【実施例】
【0016】
図1は、電源線2に過大な電圧が印加されたときに、過大な電圧が印加されないように保護する必要がある保護対象回路(本実施例ではIC回路)4のための保護回路6を示している。保護回路6は、電源線2と接地線12の間に保護対象回路4と並列に接続されている。電源線2に過大な電圧が印加されたときには保護回路6が動作して電源線2と接地線12を接続するように動作することによって、保護対象回路4に過大な電圧が印加されるのを防止する。
【0017】
図1の参照願号は下記を示している。
E1:pnpトランジスタのエミッタ領域。E2:npnトランジスタのエミッタ領域。
B1:pnpトランジスタのベース領域。 B2:npnトランジスタのベース領域。
C1:pnpトランジスタのコレクタ領域。C2:npnトランジスタのコレクタ領域。
A3:ツェナーダイオードのアノード領域。C3:ツェナーダイオードのカソード領域。
2:電源線。4:IC回路等の保護対象回路。6:保護回路。8:抵抗。10:抵抗。12:接地線。
pnpトランジスタのベース領域B1と、npnトランジスタのコレクタ領域C2を共通部材で構成し、pnpトランジスタのコレクタ領域C1と、npnトランジスタのベース領域B2と、ツェナーダイオードのアノード領域A3を共通部材で形成すれば、保護回路6の回路を実現することができる。
【0018】
図2は、保護回路6の回路を実現する半導体装置の断面構造を示す。図示の明瞭化のためにハッチを省略する。p
+型エミッタ領域E1と、n型ベース領域B1(n型ウェル領域20)と、p型コレクタ領域C1(p型ウェル領域22)によって、pnpトランジスタが構成される。n型コレクタ領域C2(n型ウェル領域20)と、p型ベース領域B2(p型ウェル領域22)と、n
+型エミッタ領域E2によって、npnトランジスタが構成される。pnpトランジスタとnpnトランジスタによってサイリスタが構成される。また、p型アノード領域A3(p型ウェル領域22)と、n型カソード領域C3によってツェナーダイオードが構成される。
【0019】
pnpトランジスタのn型ベース領域B1と、npnトランジスタのn型コレクタ領域C2は共通部位(n型ウェル領域20)で構成される。pnpトランジスタのp型コレクタ領域C1と、npnトランジスタのp型ベース領域B2と、ツェナーダイオードのp型アノード領域A3は共通部位(p型ウェル領域22)で構成される。なお参照番号14は電源線2とn型ウェル領域20をオーミック接触させるn
+型領域であり、参照番号16は接地線12とp型ウェル領域22をオーミック接触させるp
+型領域であり、参照番号18はLOCOS酸化膜である。n型ウェル領域20は抵抗8を兼用し、p型ウェル領域22は抵抗10を兼用する。
図2の半導体装置によって
図1の保護回路6の回路が得られる。
【0020】
図2に示すように、ツェナーダイオードのカソード領域C3は、p型ウェル領域22内に形成されており、p型ウェル領域22自体がツェナーダイオードのアノード領域A3となる。アノード領域を得るためにp
+型領域を形成することがない。
図2の構造はシンプルであって、製造しやすい。
図2に示すように、ツェナーダイオードのカソード領域となるn型領域C3は、p型ウェル領域22内にあって、半導体基板の表面に臨む範囲に形成されている。また、半導体基板の表面に臨む範囲に形成されている他の高濃度拡散領域14、E1,E2,16よりも深く形成されている。
【0021】
他の高濃度拡散領域14、E1,E2,16は、半導体基板の表面に形成する図示しない金属膜とのオーミック接触を得るための領域であり、表面における不純物濃度が高い必要がある。そのために不純物を浅く注入してから拡散している。
ツェナーダイオードのカソード領域となるn型領域C3も、半導体基板の表面に形成する図示しない金属膜とのオーミック接触を得るための領域であり、表面における不純物濃度が高い必要がある。そのために不純物を浅く注入してから拡散する必要がある。しかしそれだけだと、ツェナーダイオードが降伏して電流が流れる際に、n型領域C3の周囲に位置するp型ウェル領域22の表面近傍に電流が集中してp型ウェル領域22で損傷が発生することがある。
そこで、ツェナーダイオードのカソード領域となるn型領域C3については、不純物を浅く注入する工程と、不純物を深く注入する工程を経て製造される。浅い注入レベルと深い注入レベルから拡散してn型領域C3を形成するので、n型領域C3の表面における不純物濃度が高く(そのためにカソード電極とオーミック接触する)、しかも深部にまで達している。
【0022】
図2の半導体装置によると、電源線2にサージ電圧が生じてツェナーダイオードのアノード領域A3とカソード領域C3の間をサージ電流が流れる際には、電流が半導体基板の表面近傍の浅いレベルに集中せず、深いレベルにまで分散して流れる。電流集中現象の発生が防止され、半導体装置の損傷が防止される。
【0023】
図3は、n型領域C3の拡大断面を示す。×印は拡散前の不純物注入レベルを示している。(1)は注入レベルが一つだけの場合を示す。この場合、n型領域C3が浅すぎ、電流集中現象が発生する。(2)は、浅いレベルと深いレベルに注入してから拡散した場合を示す。n型領域C3が深くまで達する。これによって電流集中が緩和される。(3)は、深いレベルの注入範囲を浅いレベルの注入範囲よりも狭めた場合を示す。この場合、n型領域C3の輪郭を構成する曲線の半径が大きくなり、電流の分散が一層に促進される。電流集中がよく防止される。
【0024】
図3の(2)(3)では、浅いレベルに注入する不純物濃度が濃く、拡散処理した後の表面における不純物濃度が濃い。表面に形成する図示しないカソード電極とオーミック接触する。
図3の(2)(3)では、浅いレベルに注入する不純物濃度と、深いレベルに注入する不純物濃度が一致している。これに代えて、浅いレベルに注入する不純物濃度を濃くし、深いレベルに注入する不純物濃度を薄くしてもよい。また、カソード電極とオーミック接触する濃度が維持される条件下で浅いレベルに注入する不純物濃度を薄くし、深いレベルに注入する不純物濃度を濃くしてもよい。
図3の(2)(3)から拡散したn型領域の不純物濃度を、半導体基板の表面から深さ方向に観察すると、表面に近い浅いレベルで不純物濃度が極大となり、それより深いレベルにおいて不純物濃度が再び極大となる。不純物濃度が極大となるレベルが2以上あれば、電流集中を抑制することができる。
【0025】
図4は、ツェナーダイオードのカソード領域となるn型領域C3を、複数個に分割した実施例を示している。個々の領域を平面視したときの形状は、多角形(頂点数が3以上であればよい)、円形、長円形、楕円等のいずれであってもよい。ツェナーダイオードのカソード領域となるn型領域C3を複数個に分割すると、電流集中が効果的に抑制される。
【0026】
図5は、保護回路6にサージ電圧が加わったときの電圧と電流の関係を示す。
グラフ40は、保護回路6をサイリスタのみで構成し、ツェナーダイオードを利用しない場合の特性を示す。この場合、サージ電圧がVB1となるまで保護回路6が動作せず、保護対象回路4を保護しきれない場合が生じる。
グラフ42は、ツェナーダイオードを利用するものの、ツェナーダイオードのカソード領域となるn型領域C3が浅い(他の高濃度拡散領域14、E1,E2,16と同一深さ)の場合の特性を示す。ツェナーダイオードを利用することで、保護回路6が動作を始めるときの電圧をVB3にまで低下させることができる。保護対象回路4を保護するのに必要な電圧に調整することができる。ツェナーダイオードのカソード領域となるn型領域C3が浅い場合、電流が集中して半導体装置が破壊されることがある。またホールド電圧がVH2にまで低下してしまう。保護回路6の動作速度を上げるためには、ホールド電圧が高い方が好ましい。
グラフ44は、ツェナーダイオードのカソード領域となるn型領域C3が深い(2以上のレベルに注入してから拡散したために、他の高濃度拡散領域14、E1,E2,16より深い)の場合の特性を示す。ツェナーダイオードを利用することで、保護回路6が動作を始めるときの電圧をVB3にまで低下させることができる。ツェナーダイオードのカソード領域となるn型領域C3が深い場合、電流集中が発生せず、半導体装置が破壊されることがない。またホールド電圧はVH3となる。VH2<VH3である。n型領域C3が深い場合、保護回路6の動作速度が高速化できる。
【0027】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。