特許第6242227号(P6242227)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6242227鉄/マンガン含有水の処理装置および処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242227
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】鉄/マンガン含有水の処理装置および処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/76 20060101AFI20171127BHJP
   C02F 1/72 20060101ALI20171127BHJP
   C02F 1/64 20060101ALI20171127BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20171127BHJP
   B01J 23/34 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   C02F1/76 Z
   C02F1/72 Z
   C02F1/64 A
   C02F1/44 A
   C02F1/44 D
   B01J23/34 M
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-19667(P2014-19667)
(22)【出願日】2014年2月4日
(65)【公開番号】特開2015-147155(P2015-147155A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】國東 俊朗
(72)【発明者】
【氏名】大江 太郎
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−266085(JP,A)
【文献】 特開2003−251370(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0252862(US,A1)
【文献】 特開平11−319856(JP,A)
【文献】 特開昭56−067511(JP,A)
【文献】 特開2014−233657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
C02F 1/70−1/78
B01J 21/00−38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄およびマンガンのうち少なくとも1つを含む鉄/マンガン含有水に酸化剤を添加する酸化剤添加手段と、
前記酸化剤が添加された酸化剤添加水を、LV1,000m/日〜3,600m/日の範囲の上向流で通水して酸化処理する、二酸化マンガンを含む酸化触媒が充填された酸化処理槽と、
前記酸化処理された酸化処理水を膜ろ過する膜ろ過手段と、
水を用いて前記酸化処理槽を洗浄する水洗浄手段と、
気体を用いて前記酸化処理槽を洗浄する気体洗浄手段と、
を備え
前記水洗浄手段による前記酸化処理槽の水洗浄時のLVが、前記酸化処理槽への通水時のLVと同流速であることを特徴とする鉄/マンガン含有水の処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄/マンガン含有水の処理装置であって、
前記気体洗浄手段による前記酸化処理槽の気体洗浄が行われた後、前記水洗浄手段による前記酸化処理槽の水洗浄が行われることを特徴とする鉄/マンガン含有水の処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の鉄/マンガン含有水の処理装置であって、
前記気体洗浄手段による前記酸化処理槽の気体洗浄時のLVが、10〜150m/hの範囲であることを特徴とする鉄/マンガン含有水の処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の鉄/マンガン含有水の処理装置であって、
前記気体洗浄手段は、前記酸化処理槽の触媒粒子支持層中に設置された気体洗浄管であることを特徴とする鉄/マンガン含有水の処理装置。
【請求項5】
鉄およびマンガンのうち少なくとも1つを含む鉄/マンガン含有水に酸化剤を添加する酸化剤添加工程と、
前記酸化剤が添加された酸化剤添加水を、二酸化マンガンを含む酸化触媒が充填された酸化処理槽にLV1,000m/日〜3,600m/日の範囲の上向流で通水して酸化処理する酸化処理工程と、
前記酸化処理された酸化処理水を膜ろ過する膜ろ過工程と、
水を用いて前記酸化処理槽を洗浄する水洗浄工程と、
気体を用いて前記酸化処理槽を洗浄する気体洗浄工程と、
を含み、
前記水洗浄工程における前記酸化処理槽の水洗浄時のLVが、前記酸化処理槽への通水時のLVと同流速であることを特徴とする鉄/マンガン含有水の処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の鉄/マンガン含有水の処理方法であって、
前記気体洗浄工程による前記酸化処理槽の気体洗浄が行われた後、前記水洗浄工程による前記酸化処理槽の水洗浄が行われることを特徴とする鉄/マンガン含有水の処理方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の鉄/マンガン含有水の処理方法であって、
前記気体洗浄工程における前記酸化処理槽の気体洗浄時のLVが、10〜150m/hの範囲であることを特徴とする鉄/マンガン含有水の処理方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の鉄/マンガン含有水の処理方法であって、
前記気体洗浄工程で用いられる前記酸化処理槽の気体洗浄管が触媒粒子支持層中に設置されていることを特徴とする鉄/マンガン含有水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水処理場等で用いられる、鉄およびマンガンのうち少なくとも1つを含む鉄/マンガン含有水の処理装置および処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上水源となる河川水や地下水等には溶解性鉄や溶解性マンガンが含まれている場合がある。このような鉄およびマンガンのうち少なくとも1つを含む鉄/マンガン含有水中の溶解性鉄や溶解性マンガンを除去する方法としては、接触マンガン砂ろ過法が知られている。接触マンガン砂ろ過法は、原水をマンガン砂の酸化処理槽中を下向流で通過させる間に、溶解性マンガンを酸化析出させ、マンガン砂に捕捉させる方法である。
【0003】
また、鉄/マンガン含有水の高速処理を行う方法として、鉄/マンガン含有水に塩素等の酸化剤を添加しながら、二酸化マンガンを含む酸化触媒が充填された酸化処理槽に例えば1,000m/日以上の高線速の上向流として通水して、原水中の鉄およびマンガンを酸化析出させ、この酸化処理槽の通過水を膜ろ過することにより、酸化析出物を除去する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。例えば、図2に示すように、原水槽50からの原水(鉄/マンガン含有水)に酸化剤槽58から酸化剤を添加しながら、二酸化マンガンを含む酸化触媒が充填された酸化処理槽52に例えば1,000m/日以上の高線速の上向流として通水して、原水中の鉄およびマンガンを酸化析出させ、この酸化処理槽52からの酸化処理水を膜ろ過装置54により膜ろ過し、処理水槽56に処理水を得る。この方法は、従来型の接触マンガン砂ろ過法と比べて、高線速で酸化処理槽に原水を通水できるため、設備を小型化することができるうえ、原水中の濁質による閉塞が少ないため、酸化処理槽の洗浄頻度も少なくできるという利点を持つ。
【0004】
しかし、この装置で酸化処理槽の洗浄を行う場合、例えば特許文献1に記載の発明によれば、水洗浄時の流速を平常運転時の流速を超え、2,000〜3,500m/日というさらに高流速の上向流として原水を酸化処理槽に通水しなければいけないため、所定の排水処理量に対してポンプ、配管等が過大設備となってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3786888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来装置と比べ、二酸化マンガンを含む酸化触媒が充填された酸化処理槽の水洗浄時の流速を大幅に低減することが可能な鉄/マンガン含有水の処理装置および処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、鉄およびマンガンのうち少なくとも1つを含む鉄/マンガン含有水に酸化剤を添加する酸化剤添加手段と、前記酸化剤が添加された酸化剤添加水を、LV1,000m/日〜3,600m/日の範囲の上向流で通水して酸化処理する、二酸化マンガンを含む酸化触媒が充填された酸化処理槽と、前記酸化処理された酸化処理水を膜ろ過する膜ろ過手段と、水を用いて前記酸化処理槽を洗浄する水洗浄手段と、気体を用いて前記酸化処理槽を洗浄する空気洗浄手段と、を備え、前記水洗浄手段による前記酸化処理槽の水洗浄時のLVが、前記酸化処理槽への通水時のLVと同流速であ鉄/マンガン含有水の処理装置である。
【0008】
また、前記鉄/マンガン含有水の処理装置において、前記気体洗浄手段による前記酸化処理槽の気体洗浄が行われた後、前記水洗浄手段による前記酸化処理槽の水洗浄が行われることが好ましい。
【0009】
また、前記鉄/マンガン含有水の処理装置において、前記気体洗浄手段による前記酸化処理槽の気体洗浄時のLVが、10〜150m/hの範囲であることが好ましい。
【0010】
また、前記鉄/マンガン含有水の処理装置において、前記気体洗浄手段は、前記酸化処理槽の触媒粒子支持層中に設置された気体洗浄管であることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、鉄およびマンガンのうち少なくとも1つを含む鉄/マンガン含有水に酸化剤を添加する酸化剤添加工程と、前記酸化剤が添加された酸化剤添加水を、二酸化マンガンを含む酸化触媒が充填された酸化処理槽にLV1,000m/日〜3,600m/日の範囲の上向流で通水して酸化処理する酸化処理工程と、前記酸化処理された酸化処理水を膜ろ過する膜ろ過工程と、水を用いて前記酸化処理槽を洗浄する水洗浄工程と、気体を用いて前記酸化処理槽を洗浄する気体洗浄工程と、を含み、前記水洗浄工程における前記酸化処理槽の水洗浄時のLVが、前記酸化処理槽への通水時のLVと同流速である、鉄/マンガン含有水の処理方法である。
【0012】
また、前記鉄/マンガン含有水の処理方法において、前記気体洗浄工程による前記酸化処理槽の気体洗浄が行われた後、前記水洗浄工程による前記酸化処理槽の水洗浄が行われることが好ましい。
【0013】
また、前記鉄/マンガン含有水の処理方法において、前記気体洗浄工程における前記酸化処理槽の気体洗浄時のLVが、10〜150m/hの範囲であることが好ましい。
【0014】
また、前記鉄/マンガン含有水の処理方法において、前記気体洗浄工程で用いられる前記酸化処理槽の気体洗浄管が触媒粒子支持層中に設置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、鉄/マンガン含有水の処理において、二酸化マンガンを含む酸化触媒が充填された酸化処理槽の洗浄に水と気体を併用することにより、従来装置と比べ、酸化処理槽の水洗浄時の流速を大幅に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る鉄/マンガン含有水の処理装置の一例を示す概略構成図である。
図2】従来の鉄/マンガン含有水の処理装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0018】
本発明の実施形態に係る鉄/マンガン含有水の処理装置の一例の概略を図1に示し、その構成について説明する。鉄/マンガン含有水処理装置1は、二酸化マンガンを含む酸化触媒が充填された酸化処理槽12と、膜ろ過手段としての膜ろ過装置14とを備える。鉄/マンガン含有水処理装置1は、原水槽10と、処理水槽16とを備えてもよい。
【0019】
鉄/マンガン含有水処理装置1において、原水槽10の入口には、原水配管28が接続され、原水槽1の出口と酸化処理槽12の下部入口とは、ポンプ22を介して、原水供給配管30により接続され、酸化処理槽12の上部出口と膜ろ過装置14の入口とは、酸化処理水配管32により接続され、膜ろ過装置14の出口と処理水槽16の入口とは、処理水配管34により接続され、処理水槽16の出口には処理水排出配管36が接続されている。処理水槽16の下部は、ポンプ24を介して逆洗配管38により、処理水配管34の途中に接続されている。原水供給配管30の途中には、酸化剤添加手段としての酸化剤槽18の出口がポンプ26を介して酸化剤供給配管40により接続されている。酸化処理槽12の下部には、気体洗浄手段としてのコンプレッサ20が気体供給配管42により接続されている。
【0020】
本実施形態に係る鉄/マンガン含有水の処理方法および鉄/マンガン含有水処理装置1の動作について説明する。
【0021】
原水である、鉄およびマンガンのうち少なくとも1つを含む鉄/マンガン含有水は、必要に応じて原水配管28を通して原水槽10に貯留された後、ポンプ22により原水供給配管30を通して酸化処理槽12へ送液される。この際、原水には原水供給配管30の途中で、酸化剤槽18から酸化剤がポンプ26により酸化剤供給配管40を通して添加され(酸化剤添加工程)、酸化剤添加水として酸化処理槽12に送液される。本実施形態では、酸化剤槽18、ポンプ26および酸化剤供給配管40が酸化剤添加手段として機能する。なお、原水への酸化剤の添加は、原水槽10において行われてもよいし、原水槽10と酸化処理槽12との間に別途、酸化剤混合槽を設けて、酸化剤混合槽において行われてもよい。
【0022】
酸化処理槽12において、二酸化マンガンを含む酸化触媒により触媒層が形成され、酸化剤添加水は上向流により触媒層に通水され、二酸化マンガンを含む酸化触媒により酸化処理される(酸化処理工程)。鉄/マンガン含有水に酸化剤が添加されながら、二酸化マンガンを含む酸化触媒が充填された酸化処理槽12に通水されることにより、溶存鉄および溶存マンガンが酸化析出される。
【0023】
酸化処理された酸化処理水は、酸化処理水配管32を通して膜ろ過装置14へ送液され、膜ろ過装置14において酸化析出された鉄およびマンガン等の析出物がろ過され、除去される(膜ろ過工程)。
【0024】
膜ろ過された処理水は、処理水配管34を通して処理水槽16へ送液され、貯留される。処理水槽16の処理水の少なくとも一部は、処理水排出配管36を通して系外へ排出され、膜ろ過装置14の膜の洗浄が必要となった場合、処理水の少なくとも一部は、ポンプ24により逆洗配管38を通して膜ろ過装置14へ出口側から送液されて、膜ろ過装置14の逆洗に用いられてもよい(逆洗工程)。逆洗排水は、逆洗排水出口より逆洗排水配管44を通して排出される。
【0025】
所定の時間、鉄/マンガン含有水の処理が行われた後、原水の通水が停止され、水および気体を併用して酸化処理槽12の洗浄が行われる。例えば、コンプレッサ20から空気が気体供給配管42を通して上向流により触媒層に所定の時間、通気され、気体による洗浄が行われる(気体洗浄工程)。次に、通気が停止された後、原水槽10からポンプ22により原水供給配管30を通して原水が上向流により触媒層に所定の時間、通液され、水による洗浄が行われる(水洗浄工程)。この場合、原水槽10およびポンプ22が、水洗浄手段として機能することになる。
【0026】
ここで、「水および気体を併用する」洗浄としては、上記の通り、気体洗浄工程の後、通気が停止された後、水洗浄工程が行われてもよいし、気体を水と共に触媒層に通してもよい。触媒層の洗浄効果を高める観点からは、気体洗浄工程の後、水洗浄工程が行われることが好ましい。
【0027】
水による洗浄は、上記の通り、原水を用いてもよいし、別途、水洗浄手段として水槽およびポンプ等を設け、原水以外の水を触媒層に通液してもよい。処理液量をできるだけ増加させないという観点からは、原水を用いて充填層12を水洗することが好ましい。
【0028】
気体洗浄工程において用いられる気体としては、例えば、空気、窒素等が挙げられるが、コスト等の観点から、通常は空気が用いられる。
【0029】
本実施形態に係る鉄/マンガン含有水の処理では、鉄/マンガン含有水に酸化剤を添加しながら、二酸化マンガンを含む酸化触媒の酸化処理槽12に通水することにより、溶存鉄および溶存マンガンを酸化析出させ、その酸化処理水を膜ろ過し、酸化処理槽12の洗浄に水と気体を併用する。
【0030】
酸化処理槽12の洗浄に水と気体を併用することにより、従来装置と比べて水洗浄時の流速を大幅に低減することが可能となり、洗浄排水量も少なくすることができる。二酸化マンガンを含む酸化触媒への付着物を効率的に洗浄することが可能となる。上記特許文献1では、例えば酸化処理槽への通水時の流速が1,500m/日の場合、洗浄時は2,000〜3,500m/日の高流速の上向流として原水を通水しなければならないため、所定の処理量に対してポンプ、配管等が過大設備となってしまう。一方、本実施形態に係る鉄/マンガン含有水の処理によれば、酸化処理槽12の水洗浄時のLVが、酸化処理槽12への原水の通水時と同流速であってもよい。このため、ポンプ、配管等を過大に設計しなくてもよい。また、発生する洗浄排水量も少なくなるため、洗浄排水の処理設備が小型化できるという利点もある。なお、「同流速」とは、例えば、通水時に1,000〜1,500m/日の範囲の流速で運転を行っている場合は、酸化処理槽の洗浄に水と気体を併用して、水洗浄時のLVを1,000〜1,500m/日の範囲とすればよい。
【0031】
酸化処理槽12の気体洗浄時のLVは、10〜150m/hの範囲であることが好ましく、40〜100m/hの範囲であることがより好ましい。酸化処理槽12の気体洗浄時のLVが10m/h未満であると、洗浄が不十分となる場合があり、150m/hを超えると、コンプレッサが過大となり、ランニングコストが増加する場合がある。
【0032】
気体洗浄に用いられる気体を酸化処理槽12の触媒層に通気するための洗浄管が、触媒層を支持する触媒支持砂利層等の触媒支持層中に設置されることにより、酸化処理槽12内での気体溜りの影響を低減することができ、気体による効率的な触媒の洗浄が可能となる。また、気体溜りが抑制されることにより、気体洗浄時の触媒の系外流出を抑制することも可能となる。洗浄管としては、円筒状等の管の側面、底面、上面のうち少なくともいずれかに少なくとも1つの気体吐出口を設けたもの等が用いられる。
【0033】
酸化剤としては、次亜塩素酸ナトリウム、さらし粉、過マンガン酸カリウム、二酸化塩素等が挙げられ、ランニングコスト、汎用性等の点から、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
【0034】
酸化剤の添加量は、例えば、鉄/マンガン含有水中の溶解性鉄に対しては、鉄の含有量1モルに対して0.5モル以上2モル以下の範囲、溶解性マンガンに対しては、マンガン含有量1モルに対して1モル以上4モル以下の範囲である。酸化剤の添加量が上記の値未満であると、反応が不十分となる場合があり、過剰に入れすぎると、コスト面で不利となる上に、トリハロメタン生成量が増大する場合がある。
【0035】
酸化処理槽12で用いられる二酸化マンガンを含む酸化触媒としては、例えば、二酸化マンガンが粒状、固形状となった酸化触媒や、マンガン砂等が挙げられる。また、二酸化マンガンとしては、特に制限はなく、α型、β型、ε型、γ型、λ型、δ型およびR型の結晶構造を有する二酸化マンガンが挙げられ、これらのうち、反応性等の点から、β型の結晶構造を有する二酸化マンガンが好ましい。
【0036】
酸化処理槽12では、二酸化マンガンを含む酸化触媒は上向流で原水が触媒層に通水されることにより、流動状態となり膨張床が形成される。
【0037】
二酸化マンガンを含む酸化触媒の密度は、2.8g/cm以上であることが好ましい。二酸化マンガンを含む酸化触媒の密度が2.8g/cm未満であると、高速で通水した場合に触媒が展開し、酸化処理槽12の槽高が高くなる場合がある。
【0038】
二酸化マンガンを含む酸化触媒の粒径は、0.4mm〜2.0mmの範囲であることが好ましい。二酸化マンガンを含む酸化触媒の粒径が0.4mm未満であると、触媒の展開率が上がり、粒径の小さいものが流出する場合があり、2.0mmを超えると、触媒表面積が減り、反応効率が低下する場合がある。
【0039】
酸化処理槽12における上向流による通水流速は、例えば、1,000m/日〜3,600m/日の範囲の高線速であり、1,200m/日〜2,400m/日の範囲であることが好ましい。酸化処理槽12における上向流による通水流速が1,000m/日未満であると、触媒が略均一に流動せず、片流れが生じる場合があり、3,600m/日を超えると、触媒の展開率が上がり、酸化処理槽12の槽高が高くなる場合がある。
【0040】
酸化処理槽12における反応温度は、例えば、1℃〜50℃の範囲である。
【0041】
膜ろ過装置14において用いるろ過膜は、酸化析出された鉄およびマンガン等の析出物をろ過できるものであればよく、特に制限はないが、例えば、UF膜、MF膜等が挙げられ、二酸化マンガンを含む酸化触媒から剥離した微細なマンガン粒子(例えば、0.1μm未満)等を除去できる等の点から、UF膜が好ましい。
【0042】
処理対象となる鉄/マンガン含有水は、鉄およびマンガンのうち少なくとも1つを含み、少なくともマンガンを含むことが好ましく、通常は鉄およびマンガンの両方を含む。鉄/マンガン含有水中の溶解性鉄の含有量は、例えば0.1〜10mg/Lの範囲であり、溶解性マンガンの含有量は、例えば0.01〜5mg/Lの範囲である。
【0043】
処理対象となる鉄/マンガン含有水としては、例えば、河川水、地下水、湖沼水等が挙げられる。
【0044】
本実施形態に係る鉄/マンガン含有水の処理装置および処理方法は、例えば、浄水処理場、地下水の用水処理等において好適に適用可能である。
【実施例】
【0045】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
<実施例1、比較例1〜3>
4本のカラム(φ40mm×2000mm)のそれぞれに、砂利を充填して触媒支持砂利層(高さ200mm)を形成し、さらに二酸化マンガンを含む酸化触媒を1Lずつ充填して触媒層(高さ800mm)を形成し、酸化処理槽とした。それぞれのカラムに流速1,500m/日の上向流で2週間連続通水後、通水を停止した。その後、表1に示す条件でそれぞれ酸化処理槽の洗浄を行った(実施例1、比較例1〜3)。実施例1では、空気洗浄を1分間行った後、水洗浄を4分間行い、比較例1〜3では、水洗浄4分間のみを行った。水洗浄は、原水の通水と同様にして、原水を通水し、空気洗浄は、φ10mmの円筒状管の側面にφ4mmの空気吐出口を10mm間隔で3カ所に一列で設けたものを用い、その円筒状管をカラムの触媒支持砂利層部分の直径方向に空気吐出口が下向きになるように挿入して、コンプレッサにより空気を吐出させて行った。二酸化マンガンを含む酸化触媒として、粒径(有効径)0.5mm、密度4.0g/cmのβ型の結晶構造を有する酸化マンガン粒子を用い、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを注入し、残留塩素濃度が0.4mg/Lとなるようにした。原水水質は表2に示す通りであった。洗浄の結果を表3に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
比較例1〜3のように水洗浄のみを行った場合は、水洗浄の流速を上げるほど二酸化マンガンを含む酸化触媒中に捕捉されていた鉄およびマンガンが系外に排出される結果となった。一方、実施例1のように洗浄時に空気洗浄を併用した場合は水洗浄の流速が1,500m/日でも、水洗浄のみ2,000m/日の場合(比較例2)より鉄およびママンガンの排出量は多く、水洗浄のみ3,500m/日の場合(比較例3)と同等の洗浄効果が得られる結果となった。本装置を用いることにより、従来装置と比べ、二酸化マンガンを含む酸化触媒が充填された酸化処理槽の水洗浄時の流速を大幅に低減することが可能となった。
【符号の説明】
【0051】
1 鉄/マンガン含有水処理装置、10,50 原水槽、12,52 酸化処理槽、14,54 膜ろ過装置、16,56 処理水槽、18,58 酸化剤槽、20 コンプレッサ、22,24,26 ポンプ、28 原水配管、30 原水供給配管、32 酸化処理水配管、34 処理水配管、36 処理水排出配管、38 逆洗配管、40 酸化剤供給配管、42 気体供給配管、44 逆洗排水配管。
図1
図2