特許第6242213号(P6242213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6242213薬物送達および治療用薬剤の有効性を向上させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242213
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】薬物送達および治療用薬剤の有効性を向上させる方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/337 20060101AFI20171127BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20171127BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20171127BHJP
   A61K 31/56 20060101ALI20171127BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20171127BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20171127BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20171127BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   A61K31/337
   A61K9/51
   A61K31/282
   A61K31/56
   A61K31/573
   A61K45/00
   A61K47/42
   A61P35/00
【請求項の数】8
【全頁数】63
(21)【出願番号】特願2013-502698(P2013-502698)
(86)(22)【出願日】2011年3月28日
(65)【公表番号】特表2013-523743(P2013-523743A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】US2011030206
(87)【国際公開番号】WO2011123393
(87)【国際公開日】20111006
【審査請求日】2014年3月27日
【審判番号】不服2016-5275(P2016-5275/J1)
【審判請求日】2016年4月8日
(31)【優先権主張番号】61/318,777
(32)【優先日】2010年3月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508061974
【氏名又は名称】アブラクシス バイオサイエンス, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】デサイ, ニール ピー.
(72)【発明者】
【氏名】スーン−ション, パトリック
【合議体】
【審判長】 内藤 伸一
【審判官】 山本 吾一
【審判官】 前田 佳与子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−509331(JP,A)
【文献】 特表2006−524632(JP,A)
【文献】 VON HOFF, D.D. ET AL,SPARC correlation with response to gemcitabine(G) plus nab−paclitaxe(nab−P) in patients with advanced metastatic pancreatic cancer: A phase I/II study.,JOURNAL OF CLINICAL ONCOLOGY,2009年,vol.27,no.15S,p.4525
【文献】 REYNOLDS, C. ET AL,Phase II Trial of Napoparticle Albumin−Bound Paclitaxel, Carboplatin, and Bevacizumab in First−line Patients with Advanced Nonsquamous Non−small Cell Lung Cancer,JOURNAL OF THORACIC ONCOLOGY,2009年,vol.4,no.12,pages 1537−1543
【文献】 Ph I/II Nab−Paclitaxel & Carboplatin w/Concurrent Radiation Therapy for Unresectable Stg III NSCLC[online],2009年 8月11日[retrieved on 2015−01−23],Retrieved from the Internet:<URL:https://clinicaltrials.gov/archive/NCT00544648/2009_08_11>
【文献】 Ian F. Tannock, M.D. et al,Docetaxel plus Prednisone or Mitoxantrone plus Prednisone for Advanced Prostate Cancer,N Engl J Med,2004年,vol.351,no.15,p.1502−1512
【文献】 DESAI N ET AL,Enhanced antitumor activity and safety of albumin−bound nab−docetaxel versus polysorbate 80−based docetaxel,EUROPEAN JOURNAL OF CANCER SUPPLEMENTS,2006年,vol.4,no.12,page 49
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAPLUS/BIOSIS/EMBASE/MEDLINE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体における癌の処置のための組成物であって、該組成物がアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含み、該組成物は、該個体に該癌の治療用薬剤と組み合わせて投与されることを特徴とし、処置を受ける個体を選択する基準として薬物取り込み能が使用され、該薬物取り込み能が、腫瘍間質におけるカベオリン−1のレベルに基づく、組成物。
【請求項2】
前記組成物の投与前に、前記個体の標的組織の薬物取り込み能が決定されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記癌が膵臓癌、肺癌、黒色腫または前立腺癌である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記癌が、扁平上皮癌、中皮腫、類腱線維腫、線維形成性円形細胞腫瘍、結腸直腸癌腫または胃腸管の腫瘍である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記タキサンがパクリタキセルまたはドセタキセルである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物中の前記ナノ粒子が200nm未満の平均粒子径を有するか、または
前記組成物中の前記ナノ粒子が、アルブミンでコーティングされたタキサンを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記治療用薬剤が、代謝拮抗物質である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記治療用薬剤が、白金ベースの薬剤である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、その全体が本明細書中に参考として援用される、2010年3月29日に出願した米国仮特許出願第31/318,777号に対する優先権の利益を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、アルブミンと水難溶性薬物(タキサンなど)を含むナノ粒子を含む組成物を投与することにより、薬物送達および治療用薬剤(1種類または複数種)の有効性を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
タキサン(パクリタキセルおよびドセタキセルなど)は、広範なヒトの癌に対して抗腫瘍活性を有するジテルペノイド系薬物の一類型である。パクリタキセルは、最初にイチイの樹皮から分離され、微小管破壊という正常機能を妨げることにより作用することがわかった。パクリタキセルは、微小管の構成単位であるチューブリンのβサブユニットに結合し、微小管構造の過剰安定化を引き起こす。生じたパクリタキセル/微小管構造は崩壊できず、それにより有糸分裂が停止し、新生血管形成が抑止される。
【0004】
アルブミン系ナノ粒子組成物が、実質的に水不溶性の薬物(タキサンなど)を送達するための薬物送達系として開発されている。例えば、特許文献1;特許文献2;特許文献3および特許文献4、ならびに特許文献5および特許文献6も参照のこと。アルブミン系ナノ粒子技術は、タンパク質アルブミンが、実質的に水不溶性の薬物を疾患の部位に輸送して送達する天然の性質を利用したものである。このような薬物含有ナノ粒子は、体内の自身の輸送プロセスに容易に組み込まれ、腫瘍のアルブミンへの誘引を利用することができるものであり、高濃度の活性薬物をナノ粒子にて標的部位に送達することが可能になる。また、アルブミン系ナノ粒子技術により、投与プロセスで毒性の化学薬品(溶媒など)の必要性が回避されることによって薬物の可溶性の改善能がもたらされ、したがって、溶媒関連の副作用が解消されることにより、安全性が改善される可能性がある。
【0005】
治療用薬剤、特に癌用薬物は、多くの場合、標的腫瘍部位への送達/到達に関連する問題点のため、全体的な有効性において欠点を有する。治療用薬剤、特に癌治療に使用されるものの有効性を改善する必要性が存在している。
【0006】
本明細書において言及したすべての刊行物、特許、特許出願および公開特許出願の開示は、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる。また、本出願には、米国特許仮出願第61/318,774号および同第61/433,132号が、引用によりその全体が組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,916,596号明細書
【特許文献2】米国特許第6,506,405号明細書
【特許文献3】米国特許第6,749,868号明細書
【特許文献4】米国特許第6,537,579号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0004002号
【特許文献6】米国特許出願公開第2007/0082838号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の簡単な概要
本発明は、一態様において、標的組織内の治療用薬剤の取込みを向上させる方法、ならびにアルブミンと水難溶性薬物を含むナノ粒子を含む組成物を共投与することにより、個体において、該治療用薬剤により疾患(癌など)を処置する方法または該治療用薬剤での処置の有効性を向上させる方法を提供する。以下の記載は、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物(「タキサンナノ粒子組成物」とも称する)に対する具体的なものであるが、同じことがラパマイシンなどの他の薬物にも適用されることを理解されたい。
【0009】
一部の実施形態では、個体に有効量の治療用薬剤およびアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、標的組織(腫瘍など)への該治療用薬剤の取込みが、該タキサンナノ粒子組成物と共投与していない該治療用薬剤の取込みと比べて向上する、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。
【0010】
一部の実施形態では、腫瘍(充実性腫瘍など)を有する個体の処置方法であって、該個体に有効量の治療用薬剤およびアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、該腫瘍への該治療用薬剤の取込みが、該タキサンナノ粒子組成物と共投与していない該治療用薬剤の取込みと比べて向上する方法を提供する。
【0011】
一部の実施形態では、個体に治療用薬剤を、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物と併せて投与することを含む、個体の標的組織(腫瘍など)への治療用薬剤の取込みを助長させる方法を提供する。一部の実施形態では、個体に治療用薬剤を、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物と併せて投与することを含む、個体の腫瘍(充実性腫瘍など)への治療用薬剤の取込みを助長させる方法を提供する。
【0012】
一部の実施形態では、個体の疾患を処置するための治療用薬剤の有効性を向上させる方法であって、前記個体に有効量の該治療用薬剤を、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物と併せて投与することを含む方法を提供する。
【0013】
また、本明細書において、個体の標的組織(例えば腫瘍)内に、他の治療用薬剤(1種類または複数種)、すなわち、該ナノ粒子組成物中の薬物以外の治療用薬剤の送達が助長される微小環境を作出する方法を提供する。例えば、一部の実施形態では、個体にアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含む、治療用薬剤の取込みを助長させるために標的組織(腫瘍など)の微小環境を改変する方法を提供する。一部の実施形態では、腫瘍を有する個体の腫瘍間質を低減させる(例えば、破壊する、例えば、枯渇させる)方法であって、該個体にアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、腫瘍を有する個体の腫瘍の血管新生を増大させる方法であって、該個体にアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、腫瘍を有する個体において細胞/血管の近接性を増大させる方法であって、該個体にアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、腫瘍を有する個体において腫瘍マトリックスを疎性にする(例えば、破壊する、例えば、壊滅させる)方法であって、該個体にアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0014】
本明細書に記載の方法は、他の治療用薬剤(1種類または複数種)の投与と併せて実施され得る。例えば、該方法は、少なくとも1種類(例えば、2、3、4または5種類など)の他の治療用薬剤(化学療法剤など)の投与と併せて実施され得る。
【0015】
一部の実施形態では、疾患は癌である。一部の実施形態では、癌は、膵臓癌、肺癌(NSCLCなど)、黒色腫または前立腺癌のうちのいずれかである。一部の実施形態では、癌は扁平上皮癌(扁平上皮細胞のNSCLCなど)である。一部の実施形態では、癌は進行癌(進行膵臓癌または進行NSCLCなど)である。一部の実施形態では、癌は、高度に線維性である癌および/または密な間質(dense stroma)を有する癌である。一部の実施形態では、疾患は、該タキサンナノ粒子組成物を単独で投与した場合の処置に応答性でないものである。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物中のタキサンの量は、単独で投与した場合は疾患の処置に有効でない量である。
【0016】
一部の実施形態では、標的組織は炎症部位である。一部の実施形態では、標的組織は組織リモデリング部位である。一部の実施形態では、標的組織は創傷治癒部位である。
【0017】
一部の実施形態では、標的組織は低血管分布状態を有するものである。一部の実施形態では、標的組織は過剰線維性のものである。一部の実施形態では、標的組織は密な間質を有するものである。一部の実施形態では、標的組織は、治療用薬剤が浸透するのが困難なものである。
【0018】
一部の実施形態では、個体の標的組織は薬物取り込み能を有するものである。一部の実施形態では、個体の標的組織はアルブミン取込みレベルが高いものである。一部の実施形態では、個体の標的組織は高レベルのカベオリン−1、gp60および/またはSPARC発現を有するものである。
【0019】
別の態様では、治療用薬剤、およびアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物の併用による処置方法、または薬物取り込み能に基づいて該処置の対象の患者を選択する方法を提供する。
【0020】
一部の実施形態では、個体に:(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、処置を受ける個体を選択する基準として薬物取り込み能が使用される、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。
【0021】
一部の実施形態では、(a)個体の標的組織の薬物取り込み能を決定すること、ならびに(b)個体に:(1)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物および(2)治療用薬剤を投与することを含む、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、該方法は、さらに、例えば薬物取り込み能を決定する目的のために、組織試料を前記個体から分離することを含む。
【0022】
一部の実施形態では、(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含む処置に適した個体を特定する方法であって、個体が標的組織において薬物取り込み能を有する場合、該個体は処置に適していると特定される方法を提供する。一部の実施形態では、該方法は、さらに、例えば薬物取り込み能を決定する目的のために、個体の標的組織の薬物取り込み能を決定することを含む。一部の実施形態では、該方法は、さらに、組織試料を前記個体から分離することを含む。一部の実施形態では、該方法は、さらに、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の該組成物および治療用薬剤を該個体に投与することを含む。
【0023】
一部の実施形態では、(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含む処置方法に対する個体の応答性を評価する方法であって、個体の標的組織の薬物取り込み能を決定することを含み、該薬物取り込み能は該個体が該処置に対して応答性であることを示す方法を提供する。一部の実施形態では、該方法は、さらに、個体の標的組織の薬物取り込み能を決定することを含む。一部の実施形態では、該方法は、さらに、例えば薬物取り込み能を決定する目的のために、組織試料を前記個体から分離することを含む。一部の実施形態では、該方法は、さらに、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の該組成物および治療用薬剤を、該処置に対して応答性であると決定された個体に投与することを含む。
【0024】
薬物取り込み能は、例えば、標的組織のアルブミン取込みレベル、標的組織のカベオリン−1レベル、標的組織のgp60レベル、および/または標的組織のSPARCレベルに基づいて決定され得る。例えば、一部の実施形態では、標的組織は、以下の特徴:1)アルブミン取込みの増大;2)カベオリン−1発現の増大;3)gp60発現の増大;および4)SPARC発現の増大のうちの1つ以上を示す場合、薬物取り込み能を有するとみなされる。
【0025】
また、本明細書に記載の併用療法処置の対象の個体のスクリーニング方法、個体が本明細書に記載の併用療法処置に不適切かどうかの決定方法、個体が本明細書に記載の併用療法で適切に処置されるかどうかの決定方法、および本明細書に記載の個体における併用療法処置のモニタリング方法も提供する。
【0026】
さらに、本明細書に記載の方法に有用なキットおよび製造物品、ならびに本明細書に記載のマーケティング方法を提供する。
特定の実施形態では、例えば以下が提供される:
(項目1)
個体における高度に線維性であるかおよび/または密な間質を有する癌の処置方法であって、該個体に、a)タキサンとアルブミンとを含むナノ粒子を含む有効量の組成物を投与することを含む、方法。
(項目2)
前記癌が膵臓癌、肺癌、黒色腫または前立腺癌である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記癌が、扁平上皮癌、中皮腫、類腱線維腫、線維形成性円形細胞腫瘍、結腸直腸癌腫および胃腸管の腫瘍からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目4)
さらに、別の治療用薬剤を投与することを含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記個体が、前記タキサンと前記アルブミンとを含むナノ粒子を含む前記組成物を単独で投与した場合の処置に応答性でない、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記個体が、前記治療用薬剤を単独で投与した場合の処置に応答性でない、項目4に記載の方法。
(項目7)
前記個体が、前記治療用薬剤を単独で投与した場合の処置に応答性でない、項目5に記載の方法。
(項目8)
タキサンナノ粒子組成物の投与前に前記個体において、以下:a)組織間質の量、b)組織の血管新生、c)細胞/血管の近接性、b)腫瘍マトリックスの密度、およびd)間質細胞マーカーの発現のうちの1つ以上を評価することを含む、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記個体における標的組織が、以下の特徴:1)高レベルのアルブミン取込み;2)高レベルのカベオリン−1発現;3)高レベルのgp60発現;および4)高レベルのSPARC発現のうちのいずれか1つ以上を有する、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記タキサンがパクリタキセルである、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記タキサンがドセタキセルである、項目1に記載の方法。
(項目12)
タキサンナノ粒子組成物中の前記ナノ粒子が約200nm未満の平均粒子径を有する、項目1に記載の方法。
(項目13)
タキサンナノ粒子組成物中の前記ナノ粒子が、アルブミンでコーティングされたタキサンを含む、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記治療用薬剤が、代謝拮抗物質、白金ベースの薬剤およびプレドニゾンからなる群より選択される、項目4に記載の方法。
(項目15)
個体における疾患の処置方法であって、該個体に:(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、処置を受ける個体を選択する基準として薬物取り込み能が使用される、方法。
(項目16)
タキサンナノ粒子組成物の投与前に、前記個体の標的組織の薬物取り込み能を決定することを含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
薬物取り込み能が、(a)高レベルのアルブミン取込み;(b)高レベルのカベオリン−1発現;(c)高レベルのgp−60発現;および(d)高レベルのSPARC発現からなる群より選択される1つ以上の特徴に基づいて決定される、項目15のいずれか1項に記載の方法。
(項目18)
前記疾患が癌である、項目15に記載の方法。
(項目19)
前記癌が膵臓癌、肺癌、黒色腫または前立腺癌である、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記癌が、扁平上皮癌、中皮腫、類腱線維腫、線維形成性円形細胞腫瘍、結腸直腸癌腫および胃腸管の腫瘍からなる群より選択される、項目18に記載の方法。
(項目21)
前記タキサンがパクリタキセルである、項目15に記載の方法。
(項目22)
前記タキサンがドセタキセルである、項目15に記載の方法。
(項目23)
タキサンナノ粒子組成物中の前記ナノ粒子が約200nm未満の平均粒子径を有する、項目15に記載の方法。
(項目24)
タキサンナノ粒子組成物中の前記ナノ粒子が、アルブミンでコーティングされたタキサンを含む、項目15に記載の方法。
(項目25)
前記治療用薬剤が、代謝拮抗物質、白金ベースの薬剤およびプレドニゾンからなる群より選択される、項目15に記載の方法。
(項目26)
(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含む疾患の処置に対する個体の応答性の評価方法であって、該個体の標的組織の薬物取り込み能を決定することを含み、薬物取り込み能は該個体が該処置に対して応答性であることを示す、方法。
(項目27)
アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物および治療用薬剤を前記個体に投与することをさらに含む、項目26に記載の方法。
(項目28)
個体における前立腺癌の処置方法であって、該個体に、a)ドセタキセルとアルブミンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物;およびb)有効量のステロイドを投与することを含む、方法。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
本発明は、アルブミンと水難溶性薬物(タキサンなど)を含むナノ粒子を含む組成物を共投与することにより標的組織への治療用薬剤の送達を向上させる方法、ならびに該併用療法に適した、または該併用療法に応答性である個体を、標的組織内へのナノ粒子組成物(タキサンナノ粒子組成物など)の共投与の結果としての治療用薬剤の取込みの向上が得られる能力と相関している、または該能力を示す標的組織の1つ以上の特徴に基づいて特定する方法を提供する。
【0028】
治療用薬剤の有効性は、ナノ粒子組成物によって助長および媒介されるこの到達/送達の向上によって向上される。この知見は、このような処置スキームでは、いくつかの癌(例えば、処置が困難な癌)に対する標準的治療の有効性が大きく高まるだけでなく、他のこれまでの成績不良で未承認の治療レジメン(regime)が進歩するという可能性も高くなることが予測されるため、特筆すべきことである。
【0029】
アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物の1つ、すなわち、Abraxane(登録商標)では、種々の腫瘍の処置において、さまざまな治療用薬剤と併用したとき、種々の臨床試験で相当な治療有効性の改善が示されている。例えば、無作為化フェーズ3臨床試験において、進行非小細胞肺癌(NSCLC)の処置のためにカルボプラチンと併用すると、Abraxane(登録商標)では、Taxol(登録商標)と比べて奏功率の有意な改善が示されている。また、Abraxane(登録商標)では膵臓癌の処置においても、ゲムシタビンと併用した場合、注目すべき結果が示されている。さらに、アルブミンとドセタキセルを含むナノ粒子を含む組成物、すなわち、Nab−ドセタキセルでも、前立腺癌の処置において、プレドニゾンの有効性が向上することが示された。
【0030】
本発明者らは、アルブミンと水難溶性薬物(タキサンなど)を含むナノ粒子を含む組成物は、腫瘍の微小環境を変化させて(例えば、腫瘍間質を壊滅して、腫瘍内の血管新生を増大させること、および/または細胞/血管の近接性を増大させることにより)、腫瘍細胞を、他の治療用薬剤(1種類または複数種)に対してより到達可能となるようにし、したがって、腫瘍の治療用薬剤(1種類または複数種)の取込みを助長させるという仮説をたてている。ナノ粒子薬物組成物は、このようにして、組織の微小環境内に、標的組織へのナノ粒子中の薬物ならびに他の薬物の送達の増大をもたらす門または突破口を作出する。このことは、例えば、膵臓腫瘍の異種移植片モデルにおけるゲムシタビンとAbraxane(登録商標)の併用での本発明者らの試験によって裏づけられており、このとき、本発明者らは、Abraxane(登録商標)によって膵臓癌間質が有効に壊滅され、ゲムシタビンの腫瘍内送達が相当に増大されることを実証した。
【0031】
したがって、本発明は、一態様において、標的組織内の治療用薬剤の取込みを向上させる方法、ならびにアルブミンと水難溶性薬物(タキサンなど)を含むナノ粒子を含む組成物を治療用薬剤と共投与することにより、個体において、該治療用薬剤により疾患(癌など)を処置する方法または該治療用薬剤での処置の有効性を向上させる方法を提供する。
【0032】
別の態様では、治療用薬剤およびアルブミンと水難溶性薬物(タキサンなど)を含むナノ粒子を含む組成物の併用による処置方法、または標的組織内への該タキサンナノ粒子組成物の共投与の結果としての治療用薬剤の取込み(「薬物取り込み能」と称する)の向上が得られる能力と相関している、もしくは該能力を示す標的組織の1つ以上の特徴に基づいて、該処置の対象の患者を選択する方法を提供する。
【0033】
また、本明細書に記載の方法に有用な医薬組成物、製造物品およびキットも提供する。
【0034】
以下の記載は、タキサンナノ粒子組成物に対する具体的なものであるが、同じことが他の薬物(ラパマイシンなど)のナノ粒子組成物にも適用されることを理解されたい。
【0035】
定義
本明細書で用いる場合、「処置」または「処置する」は、有益な、または所望の結果(臨床結果など)を得るためのアプローチである。本発明の解釈上、有益な臨床結果または所望の臨床結果としては、限定されないが、以下:疾患に起因する1つ以上の症状の軽減、疾患の程度の縮小、疾患の安定化(例えば、疾患の悪化の抑制もしくは遅延)、疾患の拡延(例えば、転移)の抑制もしくは遅延、疾患の再発の抑制もしくは遅延、疾患進行の遅延もしくは遅滞、疾患状態の改善、疾患の寛解(一部または完全)の供与、疾患を処置するために必要とされる1種類以上の他の投薬物用量の低減、疾患進行の遅延、生活の質の増進、および/または寿命の長期化のうちの1つ以上が挙げられる。また、「処置」には、疾患の病理学的帰結の低減も包含される。本発明の方法では、このような処置の態様のいずれか1つ以上が想定される。
【0036】
用語「個体」は、哺乳動物をいい、限定されないが、ヒト、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、齧歯類または霊長類が挙げられる。一部の実施形態では、個体はヒトである。
【0037】
本明細書で用いる場合、「併用療法」(combination therapy)または「共投与」(co−administration)により、第1の薬剤が別の薬剤と併せて投与されることを意図する。「〜と併せて」は、ある処置モダリティに加えて別の処置モダリティが施与されること、例えば、同じ個体に本明細書に記載のナノ粒子組成物の投与に加えて、該別の薬剤が投与されることをいう。したがって、「〜と併せて」は、個体に対する該別の処置モダリティの送達前、送達時または送達後の一方の処置モダリティの施与をいう。
【0038】
本明細書において処置との関連で用いる用語「有効量」は、明示した障害、病状または疾患が処置される(例えば、その症状の1つ以上が改善、緩和、低減および/または遅延される)のに充分な化合物または組成物の量をいう。送達、到達、およびアルブミン系ナノ粒子組成物によって助長/媒介される他の有効性の態様の向上との関連において、有効量は、このような目的が果たされるのに充分な量(例えば、標的組織への治療用薬剤の到達が増大するのに有効な量)をいう。
【0039】
用語「同時投与」(simultaneous adminitsration)は、本明細書で用いる場合、併用療法の第1治療薬と第2治療薬が、約15分間以内(大体で、10、5または1分などのいずれかの時間以内)の時間的隔離で投与されること意味する。第1治療薬と第2治療薬を同時投与する場合、第1治療薬と第2治療薬を同じ組成物(例えば、第1治療薬と第2治療薬の両方を含む組成物)中に含有させてもよく、別々の組成物中に含有させてもよい(例えば、第1治療薬をある組成物中に含有させ、第2治療薬を別の組成物中に含有させる)。
【0040】
本明細書で用いる場合、用語「逐次投与」(sequential administration)は、併用療法の第1治療薬と第2治療薬が、約15分より長い(大体で、20、30、40、50、60分のいずれかより長い、またはそれより長い)時間的隔離で投与されること意味する。第1治療薬と第2治療薬のどちらを最初に投与してもよい。第1治療薬と第2治療薬を別々の組成物中に含有させ、該組成物は、同じパッケージまたはキット内に収容しても異なるパッケージまたはキット内に収容してもよい。
【0041】
本明細書で用いる場合、用語「並行投与」(concurrent administration)は、併用療法における第1治療薬の投与と第2治療薬の投与が、互いに重複することを意味する。
【0042】
組成物の量が、個体において有意な細胞死が引き起こされるのに不充分である場合、該組成物は、「有意な細胞傷害が誘導されるのに不充分な量」(また、「非細胞傷害量」とも称する)である。
【0043】
薬物の「治療量下域量」または「治療量下域レベル」は、治療量よりも少ない、すなわち、該薬物が単独で投与される場合に通常使用される量よりも少ない量をいう。この低減は、所与の投与で投与される量および/または所与の期間にわたって投与される量(頻度の低減)の観点に反映され得る。
【0044】
本明細書で用いる標的組織の「薬物取り込み能」は、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物により、標的組織において治療用薬剤の取込みの向上が得られる能力をいう。
【0045】
薬物取り込み能を本明細書に記載の処置方法のため、または本明細書に記載の処置方法の選択のため「の基準として使用する」場合、薬物取り込み能は処置前および/または処置中に測定され、得られた情報は医師により、以下:(a)個体は、最初に処置(1種類または複数種)を受けるのに多分またはおそらく好適;(b)個体は、最初に処置(1種類または複数種)を受けるのに多分またはおそらく好適でない;(c)処置に対する応答性;(d)個体は、処置(1種類または複数種)を継続して受けることが多分またはおそらく好適;(e)個体は、処置(1種類または複数種)を継続して受けることが多分またはおそらく好適でない;(f)投薬量の調整;(g)臨床上の有益性の尤度の予測のいずれかの評価に使用される。当業者には充分理解され得ようが、臨床場面における薬物取り込み能の決定値は、このパラメータが本明細書に記載の処置の開始、継続、調整および/または投与中止の基準として使用される明白な指標である。
【0046】
「処置の開始前または開始時」測定される薬物取り込み能は、個体において、該個体が本明細書に記載の処置モダリティの最初の施与を受ける前、および/または本明細書に記載の処置モダリティの最初の施与を受ける際に少なくとも約4週間以内、好ましくは少なくとも約2週間以内、好ましくは少なくとも約1週間以内、好ましくは少なくとも約5日以内、好ましくは少なくとも約3日以内、好ましくは少なくとも約2日以内、好ましくは少なくとも約1日以内に測定される薬物取り込み能である。
【0047】
「適しているであろう」個体(本明細書に記載の処置(1種類または複数種)に「適している」個体が挙げられる)は、前記処置の施与による恩恵を受けないよりは受ける可能性が高い個体である。反対に、「適していないであろう」または「不適切であろう」個体(本明細書に記載の処置(1種類または複数種)に「不適切である」個体が挙げられる)は、前記処置の施与による恩恵を受けるよりは受けない可能性が高い個体である。
【0048】
本明細書に記載の本発明の態様および実施形態は、該態様および実施形態「からなる」および/または「から本質的になる」ものを包含していることは理解されよう。
【0049】
本明細書における「約」を伴う値またはパラメータに対する言及は、該値またはパラメータそのものに関する変形例を包含(および記載)する。例えば、「約X」に関する記載は「X」の記載を含む。
【0050】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる場合、単数形「a」、「or」および「the」は、文脈において、本文中にそうでないことを明示していない限り、複数の指示対象物に対する言及を含む。
【0051】
処置方法および薬物取込みを向上させる方法
本発明は、治療用薬剤、およびアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を共投与する方法を提供する。タキサンナノ粒子組成物により、標的組織(例えば腫瘍)内に、標的組織が治療用薬剤に対してより到達可能となる有利な微小環境が作出される。
【0052】
したがって、一部の実施形態では、個体に有効量の治療用薬剤およびアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、標的組織(腫瘍など)への該治療用薬剤の取込みが、該タキサンナノ粒子組成物と共投与していない該治療用薬剤の取込みと比べて向上する、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、腫瘍(充実性腫瘍など)を有する個体の処置方法であって、該個体に有効量の治療用薬剤およびアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、該腫瘍への該治療用薬剤の取込みが、該タキサンナノ粒子組成物と共投与していない該治療用薬剤の取込みと比べて向上する方法を提供する。一部の実施形態では、ナノ粒子組成物の平均粒子径は約200nm以下である。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物は毎週投与される。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物は静脈内投与される。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物は毎週静脈内投与される。
【0053】
したがって、一部の実施形態では、個体に有効量の治療用薬剤およびアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされており、標的組織(腫瘍(例えば、充実性腫瘍)など)への該治療用薬剤の取込みが、該タキサンナノ粒子組成物と共投与していない該治療用薬剤の取込みと比べて向上する、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、個体に有効量の治療用薬剤およびアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、ナノ粒子組成物の平均粒子径が約200nm以下であり、標的組織(腫瘍(例えば、充実性腫瘍)など)への該治療用薬剤の取込みが、該タキサンナノ粒子組成物と共投与していない該治療用薬剤の取込みと比べて向上する、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、個体に有効量の治療用薬剤およびアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされており、ナノ粒子組成物の平均粒子径が約200nm以下であり、標的組織(腫瘍(例えば、充実性腫瘍)など)への該治療用薬剤の取込みが、該タキサンナノ粒子組成物と共投与していない該治療用薬剤の取込みと比べて向上する、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物は毎週投与される。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物は静脈内投与される。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物は毎週静脈内投与される。
【0054】
一部の実施形態では、個体に、有効量の治療用薬剤とNab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標)))を投与することを含み、標的組織(腫瘍など)への該治療用薬剤の取込みが、該タキサンナノ粒子組成物と共投与していない該治療用薬剤の取込みと比べて向上する、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、個体に有効量の治療用薬剤とNab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標))を投与することを含み、腫瘍への該治療用薬剤の取込みが、該タキサンナノ粒子組成物と共投与していない該治療用薬剤の取込みと比べて向上する、腫瘍(充実性腫瘍など)を有する個体の処置方法を提供する。一部の実施形態では、Nab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標))は毎週投与される。一部の実施形態では、Nab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標))は静脈内投与される。一部の実施形態では、Nab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標))は毎週静脈内投与される。
【0055】
一部の実施形態では、個体に治療用薬剤を、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物と併せて投与することを含む、個体の標的組織(腫瘍など)への治療用薬剤の取込みを助長させる方法を提供する。一部の実施形態では、個体に治療用薬剤を、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物と併せて投与することを含む、個体の腫瘍(充実性腫瘍など)への治療用薬剤の取込みを助長させる方法を提供する。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物は毎週投与される。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物は静脈内投与される。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物は毎週静脈内投与される。
【0056】
一部の実施形態では、該方法は、さらに、個体が治療用薬剤とタキサンナノ粒子組成物の併用に適している(または必要としている)かどうかを決定する目的で、該個体に単独で投与した場合の治療用薬剤の組織内取込みを測定する工程を含む。単独で投与した場合の治療用薬剤の低組織内取込みは、この個体が治療用薬剤とタキサンナノ粒子組成物の併用に適している(または必要としている)であろうことの表示であり得る。したがって、例えば、一部の実施形態では、a)治療用薬剤を個体に投与し、該治療用薬剤の組織内取込みを測定すること;および2)該個体に該治療用薬剤を、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物と併せて投与することを含む、個体の標的組織(腫瘍(例えば、充実性腫瘍)など)への治療用薬剤の取込み助長させる方法を提供する。一部の実施形態では、a)治療用薬剤を個体に投与し、該治療用薬剤の組織内取込みを測定すること;および2)該個体に該治療用薬剤を、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物と併せて投与することを含み、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされている、個体の標的組織(腫瘍(例えば、充実性腫瘍)など)への治療用薬剤の取込み助長させる方法を提供する。一部の実施形態では、a)治療用薬剤を個体に投与し、該治療用薬剤の組織内取込みを測定すること;および2)該個体に該治療用薬剤を、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物と併せて投与することを含み、ナノ粒子組成物の平均粒子径が約200nm以下である、個体の標的組織(腫瘍(例えば、充実性腫瘍)など)への治療用薬剤の取込み助長させる方法を提供する。一部の実施形態では、a)治療用薬剤を個体に投与し、該治療用薬剤の組織内取込みを測定すること;および2)該個体に該治療用薬剤を、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物と併せて投与することを含み、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされており、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径が約200nm以下である、個体の標的組織(腫瘍(例えば、充実性腫瘍)など)への治療用薬剤の取込み助長させる方法を提供する。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物は毎週投与される。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物は静脈内投与される。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物は毎週静脈内投与される。
【0057】
一部の実施形態では、a)治療用薬剤を個体に投与し、該治療用薬剤の組織内取込みを測定すること;および2)該個体に該治療用薬剤を、Nab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標))と併せて投与することを含む、個体の標的組織(腫瘍(例えば、充実性腫瘍)など)への治療用薬剤の取込み助長させる方法を提供する。一部の実施形態では、Nab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標))は毎週投与される。一部の実施形態では、Nab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標))は静脈内投与される。一部の実施形態では、Nab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標))は毎週静脈内投与される。
【0058】
治療用薬剤の組織内取込みは、当該技術分野で知られた方法によって測定され得る。このようなものとしては、例えば、LCMS、HPLC、放射性標識、ELISA、および蛍光試験が挙げられる。一部の実施形態では、治療用薬剤の組織内取込み(腫瘍内取込みなど)は、タキサンナノ粒子組成物と共投与していない該治療用薬剤の組織内取込みと比べて少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%などのいずれか、またはそれ以上)向上する。一部の実施形態では、治療用薬剤の組織内取込み(腫瘍内取込みなど)は、タキサンナノ粒子組成物と共投与していない該治療用薬剤の組織内取込みと比べて約10%〜20%、20%〜30%、30%〜40%、40%〜50%、50%〜60%、60%〜70%、70%〜80%、80%〜90%、90%〜100%または100%〜200%向上する。
【0059】
一部の実施形態では、個体に治療用薬剤を、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物と併せて投与することを含む、個体の標的組織(例えば腫瘍)内への治療用薬剤の浸透を増大させる方法を提供する。一部の実施形態では、個体に治療用薬剤を、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物と併せて投与することを含む、個体の腫瘍(例えば充実性腫瘍)内への治療用薬剤の浸透を増大させる方法を提供する。一部の実施形態では、治療用薬剤の浸透は、該タキサンナノ粒子組成物と共投与していない治療用薬剤の浸透と比べて少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%などのいずれか、またはそれ以上)増大する。一部の実施形態では、治療用薬剤の浸透は、該タキサンナノ粒子組成物と共投与していない治療用薬剤の浸透と比べて約10%〜20%、20%〜30%、30%〜40%、40%〜50%、50%〜60%、60%〜70%、70%〜80%、80%〜90%、90%〜100%または100%〜200%増大する。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物は毎週投与される。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物は静脈内投与される。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物は毎週静脈内投与される。
【0060】
一部の実施形態では、個体に治療用薬剤を、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物と併せて投与することを含む、個体の標的組織(腫瘍など)に治療用薬剤を送達する方法を提供する。一部の実施形態では、個体に治療用薬剤を、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物と併せて投与することを含む、個体の腫瘍(充実性腫瘍など)に治療用薬剤を送達する方法を提供する。一部の実施形態では、治療用薬剤の送達は、該タキサンナノ粒子組成物と共投与していない治療用薬剤の送達と比べて少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%などのいずれか、またはそれ以上)増大する。一部の実施形態では、治療用薬剤の送達は、該タキサンナノ粒子組成物と共投与していない治療用薬剤の送達と比べて約10%〜20%、20%〜30%、30%〜40%、40%〜50%、50%〜60%、60%〜70%、70%〜80%、80%〜90%、90%〜100%または100%〜200%増大する。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物は毎週投与される。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物は静脈内投与される。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物は毎週静脈内投与される。
【0061】
一部の実施形態では、個体の疾患を処置するための治療用薬剤の有効性を向上させる方法であって、前記個体に有効量の該治療用薬剤を、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物と併せて投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、治療用薬剤の有効性は、タキサンナノ粒子組成物の共投与なしでの有効性と比べて少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%などのいずれか、またはそれ以上)向上する。一部の実施形態では、治療用薬剤の有効性は、タキサンナノ粒子組成物の共投与なしでの有効性と比べて約10%〜20%、20%〜30%、30%〜40%、40%〜50%、50%〜60%、60%〜70%、70%〜80%、80%〜90%、90%〜100%または100%〜200%向上する。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物は毎週投与される。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物は静脈内投与される。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物は毎週静脈内投与される。
【0062】
また、本明細書において、個体の標的組織(例えば腫瘍)内に、他の治療用薬剤(1種類または複数種)の送達が助長される微小環境を作出する方法を提供する。例えば、一部の実施形態では、個体にアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含む、治療用薬剤の取込みを助長させるために個体の標的組織の微小環境を改変する方法を提供する。一部の実施形態では、該方法は、さらに、タキサンナノ粒子組成物の投与前に標的組織内の微小環境を評価することを含む。したがって、例えば、一部の実施形態では、a)標的組織内の微小環境を評価すること;およびb)個体に、タキサンとアルブミンとを含むナノ粒子(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサンを含むナノ粒子)を含む有効量の組成物を投与することを含む、個体の標的組織(例えば腫瘍)内に、治療用薬剤の送達が助長される微小環境を作出する方法を提供する。一部の実施形態では、a)標的組織内の微小環境を評価すること;およびb)個体に、タキサンとアルブミンとを含むナノ粒子(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサンを含むナノ粒子)を含む有効量の組成物を投与することを含む、個体の疾患の処置方法を提供する。標的組織内の微小環境の好適なインジケータとしては、限定されないが、組織間質の量、組織の血管新生、細胞/血管の近接性、腫瘍マトリックスの密度、および間質細胞マーカーの発現が挙げられる。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物は毎週投与される。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物は静脈内投与される。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物は毎週静脈内投与される。
【0063】
一部の実施形態では、腫瘍を有する個体の腫瘍間質を低減させる(例えば、破壊する、例えば、枯渇させる)方法であって、該個体にアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、腫瘍間質は、タキサンナノ粒子組成物を投与していない個体と比べて少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%または100%のいずれかの割合が破壊される。一部の実施形態では、該方法は、さらに、個体が腫瘍間質を低減させる方法を必要としている(または適している)かどうかを決定する目的で、該個体の腫瘍間質の量を測定する工程を含む。したがって、例えば、一部の実施形態では、a)個体の腫瘍間質の量を測定すること、およびb)該個体に、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含む、腫瘍を有する個体の腫瘍間質を低減させる(例えば、破壊する、例えば、枯渇させる)方法を提供する。一部の実施形態では、a)個体の腫瘍間質の量を測定すること、およびb)該個体に、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされている、腫瘍を有する個体の腫瘍間質を低減させる(例えば、破壊する、例えば、枯渇させる)方法を提供する。一部の実施形態では、a)個体の腫瘍間質の量を測定すること、およびb)該個体に、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径が約200nm以下である、腫瘍を有する個体の腫瘍間質を低減させる(例えば、破壊する、例えば、枯渇させる)方法を提供する。一部の実施形態では、a)個体の腫瘍間質の量を測定すること、およびb)該個体に、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされており、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径が約200nm以下である、腫瘍を有する個体の腫瘍間質を低減させる(例えば、破壊する、例えば、枯渇させる)方法を提供する。一部の実施形態では、a)個体の腫瘍間質の量を測定すること、およびb)該個体にNab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標))を投与することを含む、腫瘍を有する個体の腫瘍間質を低減させる(例えば、破壊する、例えば、枯渇させる)方法を提供する。
【0064】
一部の実施形態では、腫瘍を有する個体の腫瘍の血管新生を増大させる方法であって、該個体にアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、腫瘍の血管新生は、タキサンナノ粒子組成物を投与していない個体と比べて少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%または100%のいずれかの割合増大する。一部の実施形態では、該方法は、さらに、個体が腫瘍の血管新生の増大方法を必要としている(または適している)かどうかを決定する目的で、該個体の腫瘍の血管新生の程度を測定する工程を含む。したがって、例えば、一部の実施形態では、a)個体の腫瘍の血管新生の程度を測定すること、およびb)該個体に、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含む、腫瘍を有する個体の腫瘍の血管新生を増大させる方法を提供する。一部の実施形態では、a)個体の腫瘍の血管新生の程度を測定すること、およびb)該個体に、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされている、腫瘍を有する個体の腫瘍の血管新生を増大させる方法を提供する。一部の実施形態では、a)個体の腫瘍の血管新生の程度を測定すること、およびb)該個体に、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径が約200nm以下である、腫瘍を有する個体の腫瘍の血管新生を増大させる方法を提供する。一部の実施形態では、a)個体の腫瘍の血管新生の程度を測定すること、およびb)該個体に、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされており、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径が約200nm以下である、腫瘍を有する個体の腫瘍の血管新生を増大させる方法を提供する。一部の実施形態では、a)個体の腫瘍の血管新生の程度を測定すること、およびb)該個体にNab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標))を投与することを含む、腫瘍を有する個体の腫瘍の血管新生を増大させる方法を提供する。
【0065】
一部の実施形態では、腫瘍を有する個体において細胞/血管の近接性を増大させる方法であって、該個体にアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、細胞/血管の近接性は、タキサンナノ粒子組成物を投与していない個体と比べて少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%または100%のいずれかの割合増大する。一部の実施形態では、該方法は、さらに、個体が細胞/血管の近接性の増大方法を必要としている(または適している)かどうかを決定する目的で、個体の細胞/血管の近接性の程度を測定する工程を含む。したがって、例えば、一部の実施形態では、a)個体の細胞/血管の近接性の程度を測定すること、およびb)該個体に、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含む、腫瘍を有する個体において細胞/血管の近接性を増大させる方法を提供する。一部の実施形態では、a)個体の細胞/血管の近接性の程度を測定すること、およびb)該個体に、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされている、腫瘍を有する個体において細胞/血管の近接性を増大させる方法を提供する。一部の実施形態では、a)個体の細胞/血管の近接性の程度を測定すること、およびb)該個体に、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径が約200nm以下である、腫瘍を有する個体において細胞/血管の近接性を増大させる方法を提供する。一部の実施形態では、a)個体の細胞/血管の近接性の程度を測定すること、およびb)該個体に、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされており、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径が約200nm以下である、腫瘍を有する個体において細胞/血管の近接性を増大させる方法を提供する。一部の実施形態では、a)個体の細胞/血管の近接性の程度を測定すること、およびb)該個体にNab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標))を投与することを含む、腫瘍を有する個体において細胞/血管の近接性を増大させる方法を提供する。
【0066】
一部の実施形態では、腫瘍を有する個体において腫瘍マトリックスを疎性にする(例えば、破壊する、例えば、壊滅させる)方法であって、該個体にアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、腫瘍マトリックスは、タキサンナノ粒子組成物を投与していない個体と比べて少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%または100%のいずれかの割合が破壊される。一部の実施形態では、該方法は、さらに、個体が腫瘍マトリックスを疎性にする(例えば、破壊する、例えば、壊滅させる)方法を必要としている(または適している)かどうかを決定する目的で、個体の腫瘍マトリックスの密度を測定する工程を含む。したがって、例えば、一部の実施形態では、a)個体の腫瘍マトリックスの密度を測定すること、およびb)個体に、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含む、腫瘍を有する個体において腫瘍マトリックスを疎性にする(例えば、破壊する、例えば、壊滅させる)方法を提供する。一部の実施形態では、a)個体の腫瘍マトリックスの密度を測定すること、およびb)個体に、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされている、腫瘍を有する個体において腫瘍マトリックスを疎性にする(例えば、破壊する、例えば、壊滅させる)方法を提供する。一部の実施形態では、a)個体の腫瘍マトリックスの密度を測定すること、およびb)個体に、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径が約200nm以下である、腫瘍を有する個体において腫瘍マトリックスを疎性にする(例えば、破壊する、例えば、壊滅させる)方法を提供する。一部の実施形態では、a)個体の腫瘍マトリックスの密度を測定すること、およびb)個体に、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされており、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径が約200nm以下である、腫瘍を有する個体において腫瘍マトリックスを疎性にする(例えば、破壊する、例えば、壊滅させる)方法を提供する。一部の実施形態では、a)個体の腫瘍マトリックスの密度を測定すること、およびb)個体にNab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標))を投与することを含む、腫瘍を有する個体において腫瘍マトリックスを疎性にする(例えば、破壊する、例えば、壊滅させる)方法を提供する。
【0067】
本明細書に記載の方法は、他の治療用薬剤(1種類または複数種)の投与と併せて実施され得る。例えば、該方法は、少なくとも1種類(例えば、2、3、4または5種類など)の他の治療用薬剤の投与と併せて実施され得る。
【0068】
一部の実施形態では、疾患は癌である。本明細書に記載の方法は、種々の癌処置の態様、例えば、癌細胞の増殖の抑止(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%または100%のいずれかの割合での抑止)、腫瘍転移の抑止(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%または100%のいずれかの割合での抑止)、既に存在している腫瘍転移の低減(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%または100%のいずれかの割合の低減)、既に存在している腫瘍転移の発生数または全身組織量の低減(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%または100%のいずれかの割合の低減)、腫瘍サイズの低減(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%または100%のいずれかの割合の低減)、全身腫瘍組織量の低減(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%または100%のいずれかの割合の低減)、癌の疾患進行までの時間の長期化(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12週間のいずれかの期間での長期化)、癌を有する個体の生存期間の長期化(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12ヶ月のいずれかの期間での長期化)、癌を有する個体の無病生存期間の長期化(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12ヶ月のいずれかの期間での長期化)、および癌を有する個体の1つ以上の症状の緩和などに有用である。したがって、本出願は、いずれか1つ以上の癌処置の態様に関する方法を提供する。
【0069】
一部の実施形態では、癌は、膵臓癌、肺癌(NSCLCなど)、黒色腫または前立腺癌のうちのいずれかである。一部の実施形態では、癌は扁平上皮癌(扁平上皮細胞のNSCLCなど)である。一部の実施形態では、癌は進行癌(進行膵臓癌または進行NSCLCなど)である。一部の実施形態では、癌は、高度に線維性である癌および/または密な間質を有する癌である。一部の実施形態では、癌は乳癌である。一部の実施形態では、癌は頭頚部癌である。一部の実施形態では、癌は食道癌(食道扁平上皮癌など)である。一部の実施形態では、癌は頸部癌(頸部扁平上皮癌など)である。
【0070】
一部の実施形態では、癌は、高度に線維性である癌および/または密な間質を有する癌である。一部の実施形態では、癌は、間質高含有で線維形成性のものである。このような癌としては、限定されないが、扁平上皮癌(例えば、発生部位に無関係の扁平上皮癌)、胆・膵癌腫、中皮腫、類腱線維腫、線維形成性円形細胞腫瘍、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌腫および胃腸管の腫瘍、肺癌(小細胞肺癌を除く)、リンパ腫、黒色腫、脳腫瘍(例えば、大脳星細胞腫、神経芽腫、および髄芽腫)、肝細胞腫瘍および尿路上皮腫瘍、ならびに下垂体の腫瘍が挙げられる。
【0071】
一部の実施形態では、癌は、高度に線維性の腫瘍である、および/または密な間質を有する癌であり、癌は、膵臓癌、肺癌、黒色腫、乳癌または前立腺癌のいずれかではない。一部の実施形態では、癌は、扁平上皮癌(例えば、発生部位に無関係の扁平上皮癌)、中皮腫、類腱線維腫、線維形成性円形細胞腫瘍、結腸直腸癌腫および胃腸管の腫瘍、リンパ腫、ならびに脳腫瘍(例えば、大脳星細胞腫、神経芽腫および髄芽腫)、肝細胞腫瘍および尿路上皮腫瘍、ならびに下垂体の腫瘍からなる群より選択される。一部の実施形態では、癌は、扁平上皮癌(例えば、発生部位に無関係の扁平上皮癌)、中皮腫、類腱線維腫、線維形成性円形細胞腫瘍、結腸直腸癌腫および胃腸管の腫瘍からなる群より選択される。一部の実施形態では、癌は扁平上皮癌である。一部の実施形態では、癌は中皮腫である。一部の実施形態では、癌は類腱線維腫である。一部の実施形態では、癌は線維形成性円形細胞腫瘍である。一部の実施形態では、癌は結腸直腸癌腫である。一部の実施形態では、癌は胃腸管の腫瘍である。
【0072】
したがって、例えば、一部の実施形態では、個体に、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物を投与することを含む、個体における高度に線維性である癌および/または密な間質を有する癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされている、個体における高度に線維性である癌および/または密な間質を有する癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径が約200nm以下である、個体における高度に線維性である癌および/または密な間質を有する癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされており、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径が約200nm以下である、個体における高度に線維性である癌および/または密な間質を有する癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体にNab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標))を投与することを含む、個体における高度に線維性である癌および/または密な間質を有する癌の処置方法を提供する。
【0073】
一部の実施形態では、個体に、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物を投与することを含む、個体の間質高含有で線維形成性である癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体にアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされている、個体の間質高含有で線維形成性である癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体にアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径が約200nm以下である、個体の間質高含有で線維形成性である癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体にアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされており、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径が約200nm以下である、個体の間質高含有で線維形成性である癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体にNab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標))を投与することを含む、個体の間質高含有で線維形成性である癌の処置方法を提供する。
【0074】
一部の実施形態では、扁平上皮癌(例えば、発生部位に無関係の扁平上皮癌)、中皮腫、類腱線維腫、線維形成性円形細胞腫瘍、結腸直腸癌腫および胃腸管の腫瘍からなる群より選択される個体の癌の処置方法であって、該個体に、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、扁平上皮癌(例えば、発生部位に無関係の扁平上皮癌)、中皮腫、類腱線維腫、線維形成性円形細胞腫瘍、結腸直腸癌腫および胃腸管の腫瘍からなる群より選択される個体の癌の処置方法であって、該個体にアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされている方法を提供する。一部の実施形態では、扁平上皮癌(例えば、発生部位に無関係の扁平上皮癌)、中皮腫、類腱線維腫、線維形成性円形細胞腫瘍、結腸直腸癌腫および胃腸管の腫瘍からなる群より選択される個体の癌の処置方法であって、該個体にアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径が約200nm以下である方法を提供する。一部の実施形態では、扁平上皮癌(例えば、発生部位に無関係の扁平上皮癌)、中皮腫、類腱線維腫、線維形成性円形細胞腫瘍、結腸直腸癌腫および胃腸管の腫瘍からなる群より選択される個体の癌の処置方法であって、該個体にアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされており、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径が約200nm以下である方法を提供する。一部の実施形態では、扁平上皮癌(例えば、発生部位に無関係の扁平上皮癌)、中皮腫、類腱線維腫、線維形成性円形細胞腫瘍、結腸直腸癌腫および胃腸管の腫瘍からなる群より選択される個体の癌の処置方法であって、該個体にNab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標))を投与することを含む方法を提供する。
【0075】
一部の実施形態では、癌は、1種類以上の間質細胞マーカーの高発現を有すると特定されたものである。したがって、例えば、一部の実施形態では、個体に、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物を投与することを含む、1種類以上(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7または8種類)の間質細胞マーカーを過剰発現している個体の癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体にアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされている、1種類以上(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7または8種類)の間質細胞マーカーを過剰発現している個体の癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体にアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径が約200nm以下である、(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7または8種類)の間質細胞マーカーを過剰発現している個体の癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体にアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされており、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径が約200nm以下である、(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7または8種類)の間質細胞マーカーを過剰発現している個体の癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体にNab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標))を投与することを含む、(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7または8種類)の間質細胞マーカーを過剰発現している個体の癌の処置方法を提供する。好適な間質マーカーとしては、限定されないが、カドヘリン−11、カルレチニン、CD10、CD117、デスミン、エンドグリックス(Endoglyx)−1、エンドシアリン(TEM1,CD248)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、ラミニンγ2鎖、神経ガングリオシドGD2、ヌクレオステミン、Snep(間質ニドゲン細胞外マトリックスタンパク質)、テネイシンが挙げられる。他の間質細胞マーカーとしては、例えば、間質細胞関連マーカー(CD13、CD29、CD44、CD63、CD73、CD90、CD166、STRO−1など);ヒト原始骨髄間質細胞のマーカー(HOP−26(CD63)、CD49aおよびSB−10(CD166)など);間質分化マーカー(インヒビン/アクチビンのαおよびβサブユニットなど);ならびに子宮内膜の粘膜内の間質マーカー(α−平滑筋アクチンなど、および子宮内膜の粘膜内の他の間質マーカー)が挙げられる。
【0076】
一部の実施形態では、標的組織は炎症部位である。一部の実施形態では、標的組織は組織リモデリング部位である。一部の実施形態では、標的組織は創傷治癒部位である。
【0077】
一部の実施形態では、標的組織は低血管分布状態を有するものである。一部の実施形態では、標的組織は過剰線維性のものである。一部の実施形態では、標的組織は密な間質を有するものである。一部の実施形態では、標的組織は、治療用薬剤が浸透するのが困難なものである。
【0078】
一部の実施形態では、標的組織は薬物取り込み能を有するものである。薬物取り込み能は、例えば、以下の特徴:1)アルブミン取込みの増大;2)カベオリン−1発現の増大;3)gp60発現の増大;および4)SPARC発現の増大のうちの1つ以上によって決定され得る。
【0079】
一部の実施形態では、標的組織は、正常個体集団との比較に基づいて高いアルブミン取込みを有するものである。一部の実施形態では、標的組織は、同じ疾患を有する個体集団との比較に基づいて高いアルブミン取込みを有するものである。一部の実施形態では、標的組織は、同じ個体の正常組織(または異なる罹病組織)との比較に基づいて高いアルブミン取込みを有するものである。
【0080】
一部の実施形態では、標的組織は、正常個体集団との比較に基づいて高レベルのカベオリン−1、gp60またはSPARC発現を有するものである。一部の実施形態では、標的組織は、同じ疾患を有する個体集団との比較に基づいて高レベルのカベオリン−1、gp60またはSPARC発現を有するものである。一部の実施形態では、標的組織は、同じ個体の正常組織(または異なる罹病組織)との比較に基づいて高レベルのカベオリン−1、gp60またはSPARC発現を有するものである。
【0081】
一部の実施形態では、疾患は、該タキサンナノ粒子組成物を単独で投与した場合の処置に応答性でないものである。例えば、該タキサンナノ粒子組成物は、治療用薬剤と併せて投与する場合でのみ、疾患の処置に使用され得る。これは、例えば、該タキサンナノ粒子組成物の効果は、共投与される治療用薬剤の標的組織への送達を助長することだけという事実のためであり得る。したがって、例えば、一部の実施形態では、個体に、a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物;およびb)少なくとも1種類の他の治療用薬剤を投与することを含む、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を単独で投与した場合の処置に応答性でない疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、治療用薬剤を単独で投与した場合の処置に応答性でない疾患(癌など)を処置する方法であって、個体に、a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物、およびb)該治療用薬剤を投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を単独で投与した場合の処置に応答性でない、または別の治療用薬剤単独での処置に応答性でない疾患(癌など)を処置する方法であって、個体に、a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物;およびb)該別の治療用薬剤を投与することを含む方法を提供する。
【0082】
一部の実施形態では、個体に、a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子中のタキサン組成物は該アルブミンでコーティングされている);およびb)少なくとも1種類の他の治療用薬剤を投与することを含む、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を単独で投与した場合の処置に応答性でない疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、治療用薬剤を単独で投与した場合の処置に応答性でない疾患(癌など)を処置する方法であって、個体に、a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされている)、およびb)該治療用薬剤を投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を単独で投与した場合の処置に応答性でない、または別の治療用薬剤単独での処置に応答性でない疾患(癌など)を処置する方法であって、個体に、a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子中のタキサン組成物は該アルブミンでコーティングされている);およびb)該別の治療用薬剤を投与することを含む方法を提供する。
【0083】
一部の実施形態では、個体に、a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径は約200nm以下である);およびb)少なくとも1種類の他の治療用薬剤を投与することを含む、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を単独で投与した場合の処置に応答性でない疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、治療用薬剤を単独で投与した場合の処置に応答性でない疾患(癌など)を処置する方法であって、個体に、a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径は約200nm以下である);およびb)該治療用薬剤を投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を単独で投与した場合の処置に応答性でない、または別の治療用薬剤単独での処置に応答性でない疾患(癌など)を処置する方法であって、個体に、a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径は約200nm以下である);およびb)該別の治療用薬剤を投与することを含む方法を提供する。
【0084】
一部の実施形態では、個体に、a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされており、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径は約200nm以下である);およびb)少なくとも1種類の他の治療用薬剤を投与することを含む、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を単独で投与した場合の処置に応答性でない疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされており、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径は約200nm以下である);およびb)該治療用薬剤を投与することを含む、治療用薬剤を単独で投与した場合の処置に応答性でない疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を単独で投与した場合の処置に応答性でない、または別の治療用薬剤単独での処置に応答性でない疾患(癌など)を処置する方法であって、個体に、a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされており、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径は約200nm以下である);およびb)該別の治療用薬剤を投与することを含む方法を提供する。
【0085】
一部の実施形態では、個体に、a)有効量のNab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標));およびb)少なくとも1種類の他の治療用薬剤を投与することを含む、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を単独で投与した場合の処置に応答性でない疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を単独で投与した場合の処置に応答性でない、または別の治療用薬剤単独での処置に応答性でない疾患(癌など)を処置する方法であって、個体に、a)有効量のNab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標));およびb)該別の治療用薬剤を投与することを含む方法を提供する。
【0086】
一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物中のタキサンの量は、単独で投与した場合は疾患の処置に有効でない量である。例えば、一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物中のタキサンの量は非細胞傷害性である。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物中のタキサンの量は治療量下域である。例えば、該タキサンナノ粒子組成物中のタキサンの用量は、MTDの約50%、40%、30%、20%または10%未満である。
【0087】
また、本明細書において、併用療法の具体的な方法を提供する。一部の実施形態では、(a)アルブミンとパクリタキセルを含むナノ粒子(アルブミンでコーティングされたパクリタキセル(例えば、Nab−パクリタキセル)を含むナノ粒子など)を含む組成物(ここで、パクリタキセルの用量は約100〜150mg/mである)、および(b)約100mg/mの用量のゲムシタビンを投与することを含む、膵臓癌(進行膵臓癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、パクリタキセルナノ粒子組成物とゲムシタビンは、毎週または3週間に1回投与される。一部の実施形態では、パクリタキセルナノ粒子組成物とゲムシタビンは、毎週または3週間に1回で3週間投与した後、1週間休薬する。
【0088】
一部の実施形態では、(a)アルブミンとドセタキセルを含むナノ粒子を含む組成物(アルブミンでコーティングされたドセタキセル(例えば、Nab−ドセタキセル)を含むナノ粒子など)、および(b)プレドニゾンを投与することを含む、前立腺癌(進行前立腺癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、(a)アルブミンとドセタキセルを含むナノ粒子を含む組成物(アルブミンでコーティングされたドセタキセル(例えば、Nab−ドセタキセル)を含むナノ粒子など)(ここで、ドセタキセルの用量は約75mg/mである)、および(b)プレドニゾンを投与することを含む、前立腺癌(進行前立腺癌など)の処置方法を提供する。一部の実施形態では、ドセタキセルナノ粒子組成物とプレドニゾンは、毎週または3週間に1回投与される。一部の実施形態では、ドセタキセルナノ粒子組成物とプレドニゾンは、毎週または3週間に1回で3週間投与した後、1週間休薬する。
【0089】
薬物取り込み能に基づいた処置方法
また、本発明は、治療用薬剤、およびアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物の併用による処置方法、または標的組織の薬物取り込み能に基づいて該処置の対象の患者を選択する方法を提供する。薬物取り込み能を有する標的組織は、該タキサンナノ粒子組成物によって治療用薬剤がより到達可能となる能力のため、該タキサンナノ粒子組成物と治療用薬剤の併用を使用する処置レジメンに適している。
【0090】
したがって、一部の実施形態では、個体に:(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、処置を受ける個体を選択する基準として薬物取り込み能が使用される、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、個体に:(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子中の(is)タキサンは該アルブミンでコーティングされている);および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、処置を受ける個体を選択する基準として薬物取り込み能が使用される、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、個体に:(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径は約200nm以下である);および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、処置を受ける個体を選択する基準として薬物取り込み能が使用される、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、個体に:(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされており、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径は約200nm以下である);および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、処置を受ける個体を選択する基準として薬物取り込み能が使用される、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、個体に:(a)有効量のNab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標));および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、処置を受ける個体を選択する基準として薬物取り込み能が使用される、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。
【0091】
一部の実施形態では、薬物取り込み能は、以下:1)アルブミン取込みの増大;2)カベオリン−1発現の増大;3)gp60発現の増大;および4)SPARC発現の増大のうちの1つ以上に基づいたものである。したがって、例えば、一部の実施形態では、個体に:(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、アルブミン取込みが、処置を受ける個体を選択する基準として使用される、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、個体に:(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされている);および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、アルブミン取込みが、処置を受ける個体を選択する基準として使用される、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、個体に:(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径は約200nm以下である);および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、アルブミン取込みが、処置を受ける個体を選択する基準として使用される、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。個体に:(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされており、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径は約200nm以下である);および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、アルブミン取込みが、処置を受ける個体を選択する基準として使用される、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、個体に:(a)有効量のNab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標));および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、アルブミン取込みが、処置を受ける個体を選択する基準として使用される、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。
【0092】
一部の実施形態では、個体に:(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、カベオリン−1発現が、処置を受ける個体を選択する基準として使用される、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、個体に:(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされている);および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、カベオリン−1発現が、処置を受ける個体を選択する基準として使用される、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、個体に:(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径は約200nm以下である);および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、カベオリン−1発現が、処置を受ける個体を選択する基準として使用される、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、個体に:(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされており、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径は約200nm以下である);および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、カベオリン−1発現が、処置を受ける個体を選択する基準として使用される、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、個体に:(a)有効量のNab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標));および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、カベオリン−1発現が、処置を受ける個体を選択する基準として使用される、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。
【0093】
一部の実施形態では、個体に:(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、gp60発現が、処置を受ける個体を選択する基準として使用される、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、個体に:(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされている);および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、gp60発現が、処置を受ける個体を選択する基準として使用される、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、個体に:(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径は約200nm以下である);および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、gp60発現が、処置を受ける個体を選択する基準として使用される、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、個体に:(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされており、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径は約200nm以下である);および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、gp60発現が、処置を受ける個体を選択する基準として使用される、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、個体に:(a)有効量のNab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標));および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、gp60発現が、処置を受ける個体を選択する基準として使用される、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。
【0094】
一部の実施形態では、個体に:(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、SPARC発現が、処置を受ける個体を選択する基準として使用される、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、個体に:(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされている);および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、SPARC発現が、処置を受ける個体を選択する基準として使用される、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、個体に:(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径は約200nm以下である);および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、SPARC発現が、処置を受ける個体を選択する基準として使用される、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、個体に:(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子中のタキサンは該アルブミンでコーティングされており、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径は約200nm以下である);および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、SPARC発現が、処置を受ける個体を選択する基準として使用される、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、個体に:(a)有効量のNab−パクリタキセル(Abraxane(登録商標));および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、SPARC発現が、処置を受ける個体を選択する基準として使用される、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。
【0095】
一部の実施形態では、(a)個体の標的組織の薬物取り込み能を決定すること、および(b)個体に:(1)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル)を含むナノ粒子)を含む有効量の組成物と、(2)治療用薬剤とを投与することを含む、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、該方法は、さらに、薬物取り込み能の決定のために組織試料を前記個体から分離することを含む。また、当業者には、薬物取り込み能をインサイチュで解析および決定できるであろうことが想定され得る。したがって、本出願の方法は、解析前に試料の分離が必要とされるものに限定されない。
【0096】
一部の実施形態では、(a)個体の標的組織のアルブミン取込みを測定すること、および(b)個体に:(1)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル)を含むナノ粒子)を含む有効量の組成物と、(2)治療用薬剤とを投与することを含む、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、(a)個体の標的組織のカベオリン−1発現を測定すること、および(b)個体に:(1)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル)を含むナノ粒子)を含む有効量の組成物と、(2)治療用薬剤とを投与することを含む、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、(a)個体の標的組織のgp60発現を測定すること、および(b)個体に:(1)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル)を含むナノ粒子)を含む有効量の組成物と、(2)治療用薬剤とを投与することを含む、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、(a)個体の標的組織のSPARC発現を測定すること、および(b)個体に:(1)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル)を含むナノ粒子)を含む有効量の組成物と、(2)治療用薬剤とを投与することを含む、個体の疾患(癌など)を処置する方法を提供する。
【0097】
一部の実施形態では、(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル)を含むナノ粒子)を含む有効量の組成物および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含む処置方法に対する個体の応答性を評価する方法であって、個体の標的組織の薬物取り込み能を決定することを含み、該薬物取り込み能は該個体が該処置に対して応答性であることを示す方法を提供する。一部の実施形態では、該方法は、さらに、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の該組成物と該治療用薬剤とを、該処置に対して応答性であると決定された個体に投与することを含む。薬物取り込み能に基づいた応答性の評価は、該投与方法の前に行なっても後に行なってもよい。一部の実施形態では、処置に対する個体の応答性は、該投与方法後に他の指標に基づいて評価され得る。例えば、一部の実施形態では、(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル)を含むナノ粒子)を含む有効量の組成物および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含む処置方法に対する個体の応答性を評価する方法であって、個体の標的組織による該治療用薬剤の取込みを測定することを含み、該治療用薬剤の高い取込み(例えば、標的組織が、投与された総治療用薬剤の大体で、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%のいずれか、またはそれ以上を有する場合)は、該個体が該処置に対して応答性であることを示す方法を提供する。
【0098】
一部の実施形態では、(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル)を含むナノ粒子)を含む有効量の組成物および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含む処置方法に対する個体の応答性を評価する方法であって、個体の標的組織の間質壊滅の程度を測定することを含み、間質の破壊(例えば、間質が、タキサンナノ粒子組成物を投与していない個体と比べて少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%のいずれかの割合が破壊された場合)は、該個体が該処置に対して応答性であることを示す方法を提供する。
【0099】
一部の実施形態では、(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル)を含むナノ粒子)を含む有効量の組成物および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含む処置方法に対する個体の応答性を評価する方法であって、個体の標的組織の腫瘍の血管新生の程度を測定することを含み、腫瘍の血管新生の増大(例えば、腫瘍の血管新生が、タキサンナノ粒子組成物を投与していない個体と比べて少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%のいずれかの割合増大した場合)は、該個体が該処置に対して応答性であることを示す方法を提供する。
【0100】
一部の実施形態では、(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル)を含むナノ粒子)を含む有効量の組成物および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含む処置に対する個体のスクリーニング方法であって、個体の標的組織の薬物取り込み能を決定することを含み、前記個体が標的組織において薬物取り込み能を有するならば該個体が選択される方法を提供する。一部の実施形態では、該方法は、さらに、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物および治療用薬剤を、選択された個体に投与することを含む。
【0101】
一部の実施形態では、個体が、(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル)を含むナノ粒子)を含む有効量の組成物および(b)有効量の治療用薬剤での処置に適しているかどうかの決定方法であって、個体の標的組織の薬物取り込み能を決定することを含み、該薬物取り込み能は、該個体が該処置に適していることを示す方法を提供する。一部の実施形態では、該方法は、さらに、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物および治療用薬剤を、該処置に適していると決定された個体に、投与することを含む。
【0102】
一部の実施形態では、個体が、(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル)を含むナノ粒子)を含む有効量の組成物および(b)有効量の治療用薬剤での処置に不適切かどうかの決定方法であって、個体の標的組織の薬物取り込み能を決定することを含み、薬物取り込み能の欠如は、該個体が該処置に適していないことを示す方法を提供する。
【0103】
一部の実施形態では、個体が(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル)を含むナノ粒子)を含む有効量の組成物および(b)有効量の治療用薬剤で適切に処置されるかどうかの決定方法であって、個体の標的組織の薬物取り込み能を決定することを含み、該薬物取り込み能は、該個体が適切に処置されることを示す方法を提供する。一部の実施形態では、該方法は、さらに、適切に処置されると決定された個体に、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物および治療用薬剤の投与を継続することを含む。
【0104】
一部の実施形態では、個体に(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル)を含むナノ粒子)を含む有効量の組成物および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含む個体の疾患の処置をモニタリングする方法であって、個体の標的組織の薬物取り込み能を決定することを含む方法を提供する。
【0105】
本明細書に記載の方法に関して、スクリーニング方法(すなわち、個体を処置に適している、または適していないと認定する方法)は、該処置方法とは独立して実施され得、そのため、処置方法とは相違するものである。本明細書に記載のスクリーニング方法は、医師以外の専門技術者によって行なわれてもよい。
【0106】
処置に対する応答性または好適性は、例えば、パフォーマンスステータス、身体検査、イメージング試験、または検査室検査の結果などの他覚的基準に基づいて評価され得る。また、処置に対する応答性または好適性を、個体によって報告された自覚的基準、例えば、痛み、苦悩、疲労感、または精神的見地に基づいて評価してもよい。癌の処置との関連においては、腫瘍サイズの減少が、応答性および/または好適性の決定基準として使用され得る。腫瘍サイズの減少は、任意の適当な測定可能な当該技術分野で知られた方法、例えば、身体検査、イメージング試験または検査値によって測定される原発腫瘍または総合全身腫瘍組織量に基づいたものであり得る。
【0107】
好適な選択基準(例えば、癌処置に対する)としては、限定されないが、標的組織(例えば腫瘍)内のアルブミン取込みの増大、標的組織(例えば腫瘍)内のカベオリン−1レベルの増大、標的組織(例えば腫瘍)内のgp60レベルの増大、標的組織(例えば腫瘍)内のSPARCレベルの増大が挙げられる。
【0108】
一部の実施形態では、薬物取り込み能はアルブミン取込みによって決定される。一部の実施形態では、薬物取り込み能はカベオリン−1レベルによって決定される。一部の実施形態では、薬物取り込み能はgp−60レベルによって決定される。一部の実施形態では、薬物取り込み能はSPARCレベルによって決定される。
【0109】
一部の実施形態では、薬物取り込み能は2つ以上のパラメータによって決定される。例えば、一部の実施形態では、薬物取り込み能は、カベオリン−1レベルとgp−60レベルの両方に基づいて決定される。一部の実施形態では、薬物取り込み能はカベオリン−1とSPARCレベルに基づいたものである。一部の実施形態では、薬物取り込み能はカベオリン−1、gp60およびSPARCのレベルに基づいたものである。一部の実施形態では、薬物取り込み能はアルブミン取込み、gp60およびSPARCのレベルに基づいたものである。これらの特徴の他の組合せも想定される。
【0110】
したがって、例えば、一部の実施形態では、癌の処置を、それを必要とする個体において行なう方法であって、該個体に、a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル)を含むナノ粒子を含む組成物)、およびb)治療用薬剤を投与することを含み、該処置は、腫瘍組織内のアルブミン取込みの増大、腫瘍組織内のカベオリン−1レベルの増大、腫瘍組織内のgp60レベルの増大、腫瘍組織内のSPARCレベルの増大からなる群より選択される1つ以上の特徴を有する個体に対するものである方法を提供する。一部の実施形態では、癌の処置を、それを必要とする個体において行なう方法であって、該個体に、a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル)を含むナノ粒子を含む組成物)、およびb)治療用薬剤を投与することを含み、該処置は、腫瘍組織内のアルブミン取込みの増大、腫瘍組織内のカベオリン−1レベルの増大、腫瘍組織内のgp60レベルの増大、腫瘍組織内のSPARCレベルの増大からなる群より選択される2つ以上の特徴を有する個体に対するものである方法を提供する。一部の実施形態では、癌の処置を、それを必要とする個体において行なう方法であって、該個体に、a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル)を含むナノ粒子を含む組成物)、およびb)治療用薬剤を投与することを含み、該処置は、腫瘍組織内のアルブミン取込みの増大、腫瘍組織内のカベオリン−1レベルの増大、腫瘍組織内のgp60レベルの増大、腫瘍組織内のSPARCレベルの増大からなる群より選択される3つ以上の特徴を有する個体に対するものである方法を提供する。一部の実施形態では、癌の処置を、それを必要とする個体において行なう方法であって、該個体に、a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル)を含むナノ粒子を含む組成物)、およびb)治療用薬剤を投与することを含み、該処置は、腫瘍組織内のアルブミン取込みの増大、腫瘍組織内のカベオリン−1レベルの増大、および腫瘍組織内のgp60レベルの増大を有する個体に対するものである方法を提供する。一部の実施形態では、癌の処置を、それを必要とする個体において行なう方法であって、該個体に、a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル)を含むナノ粒子を含む組成物)、およびb)治療用薬剤を投与することを含み、該処置は、腫瘍組織内のアルブミン取込みの増大、腫瘍組織内のカベオリン−1レベルの増大、腫瘍組織内のgp60レベルの増大、腫瘍組織内のSPARCレベルの増大を有する個体に対するものである方法を提供する。
【0111】
一部の実施形態では、癌の処置を、それを必要とする個体において行なう方法であって、該個体は、腫瘍組織内のアルブミン取込みの増大、腫瘍組織内のカベオリン−1レベルの増大、腫瘍組織内のgp60レベルの増大、腫瘍組織内のSPARCレベルの増大からなる群より選択される1つ以上の特徴を有することがわかっている個体であるものとし、該個体に、a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物、およびb)治療用薬剤を投与することを含む方法を提供する。
【0112】
一部の実施形態では、(a)癌を有する個体を選択すること(ここで、該癌は、腫瘍組織内のアルブミン取込みの増大、腫瘍組織内のカベオリン−1レベルの増大、腫瘍組織内のgp60レベルの増大、腫瘍組織内のSPARCレベルの増大からなる群より選択される1つ以上(または2つ以上、3つ以上)の特徴を有するものである);ならびに(b)該個体に、a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル(pacltiaxel))を含むナノ粒子組成物)、およびb)治療用薬剤を投与することを含む、癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、(a)癌を有する個体を選択すること(ここで、該癌は、腫瘍組織内のアルブミン取込みの増大、腫瘍組織内のカベオリン−1レベルの増大、腫瘍組織内のgp60レベルの増大、腫瘍組織内のSPARCレベルの増大からなる群より選択される1つ以上(または2つ以上、3つ以上)の特徴を有するものである);ならびに(b)該個体に、a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル(pacltiaxel))を含むナノ粒子組成物)、およびb)治療用薬剤を投与することを含む、癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、(a)癌を有する個体を選択すること(ここで、該癌は、腫瘍組織内のアルブミン取込みの増大、腫瘍組織内のカベオリン−1レベルの増大、および腫瘍組織内の(in the tumor tissue in the tumor tissue)gp60レベルの増大を有するものである);ならびに(b)該個体に、a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル)を含むナノ粒子組成物)、およびb)治療用薬剤を投与することを含む、癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、(a)癌を有する個体を選択すること(ここで、該癌は、腫瘍組織内のアルブミン取込みの増大、腫瘍組織内のカベオリン−1レベルの増大、腫瘍組織内のgp60レベルの増大、腫瘍組織内のSPARCレベルの増大を有するものである);ならびに(b)該個体に、a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル)を含むナノ粒子組成物)、およびb)治療用薬剤を投与することを含む、癌の処置方法を提供する。
【0113】
一部の実施形態では、個体にa)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル)を含むナノ粒子)を含む組成物、およびb)該治療用薬剤を投与することを含む処置に、癌を有する個体が応答するかどうかを評価する方法であって、腫瘍組織内のアルブミン取込みの増大、腫瘍組織内のカベオリン−1レベルの増大、腫瘍組織内のgp60レベルの増大、腫瘍組織内のSPARCレベルの増大からなる群より選択される1つ以上(または2つ以上、または3つ以上)の特徴を評価することを含み、癌の該特徴のうちの1つ以上により、該個体が該処置に応答性であることが示される方法を提供する。一部の実施形態では、個体にa)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル)を含むナノ粒子)を含む組成物、およびb)該治療用薬剤を投与することを含む処置に、癌を有する個体が応答するかどうかを評価する方法であって、腫瘍組織内のアルブミン取込みの増大、腫瘍組織内のカベオリン−1レベルの増大、および腫瘍組織内のgp60レベルの増大を評価することを含み、癌の該特徴の1つ以上(例えば、1つ、2つ、または3つ)により、該個体が該処置に応答性であることが示される方法を提供する。一部の実施形態では、個体にa)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル)を含むナノ粒子)を含む組成物、およびb)該治療用薬剤を投与することを含む処置に、癌を有する個体が応答するかどうかを評価する方法であって、腫瘍組織内のアルブミン取込みの増大、腫瘍組織内のカベオリン−1レベルの増大、腫瘍組織内のgp60レベルの増大、腫瘍組織内のSPARCレベルの増大を評価することを含み、癌の該特徴の1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、または4つ)により、該個体が該処置に応答性であることが示される方法を提供する。
【0114】
一部の実施形態では、個体にa)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル)を含むナノ粒子)を含む組成物、およびb)該治療用薬剤を投与することを含む処置におそらく応答する癌を有する個体を特定する方法であって、1)腫瘍組織内のアルブミン取込みの増大、腫瘍組織内のカベオリン−1レベルの増大、腫瘍組織内のgp60レベルの増大、腫瘍組織内のSPARCレベルの増大からなる群より選択される1つ以上(または2つ以上、または3つ以上)の特徴を評価すること、および2)該治療用薬剤の高尤度の送達向上を示す1つ以上の特徴を有する個体を特定することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、個体にa)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル)を含むナノ粒子)を含む組成物、およびb)該治療用薬剤を投与することを含む処置におそらく応答する癌を有する個体を特定する方法であって、1)腫瘍組織内のアルブミン取込みの増大、腫瘍組織内のカベオリン−1レベルの増大、腫瘍組織内のgp60レベルの増大を評価すること、および2)該治療用薬剤の高尤度の送達向上を示す1つ以上(例えば、1つ、2つ、または3つ)の特徴を有する個体を特定することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、個体にa)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子(例えば、アルブミンでコーティングされたタキサン(例えば、Nab−パクリタキセル)を含むナノ粒子)を含む組成物、およびb)該治療用薬剤を投与することを含む処置におそらく応答する癌を有する個体を特定する方法であって、1)腫瘍組織内のアルブミン取込みの増大、腫瘍組織内のカベオリン−1レベルの増大、腫瘍組織内のgp60レベルの増大、および腫瘍組織内のSPARCレベルの増大を評価すること、ならびに2)該治療用薬剤の高尤度の送達向上を示す1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、または4つ)の特徴を有する個体を特定することを含む方法を提供する。
【0115】
薬物取り込み能の決定方法
本明細書に記載の一部の方法は、標的組織の薬物取り込み能の決定、または処置対象の患者の選択の基準としての薬物取り込み能の使用を伴う。
【0116】
一部の実施形態では、薬物取り込み能は標的組織内のアルブミン取込みに基づいたものである。例えば、アルブミン取込みは、組織学的に、または既知の手法(金標識アルブミンなど)を用いた診断用画像法によって評価され得る。また、アルブミン取込みをELISAによって評価してもよい。
【0117】
一部の実施形態では、薬物取り込み能は標的組織内のカベオリン−1レベルに基づいたものである。カベオリン−1は小胞の主要成分である。カベオリン−1の発現は、肺の扁平上皮癌の病理学的病期と統計学的に相関しており、肺の扁平上皮癌を有する患者の予後不良と関連している。Yooら,Lung Cancer(2003)42:195−202。カベオリン−1は、転移性前立腺癌において過剰発現され(Yangら,Clin.Cancer Res.,4:1873−1880,1998)、根治的前立腺切除術後に再発したリンパ節陰性患者において、前立腺癌進行の独立的予後マーカーとしての機能を果たすこと、およびアフリカ系アメリカ人男性と白人のアメリカ人男性(対比)の前立腺癌におけるカベオリン−1の増加に有意な関連がみられることが示されている。また、カベオリン−1の上方調節は、アンドロゲン非感受性前立腺癌の発生と関連している(Nasuら,Nat.Med.,4:1062−1064,1998)。アンドロゲン非感受性前立腺癌細胞は、生体活性カベオリン−1をステロイド調節型様式で分泌する(Tahirら,Cancer Res.,61:3882−3885,2001)。分泌されたカベオリン−1は、カベオリン−1を発現しない前立腺癌細胞においてバイアビリティおよびクローン増殖を刺激することがあり得、ウエスタンブロット解析により、前立腺癌患者の血清HDL3画分中にカベオリン−1を検出することが可能である(Tahirら 2001)。
【0118】
一部の実施形態では、薬物取り込み能は、腫瘍細胞内の高レベルのカベオリン−1に基づいたものである。一部の実施形態では、薬物取り込み能は、腫瘍細胞に供給されている血管におけるカベオリン−1レベルに基づいたものである。一部の実施形態では、薬物取り込み能は、腫瘍間質におけるカベオリン−1レベルに基づいたものである。一部の実施形態では、薬物取り込み能は、腫瘍細胞におけるカベオリン−1レベルに基づいたものである。
【0119】
一部の実施形態では、薬物取り込み能は、標的組織のgp60レベルに基づいたものである。一部の実施形態では、薬物取り込み能は腫瘍細胞内のgp60レベルに基づいたものである。一部の実施形態では、薬物取り込み能は、腫瘍細胞に供給されている血管におけるgp60レベルに基づいたものである。一部の実施形態では、薬物取り込み能は、腫瘍間質におけるgp60レベルに基づいたものである。
【0120】
一部の実施形態では、薬物取り込み能は標的組織のSPARCレベルに基づいたものである。SPARC(酸性システインリッチ分泌タンパク質(Secreted Protein,Acidic and Rich in Cysteine))は、いくつかの進行がはやい癌において上方調節されるマトリクス細胞タンパク質であるが、正常組織には存在しない(Porterら,J.Histochem.Cytochem.,43,791(1995))。ヒトSPARC遺伝子は303アミノ酸のSPARCタンパク質をコードしているが、成熟SPARCは285アミノ酸の糖タンパク質である。シグナル配列の切断後、32kDの分泌型形態が生成され、これは、グリコシル化のためSDA−PAGEでは43kDに泳動する。SPARCの発現はさまざまな腫瘍において誘発される。PCT公開公報番号WO08/060651および05/117952(これらの内容はともに、その全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。一部の実施形態では、薬物取り込み能は腫瘍細胞内のSPARCレベルに基づいたものである。一部の実施形態では、薬物取り込み能は腫瘍間質におけるSPARCレベルに基づいたものである。
【0121】
本明細書に記載のバイオマーカー(カベオリン−1、gp60、およびSPARCなど)のレベルは、発現レベルに基づいて決定され得る。一部の実施形態では、バイオマーカーの発現レベルは、所与の患者集団について遺伝子発現レベルを測定し、該集団の当該遺伝子の発現レベルの中央値を求め、単独の患者の同じ遺伝子の発現レベルを該所与の患者集団の発現レベルの中央値と比較することにより決定される。例えば、単独の患者の対象遺伝子の発現レベルが患者集団の発現レベルの中央値より上であると決定された場合、当該患者は対象遺伝子が高発現であると決定される。あるいはまた、単独の患者の対象遺伝子の発現レベルが患者集団の発現レベルの中央値より下であると決定された場合、当該患者は対象遺伝子が低発現であると決定される。一部の実施形態では、単独の患者は疾患(癌など)を有しており、患者集団は疾患を有していない(すなわち、正常)。一部の実施形態では、単独の患者は第1の組織学的疾患型(例えば、扁平上皮癌)を有しており、患者集団は第2の組織学的疾患型(例えば、腺癌)を有している。一部の実施形態では、単独の患者と患者集団は同じ組織学的疾患型(例えば、扁平上皮癌)を有している。
【0122】
対象遺伝子の核酸(例えば、RNAもしくはDNA)またはタンパク質のレベルを測定してもよい。遺伝子発現の測定方法は、当該技術分野においてよく知られており、限定されないが、免疫学的アッセイ、ヌクレアーゼ保護アッセイ、ノザンブロット、インサイチュハイブリダイゼーション、ELISA、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応、発現配列タグ(EST)シーケンシング、cDNAマイクロアレイハイブリダイゼーションまたは遺伝子チップ解析、サブトラクティブクローニング、遺伝子発現逐次解析(Serial Analysis of Gene Expression)(SAGE)、大量並行サインシーケンシング(Massively Parallel Signature Sequencing)(MPSS)、および合成時解読(Sequencing−By−Synthesis)(SBS)が挙げられる。また、診断手順を、生検材料から、または切除によって取得した患者組織の組織切片(固定および/または凍結)においてインサイチュで直接行なってもよい。
【0123】
ポリヌクレオチドの増幅としては、PCR、ライゲーション増幅(またはリガーゼ連鎖反応、LCR)および増幅方法などの方法が挙げられる。このような方法は既知であり、当該技術分野で広く実施されている)。一般に、PCR手順は、(i)DNA試料中(またはライブラリー内)の特定の遺伝子に対するプライマーの配列特異的ハイブリダイゼーション、(ii)続いて、DNAポリメラーゼを用いた多数回のアニーリング、伸長および変性を伴う増幅、ならびに(iii)正しいサイズのバンドについてPCR産物のスクリーニングで構成される遺伝子増幅方法と説明される。使用されるプライマーは、重合の開始がもたらされるのに充分な長さおよび適切な配列のオリゴヌクレオチドである、すなわち、各プライマーは、増幅対象のゲノム遺伝子座の各鎖に相補的となるように特別に設計される。
【0124】
PCRを実施するための試薬およびハードウェアは市販されている。特定の遺伝子領域の配列を増幅させるのに有用なプライマーは、好ましくは、標的領域内またはそのフランキング領域内の配列に相補的であり、該配列に特異的にハイブリダイズするものである。増幅によって得られた核酸配列は直接配列決定され得る。あるいはまた、増幅された配列(1種類または複数種)をクローニングした後、配列解析してもよい。直接クローニングおよび酵素的に増幅させたゲノムセグメントの配列解析のための方法は、当該技術分野で知られている。
【0125】
一部の実施形態では、標的組織(腫瘍など)の生検材料が、バイオマーカー(カベオリン−1、gp60およびSPARCなど)を認識する抗体を用いた免疫組織学検査のために、顕微鏡スライドにおいて生検材料の薄片を調製することにより調製され得る。例えば、SPARCレベルの測定のため、生検材料スライドは抗SPARC抗体で、抗SPARC免疫組織学的プロトコルを用いて、SPARCレベルが既知の正常組織または他の腫瘍組織由来の生検材料切片を含む対照スライドと同時に染色され得る。免疫組織学的染色の強度は、例えば、光学顕微鏡検査を使用することにより評点付けされ得る。染色に基づいて染色評点(例えば、0、1+、2+、3+、4+)が割り当てられ得る。個体は、例えば、2+、3+、4+、またはそれより高いという腫瘍生検材料の評点に基づいて薬物取り込み能を有すると決定され得る。
【0126】
一部の実施形態では、標的組織は、正常個体集団との比較に基づいて高いアルブミン取込み(または高レベルの本明細書に記載のバイオマーカー)を有するものである。一部の実施形態では、標的組織は、同じ疾患を有する個体集団との比較に基づいて高いアルブミン取込み(または高レベルの本明細書に記載のバイオマーカー)を有するものである。一部の実施形態では、標的組織は、同じ個体の正常組織(または異なる罹病組織)との比較に基づいて高いアルブミン取込み(または高レベルの本明細書に記載のバイオマーカー)を有するものである。
【0127】
一部の実施形態では、個体は、集団と比較したアルブミン取込みレベル(または本明細書に記載の1種類以上のバイオマーカーのレベル)のパーセンタイルランクに基づいて処置に選択される。例えば、所与の患者集団に対してある範囲のアルブミン取込みレベル(または本明細書に記載の1種類以上のバイオマーカーのレベル)を存在させ、処置に適している個体(または反対に、適していない可能性がある個体)を、この集団に関するアルブミン取込みレベル(または本明細書に記載の1種類以上のバイオマーカーのレベル)のパーセンタイルランクに基づいて特定することができる。したがって、一部の実施形態では、個体のアルブミン取込みレベル(または本明細書に記載の1種類以上のバイオマーカーのレベル)がその集団のアルブミン取込みレベル(または本明細書に記載の1種類以上のバイオマーカーのレベル)の大体上位80%以内である場合、該個体を処置に含める、または処置を受けるのに適していると特定する(反対に、その集団のアルブミン取込みレベル(または本明細書に記載の1種類以上のバイオマーカーのレベル)の大体下位20%以内である場合、該個体は一般的に処置を受けるのに適していない)。他の実施形態では、個体のアルブミン取込みレベル(または本明細書に記載の1種類以上のバイオマーカーのレベル)がその集団の大体上位50%以内である場合、該個体を処置に含める、または処置を受けるのに適していると特定する(反対に、その集団のアルブミン取込みレベル(または本明細書に記載の1種類以上のバイオマーカーのレベル)の大体下位50%以内である場合、該個体は一般的に処置を受けるのに適していない)。一部の実施形態では、個体(例えば、処置に応答性または適している個体)のアルブミン取込みレベル(または本明細書に記載の1種類以上のバイオマーカーのレベル)は、大体で、30%;25%;20%;10%;5%のいずれかの割合の上位以内である。集団は、約、あるいはまた大体で少なくとも(測定個体数について):10、15、20、25、30、50、60、75、100、125、150、175、200、225、250、300、400、500のいずれかの数以下であり得る。好ましくは、統計学的に有意な集団(これは、当該技術分野で知られた方法によって決定され得る)を得るために充分な個体数が測定される。集団の上限は、任意の数(記載のものなど)であり得る。
【0128】
前立腺癌の処置方法
本発明は、個体に、a)ドセタキセルとアルブミンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物;およびb)有効量のステロイド(例えば、プレドニゾン)を投与することを含む、個体(例えば、ヒト)の前立腺癌の処置方法を提供する。本発明は、個体に、a)ドセタキセルとアルブミンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物;およびb)有効量のステロイド(例えば、プレドニゾン)を投与することを含む、個体(例えば、ヒト)の前立腺癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)アルブミンでコーティングされたドセタキセルを含むナノ粒子を含む有効量の組成物;およびb)有効量のステロイド(例えば、プレドニゾン)を投与することを含む、個体(例えば、ヒト)の前立腺癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)ドセタキセルとアルブミンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径は約200nm以下である);およびb)有効量のステロイド(例えば、プレドニゾン)を投与することを含む、個体(例えば、ヒト)の前立腺癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)アルブミンでコーティングされたドセタキセルを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径は約200nm以下である);およびb)有効量のステロイド(例えば、プレドニゾン)を投与することを含む、個体(例えば、ヒト)の前立腺癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)有効量のNab−ドセタキセル(ここで、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径は約200nm以下である);およびb)有効量のステロイド(例えば、プレドニゾン)を投与することを含む、個体(例えば、ヒト)の前立腺癌の処置方法を提供する。
【0129】
また、個体に、a)ドセタキセルとアルブミンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物およびb)有効量のステロイド(例えば、プレドニゾン)を投与することを含み、処置が、(i)腺癌、(ii)識別的カベオリン−1レベル(CAV1)、(iii)識別的SPARCレベル、(iv)識別的gp60レベルおよび(v)識別的アルブミン取込みからなる群より選択される1つ以上の特徴を有する前立腺癌に基づいたものである、個体の前立腺癌の処置方法も提供する。一部の実施形態では、個体に、a)アルブミンでコーティングされたドセタキセルを含むナノ粒子を含む有効量の組成物およびb)有効量のステロイド(例えば、プレドニゾン)を投与することを含み、処置が、(i)腺癌、(ii)識別的カベオリン−1レベル(CAV1)、(iii)識別的SPARCレベル、(iv)識別的gp60レベルおよび(v)識別的アルブミン取込みからなる群より選択される1つ以上の特徴を有する前立腺癌に基づいたものである、個体の前立腺癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)ドセタキセルとアルブミンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径が約200nm以下である)およびb)有効量のステロイド(例えば、プレドニゾン)を投与することを含み、処置が、(i)腺癌、(ii)識別的カベオリン−1レベル(CAV1)、(iii)識別的SPARCレベル、(iv)識別的gp60レベルおよび(v)識別的アルブミン取込みからなる群より選択される1つ以上の特徴を有する前立腺癌に基づいたものである、個体の前立腺癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)アルブミンでコーティングされたドセタキセルを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径が約200nm以下である)およびb)有効量のステロイド(例えば、プレドニゾン)を投与することを含み、処置が、(i)腺癌、(ii)識別的カベオリン−1レベル(CAV1)、(iii)識別的SPARCレベル、(iv)識別的gp60レベルおよび(v)識別的アルブミン取込みからなる群より選択される1つ以上の特徴を有する前立腺癌に基づいたものである、個体の前立腺癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に、a)有効量のNab−ドセタキセル、およびb)有効量のステロイド(例えば、プレドニゾン)を投与することを含み、処置が、(i)腺癌、(ii)識別的カベオリン−1レベル(CAV1)、(iii)識別的SPARCレベル、(iv)識別的gp60レベルおよび(v)識別的アルブミン取込みからなる群より選択される1つ以上の特徴を有する前立腺癌に基づいたものである、個体の前立腺癌の処置方法を提供する。
【0130】
また、本明細書において、(a)前立腺癌を有する個体を選択すること(ここで、前立腺癌は、(i)腺癌、(ii)識別的カベオリン−1レベル(CAV1)、(iii)識別的SPARCレベル、(iv)識別的gp60レベルおよび(v)識別的アルブミン取込みからなる群より選択される1つ以上の特徴を有するものである);ならびに(b)かくして選択された該個体に、i)ドセタキセルとアルブミンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物およびii)有効量のステロイドを投与することを含む、前立腺癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、(a)前立腺癌を有する個体を選択すること(ここで、前立腺癌は、(i)腺癌、(ii)識別的カベオリン−1レベル(CAV1)、(iii)識別的SPARCレベル、(iv)識別的gp60レベルおよび(v)識別的アルブミン取込みからなる群より選択される1つ以上の特徴を有するものである);ならびに(b)かくして選択された該個体に、i)アルブミンでコーティングされたドセタキセルを含むナノ粒子を含む有効量の組成物およびii)有効量のステロイドを投与することを含む、前立腺癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、(a)前立腺癌を有する個体を選択すること(ここで、前立腺癌は、(i)腺癌、(ii)識別的カベオリン−1レベル(CAV1)、(iii)識別的SPARCレベル、(iv)識別的gp60レベルおよび(v)識別的アルブミン取込みからなる群より選択される1つ以上の特徴を有するものである);ならびに(b)かくして選択された該個体に、i)ドセタキセルとアルブミンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径が約200nm以下である)ii)有効量のステロイドを投与することを含む、前立腺癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、(a)前立腺癌を有する個体を選択すること(ここで、前立腺癌は、(i)腺癌、(ii)識別的カベオリン−1レベル(CAV1)、(iii)識別的SPARCレベル、(iv)識別的gp60レベルおよび(v)識別的アルブミン取込みからなる群より選択される1つ以上の特徴を有するものである);ならびに(b)かくして選択された該個体に、i)アルブミンでコーティングされたドセタキセルを含むナノ粒子を含む有効量の組成物(ここで、該ナノ粒子組成物中のナノ粒子の平均粒径が約200nm以下である)およびii)有効量のステロイドを投与することを含む、前立腺癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、(a)前立腺癌を有する個体を選択すること(ここで、前立腺癌は、(i)腺癌、(ii)識別的カベオリン−1レベル(CAV1)、(iii)識別的SPARCレベル、(iv)識別的gp60レベルおよび(v)識別的アルブミン取込みからなる群より選択される1つ以上の特徴を有するものである);ならびに(b)かくして選択された該個体に、i)有効量のNab−ドセタキセルおよびii)有効量のステロイドを投与することを含む、前立腺癌の処置方法を提供する。
【0131】
該方法のいずれかの一部の実施形態では、前立腺癌の該1つ以上の特徴としては、前立腺癌の1、2、3、4または5つの該特徴が挙げられる。一部の実施形態では、該1つ以上の特徴としては、例えば、少なくとも2つ以上の該特徴、少なくとも3つ以上の該特徴、または少なくとも4つ以上の該特徴が挙げられる。例えば、一部の実施形態では、前立腺癌は、CAV−1の識別的レベルを特徴とするものである。一部の実施形態では、前立腺癌は、CAV−1とgp60の識別的レベルを特徴とするものである。一部の実施形態では、前立腺癌は、識別的カベオリン−1レベル(CAV1)、識別的SPARCレベル、識別的gp60レベル、および識別的アルブミン取込みを特徴とするものである。
【0132】
該方法のいずれかの一部の実施形態では、前立腺癌は腺癌である。一部の実施形態では、前立腺癌は肉腫、神経内分泌腫瘍、小細胞癌、腺管癌、またはリンパ腫である。ジューエト病期分類システムによる4つの病期A、B、CまたはDのいずれかの前立腺癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、前立腺癌は病期Aの前立腺癌である(直腸検査の際に癌は触知され得ない)。一部の実施形態では、前立腺癌は病期Bの前立腺癌である(腫瘍は、前立腺内に多くの組織を伴うものであり、直腸検査の際に触知され得るか、または高いPSAレベルのため実施された生検にて見い出される)。一部の実施形態では、前立腺癌は病期Cの前立腺癌である(癌は、前立腺の外側から隣接組織に拡延している)。一部の実施形態では、前立腺癌は病期Dの前立腺癌である。
【0133】
該方法のいずれかの一部の実施形態では、前立腺癌はアンドロゲン非依存性前立腺癌(AIPC)であり得る。一部の実施形態では、前立腺癌はアンドロゲン依存性前立腺癌であり得る。一部の実施形態では、前立腺癌はホルモン療法に対して抗療性のものであり得る。一部の実施形態では、前立腺癌はホルモン療法に対して実質的に抗療性のものであり得る。一部の実施形態では、個体は、前立腺癌と関連している遺伝子、遺伝子変異または多型(例えば、RNASEL/HPC1、ELAC2/HPC2、SR−A/MSR1、CHEK2、BRCA2、PON1、OGG1、MIC−1、TLR4、および/またはPTEN)を有するヒト、あるいは前立腺癌と関連している1つ以上の余分な遺伝子コピーを有するヒトであり得る。
【0134】
本明細書に記載のいずれかの方法の一部の実施形態では、前立腺癌は初期段階の前立腺癌、非転移性の前立腺癌、原発性前立腺癌、進行前立腺癌、局所進行前立腺癌、転移性前立腺癌、寛解中の前立腺癌、または再発前立腺癌である。一部の実施形態では、前立腺癌は、局所切除可能、局所切除不可能または切除不可能なものである。
【0135】
本明細書において提供する方法は、補助療法的場面において実施され得る。一部の実施形態では、該方法は、新補助療法的場面において実施される、すなわち、該方法は一次/根治療法の前に行なわれ得る。一部の実施形態では、該方法は、以前に処置を受けたことがある個体を処置するために使用される。本明細書において提供するいずれかの処置方法を、以前に処置を受けたことがない個体を処置するために使用してもよい。一部の実施形態では、該方法はファーストライン治療として使用される。一部の実施形態では、該方法はセカンドライン治療として使用される。
【0136】
本明細書に記載のいずれかの方法の一部の実施形態では、該組成物は、ドセタキセルとアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)を含むナノ粒子を含み、該ナノ粒子中のドセタキセルは該アルブミンでコーティングされているものである。一部の実施形態では、該組成物中のナノ粒子の平均粒子径は約200nm以下(約200nm未満など)である。一部の実施形態では、該組成物はNab−ドセタキセルを含むものである。一部の実施形態では、該組成物はNab−ドセタキセルである。一部の実施形態では、ドセタキセルナノ粒子組成物とステロイドは、前立腺癌の処置に対して相乗効果を有する。一部の実施形態では、ステロイドはプレドニゾンである。
【0137】
本明細書に記載のいずれかの方法の一部の実施形態では、ドセタキセルとアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物の有効量は約30mg/m〜約200mg/m(例えば、60mg/m、75mg/mまたは100mg/m)であり、ステロイドの有効量は約2.5mg〜約20mg(例えば、2.5mg、5mg、または10mg)である。本明細書に記載のいずれかの方法の一部の実施形態では、ドセタキセルとアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物の有効量は3週間に1回投与され、ステロイドの有効量は1日2回投与される。一部の実施形態では、ドセタキセルとアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物の有効量は、3週間に1回投与される約30〜約200mg/mであり、ステロイドの有効量は、1日2回投与される約2.5mg〜約20mgである。一部の実施形態では、ドセタキセルとアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物の有効量は、3週間に1回投与される約75mg/mであり、ステロイドの有効量は1日2回投与される約5mgである。一部の実施形態では、ドセタキセルナノ粒子組成物は静脈内投与される。一部の実施形態では、ステロイドは経口投与される。一部の実施形態では、ドセタキセルとアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物およびステロイドは逐次投与;並行投与または同時投与される。
【0138】
したがって、例えば、一部の実施形態では、個体に:a)約30mg/m〜約200mg/m(例えば、60mg/m、75mg/mまたは100mg/m)の、ドセタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(アルブミンでコーティングされたドセタキセル(例えば、Nab−ドセタキセル)を含むナノ粒子など)およびb)約2.5mg〜約20mg(例えば、2.5mg、5mg、または10mg)のステロイド(プレドニゾンなど)を投与することを含む、個体の前立腺癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に:a)約30mg/m〜約200mg/m(例えば、60mg/m、75mg/mまたは100mg/m)の、ドセタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(アルブミンでコーティングされたドセタキセル(例えば、Nab−ドセタキセル)を含むナノ粒子など)を3週間に1回、およびb)約2.5mg〜約20mg(例えば、2.5mg、5mg、または10mg)のステロイド(プレドニゾンなど)を1日2回投与することを含む、個体の前立腺癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、個体に:a)約30mg/m〜約200mg/m(例えば、60mg/m、75mg/mまたは100mg/m)の、ドセタキセルとアルブミンを含むナノ粒子(アルブミンでコーティングされたドセタキセル(例えば、Nab−ドセタキセル)を含むナノ粒子など)を3週間に1回静脈内に、およびb)約2.5mg〜約20mg(例えば、2.5mg、5mg、または10mg)のステロイド(プレドニゾンなど)1日2回経口で投与することを含む、個体の前立腺癌の処置方法を提供する。
【0139】
本明細書に記載のいずれかの方法の一部の実施形態では、前立腺癌と診断された、または前立腺癌を有する疑いのある個体(例えば、ヒト)が処置され得る。一部の実施形態では、個体はヒトである。一部の実施形態では、個体は、大体で少なくとも35、40、45、50、55、60、65、70、75、80または85歳のいずれかの年齢である。一部の実施形態では、個体は雄/男性である。一部の実施形態では、個体は、本明細書に記載の任意の型の前立腺癌を有する個体である。一部の実施形態では、個体は診察時に単一の病変部を有している。一部の実施形態では、個体は診察時に多数の病変部を有している。一部の実施形態では、個体は、他の薬剤(タキサンの非ナノ粒子製剤、例えば、Taxol(登録商標)またはTaxotere(登録商標)など)での前立腺癌の処置に抵抗性である。一部の実施形態では、個体は、他の薬剤(タキサンの非ナノ粒子製剤、例えば、Taxol(登録商標)またはTaxotere(登録商標)など)での前立腺癌の処置に対して最初は応答性であるが、処置後に進行した個体である。
【0140】
一部の実施形態では、各医薬活性化合物が併用療法の一部として、個別の治療で一般的に使用される量と比べてより少ない量で使用される。一部の実施形態では、併用療法を使用して、いずれかの個別の化合物の単独での使用と同じまたはより大きな治療有益性が得られる。一部の実施形態では、併用療法で医薬活性化合物を、個別の治療で一般的に使用される量よりも少ない量(例えば、より低用量または低頻度の投与スケジュール)で使用して、同じまたはより大きな治療有益性が得られる。例えば、医薬活性化合物を少ない量で使用することにより、該化合物と関連する1つ以上の副作用の数、重症度、頻度または持続期間の低減がもたらされ得る。
【0141】
本明細書に記載の方法は、以下の目的:前立腺癌の1つ以上の症状の緩和、前立腺癌の進行の遅延、前立腺癌患者の腫瘍サイズの縮小、前立腺癌腫瘍の増殖の抑止、全生存の長期化、無進行生存期間の長期化、前立腺癌腫瘍転移の抑制もしくは遅延、既に存在している前立腺癌腫瘍転移の低減(根絶など)、既に存在している前立腺癌腫瘍転移の発生数もしくは全身組織量の低減、または前立腺癌の再発の予防のいずれか1つ以上のために使用され得る。
【0142】
また、本出願書類の他のセクションに記載の方法(処置方法および薬物取込みを向上させる方法、ならびに薬物取り込み能に基づいた処置方法など)が、本明細書に記載の方法にも適用されることは理解されよう。
【0143】
ナノ粒子組成物
本明細書に記載のナノ粒子組成物は、水難溶性薬物(タキサン(例えば、パクリタキセルまたはドセタキセル)など)およびアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)を含む(種々の実施形態では、本質的にこれらのものからなる)ナノ粒子を含むものである。水難溶性薬物(タキサンなど)のナノ粒子は、例えば、米国特許第5,916,596号;同第6,506,405号;同第6,749,868号、および同第6,537,579号、また、米国特許公開公報第2005/0004002号、同第2006/0263434号および同第2007/0082838号;PCT特許出願WO08/137148(これらは各々、引用によりその全体が組み込まれる)にも開示されている。一部の実施形態では、水難溶性薬物はタキサン(パクリタキセルまたはドセタキセルなど)である。一部の実施形態では、水難溶性薬物はラパマイシンである。アルブミンとラパマイシンを含むナノ粒子組成物および疾患の処置のためのその使用は、例えば、PCT出願公開公報番号WO08/109163(これは、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。タキサンナノ粒子組成物に関する本明細書における記載は、ラパマイシンを含むナノ粒子を含む組成物あるいはラパマイシンナノ粒子組成物に対して等しく適用されることを理解されたい。
【0144】
一部の実施形態では、該組成物は、約1000ナノメートル(nm)以下(例えば、約900、800、700、600、500、400、300、200および100nmのいずれかの長さ以下)の平均(“average”または“mean”)直径を有するナノ粒子を含むものである。一部の実施形態では、該ナノ粒子の平均直径は約200nm以下である。一部の実施形態では、該ナノ粒子の平均直径は約150nm以下である。一部の実施形態では、該ナノ粒子の平均直径は約100nm以下である。一部の実施形態では、該ナノ粒子の平均直径は約20〜約400nmである。一部の実施形態では、該ナノ粒子の平均直径は約40〜約200nmである。一部の実施形態では、該ナノ粒子は滅菌濾過可能である。
【0145】
一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物中のナノ粒子は、約200nm以下(例えば、約190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70または60nmなどのいずれか1つの長さ以下)の平均直径を有する。一部の実施形態では、該組成物中のナノ粒子の少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%または99%のいずれか1つの割合)が約200nm以下(例えば、約190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70または60nmなどのいずれか1つの長さ以下)の直径を有する。一部の実施形態では、該組成物中のナノ粒子の少なくとも約50%(例えば、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%または99%のいずれか1つの割合)が、約20〜約400nm(例えば、約20〜約200nm、約40〜約200nm、約30〜約180nmなど)および約40〜約150、約50〜約120、および約60〜約100nmのいずれか1つの範囲内に含まれる。
【0146】
一部の実施形態では、アルブミンは、ジスルフィド結合を形成し得るスルフヒドラル(sulfhydral)基を有するものである。一部の実施形態では、該組成物のナノ粒子部分中のアルブミンの少なくとも約5%(例えば、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%などのいずれか1つの割合)が架橋されている(例えば、1つ以上のジスルフィド結合によって架橋されている)。
【0147】
一部の実施形態では、該ナノ粒子は、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)でコーティングされたタキサン(パクリタキセルなど)を含むものである。一部の実施形態では、該組成物は、ナノ粒子形態と非ナノ粒子形態の両方のタキサンを含むものであり、ここで、該組成物中の少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%のいずれか1つの割合のタキサンがナノ粒子形態である。一部の実施形態では、該ナノ粒子中のタキサンは、重量基準で、該ナノ粒子の約50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%のいずれか1つの割合より多くを構成している。一部の実施形態では、該ナノ粒子は非ポリマーマトリックスを有するものである。一部の実施形態では、該ナノ粒子は、実質的にポリマー物質(ポリマーマトリックスなど)を含有していないタキサンコアを含むものである。
【0148】
一部の実施形態では、該組成物は、そのナノ粒子部分と非ナノ粒子部分の両方にアルブミンを含むものであり、ここで、該組成物中のアルブミンの少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%のいずれか1つの割合が該組成物の非ナノ粒子部分に存在している。
【0149】
一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物中のアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)とタキサンの重量比は約18:1またはそれより小さい(約15:1またはそれより小さい(例えば、約10:1またはそれより小さい)など)。一部の実施形態では、該組成物中のアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)とタキサンの重量比は、約1:1〜約18:1、約2:1〜約15:1、約3:1〜約13:1、約4:1〜約12:1、約5:1〜約10:1のいずれか1つの範囲内に含まれる。一部の実施形態では、該組成物のナノ粒子部分中のアルブミンとタキサンの重量比は、大体で、1:2、1:3、1:4、1:5、1:10、1:15のいずれか1つ、またはそれより小さい比率である。一部の実施形態では、該組成物中のアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)とタキサンの重量比は、以下:約1:1〜約18:1、約1:1〜約15:1、約1:1〜約12:1、約1:1〜約10:1、約1:1〜約9:1、約1:1〜約8:1、約1:1〜約7:1、約1:1〜約6:1、約1:1〜約5:1、約1:1〜約4:1、約1:1〜約3:1、約1:1〜約2:1、約1:1〜約1:1のいずれか1つである。
【0150】
一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物は上記の特徴の1つ以上を含むものである。
【0151】
本明細書に記載のナノ粒子は、乾燥製剤(凍結乾燥組成物など)で存在させてもよく、生体適合性の媒体中に懸濁させてもよい。好適な生体適合性の媒体としては、限定されないが、水、緩衝水性媒体、生理食塩水、緩衝生理食塩水、緩衝(任意選択)アミノ酸溶液、緩衝(任意選択)タンパク質溶液、緩衝(任意選択)糖類溶液、緩衝(任意選択)ビタミン溶液、緩衝(任意選択)合成ポリマー溶液、脂質含有乳濁液などが挙げられる。
【0152】
一部の実施形態では、薬学的に許容され得る担体はヒト血清アルブミンを含むものである。ウシ血清アルブミンなどの他のアルブミンも想定される。かかる非ヒトアルブミンの使用は、例えば、このような組成物を非ヒト哺乳動物(獣医用(例えば、飼育ペットおよび農業面)など)に使用する状況において適切であり得る。
【0153】
該組成物中のアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)は、一般的に、タキサンの担体としての機能を果たす、すなわち、該組成物中のアルブミンにより、アルブミンを含まない組成物と比べて、タキサンが水性媒体中に、より容易に懸濁可能となるか、または該懸濁液の維持が補助される。これにより、タキサンを可溶化させるための毒性の溶媒(または界面活性剤)の使用が回避され得、それにより、個体(ヒトなど)へのタキサン投与の1つ以上の副作用が低減され得る。したがって、一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、Cremophor(例えば、Cremophor EL(登録商標)(BASF))などの界面活性剤を実質的に含有していない(例えば、無含有である)。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物は、界面活性剤を実質的に含有していない(例えば、無含有である)。該タキサンナノ粒子組成物を個体に投与したとき、該組成物中のCremophorまたは界面活性剤の量が個体において1つ以上の副作用を引き起こすのに充分でない場合、該組成物は「Cremophorを実質的に含有していない」または「界面活性剤を実質的に含有していない」。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物に含有されている有機溶媒または界面活性剤は、約20%、15%、10%、7.5%、5%、2.5%または1%のいずれか1つの割合未満である。
【0154】
本明細書に記載の組成物中のアルブミンの量は、該組成物中の他の成分に応じて異なる。一部の実施形態では、該組成物はアルブミンを、タキサンが水性懸濁液中に、例えば、安定なコロイド状懸濁液(安定なナノ粒子懸濁液など)の形態で安定化されるのに充分な量で含む。一部の実施形態では、アルブミンは、水性媒体中でのタキサンの沈降速度が低減される量である。また、粒子含有組成物では、アルブミンの量はタキサンのナノ粒子の粒径と密度にも依存する。
【0155】
タキサンは、水性媒体中に長時間(大体で少なくとも0.1、0.2、0.25、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、24、36、48、60または72時間などのいずれか)、懸濁状態で維持される(例えば、目に見える析出または沈降がない)場合、水性懸濁液中に「安定化され」ている。該懸濁液は、一般的に(必ずしもそうではないが)、個体(ヒトなど)への投与に好適なものである。該懸濁液の安定性は、一般的に(必ずしもそうではないが)、保存温度(例えば、室温(20〜25℃など)または冷蔵条件(4℃など))で評価される。例えば、懸濁液は、該懸濁液の調製の約15分後、裸眼で、または光学顕微鏡下で1000倍にて観察したとき、視認できる綿状沈殿または粒子凝集が示されない場合、保存温度で安定である。また、安定性は、加速試験条件下(約40℃より高い温度下など)においても評価され得る。
【0156】
一部の実施形態では、アルブミンは、タキサンを水性懸濁液中に特定の濃度で安定化させるのに充分な量で存在させる。例えば、組成物中のタキサンの濃度は約0.1〜約100mg/ml、例えば、約0.1〜約50mg/ml、約0.1〜約20mg/ml、約1〜約10mg/ml、約2mg/ml〜約8mg/ml、約4〜約6mg/ml、約5mg/mlなどのいずれかである。一部の実施形態では、タキサンの濃度は大体で少なくとも1.3mg/ml、1.5mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、40mg/ml、および50mg/mlのいずれかである。一部の実施形態では、アルブミンを界面活性剤(Cremophorなど)の使用が回避される量で存在させ、そのため、該組成物は、界面活性剤(Cremophorなど)を含有していないもの、または実質的に含有していないものである。
【0157】
一部の実施形態では、該組成物は液状形態において、約0.1%〜約50%(w/v)(例えば、約0.5%(w/v)、約5%(w/v)、約10%(w/v)、約15%(w/v)、約20%(w/v)、約30%(w/v)、約40%(w/v)、または約50%(w/v))のアルブミンを含む。一部の実施形態では、該組成物は液状形態において、約0.5%〜約5%(w/v)のアルブミンを含む。
【0158】
一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物中のタキサンに対するアルブミン(例えば、アルブミン)の重量比は、充分な量のタキサンが細胞に結合または細胞によって輸送されるようなものである。タキサンに対するアルブミンの重量比は、種々のアルブミンとタキサンの組合せに対して最適化されるべきであるが、一般的に、タキサンに対するアルブミン(例えば、アルブミン)の重量比(w/w)は、約0.01:1〜約100:1、約0.02:1〜約50:1、約0.05:1〜約20:1、約0.1:1〜約20:1、約1:1〜約18:1、約2:1〜約15:1、約3:1〜約12:1、約4:1〜約10:1、約5:1〜約9:1、または約9:1である。一部の実施形態では、タキサンに対するアルブミンの重量比は、大体で、18:1またはそれより小さい、15:1またはそれより小さい、14:1またはそれより小さい、13:1またはそれより小さい、12:1またはそれより小さい、11:1またはそれより小さい、10:1またはそれより小さい、9:1またはそれより小さい、8:1またはそれより小さい、7:1またはそれより小さい、6:1またはそれより小さい、5:1またはそれより小さい、4:1またはそれより小さい、および3:1またはそれより小さいのいずれかである。一部の実施形態では、該組成物中のアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)とタキサンの重量比は、以下:約1:1〜約18:1、約1:1〜約15:1、約1:1〜約12:1、約1:1〜約10:1、約1:1〜約9:1、約1:1〜約8:1、約1:1〜約7:1、約1:1〜約6:1、約1:1〜約5:1、約1:1〜約4:1、約1:1〜約3:1、約1:1〜約2:1、約1:1〜約1:1のいずれか1つである。
【0159】
一部の実施形態では、アルブミンにより、該組成物が個体(ヒトなど)に有意な副作用なく投与されることが可能になる。一部の実施形態では、アルブミン(ヒト血清アルブミンなど)は、ヒトへのタキサン投与の1つ以上の副作用が低減されるのに有効な量である。用語「タキサン投与の1つ以上の副作用の低減」は、タキサンによって引き起こされる1つ以上の望ましくない効果、ならびにタキサンを送達するために使用される送達ビヒクル(タキサンを注射に適するようにする溶媒など)によって引き起こされる副作用の低減、緩和、解消または回避をいう。かかる副作用としては、例えば、骨髄抑制、神経毒性、過敏性、炎症、静脈刺激、静脈炎、疼痛、皮膚への刺激、末梢神経障害、好中球減少性発熱、アナフィラキシー反応、静脈血栓症、血管外遊出、およびその組合せが挙げられる。しかしながら、これらの副作用は例示的にすぎず、タキサンと関連する他の副作用または副作用の合併症も低減され得る。
【0160】
一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物はAbraxane(登録商標)(Nab−パクリタキセル)を含むものである。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物はAbraxane(登録商標)(Nab−パクリタキセル)である。Abraxane(登録商標)は、ヒトアルブミンUSPで安定化させた(これにより、注射用生理学的溶液中に直接分散させることができる)パクリタキセルの製剤である。適当な水性媒体(例えば、0.9%塩化ナトリウム注射液または5%デキストロース注射液)中に分散させると、Abraxane(登録商標)はパクリタキセルの安定なコロイド状懸濁液を形成する。コロイド状懸濁液中のナノ粒子の平均粒子径は約130ナノメートルである。HSAは水に溶けやすいため、Abraxane(登録商標)は、希釈系(0.1mg/mlのパクリタキセル)から濃縮系(20mg/mlのパクリタキセル)にわたる広い濃度範囲(例えば、約2mg/ml〜約8mg/ml、約5mg/mlなど)で再構成させることができる。
【0161】
ナノ粒子組成物の作製方法は当該技術分野で知られている。例えば、タキサン(パクリタキセルなど)とアルブミン(ヒト血清アルブミンなど)を含むナノ粒子は、高剪断力条件下(例えば、超音波処理、高圧ホモジネーションなど)で調製され得る。このような方法は、例えば、米国特許第5,916,596号;同第6,506,405号;同第6,749,868号、および同第6,537,579号、ならびに米国特許出願公開公報第2005/0004002号、同第2007/0082838号、同第2006/0263434号ならびにPCT出願WO08/137148にも開示されている。
【0162】
簡単には、タキサン(パクリタキセルなど)を有機溶媒に溶解させ、その溶液をアルブミン溶液に添加することができる。この混合物を高圧ホモジネーションに供する。次いで、有機溶媒はエバポレーションによって除去され得る。得られた分散液は、さらに凍結乾燥させてもよい。好適な有機溶媒としては、例えば、ケトン、エステル、エーテル、塩素化溶媒、および当該技術分野で知られた他の溶媒が挙げられる。例えば、有機溶媒は、塩化メチレンまたはクロロホルム/エタノール(例えば、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、もしくは9:1の比率のもの)であり得る。
【0163】
治療用薬剤
一部の実施形態では、治療用薬剤は化学療法剤、例えば、代謝拮抗物質(例えば、ヌクレオシドアナログ(ゲムシタビンなど))、白金ベースの薬剤(カルボプラチンまたはシスプラチンなど)、アルキル化剤、チロシンキナーゼ阻害薬、アントラサイクリン系抗生物質、ビンカアルカロイド、プロテアソーム阻害薬、マクロライド、およびトポイソメラーゼ阻害薬である(一部の実施形態では、これらからなる群より選択される)。一部の実施形態では、治療用薬剤はカルボプラチンなどの白金ベースの薬剤である。
【0164】
一部の実施形態では、治療用薬剤は、細胞を特異的に標的化する薬剤(分子標的(targeted)薬剤)である。好適な薬剤としては、例えば、特定の細胞受容体を認識する抗体、キナーゼ阻害薬、または特定の細胞受容体もしくはタンパク質に標的化される分子、例えば、ヘッジホッグ阻害薬が挙げられる。
【0165】
一部の実施形態では、治療用薬剤はゲムシタビンである。一部の実施形態では、治療用薬剤はゲムシタビンではない。一部の実施形態では、標的組織は、ゲムシタビンが浸透するのが困難なものである。一部の実施形態では、標的組織は膵臓癌組織である。一部の実施形態では、標的組織は膵臓組織ではない。
【0166】
一部の実施形態では、治療用薬剤は白金ベースの薬剤(カルボプラチン、シスプラチン、またはオキサリプラチンなど)である。一部の実施形態では、治療用薬剤は白金ベースの薬剤ではない。一部の実施形態では、標的組織は、白金ベースの薬剤が浸透するのが困難なものである。一部の実施形態では、標的組織は肺癌組織(扁平上皮細胞のNSCLC組織など)である。一部の実施形態では、標的組織は肺癌組織ではない。
【0167】
本明細書に記載の方法における使用に適した他の治療用薬剤としては、米国特許出願公開公報第2006/0263434号(その全内容は引用により本明細書に組み込まれる)に記載されたものが挙げられる。
【0168】
投与様式
本明細書に記載の方法は、一部の実施形態では、アルブミンとタキサンを含むタキサンナノ粒子組成物および治療用薬剤の共投与を含む。
【0169】
一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物と治療用薬剤(例えば、本明細書に記載の具体的な治療用薬剤)は同時投与される。薬物を同時投与する場合、該ナノ粒子中の薬物と治療用薬剤は、同じ組成物(例えば、該ナノ粒子と治療用薬剤の両方を含む組成物)中に含めてもよく、別々の組成物中に含めてもよい(例えば、該ナノ粒子をある組成物に含有させ、治療用薬剤を別の組成物中に含有させる)。
【0170】
一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物と治療用薬剤は逐次投与される。該タキサンナノ粒子組成物と治療用薬剤のどちらを最初に投与してもよい。該タキサンナノ粒子組成物と治療用薬剤を別々の組成物中に含有させ、該組成物は、同じパッケージ内に収容しても異なるパッケージ内に収容してもよい。
【0171】
一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物と治療用薬剤の投与は並行的である、すなわち、該タキサンナノ粒子組成物の投与期間と治療用薬剤の投与期間が互いに重複する。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物は、治療用薬剤の投与前に少なくとも1サイクル(例えば、少なくとも2、3または4サイクルのいずれかで)投与される。一部の実施形態では、治療用薬剤は少なくとも1、2、3または4週間のいずれかで投与される。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物と治療用薬剤の投与は、ほぼ同時(例えば、1、2、3、4、5、6または7日のいずれか1つの期間内)に開始する。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物と治療用薬剤の投与は、ほぼ同時(例えば、1、2、3、4、5、6または7日のいずれか1つの期間内)に終了させる。一部の実施形態では、治療用薬剤の投与を、該タキサンナノ粒子組成物の投与終了後も継続する(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12ヶ月のいずれか1つの期間)。一部の実施形態では、治療用薬剤の投与を、該タキサンナノ粒子組成物の投与の開始後(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11またはweヶ月のいずれか1つの期間後)に開始する。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物と治療用薬剤の投与を、ほぼ同時に開始して終了させる。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物と治療用薬剤の投与は、ほぼ同時に開始し、治療用薬剤の投与を、該タキサンナノ粒子組成物の投与終了後も継続する(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12ヶ月のいずれか1つの期間)。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物と治療用薬剤の投与をほぼ同時に止め、治療用薬剤の投与は、該タキサンナノ粒子組成物の投与の開始後(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11またはweヶ月のいずれか1つの期間後)に開始する。
【0172】
一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物と治療用薬剤の投与は非並行的である。例えば、一部の実施形態では、治療用薬剤を投与する前に該タキサンナノ粒子組成物の投与を終了させる。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物を投与する前に治療用薬剤の投与を終了させる。これらの2つの非並行投与の時間間隔は、約2〜8週間の範囲(約4週間など)であり得る。
【0173】
薬物含有ナノ粒子組成物と治療用薬剤の投与頻度は、処置過程において投与担当医師の判断に基づいて調整され得る。別々に投与する場合、薬物含有ナノ粒子組成物と治療用薬剤は、異なる投与頻度または投与間隔で投与され得る。例えば、薬物含有ナノ粒子組成物は毎週または3週間に1回で投与され得、一方、治療用薬剤は、より高いまたは低い頻度で投与され得る。一部の実施形態では、薬物含有ナノ粒子および/または治療用薬剤の連続徐放製剤が使用され得る。徐放を行なうための種々の製剤およびデバイスが当該技術分野で知られている。また、本明細書に記載の投与形態の組合せを使用してもよい。
【0174】
タキサンナノ粒子組成物と治療用薬剤は、同じ投与経路を用いて投与してもよく、異なる投与経路を用いて投与してもよい。一部の実施形態では(同時投与および逐次投与どちらの場合も)、該タキサンナノ粒子組成物中のタキサンと治療用薬剤は、所定の比率で投与される。例えば、一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物中のタキサンと治療用薬剤の重量基準の比率は約1対1である。一部の実施形態では、該重量比は約0.001対約1〜約1000対約1、または約0.01対約1〜100対約1であり得る。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物中のタキサンと治療用薬剤の重量基準の比率は、大体で、100:1、50:1、30:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、および1:1のいずれかの比率より小さい。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物中のタキサンと治療用薬剤の重量基準の比率は、大体で、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、30:1、50:1、100:1いずれかの比率より大きい。他の比率も想定される。
【0175】
したがって、一部の実施形態では、治療量下域量で該タキサンナノ粒子組成物中の薬物および/または治療用薬剤が投与される。
【0176】
一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物中のタキサンの用量は非細胞傷害性である。細胞傷害性は、例えば、本明細書に記載の1つ以上の方法によって測定され得る。非細胞傷害(noncytoxic)量は、インビトロ細胞バイアビリティアッセイに基づいて決定され得る。非細胞傷害量は、インビトロ細胞バイアビリティアッセイにおいて約50%以上の細胞死を引き起こすのに不充分な量であり得る。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物中のタキサンの量は、インビトロ細胞バイアビリティアッセイにおいて約40%以上、30%以上、20%以上、10%以上、5%以上、4%以上、3%以上、2%以上、または1%以上のいずれかの割合の細胞死を引き起こすのに不充分である。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物中のタキサンの量は、インビトロ細胞バイアビリティアッセイにおいて測定可能な細胞死(あれば)を引き起こすのに不充分である。また、非細胞傷害量を、薬物毒性のインビボアッセイに基づいて決定してもよい。例えば、非細胞傷害量は、インビボ細胞傷害アッセイにおいて試験集団の約50%以上が死滅するのに不充分な量であり得る。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物中のタキサンの量は、インビボ細胞傷害アッセイにおいて試験集団の約40%以上、30%以上、20%以上、10%以上、5%以上、4%以上、3%以上、2%以上、または1%以上のいずれかの割合が死滅するのに不充分である。一部の実施形態では、該組成物の量は、インビボ薬物毒性アッセイにおいて試験集団に致死(あれば)を引き起こすのに不充分である。また、非細胞傷害量を、個体に明白な全身毒性(体重減少など)を誘導するのに必要とされるタキサンの量に基づいて決定してもよい、すなわち、薬物の量は、なんら明白な全身毒性が誘導されない場合、非細胞傷害性である。例えば、一部の実施形態では、非細胞傷害量は、約15%未満(例えば、約10%、8%、5%などのいずれかの割合未満、またはそれより少ない)の体重減少が誘導される量である。
【0177】
一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物中のタキサンと治療用薬剤の用量はどちらも、単独投与される場合の各々の対応する通常用量と比べて低減される。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物中のタキサンと治療用薬剤はどちらも治療量下域で、すなわち低レベルで投与される。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物および/または治療用薬剤の用量は、確立された最大毒性用量(MTD)よりも実質的に少ない。例えば、該タキサンナノ粒子組成物および/または治療用薬剤の用量は、MTDの約50%、40%、30%、20%または10%未満である。
【0178】
本明細書に記載の投与形態の組合せを使用してもよい。本明細書に記載の併用療法は、単独で行なってもよく、別の治療法(例えば、化学療法、放射線療法、外科処置、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法、化学免疫療法、肝動脈系療法、寒冷療法、超音波療法、肝移植、局所除去療法、高周波除去療法、光線力学療法など)と併せて行なってもよい。
【0179】
本明細書に記載の治療用薬剤は個体(ヒトなど)に、非経口(例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、肺内、経口、吸入、小胞内、筋肉内、気管内、皮下、眼内、髄腔内、または経皮)などの種々の経路によって投与され得る。一部の実施形態では、治療用薬剤は静脈内投与(administrate)される。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物は経口投与される。
【0180】
該組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の例示的な用量(dosing)としては、以下の範囲:約0.1mg〜約500mg、約0.1mg〜約2.5mg、約0.5〜約5mg、約5〜約10mg、約10〜約15mg、約15〜約20mg、約20〜約25mg、約20〜約50mg、約25〜約50mg、約50〜約75mg、約50〜約100mg、約75〜約100mg、約100〜約125mg、約125〜約150mg、約150〜約175mg、約175〜約200mg、約200〜約225mg、約225〜約250mg、約250〜約300mg、約300〜約350mg、約350〜約400mg、約400〜約450mg、または約450〜約500mgのいずれかが挙げられる。一部の実施形態では、有効量の該組成物(例えば、単位投薬形態)中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の量は、約5mg〜約500mg(約30mg〜約300mgまたは約50mg〜約200mgなど)の範囲である。一部の実施形態では、該組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の濃度は、希釈系(約0.1mg/ml)または濃縮系(約100mg/ml)、例えば、約0.1〜約50mg/ml、約0.1〜約20mg/ml、約1〜約10mg/ml、約2mg/ml〜約8mg/ml、約4〜約6mg/ml、または約5mg/mlなどのいずれかである。一部の実施形態では、タキサンの濃度(例えば、パクリタキセル)は、大体で少なくとも0.5mg/ml、1.3mg/ml、1.5mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、40mg/ml、または50mg/mlのいずれかである。
【0181】
該ナノ粒子組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の例示的な有効量としては、限定されないが、大体で少なくとも25mg/m、30mg/m、50mg/m、60mg/m、75mg/m、80mg/m、90mg/m、100mg/m、120mg/m、125mg/m、150mg/m、160mg/m、175mg/m、180mg/m、200mg/m、210mg/m、220mg/m、250mg/m、260mg/m、300mg/m、350mg/m、400mg/m、500mg/m、540mg/m、750mg/m、1000mg/m、または1080mg/mのいずれかのタキサン(例えば、パクリタキセル)量が挙げられる。種々の実施形態において、該組成物には、大体で、350mg/m、300mg/m、250mg/m、200mg/m、150mg/m、120mg/m、100mg/m、90mg/m、50mg/m、または30mg/mのいずれかより少ないタキサン(例えば、パクリタキセル)が含有される。一部の実施形態では、投与1回あたりのタキサン(例えば、パクリタキセル)の量は、大体で、25mg/m、22mg/m、20mg/m、18mg/m、15mg/m、14mg/m、13mg/m、12mg/m、11mg/m、10mg/m、9mg/m、8mg/m、7mg/m、6mg/m、5mg/m、4mg/m、3mg/m、2mg/m、または1mg/mのいずれかよりも少ない。一部の実施形態では、該組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の有効量は、以下の範囲:約1〜約5mg/m、約5〜約10mg/m、約10〜約25mg/m、約25〜約50mg/m、約50〜約75mg/m、約75〜約100mg/m、約100〜約125mg/m、約125〜約150mg/m、約150〜約175mg/m、約175〜約200mg/m、約200〜約225mg/m、約225〜約250mg/m、約250〜約300mg/m、約300〜約350mg/m、または約350〜約400mg/mのいずれかに含まれる。一部の実施形態では、該組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の有効量は、約5〜約300mg/m(約100〜約150mg/m、約120mg/m、約130mg/m、または約140mg/mなど)である。
【0182】
上記の態様のいずれかの一部の実施形態では、該組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の有効量としては、大体で少なくとも1mg/kg、2.5mg/kg、3.5mg/kg、5mg/kg、6.5mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、55mg/kg、または60mg/kgのいずれかが挙げられる。種々の実施形態において、該組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の有効量としては、大体で、350mg/kg、300mg/kg、250mg/kg、200mg/kg、150mg/kg、100mg/kg、50mg/kg、25mg/kg、20mg/kg、10mg/kg、7.5mg/kg、6.5mg/kg、5mg/kg、3.5mg/kg、2.5mg/kg、または1mg/kgのいずれかより少ないタキサン(例えば、パクリタキセル)量が挙げられる。
【0183】
該ナノ粒子組成物の投与の例示的な投与頻度としては、限定されないが、毎日、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、中断なしで毎週、4週間に3回、3週間に1回、2週間に1回、または3週間に2回が挙げられる。一部の実施形態では、該組成物は、大体で、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、6週間に1回、または8週間に1回投与される。一部の実施形態では、該組成物は、大体で少なくとも週に1回、2回、3回、4回、5回、6回または7回(すなわち、毎日)のいずれかで投与される。一部の実施形態では、各投与間の間隔は、大体で、6ヶ月、3ヶ月、1ヶ月、20日間、15日間、14日間、13日間、12日間、11日間、10日間、9日間、8日間、7日間、6日間、5日間、4日間、3日間、2日間、または1日のいずれかより短い。一部の実施形態では、各投与間の間隔は、大体で、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、8ヶ月、または12ヶ月のいずれかより長い。一部の実施形態では、投与スケジュールは中断なしである。一部の実施形態では、各投与間の間隔は約1週間以内である。
【0184】
一部の実施形態では、投与頻度は、2日に1回を1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、および11回である。一部の実施形態では、投与頻度は2日に1回を5回である。一部の実施形態では、タキサン(例えば、パクリタキセル)は少なくとも10日間の期間にわたって投与され、このとき、各投与間の間隔は約2日以内であり、各投与でのタキサン(例えば、パクリタキセル)の用量は約0.25mg/m〜約250mg/m、約0.25mg/m〜約150mg/m、約0.25mg/m〜約75mg/m(約0.25mg/m〜約25mg/mなど)または約25mg/m〜約50mg/mである。
【0185】
該組成物の投与は、長期間(約1ヶ月から約7年間までなど)にわたる長期的なものであってもよい。一部の実施形態では、該組成物は、大体で少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、30、36、48、60、72または84ヶ月のいずれかにわたって投与される。
【0186】
一部の実施形態では、該ナノ粒子組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の投薬量は、3週間スケジュールで投与する場合は5〜400mg/m、または毎週のスケジュールで投与する場合は5〜250mg/m(80〜150mg/m、例えば、100〜120mg/mなど)の範囲であり得る。例えば、タキサン(例えば、パクリタキセル)の量は、3週間スケジュールで約60〜約300mg/m(例えば、約260mg/m)である。
【0187】
該ナノ粒子組成物(例えば、パクリタキセル/アルブミンナノ粒子組成物)の投与の他の例示的な投与スケジュールとしては、限定されないが、100mg/mを中断なしで毎週;75mg/mを毎週、4週間に3回;100mg/mを毎週、4週間に3回;125mg/mを毎週、4週間に3回;125mg/mを毎週、3週間に2回;130mg/mを中断なしで毎週;175mg/mを2週間に1回;260mg/mを2週間に1回;260mg/mを3週間に1回;180〜300mg/mを3週間毎;60〜175mg/mを中断なしで毎週;20〜150mg/mを週に2回;および150〜250mg/mを週に2回が挙げられる。該組成物の投与頻度は、処置過程において投与担当医師の判断に基づいて調整され得る。
【0188】
一部の実施形態では、個体は、大体で少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9または10回のいずれかの処置サイクルで処置される。
【0189】
本明細書に記載の組成物では、該組成物を個体に、約24時間より短い注入期間にわたって注入することが可能である。例えば、一部の実施形態では、該組成物は、大体で、24時間、12時間、8時間、5時間、3時間、2時間、1時間、30分間、20分間または10分間のいずれかより短い注入期間にわたって投与される。一部の実施形態では、該組成物は約30分間の注入期間にわたって投与される。
【0190】
該ナノ粒子組成物中のタキサン(一部の実施形態ではパクリタキセル)の他の例示的な用量としては、限定されないが、大体で、50mg/m、60mg/m、75mg/m、80mg/m、90mg/m、100mg/m、120mg/m、160mg/m、175mg/m、200mg/m、210mg/m、220mg/m、260mg/m、および300mg/mのいずれかが挙げられる。例えば、該ナノ粒子組成物中のパクリタキセルの投薬量は、3週間スケジュールで投与する場合は約100〜400mg/m、または毎週のスケジュールで投与する場合は約50〜250mg/mの範囲であり得る。
【0191】
治療用薬剤の投与頻度は、該タキサンナノ粒子組成物のものと同じであっても異なっていてもよい。例えば、治療用薬剤は、1日3回、1日2回、毎日、週6回、週5回、週4回、週3回、週2回、毎週投与され得る。一部の実施形態では、治療用薬剤は1日2回または1日3回投与される。治療用薬剤の例示的な量としては、限定されないが、以下の範囲:約0.5〜約5mg、約5〜約10mg、約10〜約15mg、約15〜約20mg、約20〜約25mg、約20〜約50mg、約25〜約50mg、約50〜約75mg、約50〜約100mg、約75〜約100mg、約100〜約125mg、約125〜約150mg、約150〜約175mg、約175〜約200mg、約200〜約225mg、約225〜約250mg、約250〜約300mg、約300〜約350mg、約350〜約400mg、約400〜約450mg、または約450〜約500mgのいずれかが挙げられる。例えば、治療用薬剤は、約1mg/kg〜約200mg/kg(例えば、約1mg/kg〜約20mg/kg、約20mg/kg〜約40mg/kg、約40mg/kg〜約60mg/kg、約60mg/kg〜約80mg/kg、約80mg/kg〜約100mg/kg、約100mg/kg〜約120mg/kg、約120mg/kg〜約140mg/kg、約140mg/kg〜約200mg/kgなど)の用量で投与され得る。例えば、一部の実施形態では、STMN1阻害薬は、約1〜100mg/kg(例えば、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、80mg/kgなど)で、2日毎に5回投与される。
【0192】
一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物中のタキサンの有効量は約45mg/m〜約350mg/mであり、治療用薬剤の有効量は約1mg/kg〜約200mg/kg(例えば、約1mg/kg〜約20mg/kg、約20mg/kg〜約40mg/kg、約40mg/kg〜約60mg/kg、約60mg/kg〜約80mg/kg、約80mg/kg〜約100mg/kg、約100mg/kg〜約120mg/kg、約120mg/kg〜約140mg/kg、約140mg/kg〜約200mg/kgなど)である。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物中のタキサンの有効量は約80mg/m〜約350mg/mであり、治療用薬剤の有効量は約1mg/kg〜約200mg/kg(例えば、約1mg/kg〜約20mg/kg、約20mg/kg〜約40mg/kg、約40mg/kg〜約60mg/kg、約60mg/kg〜約80mg/kg、約80mg/kg〜約100mg/kg、約100mg/kg〜約120mg/kg、約120mg/kg〜約140mg/kg、約140mg/kg〜約200mg/kgなど)である。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物中のタキサンの有効量は約80mg/m〜約300mg/mであり、治療用薬剤の有効量は約1mg/kg〜約200mg/kg(例えば、約1mg/kg〜約20mg/kg、約20mg/kg〜約40mg/kg、約40mg/kg〜約60mg/kg、約60mg/kg〜約80mg/kg、約80mg/kg〜約100mg/kg、約100mg/kg〜約120mg/kg、約120mg/kg〜約140mg/kg、約140mg/kg〜約200mg/kgなど)である。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物中のタキサンの有効量は約150mg/m〜約350mg/mであり、治療用薬剤の有効量は約1mg/kg〜約200mg/kg(例えば、約1mg/kg〜約20mg/kg、約20mg/kg〜約40mg/kg、約40mg/kg〜約60mg/kg、約60mg/kg〜約80mg/kg、約80mg/kg〜約100mg/kg、約100mg/kg〜約120mg/kg、約120mg/kg〜約140mg/kg、約140mg/kg〜約200mg/kgなど)である。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物中のタキサンの有効量は約80mg/m〜約150mg/mであり、治療用薬剤の有効量は約1mg/kg〜約200mg/kg(例えば、約1mg/kg〜約20mg/kg、約20mg/kg〜約40mg/kg、約40mg/kg〜約60mg/kg、約60mg/kg〜約80mg/kg、約80mg/kg〜約100mg/kg、約100mg/kg〜約120mg/kg、約120mg/kg〜約140mg/kg、約140mg/kg〜約200mg/kgなど)である。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の有効量は約100mg/mである。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物中のタキサンの有効量は約170mg/m〜約200mg/mであり、治療用薬剤の有効量は約1mg/kg〜約200mg/kg(例えば、約1mg/kg〜約20mg/kg、約20mg/kg〜約40mg/kg、約40mg/kg〜約60mg/kg、約60mg/kg〜約80mg/kg、約80mg/kg〜約100mg/kg、約100mg/kg〜約120mg/kg、約120mg/kg〜約140mg/kg、約140mg/kg〜約200mg/kgなど)である。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物中のタキサンの有効量は約200mg/m〜約350mg/mであり、治療用薬剤の有効量は約1mg/kg〜約200mg/kg(例えば、約1mg/kg〜約20mg/kg、約20mg/kg〜約40mg/kg、約40mg/kg〜約60mg/kg、約60mg/kg〜約80mg/kg、約80mg/kg〜約100mg/kg、約100mg/kg〜約120mg/kg、約120mg/kg〜約140mg/kg、約140mg/kg〜約200mg/kgなど)である。一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物中のタキサン(例えば、パクリタキセル)の有効量は約260mg/mである。上記のいずれかの方法の一部の実施形態では、治療用薬剤の有効量は約20〜30mg/kg、約30〜40mg/kg、約40〜50mg/kg、約50〜60mg/kg、約60〜70mg/kg、約70〜80mg/kg、約80〜100mg/kg、または約100〜120mg/kgである。
【0193】
一部の実施形態では、治療用薬剤の適切な用量は、該治療用薬剤が単独または治療用薬剤の組合せで投与される臨床治療で既に使用されているものに近似的な用量である。
【0194】
キット、製造物品、およびマーケティング方法
本出願ではまた、本明細書に記載の方法に有用なキットおよび製造物品を提供する。
【0195】
一部の実施形態では、1)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物、および2)治療用薬剤の送達を助長させる方法のための前記組成物を使用するための使用説明書を備えるキットを提供する。一部の実施形態では、1)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物、および2)治療用薬剤の送達に有利な組織微小環境(microenviroment)を作出する方法のための前記組成物を使用するための使用説明書を備えるキットを提供する。一部の実施形態では、キットは、さらに治療用薬剤を備えている。
【0196】
一部の実施形態では、1)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物、および2)治療用薬剤、ならびにc)薬物取り込み能に基づいて患者を選択するための使用説明書を備えるキットを提供する。
【0197】
一部の実施形態では、1)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物、および2)個体において標的組織の薬物取り込み能を決定するための薬剤を備えるキットを提供する。一部の実施形態では、キットは、さらに、薬物取り込み能に基づいて患者を選択するための使用説明書を備えている。
【0198】
一部の実施形態では、一緒にパッケージングされたa)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物、およびb)治療用薬剤、ならびにc)該組成物と該治療用薬剤は、該治療用薬剤の高尤度の送達向上を示す1つ以上の特徴(腫瘍組織内のアルブミン取込みの増大、腫瘍組織内のカベオリン−1レベルの増大、腫瘍組織内のgp60レベルの増大、腫瘍組織内のSPARCレベルの増大からなる群より選択される特徴など)を有する癌を有する個体を処置するために指示されることが示された(“denote”(すなわち、“indicate”))ラベル表示を備える製造物品を提供する。
【0199】
一部の実施形態では、個体亜集団における使用のためのa)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物およびb)治療用薬剤を含む併用療法のマーケティング方法であって、該治療用薬剤の高尤度の送達向上を示す1つ以上の特徴(腫瘍組織内のアルブミン取込みの増大、腫瘍組織内のカベオリン−1レベルの増大、腫瘍組織内のgp60レベルの増大、腫瘍組織内のSPARCレベルの増大からなる群より選択される特徴など)を有する癌を有する該個体亜集団を処置するための併用療法の使用に関して対象消費者に情報提供することを含む方法を提供する。
【0200】
例示的な実施形態
本出願は、一部の実施形態において、個体に有効量の治療用薬剤およびアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含み、標的組織への該治療用薬剤の取込みが、該タキサンナノ粒子組成物と共投与していない該治療用薬剤の取込みと比べて向上する、個体の疾患の処置方法を提供する。一部の実施形態では、疾患は癌である。一部の実施形態では、標的組織は腫瘍(充実性腫瘍など)である。
【0201】
一部の実施形態では、個体に治療用薬剤を、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物と併せて投与することを含む、個体において標的組織への治療用薬剤の取込み助長させる方法を提供する。一部の実施形態では、標的組織は腫瘍(充実性腫瘍など)である。
【0202】
一部の実施形態では、個体にアルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することを含む、治療用薬剤の到達を助長させるために標的組織の微小環境を改変する方法を提供する。一部の実施形態では、標的組織は腫瘍(充実性腫瘍など)である。一部の実施形態では、腫瘍間質が、該ナノ粒子組成物を投与していない個体と比べて低減される。一部の実施形態では、腫瘍の血管新生が、該ナノ粒子組成物を投与していない個体と比べて増大する。一部の実施形態では、腫瘍内の細胞/血管の近接性が、該ナノ粒子組成物を投与していない個体と比べて増大する。
【0203】
本セクションにおいて上記の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、該方法は、さらに、有効量の治療用薬剤を投与することを含む。
【0204】
本セクションにおいて上記の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、個体の標的組織が、以下の特徴:1)アルブミン取込みの増大;2)カベオリン−1発現の増大;3)gp60発現の増大;および4)SPARC発現の増大のいずれか1つ以上を有するものである。
【0205】
一部の実施形態では、個体に:(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、処置を受ける個体を選択する基準として薬物取り込み能が使用される、個体の疾患の処置方法を提供する。
【0206】
一部の実施形態では、(a)個体の標的組織の薬物取り込み能を決定すること、ならびに(b)個体に:(1)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物および(2)治療用薬剤を投与することを含む、個体の疾患の処置方法を提供する。
【0207】
一部の実施形態では、(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含む疾患の処置に適した個体を特定する方法であって、個体が標的組織において薬物取り込み能を有する場合、該個体は処置に適していると特定される方法を提供する。一部の実施形態では、該方法は、さらに、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の該組成物および治療用薬剤を該個体に投与することを含む。
【0208】
一部の実施形態では、(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含む疾患の処置に対する個体の応答性の評価方法であって、個体の標的組織の薬物取り込み能を決定することを含み、該薬物取り込み能は該個体が該処置に対して応答性であることを示す方法を提供する。一部の実施形態では、該方法は、さらに、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の該組成物および治療用薬剤を該個体に投与することを含む。
【0209】
薬物取り込み能が関与するセクションに記載の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、薬物取り込み能が、(a)高レベルのアルブミン取込み;(b)高レベルのカベオリン−1発現;(c)高レベルのgp−60発現;および(d)高レベルのSPARC発現からなる群より選択される1つ以上の特徴に基づいて決定される。
【0210】
本セクションに記載の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、タキサンがパクリタキセルである。一部の実施形態では、タキサンがドセタキセルである。
【0211】
本セクションに記載の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物中のナノ粒子が約200nm未満の平均粒子径を有するものである。
【0212】
本セクションに記載の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物中のナノ粒子が、アルブミンでコーティングされたタキサンを含むものである。
【0213】
本セクションに記載の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、治療用薬剤が、代謝拮抗物質、白金ベースの薬剤およびプレドニゾンからなる群より選択される。
【0214】
疾患が関与するセクションに記載の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、疾患は、膵臓癌、肺癌または黒色腫である。一部の実施形態では、疾患が扁平上皮癌である。一部の実施形態では、疾患が扁平上皮細胞のNSCLCである。
【0215】
一部の実施形態では、個体にa)タキサンとアルブミンとを含むナノ粒子を含む有効量の組成物を投与することを含む、個体における高度に線維性である癌および/または密な間質を有する癌の処置方法を提供する。一部の実施形態では、癌が膵臓癌、肺癌、黒色腫または前立腺癌である。一部の実施形態では、癌が、扁平上皮癌、中皮腫、類腱線維腫、線維形成性円形細胞腫瘍、結腸直腸癌腫および胃腸管の腫瘍からなる群より選択される。一部の実施形態では、該方法が、さらに、別の治療用薬剤を投与することを含む。一部の実施形態では、個体が、タキサンとアルブミンとを含むナノ粒子を含む該組成物を単独で投与した場合の処置に応答性でないおよび/または個体が、該治療用薬剤を単独で投与した場合の処置に応答性でない。一部の実施形態では、該方法は、該タキサンナノ粒子組成物の投与前に個体において、以下:a)組織間質の量、b)組織の血管新生、c)細胞/血管の近接性、b)腫瘍マトリックスの密度、およびd)間質細胞マーカーの発現の1つ以上を評価することを含むものである。一部の実施形態では、個体の標的組織が、以下の特徴:1)高レベルのアルブミン取込み;2)高レベルのカベオリン−1発現;3)高レベルのgp60発現;および4)高レベルのSPARC発現のいずれか1つ以上を有するものである。この段落に記載のいずれかの方法による一部の実施形態では、タキサンがパクリタキセルまたはドセタキセルである。この段落に記載のいずれかの方法による一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物中のナノ粒子が約200nm未満の平均粒子径を有するものである。この段落に記載のいずれかの方法による一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物が、アルブミンでコーティングされたタキサンを含むものである。この段落に記載のいずれかの方法による一部の実施形態では、治療用薬剤が、代謝拮抗物質、白金ベースの薬剤およびプレドニゾンからなる群より選択される。
【0216】
一部の実施形態では、個体に:(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効
量の組成物および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含み、処置を受ける個体を選択する基準として薬物取り込み能が使用される、個体の疾患の処置方法を提供する。一部の実施形態では、該方法は、さらに、該タキサンナノ粒子組成物の投与前に、個体の標的組織の薬物取り込み能を決定することを含む。一部の実施形態では、薬物取り込み能が、(a)高レベルのアルブミン取込み;(b)高レベルのカベオリン−1発現;(c)高レベルのgp−60発現;および(d)高レベルのSPARC発現からなる群より選択される1つ以上の特徴に基づいて決定される。一部の実施形態では、疾患は癌である。一部の実施形態では、癌が膵臓癌、肺癌、黒色腫または前立腺癌である。一部の実施形態では、癌が、扁平上皮癌、中皮腫、類腱線維腫、線維形成性円形細胞腫瘍、結腸直腸癌腫および胃腸管の腫瘍からなる群より選択される。この段落に記載の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、タキサンがパクリタキセルまたはドセタキセルである。この段落に記載のいずれかの方法による一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物中のナノ粒子が約200nm未満の平均粒子径を有するものである。この段落に記載のいずれかの方法による一部の実施形態では、該タキサンナノ粒子組成物が、アルブミンでコーティングされたタキサンを含むものである。この段落に記載のいずれかの方法による一部の実施形態では、治療用薬剤が、代謝拮抗物質、白金ベースの薬剤およびプレドニゾンからなる群より選択される。
【0217】
一部の実施形態では、(a)アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物および(b)有効量の治療用薬剤を投与することを含む疾患の処置に対する個体の応答性の評価方法であって、個体の標的組織の薬物取り込み能を決定することを含み、該薬物取り込み能は該個体が該処置に対して応答性であることを示す方法を提供する。一部の実施形態では、該方法は、さらに、アルブミンとタキサンを含むナノ粒子を含む有効量の該組成物および治療用薬剤を該個体に投与することを含む。
【0218】
一部の実施形態では、個体に、a)ドセタキセルとアルブミンを含むナノ粒子を含む有効量の組成物;およびb)有効量のステロイド(プレドニゾンなど)を投与することを含む、個体の前立腺癌の処置方法を提供する。
【0219】
当業者には、本発明の範囲および精神の範囲内で、いくつかの実施形態が考えられ得ることが認識されよう。次に、以下の非限定的な実施例を参照することにより、本発明を、さらに詳細に説明する。以下の実施例により本発明をさらに例示するが、もちろん、本発明の範囲をなんら限定するものであると解釈されるべきでない。
【実施例】
【0220】
実施例
実施例1.膵臓癌の処置の臨床試験
この疾患特定フェーズ1/2試験は、ゲムシタビン+Nab−パクリタキセル(Nab−P)の安全性および有効性、ならびに転帰と腫瘍SPARCおよび血清CA19−9レベルとの相関を評価するために設計した。
【0221】
患者の適格性:膵臓の転移性腺癌が組織学的に確認された18歳以上の患者を採用した。これらの患者は、島細胞新生物、局所浸潤性疾患、または転移性疾患に対する化学療法の既往を有していない患者であった。
【0222】
試験の設計および処置:試験は非盲検フェーズ1/2試験とした。100、125または150mg/m2のNab−パクリタキセル+ゲムシタビン(1000mg/m2)を毎週3週間(1、8、15日目)投与した後、1週間休薬した。
【0223】
安全性エンドポイント:主要安全性エンドポイントは、最大耐用量(MTD)と用量限界毒性(DLT)である。二次エンドポイントは、処置関連有害事象(AE)および重篤なAEの発生数である。
【0224】
有効性エンドポイント:有効性エンドポイントは、確認された応答率(RR;完全または一部応答[CR,PR])、≧16週間の疾患安定状態(SD)、疾患進行(PD)、無進行生存期間(PFS)、および全生存(OS)である。
【0225】
評価:治験薬応答をCTによりRECIST基準を用いて決定した。RECISTによるCTとEORTC基準を用いたPETは、独立した放射線学的審査によって評価した。
【0226】
バイオマーカーの評価:SPARCの種々のエピトープを、2種類の抗体(MおよびP)を用いて腫瘍細胞と間質線維芽細胞の両方において調べた。血清CA19−9レベルをサイクル毎にモニタリングした。
【0227】
統計学的解析:コックス比例ハザードモデルをPFSとOSに対して使用した。CA19−9レベルとRR間の相関をフィッシャーの正確確率検定によって調べた;CA19−9レベルとPFS/OS間の最大変化%をログランク検定によって解析した。PFSなどの転帰とのSPARCの関連をログランク検定によって評価した。
【0228】
結果:67名の患者が処置を受けた。全患者についてRECIST基準によってCTスキャンを用いて確認された奏功率(ORR)は67名中31名(46%)であり、67名中3名(4%)で完全応答が得られた。100mg/m2コホートのORRは20名中8名(40%)であり、125mg/m2コホートのORRは44名中22名(50%)であった。全患者の疾患制御率(DCR,これは、ORR+>=16週間の疾患安定状態を含む)は67名中43名(64%)であった。100mg/m2コホートのDCRは20名中12名(60%)であり、125mg/m2コホートのDCRは44名中30名(68%)であった。45名の患者でのPETスキャンによる評価では、45名中6名(13%)で完全応答、45名中20名(44%)で一部応答および45名中27名(60%)でDCRがもたらされた。
【0229】
67名の患者の無進行生存期間(PFS)の中央値は7.1ヶ月であった。100mg/m2コホート(20名の患者)ではPFSは5.5ヶ月であり、125mg/m2コホート(44名の患者)ではPFSは8ヶ月であった。
【0230】
67名の患者の全生存(OS)の中央値は10.3ヶ月であった。100mg/m2コホート(20名の患者)ではOSは9.3ヶ月であり、125mg/m2コホート(44名の患者)ではOSは12.2ヶ月である。
【0231】
患者の>20%において発生した最も一般的な悪性度3および4の有害事象は好中球減少であった。9名(18%)の患者および4名(8%)の患者がそれぞれ、悪性度3/4の事象を有した。また、神経障害も観察された。
【0232】
Nab−パクリタキセル+ゲムシタビンは、進行膵臓癌患者において、おおむね耐容性が良好であった。この疾患特定フェーズ1/2治験でのMTDは、125mg/m2のnab−パクリタキセル+1000mg/m2のゲムシタビンを毎週3週間の後、1週間の休薬であった。
【0233】
このような結果により、Nab−パクリタキセルとゲムシタビンの併用は膵臓癌において非常に活性であることが示唆された。大部分の患者で血清CA19−9レベルの≧50%の急速な減少が観察され、これはほとんどが最初のサイクル中に起こり、RR、PFSおよびOSと強く相関していた。バイオマーカーとしてのSPARCの解析により、SPARCは、全生存に関して高リスクおよび低リスクの患者を決定するために使用され得ることが示唆された。総合すると、本発明者らの結果は、Nab−パクリタキセル+ゲムシタビンが、進行膵臓癌を有する患者の処置のための非常に有望な組合せであることを示す。
【0234】
実施例2.ゲムシタビンおよびAbraxane(登録商標)の作用機序に関する試験
11例の患者由来の低継代膵臓腫瘍異種移植片をヌードマウスに皮下(s.c)移植した。約200mm3の腫瘍サイズを有するマウスを4つの処置群(7〜10腫瘍/群)に無作為化し、1)ビヒクル;2)Abraxane(登録商標)(ABI),30mg/kgを1日1回,静脈内(i.v.)で連続5日間;3)ゲムシタビン(GEM),100mg/kgを週2回で4週間,腹腔内(i.p.)および4)GEM+ABI,上記の用量および頻度で4週間処置した。腫瘍サイズを1週間に2回、デジタルカリパスを用いて測定した。各腫瘍異種移植片において初期サイズから50%より大きく退縮した腫瘍の数を記録した。間質の線維形成の程度および対照および処置異種移植片の内皮細胞含有量を、マッソン三色染色、IHCおよびqRTPCRによって調べた。
【0235】
インビボ有効性:GEM+ABIの組合せにより、いずれかの単独の薬剤と比べて抗腫瘍活性の向上がもたらされた。併用療法では11例のうち7例で腫瘍サイズの>50%の退縮がもたらされたが、GEM処置では退縮したのは11例のうち2例だけであった。GEM+ABIの組合せでは、膵臓癌異種移植片において注目すべき腫瘍退縮応答がもたらされた。11例の全腫瘍退縮の総計(aggregate)解析では、併用療法による卓越した腫瘍退縮応答が示された。併用療法で処置したマウスではGEM単独と比べて、腫瘍退縮速度3.5倍の増大がみとめられた。
【0236】
GEMとABIでの併用療法により、腫瘍内へのGEMの取込みが助長された。Panc265異種移植片を有するマウスを、1)ABI,30mg/kg,i.v.,1日1回で連続5日間、2)GEM,100mg/kg,1日目と5日目、または3)GEM+ABIの組合せ,上記の用量および頻度で処置した。動物をGEM投与の1時間後に致死させ、腫瘍を収集した。抽出した腫瘍試料中のGEMおよびパクリタキセルの濃度をHPLCによって測定した。ゲムシタビンの腫瘍内濃度は、GEM単独を受けたものと対比すると、GEM+ABIで処置したマウスにおいて3.7倍増大した。パクリタキセル濃度は、ABI単独を受けたものと対比すると、GEM+ABIにおいてわずかな増大がみとめられた。
【0237】
併用療法により、間質が低減され、腫瘍の血管新生および細胞/血管近接性が増大した:併用処置により腫瘍の血管容量が向上した。Panc265におけるCD31 IHCにより、多数の顕著に拡張された血管が容易に観察されたGEM+ABIの組合せを与えた腫瘍以外は、すべての処置群で、腫瘍環境において狭い内径の血管が示された。
【0238】
mNestin転写物のqRT−PCRでは、対照異種移植片と比べて併用療法処置群において、mNestinレベルのほぼ3倍の相対増加が示されたが、単独薬剤処置群ではどちらも、低い相対mNestin発現が示された。
【0239】
IHCによって示されたように、併用療法では、線維形成性の膵臓腫瘍間質が枯渇した。Panc265およびPanc163における腫瘍間質の発現により(マッソン(Mason)三色および1型コラーゲン(Col1)によって)、ABIおよびGEM+ABIにより線維形成性間質が枯渇することが示された(密集した腺管腫瘍細胞によって示される)。
【0240】
結論として、ゲムシタビン+nab(登録商標)−パクリタキセルの組合せにより、膵臓癌において注目すべき腫瘍退縮応答がもたらされ、膵臓癌間質が有効に消失し、腫瘍血管密度が向上し、ゲムシタビンの腫瘍内送達が助長された。
【0241】
実施例3.肺癌の処置
この実施例では、Abraxane(登録商標)(Nab−パクリタキセルまたはnab−P)とTaxol(登録商標)(P)(対比)のカルボプラチンとの併用(nab−PC対PC)での有効性を、すべての組織学的型の進行非小細胞肺癌(NSCLC)において試験したフェーズ3の治験の結果を示す。
【0242】
方法:ファーストライン病期IIIBまたはIVのNSCLCの患者(ECOG 0/1)を、C AUC6 q3wとnab−P 100mg/m2,毎週,前投薬なし(n=521)またはP 200mg/m2,3週間に1回,前投薬あり(n=531)のいずれかに無作為化した。主要エンドポイント:独立した放射線学的審査(IRR)によるORR。
【0243】
結果:ベースラインと組織学的特徴は充分に釣り合っていた。パクリタキセルの用量強度はnab−PCにおいてPCよりも高かった(82対65mg/m2/wk)。nab−PCはPCよりも、IRR(33%対25%,P=0.005)(31%の改善(1.313の応答比(RR),95%CI:1.082,1.593))、および治験担当者の審査(37%対30%,P=0.008)(26%の改善(1.259のRR,CI:1.060,1.496))の両方で卓越していた。組織学的解析により、扁平上皮癌(SQC)患者において、nab−PCではPCと比べてORRの有意な改善が示された(41%対24%,P<0.001,IRR)(67%の改善(1.669のRR,CI:1.262,2.208))。非SQC患者では、nab−PCはPCと同程度に有効であった(ORRは26%対25%)。nab−PCは耐容性が良好であり、PCと比べて高いパクリタキセル用量を送達したにもかかわらず(1338対1100mg/m2)、安全性プロフィールが有意に改善された。
【0244】
【表2】
【0245】
結論:nab−PCでは、進行NSCLCのためのファーストライン治療としてもPCと比べてORRと安全性プロフィールが有意に改善された。nab−PCはSQCサブセットにおいて特に活性であり、これは、一部において、扁平上皮癌腫細胞における異常なCAV1過剰発現(Yoo 2003)およびgp60−CAV1経路によるnab−Pの高い腫瘍内蓄積のためであり得る。
【0246】
実施例4.前立腺癌の処置
PSA(前立腺特異的抗原)の応答率を、アルブミンとドセタキセルを含むナノ粒子組成物、すなわち、nab−ドセタキセル(75mg/m2の用量でq3wk)またはnab−ドセタキセルとプレドニゾンの組合せで処置した42名の患者(patients in 42 patients)において測定した。nab−ドセタキセル単独で処置した13名の患者では、13名中3名(23%)でPSA応答の発生が確認された。nab−ドセタキセル+プレドニゾンで処置した29名の患者では、29名中13名(45%)でPSA応答の発生が確認され、nab−ドセタキセル単独で見られたもののほぼ2倍であった。したがって、nabによるドセタキセルの送達により、前立腺癌腫瘍に対するプレドニゾンの効果の向上が可能になる。
【0247】
実施例4a.ホルモン療法抗療性の前立腺癌を有する患者でのNab−ドセタキセルのフェーズI/II治験
この臨床試験では、3週間毎に投与したNab−ドセタキセルの最大耐用量(MTD)と用量限界毒性(DLT)を調べ;Nab−ドセタキセルの毒性を特性評価し;3週間毎のスケジュールで投与したときのNab−ドセタキセルの薬物動態パラメータを調べた。また、この試験では、この患者集団におけるNab−ドセタキセルの有効性も評価した。
【0248】
処置の設計
このフェーズI試験では、3週間毎に投与したNab−ドセタキセルのMTDとDLTを調べた。Nab−ドセタキセルの開始用量は、溶媒系ドセタキセルでの非臨床データおよび経験に基づいて選択した。
【0249】
投与量段階的増大スケジュール(Nab−ドセタキセルを3週間毎のサイクルの1日目に投与):含めた投薬量は30、45、60、75、100、125,150、175、および200mg/mとした。
【0250】
各用量レベルに3名の患者を登録し、用量レベル1から開始した。DLTが観察されなかった場合は、次の用量レベルに3名の患者を登録した。1例のDLTが観察された場合は、その用量レベルを6名までの患者に拡張した。所与の用量レベルで2例のDLTが観察された場合は、MTDを超えたとした。それより用量レベルを合計6名の患者に拡張し、この用量レベルでDLTが起こったのが6名の患者のうち<1名である場合、これをMTDと規定した。所与の用量レベルにおいてすべての患者が1回の治療サイクルを終了した後、患者を次の用量レベルに登録した。試験のフェーズIIの部では、さらに35名までの患者をMTDに登録し、その用量レベルに対して最大41名の患者とした(試験のフェーズIの部の6名の患者を含む)。この試験で処置した患者の最大総数は77名の患者であった。
【0251】
フェーズIIでのMTDは75mg/mと確立された。
【0252】
患者には、疾患の進行もしくは許容され得ない毒性が発生するか、同意を取り下げるか、または担当医師がもはや処置の継続は得策でないと感じるまで処置を継続させた。各コホートには、1回の処置サイクルを受けさせた後、用量の段階的増大を行なった。
【0253】
DLTは、この試験では、米国立癌研究所(National Cancer Institute)の有害事象の共通毒性規準(Common Terminology Criteria for Adverse Events)(NCI CTCAE)を用いたいずれかの悪性度3または4の処置関連非血液学的毒性(悪心および嘔吐を除く);処置にもかかわらず発生する悪性度3または4の悪心または嘔吐;任意の持続期間の悪性度4の血小板減少または貧血ならびに>7日間持続する悪性度4の合併症のない好中球減少(すなわち、発熱もしくは感染がない)と定義した。発熱もしくは感染を伴う好中球減少は、持続期間に関係なくDLTとみなすか、または3週間を超える処置の遅延が必要とされるいずれかの悪性度3の血液学的毒性とみなした。DLTは、第1サイクルにおいて、用量の段階的増大およびMTDの決定の目的で調べた。
【0254】
試験は、以下のフェーズからなるものとした(「時間および事象スケジュール」を参照のこと):
・ベースラインでの評価(試験薬物投与開始の28日以内にイメージングスキャンを行なった)。
【0255】
・処置:治療は、疾患進行がない(PSAの評価、腫瘍の応答、および放射性核種での骨のスキャンに基づいて)、ならびに許容され得ない毒性がない状態で継続した。
【0256】
・PSAの評価:患者に対して、各サイクルの1日目にPSAの評価を行なった。カベオリン−1レベルを各サイクルの1日目に測定した。
【0257】
・腫瘍の応答の評価:患者を完全応答(CR)、一部応答(PR)、疾患安定状態(SD)または疾患の進行(PD)について、12週間毎に、またはPSA進行時点もしくは新たな症状の発生時点に疾患進行まで評価した。腫瘍の応答は、RECIST基準を使用して行なった。
【0258】
・薬物動態学的サンプリング−フェーズIの第1サイクルのみ。測定対象のパラメータには、分布容積、最終相の半減期、Cmax、tmax、AUCinf、および血漿クリアランスを含めた。
【0259】
・試験終了時(EOS)での評価:患者を試験から外したとき、AEを評価するために検査値評価および臨床評価を行なった。抗腫瘍の応答に対する放射線学的試験を直近の28日以内に行なっていない場合、再度行なった。
【0260】
・有害事象の収集および追跡−試験薬物の最初の投与から試験薬物の最後の投与後30日までの間のいずれか遅い時点に起こったAE(あれば)を収集した。
【0261】
・疾患進行の追跡:EOS評価により疾患の進行を有しなかった患者には、継続してPSAの評価を3週間毎に行ない、腫瘍の応答の評価を12週間毎に、疾患の進行(PSAの評価または腫瘍の応答に基づいて)が記録されるまで実施した。
【0262】
表1に概要を示した。
【0263】
【表1】
【0264】
A EOS=試験終了時。患者が試験を完了したとき、表示した試験を行なった。直近の28日以内に行なっていない場合のみ、腫瘍の応答について試験を繰り返す。
【0265】
B AEおよびSAEについての追跡は、患者が試験薬物を中止した後、30日間通して継続した。この期間に始まったAE/SAE(あれば)を、安定してもはや改善しなくなるまで、または消散してしまうまで追跡した。EOS来院時に進行中のAEまたはSAEがない場合、追跡は、処置薬の最後の投与から30日間まで毎週患者に電話することによって行なわれ得る。
【0266】
C 腹部および骨盤のCTまたはMRIスキャンは、ベースライン時および12週間毎、またはPSA進行時点もしくは新たな症状の発生時点に、疾患進行まで行なった。腫瘍を追跡するためにベースライン時に選択したどの方法も、試験期間を通して一貫して維持した。
【0267】
D また、他に明白な進行の臨床的証拠がみられなければ、再病期分類試験を前の28日間に行なっていない場合、これをEOS来院時に行なうこととした。
【0268】
E 脳への転移の徴候が示された場合、頭部のCTスキャンを行なう場合があった(臨床的に指示された場合のみ)。
【0269】
F ベースライン検査、身体検査、体重、ズブロド(Zubrod)ならびに末梢神経障害の評価(医師および患者)、PSAおよびカベオリン−1が処置前の72時間以内に完了していた場合、これらの評価を第1サイクルの1日目に繰り返して行なう必要はなかった。
【0270】
G PSAの評価は、3週間毎に疾患進行まで収集した。
【0271】
H BSAはベースライン時に計算し、体重変化が10%より大きかった場合にのみ再計算した。
【0272】
I Nab−ドセタキセル注入前および注入後。
【0273】
J 各サイクルの最初の投与前に完了。
【0274】
K 試験薬物は、ANCが≧1.5×10/1に戻るまで、および血小板が≧100×10/1に戻るまで、または他の毒性(あれば)が悪性度1に消散するまでサイクルの開始時に投与してはならない。
【0275】
L 各サイクルの1日目にNab−ドセタキセル+プレドニゾン5mgを経口で1日2回(朝と夜)。
【0276】
M サイクル2の前だけ。
【0277】
N 試験薬物の最初の投与前の10日以内に必要とされる。
【0278】
組み入れ/除外基準
患者は、以下の基準をすべて満たす場合のみ、この試験への組み入れに適格とした:1)患者は、ホルモン療法に対して臨床的に抗療性である前立腺の腺癌が組織学的または細胞学的に確認された患者でなければならない、2)ズブロドパフォーマンスステータスが0〜1、3)登録時点で、患者は、a)任意のレベルの血清PSAを有する測定可能な疾患、またはb)PSA≧5ng/mlである測定不可能な疾患のいずれかの進行性の転移性疾患の証拠を有していなければならない(PSA≧5ng/mlを有する患者のみ,他のX線写真の証拠がない転移性前立腺癌は適格でない)、4)患者は、治療における一番最近の変化以降、疾患の進行の証拠が示された患者でなければならない、5)処置開始前の2週間以内に測定時に血清テストステロン≦50ng/ml、6)去勢状態が維持されている(外科的精巣摘除を受けていない患者は薬物療法[例えば、性腺刺激ホルモン放出ホルモン類似物質(GnRH類似物質)]を継続し、血清テストステロンの去勢レベルを維持した。ファーストラインホルモン療法の一部として抗アンドロゲン薬を受けている患者では、登録前に抗アンドロゲン薬を止めると疾患の進行が示された(カソデックスでは6週間中断;フルタミドでは4週間))、7)患者が薬物投与において安定であれば、酢酸メゲストロール(Megace(登録商標))処置を継続する場合があった。患者は、Megaceを中止すると、この投薬物なしでは疾患の進行が示された、8)年齢≧18歳、9)大きな手術から4週間、10)転移性疾患の以前の治療に対して以下の制限があてはまる:a)以前に転移性疾患に対する化学療法レジメンは無し、b)以前に待期的放射線療法の治療単位は1回以下、c)非化学療法剤(例えば、キナーゼ阻害薬、免疫療法剤など)での以前の1回までの処置は、転移性疾患に対する処置薬として許可された、d)以前にストロンチウム−89、サマリウムまたは同様の薬剤を用いた放射性同位体療法は無し、およびe)3年前から投与を受けている場合、以前に1回の新補助または補助化学療法レジメンが許可された、11)以前のホルモン療法に対して制限なし、12)患者は、試験薬物投与前の少なくとも4週間、すべての治療を止めた、13)余命が≧3ヶ月であった、14)患者は、提案された処置薬の治験の本質を理解していると記載されたインフォームドコンセント書類に署名した、15)必要とされる初期検査値データ:a)WBC≧3,000/μl、b)ANC≧1,500/μl、c)血小板数≧100,000/μl、d)クレアチニン≦1.5×正常の上限、e)総ビリルビン≦正常の上限(ジルベール病を有する患者には例外を認める)、f)SGOT(AST)≦1.5×正常の上限、およびf)SGPT(ALT)≦1.5×正常の上限、16)タキサンを催奇性とみなす(この理由のため、性的パートナーが妊娠可能年齢である男性は、試験の参加期間中、充分な避妊(産児制限のホルモン的または遮断的方法)の使用に同意した)、ならびに17)肥満(理想体重の>20%重い体重)である場合、患者は、調整体表面積(BSA)(調整した体重に基づいて計算)または実際のBSAを用いて計算した用量で処置しなければならない。
【0279】
組み入れ基準の疾患の進行は、以下(測定可能な疾患、骨のスキャン、またはPSA進行):1)測定可能な疾患の進行(最大退縮もしくは1つ以上の新たな病変部の出現の時点からの標的病変部の最大直径(LD)の合計の>20%増大の客観的証拠)、2)骨のスキャンの進行(以下の構成的進行:(a)骨のスキャンにおける前立腺癌に起因する2つ以上の新たな病変部;もしくは(b)PSAの上昇を伴った、骨のスキャンにおける前立腺癌に起因する1つの新たな病変部のいずれかの出現)、または3)PSA進行(疾患のX線写真の証拠がある場合、ベースラインから2回連続して(各々は少なくとも1週間あいている)上昇したPSA(≧5ng/mL)の上昇)のいずれか1つと規定した。確認PSA値がスクリーニングPSA値より小さい場合、進行を記録するためにPSAの上昇に対するさらなる試験が必要であった)。
【0280】
患者は、以下の基準のいずれかがあてはまる場合、この試験への組み入れに不適格とした:1)患者は、任意の他の治験薬剤を受けることができない患者であった、2)処置の開始前において、患者は、毎日のマルチビタミン、低用量(≦400IUを毎日(qd))のビタミンD、カルシトリオール(Calcitrol)(≦0.5mcg qd)、およびカルシウムサプリメントの摂取は継続することができたが、他のすべての薬草系の択一的な食品サプリメント(すなわち、PC−Spes,ノコギリヤシ(Saw Palmetto),セイヨウオトギリソウ(St John Wort)など)は、中止しなければならない患者であった、3)ビスホスホネートの投与で安定な患者(後に腫瘍進行に進展した)は、この投薬物での処置を継続することができた(しかしながら、患者は、ビスホスホネートを開始すると有害事象の解釈に混乱を生じる可能性があったため、試験直前もしくは試験中でビスホスホネート療法の開始は可能でなくなった)、4)脳への転移がわかっている患者は、多くの場合、進行性の神経系機能不全に進展し、これが神経系および他の有害事象の評価に混乱を生じることがあり得るため、この臨床試験から除外した、5)溶媒系ドセタキセル(Taxotere)に起因するアレルギー反応の既往歴を有する患者は試験に適格でないとした、6)有意な心血管疾患、例えば、鬱血性心不全(ニューヨーク心臓協会による分類IIIもしくはIV)、能動性狭心症もしくは最近の心筋梗塞(直近6ヶ月以内)を有する患者は除外した、7)非黒色腫皮膚癌以外の「現在活動性の」二次悪性腫瘍を有する患者は登録させなかった(患者は、治療を完了し、(担当医師により)現在は再発のリスクが低いとみなされた場合、「現在活動性の」悪性腫瘍を有するとみなされなかった)、8)試験要件の遵守を制限する制御不能な介入性の疾病(例えば限定されないが、進行中もしくは活動性の感染、症候性鬱血性心不全、不安定狭心症、心不整脈もしくは精神科の病気/社会的状況、または9)免疫不全を有する患者は、骨髄抑制療法で処置すると致死性感染のリスクが高まるため、併用抗レトロウイルス療法を受けているHIV陽性患者は、ドセタキセルとの薬物動態学的相互作用の可能性のため試験から除外した。
【0281】
投薬量および投与
患者はすべて、Nab−ドセタキセル(3週間毎にIV投与(60分間±5分間注入))+プレドニゾン(5mg,1日2回経口投与(朝と夜))で処置した。3名の患者コホートの各々に60、75、100、125、150、175または200mg/mのNab−ドセタキセルを、1時間の注入液としてフェーズIの各サイクルの1日目に施与した。Nab−ドセタキセルの用量は、先の3名の患者コホートで観察された毒性プロフィールに応じて段階的に増大した。
【0282】
有効性のエンドポイント
有効性の主要エンドポイントは、PSA応答がPSA正常化またはPSA減少のいずれかで規定される前立腺特異的抗原(PSA)応答の確認が得られた患者の割合とした。PSA正常化は、原発性疾患を放射線療法のみで処置した患者ではPSA<1.0ng/ml、および前立腺摘除術を受けた患者では、少なくとも4週間あけた連続2回の評価でPSAが検出不可能と規定した。PSA減少は、少なくとも4週間あけた連続2回の評価で、処置前から≧50%のPSA値の減少と規定した。処置前のPSA値は、治療開始前の2週間以内に測定した。
【0283】
有効性の二次エンドポイントには:a)目的を果たし、腫瘍に対して完全または一部奏功率が確認された(充実性主要の応答評価基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)(RECIST)基準を使用)測定可能な疾患を有する患者の割合、b)PSA進行までの時間、c)腫瘍の応答(RECIST基準を使用)に基づいた無進行生存期間を含めた。
【0284】
PSAの評価
以前の研究において、他者により、治療後のPSAの減少の予後の有意性が示されている。Tahir SAら Clin Cancer Res.2003;9:3653−9。この研究に基づき、意見が一致したNCIのグループにより、アンドロゲン非依存性疾患における治療後のPSA変化の使用のための以下の指針が提案された。Kelly WKら J Clin Oncol.1993;11:607−615。
【0285】
PSA正常化は、原発性疾患を放射線療法のみで処置した患者ではPSA<1.0ng/ml、および前立腺摘除術を受けた患者では、少なくとも4週間あけた連続2回の評価でPSAが検出不可能と規定。
【0286】
PSA減少は、少なくとも4週間あけた連続2回の評価で、処置前から≧50%のPSA値の減少と規定。処置前のPSA値は、治療開始前の2週間以内に測定した。
【0287】
PSA進行は、進行の基準が満たされたPSA増加の日と規定(すなわち、確認された日ではない)。
【0288】
≧50%のPSAの減少が得られた患者では、進行は:1)底値より上に50%のPSAの増加および2)最低5ng/mLのPSAの増加または処置前のPSA値までのPSAの増加、ならびに3)少なくとも2週間あけた2回目の連続PSA上昇による確認によって規定した。
【0289】
PSAが≧50%減少しなかった患者では、進行は:1)処置前レベルまたは底値PSAレベルのいずれか(いずれか低い方)より上に25%のPSAの増加および2)最低5ng/mLのPSAの増加、ならびに3)少なくとも2週間あけた2回目の連続PSA上昇による確認によって規定した。
【0290】
注:患者が、最初のPSA進行の観察後に新たな抗癌治療を開始したため確認が観察されなかった場合、患者はPSA進行が確認されたとみなした。
【0291】
応答
ベースラインにおいて、腫瘍病変部を以下のとおりに分類した:測定可能(少なくとも1つの寸法[記録すべき最大直径]が、慣用的な手法で≧20mmもしくはスパイラルCTスキャンで≧10mmと厳密に測定され得る病変部)または測定不可能(他のすべての病変部、例えば、小さい病変部[慣用的な手法で最大直径<20mmもしくはスパイラルCTスキャンで<10mm]および真に測定不可能な病変部)。
【0292】
ベースラインにおいて、器官1つあたり最大5箇所までで合計10箇所(関与する器官すべて代表)の測定可能な病変部はすべて標的病変部と認定し、記録し、測定した。標的病変部は、そのサイズ(最大直径を有するもの)および厳密な反復測定(イメージング手法または臨床的のいずれか)に対する好適性に基づいて選択した。すべての標的病変部について最大直径の総和を計算し、ベースラインでの最大直径の総和として報告した。ベースラインでの最大直径の総和は、客観的な腫瘍の応答を特性評価する参照として使用した。
【0293】
他の病変部(または疾患部位)はすべて、非標的病変部と認定した。
【0294】
測定可能および/または測定不可能な病変部を有する患者において、抗腫瘍活性をRECIST指針に従って評価する。
【0295】
ベースライン後の各時間点で標的病変部に基づいて応答を評価するのに、以下の規定を使用した:完全応答(CR):最初の記録後、少なくとも4週間で、すべての既知疾患の消失、および新たな部位または疾患関連症状は確認されなかった。すべての部位を評価した(測定不可能な部位を含む(浸出またはマーカーなど))。部分応答(PR):ベースラインでの最大直径の総和を参照として、最初の記録後、少なくとも4週間で標的病変部の最大直径の総和の少なくとも30%の減少が確認された。また、すべての測定可能な疾患は完全に消失したが、測定不可能な成分(すなわち、腹水)が依然として存在しているが進行はしていない場合もPRを記録した。疾患の安定(SD):一部応答と認めるのに充分な縮小も、疾患の進行と認めるのに充分な増大もない。疾患の進行(PD):処置開始以降に記録された最大直径の総和の最小を参照として、標的病変部の最大直径の総和の少なくとも20%の増大;または1つ以上の新たな病変部の出現;または非標的病変部の明確な進行。
【0296】
非標的病変部の応答の評価は以下のとおりに規定した:完全応答(CR):最初の記録後、少なくとも4週間で、すべての非標的病変部の消失および腫瘍マーカーレベルの正常化が確認される。疾患の安定(SD):1つ以上の非標的病変部の存続および/または腫瘍マーカーレベルが正常範囲外で維持。疾患の進行(PD):1つ以上の非標的病変部の出現および/または既に存在している非標的病変部の明確な進行。評価不能(UE):ベースライン時または処置開始以降、記録される非標的病変部(1つまたは複数)がない。
【0297】
PSA進行までの時間
PSA進行までの時間は、カプラン・マイヤー法を用いて要約した。PSA進行までの時間は、最初の試験薬物投与からPSA進行の開始までの時間と規定した。追跡終了時にPSA進行を有していなかった患者は、最後のPSAの評価時点で統計を打ち切った(censor)。
【0298】
腫瘍の応答に基づいた無進行生存期間
無進行生存期間は、カプラン・マイヤー法を用いて要約した。無進行生存期間は、最初の試験薬物投与から疾患進行の開始または患者の死亡(任意の原因)のどちらかが最初に起こるまでの時間と規定した。疾患進行を有していなかったか、または死亡しなかった患者は、患者が無進行であることがわかっていた最後の時点で統計を打ち切った。
【0299】
安全性/耐容性のエンドポイント
安全性の主要エンドポイントは、HRPCを有する患者におけるNab−ドセタキセルのMTDとDLTの決定とした。安全性/耐容性の他の二次エンドポイントとしては、処置中に発生した有害事象(AE)および重篤な有害事象(SAE)の発生数、検査値異常および試験薬物投与中の骨髄抑制の底値、ならびに各試験薬物の用量修正、投与中断および/または早期中止が行なわれた患者の割合が挙げられる。
【0300】
試験中に発生したAEを、適用可能な場合は、NCIの有害事象の共通毒性規準第3版(CTCAE)(http://ctep.cancer.gov/reporting/ctc.html参照)に従って評点付けした。この毒性基準に含まれなかったAEには、悪性度1=軽度、悪性度2=中等度、悪性度3=重度、悪性度4=生命を脅かす、および悪性度5=死亡で表示した。場合によっては、おそらく、または明白に試験薬物と関連していないと決定された重篤でないAEはさらなる評価は必要でなかったが、記録した。試験投薬物は、AEのため、治験担当者の判断で中断されることがあった。毒性マネージメントが必要とされる患者を評価し、少なくとも毎週、該事象の重症度に表示したとおりに評価した。
【0301】
有害事象評点付けのNCI CTCAEシステムに従い、悪性度3または4の検査値を「重度」または「生命を脅かす」と記載した。例えば、好中球数<500/mm3は、悪性度4(「生命を脅かす」)の検査値基準を満たすものであり得る。この記載は、必ずしも「重篤」基準のAEを「生命を脅かす」とする評価と同義的ではなかった。AEとSAEの定義は本明細書に示している。
【0302】
AEが「生命を脅かす」基準によって重篤とみなされるためには、これは、生命を脅かす帰結の理論的可能性によるものでなく、「発生した該事象による死亡の即時リスク」を有すると医学的に判断されたものであった。好中球数が<500/mmの場合、AEは、悪性度4の好中球減少のAEととらえられ得るが、これは患者に対して即時に生命を脅かす事象を提示すると治験担当医師が決定しない限り、自動的にSAEとはみなされなかった。具体的には、合併症のない悪性度4の好中球減少はSAEとして報告されなかった。発熱、感染または入院を伴う好中球減少はSAEとして報告された。
【0303】
処置集団の患者をAEの発生について、試験薬物開始から試験終了まで、または処置の終了後30日間のいずれか長い方の期間追跡した。試験薬物を投与しなかったとの明白な記録がある患者のみ、処置集団から除外する場合があった。
【0304】
薬物動態のエンドポイント
薬物動態のエンドポイントとしては、排出速度定数、排出半減期、分布容積(V)、最大血漿薬物濃度(Cmax)、Tmax、時間に対する血漿濃度の曲線下面積(AUCinf)、および血漿クリアランスが挙げられる。
【0305】
検査値評価
血液検査パラメータ−骨髄抑制の最大度合を調べるため、WBC、ANC、血小板数およびヘモグロビン濃度に関するCTCAE悪性度を、最初の処置サイクルでの最も重度の悪性度、および治療中の任意の時点の最も重度の悪性度によって要約した。各群について、最初の試験薬物投与後に発生した悪性度3または4のCTCAE血液検査値を有する患者の発生数を示した。悪性度3または4の血液検査値を有する患者のデータをリストにした。
【0306】
臨床化学−肝臓および腎臓の機能を、ALT、AST、総ビリルビンおよびクレアチニンに関するCTCAEを用いて要約した。各CTCAE悪性度を有する患者の数および割合を、最初の治療サイクルでの最も重度の悪性度、および各処置レジメンでの治療中の任意の時点の最も重度の悪性度によって要約した;処置レジメンの差の検定をCMH検定を用いて行なった。最初の試験薬物投与後に発生した悪性度3または4のCTCAE化学検査値を有する患者の発生数を、各群について示した。悪性度3または4の化学検査値を有する患者のデータをリストにした。
【0307】
分子バイオマーカーの評価
カベオリン−1の発現レベル(Cav1)を評価した。
【0308】
結果
PSA(前立腺特異的抗原)の応答率を、アルブミンとドセタキセルを含むナノ粒子組成物、すなわち、Nab−ドセタキセル(75mg/m2の用量でq3wk)またはNab−ドセタキセルとプレドニゾンの組合せで処置した42名の患者において測定した。nab−ドセタキセル単独で処置した13名の患者では、13名中3名(23%)でPSA応答の発生が確認された。nab−ドセタキセル+プレドニゾンで処置した29名の患者では、29名中13名(45%)でPSA応答の発生が確認され、nab−ドセタキセル単独で見られたもののほぼ2倍であった。したがって、Nabによるドセタキセルの送達により、前立腺癌腫瘍に対するプレドニゾンの効果の向上が可能になる。
【0309】
前述の本発明は、明瞭な理解の目的のための実例および実施例としてある程度詳細に記載しているが、当業者には、一定の軽微な変更および修正が実施されることが自明であろう。したがって、本記載および実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでない。