(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態における粉砕対象物の引き込み機構および粉砕機について図を参照しながら説明する。各実施の形態の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとし、重複する説明は繰り返さない場合がある。各実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。
【0017】
本実施の形態では、一例として、粉砕対象物として茶葉を用い、飲料としてお茶を製造する場合について説明するが、粉砕対象物は茶葉に限定されることなく、穀物、乾物、その他の粉砕対象物を用いて、飲料を製造する場合にも適用することが可能である。
【0018】
以下では、茶葉とは、粉砕前の固形状態を意味し、粉末茶葉とは、粉砕された茶葉を意味し、お茶とは、粉末茶葉とお湯とが撹拌された(混ぜ合わされた)飲料を意味する。
【0019】
<実施の形態1>
(飲料製造装置1)
図1から
図3を参照して、本実施の形態における飲料製造装置1について説明する。
図1は、飲料製造装置1の全体斜視図、
図2は、
図1中II−II線矢視断面図、
図3は、飲料製造装置1の概略構成要素を示す全体斜視図である。
【0020】
図1を参照して、飲料製造装置1は、粉砕対象物として茶葉を用い、この茶葉を粉砕して茶葉粉末を得る。この得られた茶葉粉末を用いて、飲料としてお茶を製造する。飲料製造装置1は、装置本体100、粉砕機としての粉挽きユニット300、撹拌ユニット500、水タンク700、茶葉粉末受皿800、および、載置ベース900を備える。載置ベース900は、装置本体100の前側下方において、前側に突出するように設けられており、カップ(図示省略)および茶葉粉末受皿800の載置が可能である。
【0021】
(粉挽きユニット300)
図3を参照して、粉砕装置としての粉挽きユニット300は、装置本体100の前面側に設けられた粉挽きユニット装着領域180に対して、着脱可能に装着される。粉挽きユニット装着領域180には、粉挽駆動力連結機構130が前方に突出するように設けられ、この粉挽駆動力連結機構130に粉挽きユニット300が着脱可能に装着される。粉挽きユニット300は、粉挽駆動力連結機構130に連結されることにより、粉砕対象物である茶葉を挽くための駆動力を得る。
【0022】
粉挽きユニット300の上部から粉挽きユニット300の内部に投入された茶葉は、粉挽きユニット300の内部において細かく粉砕され、粉挽きユニット300の下方に載置された茶葉粉末受皿800に茶葉粉末として落下し集められる。なお、粉挽きユニット300の詳細構造については、
図8〜
図10を用いて後述する。
【0023】
(撹拌ユニット500)
図2および
図3を参照して、撹拌ユニット500は、装置本体100の前面側に設けられた撹拌ユニット装着領域190に対して、着脱可能に装着される。撹拌ユニット装着領域190には、撹拌モータ非接触テーブル140Aが設けられおり、撹拌ユニット500の内部に設けられた撹拌羽根550(後述の
図12参照)を磁力を用いて回転駆動する。
【0024】
装置本体100の撹拌ユニット装着領域190の上部には、給湯ノズル170が設けられている。装置本体100の内部において、給湯パイプ150内の水が所定温度に上昇され、給湯ノズル170から撹拌タンク510内にお湯が供給される。撹拌タンク510内には、装置本体100において作成されたお湯と、粉挽きユニット300によって得られた茶葉粉末とが投入され、撹拌タンク510の撹拌羽根550によって、お湯と茶葉粉末とが撹拌される。これにより、撹拌タンク510内においてお茶が製造される。
【0025】
撹拌ユニット500内で製造された日本茶は、撹拌ユニット500の下方に設けられた吐出口開閉機構540の操作レバー542を操作することにより、載置ベース900に載置されたカップ(図示省略)に、お茶を注ぐことができる。なお、粉挽きユニット300の詳細構造については、
図8〜
図10を用いて後述する。
【0026】
(日本茶(飲料)の製造フロー)
次に、
図4から
図6を参照して、上記飲料製造装置1を用いた日本茶(飲料)の製造フローについて説明する。
図4から
図6は、飲料製造装置1を用いた日本茶吐出を示す第1から第3の製造フローを示す図である。なお、粉挽きユニット300には、所定量の日本茶葉が投入され、水タンク700には所定量の水が蓄えられている。
【0027】
(第1製造フロー)
図4を参照して、第1製造フローについて説明する。この第1製造フローは、粉挽きユニット300における茶葉の粉砕と、装置本体100から撹拌ユニット500への給湯が同時に行なわれるフローである。
【0028】
飲料製造装置1は、ステップ11における粉挽きユニット300による茶葉の粉挽きと、ステップ13における装置本体100から撹拌ユニット500への給湯が同時に開始される。次に、ステップ12において、粉挽きユニット300による茶葉の粉挽きが終了するとともに、ステップ14における装置本体100から撹拌ユニット500への給湯が終了する。
【0029】
ステップ15においてはステップ12において得られた茶葉粉末が、利用者によって、撹拌ユニット500内へ投入される。
【0030】
次に、ステップ16において、撹拌ユニット500での茶葉粉末とお湯との撹拌が開始される。ステップ17において、撹拌ユニット500での茶葉粉末とお湯との撹拌が終了する。ステップ18において、利用者によって、撹拌ユニット500の下方に設けられた吐出口開閉機構540の操作レバー542を操作することにより、載置ベース900に載置されたカップへのお茶の吐出が行なわれる。
【0031】
(第2製造フロー)
図5を参照して、第2製造フローについて説明する。この第2製造フローは、粉挽きユニット300における茶葉が粉砕された後に、装置本体100から撹拌ユニット500への給湯が行なわれるフローである。
【0032】
飲料製造装置1は、ステップ21において、粉挽きユニット300による茶葉の粉挽きが開始される。ステップ22において、粉挽きユニット300による茶葉の粉挽きが終了する。ステップ23において、ステップ22において得られた茶葉粉末が、利用者によって、撹拌ユニット500内へ投入される。
【0033】
ステップ24において、装置本体100から撹拌ユニット500への給湯が開始される。ステップ25において、装置本体100から撹拌ユニット500への給湯が終了する。
【0034】
次に、ステップ26において、撹拌ユニット500での茶葉粉末とお湯との撹拌が開始される。ステップ27において、撹拌ユニット500での茶葉粉末とお湯との撹拌が終了する。ステップ28において、利用者によって、撹拌ユニット500の下方に設けられた吐出口開閉機構540の操作レバー542を操作することにより、載置ベース900に載置されたカップへのお茶の吐出が行なわれる。
【0035】
(第3製造フロー)
図6を参照して、第3製造フローについて説明する。この第3製造フローは、撹拌ユニット500においてお湯を撹拌により冷却するステップを備えている。
【0036】
飲料製造装置1は、ステップ31における粉挽きユニット300による茶葉の粉挽きと、ステップ33における装置本体100から撹拌ユニット500への給湯が同時に開始される。ステップ34における装置本体100から撹拌ユニット500への給湯が終了する。
【0037】
次に、ステップ32において、粉挽きユニット300による茶葉の粉挽きが終了するとともに、ステップ35において、撹拌ユニット500において給湯の冷却撹拌を開始する。ステップ36において、撹拌ユニット500において給湯の冷却撹拌が終了する。給湯の冷却撹拌は、撹拌羽根2Dを所定方向に回転させることにより、給湯されたお湯をかき回すことでお湯が空気に触れて(水面より外気を取り込む)、お湯の温度を所望に温度にまで低下させる。所望の温度とは、たとえば、茶葉粉末の場合には、所望割合での成分抽出のための最適温度を意味する。
【0038】
なおステップ35および36においては、撹拌羽根2Dを回転させて、お湯を冷却させているが、この方法には限定されない。たとえば、飲料製造装置1に別途冷却部195(
図2参照)を設け、撹拌槽510を冷却してもよい。冷却部195は、例えばファン送風による冷却や、水冷による冷却が望ましい。
【0039】
ステップ37においてはステップ32において得られた茶葉粉末が、利用者によって、撹拌ユニット500内へ投入される。
【0040】
次に、ステップ38において、撹拌ユニット500での茶葉粉末とお湯との撹拌が開始される。ステップ39において、撹拌ユニット500での茶葉粉末とお湯との撹拌が終了する。ステップ40において、利用者によって、撹拌ユニット500の下方に設けられた吐出口開閉機構540の操作レバー542を操作することにより、載置ベース900に載置されたカップへのお茶の吐出が行なわれる。
【0041】
(装置本体100の内部構造)
次に、
図7を参照して、飲料製造装置1の内部構造について説明する。
図7は、飲料製造装置1の内部構造のみを示す斜視図である。飲料製造装置1の装置本体100の内部においては、水タンク700の前面側には、電子部品が搭載されたプリント配線基板を用いた制御ユニット110が配置されている。利用者によるスタート信号の入力に基づき、上記お茶の製造フローが、制御ユニット110により実行される。
【0042】
制御ユニット110の下方位置には、粉挽きユニット300に駆動力を与えるための粉挽モータユニット120が配置されている。この粉挽モータユニット120の下方位置には、前方に突出するように設けられ、粉挽モータユニット120の駆動力を粉挽きユニット300に伝達するための粉挽駆動力連結機構130が設けられている。
【0043】
水タンク700の底面には、底面から下方に一旦延び、U字形状に上向きに延びる給湯パイプ150の一端が連結されている。給湯パイプ150の上端部には、撹拌ユニット500の撹拌タンク510にお湯を注ぐための給湯ノズル170が連結されている。給湯パイプ150の途中領域には、給湯パイプ150内を通過する水を加熱するためのU字形状のヒータ160が装着されている。
【0044】
(粉挽きユニット300の構造)
次に、
図8から
図10を参照して、粉挽装置としての粉挽きユニット300の構造について説明する。
図8は、粉挽きユニット300の斜視図、
図9は、粉挽きユニット300の分解斜視図、
図10は、粉挽きユニット300の縦断面図である。
【0045】
粉挽きユニット300は、全体として円筒形状を有する粉挽きケース310を有し、下方の側面には、粉挽駆動力連結機構130が内部に挿入される連結用窓310wが設けられている。粉挽きケース310の最下端部には、粉挽きユニット300により粉砕された茶葉粉末が取り出される(落下する)取り出し口310aが形成されている。
【0046】
粉挽きケース310の内部には、下方から、粉掻き取り機340、下臼350、上臼360が順番に設けられている。粉掻き取り機340の下面には下方に延びる粉挽き軸345が設けられ、この粉挽き軸345が粉挽駆動力連結機構130に連結し、下臼350を回転駆動させる。
【0047】
下臼350の中央部には、回転軸芯に沿って上方に向かって延びるコア355が設けられている。上臼360は、上臼保持部材370により保持されており、上臼保持部材370の内部には、上臼360を下方に向けて押圧するバネ380およびバネ保持部材390が収容されている。
【0048】
下臼350に設けられるコア355は、上臼360を貫通するように上方に延びている。下臼350、コア355、および上臼360を用いた粉砕機構の詳細構造については、
図13〜
図30を用いて後述する。
【0049】
(撹拌ユニット500の構造)
次に、
図11および
図12を参照して、撹拌ユニット500の構造について説明する。
図11は、撹拌ユニット500の斜視図、
図12は、撹拌ユニット500の縦断面図である。
【0050】
撹拌ユニット500は、撹拌タンク510を備える。撹拌タンク510は、樹脂製の外装ホルダー511と、この外装ホルダー511に保持される保温タンク512とを含む。外装ホルダー511には、樹脂により一体成形されたグリップ520が設けられている。撹拌タンク510の上面開口には、この開口を開閉する撹拌カバー530が設けられている。撹拌カバー530には、粉挽きユニット300により粉砕された茶葉粉末を投入する粉末投入口531、および、装置本体100により形成されたお湯が給湯ノズル170から注がれる給湯口532が設けられている。
【0051】
撹拌タンク510の底部には、撹拌羽根550が載置される。撹拌タンク510の底部には、上方に延びる回転軸560が設けられ、この回転軸560が撹拌羽根550の軸受部551に挿入される。
【0052】
撹拌羽根550には、磁石が埋め込まれている。撹拌モータ非接触テーブル140Aにおいて、撹拌羽根550に埋め込まれた磁石と、撹拌モータユニット140側に設けられた磁石とが非接触の状態で磁気結合することで、撹拌モータユニット140の回転駆動力が、撹拌羽根550に伝達される。
【0053】
撹拌タンク510の底部には、撹拌されたお茶を吐出させるための吐出口541が設けられている。この吐出口541には、吐出口開閉機構540が設けられている。この吐出口開閉機構540は、吐出口541を開閉可能に、吐出口541に挿入された開閉ノズル543と、開閉ノズル543の位置を制御する操作レバー542とを含む。開閉ノズル543は、通常状態においてはバネ等の付勢部材(図示省略)により吐出口541を塞ぐように付勢されている。利用者が、操作レバー542を付勢力に対抗して移動させた場合には、開閉ノズル543が移動し、吐出口541が開放される。これにより、撹拌タンク510内のお茶が、載置ベース900に載置されたカップ(図示省略)に注がれることとなる。
【0054】
(粉砕機構の詳細構造)
次に、
図13から
図15を参照して、下臼350、コア355、および上臼360を用いた粉砕機構の詳細構造について説明する。
図13は、本実施の形態におけるコア355、下臼350、上臼360の組み図を示した斜視図、
図14は、本実施の形態におけるコア355、下臼350、上臼360の上方側からの分解斜視図、
図15は、本実施の形態におけるコア355、下臼350、上臼360の下方側からの分解斜視図である。
【0055】
図13を参照して、下臼350と上臼360とは、下臼350の擦り合せ面350aと上臼360の擦り合せ面360aとが接している。コア355は、下臼350に設置されており、上臼360の開口部361を通って、上臼360の上部へ突き出している。
【0056】
図14参照して、コア355は下臼350のセンターに固定されている。下臼350の擦り合せ面350aには、センターより円周に向かって延びる粉砕用の粉砕溝350bが複数形成されている。下臼350およびコア355は、上臼360に対して図示する矢印Aの方向に回転する。上臼360には、回転止めピン390p(
図21参照)の入る有底穴362があり、回転しないように上臼保持部材370(
図10参照)に保持される。
【0057】
図15を参照して、コア355は下臼350のセンター穴350cを貫通し、爪形状によって下臼350に固定されている。下臼350の裏面には、回転駆動ピン345p(
図21参照)の入る有底穴350dが複数設けられている。
【0058】
上臼360の擦り合せ面360aには、センターより円周に向かって延びる粉砕用の複数の粉砕溝360b以外に、開口部361を通過した粉砕対象物を、擦り合せ面350a,360aへ送り込むための引き込み溝360cが形成されている。引き込み溝360cは、中心から外側に向かって螺旋状に延びる溝である。下臼350および上臼360は、材質がアルミナであり、擦り合せ面350a,360aの直径は、たとえば、50mm程度であるとよい。
【0059】
次に、
図16から
図18を参照して、本実施の形態におけるコア355の形状について説明する。
図16は、コア355の正面図、
図17は、コア355の側面図、
図18は、コア355の斜視図である。
【0060】
図16を参照して、コア355は、コア355の右回転方向(図中矢印A方向)に対してネジ向き方向が反対の左ネジ向きの螺旋羽根355aを含む。螺旋羽根355aは、ピッチP、傾斜θを有するように設けられる。回転方向Aに対して螺旋羽根355aに当った粉砕対象物は、傾斜θによって下方へと送られる。なお、
ピッチPおよび傾斜θは、粉砕対象物の種類や想定する粉砕対象物の引き込み速度にもよるが、たとえば、粉砕対象物が茶葉の場合、P=6mm、θ=40°程度であるのが望ましい。さらに、螺旋羽根355aの板厚を除いた螺旋羽根355a間の隙間Sは、茶葉が詰まらないように、3mm程度確保するのが望ましい。コア355は基準面Bで後述する下臼350のザグリ穴350z(
図21、
図22参照)の座面に接して、下臼350に爪部355bによって係合し固定される。
【0061】
螺旋羽根355aの下端と基準面Bの間には、内側に凹む切り欠き部355cが形成されている。ここで切り欠き部355cは、螺旋羽根355aの外径D1よりも内側に位置するように設けられ、切り欠き部355cの最小外径D11は、螺旋羽根355aの外径D1よりも小さい。螺旋羽根355aの外径D1は、たとえば、10mm程度であるのが望ましい。
【0062】
図17を参照して、螺旋羽根355aは両面と連続するように形成されており、スクリュー形状に似た形状を有している。螺旋羽根355aはアンダーカット部がないため金型で成形することができる。螺旋羽根355aの下端より下には補強リブ355dが設けられている。補強リブ355dも螺旋羽根355aの外径D1よりも内側に位置するように設けられ、補強リブ355dの外形最大幅D12は、螺旋羽根355aの外径D1よりも小さい。
【0063】
なお、切り欠き部355cおよび補強リブ355dは、上臼360の開口部361に対向するコア355の外周面領域を構成していることから、以下では、総称して後退外周面領域355eと称する。この後退外周面領域355eは、後述するように、引き込み溝360cの深さd1よりも広い領域において、コア355の外径D1よりも内側に位置している(
図22参照)。
【0064】
図18を参照して、螺旋羽根355aには、連続するスクリュー形状が採用されており、コア355が回転することにより、粉砕対象物は上から下へと順に送られる。
【0065】
<実施の形態2>
図19に、実施の形態2におけるコア355Aを示す。ただし、後退外周面領域355eよりも下方の構造は、上記コア355と同一であるため、図示は省略している。
図19に示すコア355Aは、螺旋羽根355aのピッチは、上方のピッチP1の方が、下方のピッチP2よりも大きく設けられている。それぞれの螺旋羽根355aが連続的な疑似スクリューを形成しているのは、上述のコア355と同様である。
【0066】
このコア355Aの形態により、粉砕対象物に大きなものが混入している場合であっても、まずピッチの大きい上方の螺旋羽根355aによって下方へと引き込むことができる。さらに、下方へ粉砕対象物を送る過程において、螺旋羽根355aの変化するピッチに応じて、粉砕対象物を事前に小さく粉砕していくことが可能になる。したがって、臼へ効率的に、かつ安定的に粉砕対象物を送り込むことが可能になる。なお、上記のピッチの変化は、コア355Aの一周ごとに徐々に変化していてもよいし、複数周ごとで段階的に変化していてもよい。
【0067】
図20から
図22を参照して、本実施の形態における粉挽きユニット300の構成を詳細に説明する。
図20は、粉挽きユニット300の平面図、
図21は、
図20中のXXI−XXI線矢視断面図、
図22は、粉挽きユニット300の粉挽きの概念断面図である。
【0068】
上述したようにコア355は、下臼350に固定され、上臼360の開口部361を通ってホッパー313内に侵入するように設置される。下臼350と上臼360にはバネ380によって擦り合せ面350a,360aの面圧が印加されている。上臼360は回転止めピン390pを有底穴362に入れることで固定されており、下臼350は回転駆動ピン345pを有底穴350dに入れて図示しない回転駆動部によって図示矢印A方向に回転駆動される。
【0069】
次に、
図21および
図22を参照して、コア355と上臼360との位置関係について説明する。コア355の後退外周面領域355eは上臼360の引き込み溝360cの深さよりも広い領域に形成されている。すなわち、コア355の螺旋羽根355aの外径と開口部361の内径との隙間よりも、引き込み溝360cの周辺における後退外周面領域355eと開口部361の内径との隙間は広く確保されている。
【0070】
したがって、
図22に示すように、茶葉(粉砕対象物)Cは、引き込み溝360cの上部までは螺旋羽根355aによって強制的に下方へと送られるが、後退外周面領域355eと開口部361の内径との隙間に向けては強制的には送り込まれない。また、コア355は下臼350のセンター穴350cの擦り合せ面350a側に設けられたコア取付面としてのザグリ穴350zに接して固定される。このザグリ穴350zは、下臼擦り合せ面350aよりも下側に位置している。これにより、後退外周面領域355eは、擦り合せ面350aに達する領域にまで形成されている。
【0071】
これにより、上臼360の開口部361を小さくした場合であっても、後退外周面領域355eの周りには所定の空間が形成され、引き込み溝360cに過剰な圧力がかかることのないコア355を提供することができる。
【0072】
引き込み溝360cの周辺まで螺旋羽根355aがある場合には、引き込み溝360cと螺旋羽根355aとの間で過度な圧力がかかり、モータ負荷増大や、粉砕対象物の過剰な送りによって、粒度が粗くなる。より小さな面積の臼で所望の粒度(たとえば、20ミクロン)を得るには、引き込み溝360c付近の螺旋羽根355aをなくす必要がある。
【0073】
処理速度と粒度とを所望値に合わせるには、下臼350と上臼360との間は常に粉砕対象物で満たされることと、かつ上臼360の引き込み溝360c内部へは、下臼350の溝面の働きによって粉砕対象物が送られる必要がある。
【0074】
本実施の形態における粉挽きユニット300によれば、上臼360の開口部361に対向するコア355の外周面領域である後退外周面領域355eは、引き込み溝360cの深さd1よりも広い領域
d2において、コア355の外径D1よりも内側に位置している。これにより、下臼350およびコア355の回転時に、ホッパー313内の茶葉(粉砕対象物)を効率的に下へ引き込むことが可能になると同時に、上臼360の引き込み溝360cへ過度な圧力をかけることがない。したがって、特に臼面積を小さくした場合であっても、茶葉(粉砕対象物)の供給量を安定させながら、かつ粒度を細かく保つことが可能になる。
【0075】
図23に、
図21におけるコア355の外径D1と、ホッパー313の内径D2との関係性について評価した結果を示す。図中の「○」は合格を意味し、「×」は不合格を意味する。
図23によれば、D2/D1の値が小さすぎると(1.5以下)、ホッパー313の容量が所望量(たとえば、茶葉5g)に満たない。また、D2/D1の値が大きすぎると(2.5以上)、ホッパー313の容量は大きくなるが、ホッパー313内のコア355の回転の影響が届かないエリアに茶葉(粉砕対象物)がロスとして残されてしまう。したがって、できるだけ粉挽きユニット300自体の大きさを小型化するためには、D2/D1は、1.7≦D2/D1≦2.2であるのが望ましい。
【0076】
これにより、ホッパー313の容量を確保しつつ、処理能力を安定的に保持し、かつ最後にホッパー313に残る茶葉(粉砕対象物)のロスを少なくすることが可能になる。
【0077】
(引き込み溝の形状説明)
次に、
図24から
図30を参照して、上臼360の擦り合せ面360aに設けられる粉砕溝360bおよび引き込み溝360cの形態について説明する。
図24および
図25は、上臼360の擦り合せ面360aに設けられる粉砕溝360bおよび引き込み溝360cの平面図および斜視図、
図26は、上臼360の擦り合せ面360aに粉砕溝360bのみが設けられた場合の平面図である。
【0078】
<実施の形態3から5>
次に、
図27を参照して、実施の形態3における上臼360Aの擦り合せ面360aに設けられる粉砕溝360bおよび引き込み溝360cの平面構造、
図28を参照して、実施の形態4における上臼360Bの擦り合せ面360aに設けられる粉砕溝360bおよび引き込み溝360cの平面構造、および、
図29および
図30を参照して、実施の形態5における上臼360Cの擦り合せ面360aに設けられる粉砕溝360bおよび引き込み溝360cの平面および斜視構造について説明する。
【0079】
まず、
図24および
図25を参照して、上臼360の擦り合せ面360aには、粉砕溝360bおよび引き込み溝360cが設けられている。粉砕溝360bは、複数のせん断溝360b1と、3本の送り溝360b2とを含む。せん断溝360b1は、回転中心Cに対して回転対称に複数設けられている。3本の送り溝360b2も、回転中心Cに対して回転対称に複数設けられている。せん断溝360b1は、主に粉砕対象物を粉砕するための溝であり、送り溝360b2は、主に粉砕された粉末茶葉(粉砕された茶葉)を、臼の中心部から外周部に送る溝である。せん断溝360b1および送り溝360b2は、それぞれ等角螺旋に沿った形態を有している。
【0080】
回転中心Cを原点として等角螺旋Sはパラメータa、bを用いて、以下の式1で表わされる。
【0081】
S=a・exp(b・θ)・・・(式1)
回転中心Cから伸ばした半直線Lと等角螺旋が成す角α(α1、α2)は、以下の式2で表わされる。
【0082】
α=arccot(b)・・・(式2)
せん断溝360b1に好適な等角螺旋S1は、(式1)においてa=5、b=0.306であり、(式2)においてα=17.0°である。現実的には、半直線Lと等角螺旋S1(せん断溝201)との成す角度α1は、0°<α1<45°であれば良く、好ましくは、10°≦α1≦20°であり、さらに好ましくは、α1=17.0°となる。
【0083】
送り溝360b2に好適な等角螺旋S2は、(式1)においてa=5、b=3.7であり、(式2)においてα=74.9°である。現実的には、半直線Lと等角螺旋S2(送り溝202)との成す角度α2は、45°<α2<90°であれば良く、好ましくは、70°≦α2≦80°であり、さらに好ましくは、α2=74.9°となる。
【0084】
せん断溝360b1および送り溝360b2の溝幅wは、0.5mm≦w≦1.5mmであるとよい。また、せん断溝360b1および送り溝360b2の溝深さdは、0.1mm≦d≦1mm程度であるとよい。
【0085】
上臼360の開口部361の内周面361aから擦り合せ面360aに向かう領域に、螺旋状に延びる3本の引き込み溝360cが設けられている。
図24の平面図においては、引き込み溝360cの領域にドットハッチングを付している(
図27,27,28も同様)。引き込み溝360cは、回転中心Cに対し180度ピッチで設けられている。引き込み溝360cは、等角螺旋であってもよい。
【0086】
引き込み溝360cは、開口部(投入口)361に開口した形状を有するとともに、引込終端径D21に向け傾斜する溝になっている。粉砕対象物を引掛けつつ、内部へ送る形状を有している。特に、粉砕対象物が茶葉の場合では、開口部(投入口)361で深さ2mm、幅7mmの溝で始まり、引込溝終端径D21がφ18mmのとき、深さ0.5mm、幅0.8mmの送り溝360b2に連続するようにスムーズに傾斜しており、粉砕対象物(茶葉)の最適なサイズになっている。このように、この引き込み溝360cの終端は送り溝360b2の先端部に滑らかに接続しており、引き込まれた粉砕対象物は上臼360と下臼350との擦り合せ面に侵入することが可能となる。
【0087】
図26は、引き込み溝360cが設けられない場合の上臼360の擦り合せ面360aを示す平面図および斜視図である。開口部361の内周面361aからせん断溝360b1および送り溝360b2が設けられている。
【0088】
<実施の形態3>
図27に、実施の形態3における上臼360Aの擦り合せ面360aを示す。この上臼360Aと
図24に示す上臼360との相違点は、送り溝360b2が1本のみ設けられ、引き込み溝360cも1本のみ設けられた場合を示している。せん断溝360b1の本数は、上臼360の場合と同じであるが、要求される粉砕能力に応じて、適宜、せん断溝360b1の本数、送り溝360b2の本数、および、引き込み溝360cの本数を選択することが可能である。
【0089】
<実施の形態4>
図28に、実施の形態4における上臼360Bの擦り合せ面360aを示す。この上臼360Bと
図24に示す上臼360との相違点は、送り溝360b2が設けられていない。他の形態は同じである。
【0090】
<実施の形態5>
図29および
図30に、実施の形態5における上臼360Cの擦り合せ面360aを示す。この上臼360Cにおいては、開口部361の内周面361aの全周において、擦り合せ面360aに向かう引き込み溝360cが設けられている。
【0091】
このように、下臼の擦り合せ面に設けられる、粉砕溝360bおよび引き込み溝360cの形態、数量は、要求される粉砕能力に応じて、適宜選択することが可能である。
【0092】
なお、上記粉砕機構においては、コア355の右回転方向(図中矢印A方向)に対してネジ向き方向が反対の左ネジ向きの螺旋羽根355aを基準として、上臼360および下臼350の設計を行なっているが、コア355が左回転方向に対してネジ向き方向が反対の右ネジ向きの螺旋羽根355aを設けてもよい。この場合には、上臼360および下臼350の設計も、回転方向が逆になる設計を行なえば良い。
【0093】
<実施の形態6>
(粉挽きユニット300の安全構造)
次に、
図31から
図35を参照して、実施の形態6における粉挽きユニット300の安全構造について説明する。
図31は、粉挽きユニット300の斜視図、
図32は、
図31中XXXII−XXXII線矢視断面図、
図33は、第1関連技術における粉挽きユニット300の平面図、
図34は、第2関連技術における粉挽きユニット300の平面図、
図35は、
図34中XXXV−XXXV線矢視断面図である。
【0094】
図31および
図32を参照して、下臼350およびコア355が回転中の使用者の安全確保について説明する。ホッパー313の開口313aにおいて、コア355上部には、上方に凸形状の安全リブ315が形成されている。本実施の形態では、安全リブ315は、上方に向けて鋭角な断面が略三角形状を有しているが、この形状には限定されない。
【0095】
安全リブ315は、ホッパー313上端の開口313aの開口面積を確保しながら、下方へ傾斜するスロープ315rを有している。これにより、茶葉(粉砕対象物)を上方より投入してもすべり落ちて詰まりにくい。
【0096】
図32は、ホッパー313の上方より、回転動作中のコア355へ向かってテストフィンガーTFを挿入した状態を示している。
図32によれば、茶葉(粉砕対象物)の侵入を妨げない安全リブ315によって、テストフィンガー6の侵入が阻止されていることがわかる。なお、テストフィンガーTFは、電気用品安全法に基づく試験指サイズである。したがって、本実施の形態における粉挽きユニット300では、茶葉(粉砕対象物)の投入を妨げることなく、使用者の安全を確保することが可能になる。
【0097】
安全リブ315は、上方に向かって鋭角なスロープ315rを有する外形であれば、たとえば、最上面が曲線状であっても、端面が曲線状(円弧状)であっても構わない。両側に延びるスロープ315rの長さは対称でなくもよい。またスロープ315rに一部切り欠きや開口部が設けられていてもよい。たとえば、最上面が略球面となるような、円錐型の形状であってもよい。
【0098】
このように、本実施の形態における安全リブ315を用いることで、使用者が回転するコア355に指を触れられなくして安全を確保できるとともに、茶葉(粉砕対象物)が安全リブ315に引っかかることなくホッパー313内に落ちるようにすることが可能な粉挽きユニット300の提供を可能にする。
【0099】
図33から
図35を参照して、本実施の形態における安全リブ315の形状の有用性について説明する。
図33から
図35は、ホッパー313の開口313aにおいてテストフィンガーTFの侵入を防止するため、他の形態の安全リブ315X、315Yを示している。
図33には、十字型の安全リブ315Xを示し、
図34には、二本のリブが並行に配置された安全リブ315Yをそれぞれ示している。
図35には、
図34の安全リブ315yにおいて、上方より茶葉(粉砕対象物)Tを投入した状態を示している。
【0100】
図35において、粉砕対象物Tがたとえば、茶葉の場合、安全リブ315yとホッパー313の内径の壁を介して粉砕対象物T同士が互いを支え合い、開口313aを覆うように安全リブ313yに引っかかったまま保持されることが考えられる。この引掛りによる不具合は、粉挽きユニット300の処理速度や、粉砕対象物投入時の使用性に悪影響を及ぼすものである。
【0101】
しかし、
図31および
図32に示す安全リブ315の形状によれば、粉砕対象物の侵入が妨げられ難いことから、上記したような不具合の発生を抑制することができる。
【0102】
なお、上記の説明では、安全リブ315を設ける好適な一例として、下臼350にコア355を設けた場合について説明しているが、下臼350にコア355を有さない粉挽きユニット300に対してこの安全リブ315を設けてもよい。
【0103】
上記、本実施の形態における粉砕対象物は茶葉であることが望ましいが、たとえば、穀物や乾物系の食材であっても構わない。また、今回開示されている各部位の比率に準拠しながらサイズを変更することにより、粉砕対象物の種類やサイズに応じた最適化が可能である。
【0104】
以上、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。