特許第6242242号(P6242242)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242242
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】インターホンシステム
(51)【国際特許分類】
   H04M 9/02 20060101AFI20171127BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20171127BHJP
   G08B 29/06 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   H04M9/02
   G08B25/04 J
   G08B29/06
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-37805(P2014-37805)
(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公開番号】特開2015-162835(P2015-162835A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100908
【氏名又は名称】アイホン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077584
【弁理士】
【氏名又は名称】守谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100106699
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 弘道
(72)【発明者】
【氏名】森重 明
【審査官】 関口 明紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−128192(JP,A)
【文献】 特開平11−163908(JP,A)
【文献】 特開2004−015200(JP,A)
【文献】 特開2012−151591(JP,A)
【文献】 特開平08−084136(JP,A)
【文献】 特開昭58−103256(JP,A)
【文献】 特開2011−130346(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0304059(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B23/00−31/00
H04B1/60
3/46−3/493
17/00−17/40
H04L12/28
12/44−12/46
29/14
H04M9/00−9/10
H04W8/26
24/00
28/02
72/04
74/04
74/08
84/12
88/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主装置から延線される幹線と、前記幹線から分岐されて複数の端末器にそれぞれ接続される複数の分岐線と、前記主装置及び前記端末器間で信号伝送を行うにあたり前記幹線及び前記複数の分岐線間にそれぞれ挿入される複数の分岐器とを有するインターホンシステムであって、
前記主装置は、下り方向の信号伝送用フレームにより形成される下り伝送信号を前記幹線に送信する主装置信号送信手段と、前記端末器から上り方向の信号伝送用フレームで伝送されてくる上り伝送信号を受信する主装置信号受信手段とを備え、
前記端末器は、前記主装置から伝送されてくる前記下り伝送信号を受信する端末器信号受信手段と、前記端末器信号受信手段で受信された前記下り伝送信号を形成する前記下り方向の信号伝送用フレームのうち自端末器に割当てられる所定フレームの先頭と前記上り伝送信号を形成する前記上り方向の信号伝送用フレームに同期を持たせて当該上り伝送信号を送信する端末器側信号送信手段とを備え、
前記主装置は、前記分岐器1台あたりに予め特定されている減衰量と前記主装置において測定した減衰量をもとに前記主装置から前記各端末器までの線路長を当該端末器毎に推定する線路長推定手段と、前記主装置信号送信手段から前記下り伝送信号が送信されたタイミングを始期として前記主装置信号受信手段で前記上り伝送信号が受信されるまでの時間を前記上り方向の信号伝送用フレームのフレーム単位で遅延時間として計時する計時手段と、前記線路長推定手段の推定結果をもとに当該主装置及び前記端末器間で送受信される信号の遅延量を当該端末器毎に推定する遅延量推定手段と、前記計時手段で計時される遅延時間をもとに当該主装置及び前記複数の端末器間で送受信される前記伝送信号の遅延量を算出する遅延量演算手段と、前記遅延量演算手段における遅延量の測定値と前記遅延量推定手段における遅延量の推定結果を比較して予め定められた差分を有するときに警報発報を行う主装置制御手段とを備えることを特徴とするインターホンシステム。
【請求項2】
前記主装置制御手段は、前記遅延量演算手段の演算結果が予め定められた閾値以下の遅延量であるとき、前記演算結果と前記遅延量推定手段の推定結果との比較動作を非能動とすることを特徴とする請求項1記載のインターホンシステム。
【請求項3】
前記主装置制御手段は、前記遅延量演算手段の演算結果が予め定められた閾値以下の遅延量であるとき、前記演算結果と前記遅延量推定手段の推定結果との比較結果を問わずして前記警報発報の動作制御を非能動とする請求項1記載のインターホンシステム。
【請求項4】
前記主装置は、集合玄関に設置される集合玄関機又は当該システムを制御する制御機であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか1項記載のインターホンシステム。
【請求項5】
前記端末器は、複数の住戸の住戸内にそれぞれ設置される居室親機であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか1項記載のインターホンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターホンシステムに係り、特に、主装置から端末器までの線路(幹線)の断線や不完全接触等の状況を把握することができるインターホンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種のインターホンシステムとして、信号線で接続された親機と子機の間で音声及び映像を伝送してなるインターホンシステムであって、親機又は子機の一方は、信号線を介してテスト信号を伝送するテスト信号伝送手段を備え、親機又は子機の他方は、テスト信号を受信したときに得られる受信信号の減衰度と、当該テスト信号を受信したときに得られる伝送誤りの有無と、当該伝送誤りの発生頻度との少なくとも一つに基づいて信号線の配線状態を判定する判定手段を備え、テスト信号伝送手段は、音声及び映像の伝送に用いられる伝送周波数帯域の最高及び最低の周波数でテスト信号を送信するものが知られている(例えば、特許文献1等)。
【0003】
このインターホンシステムによれば、未接続や誤結線以外の配線状態も確認することができる。
【0004】
しかしながら、このような構成のインターホンシステムにおいては、減衰量と伝送の誤りだけで幹線経路の結線の不完全さを判断しているため、幹線が長すぎることで減衰しているのか、伝送の誤りが生じているのか、あるいは結線の不完全が原因しているのか判断ができないという難点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−128191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような難点を解決するためになされたもので、主装置から各端末器までの線路(幹線)の減衰量と遅延量等を測定することで、システム全体の線路の断線や不完全接触等の配線状況を把握することができるインターホンシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様のインターホンシステムは、主装置から延線される幹線と、幹線から分岐されて複数の端末器にそれぞれ接続される複数の分岐線と、主装置及び端末器間で信号伝送を行うにあたり幹線及び複数の分岐線間にそれぞれ挿入される複数の分岐器とを有するインターホンシステムであって、主装置は、下り方向の信号伝送用フレームにより形成される下り伝送信号を幹線に送信する主装置信号送信手段と、端末器から上り方向の信号伝送用フレームで伝送されてくる上り伝送信号を受信する主装置信号受信手段とを備え、端末器は、主装置から伝送されてくる下り伝送信号を受信する端末器信号受信手段と、端末器信号受信手段で受信された下り伝送信号を形成する下り方向の信号伝送用フレームのうち自端末器に割当てられる所定フレームの先頭と上り伝送信号を形成する上り方向の信号伝送用フレームに同期を持たせて当該上り伝送信号を送信する端末器側信号送信手段とを備え、主装置は、分岐器1台あたりに予め特定されている減衰量と主装置において測定した減衰量をもとに主装置から各端末器までの線路長を当該端末器毎に推定する線路長推定手段と、主装置信号送信手段から下り伝送信号が送信されたタイミングを始期として主装置信号受信手段で上り伝送信号が受信されるまでの時間を上り方向の信号伝送用フレームのフレーム単位で遅延時間として計時する計時手段と、線路長推定手段の推定結果をもとに当該主装置及び端末器間で送受信される信号の遅延量を当該端末器毎に推定する遅延量推定手段と、計時手段で計時される遅延時間をもとに当該主装置及び複数の端末器間で送受信される伝送信号の遅延量を算出する遅延量演算手段と、遅延量演算手段における遅延量の測定値と遅延量推定手段における遅延量の推定結果を比較して予め定められた差分を有するときに警報発報を行う主装置制御手段とを備えるものである。
【0008】
本発明の第2の態様のインターホンシステムは、第1の態様であるインターホンシステムにおいて、主装置制御手段は、遅延量演算手段の演算結果が予め定められた閾値以下の遅延量であるとき、演算結果と遅延量推定手段の推定結果との比較動作を非能動とするものである。
【0009】
本発明の第3の態様のインターホンシステムは、第1の態様であるインターホンシステムにおいて、主装置制御手段は、遅延量演算手段の演算結果が予め定められた閾値以下の遅延量であるとき、演算結果と遅延量推定手段の推定結果との比較結果を問わずして警報発報の動作制御を非能動とするものである。
【0010】
本発明の第4の態様のインターホンシステムは、第1の態様乃至第3の態様の何れかの態様であるインターホンシステムにおいて、主装置は、集合玄関に設置される集合玄関機又は当該システムを制御する制御機を備えるものである。
【0011】
本発明の第5の態様のインターホンシステムは、第1の態様乃至第3の態様の何れかの態様であるインターホンシステムにおいて、端末器は、複数の住戸の住戸内にそれぞれ設置される居室親機を備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のインターホンシステムによれば、主装置と各端末器間の減衰量、遅延量および端末器数をシステム独自で測定・収集することで、当該減衰量、遅延量および端末器数の測定値から線路(幹線)の長さや分岐器数を推定し、異常値があれば線路(幹線)が長すぎるのか、結線が原因なのかを判別し、さらに線路(幹線)の状況を常時監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例におけるインターホンシステムの全体構成を示すブロック図。
図2】本発明の一実施例における主装置のブロック図。
図3】本発明の一実施例における端末器のブロック図。
図4】本発明の一実施例におけるマンション等の集合住宅に設置されるインターホンシステムの構成図で、分図(a)は主装置に5台の分岐器・端末器を接続したインターホンシステムの構成図、分図(b)は分図(a)における分岐器の拡大図。
図5】本発明の一実施例における信号伝送用フレームの説明図で、分図(a)は、主装置から端末器に送信される下り方向の信号伝送用フレームの説明図、分図(b)は、端末器から主装置に送信される上り方向の信号伝送用フレームの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のインターホンシステムを適用した最良の実施の形態例について、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施例におけるマンション等の集合住宅に設置されるインターホンシステムの全体構成を示すブロック図である。
【0016】
本発明のインターホンシステムは、集合玄関機としての主装置1から延線される平衡線路(ペア線)からなる幹線L1と、幹線から分岐されて複数の居室親機としての端末器2a、2b、・・・、2nにそれぞれ接続される複数の平衡線路(ペア線)からなる分岐線L2a、L2b・・・、L2nと、主装置1及び端末器2a、2b、・・・、2n間で信号伝送を行うにあたり幹線L1及び分岐線L2a、L2b、・・・、L2n間にそれぞれ挿入される複数の分岐器3a、3b、・・・、3nとを備えている。
【0017】
なお、以下の実施例では、複数の端末器2a、2b、・・・、2n、複数の分岐器3a、3b、・・・、3n、複数の分岐線L2a、L2b、・・・、L2nのそれぞれを単一のものとして区別するときは、説明を簡単にするため、単に、「端末器2」、「分岐器3」、「分岐線L2」として説明する。
【0018】
図2は、本発明の一実施例における主装置のブロック図を示している。
【0019】
同図において、主装置1は、下り方向の信号伝送用フレームにより形成される下り伝送信号を幹線L1に送信する主装置信号送信手段としての主装置信号送信回路10と、端末器2から上り方向の信号伝送用フレームで伝送されてくる上り伝送信号を受信する主装置信号受信手段としての主装置信号受信回路11と、分岐器1台あたりに予め特定されている減衰量と主装置1において測定した減衰量をもとに主装置1から各端末器2までの線路長を当該端末器2毎に推定する線路長推定手段としての線路長推定回路12と、主装置信号送信回路10から下り伝送信号が送信されたタイミングを始期として主装置信号受信回路11で上り伝送信号が受信されるまでの時間を上り方向の信号伝送用フレームのフレーム単位で計時する計時手段としてのタイマ13aと、線路長推定回路12の推定結果をもとに当該主装置1及び端末器2間で送受信される信号の遅延量を当該端末器2毎に推定する遅延量推定手段としての遅延量推定回路13と、遅延量推定回路13の推定結果をもとに当該主装置1及び複数の端末器2間で送受信される伝送信号の遅延量を算出する遅延量演算手段としての遅延量演算回路14と、遅延量演算回路14の演算結果と遅延量推定回路13の推定結果を比較して予め定められた差分を有するときに警報発報を行う主装置制御手段としての主装置制御回路15と、スピーカやモニタ等を有する発報・表示部16とを備えている。
【0020】
ここで、主装置制御回路15は、遅延量演算回路14の演算結果が予め定められた閾値以下の遅延量であるとき、演算結果と遅延量推定回路13の推定結果との比較動作を非能動とする機能や、遅延量演算回路14の演算結果が予め定められた閾値以下の遅延量であるとき、演算結果と遅延量推定回路13の推定結果との比較結果を問わずして警報発報の動作制御を非能動とする機能を有している。
【0021】
図3は、本発明の一実施例における端末器のブロック図を示している。
【0022】
同図において、複数の端末器2は、それぞれ同様の構成とされ、それぞれ主装置1から伝送されてくる下り伝送信号を受信する端末器信号受信手段としての端末器信号受信回路20と、端末器信号受信回路20で受信された下り伝送信号を形成する下り方向の信号伝送用フレームのうち自端末器に割当てられる所定フレームの先頭と上り伝送信号を形成する上り方向の信号伝送用フレームに同期を持たせて当該上り伝送信号を送信する端末器側信号送信手段としての端末器側信号送信回路21と、端末器2の各部を制御する端末器制御回路22と、呼出通話機能や映像機能を有する各種機能部23とを備えている。
【0023】
図4は、本発明の一実施例におけるマンション等の集合住宅等に設置されるインターホンシステムの構成図で、同図(a)は、主装置1から延線される幹線L1に第1〜第5の分岐器3a〜3eを離間して配設し、当該分岐器3a〜3eにそれぞれ第1〜第5の分岐線L2a〜L2eを介して第1〜第5の端末器2a〜2eを接続したインターホンシステムの構成図である。
【0024】
同図(a)において、主装置1とこれに隣接する第1の分岐器3aの幹線L1の長さは20mとされ、隣接する分岐器3a〜3e間の相互の長さも20mとされている。また、各分岐器3a〜3eとこれに対応する端末器2a〜2eに接続される分岐器L2の長さはそれぞれ10mとされている。
【0025】
ここで、この実施例においては、主装置1から端末器2までの線路(幹線L1および分岐線L2)の標準減衰量(幹線L1および分岐線L2に予め特定されている減衰量)は「0.1dB/m」とされている。また、主装置1から端末器2までの線路(幹線L1および分岐線L2)の標準遅延量(幹線L1および分岐線L2に予め特定されている遅延量)は「5ns/m」とされている。
【0026】
次に、同図(b)に示すように、分岐器3の上流側の幹線L1が接続される端子をTa、下流側の幹線L1が接続される端子をTb、分岐線L2が接続される端子をTcとすると、分岐器3の1台に予め特定されているTa、Tb間の送信経路Aの減衰量は「0.2dB」とされ、遅延量は「0ns」とされている。また、分岐器3の1台に予め特定されているTa、Tc間の受信経路Bの減衰量は、「6.0dB」とされ、遅延量は「500ns」とされている。
【0027】
図5は、本発明の一実施例における信号伝送用フレームの説明図で、分図(a)は、主装置1から端末器2に送信される下り方向の信号伝送用フレームの説明図、分図(b)は、端末器2から主装置1に送信される上り方向の信号伝送用フレームの説明図を示している。
【0028】
同図(a)において、主装置1から端末器2に伝送される下り方向の伝送信号として、例えば、フレーム毎に伝送される信号の一形態として、その信号を構成する複数のスロットのうち、所定のスロットに、集合玄関機(不図示)から特定の端末器への呼出しがあることを示す呼出データ、集合玄関機の撮像機能で生成される映像データ、集合玄関機の通話機能で生成される通話データがそれぞれ組込まれている。
【0029】
また、同図(b)において、端末器2から主装置1に伝送される上り方向の伝送信号として、例えば、フレーム毎に伝送される信号の一形態として、その信号を構成する複数のスロットのうち、所定のスロットに、集合玄関機から特定の端末器への呼出しに当該端末器が応答したことを示す応答データ、特定の端末器の通話機能で生成される音声データがそれぞれ組込まれている。
【0030】
次に、このように構成された本発明の一実施例におけるインターホンシステムの具体的な動作について説明する。なお、本発明の実施例において、住戸玄関に居る来訪者が玄関子機(不図示)を使用して所定の呼出操作を行い、この玄関呼出しを検出した居室親機としての端末器2の信号処理部(不図示)の制御による所定の呼出報知動作、及び居住者が端末器2の操作部(不図示)を使用して所定の応答操作を行い来訪者との間で通話を成立させる動作はそれぞれ、従来のインターホンシステムと同様であることから詳細な説明を省略する。
【0031】
このように構成されたインターホンシステムにおいては、幹線L1と当該幹線L1から分岐された複数の分岐線L2とを含む伝送線路と、各分岐線L2の先端に接続された複数台の端末器2とを備え、これら複数台の端末器2と主装置1間で次のようにして伝送線路を介して信号伝送が行われる。
【0032】
先ず、図2に示す主装置1の主装置信号送信回路10から、図5(a)に示す下り方向の信号伝送用フレームにより形成される下り伝送信号を幹線L1に送信すると、当該下り伝送信号は分岐器3および分岐線L2を経由して各端末器2に伝送される。当該下り伝送信号が各端末器2の端末器信号受信回路20で受信されると、図5(a)に示す下り伝送信号を形成する下り方向の信号伝送用フレームのうち自端末器に割当てられる所定フレームの先頭に図5(b)に示す上り伝送信号を形成する上り方向の信号伝送用フレームのタイミングを合わせて(同期を持たせて)、端末器信号送信回路21から上り伝送信号が送信される。
【0033】
ここで、各端末器2は、当初は上り方向の信号伝送用フレームが衝突するものの主装置1と各端末器2間で繰り返し伝送を行い、主装置1に自端末器のフレーム番号を割り当てることで、それ以降は衝突しないで上り方向の伝送信号を送信することが可能になる。
【0034】
このようにして、全端末器2のフレーム割り当てが完了すれば、主装置1において、幹線L1に接続されている全端末器2の設置数を把握することができ、ひいては分岐器3の設置数も把握することができる。
【0035】
このようにして形成された上り伝送信号は、前述の下り伝送信号と逆の伝送経路を経由して主装置1に伝送され、当該主装置1の主装置信号受信回路11で受信される。
【0036】
次に、主装置1から例えば最遠端の端末器2である第5の端末器2eまでの線路の減衰量を測定する方法について説明する。
【0037】
先ず、線路の減衰量は、端末器2において、送信データ(下り伝送信号)の受信電圧を測定することにより得られる。
【0038】
ここで、図4に示すインターホンシステムにおいては、第1〜第5の端末器2a〜2eそれぞれにおいて、主装置1からの線路の減衰量を測定したところ、第5の端末器2eの減衰量が最大であり、その値は「17.8dB」であったことから、第5の端末器2eが最遠端であると推測される。
【0039】
次に、前述の線路の減衰量の測定値から、主装置1から第5の端末器2eまでの線路長を推定する方法について説明する。
【0040】
先ず、第5の端末器2eで測定した減衰量(あるいは受信電圧)は、第5の端末器2eの端末器信号送信回路21から前述の上り伝送信号と同様の伝送経路を経由して主装置1の主装置信号受信回路11へ伝送される。
【0041】
主装置1で受信した当該減衰量(測定値)は、主装置制御回路15を経由して線路長推定回路12へ送信される。
【0042】
ここで、当該端末器2は複数の分岐器3を経由して接続されているので、前述の減衰量(測定値)には複数の分岐器3の減衰量(前述の分岐器1台あたりに特定されている「6.0dB」)が必ず含まれていることになる。また、最遠端の端末器2であれば、分岐器3の数は通信路を確立した端末器2の数と同じであるから、図4に示す実施例では5台(第1〜第5の分岐器3a〜3e)となる。
【0043】
そうすると、主装置1から第5の端末器2eまでの線路の減衰量は、線路長推定回路12において、次のようにして推定することができる。
【0044】
すなわち、主装置1から第5の端末器2eまでの線路の減衰量=17.8dB(測定した線路の減衰量)−6.0dB(分岐器1台あたりに予め特定されている受信経路Bの減衰量)−0.2dB(分岐器1台あたりに予め特定されている送信経路Aの減衰量)×4台=11dBと推定することができる。
【0045】
ここで、主装置1から端末器2までの線路(幹線L1および分岐線L2)の標準減衰量(特定値)は、前述のように「0.1dB/m」であることから、前述の主装置1から最遠端の端末器2である第5の端末器2eまでの線路長は「110m」と推定することができる。
【0046】
なお、主装置1から他の端末器2(第1〜第4の端末器2a〜2d)までの線路長も、減衰量の大きな順に分岐器台数を1台ずつ減じて計算することにより、同様にして推定することができる。
【0047】
次に、主装置1及び端末器2間で送受信される信号の遅延量を推定する方法について説明する。
【0048】
先ず、前述の線路長推定回路12において推定された主装置1から第5の端末器2eまでの線路長の推定結果(110m)が主装置制御回路15を介して遅延量推定回路13へ送信される。
【0049】
そうすると、当該遅延量推定回路13において、線路の標準遅延量(特定値)は前述のように「5ns/m」であることから、主装置1及び第5の端末器2e間で送受信される信号の遅延量は「550ns」と推定することができる。
【0050】
一方、分岐器3の1台あたりに予め特定されている遅延量は前述のように「500ns」であることから、遅延量推定回路13において、遅延量が合計(550ns+500ns)されて「1050ns」となる。
【0051】
なお、主装置1及び他の端末器2(第1〜第4の端末器2a〜2d)間で送受信される信号の遅延量も同様にして推定することができる。
【0052】
次に、主装置1及び端末器2間で送受信される信号の遅延量を算出する方法について説明する。
【0053】
先ず、前述のように、遅延量推定回路13に内蔵されたタイマ13a(例えば高速の内部クロックでのカウント)により、主装置信号送信回路10から下り伝送信号(図5(a)参照)が送信されたタイミングを始期として主装置信号受信回路11で上り伝送信号(図5(b)参照)が受信されるまでの時間が上り方向の信号伝送用フレームのフレーム単位で計時される。
【0054】
ここで、前述のフレーム割り当てが完了した後では、主装置1側において、下り方向の信号伝送用フレームと上り方向の信号伝送用フレームとの開始タイミングの差を測定することで、図5(b)に示すように、主装置1と端末器2の往復分の遅延量(t1〜t5)を測定することが可能となる。
【0055】
なお、遅延量が1フレームを超えると測定が困難となる可能性があるが、これを解決するためにはフレーム毎にシーケンス番号を付与するか、あるいは数フレーム毎に遅延測定用のフラグを付与することにより、1フレームを超えた遅延も測定することができる。
【0056】
このように、第5の端末器2eから上り伝送信号が同期して送信されるため、主装置1に伝送された信号には主装置1から第5の端末器2e間の往復の遅延量が加わっていることから、主装置1において遅延時間t5を計時することで遅延量(時間)を算出することができる。なお、図4に示す実施例において、主装置1および第5の端末器2e間で送受信される伝送信号の遅延量(時間)を測定したところ、その値は「1050ns」であった。この測定された遅延量(時間)は、前述の遅延量推定回路13において推定した遅延量の合計値と一致していることが判る。
【0057】
なお、主装置1及び他の端末器2(第1〜第4の端末器2a〜2d)間で送受信される信号の遅延量(時間)も同様にして測定することができる。
【0058】
次に、遅延量演算回路14における主装置制御回路15の制御について説明する。
【0059】
先ず、前述のようにしてタイマ13aによって上り方向の信号伝送用フレームのフレーム単位で計時され遅延量t5(時間)は主装置制御回路15を介して遅延量演算回路14へ送信される。
【0060】
ここで、主装置1および第5の端末器2e間で送受信される伝送信号の遅延量(時間)の測定値は「1050ns」であり、この測定した遅延量(時間)は前述の遅延量推定回路13において推定された主装置1から第5の端末器2eまでの遅延量の推定結果(1050ns)と一致することから、遅延量演算回路14において、「差分なし」の演算結果が得られる。
【0061】
このようにして、遅延量演算回路14において、遅延量演算回路14における演算結果と遅延量推定回路13における推定結果とが比較される。
【0062】
ここで、不完全な結線がある場合は、減衰量は増大するものの遅延量は微小な増加にとどまるため、遅延量推定回路13における遅延量の合計値と遅延量の測定値とが不一致となる。
【0063】
よって、この場合は、遅延量演算回路14における演算結果が予め定められた差分を有するものとして、主装置制御回路15の制御により、発報・表示部16から警報発報が行われる。なお、他の端末器(2a〜2d)における主装置制御回路15の制御も同様に行われる。
【0064】
以上の説明から明らかなように、本発明のインターホンシステムによれば、主装置1と各端末器2の間の伝送信号の減衰量と遅延量をそれぞれ独立して測定し、減衰量から端末器2までの線路(幹線)の線路長を推定することができ、推定された線路長から遅延量を推定し、推定した遅延量と測定した遅延量の比較により、線路(幹線)の断線や不完全接触等の伝送線路の異常を常時監視することが可能となる。
【0065】
また、主装置1と各端末器2間の減衰量と遅延量、端末器数をシステム独自で測定・収集することで、当該減衰量と遅延量、端末器数の測定値から線路(幹線)の長さや分岐器数を推定し、異常値があれば線路(幹線)が長すぎるのか、不完全な結線が原因なのかを判別し、さらに伝送線路の状況を常時監視することができる。
【0066】
また、継続して定期的に減衰量や遅延量や測定し、設置時点の減衰量の値や遅延量の値と比較することで、線路(幹線)の劣化の程度や何れの分岐器が故障したのか等についても自動的に監視することができる。
【0067】
次に、本発明における主装置制御回路15の付加機能について説明する。
【0068】
先ず、本発明における主装置制御回路1は、遅延量演算回路14の演算結果が予め定められた閾値以下(例えば525nS以下)の遅延量であるとき、演算結果と遅延量推定回路13の推定結果との比較動作を非能動とする機能と、遅延量演算回路14の演算結果が予め定められた閾値以下(例えば525nS以下)の遅延量であるとき、演算結果と遅延量推定回路13の推定結果との比較結果を問わずして発報・表示部16から警報発報の動作制御を非能動とする機能を有している。
【0069】
ここで、測定した減衰量が一定の閾値以下(通常の通信に使用するレベルよりもはるかに低い減衰、例えば6.5dB以下の減衰)であった場合には、例えば伝送線路が非常に短く、線路長の異常や結線不良が存在しないと推定される。この場合は、エラー報知が行なわれないか、あるいは遅延量演算回路14を動作させず比較動作が行なわれないことにより、誤報回避が可能となる。
【0070】
以上、述べたように、本発明のインターホンシステムにおいては、特定の実施の形態をもって説明してきたが、この形態に限定されるものでなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られた如何なる構成のインターホンシステム、例えば、次のようなインターホンシステムであっても採用できることはいうまでもないことである。
【0071】
第1に、前述の実施例においては、主装置を集合玄関に設置される集合玄関機として使用する場合について述べているが、集合玄関機に当該システムを制御する制御機を接続し、当該制御機を主装置として使用しても本発明と同等の効果を奏する。
【0072】
第2に、制御機を複数の住戸内にそれぞれ設置される居室親機、端末器を玄関子機と置き換えることで、戸建インターホンにも適用できる。
【0073】
第3に、幹線経路に分配器が配置されている場合には、主装置1を分配器と置き換えることで、本発明のインターホンシステムを適用することができる。
【0074】
第4に、前述の実施例においては、タイマ13aを遅延量推定回路13に内蔵させているが、当該タイマ13aは、例えば遅延量演算回路14や主装置制御回路15に内蔵させてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1・・・主装置
10・・・主装置信号送信手段(主装置信号送信回路)
11・・・主装置信号受信手段(主装置信号受信回路)
12・・・線路長推定手段(線路長推定回路)
13・・・遅延量推定手段(遅延量推定回路)
13a・・・タイマ(計時手段)
14・・・遅延量演算手段(遅延量演算回路)
15・・・主装置制御手段(主装置制御回路)
2(2a、2b、・・・、2n)・・・端末器
20・・・端末器信号受信手段(端末器信号受信回路)
21・・・端末器側信号送信手段(端末器側信号送信回路)
22・・・端末器制御回路
3(3a、3b、・・・、3n)・・・分岐器
L1・・・幹線
L2(L2a、L2b、・・・、L2n)・・・分岐線
図1
図2
図3
図4
図5