電池の外装体1は、ガスによる内圧上昇によりガス抜き部4が若干膨らんでいると共にガス抜き部4にも電解液が残留した状態となっている。なお、ガス抜き部4は外装体1内の内圧により若干膨らんでいるが、ここでは、開口作業の過程を説明するものであるため、以下では、図示のように、膨らみのない状態で説明する。
【0044】
次いで、図5に示すように、挟持体12が待機位置から作動位置に前進される。挟持体12の前進に伴い、ローラ13がガス抜き部4の発電要素2から離れた部分に当接して、ローラ13は拘束パッド11の前面との間で外装体1の若干膨らんだガス抜き部4を挟む。さらに挟持体12が前進すると、ローラ13は軸位置とのオフセットにより下方へ付勢され、板ばね16に抗しアーム15を下方へ回動させつつガス抜き部4をしごきながら下方へ転動する。この結果、先端のローラ13は、外装体1のガス抜き部4の表面を転動しつつ発電要素2側へ下降し、これに伴い、外装体1の若干膨らんだガス抜き部4をローラ13により発電要素2側へしごくように作動する。
【0045】
そして、図6に示すように、ローラ13が最下端に到達することにより、ガス抜き部4は拘束パッド11とローラ13とにより押し潰され、内部に残留していた電解液は、発電要素2内に戻される。戻された電解液は、発電要素2周辺の電解液と合体して、ガスと電解液との気液分離が促進される。
【0046】
次いで、図7(A)に示すように、カッタ14の切り刃が拘束パッド11の貫通孔11Aを貫通して作動位置に押出され、当該切り刃により外装体1のガス抜き部4に切り込みを入れる。次いで、切り刃は拘束パッド11の貫通孔11Aに沿って横方向に移動してガス抜き部4を横方向に切込み、ガス抜き部4に切り込みによるガス抜き孔5を形成し、その後に拘束パッド11の後方に後退して待機位置に復帰する。次いで、拘束パッド11と挟持体12が待機位置に戻される。以上のように、ガス抜き部4を構成する外装用フィルムは重ね合わされて互いに密着されて、電解液が残留していない状態において、ガス抜き孔5が形成される。
【0047】
ところで、この状態においては、ガス抜き部4を構成する外装用フィルム同士は、電解液で濡れているため、図9に示すように、拘束パッド11とローラ13とによるしごき作動により互いに張付いた状態となっている。電解液により張付いた状態の外装用フィルム同士は、発電要素2周辺に電解液と共に戻されたガスのガス抜き孔5への通過を阻害する。このため、例えば、図10の左側のグラフで示すように、外装体1内には多くの残留ガスで満たされている。
【0048】
このため、本実施形態では、拘束パッド11と挟持体12及びカッタ14によるガス抜き部4へのガス抜き孔5の開孔作業が終了した段階において、ベース17を昇降シリンダ36により上昇させることにより、拘束パッド11と挟持体12及びカッタ14を上昇させる。これに連動して、引き剥がし装置30を作動線(図3の二点鎖線で示す位置)上に上昇させる。次いで、シリンダ32によりロッド33を作動させて吸着パッド31を作動位置に前進させて、図7(B)に示すように、吸着パッド31をガス抜き部4の外装用フィルムに接触させ、負圧発生装置34より導入した負圧により外装用フィルムを吸着パッド31により吸着させる。次いで、図7(C)に示すように、吸着パッド31をシリンダ32により後退させることにより、電解液により張付いている外装用フィルムを互いに引き剥がす。次いで、負圧発生装置34よりの負圧の導入を停止し大気を導入することにより、吸着パッド31を外装用フィルムから離脱させ、シリンダ32により吸着パッド31を待機位置に戻し、昇降シリンダ36によりベース部材17を下降させることにより初期位置に復帰される。
【0049】
これにより、外装体1内の発電要素2側に押込められて存在するガスは、図8に示すように、拡げられたガス抜き部4を通過して、ガス抜き孔5から外部に排出される。このため、例えば、図10の右側のグラフで示すように、外装体1内には殆どの残留ガスが排出された状態とできる。また、ガス抜き部4に存在していた電解液は、拘束パッド11とローラ13によるしごき作用により発電要素2側に戻され、発電要素2周辺の電解液と合体している。このため、ガス抜き部4を吸着パッド31により拡げた際においても、ガス抜き部4及びガス抜き孔5を通して電解液が外部に排出されることを抑制することができる。
【0050】
なお、上記実施形態では、拘束パッド11と挟持体12及びカッタ14と、引き剥がし装置30と、がベース部材17の昇降により、上下方向の作動位置と待機位置との間で差し替えて作動するものについて説明している。しかし、拘束パッド11と挟持体12及びカッタ14と、引き剥がし装置30と、が独立して昇降するものであってもよい。また、拘束パッド11と挟持体12及びカッタ14は昇降させずに固定されたものとし、これらが待機位置に復帰した状態で、引き剥がし装置30の吸着パッド31のみが昇降して、ガス抜き部4の外装用フィルムを吸着して互いに引き剥がすものであってもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、カッタ14によってガス抜き部4のみに切り込みを入れてガス抜き孔5を形成するものについて説明している。しかし、切り込みを、ガス抜き部4のみに限定することなく、その延長部分も含めて切込むことにより、先端側を外装体1から切離すようにしてもよい。
【0052】
また、カッタ14によってガス抜き部4のみに切り込みを入れるタイミングとして、ローラ13が最下端に下降した段階でカッタ14によるガス抜き孔5を形成するものについて説明している。しかし、ローラ13が拘束パッド11の貫通孔11Aを通過した時点において、ガス抜き部4をローラ13により発電要素2側へしごきつつカッタ14によるガス抜き孔5を形成するものであってもよい。
【0053】
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
【0054】
(ア)外装用フィルムが重ね合わされることで構成された外装体1の内部に発電要素2を格納し封止する工程であって、発電要素2が外装体1の周囲辺の少なくとも一部との間に距離をおいて配置される第1封止工程を備える。続いて、外装体1の周囲辺と発電要素2との間にガス抜き孔5を開ける開孔工程と、ガス抜き孔5を通して外装体1内のガスを排出するガス抜き工程と、ガス抜き孔5を封止する第2封止工程と、を有する二次電池の製造方法を前提としている。そして、開孔工程は、外装体1にガス抜き孔5を開ける前に、外装体1のガス抜き孔5を形成する部分を、外装体1の両側から重ね合わされた外装用フィルムが互いに密着するように押圧する押圧工程と、外装体1にガス抜き孔5を開けた後に、押圧工程により互いに密着した外装用フィルムを互いに引き離す引き剥がし工程と、を備えることを特徴としている。即ち、外装体1のガス抜き孔5を形成する部位付近の電解液を発電要素2側へ移動させた状態でガス抜き孔5を開孔するため、ガス抜き孔5付近に残留していた電解液が漏れ出すことを防止できる。さらに、電解液が外装体1表面に付着することによる生産コスト上昇を抑制することができる。
【0055】
また、押圧工程により互いに密着した外装用フィルムを離反方向に引き離す引き剥がし工程を備えるため、外装体1内の発電要素2側に押込められて存在するガスを、拡げられたガス抜き部4を通過させてガス抜き孔5から外部に速やかに排出させることができる。
【0056】
(イ)押圧工程は、ガス抜き孔5を形成する部分の一方側を拘束パッド11で支持し、他方側の発電要素2から遠い側にローラ13を押し当て、当該ローラ13を発電要素側2に向かって転動させるものである。即ち、ガス抜き部4を拘束パッド11とローラ13とによりしごくため、ガス抜き部4に残留する電解液を確実に発電要素2側に戻すことができる。また、ガス抜き部4が拘束パッド11により支持されているため、カッタ14によりガス抜き部4にガス抜き孔5の形成が容易となる。
【0057】
(ウ)引き剥がし工程は、外装用フィルムを吸着手段としての吸着パッド31により互いに離反方向に引き離すものである。即ち、外装用フィルムを吸着手段により互いに離反方向に引き離すため、密着した外装用フィルムを確実に引き離すことができ、外装体1内の発電要素2側に押込められて存在するガスを、拡げられたガス抜き部4を通過させてガス抜き孔5から外部に確実に排出させることができる。
【0058】
(第2実施形態)
図11図13は、本発明を適用した二次電池の製造方法および製造装置の第2実施形態を示す開孔過程を示す説明図である。本実施形態の開孔装置においては、引き剥がし装置として、第1実施形態における吸着パッドに代えて、ローラをガス抜き部の基部に押付けて、ガス抜き部を構成している外装用フィルムの一方を他方に対してずらすことにより、引き剥がす構成としたものである。なお、第1実施形態と同一装置には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
【0059】
本実施形態の開孔装置10は、第1実施形態と同様に、外装体1のガス抜き部4の一方側を支持する拘束パッド11と、当該ガス抜き部4の他方側に臨んで、ローラ13を揺動支持する挟持体12と、ガス抜き部4に切込みを入れてガス抜き孔5を形成するカッタ14と、を備える。そして、第1実施形態と同様に、図11に示すように、挟持体を前進させて、ガス抜き部4を拘束パッド11とローラ13とによりしごいて、図12に示すように、ローラ13を最下端に到達させ、ローラ13によりガス抜き部4の基部を押さえ込む構成を備える。その他の構成は、第1実施形態と同様に構成している。
【0060】
本実施形態においては、図11に示すように、第1実施形態と同様に、挟持体を前進させて、ガス抜き部4を拘束パッド11と転動するローラ13とによりしごいて、ガス抜き部4を押し潰して、図13(A)に示すように、ガス抜き部4の内部に残留していた電解液を、発電要素2内に戻すようにする。ローラ13が最下端に到達することにより、図12に示すように、ガス抜き部4は拘束パッド11とローラ13とにより押し潰され、内部に残留していた電解液は、発電要素2内に戻される。この作動時において、ガス抜き部4を構成する外装用フィルム同士は、電解液で濡れているため、図9に示すように、拘束パッド11とローラ13とによるしごき作動により互いに張付いた状態となっている。
【0061】
そして、ローラ13が拘束パッド11の貫通孔11Aを通過した時点、若しくは、ローラ13が最下端に下降した段階において、図13(B)に示すように、カッタ14により外装体1のガス抜き部4に切り込みを入れてガス抜き孔5を開孔させる。
【0062】
ローラ13が最下端に下降した段階では、図13(B)に示すように、ローラ13はガス抜き部4の基部を下方へ押付ける。この押付けにより、拘束パッド11とローラ13とによるしごき作動により、ガス抜き部4を構成している張付いた状態の外装用フィルムの一方が、他方に対して下方へずれて移動される。このずれ移動により、図13(D)に示すように、外装用フィルムの一方と他方とは、張付き状態から引き剥がされる。また、ガス抜き部4を構成する外装用フィルム同士が、カッタ14により形成されたガス抜き孔5の切り口同士がバリなどにより絡み合っていたとしても、外装用フィルムの一方が、他方に対して下方へずれて移動されることにより、バリの絡み合いを解除させて、張付き状態から引き剥がされる。
【0063】
これにより、外装体1内の発電要素2側に押込められて存在するガスは、ガス抜き部4の一対の外装用フィルムを押し広げて、ガス抜き孔5から外部に排出される。また、ガス抜き部4に存在していた電解液は、拘束パッド11とローラ13によるしごき作用により発電要素2側に戻され、発電要素2周辺の電解液と合体している。このため、ガス抜き部4を拡げてガスが排出される際においても、ガス抜き部4及びガス抜き孔5を通して電解液が外部に排出されることを抑制することができる。
【0064】
なお、上記実施形態では、ローラ13をガス抜き部4の基部に押付けることにより、外装用フィルムの一方と他方とを張付き状態から引き剥がすものについて説明した。しかし、ローラ13の上下方向のストロークがアーム15の長さにより制約されて最下端にストロークしてもガス抜き部4の基部に到達しない場合には、ベース部材17をローラ13の下降移動に伴ってアクチュエータにより下降させるものであってもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、ローラ13をガス抜き部4の基部に押付けることにより、外装用フィルムの一方と他方とを張付き状態から引き剥がすものについて説明した。しかし、密着された外装用フィルムの引き剥がしは、ガス抜き部4の基部を発電要素2側に押圧して外装用フィルムの一方を他方に対してずらすものであればよく、ローラ13を用いることなく、例えば、シリンダ装置により伸縮される部材により、ガス抜き部4の基部を発電要素2側に押圧するものであってもよい。さらにまた、上記実施形態においては、第1実施形態における吸着パッドに代えて、外装用フィルムの一方を他方に対してずらす構成としているが、これに限定されず、吸着パッドと外装用フィルムの一方を他方に対してずらす構成とを併用してもよい。
【0066】
本実施形態においては、第1実施形態における効果(ア)、(イ)に加えて以下に記載した効果を奏することができる。
【0067】
(エ)引き剥がし工程は、ガス抜き孔5を形成する部分の外装用フィルムの一方を他方に対して発電要素2側にずらすものである。即ち、ガス抜き部4の基部を発電要素2側に押圧するのみであるため、簡単な構成により外装用フィルムの一方を他方に対してずらして、外装用フィルム同士を引き剥がすことができる。
【0068】
(オ)引き剥がし工程は、ガス抜き孔5を形成する部分に押し当てるローラ13を発電要素2側に押圧して、外装用フィルムの一方を他方に対してずらすものである。則ち、ガス抜き部4の基部を発電要素2側に押圧する部材として、発電要素2側に転動させたローラ13を用いるため、引き剥がし装置30を簡単化できる。
【0069】
(第3実施形態)
図14は、本発明を適用した二次電池の製造方法および製造装置の第3実施形態を示す開孔過程を示す説明図である。本実施形態の開孔装置においては、拘束パッド及び挟持体に代えて、外装体のガス抜き部を傾斜した表面を備える弾性パッドで挟むことにより、残留する電解液を発電要素側に押戻すようにした構成を第1実施形態に追加したものである。なお、第1実施形態と同一装置には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
【0070】
本実施形態の開孔装置10は、図14Aに示すように、外装体1のガス抜き部4の両側にそれぞれ臨んで、対向する表面を傾斜させて形成した弾性体、例えば、スポンジ体で形成した一対の弾性パッド20,20を備える。図示された弾性パッド20は、待機位置に位置した状態を示している。対向する弾性パッド20,20の対向する表面は、ガス抜き部4の先端側で互いに近寄り、ガス抜き部4の根元側で互いに離れる傾斜面20A,20Aを備える。一対の弾性パッド20の中央には、横方向に延びるスリットによる貫通孔20B,20Bが形成され、第1実施形態と同様に、この20B,20Bにはカッタ14の切り刃が貫通してガス抜き部4に臨む領域に切り込みを入れてガス抜き孔5を形成可能としている。その他の構成は、第1実施形態と同様に構成している。
【0071】
図14Aに示すように、コンディショニング工程によりガス発生された二次電池の外装体1は、ガスによる内圧上昇によりガス抜き部4にも電解液が残留した状態となっている。開孔装置10は、図14Bに示すように、一対の弾性パッド20を作動位置に移動させて、一対の弾性パッド20により外装体1のガス抜き部4を挟持する。一対の弾性パッド20は、対向する表面が傾斜面20A,20Aとなっているため、ガス抜き部4の先端側を挟持し、順次ガス抜き部4の根元側に向かって挟持範囲を拡大させていく。この挟持範囲の拡大に連れて、ガス抜き部4の先端側から根元側に向かってその幅寸法が狭められることとなり、ガス抜き部4が狭められて押し潰され、ガス抜き部4に残留していた電解液は、発電要素2内に押し戻される。押し戻された電解液は、発電要素2周辺の電解液と合体して、ガスと電解液との気液分離が促進される。
【0072】
この構成においても、第1実施例と同様に、弾性パッド20によるガス抜き部4のしごき作動時において、ガス抜き部4へ作用する弾性パッド20からの押圧力は、発電要素2から離れた部位から発電要素2に接近するに連れて低下するよう動作する。このため、発電要素2から離れた部位に接触する弾性パッド20においては、弾性パッド20は比較的大きな押圧力によりガス抜き部4をしごくように作用する。この結果、ガス抜き部4に残留する電解液は混在するガスと共に確実に発電要素2側に送ることができる。
【0073】
次いで、図14Cに示すように、カッタ14の切り刃が押出され、外装体1のガス抜き部4に切り込みを入れる。次いで、切り刃を横方向に移動してガス抜き部4を横方向に切込み、ガス抜き部4に切り込みによるガス抜き孔5を形成し、その後に後方へ後退して待機位置に復帰する。次いで、一対の弾性パッド20が待機位置に戻される。
【0074】
次いで、図14Dに示すように、図示しないシリンダによりロッド33を作動させて吸着パッド31を作動位置に前進させて、吸着パッド31をガス抜き部4の外装用フィルムに接触させ、図示しない負圧発生装置より導入した負圧により外装用フィルムを吸着パッド31により吸着させる。次いで、吸着パッド31をシリンダにより後退させることにより、張付いている外装用フィルム同士を互いに引き剥がす。次いで、負圧発生装置よりの負圧の導入を停止し大気を導入することにより、吸着パッド31を外装用フィルムから離脱させ、シリンダにより吸着パッド31を待機位置に戻す。
【0075】
これにより、外装体1内の発電要素2側に押込められて存在するガスは、図14Dに示すように、拡げられたガス抜き部4を通過して、ガス抜き孔5から外部に排出される。このため、外装体内には殆どの残留ガスが排出された状態とできる。また、ガス抜き部4に存在していた電解液は、一対の弾性パッド20,220によるしごき作用により発電要素2側に戻され、発電要素2周辺の電解液と合体している。このため、ガス抜き部4を吸着パッド31により拡げた際においても、ガス抜き部4及びガス抜き孔5を通して電解液が外部に排出されることを抑制することができる。
【0076】
なお、上記実施形態では、押圧工程により互いに密着された外装用フィルムを引き剥がしを、一対の吸着パッド31により互いに離反方向に引き離すものについて説明した。しかし、密着された外装用フィルムを引き剥がしを、第2実施形態に示すように、ガス抜き部4の基部を発電要素2側に押圧して外装用フィルムの一方を他方に対してずらすものであってもよい。この場合には、第2実施形態に示すように、ローラ13を用いることなく、例えば、シリンダ装置により伸縮される部材により、ガス抜き部4の基部を発電要素2側に押圧することにより実施することができる。
【0077】
本実施形態においては、第1実施形態における効果(ア)、(ウ)に加えて以下に記載した効果を奏することができる。
【0078】
(カ)押圧工程は、発電要素2から遠い側で互いに接近し近い側で互いに離れる傾斜した傾斜面20A,20Aを備える弾性パッド20,20によりガス抜き孔5を形成する部分を両側から挟むものである。即ち、ガス抜き部4を弾性パッド20,20により挟むことによりガス抜き部4を押し潰し電解液を発電要素2側に移動させるものであるため、構造が簡単であり、低コストとできる。しかも、ガス抜き部4を両面から保持した状態で、ガス抜き部4にガス抜き孔5を形成するため、ガス抜き部4の位置が安定し、ガス抜き孔5を形成しやすい効果がある。
【符号の説明】
【0079】
A 熱溶着
B 開口部
C 第1封止部
D 第2封止部
1 外装体
2 発電要素
3A,3B 電極端子
4 ガス抜き部
5 ガス抜き孔
10 開孔装置
11 拘束パッド
11A スリットによる貫通孔
12 挟持体
13 ローラ
14 カッタ
15 アーム
20 弾性パッド
20A 傾斜面
30 引き剥がし装置
31 吸着パッド(吸着手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15