(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
開口枠にスライド開閉可能に配設された障子の框と、前記障子を閉じた場合に前記框と召し合わさる部分との一方の所定部位に配設され、かつ他方に配設されたクレセント受けと係合可能な皿部を有したクレセント錠であって、
前記所定部位に配設された台座部と、
前記台座部と前記所定部位との間に介在するよう配設されたベースと
を有し、
前記皿部は、前記台座部に設けた孔部及び前記ベースに設けた軸支孔を貫通する軸部によって、該軸部の中心軸回りに回動可能に前記ベースに支持されており、
前記ベースは、前記皿部に離隔した状態で該皿部に向けて突出するよう設けられた第1突部と、前記所定部位に向けて突出するよう設けられた第2突部とを備えたことを特徴とするクレセント錠。
前記第2突部は、前記第1突部が前記皿部に当接されて押圧されることで前記所定部位に当接した場合、前記皿部の移動を規制することを特徴とする請求項2に記載のクレセント錠。
前記軸部は、少なくとも周面部の一部において径方向外部に向けて突出して形成され、かつ端面が前記皿部における前記ベースと対向する面と反対側の面に接する拡径部を備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載のクレセント錠。
前記所定部位は、金属製の框、あるいは樹脂製の框の切欠部分に設置された金属製のスペーサであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載のクレセント錠。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上述した特許文献1に提案されているクレセント錠では、スペーサの端部が皿部に常時接触しているため、皿部が施解錠操作される場合に皿部がスペーサの端部と接触し、両者の間に常に摩擦力が生じて常態における皿部の操作性が良好なものとならない虞れがあった。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みて、防火性能及び操作性を良好なものとすることができるクレセント錠及び建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るクレセント錠は、開口枠にスライド開閉可能に配設された障子の框と、前記障子を閉じた場合に前記框と召し合わさる部分との一方の所定部位に配設され、かつ他方に配設されたクレセント受けと係合可能な皿部を有したクレセント錠であって、前記所定部位に配設された台座部と、前記台座部と前記所定部位との間に介在するよう配設されたベースとを有し、前記皿部は、前記台座部に設けた孔部及び前記ベースに設けた軸支孔を貫通する軸部によって、該軸部の中心軸回りに回動可能に前記ベースに支持されており、前記ベースは、前記皿部に離隔した状態で該皿部に向けて突出するよう設けられた第1突部と、前記所定部位に向けて突出するよう設けられた第2突部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、第1突部がベースにおいて皿部に離隔した状態で該皿部に向けて突出するよう設けられているので、常態においては皿部との間に間隙が形成してある。これにより、常態において皿部が回動する場合に該皿部と第1突部との間で摩擦力が生ずる虞れがないので、常態における皿部の操作を良好に行うことができる。一方、火災等により台座部が溶融して皿部と当接した場合には該皿部との間に作用する摩擦力により皿部が回動することを阻止することができるので、皿部がクレセント受けと非係合状態になることを抑制できる。また、第2突部がベースにおいて所定部位に向けて突出するよう設けられているので、第1突部が皿部に当接して押圧されたとしても該所定部位に当接して押圧による移動を規制するので、皿部が第1突部に当接した以降に所定部位に近接する移動を抑制でき、これによっても皿部がクレセント受けと非係合状態となることを抑制することができる。
【0011】
また本発明は、上記クレセント錠において、前記第1突部は、前記台座部が溶融して前記皿部が前記第1突部に近接する場合、該皿部に当接することを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、常態においては皿部との間に間隙が形成してある。これにより、常態において皿部が回動する場合に該皿部と第1突部との間で摩擦力が生ずる虞れがないので、常態における皿部の操作を良好に行うことができる。一方、火災等により台座部が溶融して皿部と当接した場合には該皿部との間に作用する摩擦力により皿部が回動することを阻止することができるので、皿部がクレセント受けと非係合状態になることを抑制することができる。
【0013】
また本発明は、上記クレセント錠において、前記第2突部は、前記第1突部が前記皿部に当接されて押圧されることで前記所定部位に当接した場合、前記皿部の移動を規制することを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、皿部が第1突部に当接した以降に所定部位に近接する移動を抑制でき、皿部がクレセント受けと非係合状態となることを抑制することができる。
【0015】
また本発明は、上記クレセント錠において、前記ベースと前記台座部とは、共通の支持部材により前記所定部位に支持されることで配設されており、前記第1突部及び前記第2突部は、前記支持部材よりも前記クレセント受けに近接する領域に設けられていることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、第1突部及び第2突部が支持部材よりもクレセント受けに近接する領域に設けてあるので、加熱による皿部の移動を最小限にすることができる。
【0017】
また本発明は、上記クレセント錠において、前記ベースは、前記軸支孔の周縁部に該軸支孔の内方に向けて突出する突出片が設けられていることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、軸支孔の周縁部に該軸支孔の内方に向けて突出する突出片が形成されているので、軸部との離間距離を十分に低減させることができ、これにより例えば火災等により台座部等が溶融してしまった場合においても軸部ががたつくことを抑制することができる。
【0019】
また本発明は、上記クレセント錠において、前記台座部は、前記孔部の周縁部において前記軸部の延在方向に沿って突出するよう略筒状に形成され、かつ外径が前記軸支孔の内径に適合するボス部を備え、前記ボス部は、前記突出片の進入を許容する凹部を備えたことを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、台座部のボス部の外径が軸支孔の内径に適合し、かつ凹部が突出片の進入を許容するので、クレセント錠の組み立て加工時において、凹部に突出片が相対的に進入するよう軸支孔にボス部を挿通させることで台座部に対するベースの位置決めを行うことができ、クレセント錠の組み立てを容易なものとすることができる。
【0021】
また本発明は、上記クレセント錠において、前記軸部は、少なくとも周面部の一部において径方向外部に向けて突出して形成され、かつ端面が前記皿部における前記ベースと対向する面と反対側の面に接する拡径部を備えたことを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、軸部に形成された拡径部の端面が皿部におけるベースと対向する面と反対側の面に接しているので、例えば火災等により台座部等が溶融してしまった場合において、該拡径部と第1突部とで皿部を挟み込むことで皿部の移動量をより低減させることができる。
【0023】
また本発明は、上記クレセント錠において、前記所定部位は、金属製の框、あるいは樹脂製の框の切欠部分に設置された金属製のスペーサであることを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、例えば火災等により樹脂製の框が溶融した場合でもクレセント錠と金属製の框との間に隙間が生ずる虞れがなく、クレセント錠ががたつくことを抑制することができる。
【0025】
また、本発明に係る建具は、上記クレセント錠を備えたことを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、常態において皿部が回動する場合に該皿部と第1突部との間で摩擦力が生ずる虞れがないので、常態における皿部の操作を良好に行うことができる。一方、火災等により台座部が溶融して皿部と当接した場合には該皿部との間に作用する摩擦力により皿部が回動することを阻止することができるので、皿部がクレセント受けと非係合状態になることを抑制できる。また、第2突部がベースにおいて所定部位に向けて突出するよう設けられているので、第1突部が皿部に当接して押圧されたとしても該所定部位に当接して押圧による移動を規制するので、皿部が第1突部に当接した以降に所定部位に近接する移動を抑制でき、これによっても皿部がクレセント受けと非係合状態となることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、防火性能及び操作性を良好なものとすることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るクレセント錠及び建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0030】
図1は、本発明の実施の形態であるクレセント錠が適用された建具、すなわち本発明の実施の形態である建具を室内側から示す外観図であり、
図2は、
図1に示した建具の横断面図である。ここで例示する建具は、開口枠10に対して2枚の障子20,30を左右方向にスライド開閉可能に配設した引き違い窓である。
【0031】
開口枠10は、上枠11、下枠12及び左右一対の縦枠13,14を四周枠組みすることによって矩形状に構成したものである。尚、開口枠10の各枠11,12,13,14は、それぞれアルミニウムやアルミニウム合金の押し出し型材によって所定の横断面形状を有するように構成してある。
【0032】
内側の障子20(以下、内障子20ともいう)及び外側の障子30(以下、外障子30ともいう)は、上框21,31、下框22,32及び左右一対の縦框23,24,33,34を四周框組みすることによって矩形状に構成した框の内部に中桟25,35を挟んで上下2枚の面材26,36を保持したものである。
【0033】
各障子20,30の各框及び中桟は、それぞれアルミニウムやアルミニウム合金の押し出し型材によって所定の横断面形状を有するように構成してある。尚、適用する障子20,30としては、必ずしも中桟を備えたものに限らない。
【0034】
これら障子20,30は、一方の縦框23,33がそれぞれ縦枠13,14に当接し、他方の縦框24,34どうしが召し合わせの位置となるように配置された場合に、開口枠10が閉じられるようにそれぞれの寸法が設定してある。
【0035】
上記建具においては、
図2に示すように、内障子20と外障子30とにより開口枠10を閉じた場合に互いに召し合わせの位置となる内障子20の縦框24(以下、召し合わせ框24ともいう)の見込み面24aの所定部位にクレセント錠40が設けてある一方、外障子30の縦框34(以下、召し合わせ框34ともいう)にクレセント受け50がクレセント錠40に対応して設けてある。
【0036】
図3は、
図2に示したクレセント錠を室内側から見た場合を示す図であり、一部を断面で示している。また、
図4は、クレセント錠を内障子の縦框側から見た場合を示す分解斜視図であり、
図5は、
図4とは反対側より見た場合を示すクレセント錠の分解斜視図である。これら
図3〜
図5に示すように、クレセント錠40は、皿部41、軸部42、台座部60及びベース70を備えて構成してある。
【0037】
皿部41は、例えばステンレス等の耐火性の金属材料から形成されるもので、略半円状の形態を成している。この皿部41には、クレセント受け50と係着可能なフランジ41aが形成してある。
【0038】
軸部42は、例えばステンレス等の耐火性の金属材料から形成された棒状体により構成してある。この軸部42は、一端がノブ43に一体的に取り付けてある。かかる軸部42は、左右方向に沿って延在しており、皿部41の異形状の挿通孔41bを挿通するよう設けてある。尚、この軸部42は、
図3において便宜上二点鎖線で示している(
図10及び
図11においても同様に二点鎖線で示す)。ノブ43は、例えば樹脂製のものであり、上記軸部42とともに凸部43aが皿部41の挿通孔41bに挿通して該挿通孔41bに嵌合することで皿部41と一体となるものである。これにより、軸部42は、皿部41と一体的に取り付けられている。
【0039】
台座部60は、例えば亜鉛合金のような低融点金属材料をダイカスト鋳造法で成形したものであり、台座取付孔61を挿通するネジ(支持部材)80が召し合わせ框24に螺合することで該所定部位に支持されて配設してある。この台座部60には、貫通孔(孔部)62が形成してあり、この貫通孔62に軸部42を貫通させている。
【0040】
図6及び
図7は、それぞれ
図3に示したベース70を示すものであり、
図6は左側から見た場合を示す斜視図であり、
図7は右側から見た場合を示す斜視図である。これら
図6及び
図7にも示すように、ベース70は、例えばステンレス等の耐火性の金属材料から形成される板状体を屈曲等させて構成したものである。
【0041】
このベース70は、台座部60と所定部位(召し合わせ框24の見込み面24a)との間に介在しており、台座取付孔61を挿通する上記ネジ80が自身のベース取付孔71を貫通して召し合わせ框24に螺合することで該所定部位に支持されて配設してある。このようなベース70の中央領域70aには、台座部60の貫通孔62に対応する個所に軸支孔72が形成してある。この軸支孔72は、貫通孔62と同様に皿部41の軸部42を貫通させるものである。これら貫通孔62及び軸支孔72を貫通する軸部42の先端は、
図8及び
図9に示すように、例えばステンレス等の耐火性の金属材料から形成された裏金81を貫通した後にかしめられている。かかる裏金81は、ベース70の軸支孔72の開口面積よりも大きいものであり、これにより、ベース70は軸部42の抜け止めとして作用するとともに、皿部41を軸部42の中心軸回りに回動可能に支持している。
【0042】
軸部42の先端に取り付けられた裏金81は、召し合わせ框24に向けて延在する係止片81aが設けてあり、かかる係止片81aにバネ82の一端が係止している。このバネ82は、他端が台座部60に設けられた係止部位63に係止しており、軸部42の中心軸回りに回動する皿部41の姿勢を施錠状態又は解錠状態に保持するためのものである。
【0043】
上記ベース70は、第1突片(第1突部)73と第2突片(第2突部)74とが設けてある。第1突片73は、ベース70の中央領域70aにおける軸支孔72の室外側の端部を左側、すなわち皿部41に向けて延在するよう屈曲させた舌片状部位である。この第1突片73は、台座部60の窪部64に進入した状態で設けてあり、その端部は皿部41と離隔している。つまり、第1突片73と皿部41との間には間隙Sが設けてある。
【0044】
第2突片74は、複数(本実施の形態では2つ)設けてあり、第1突片73の上方側及び下方側における中央領域70aの室外側端部を右側、すなわち召し合わせ框24の見込み面24a(所定部位)に向けて突出するよう形成されている。これら第2突片74は、その先端が見込み面24aに僅かに離隔している。
【0045】
これら第1突片73及び第2突片74は、ベース取付孔71を貫通するネジ80よりも室外側、すなわちクレセント受け50に近接する領域に設けてある。
【0046】
尚、
図4及び
図5中における符号44は、トリガーであり、通孔44aを有している。このトリガー44は、通孔44aを通過するトリガーピン45の一端部が皿部41のトリガー孔41cに進入して嵌合されるとともに、トリガーピン45の他端部がノブ43の係合孔43bに進入して係合されることで、トリガーピン45の中心軸回りに回動可能に配設してある。そして、トリガー44は、トリガーピン45を巻回して一端が該トリガー44に係止され、かつ他端がノブ43に係止されたトリガースプリング46により付勢されている。このようなトリガー44は、従来公知のものであり、内障子20及び外障子30が完全な閉状態にあるときのみクレセント受け50に当接し回動することで、ノブ43が施錠状態に回動可能となり、それ以外の場合では、ノブ43の回動を防止してクレセント錠40に空掛け防止機能を追加するものである。
【0047】
以上のような構成を有する建具においては、開口枠10が閉じた状態、すなわち召し合わせ框24,34が召し合わせ位置に配置された状態で皿部41を施錠操作すると、皿部41のフランジ41aがクレセント受け50に係着することで皿部41がクレセント受け50に係合し、内障子20と外障子30とが相対的にスライドすることを阻止する。その一方、皿部41を解錠操作した場合には、皿部41のフランジ41aがクレセント受け50から離脱して皿部41がクレセント受け50と非係合状態となり、内障子20と外障子30とがスライドすることを許容する。
【0048】
皿部41がクレセント受け50と係合した状態で火災等により加熱されると、クレセント錠40においては、
図10に示すように、例えば亜鉛合金のような低融点金属材料から形成される台座部60や樹脂製のノブ43が溶融し、一端が台座部60に係止されていたバネ82も離脱する。そして、加熱により内障子20及び外障子30が熱膨張等により変形することで内障子20及び外障子30をスライドさせる方向の力が作用した場合、
図11に示すように皿部41が内障子20の召し合わせ框24に近接して、ベース70の第1突片73が該皿部41に当接することになる。このように第1突片73に皿部41が当接して押圧されても第2突片74の先端が所定部位に接することで、該押圧による移動を規制することができ、これにより皿部41が第1突片73に当接した以降に所定部位に近接する移動を抑制できる。しかも第1突片73が皿部41に当接することで、両者の間に作用する摩擦力により皿部41が軸部42の中心軸回りに回動することを阻止することができる。
【0049】
このように皿部41が所定部位に近接する移動を抑制するとともに軸部42の中心軸回りに回動することを阻止することで、皿部41がクレセント受け50と非係合状態となることを抑制することができる。このようにクレセント錠40の皿部41がクレセント受け50と非係合状態となることを抑制することができるので、内障子20及び外障子30を開口枠10を閉じた状態に保持することができ、これにより気密性を確保して防火性能を良好なものとすることができる。
【0050】
そして、常態においては、第1突片73と皿部41との間には間隙Sが設けてあるので、皿部41が回動する際に第1突片73との間で摩擦力が生ずる虞れがない。よって皿部41の常態における操作性を良好なものとすることができる。
【0051】
従って、本発明の実施の形態によれば、防火性能及び操作性を良好なものとすることができる。
【0052】
上記実施の形態によれば、第1突片73及び第2突片74がネジ80よりもクレセント受け50に近接する領域に設けてあるので、加熱による皿部41の移動を最小限にすることができる。
【0053】
図12は、本発明の実施の形態のクレセント錠の変形例の要部を示す斜視図であり、
図13は、
図12に示す要部を上方から見た場合を示す説明図である。これら
図12及び
図13に例示するクレセント錠40′においては、上述したベース70の代わりにベース70′を用いてもよい。尚、以下の説明においては、上述した実施の形態の構成要素と同一の構成を有する部分には同一の符号を付してその説明を適宜省略する。
【0054】
ここで例示するベース70′は、上記ベース70と同様に、例えばステンレス等の耐火性の金属材料から形成される板状体を屈曲等させて構成したものである。このようなベース70′の中央領域70aには、軸支孔72′が形成してある。この軸支孔72′は、皿部41の挿通孔41b(
図4参照)を挿通する軸部42′を貫通させるものである。
【0055】
かかる軸支孔72′の周縁部には、該軸支孔72′の内方に向けて、つまり該軸支孔72′の径方向内部に向けて突出する複数(図示の例では4つ)の突出片72aが該軸支孔72′の周方向に沿って所定間隔毎に設けられている。これら突出片72aのうち互いに対向する突出片72a間の離間距離は、軸支孔72′を貫通する軸部42′の外径よりも僅かに大きいものである。これにより、各突出片72aの先端部分と軸部42′との間には、僅かな隙間が形成されている。
【0056】
上記ベース70′は、第1突片(第1突部)73と第2突片(第2突部)74′とが設けてある。第1突片73は、ベース70′の中央領域70aにおける軸支孔72′の室外側の端部を左側、すなわち皿部41に向けて延在するよう屈曲させた舌片状部位である。第2突片74′は、複数(本実施の形態では2つ)設けてあり、第1突片73の上方側及び下方側における中央領域70aの室外側端部を右側、すなわち上述した実施の形態と同様に召し合わせ框24の見込み面24a(所定部位)に向けて突出するよう形成されている。これら第2突片74′は、それぞれの先端に平板状の先端面74aが設けられており、各先端面74aは、見込み面24aに対して僅かに離隔して対向している。この第2突片74′の先端面74aは、ベース取付孔71を有する取付孔形成面75と同一平面上に位置している。
【0057】
これら第1突片73及び第2突片74′は、上述した実施の形態と同様に、ベース取付孔71を貫通するネジ80よりも室外側、すなわちクレセント受け50に近接する領域に設けてある。
【0058】
上記軸部42′は、上述した軸部42と同様に、例えばステンレス等の耐火性の金属材料から形成された棒状体により構成してある。この軸部42′は、一端がノブ43(
図4等参照)に一体的に取り付けてあり、該ノブ43の凸部43aが皿部41の挿通孔41bに挿通して該挿通孔41bに嵌合することで皿部41と一体的に取り付けられている。この軸部42′の先端は、上述した軸部42と同様に、裏金81(
図4等参照)を貫通した後にかしめられている。
【0059】
このような軸部42′は、
図14にも示すように拡径部42aを有している。拡径部42aは、軸部42′における皿部41の左側の領域に設けられており、該領域の周面部の一部において該軸部42′の径方向外部に向けて突出して形成されている。この拡径部42aの端面421、すなわち右側の端面は、皿部41の左側の面、すなわち皿部41の上記所定部位(召し合わせ框24の見込み面24a)と反対側の面に接している。
【0060】
このような拡径部42aが上記領域の周面部の一部に形成されているのは、当該領域においてトリガー44との干渉を抑制するためである。つまり、上記領域には、拡径部42aが形成された部分以外の部分にトリガー44との干渉を抑制するための回避部42bが形成されている。
【0061】
図15は、
図12及び
図13で図示を省略した台座部を示す斜視図である。ここで例示する台座部60′は、上述した台座部60と同様に、例えば亜鉛合金のような低融点金属材料をダイカスト鋳造法で成形したものである。この台座部60′は、台座取付孔61を挿通するネジ80(
図3参照)が召し合わせ框24に螺合することでベース70′とともに所定部位に支持されて配設されるもので、貫通孔62、係止部位63及び窪部64を備えて上記台座部60と同様の機能を有している。
【0062】
この台座部60′においては、貫通孔62の周縁部にボス部65が形成されている。ボス部65は、該周縁部において軸部42′の延在方向に沿って突出するよう略筒状に形成されており、外径が軸支孔72′の内径に適合するものである。このボス部65には、上記突出片72aの進入を許容する複数(図示の例では4つ)凹部65aが形成されている。
【0063】
このような構成を有するクレセント錠40′によれば、上述した実施の形態であるクレセント錠40が奏する作用効果に加えて以下の作用効果を奏することができる。
【0064】
すなわち、軸支孔72′の周縁部に突出片72aが形成されているので、軸部42′との離間距離を十分に低減させることができ、これにより例えば火災等により台座部60′等が溶融してしまった場合においても軸部42′ががたつくことを抑制することができる。
【0065】
上記クレセント錠40′によれば、第2突片74′に平板状の先端面74aが設けてあるので、例えば火災等により台座部60′等が溶融して第1突片73が皿部41に当接して押圧されることで第2突片74′が所定部位に当接する場合に、該所定部位との接触面積を十分に確保することができ、皿部41の回動を良好に抑制することができる。特に、第2突片74′の先端面74aが取付孔形成面75と同一平面上に位置していることで、かかる取付孔形成面75も所定部位に当接することができ、該所定部位との接触面積を更に増大させることで、皿部41の回動を抑制することができる。
【0066】
上記クレセント錠40′によれば、軸部42′に形成された拡径部42aの端面421が皿部41の所定部位と反対側の面に接しているので、例えば火災等により台座部60′等が溶融してしまった場合において、該拡径部42aと第1突片73とで皿部41を挟み込むことで皿部41の回動量をより低減させることができる。
【0067】
上記クレセント錠40′によれば、台座部60′のボス部65の外径が軸支孔72′の内径に適合し、かつ凹部65aが突出片72aの進入を許容するので、クレセント錠40′の組み立て加工時において、凹部65aに突出片72aが相対的に進入するよう軸支孔72′にボス部65を挿通させることで台座部60′に対するベース70′の位置決めを行うことができ、クレセント錠40′の組み立てを容易なものとすることができる。
【0068】
ところで、上記クレセント錠40′が配設される召し合わせ框24′が、
図16に示すように、金属製の框部分241に樹脂製の框部分242が組み合わされた複合部材である場合、召し合わせ框24′の見込み面24a′は、金属製の框部分241の見込み面24a1が樹脂製の框部分242の見込み面24a2に覆われて構成されている。
【0069】
このような構成を有する見込み面24a′にクレセント錠40′を配設する場合には、樹脂製の框部分242の見込み面24a2の所定個所を切り欠き、金属製等の耐火性材料から構成されてネジ80を貫通させる孔部91が形成されたスペーサ90を介在させて金属製の框部分241の見込み面24a1にクレセント錠40′を取り付けるようにすればよい。
【0070】
これによれば、例えば火災等により樹脂製の框部分242が溶融した場合でもクレセント錠40′と金属製の框部分241との間にスペーサ90が介在して隙間が生ずる虞れがなく、クレセント錠40′ががたつくことを抑制することができる。
【0071】
また、上記見込み面24a′にクレセント錠40′を配設する場合には、スペーサ90を用いる代わりに次のようにしてもよい。
【0072】
すなわち、
図17に示すようにベース70′の第2突片74′及びベース取付孔71の形成部位76を台座部60′よりも樹脂製の框部分242の厚み分だけ突出させる。そして、樹脂製の框部分242の見込み面24a2の所定個所を切り欠くことにより露出した金属製の框部分241の見込み面24a1に先端面74a及び取付孔形成面75を当接させてネジ80によりクレセント錠40′を取り付けるようにすればよい。
【0073】
これによれば、例えば火災等により樹脂製の框部分242が溶融した場合でもクレセント錠40′と金属製の框部分241との間に隙間が生ずる虞れがなく、クレセント錠40′ががたつくことを抑制することができる。
【0074】
以上、本発明の好適な実施の形態及び代表的な変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
【0075】
上述した実施の形態では、開口枠10に対して2枚の障子20,30を左右方向にスライド開閉可能に配設した引き違い窓を例示したが、本発明においては、1枚の障子をスライド開閉可能に配設した片引き窓に適用することもできる。この場合、クレセント錠は、障子の縦框と、開口枠を閉じた場合に縦框と召し合わさる部分とのいずれか一方の所定部位に配設してあり、クレセント受けは、いずれか他方に配設してあればよい。更に、本発明においては、引き違い窓だけでなく、開口枠に対して障子を上下方向にスライド開閉可能に配設した上げ下げ窓にも適用することができる。
【0076】
上述した実施の形態では、第2突片74が複数設けてあったが、本発明においては、第2突部は単数であってもよい。また、上述した実施の形態では、第1突片73が単数設けてあったが、本発明においては、第1突部が複数設けてあってもよい。
【0077】
上述した代表的な変形例では、突出片72aが軸支孔72′の径方向内部に向けて突出するよう軸支孔72′の周縁部に設けられていたが、本発明においては、径方向内部に向けて突出していなくてもよく、軸支孔の内方に向けて突出するよう設けられていればその突出形態は特に限定されるものではない。