(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ジカルボン酸成分(A)が、さらに、非フルオレン系アレーンジカルボン酸、シクロアルカンジカルボン酸、ビ又はトリシクロアルカンジカルボン酸及びそれらのエステル形成性誘導体から選択された少なくとも1種で構成された他のジカルボン酸成分(A2)を含む請求項1又は2記載の複屈折調整剤。
ジオール成分(B)が、アルカンジオール、シクロアルカンジオール、ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン、ジ(ヒドロキシアルキル)架橋シクロアルカン、ジ(ヒドロキシシクロアルキル)アルカン、ジ(ヒドロキシアルキル)オキサスピロアルカン、ジ(ヒドロキシアルキル)アレーン及び9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類から選択された少なくとも1種である請求項1〜8のいずれかに記載の複屈折調整剤。
ジオール成分(B)が、脂肪族ジオールと、脂環族ジオールおよび芳香脂肪族ジオールから選択された少なくとも1種の非脂肪族ジオールとを、前者/後者(モル比)=50/50〜1/99の割合で含む請求項8又は9記載の複屈折調整剤。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の複屈折調整剤(複屈折低減剤、リタデーション調整剤、リタデーション低減剤)は、特定のジカルボン酸成分とジオール成分とを重合成分とするポリエステル樹脂で構成されている。
【0029】
[ジカルボン酸成分]
ジカルボン酸成分(ジカルボン酸成分(A)などということがある)は、フルオレン系ジカルボン酸成分を少なくとも含んでいる。
【0030】
(フルオレン系ジカルボン酸成分)
フルオレン系ジカルボン酸成分(又はフルオレン骨格を有するジカルボン酸成分、フルオレン系ジカルボン酸成分(A1)、ジカルボン酸成分(A1)などということがある)としては、フルオレン系ジカルボン酸(フルオレン骨格を有するジカルボン酸)およびそのエステル形成性誘導体が含まれる。なお、エステル形成性誘導体としては、例えば、エステル{例えば、アルキルエステル[例えば、メチルエステル、エチルエステルなどの低級アルキルエステル(例えば、C
1−4アルキルエステル、特にC
1−2アルキルエステル]など}、酸ハライド(酸クロライドなど)、酸無水物などが挙げられる。エステル形成性誘導体は、モノエステル(ハーフエステル)又はジエステルであってもよい。フルオレン系ジカルボン酸成分は、ポリエステル樹脂の製造方法に応じて選択できるが、溶融重合法では、フルオレン骨格を有するジカルボン酸、フルオレン骨格を有するジカルボン酸エステルなどを使用する場合が多い(以下、同じ)。
【0031】
フルオレン系ジカルボン酸としては、フルオレンを構成する2つのベンゼン環に2つのカルボキシル基含有基が置換した化合物[例えば、フルオレンジカルボン酸(例えば、2,7−ジカルボキシフルオレンなど)]であってもよいが、通常、フルオレンの9位に2つのカルボキシル基含有基が置換した化合物であってもよい。このような化合物としては、例えば、9−ジカルボキシアルキルフルオレン[例えば、9−(1,2−ジカルボキシエチル)フルオレンなど]、ジ(9−カルボキシアルキルフルオレニル)アルカン[例えば、ジ(9−カルボキシエチル−9−フルオレニル)メタン、1,2−ジ(9−カルボキシエチル−9−フルオレニル)エタンなど]などであってもよく、特に、下記式(1a)(1b)で表される化合物を好適に使用できる。このような化合物は、後述の特定のジオール成分との組み合わせにおいて、複屈折の低減効果が高いようである。
【0033】
(式中、X
1a,X
1bは、同一又は異なって、二価の炭化水素基、R
1はカルボキシル基でない置換基、nは0〜4の整数、kは0〜4の整数を示す。)
上記式(1a)(1b)において、基X
1a,X
1bで表される二価の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基{例えば、アルキレン基(又はアルキリデン基、例えば、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、トリメチレン基、プロピレン基、プロピリデン基、テトラメチレン基、1,2−ブタンジイル基、エチルエチレン基、ブタン−2−イリデン基、1,2−ジメチルエチレン基、ペンタメチレン基、ペンタン−2,3−ジイル基などのC
1−8アルキレン基、好ましくはエチレン基、プロピレン基、1,2−ブタンジイル基などのC
2−4アルキレン基)、シクロアルキレン基(例えば、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、メチルシクロへキシレン基、シクロへプチレン基などのC
5−10シクロアルキレン基、好ましくはC
5−8シクロアルキレン基、さらに好ましくはC
5−6シクロC
2−4アルキレン基)、アルキレン(又はアルキリデン)−シクロアルキレン基[又はシクロアルキレン−アルキレン基、例えば、メチレン−シクロへキシレン基、エチレン−シクロへキシレン基、エチレン−メチルシクロへキシレン基、エチリデン−シクロへキシレン基などのC
1−6アルキレン−C
5−10シクロアルキレン基(好ましくはC
1−4アルキレン−C
5−8シクロアルキレン基)などの脂環式炭化水素基、ビ又はトリシクロアルキレン基(ノルボルナン−ジイル基など)などの橋架環式炭化水素基など]など}、芳香族炭化水素基{例えば、アリーレン基(フェニレン基、ナフタレンジイル基などのC
6−10アリーレン基)、アルキレン(又はアルキリデン)−アリーレン基[又はアリーレン−アルキレン基、例えば、メチレン−フェニレン基、エチレン−フェニレン基、エチレン−メチルフェニレン基、エチリデンフェニレン基などのC
1−6アルキレン−C
6−20アリーレン基(好ましくはC
1−4アルキレン−C
6−10アリーレン基、好ましくはC
1−2アルキレン−フェニレン基)などの芳香脂肪族炭化水素基など]、フェニルエチレン基などのC
6−10アリールC
2−4アルキレン基など}が例示できる。なお、アルキレン−シクロアルキレン基およびアルキレン−アリーレン基とは、−R
a−R
b−(式中、R
aは、式(1a)(1b)においてカルボキシル基又はフルオレンの9位に結合したアルキレン基、R
bはシクロアルキレン基又はアリーレン基を示す)で表される基を示す。なお、2つの基X
1aは、同一又は異なる基であってもよい。
【0034】
これらのうち、二価の脂肪族炭化水素基、特に、置換基を有していてもよいアルキレン基が好ましい。X
1a及びX
1bで表されるアルキレン基は、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、2−エチルエチレン基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基などのC
1−8アルキレン基が例示できる。好ましいアルキレン基は直鎖状又は分岐鎖状C
1−6アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基などのC
1−4アルキレン基)である。
【0035】
アルキレン基の置換基としては、例えば、アリール基(フェニル基など)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基など)などが例示できる。
【0036】
X
1aは直鎖状又は分岐鎖状C
2−4アルキレン基(例えば、エチレン基、プロピレン基)である場合が多く、X
1bは直鎖状又は分岐鎖状C
1−3アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基)である場合が多い。置換基を有するアルキレン基X
1aは、例えば、1−フェニルエチレン基、1−フェニルプロパン−1,2−ジイル基などであってもよい。
【0037】
係数nは0〜4の整数から選択でき、通常、0〜2、好ましくは0又は1であってもよい。
【0038】
前記式(1a)(1b)において、基R
1としては、カルボキシル基でない置換基であればよく、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基などのC
6−10アリール基)など]、アシル基(例えば、メチルカルボニル、エチルカルボニル、ペンチルカルボニルなどのアルキルカルボニル基)などが挙げられ、特に、アルキル基などである場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC
1−12アルキル基(例えば、C
1−8アルキル基、特にメチル基などのC
1−4アルキル基)などが例示できる。なお、kが複数(2〜4)である場合、複数の基R
1は互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、異なるベンゼン環に置換した基R
1は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、基R
1の結合位置(置換位置)は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2位、7位、2および7位などが挙げられる。好ましい置換数kは、0〜1、特に0である。なお、2つの置換数kは、同一又は異なっていてもよい。
【0039】
代表的なフルオレン系ジカルボン酸成分としては、前記式(1a)において、X
1aが二価の脂肪族炭化水素基である化合物、例えば、9,9−ビス(カルボキシアルキル)フルオレン類[例えば、9,9−ビス(カルボキシメチル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシエチル)フルオレン、9,9−ビス(1−カルボキシエチル)フルオレン、9,9−ビス(1−カルボキシプロピル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシプロピル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシ−1−メチルエチル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシ−1−メチルプロピル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシブチル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシ−1−メチルブチル)フルオレン、9,9−ビス(5−カルボキシペンチル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC
1−6アルキル)フルオレンなど]、9,9−ビス(カルボキシシクロアルキル)フルオレン類[例えば、9,9−ビス(カルボキシシクロヘキシル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC
5−8シクロアルキル)フルオレンなど]などが挙げられる。
【0040】
式(1a)で表される好ましい化合物は、X
1aがC
2−6アルキレン基である化合物、例えば、9,9−ビス(2−カルボキシエチル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシプロピル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC
2−6アルキル)フルオレン、及びこれらのエステル形成性誘導体などを含む。前記式(1b)で表される好ましい化合物は、n=0であり、かつX
1bがC
1−6アルキレン基である化合物、例えば、9−(1−カルボキシ−2−カルボキシエチル)フルオレン、n=1であり、かつX
1bがC
1−6アルキレン基である化合物、例えば、9−(2−カルボキシ−3−カルボキシプロピル)フルオレンなどの9−(カルボキシ−カルボキシC
2−6アルキル)フルオレン、及びこれらのエステル形成性誘導体などを含む。フルオレン系ジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0041】
これらのうち、好ましいフルオレン系ジカルボン酸成分には、式(1a)で表される化合物、例えば、9,9−ビス(カルボキシアルキル)フルオレン類[例えば、9,9−ビス(カルボキシエチル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシプロピル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC
2−4アルキル)フルオレン、特に9,9−ビス(カルボキシエチル)フルオレン]およびそのエステル形成性誘導体から選択された少なくとも1種(9,9−ビス(カルボキシアルキル)フルオレン成分)などが含まれる。
【0042】
なお、ジカルボン酸成分(A)全体に対するフルオレン系ジカルボン酸成分(A1)の割合は、例えば、10モル%以上(例えば、20モル%以上)、好ましくは30モル%以上(例えば、40モル%以上)、さらに好ましくは50モル%以上(例えば、60モル%以上)であってもよく、70モル%以上(例えば、80モル%以上)であってもよい。
【0043】
(他のジカルボン酸成分)
ジカルボン酸成分(A)は、フルオレン系ジカルボン酸成分のみで構成してもよく、複屈折調整機能を損なわない範囲であれば、他のジカルボン酸成分(非フルオレン系ジカルボン酸成分、フルオレン系ジカルボン酸成分でないジカルボン酸成分、他のジカルボン酸成分(A2)、ジカルボン酸成分(A2)などということがある)を含んでいてもよい。
【0044】
他のジカルボン酸成分(A2)としては、脂肪族ジカルボン酸成分、脂環族ジカルボン酸成分、芳香族ジカルボン酸成分等が挙げられる。これらのうち、脂肪族ジカルボン酸成分や脂環族ジカルボン酸成分は、複屈折調整機能の観点から好適に使用できる。また、脂環族ジカルボン酸成分は、耐熱性の観点からも好適である。さらに、芳香族ジカルボン酸成分は、屈折率や耐熱性の観点から好適である。なお、芳香族ジカルボン酸成分は、通常、複屈折を上昇させやすい場合が多いが、フルオレン系ジカルボン酸成分(さらには後述のジオール成分)と組み合わせることで、意外なことに、低複屈折化できるため、好適である。
【0045】
脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アルカンジカルボン酸成分[例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、これらのエステル形成性誘導体(前記誘導体など)などのC
2−12アルカンジカルボン酸成分など]などが挙げられる。脂肪族ジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0046】
脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロアルカンジカルボン酸(例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などのC
5−10シクロアルカン−ジカルボン酸、好ましくは、C
5−8シクロアルカン−ジカルボン酸など)、ビ又はトリシクロアルカンジカルボン酸(例えば、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸などのビ又はトリC
5−10シクロアルカン−ジカルボン酸)、これらのエステル形成性誘導体(前記誘導体など)などが挙げられる。脂環族ジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0047】
芳香族ジカルボン酸成分(非フルオレン系芳香族ジカルボン酸成分)としては、アレーンジカルボン酸、例えば、単環式芳香族ジカルボン酸成分、多環式芳香族ジカルボン酸成分(非フルオレン系多環式芳香族ジカルボン酸成分)に大別できる。
【0048】
単環式芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アルキルイソフタル酸(例えば、4−メチルイソフタル酸などのC
1−4アルキルテレフタル酸)などのC
6−10アレーンジカルボン酸、これらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。単環式芳香族ジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0049】
これらの単環式芳香族ジカルボン酸成分のうち、特に、バランスよく高屈折率および低複屈折(さらには高耐熱性)をポリエステル樹脂に付与するという観点からは、テレフタル酸成分(テレフタル酸及び/又はそのエステル形成性誘導体)が好ましい。本発明では、通常、複屈折を上昇させると考えられているテレフタル酸成分(テレフタル酸、テレフタル酸ジメチルなど)を用いても、フルオレン系ジカルボン酸成分と組み合わせることで、ポリエステル樹脂をより一層効率よく低複屈折化できる。特に、正の複屈折(固有複屈折)を有する樹脂(例えば、ポリエステル樹脂など)の複屈折調整剤(負の方向に低減する調製剤)として用いると、複屈折を負の方向に低減する効果が高い。
【0050】
また、非対称の単環式芳香族ジカルボン酸成分[例えば、イソフタル酸成分(イソフタル酸及び/又はそのエステル形成性誘導体)、アルキルイソフタル酸成分、フタル酸成分など、特にイソフタル酸成分]を好適に使用してもよい。非対称の単環式芳香族ジカルボン酸成分とフルオレン系ジカルボン酸成分とを組み合わせることで、複屈折を効率よく低減できる。
【0051】
多環式芳香族ジカルボン酸成分としては、多環式芳香族ジカルボン酸、そのエステル形成性誘導体(非フルオレン系多環式芳香族ジカルボン酸成分)が挙げられる。多環式芳香族ジカルボン酸としては、多環式芳香族骨格としてフルオレン骨格を有しないジカルボン酸、例えば、縮合多環式芳香族ジカルボン酸[例えば、ナフタレンジカルボン酸(例えば、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの異なる環に2つのカルボキシル基を有するナフタレンジカルボン酸;1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸などの同一の環に2つのカルボキシル基を有するナフタレンジカルボン酸)、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸などの縮合多環式C
10−24アレーン−ジカルボン酸、好ましくは縮合多環式C
10−16アレーン−ジカルボン酸、さらに好ましくは縮合多環式C
10−14アレーン−ジカルボン酸]、アリールアレーンジカルボン酸[例えば、ビフェニルジカルボン酸(2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸など)などのC
6−10アリールC
6−10アレーン−ジカルボン酸]、ジアリールアルカンジカルボン酸[例えば、ジフェニルアルカンジカルボン酸(例えば、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸などのジフェニルC
1−4アルカン−ジカルボン酸など)などのジC
6−10アリールC
1−6アルカン−ジカルボン酸]、ジアリールケトンジカルボン酸[例えば、ジフェニルケトンジカルボン酸(4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸など)などのジC
6−10アリールケトン−ジカルボン酸]などが挙げられる。多環式芳香族ジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0052】
これらの多環式芳香族ジカルボン酸成分のうち、特に、バランスよく高屈折率および低複屈折(さらには高耐熱性)をポリエステル樹脂に付与するという観点からは、縮合多環式芳香族ジカルボン酸成分(特に、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸エステルなどのナフタレンジカルボン酸成分)が好ましい。本発明では、他のジカルボン酸成分(A2)として、通常、複屈折を上昇させると考えられている縮合多環式芳香族ジカルボン酸成分を使用しても、ポリエステル樹脂の複屈折を効率よく低減できる。特に、縮合多環式芳香族ジカルボン酸を反応させたポリエステル樹脂を正の複屈折(固有複屈折)を有する前記樹脂に添加すると、複屈折を有効に低減できる。
【0053】
なお、単環式芳香族ジカルボン酸成分と多環式芳香族ジカルボン酸成分とを組み合わせてもよい。
【0054】
芳香族ジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0055】
特に、他のカルボン酸成分(A2)として、非フルオレン系芳香族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸などのC
6−10アレーン−ジカルボン酸など)、脂環族ジカルボン酸(例えば、C
5−8シクロアルカン−ジカルボン酸、ビ又はトリC
5−10シクロアルカン−ジカルボン酸など)及びそれらのエステル形成性誘導体などが好ましい。
【0056】
他のジカルボン酸成分(A2)は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0057】
フルオレン系ジカルボン酸成分(A1)と他のジカルボン酸成分(A2)とを組み合わせる場合、これらの割合は、前者/後者(モル比)=99.5/0.5〜10/90(例えば、99/1〜15/85)、好ましくは98/2〜20/80(例えば、97/3〜25/75)、さらに好ましくは95/5〜30/70(例えば、95/5〜35/65)、特に93/7〜40/60(例えば、90/10〜45/55)程度であってもよく、通常99/1〜50/50(例えば、95/5〜60/40、好ましくは90/10〜70/30)程度であってもよい。
【0058】
特に、他のジカルボン酸成分(A2)を芳香族ジカルボン酸成分で構成する場合、フルオレン系ジカルボン酸成分(A1)と他のジカルボン酸成分(A2)との割合は、前者/後者(モル比)=99.5/0.5〜30/70(例えば、99/1〜35/65)、好ましくは98/2〜40/60(例えば、97/3〜45/55)、さらに好ましくは95/5〜50/50(例えば、95/5〜55/45)程度であってもよく、通常99/1〜50/50(例えば、95/5〜60/40、好ましくは90/10〜70/30)程度であってもよい。
【0059】
[ジオール成分]
ジオール成分(ジオール成分(B)ということがある)としては、特に限定されず、脂肪族ジオール(又は脂肪族ジオール成分)、脂環族ジオール(又は脂環族ジオール成分)、芳香族ジオール(又は芳香族ジオール成分)などのいずれであってもよい。脂肪族ジオールや脂環族ジオールは、特に、複屈折調整機能の観点から好適に使用できる。また、脂環族ジオールは、耐熱性の観点からも好適である。さらに、芳香族ジオールは、屈折率や耐熱性の観点から好適である。なお、芳香族ジオールは、通常、複屈折を上昇させやすい場合が多いが、フルオレン系ジカルボン酸成分と組み合わせることで、意外なことに、低複屈折化できるため、好適である。
【0060】
脂肪族ジオール(鎖状脂肪族ジオール)としては、例えば、アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC
2−10アルカンジオール、好ましくはC
2−6アルカンジオール、さらに好ましくはC
2−4アルカンジオール)、ポリアルカンジオール(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールなどのジ又はトリC
2−4アルカンジオールなど)などの飽和脂肪族ジオール(特に、エチレングリコール、1,2−ブタンジオールなど)が挙げられる。脂肪族ジオールは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0061】
脂環族ジオールとしては、例えば、シクロアルカンジオール(例えば、1,4−シクロヘキサンジオールなどのC
4−10シクロアルカンジオール、好ましくはC
5−8シクロアルカンジオール)、架橋(橋架環式)シクロアルカンジオール(例えば、ノルボルナンジオール、アダマンタンジオールなどのビ又はトリシクロアルカンジオール)、ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン[例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC
1−4アルキル)C
4−10シクロアルカン、好ましくはジ(ヒドロキシC
1−3アルキル)C
5−8シクロアルカン、さらに好ましくはジ(ヒドロキシC
1−2アルキル)C
5−6シクロアルカンなど]、ジ(ヒドロキシアルキル)架橋(橋架環式)シクロアルカン[例えば、トリシクロデカンジメタノール(トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカンジメタノール)、アダマンタンジメタノール、ノルボルナンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC
1−4アルキル)ビ又はトリC
4−10シクロアルカン、好ましくはジ(ヒドロキシC
1−3アルキル)ビ又はトリC
5−10シクロアルカン、さらに好ましくはジ(ヒドロキシC
1−2アルキル)ビ又はトリC
6−10シクロアルカン]、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加体(後述の化合物など)の水添物{例えば、ジ(ヒドロキシシクロアルキル)アルカン[例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンなどのジ(ヒドロキシC
4−10シクロアルキル)C
1−10アルカン、好ましくはジ(ヒドロキシC
5−8シクロアルキル)C
1−4アルカンなど]など}、ヘテロシクロアルカン骨格を有するジオール{例えば、オキサモノ又はポリシクロアルカンジオール(イソソルビドなど)、オキサスピロ環骨格を有するジオール[例えば、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどのジ(ヒドロキシアルキル)オキサスピロアルカン(例えば、ジ(ヒドロキシC
1−10アルキル)テトラオキサスピロアルカン、好ましくはジ(ヒドロキシC
1−6アルキル)テトラオキサスピロアルカン)など]}などが挙げられる。
【0062】
脂環族ジオールの中でも、シクロアルカンジオール(例えば、C
5−8シクロアルカンジオールなど)、ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン[例えば、ジ(ヒドロキシC
1−3アルキル)C
5−8シクロアルカン]、ジ(ヒドロキシアルキル)架橋シクロアルカン[例えば、ジ(ヒドロキシC
1−3アルキル)ビ又はトリC
5−10シクロアルカン]、ジ(ヒドロキシシクロアルキル)アルカン[例えば、ジ(ヒドロキシC
5−8シクロアルキル)C
1−4アルカン]、ジ(ヒドロキシアルキル)オキサスピロアルカン[例えば、ジ(ヒドロキシC
1−6アルキル)テトラオキサスピロアルカン]などが好ましい。特に、ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン、ジ(ヒドロキシアルキル)架橋シクロアルカンは、フルオレン系ジカルボン酸成分との組み合わせにおいて、複屈折を負の方向に低減する効果が高いようである。そのため、これらの成分は、少量で負の方向に複屈折を大きく低減することができ、複屈折調整剤を構成するジオール成分(B)として好ましい。
【0063】
脂環族ジオールは単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0064】
芳香族ジオールとしては、例えば、ジヒドロキシアレーン(ハイドロキノン、レゾルシノールなど)、ビスフェノール類{ビフェノール、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類[例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールAなどのビス(ヒドロキシフェニル)C
1−10アルカン]、ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類;9,9−(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類など]など}、芳香脂肪族ジオール{例えば、ジ(ヒドロキシアルキル)アレーン[例えば、ベンゼンジメタノール(1,4−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノールなど)などのジ(ヒドロキシC
1−4アルキル)C
6−10アレーン;9,9−ビス(ヒドロキシアルキル)フルオレン(例えば、9,9−ビス(3−ヒドロキシプロピル)フルオレンなど)など]、ジ(9−ヒドロキシアルキルフルオレニル)アルカン[例えば、ジ[9−(3−ヒドロキシプロピル)−9−フルオレニル)メタン、1,2−ジ[9−(3−ヒドロキシプロピル)−9−フルオレニル]エタンなど]など]、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加体[例えば、2,2−ジ[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン(ビスフェノールA1モルに対して2モルのエチレンオキサイドが付加した付加体)などの前記例示のビスフェノール類のC
2−4アルキレンオキサイド付加体など]、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類など}が挙げられる。芳香族ジオールは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0065】
9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類[9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン骨格を有する化合物]は、下記式(2)で表される化合物であってもよい。
【0067】
(式中、環Zは芳香族炭化水素環、R
2はアルキレン基を示し、R
3はカルボキシル基でない置換基を示し、mは1以上の整数、pは0以上の整数であり、R
1およびkは前記に同じ。)
上記式(2)において、環Zで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、縮合多環式芳香族炭化水素環[例えば、縮合二環式炭化水素環(例えば、インデン、ナフタレンなどのC
8−20縮合二環式炭化水素環、好ましくはC
10−16縮合二環式炭化水素環)、縮合三環式炭化水素環(例えば、アントラセン、フェナントレンなど)などの縮合二乃至四環式炭化水素環など]が挙げられる。なお、2つの環Zは同一の又は異なる環であってもよく、通常、同一の環であってもよい。好ましい環Zには、ベンゼン環およびナフタレン環が含まれ、特に、ベンゼン環であってもよい。なお、基R
1およびkは、好ましい態様を含め、前記式(1)における場合と同じである。
【0068】
また、前記式(1)において、基R
2で表されるアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、1,2−ブタンジイル基、テトラメチレン基などのC
2−6アルキレン基、好ましくはC
2−4アルキレン基、さらに好ましくはC
2−3アルキレン基が挙げられる。なお、mが2以上であるとき、アルキレン基は異なるアルキレン基で構成されていてもよく、通常、同一のアルキレン基で構成されていてもよい。また、2つの芳香族炭化水素環Zにおいて、基R
2は同一であっても、異なっていてもよく、通常同一であってもよい。
【0069】
オキシアルキレン基(OR
2)の数(付加モル数)mは、1以上であればよく、例えば、1〜10(例えば、1〜6)、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜2、特に1であってもよい。なお、置換数mは、異なる環Zに対して、同一であっても、異なっていてもよい。
【0070】
また、前記式(2)において、ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ基[すなわち、−O−(R
2O)
m−H]の置換位置は、特に限定されず、環Zの適当な置換位置に置換していればよい。例えば、ヒドロキシル基含有基は、環Zがベンゼン環である場合、フェニル基の2〜6位に置換していればよく、好ましくは4位に置換していてもよい。また、ヒドロキシル基含有基は、環Zが縮合多環式炭化水素環である場合、縮合多環式炭化水素環において、フルオレンの9位に結合した炭化水素環とは別の炭化水素環(例えば、ナフタレン環の5位、6位など)に少なくとも置換している場合が多い。
【0071】
環Zに置換する置換基R
3としては、通常、非反応性置換基、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのC
1−12アルキル基、好ましくはC
1−8アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロへキシル基などのC
5−8シクロアルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのC
6−10アリール基など)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC
6−10アリール−C
1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基などのC
1−8アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(シクロへキシルオキシ基などのC
5−10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基などのC
6−10アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(ベンジルオキシ基などのC
6−10アリール−C
1−4アルキルオキシ基)などの基−OR[式中、Rは炭化水素基(前記例示の炭化水素基など)を示す。];アルキルチオ基(メチルチオ基などのC
1−8アルキルチオ基など)などの基−SR(式中、Rは前記と同じ。);アシル基(アセチル基などのC
1−6アシル基など);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC
1−4アルコキシ−カルボニル基など);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など);ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジアルキルアミノ基など)などが挙げられる。
【0072】
好ましい基R
3としては、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、C
1−6アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C
5−8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、C
6−10アリール基)、アラルキル基(例えば、C
6−8アリール−C
1−2アルキル基)など]、アルコキシ基(C
1−4アルコキシ基など)などが挙げられる。さらに好ましい基R
3は、アルキル基[C
1−4アルキル基(特にメチル基)など]、アリール基[例えば、C
6−10アリール基(特にフェニル基)など]などであり、特に、アリール基であるのが好ましい。
【0073】
なお、同一の環Zにおいて、pが複数(2以上)である場合、基R
3は互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、2つの環Zにおいて、基R
3は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、好ましい置換数pは、0〜8、好ましくは0〜4(例えば、0〜3)、さらに好ましくは0〜2であってもよい。なお、異なる環Zにおいて、置換数pは、互いに同一又は異なっていてもよく、通常同一であってもよい。
【0074】
具体的な9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類(又は前記式(2)で表される化合物)には、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類[又は9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン骨格を有する化合物]、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類[又は9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン骨格を有する化合物]などが含まれる。
【0075】
9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類には、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC
2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC
1−4アルキル−ヒドロキシC
2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC
6−10アリール−ヒドロキシC
2−4アルコキシフェニル)フルオレン}などの9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン類(前記式(2)において、mが1である化合物);9,9−ビス(ヒドロキシジアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシジC
2−4アルコキシフェニル)フルオレン}などの9,9−ビス(ヒドロキシポリアルコキシフェニル)フルオレン類(前記式(2)において、mが2以上である化合物)などが含まれる。
【0076】
また、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類としては、前記9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類に対応し、フェニル基がナフチル基に置換した化合物、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシプロポキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC
2−4アルコキシナフチル)フルオレン}などの9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン類などが含まれる。
【0077】
これらの9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類のうち、特に、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)C
2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ−アリールアリール)フルオレン類{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(アリール−ヒドロキシ(ポリ)C
2−4アルコキシフェニル)フルオレン}が好ましい。
【0078】
ジオール成分(B)は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0079】
これらのジオール成分(B)のうち、脂肪族ジオール(例えば、アルカンジオールなど)、脂環族ジオール[例えば、ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン、ジ(ヒドロキシアルキル)架橋シクロアルカンなど]、芳香脂肪族ジオール[例えば、ジ(ヒドロキシアルキル)アレーン)など]などが好ましい。
【0080】
これらの中でも、耐熱性などの観点からは、脂環族ジオール、芳香脂肪族ジオールが好ましい。特に、屈折率や耐熱性の観点からは、芳香脂肪族ジオール[例えば、ジ(ヒドロキシアルキル)アレーン、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類など]などが好ましい。そのため、ジオール成分(B)は、特に、これらのジオール成分で少なくとも構成してもよい。
【0081】
なお、ジオール成分(B)は、重合性の観点などから、少なくとも脂肪族ジオール(例えば、アルカンジオールなど)で構成してもよい。この場合、ジオール成分(B)は、脂肪族ジオールのみで構成することもできるし、前記のように屈折率や耐熱性などの観点から、非脂肪族ジオール[例えば、脂環族ジオール、芳香族ジオール(芳香脂肪族ジオールなど)など]と組み合わせてもよい。
【0082】
さらに、脂環族ジオール及び芳香脂肪族ジオールは、フルオレン系ジカルボン酸成分(A1)との組み合わせにおいて、複屈折を負の方向に低減する効果が高いようであり、複屈折調整剤(複屈折を負の方向に低減する調整剤)として好ましい。
【0083】
好ましい態様では、ジオール成分(B)は、シクロアルカンジオール、ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン、ジ(ヒドロキシアルキル)架橋シクロアルカン、ジ(ヒドロキシシクロアルキル)アルカン、ジ(ヒドロキシアルキル)オキサスピロアルカン、ジ(ヒドロキシアルキル)アレーン、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類から選択された少なくとも一種[例えば、シクロアルカンジオール、ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン、ジ(ヒドロキシアルキル)アレーン)]と、必要によりアルカンジオールとを含む。また、ジオール成分(B)は脂肪族ジオール(アルカンジオール)であっても、複屈折調整剤(複屈折を負の方向に低減する調整剤)として機能する。
【0084】
脂肪族ジオールと非脂肪族ジオールとを組み合わせる場合、これらの割合は、前者/後者(モル比)=99/1〜1/99(例えば、97/3〜3/97)、好ましくは95/5〜5/95(例えば、93/7〜7/93)、さらに好ましくは90/10〜10/90(例えば、85/15〜15/85)程度であってもよい。特に、脂肪族ジオールと非脂肪族ジオールとの割合は、前者/後者(モル比)=90/10〜1/99(例えば、好ましくは80/20〜3/97)、好ましくは70/30〜5/95(例えば、60/40〜7/93)、さらに好ましくは50/50〜10/90(例えば、40/60〜15/85)程度であってもよく、通常50/50〜1/99(例えば、40/60〜3/97、好ましくは30/70〜5/95、さらに好ましくは25/75〜10/90)程度であってもよい。
【0085】
なお、ジオール成分(B)を非脂肪族ジオール[脂環族ジオール及び/又は芳香族ジオール]で構成する場合、ジオール成分(B)全体に対する非脂肪族ジオールの割合は、例えば、10モル%以上(例えば、20モル%以上)、好ましくは30モル%以上(例えば、40モル%以上)、さらに好ましくは50モル%以上(例えば、60モル%以上)であってもよく、70モル%以上(例えば、75モル%以上)であってもよい。
【0086】
[ポリエステル樹脂]
ポリエステル樹脂(複屈折調整剤)は、ジカルボン酸成分(A)とジオール成分(B)とを重合成分とするポリエステル樹脂である。そして、このポリエステル樹脂は、複屈折調整剤として使用でき、正の複屈折、負の複屈折のいずれであってもよいが、通常、絶対値の小さい正の複屈折であるか、又は負の複屈折を有しており、特に負の複屈折を有している場合が多い。このようなポリエステル樹脂は、正の複屈折を有する樹脂の複屈折を負の方向に低減するための複屈折調整剤(複屈折低減剤)として好適に使用できる。
【0087】
ポリエステル樹脂の固有複屈折の値は、+40×10
−4以下(例えば、−150×10
−4〜+30×10
−4)程度の範囲から選択でき、例えば、+10×10
−4以下(例えば、−120×10
−4〜+5×10
−4)、好ましくは負の値[例えば、−5×10
−4以下(例えば、−100×10
−4〜−10×10
−4)]、さらに好ましくは−10×10
−4以下(例えば、−90×10
−4〜−15×10
−4)程度であってもよく、−20×10
−4以下(例えば、−30×10
−4以下、好ましくは−40×10
−4以下)にすることもできる。
【0088】
また、ポリエステル樹脂は、比較的高い屈折率を有している場合が多く、複屈折調整剤として用いても、樹脂の屈折率を比較的高いレベルで維持でき、樹脂の種類によっては屈折率を向上することもできる。例えば、ポリエステル樹脂の屈折率は、20℃、波長589nmにおいて、1.53以上(例えば、1.54以上)の範囲から選択でき、1.55以上(例えば、1.55〜1.75)、好ましくは1.56以上(例えば、1.56〜1.72)程度であってもよく、1.57以上[例えば、1.58〜1.75、好ましくは1.59以上(例えば、1.595〜1.72)、さらに好ましくは1.6以上(例えば、1.605〜1.7)、特に1.61以上(例えば、1.615〜1.68)、特に好ましくは1.62以上(例えば、1.625〜1.66)]とすることもできる。
【0089】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上(例えば、60℃以上)の範囲から選択でき、例えば、70℃以上(例えば、70〜200℃程度)、好ましくは75℃以上(例えば、75〜180℃)程度であってもよく、80℃以上[例えば、80〜180℃、好ましくは85℃以上(例えば、90〜160℃程度)、さらに好ましくは100℃以上(例えば、105〜150℃程度)、特に110℃以上(例えば、115〜140℃程度)]とすることもできる。
【0090】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、1000〜500000(例えば、3000〜300000)程度の範囲から選択でき、例えば、5000〜200000、好ましくは10000〜150000、さらに好ましくは15000〜100000程度であってもよく、通常20000〜100000(例えば、30000〜70000)程度であってもよい。
【0091】
なお、ポリエステル樹脂は、慣用の方法により製造できる。例えば、ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分(A)とジオール成分(B)とを反応(重合又は縮合)させることにより製造できる。重合方法(製造方法)としては、使用するジカルボン酸成分の種類などに応じて適宜選択でき、慣用の方法、例えば、溶融重合法(ジカルボン酸成分とジオール成分とを溶融混合下で重合させる方法)、溶液重合法、界面重合法などが例示できる。好ましい方法は、溶融重合法である。
【0092】
また、反応において、ジカルボン酸成分(A)やジオール成分(B)などの使用量(使用割合)は、前記と同様の範囲から選択できるが、必要に応じて各成分などを過剰に用いて反応させてもよい。例えば、ジオール成分において、脂肪族ジオール成分をポリエステル樹脂における脂肪族ジオール成分由来の骨格の所望の割合よりも過剰に使用してもよい。また、反応は、重合方法に応じて、適宜溶媒の存在下又は非存在下で行ってもよい。
【0093】
反応は、触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、ポリエステル樹脂の製造に利用される種々の触媒、例えば、金属触媒などが使用できる。金属触媒としては、例えば、アルカリ金属(ナトリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウムなど)、遷移金属(マンガン、亜鉛、カドミウム、鉛、コバルトなど)、周期表第13族金属(アルミニウムなど)、周期表第14族金属(ゲルマニウムなど)、周期表第15族金属(アンチモンなど)などを含む金属化合物が用いられる。金属化合物としては、アルコキシド、有機酸塩(酢酸塩、プロピオン酸塩など)、無機酸塩(ホウ酸塩、炭酸塩など)、金属酸化物などが例示できる。これらの触媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。触媒の使用量は、例えば、ジカルボン酸成分1モルに対して、0.01×10
−4〜100×10
−4モル、好ましくは0.1×10
−4〜40×10
−4モル程度であってもよい。
【0094】
また、反応は、必要に応じて、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤など)などの添加剤の存在下で行ってもよい。
【0095】
反応は、通常、不活性ガス(窒素、ヘリウムなど)雰囲気中で行うことができる。また、反応は、減圧下(例えば、1×10
2〜1×10
4Pa程度)で行うこともできる。反応温度は、重合法に応じて選択でき、例えば、溶融重合法における反応温度は、150〜300℃、好ましくは180〜290℃、さらに好ましくは200〜280℃程度であってもよい。特に、非フルオレン系ジカルボン酸成分とフルオレン系ジカルボン酸成分とを組み合わせると、比較的低粘度であり、溶融重合により製造しやすい。しかも、溶融重合では、副生する水などの除去のため減圧下で行われる場合あるが、このような減圧下においても、留出することがなく、仕込みを反映したポリエステル樹脂を効率よく得ることができる。
【0096】
[複屈折調整剤および樹脂組成物]
本発明の複屈折調整剤は、上記のポリエステル樹脂で構成されており、樹脂の複屈折を調整するための添加剤として使用できる。このような複屈折調整剤は、樹脂の複屈折を正の方向に低減する成分であってもよいが、通常、樹脂の複屈折(固有複屈折)を負の方向に低減する添加剤であってもよい。
【0097】
樹脂の固有複屈折は、正の固有複屈折、例えば、+10×10
−4以上(例えば、+20×10
−4〜+300×10
−4)、好ましくは+30×10
−4以上(例えば、+40×10
−4〜+250×10
−4)、さらに好ましくは+50×10
−4以上(例えば、+60×10
−4〜+200×10
−4)、特に+70×10
−4以上(例えば、+80×10
−4〜+150×10
−4)であってもよい。
【0098】
樹脂としては、複屈折調整剤(前記ポリエステル樹脂)により調整できる樹脂であれば特に限定されず、例えば、幅広い樹脂を使用でき、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂(熱又は光硬化性樹脂)のいずれであってもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、ハロゲン含有ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニルなど)、ポリカーボネート系樹脂(例えば、ビスフェノールA型ポリカーボネート)、ポリチオカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂[例えば、ポリアルキレンテレフタレート(ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリC
2−4アルキレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなど)、ポリエチレンナフタレートなどのポリアルキレンアリレート系樹脂、ポリアリレート系樹脂(例えば、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸など)と芳香族ジオール(ビフェノール、ビスフェノールA、キシリレングリコール、これらのアルキレンオキシド付加体など)を重合成分として用いたポリアリレート系樹脂など)など]、ポリアセタール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。好ましい樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネートなど)、ポリエステル系樹脂(ポリアルキレンアリレート系樹脂など)などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0099】
また、硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、アミノ樹脂(尿素樹脂、メラミン樹脂など)、フラン樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ウレタン系樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ポリイミド系樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂などが挙げられる。硬化性樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。なお、硬化性樹脂は、その種類に応じて、硬化剤や硬化促進剤などを含有していてもよい。
【0100】
また、樹脂は、芳香環(ベンゼン環など)を含有する樹脂[例えば、芳香族ポリカーボネート系樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネートなど)、芳香族ポリエステル系樹脂(前記ポリアルキレンアリレート系樹脂など)、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フェノール樹脂など]などであってもよい。
【0101】
特に、樹脂は、芳香環を有する樹脂の中でも、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する樹脂であってもよい。本発明の複屈折調整剤は、幅広い樹脂に対する親和性に優れているが、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する樹脂に対する親和性にも優れており、高機能の9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する樹脂の複屈折を容易に低減することができる。
【0102】
9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する樹脂としては、上記例示の熱可塑性樹脂および硬化性樹脂が挙げられ、例えば、熱可塑性樹脂[例えば、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂など]、硬化性樹脂(例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂など)などが挙げられる。
【0103】
例えば、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するポリエステル樹脂としては、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)C
2−4アルコキシフェニル)フルオレンなどの前記例示の化合物など}を含むジオール成分と、非フルオレン系ジカルボン酸成分(すなわち、フルオレン系ジカルボン酸成分(A1)ではないジカルボン酸成分)とを重合成分とするポリエステル樹脂などが含まれる。
【0104】
ジオール成分は、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類以外のジオールを含んでいてもよい。このようなジオール成分としては、前記例示のジオール成分(例えば、脂肪族ジオールなど)などが含まれる。
【0105】
なお、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類と、他のジオール[例えば、アルカンジオール(C
2−4アルカンジオールなど)などの脂肪族ジオール]との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=50/50〜99/1、好ましくは55/45〜98/2、さらに好ましくは60/40〜95/5(例えば、65/35〜93/7)程度であってもよく、通常70/30〜95/5(例えば、75/25〜92/8)程度であってもよい。
【0106】
非フルオレン系ジカルボン酸成分としては、特に限定されないが、前記例示の化合物、例えば、芳香族ジカルボン酸成分(前記例示の化合物など)、脂環族ジカルボン酸成分(前記例示の化合物など)などが含まれる。
【0107】
複屈折調整剤(前記ポリエステル樹脂)の使用割合は、例えば、樹脂100重量部に対して、0.1重量部以上(例えば、0.5〜1500重量部)程度の範囲から選択でき、0.5重量部以上(例えば、0.7〜1000重量部)、好ましくは1重量部以上(例えば、2〜800重量部)、さらに好ましくは3重量部以上(例えば、4〜600重量部)、特に5重量部以上(例えば、7〜500重量部)程度であってもよく、通常1〜500重量部(例えば、3〜300重量部)程度であってもよい。
【0108】
本発明の複屈折調整剤は、少量でも効率よく複屈折調整効果を得ることができるため、例えば、複屈折調整剤の使用割合を、樹脂100重量部に対して、70重量部以下(例えば、1〜60重量部)、好ましくは50重量部以下(例えば、2〜40重量部)、さらに好ましくは30重量部以下(例えば、3〜25重量部)とすることもできる。
【0109】
また、本発明の複屈折調整剤は、複屈折調整剤そのものが優れた特性を有している場合が多いため、複屈折調整剤の使用割合を、樹脂100重量部に対して、70重量部以上(例えば、80〜1000重量部)、好ましくは100重量部以上(例えば、100〜800重量部)、さらに好ましくは120重量部以上(例えば、130〜600重量部)、特に150重量部以上(例えば、200〜500重量部)とすることもできる。
【0110】
このように本発明の複屈折調整剤により、複屈折が調整された樹脂(樹脂組成物)が得られる。本発明は、このような樹脂組成物、すなわち、樹脂と、複屈折調整剤とを含む樹脂組成物も含まれる。なお、このような樹脂組成物において、樹脂、複屈折調整剤の種類および混合割合(使用割合)は前記の通りである。
【0111】
なお、樹脂組成物は、必要に応じて、各種添加剤[例えば、充填剤又は補強剤、着色剤(染顔料)、導電剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、離型剤、帯電防止剤、分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、低応力化剤、炭素材など]を含んでいてもよい。これらの添加剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0112】
また、本発明には、このような樹脂組成物で形成された成形体も含まれる。このような成形体の形状は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択でき、例えば、二次元的構造(フィルム状、シート状、板状など)、三次元的構造(管状、棒状、チューブ状、中空状など)などが挙げられる。
【0113】
特に、本発明の樹脂組成物は、光学的特性に優れているため、光学材料又は光学用成形体(特に、光学フィルム、光学レンズなど)を好適に形成してもよい。
【0114】
成形体は、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法などを利用して製造することができる。
【0115】
特に、本発明の樹脂組成物は、種々の光学的特性に優れているため、フィルム(特に光学フィルム)を形成するのに有用である。そのため、本発明には、前記樹脂組成物で形成されたフィルム(光学フィルム)も含まれる。
【0116】
このようなフィルムの厚みは、1〜1000μm程度の範囲から用途に応じて選択でき、例えば、1〜200μm、好ましくは5〜150μm、さらに好ましくは10〜120μm程度であってもよい。
【0117】
このようなフィルム(光学フィルム)は、前記樹脂組成物を、慣用の成膜方法、キャスティング法(溶剤キャスト法)、溶融押出法、カレンダー法などを用いて成膜(又は成形)することにより製造できる。
【0118】
フィルムは、延伸フィルムであってもよい。本発明のフィルムは、延伸フィルムであっても、低複屈折性を高いレベルで維持できる。なお、このような延伸フィルムは、一軸延伸フィルム又は二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。
【0119】
延伸倍率は、一軸延伸又は二軸延伸において各方向にそれぞれ1.1〜10倍(好ましくは1.2〜8倍、さらに好ましくは1.5〜6倍)程度であってもよく、通常1.1〜2.5倍(好ましくは1.2〜2.3倍、さらに好ましくは1.5〜2.2倍)程度であってもよい。なお、二軸延伸の場合、等延伸(例えば、縦横両方向に1.5〜5倍延伸)であっても偏延伸(例えば、縦方向に1.1〜4倍、横方向に2〜6倍延伸)であってもよい。また、一軸延伸の場合、縦延伸(例えば、縦方向に2.5〜8倍延伸)であっても横延伸(例えば、横方向に1.2〜5倍延伸)であってもよい。
【0120】
延伸フィルムの厚みは、例えば、1〜150μm、好ましくは3〜120μm、さらに好ましくは5〜100μm程度であってもよい。
【0121】
なお、このような延伸フィルムは、成膜後のフィルム(又は未延伸フィルム)に、延伸処理を施すことにより得ることができる。延伸方法は、特に制限がなく、一軸延伸の場合、湿式延伸法又は乾式延伸法のいずれであってもよく、二軸延伸の場合、テンター法(フラット法ともいわれる)であってもチューブ法であってもよいが、延伸厚みの均一性に優れるテンター法が好ましい。
【実施例】
【0122】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0123】
なお、樹脂又はフィルムの特性の測定や評価は以下の方法によって行った。
【0124】
(分子量)
ゲル浸透クロマトグラフィ(東ソー(株)製、HLC−8120GPC)を用い、試料をクロロホルムに溶解させ、ポリスチレン換算で、分子量を測定した。
【0125】
(ガラス転移温度(Tg))
示差走査熱量計(セイコーインスツル(株)製、DSC 6220)を用い、アルミパンに試料を入れ、30℃から200℃の範囲でTgを測定した。
【0126】
(屈折率、アッベ数)
多波長アッベ屈折計「DR−M2/1550」(株式会社アタゴ製)を用い、測定温度20℃で測定した。屈折率は、波長589nmにおける屈折率n
dのことである。また、ここでいうアッベ数(ν
d)とは、屈折率の波長依存性、すなわち分散の度合いを示すものであって、次式で求めることができる。
【0127】
ν
d=(n
d−1)/(n
F− n
C)
上記式中における各記号は、ν
d:アッベ数、n
d:d線(波長589nm)における屈折率、n
F:F線(波長486nm)における屈折率、n
C:C線(波長656nm)における屈折率をそれぞれ意味する。
【0128】
(複屈折)
大塚電子社製リタデーション測定装置RETS−100を用いて、600nmの単色光で複屈折を測定した。測定に用いた試験片は、樹脂を160〜240℃でプレス成形し、厚み100〜400μmのフィルムを得た。得られたフィルムを15×50mmの短冊状に切り出すことにより得た。ガラス転移温度(Tg)+10℃の温度で測定用試験片を25mm/分で2倍、3倍又は4倍延伸し、延伸フィルムを得た。これらのフィルムの複屈折を、上記の装置を使用して測定し、延伸倍率から配向度を算出し、配向度と複屈折から固有複屈折を求めた。具体的には、フィルムを2倍、3倍及び4倍に延伸したときの複屈折を測定した。このうち、3倍延伸のものを「3倍複屈折」とした。各延伸倍率(λ)に対応する配向度(F)を下式の換算式より求め、各配向度に対する複屈折の値をプロットした。
F=(3<cos
2θ>−1)/2
<cos
2θ>=(1+r
2)(r−tan
−1r)/r
3
r=(λ
3−1)
0.5
λ:延伸倍率,F:配向度
最小二乗法を用い近似直線を得て、外挿法により配向度(F)=1.0(すなわち、無限延伸倍率)のときの複屈折を求めた。ここで、フィルム内の分子は理想的に極限まで配向していると仮定し、本発明においては、このときの複屈折の値を「固有複屈折」とした。
【0129】
(吸水率)
樹脂を160〜240℃においてプレス成形することにより作成した厚み1mmのフィルムを30×30mmの正方形に切り出すことで、試験片を得た。得られた試験片を80℃において8時間真空状態で乾燥させ、その後、室温になるまで放冷した。放冷後、試験片の重量を測定した後、23℃の水中に浸漬した。24時間後経過後、試験片表面の水を拭き取り、重量を測定し、浸漬前後の重量変化より吸水率を求めた。
【0130】
(実施例1)
9,9−ジ(2−メトキシカルボニルエチル)フルオレン(9,9−ジ(2−カルボキシエチル)フルオレン又はフルオレン−9,9−ジプロピオン酸のジメチルエステル、以下、FDPMという。特開2005−89422号公報の実施例1のアクリル酸t−ブチルをアクリル酸メチル(37.9g(0.44モル))に変更したこと以外は同様にして合成したもの)1.00モル、エチレングリコール(以下、EGという)3.0モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10
−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10
−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10
−4モル、酸化ゲルマニウム20×10
-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0131】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の100モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の100モル%がEG由来であった。
【0132】
得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは60425、ガラス転移温度Tgは71.7℃、屈折率は1.6005、アッベ数は26.2、吸水率は0.22%であった。
【0133】
また、得られたポリエステル樹脂の固有複屈折は、−30.2×10
−4、3倍複屈折は−16.3×10
−4であり、負の複屈折を有していることを確認した。
【0134】
(実施例2)
実施例1において、EG3.0モルに代えて、EG2.20モルおよび1,4−シクロヘキサンジメタノール(以下、CHDMという)0.80モルを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0135】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の100モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%がCHDM由来、20モル%がEG由来であった。
【0136】
得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは56700、ガラス転移温度Tgは83.4℃、屈折率は1.5961、アッベ数は30.4、吸水率は0.22%であった。
【0137】
また、得られたポリエステル樹脂の固有複屈折は、−88.6×10
−4、3倍複屈折は−43.0×10
−4であり、負の複屈折を有していることを確認した。
【0138】
(実施例3)
実施例1において、EG3.0モルに代えて、EG2.20モルおよび9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製、以下、BPEFという)0.80モルを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0139】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の100モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%がBPEF由来、20モル%がEG由来であった。
【0140】
得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは45800、ガラス転移温度Tgは122.6℃、屈折率は1.6363、アッベ数は23.7、吸水率は0.25%であった。
【0141】
また、得られたポリエステル樹脂の固有複屈折は、−45.0×10
−4、3倍複屈折は−25.6×10
−4であり、負の複屈折を有していることを確認した。
【0142】
(実施例4)
実施例1において、FDPM1.0モルに代えて、FDPM0.80モルおよびテレフタル酸ジメチル(以下、DMTという)0.20モルを使用し、EG3.0モルに代えて、EG2.20モルおよびBPEF0.80モルを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0143】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の80モル%がFDPM由来、20モル%がDMT由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%がBPEF由来、20モル%がEG由来であった。
【0144】
得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは46200、ガラス転移温度Tgは126.4℃、屈折率は1.6351、アッベ数は23.5であった。
【0145】
また、得られたポリエステル樹脂の3倍複屈折は−24.3×10
−4であり、負の複屈折を有していることを確認した。
【0146】
(実施例5)
実施例1において、FDPM1.0モルに代えて、FDPM0.90モルおよび2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル(以下、DMNという)0.10モルを使用し、EG3.0モルに代えて、EG2.20モルおよびBPEF0.80モルを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0147】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の90モル%がFDPM由来、10モル%がDMN由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%がBPEF、20モル%がEG由来であった。
【0148】
得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは46100、ガラス転移温度Tgは125.4℃、屈折率は1.637、アッベ数は23.2であった。
【0149】
また、得られたポリエステル樹脂の固有複屈折は、−26.6×10
−4、3倍複屈折は−22.4×10
−4であり、負の複屈折を有していることを確認した。
【0150】
(実施例6〜12、比較例1)
以下の方法により、上記実施例で得られたポリエステル樹脂が実際に複屈折調整機能を有していることを確認した。
【0151】
すなわち、表1に示す種々の割合で、樹脂と、実施例1〜5で得たポリエステル樹脂(複屈折調整剤)とを、二軸押出機((株)テクノベル製、KZW15−30MG)を用いて240〜280℃で溶融押出(押出混練)し、ペレットを得た(比較例1は比較のため樹脂のみ用いた)。なお、いずれのペレットも透明であり、相溶性良好であった。
【0152】
そして、得られたペレットについて、各種特性を測定した。
【0153】
なお、複屈折調整剤を添加する樹脂には、実施例で得られた複屈折調整剤が、屈折率や耐熱性に及ぼす影響を確認するため、高屈折率、高耐熱性のポリエステル樹脂、すなわち、ジオール成分を、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンおよびエチレングリコールとし、ジカルボン酸成分をテレフタル酸ジメチルとするポリエステル樹脂(特開平7−198901号公報の実施例1の方法に準じて作成したもの)を用いた。
【0154】
結果を表1に示す。表において、「Tg」とはガラス転移温度、「Mw」とは重量平均分子量を示す。
【0155】
【表1】
【0156】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜5で得られたポリエステル樹脂は、負の複屈折を有し、複屈折調整剤(負の方向に複屈折を低減する複屈折調整剤)として機能することを確認した。また、複屈折調整機能を有していながら、ベースとなる樹脂のTg、屈折率を高いレベルで維持でき、屈折率については向上できるものもあった。さらに、吸水率も低減できた。
【0157】
(実施例13〜16)
また、実施例3で得られた樹脂を用いて、本発明のポリエステル樹脂が、高耐熱性、高屈折率を有する他の樹脂(ポリカーボネート系樹脂)に対しても、複屈折調整機能を有しているかを確認した。
【0158】
表2に示す樹脂[ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名「ユーピロン H−4000」)と、実施例3で得られたポリエステル樹脂(複屈折調整剤)とを、表2に示す割合で、二軸押出機((株)テクノベル製、KZW15−30MG)を用いて240〜280℃で溶融押出(押出混練)し、ペレットを得た。
【0159】
そして、得られたペレットについて、各種特性を測定した。
【0160】
結果を表2に示す。表2において、「Tg」とはガラス転移温度を示す。
【0161】
【表2】
【0162】
実施例13〜16に示されるように、実施例3で得られたポリエステル樹脂は、高耐熱性、高屈折率を有する他の樹脂(ポリカーボネート系樹脂)に対しても、複屈折調整剤(負の方向に複屈折を低減する複屈折調整剤)として機能することがわかった。また、複屈折調整機能を有していながら、ベースとなる樹脂のTg、屈折率を高いレベルで維持できる。
【0163】
このように、フルオレン系ジカルボン酸成分をジカルボン酸成分とするポリエステル樹脂の効果を確認したので、以下のように、さらに、ジオールの種類を代えてポリエステル樹脂を合成し、同様に負の複屈折を有していることを確認した。
【0164】
(実施例17)
実施例1において、EG3.0モルに代えて、EG2.20モルおよび1,4−ベンゼンジメタノール(1,4−ジヒドロキシメチルベンゼン)0.80モルを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0165】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の100モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%が1,4−ベンゼンジメタノール由来、20モル%がEG由来であった。
【0166】
得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは47600、ガラス転移温度Tgは78.6℃、屈折率は1.6094、アッベ数は26.0であった。
【0167】
また、得られたポリエステル樹脂の固有複屈折は−39.8×10
−4、3倍複屈折は−19.4×10
−4であり、負の複屈折を有していることを確認した。
【0168】
(実施例18)
実施例1において、EG3.0モルに代えて、EG2.20モルおよびトリシクロデカンジメタノール(トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカンジメタノール)0.80モルを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0169】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の100モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%がトリシクロデカンジメタノール由来、20モル%がEG由来であった。
【0170】
得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは48600、ガラス転移温度Tgは91.3℃、屈折率は1.5877、アッベ数は30.5であった。
【0171】
また、得られたポリエステル樹脂の固有複屈折は−31.3×10
−4、3倍複屈折は−17.5×10
−4であり、負の複屈折を有していることを確認した。
【0172】
(実施例19)
実施例1において、FDPM1.0モルに代えて、FDPM0.80モルおよびDMT0.20モルを使用し、EG3.0モルに代えて、EG2.20モルおよび9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン(以下、BOPPEFという。特開2001−206863号公報の実施例4と同様にして合成したもの)0.80モルを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0173】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の80モル%がFDPM由来、20モル%がDMT由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%がBOPPEF由来、20モル%がEG由来であった。
【0174】
得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは38400、ガラス転移温度Tgは133.3℃、屈折率は1.6463、アッベ数は22.0であった。
【0175】
また、得られたポリエステル樹脂の固有複屈折は−22.8×10
−4、3倍複屈折は−13.0×10
−4であり、負の複屈折を有していることを確認した。
【0176】
(実施例20)
実施例1において、EG3.0モルに代えて、EG2.20モル及び3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(以下、スピログリコールという)0.80モルを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0177】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の100モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の65モル%がスピログリコール由来、35モル%がEG由来であった。
【0178】
得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは51700、ガラス転移温度Tgは93.3℃、屈折率は1.5695、アッベ数は29.3であった。
【0179】
また、得られたポリエステル樹脂の固有複屈折は、−17.9×10
−4、3倍複屈折は−10.8×10
−4であり、負の複屈折を有していた。
【0180】
(実施例21)
実施例1において、EG3.0モルに代えて、EG2.20モル及びスピログリコール0.50モルを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0181】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の100モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の40モル%がスピログリコール由来、60モル%がEG由来であった。
【0182】
得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは74100、ガラス転移温度Tgは90.5℃、屈折率は1.5656、アッベ数は29.2であった。
【0183】
また、得られたポリエステル樹脂の固有複屈折は、−31.5×10
−4、3倍複屈折は−19.0×10
−4であり、負の複屈折を有していた。
【0184】
(実施例22)
実施例1において、EG3.0モルに代えて、1,2−ブタンジオール2.20モル、CHDM0.80モルを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
【0185】
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の100モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の80モル%がCHDM由来、20モル%が1,2−ブタンジオール由来であった。
【0186】
得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは46200、ガラス転移温度Tgは83.0℃、屈折率は1.5814、アッベ数は28.8であった。
【0187】
また、得られたポリエステル樹脂の固有複屈折は−29.5×10
−4、3倍複屈折は−20.5×10
−4であり、負の複屈折を有していた。
【0188】
実施例1、2、4、5及び17〜22のポリエステル樹脂も、負の複屈折を示し、実施例3のポリエステル樹脂と同様に複屈折調整剤として機能する。